いきなり嫁が増えてしまった俺。
しかも2桁増。どうすりゃいいのよ。
「その前にさ、十兵衛、光姫ちゃん本当にいいの?」
「何を今さら。もう私たちはあなたの妻なのだよ」
「いや、俺たちの方だと結婚の手続きしちゃったけど、こっちの世界の婚姻届は出してないから今なら君たちの経歴に傷がつかないで済むでしょ。まだバツイチにはならないよ」
この2人の親御さんに挨拶なんてやっぱり避けたい。怖すぎるって。
今までの嫁さんはさ、そういうことがなかったからなんとかなったけど、対人スキル低い俺に挨拶なんて無理でしょ。
「ほっほっほ。別れるつもりはないぞ婿殿」
「……婿に行くつもりはないからね。それに無理矢理家のことに協力させようとしても嫌だよ」
「なんじゃ。それを恐れておるのか。……まあ、それも当然よのう。なに、若人どもも育ってきておる。わしが抜けたところで家には大事はないわい」
若人ってあんた、じゅうぶんに若いでしょうが。
「十兵衛はどうするのさ。弟に名も仕事も継がせるのかい?」
「そこまで知っておられるか。……ニホンのためとあれば父もわかってくれるよ」
「そんな理由で嫁入りするとか娘が言い出したら、俺は反対するけど」
智子やゆり子がそれ言ったら絶対に阻止するね。
愛のない結婚なんてさ。
「十兵衛、光姫、それに今日婚姻した私の、いえ、煌一の嫁たち。よく聞きなさい。煌一はね、愛がほしいのよ。それが結婚の条件」
華琳はよくわかってくれてるなあ。
そりゃ、最初の結婚も打算から始まってるけどさ、今じゃそんなに嫌われてない気がするし。
たまに愛を感じる時もある! ……俺の勘違いかもしれないけど……。
やっぱり愛は必要だよね。
……もしかしたらこの気持ちも俺に欠片が融合しているという
嫁さん増えたんだから、身体だけの付き合いでも楽しめばいいのかな?
……無理でしょ。無理無理無理無理無理無理、絶対無理。
だいたい今の俺は子供ボディなんだしさ。
「本当にいいの? 自分で言うのもなんだけど夫としては問題ありな男だと思うよ。嫁さんも多いし。だからといって他の嫁さんたちとは絶対に別れるつもりもないし。もちろん君たちも結婚したらそうなるけど」
魏のみんなには悪いけど別れるつもりはない。凪と季衣ちゃんには感動したし、春蘭たちだって別れたら華琳までが離れていきそうで怖い。
「わしらとて覚悟がある。愛らしい少年を愛せというのなら容易いしの」
「いや、今はわけあってこんなだけど本当はおっさんだよ、俺。十兵衛に聞いてない?」
「私としてはあちらの方も好ましいから問題はないよ」
……十兵衛はそういう趣味なの?
結局、2人の覚悟の前に押し切られてしまった。
「うう、親御さんになんて言えばいいんだ。……胃が痛い」
「なに、わしにまかせておくがよい。かっかっか」
不安だ。
ものすごく不安だ。
「だいたい、なんでうちにきたのさ?」
「ああ、エヴァの本土への輸送が完了したのを報告しにきたのだよ」
「もう? ずいぶんと手回しがいいね」
準備万端だったってこと?
「都合のよいことに自衛隊機が待っていたのでのう」
自衛隊機って俺たちが乗ってきた輸送ヘリ?
それって都合よくじゃなくて、待たせていたよね、絶対。どんだけ権力あるのさ。
こんな娘たちの親に挨拶とか……小市民な俺には拷問なんですけど。
落ち込んでばかりもいられないので、今度は蜀の娘たちを元に戻す。真・恋姫ラストで蜀にいた他勢力の娘たちもいっしょだ。
人数が余りにも多いので、華琳以外の嫁さんたちは部屋から出て行っていくれた。春蘭と桂花は危険だからって残ろうとしたけど、華琳の命令でしかたなく出て行った。
みんなは梓の指揮で屋敷の掃除を始めるようだ。
俺と華琳は固有スキル使用の前にぬいぐるみたちに言い聞かせる。
「いいかい、前も言ったけど華琳はもうみんなと争うつもりはないから仲良くやってほしい」
「ええ。ここは大陸ではないわ。私たちが争う必要はない。詳しいことは戻ってから話しましょう」
華琳に促され、「暴れないでね」と言いながら彼女たちを
「……おお! 元に戻っている!」
「やっとご飯が食べられるのだ!」
うん。この人数でも問題なく成功してる。スキルレベルも上がってるのかな?
「おかーさん?」
「ええっ。紫苑なの?」
「璃々はわかるのね?」
予定通りに若返った黄忠が璃々ちゃんを抱きしめている。驚いた馬岱ちゃんと同じくらいの年齢になっているのかな?
「ってことは……もしかして桔梗さまぁっ!?」
厳顔は魏延と同じくらい? 爆乳が巨乳レベルになっている。やはりあの乳は年とともに大きくなり続けるものなんだろうか?
「だいおーの耳がないにゃ!」
「にゃっ? ……しっぽもなくなってるにゃ」
南蛮娘たちも騒いでいるけど、耳と尻尾がなくても可愛い。
あとで戻り方を教えてあげないとね。
「おーほっほっほ! 元に戻りまし……ひぃっ!」
こっちを見て悲鳴をあげたのは袁紹。
やっぱりこの娘だけ別に成現した方がよかったかな。
「事情はだいたいわかってるけど、そんなに怖いの? 袁紹さん」
劉備が袁紹を引っ張って囁くように会話を始めた。
「もちろんですわ! あのような汚らわしい者といっしょの部屋にいるなど、耐えられませんわ!」
袁紹の方は大声なのでしっかり聞こえていたりする。
あ、劉備がこいこいって手で合図して、成現した娘たちがみんな集まってっちゃった。
「……だからね……」
「しかし、それでは!」
「焔耶ちゃん声が大きいってば……」
かがんでヒソヒソ話してる。作戦タイムといったところだろうか。
「なにを話してるんだろうね?」
さすがに俺と華琳はそれにまじれず疎外感。
「あら? わからないかしら」
華琳はわかったようで、ふふふっと楽しそうに微笑んでいる。抱きしめたいぐらいに可愛い。この身体じゃなかったら実行していたかもしれない。
しばらく待つと作戦会議が終わったようで、全員が立ち上がった。
「天井さん、元に戻してくれてありがとうございます。……あのね! 大事な話があるからよく聞いてね」
大きくお辞儀をしてから礼を言う劉備。
大事な話ってなんだろう? 待遇の要求だろうか?
「わ、わたしは劉備。字は玄徳! 真名は桃香」
「以前にも名乗りましたが、私は関雲長。真名は愛紗です」
「鈴々は張飛。真名は鈴々なのだ!」
真名まで含めて名乗りだす桃園の三姉妹。
なんだ、大事なことって自己紹介?
「ええと、真名まで名乗っちゃっていいの? 俺には真名なんてないんだけど」
大事な名前をいきなり聞かされたので、なにか企んでるんじゃないかと思った俺はそう問う。
その不安は間違いじゃなかったんだけど、そのせいで注意が散漫になっていて。
「隙あり!」
またもや俺の眼鏡は奪われていた。
「ちょっ、趙雲?」
「いかにも。字は子龍。真名は星! ……まさかこれほどとは」
犯人は趙雲だった。得意気に名乗ってから俺の顔を見て硬直する。……
見れば、他の娘たちも全員俺の顔を見ちゃったみたいだ。とっさに手で隠したというのに。
「も、申し訳ありません。これも天井殿に恩を返すためなのです!」
諦めて手をどけた俺の顔から視線を動かさず、愛紗は謝ってくれた。
顔色が悪いのは呪いのせいだろう。それでも俺の顔を見ているのだから、さすが関羽といったところか。
「恩返し? なんでこれが?」
「我ら一同、全てをあなたに捧げます」
「なんでそうなるのさ!」
俺と愛紗が話してる横では、またしても華琳がビニフォンで婚姻届を呼び出して桃香に渡しているし!
「あのね、わたしたちが元に戻してもらったお礼に天井さんにあげられるものってね、もうこの身体しかないんだよ」
「重すぎるから!」
俺の嫁になって呪いが解除されたのか、晴れ晴れとした表情で俺を見つめながらの桃香。……腹黒君主ってのを忘れていたよ。この劉備め。
「わ、わたしそんなに重くないもん!」
いや、体重の話じゃなくてね。
……これも計算づくのボケか。天然まじりの腹黒ヒロイン、恐るべし。
「観念しなさい煌一。閨でのバリエーションが増えたと喜ぶべきよ。もちろん、愛紗との時は私も呼ぶのよ」
バリエーションって。英語も違和感なく使えるようになってるのは褒めたいけど、内容は褒められない。
「そ、曹操殿?」
「華琳でいいわ。あなたも煌一の妻となったのだから。私の家族でしょう?」
いつの間に愛紗まで!?
気づけば、ビニフォンは次々と女の子たちの手から手へと移動していて。
「ぜーいん書きおえたにょ!」
ビニフォンを掲げたあのロリは……あれはミケちゃんかな? その手の指はちゃんと5本。猫手グローブはつけていなかった。
「ぜ、全員……まさか璃々ちゃんまで?」
「いえ、璃々は私の娘ですから、だいじょうぶなはずですよね?」
そうか、璃々ちゃんは嫁じゃないのか。
べ、別に残念なんかじゃないんだからねっ!
……じゃなくて!
「マジで璃々ちゃん以外全員?」
「そうだよ! これからよろしくね、ご主人様」
にっこり笑って真・恋姫†無双での主人公への呼び方をかましてくれる桃香。
なにたくらんでるのさ?
それから畳み掛けるように次々と少女たちが真名も含めた自己紹介をしてくる。
「璃々だよ。……お父さん?」
真名をもらったばかりの紫苑に促されて璃々ちゃんがそう呼んでくれたのがせめてもの救いか。
「うん。よろしくね、璃々ちゃん」
智子たち、妹ができたの、喜んでくれるといいけど。
「……気が重いけど、やるしかないか」
土下座して事情を説明したけど、梓にぶん殴られた。
それでもまだおさまらない梓は、華琳だけにはまかせられないと部屋に残っている。
掃除の指揮はクランとヨーコにまかせることにしたらしい。
「二度あることは三度ある、なんて言わせないからね!」
「うん。これ以上梓を泣かせるつもりはないから」
「さあ、どうなるかしらね」
華琳、不安になるようなこと言わないでよ。
俺を守るように梓が隣に立って、呉の娘と残り全員を元に戻した。
チッ。
いきなり頭上で舌打ちが聞こえる。
見上げれば、孫策の手を梓が捕まえていた。
「させないよ!」
「……やるわね」
力比べのように両手でつかみ合う梓と孫策。
「もしかしていきなり俺の眼鏡を奪いにきたの? なんで?」
「面白そうだから」
本当に楽しそうな声が孫策から返ってきた。
「勘弁してよ。君だけじゃなくて、他の娘たちだって呪われちゃうんだよ。その娘たちも嫁にしろっていうの?」
言ってから思い出した。真・呉ルートで孫策は一刀君の子を呉の娘たちに産ませようとしたじゃないか。
それと似たようなもんなの? 俺、天の御遣いなんかじゃ……って、使徒だった。天使、天の使いそのものじゃないか!
まあ、そんなことはどうでもいいんだけどさ。
「お前ら、呪いのせいで煌一が嫌われる度にどんだけ辛い思いしてると思ってんだ!」
梓……そこまで俺のことをわかってくれてるなんて。
梓のためにもこれ以上、嫁を増やすなんて不義理な真似はしないよ、俺!
「離れてな、煌一。ちょっと本気出すから」
梓の足元で床がミシミシ鳴っている。もしかして鬼パワー全開?
俺は梓から離れ壁際へと後退した。
互いの両手を握り合って押し合う形が、梓が前に出て行き、孫策が膝をつく形に。
「そんな、姉様が押し負けるなんて!」
「くっ、この馬鹿力」
「あたしは鬼の子だからね。煌一の嫁は諦めてもらうよ!」
「やーよ。興覇!」
孫策の掛け声で甘寧が……動かなかった。
「ちょ、ちょっと思春?」
「その男、蓮華さまの婿にはふさわしくありません」
ああ、甘寧はだいじょうぶか。周泰もまだ動いてないし、とほっとしたところで、ひょいと奪われる俺の眼鏡。
え? いったい誰が?
その手の持ち主を見上げると、それは張勲だった。
「な、なんで?」
「それはですねぇ、あ、こっち見ちゃ駄目ですよぉ、きもいんですから」
ガタッ!
突然、頭上で物音がした。見上げてもなにもない。上の階? ……もしかして天井裏?
人のいない屋敷だったからネズミが住み着いた?
「曲者!」
叫んだのは華雄かな? 予定以上にロリ化してしまっている。
「幼平」
「はっ!」
梓から解放されて手をにぎにぎしていた孫策が周泰に命じると、彼女は物音を追って、部屋をとびだしてしまった。
「煌一ぃ」
今にも泣きそうな梓を抱きしめ、その頭をなでる。俺の方が小さいのでちょっとかっこ悪いけどしかたない。
「あー、なんか悪いことしちゃった、かな?」
「あたりまえだ! ほかに方法があっただろう」
孫策を叱ってるのは周瑜か。
言ってやって言ってやって。
「それで、どうするつもり? 煌一の嫁になりたいとでも言うの?」
華琳の質問中もまだ手を見ている小覇王。
「……私は無理でも蓮華は認めてやってくれないかしら?」
「姉様まさか、私のために?」
いや、さっきの面白そうだから、が本当の理由であってる気がするんですけど。
「妹のためにか……。ほら、手見せな。……まったく、あんたが悪いんだからね」
孫策の手をとって、触っていく梓。孫策は顔をしかめている。
「煌一、治してやってくれ。折れてるかわからないけど、ヒビは入ってるっぽい」
梓、手加減できなかったのか。
それだけ俺のことを想っていてくれるのか。
契約空間入りを防ぐために触れないように注意しながら、俺は孫策に回復魔法を使用する。
「おい、煌一を裏切ったら許さないからな」
「……認めてくれるの? 私は孫策。字は伯符。真名は雪蓮よ」
「あたしだって妹のためだったらそれぐらいしたかもしれないからね。天井梓、字や真名ってのはないよ」
治った手で今度はがっちりと握手する体育会系なノリの2人。
「いいのか、梓?」
「本当は嫌だけどしかたないよね……。どっちにしろ、雪蓮の妹とは結婚しなきゃなんないんだろ? でも、あたしは雪蓮を姉と呼ぶつもりはないからさ。あたしの姉は千鶴姉だけだ」
むう。なんて男前な。
でもやっぱり無理してるのもわかったので、もう一度梓を抱きしめる。
その間に華琳は少女たちの婚姻届への署名を着々と進めたのだった。
またも真名つきの自己紹介を受けていく俺。
「儂の名は黄蓋。字は公覆、真名は祭じゃ。よもやこの年で婿取りをするとはのう」
「あら、祭は今、若いわよ。小蓮ぐらいじゃないかしら?」
「なんと。ずいぶん視点が低いとは思ったがそこまで若くなってるとは……」
雪蓮の言葉通り、祭はシャオちゃんぐらいになってしまった。やっぱり俺の好みが反映したのかな?
それとも真・呉ルートラストの娘の黄柄ちゃんのイメージがあったから? ……いや、あの娘はもっとロリだったか。
華雄や袁術ちゃん、張勲が名乗ってくれたところで、ちょうど残っていた1人、周泰が戻ってきた。
物音の正体らしき1人の少女を縛り上げて。
「姓は周、名は泰、字は幼平、真名は明命! 煌一様、よろしくお願いします!」
ビニフォンに記入後、元気いっぱいに名乗ってくれる明命ちゃん。
ああ、これで恋姫ヒロインフルコンプしてしまった。……嬉しくないわけじゃないけどさあ。
落ち込んでいる俺の横で華琳が尋問を始める。
「それで、あなたは誰なのかしら? 何の目的で忍び込んだの?」
明命が捕まえてきたのは、レオタードの上に黒猫柄のミニ着物を羽織ったような衣装の少女。
「彼女は猫目の1人だよ」
「はうっ、お猫様?」
「いや、猫目。他にまだ2人いるんだけど、まあそれはあとでいいか」
一瞬、驚いた顔でこちらを見る少女、さらにギョッとしてそっぽを向く。
もう眼鏡をかけているというのにこの反応。これは間違いなくあの時、顔を見られちゃっているね。
「名前は華琳だって知ってるでしょ、
「今日初めて島にきたというのによく知っておるのう」
「予習したからね」
おかげで寝不足だ。
精神的な疲労も大きいし、今日は早く寝たい。
「わからないのはここに忍び込んだ目的かな。ここには君のお父さんが作った刀なんてないんだけど」
「な、なんでそれを!」
彼女たち子住姉妹は『ねずみ小僧』じゃなくて『キャッツアイ』の影響が大きい。父親の残したのは絵画じゃなくて刀だけどさ。
「素直に話してくれれば悪いようにはしないわ」
結真ちゃんの耳に囁く華琳。って、太腿をなでてる手がなんかいやらしいんですが!
「……酉居の剣魂を破ったって聞いたからよ」
華琳の手が危険な場所に近づいた時、さすがに観念したのか、結真ちゃんは話し始めた。
残念そうな顔で彼女から離れる華琳。
「酉居君の?」
「ええ。あれはそう簡単に倒せる剣魂ではないわ。もしかしたらお父さんの刀が関係してるのかもって」
「斬ったのはこの剣よ」
華琳はスタッシュから七星剣を取り出し、結真ちゃんに見せる。
もう春蘭から返してもらっていたのね。そういやさっき、エヴァへの攻撃で使っていたっけ。
「お父さんの刀じゃない……」
「ええ。あなたの行動は無駄足だったということね」
「だいたいさ、もうちょい入念に調査してから忍び込むもんじゃないの?」
「……引っ越してすぐなら警備の手も緩いって思って。今日はちょっと覗くだけの予定だったのよ」
なるほど。そういう考え方もあるか。
こんな豪邸に住むんじゃセキュリティのことも考えなきゃいけないか。
警備会社があったとしても頼むわけにはいかないだろうし、自分たちでなんとかしなきゃいけない。
結界魔法とか覚えられたらいいのにな。
「光姫ちゃん、どうしたもんかな?」
「色々見られてしまったしの、仲間にするほうがよかろう」
「いや、さすがにその必要はないんじゃないかと」
嫌われてるだけなら我慢できるし。
これから先にどうしても必要な娘ってわけでもないだろう。
「……私にできることなら、協力するわ」
「ならばここに名前を書きなさい」
いや華琳、さすがに婚姻届は見ればわかるんじゃ……。
「ってなんで素直に書くのさ!」
「プライドの問題よ! あれ? ……あんたの顔、そんなだったっけ?」
呪いが解けたか。……つまり、嫁になっちゃったか……。
「ばれてるからって、名前ぐらいはと書いてしまったのでしょうね」
華琳がビニフォンの画面を見せてくれる。
……拡大表示のせいで1名分の名前の記入欄しか表示されてない。書く方も書く方だけど、これは完全にだまし討ちでしょ。
ビニフォンの操作をここまでマスターしてるなんて本当に古代中国からきた娘なの?
「ふふっ。さっきの続き、楽しみにしてるわ」
「えっ?」
華琳が操作して、婚姻届という文字の表示に再び顔が青ざめていく結真ちゃん。
「な、なにこれ? ……でも、こんなのだし、捺印もしてないから無効よね?」
「普通はそうだけど……うちの国ではそれで正式なんだ」
ふしぎ。
大江戸学園にきてまだ初日。
屋敷の掃除をしようとしてるだけなのに嫁が増加していく。
無理でしょ。なにこの人数。
大奥と言った光姫ちゃんの言葉を思い出した。
嫁さんたち同士の関係だけでストレスたまりそうな気が……。
この島にきたのは間違いだったんだろうか?
……せめて本番できれば、もっと違う感想になるのかな?