真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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6話 えふえふに

 俺の固有スキルの影響だろうか?

 夢の中でも華琳ちゃんはぬいぐるみではなく、ちゃんと美少女になっていた。

 それでもやっぱりちっこいけど。

 うん。小さくてすごい可愛い。

 

 小さい頃は普通に女の子に嫌われてなかった俺は、そのせいか小さい子は大好きだ。

 ……ただのロリコンかもしれないのはわかってるけどさ。

 

「どうしたの?」

 え? あ、見惚れてた。

 でも、そんなことをシャイな俺が言えるはずもなく。

「こ、この夢ってなんなのかな? 最近見るようになったけど」

「さあ? こんなのは私も初めてよ」

 初めて!

 華琳ちゃんの初めて!!

 なんか興奮するよね。

 

「人形にされてからもう何年経ったのかわからないけれど、あなたにあそこから出してもらえるまではこんなことはなかった」

 ア、アソコから出して!?

 ……いかん。美少女を間近にど緊張しておかしくなっている。

 精神異常状態も回復するベッドの効果も夢だと発揮されないんだろうか。

 深呼吸しよう。吸って吐いて……吸って吐いて……。うん、もういいかな。

「人形にされた?」

 ぬいぐるみを俺の固有スキルで本物にしたんじゃないの?

 ……華琳ちゃんぬいぐるみには必要な分のEPが貯まっていたけど、俺が入手してからそこまでEPも貯まるはずもない。

 もしかして貯まってたEPって、俺のEPじゃなくて、華琳ちゃん自身の……魂?

 

「言わなかったかしら? あの箱にいる人形の全て、元は人であったものよ」

 そ、それって、人をゲームの景品として遊んでいるってこと?

 なんかひどいな。そんなゲームをしてしまったことにちょっと自己嫌悪。

「いったい、どうしてぬいぐるみなんかに?」

 それがわかれば、俺のスキルを使わなくても元に戻せるかもしれない。

 ……そうなったら俺との約束、守ってくれるかなあ……。

 俺が必要なくなったら、話もしてくれないんじゃないか?

 華琳ちゃんの部下は俺との約束なんて認めない可能性が高いし。

 

「わからないわ。気づけばいつのまにか人形にされていて、あの箱に押し込まれていた」

 華琳ちゃんの話を聞きながらも俺は考える。

 クレーンゲームから全員を出さないで引き延ばすか?

 いや、元に戻った華琳ちゃんなら自力でGPを稼いで全員救出してしまうかもしれない。

 なら、ずっとぬいぐるみのままでいてもらう?

 ……それでは意味がない。

 考えろ、考えるんだ。

 

 これは最後のチャンスなんだ。

 俺を「主と認める」って、「好きにしていい」って約束してくれたんだ。

 この呪われた顔の俺と!

 こんな機会はもう二度とないに違いない。

 ギャルゲーのキャラとか非現実的な娘だって構いやしない。俺にそんな約束をする時点でぶっちぎりに非現実的だ!

 逃してなるものか!!

 

「煌一、あなたの妖術ではなくて?」

 名前で呼ばれただけで照れくさい。頬が熱い。マスクで隠してなければ赤面しているのがバレているだろう。

 こんな幸せな気持ちを絶対に手放したくない!

 ……夢でもちゃんと眼鏡とマスクしててよかった。

 

「どうだろう? 成現を使ったことで見ている夢ならコンバットさんが出てきてないのもおかしいし、……か、華琳ちゃんに成現を使う前からこの夢は見ている」

「そう。……では、煌一の妖術について教えなさい」

「妖術じゃないと思う、たぶん。固有スキルっていって最初っから持っている能力、かな」

 MPで使っている時は妖術でいいかもしれないけどさ。

「そもそもその固有すきるとはなんなの?」

「固有スキルは一人一人違うスキルなんだ。で、俺の固有スキルが成現ってわけ。詳しい能力は現在調査中」

 まだキャラシートにはスキル名しか表示されていない。

 使用条件は少しはわかってきたけど、まだなにか勘違いしているかもしれない。

 せめてレベルと熟練度ぐらいは見せてほしい。

 

「調査中? 自分の能力なのに?」

「だってこっちにきて初めて、そんなもの持ってるなんて知ったんだし」

 言いわけついでに俺は、使徒としてこのサイコロ世界に召喚されたこと、その前は一般人だったこと、呪われた顔で苦労してることなどを説明した。

 つまらない話だろうけど、俺のことを華琳ちゃんにわかってほしかった。

 

「呪われた顔ね。見せてごらんなさい」

「絶対嫌!」

 寝る時に眼鏡を外すのを忘れることが多い俺は、まだ素顔は見られていないはず。その証拠に、こんなにちゃんと話をしてくれている。

 もし見られたら最後のチャンスも失われてしまう。

 

「呪いといっても別に死ぬわけではないのでしょう?」

 意味もなく女の子に嫌われまくる気持ちなんてわかるわけないか。

 俺の嫌われっぷりを不思議に思った友人が何人かの女の子に聞いてくれたけど、みんな「顔が嫌い」って言ったらしい。

 ……迷っていたけど整形しとけばよかったかなあ。でも、それでも駄目だったら俺、打つ手なしって自殺していた可能性が高い。

 あ、もしかしたら整形してても病室のベッドの効果で元の顔に戻っていたかも。プラモ作ってる時にできた手の傷痕が、綺麗さっぱりなくなっていたし。

 

「死ぬほど辛い! 好きだって言ってくれたのはみんな男だったんだよっ!」

「ならば男とつきあえばよかったのではなくて? 同性も悪くはないわ」

 そりゃ、天下の女の子を独り占めにするために大陸制覇を目指していた華琳ちゃんならば同性もありなんだろうけどさ。

 ……あれ? それは無印の方だっけ?

 ぬいぐるみや、この華琳ちゃんは真の方の衣装だから違うのかな。でも真でも女の子狙ってたしなあ。

 

「俺だって女の子の方がいい」

「嫌われるだけなのに?」

「はっきりいって俺は結婚というものにあこがれている!」

 思わず、強くて悪い砂漠の人の言葉を借りてしまった。

 でも、これは俺の本心。

 そして俺の呪いの解決策……になるといいなあという願い。

 

「あら、結婚すれば呪いの対象外にでもなると計算しているのかしら?」

「う、うん。家族には呪いの効果がない」

 ぎくっ。すぐに目論見がばれてしまった。

 

「自慢じゃないけど、俺の弟はかなりの美形なんだ。で、俺に告白してきた男も美形ばかりだった。たぶん呪いの効果が大きいんだと思う。でも、弟には呪いは効かなかった」

 ベタベタ触ってきたり、一緒に風呂に入りたがったりとスキンシップ過多で身の危険を感じることがないでもなかったけど、あいつはちゃんと嫁さんを貰った。だから俺は対象外!

「母親だって俺を嫌ってない」

 でもお袋じゃねえ。

 弟の嫁には実は会ったことがない。

 俺が嫌われるせいで弟の結婚がご破算になっても困るし、ちゃんと家族扱いになって呪いの効果がなくても俺が辛い。俺に普通に接してくれる女性なんて惚れちゃいそうだからさ。

 だから結婚式にすら参加せずに実家を出た。

 

「そっ、それよりも今度は君のことが知りたい」

 俺の素顔から華琳ちゃんの興味をそらさないと!

「私のこと?」

「う、うん。ある程度は知っているんだけど……」

 恋姫†無双のシリーズは3本ともプレイしたし、コンシューマー版も持っている。

 真の魏ルートは好きだから何周もした。

 だから、聞くのはまずこれかな?

「ええと、北郷一刀って知ってる?」

「私のことと言いつつ、聞くのはそれ? やはり男の方がいいのではなくて?」

「ち、違うから! 後で詳しく説明するけど重要なことなんだって」

 この華琳ちゃんが真・魏ルートや萌将伝の出身だったら、俺は寝取る覚悟をしなければいけない。

 本当は処女厨な俺だけど、贅沢を言えるような体質ではないしね。

 ……公式でち●この異名を持つ18禁ゲーの主人公から寝取るって……この魔法使いな俺が寝取るって……無理がありまくりだけどさ。

 

「重要ねえ。麗羽の飼っていたあの男が?」

「え? れ、袁紹のとこにいたの?」

「そうよ。……そういえばあの箱の中にはいなかったような?」

 嘘!?

 袁紹のところにいたということは漢ルートなの?

 ラッキー!

 もし、真・恋姫†無双の漢ルートとは違う流れから来た華琳ちゃんだったとしても、この感じでは北郷一刀との関係はないだろう。

 これぞまさしく神が与えたもうた最後のチャンス!

「俺、神様信じるっ!」

 使徒やってもいいかもしれない!!

 

「神様?」

「うん。漢ルートってことは、赤壁で敗れて……」

 れれ? その後は魏キャラはどうなったんだっけ? 呉ルートだったら卑弥呼に案内されて大陸から出たはずだけど、漢ルートの卑弥呼はそんな素振りなかったはず。

「……ええ。大陸を脱し、新しき天が広がる大地を目指したはずなのだけど……人形にされ、このような奇怪な地にきたのも天意、あなたの言う神様の意向なのかしら」

 俺の質問に一瞬暗い表情になる華琳ちゃん。負けたのが悔しかったのかな?

 俺が召喚されたのは未熟神とはいえ一応は天意になるのかもしれないけど、華琳ちゃんの場合はどうなるんだろう?

 

「んん? でも、北郷一刀のぬいぐるみはなかったけど、魏以外の国の武将や軍師のぬいぐるみもあったよ」

 そうだ。ほとんどの恋姫キャラのぬいぐるみがあったはずだ。

「そうね。いったい何があったのかしら?」

 ありそうなのは無印恋姫に出てきた悪役の二人の男が仕業。あの二人のぬいぐるみはなかった。

 無印にしか出てこなかったからぬいぐるみがないのかな、ってあの時は思ったんだけど。

 漢女二体のはあったのにね。しかも取りやすい位置に置いてさ。欲しくないから狙わなかったなあ。

 

「ふむ。煌一は私たちのことに詳しいようね」

「う、うん。……君たちは有名だから」

 ゲームの登場人物だから、なんて言ったらショック受けるかな?

 いや、信じてくれないかも。

「ええと、俺のいた世界じゃ君たちは何百年も昔の人物で、いくつもの物語が作られている」

「物語?」

「題名は三国志。たぶん君たちとは別の世界なんだろうけど似ているんじゃないかな?」

「別の世界と言う根拠は?」

 ゲームだから、じゃなくて……うーん。

 

「俺の世界の曹操は男だよ。劉備も孫権も、ほとんどの武将が男」

「たしかに別の世界の未来の人間のようね」

 納得してくれたのかな?

「でも、創作で武将が全部女性の話が作られていて、それと君たちが凄い似ている。もしかしたら、君たちの世界からきた人間が書いた話なのかも知れない」

 そういうことにしておこう。これなら華琳ちゃんたちのことを詳しい言いわけが立つでしょ。

 

「似ている?」

「華琳ちゃんは辛いのが苦手。夏侯惇はバカ可愛くて夏侯淵は姉よりもしっかりしている。荀彧は猫耳軍師。許緒は小さいけど怪力で典韋は料理上手」

「……あっているわね。他には?」

「ええと、郭嘉は鼻血が多くて程昱は変な人形を頭に乗っけてる。楽進は真面目、李典は絡繰好き、于禁はお洒落好き。張遼は戦好き」

 これで魏ヒロインは全部だよね。

「どんな物語か興味深いわね」

 思わず華琳ちゃんから目を逸らしてしまった。18禁ゲームだなんて言えるわけがない。

 

「どんな物語なのかしら?」

「そ、それはね」

「言いなさい!」

 うっ。ぬいぐるみん時とは比べ物にならない殺気。

 でも可愛い! 今度は目が離せない。

 

「じ、実はね……」

「実は?」

「せ、性的な話なんだ。さっき聞いた北郷一刀が主人公で三国志の武将たちとの情事があって……」

 って、コンシューマー版の方で説明しておけばよかった?

 でもあれ、エロシーン差し替えたとこが残念な出来であんまり好きじゃないしなあ。

「興味深いわ!」

 あ、そこ食いつく?

 さすがだ。

 

「じゅ、重要なのはそこじゃなくて」

「最重要なのではなくて?」

 たしかに18禁ゲームの目的からすればそうなんだけどさ。

 俺がこれ以上18禁部分を女の子に話すのは拷問に等しい。既に顔が滅茶苦茶熱いし。

「北郷一刀が所属する陣営によって話が変わるんだ」

「内容が変わる物語?」

 よかった。興味の矛先が変わった。

「やってもらった方が早いかな。もう少し元に戻る時間が延びたら試して」

 持ってきたノートパソコンにインストールしてある……あ、起動ディスクいるんだっけ。

 

「もっと効率的に時間は延ばせないの?」

「効果時間はこれ以上はちょっと思いつかない。できるとしたら他のステータスの強化の方かと」

 回復時間があるからMPはたぶんこれが最善だと思う。

 MPが全回復する薬とか、個室のベッドなら回復速度も上がるけど有料だ。

「すてえたす?」

「筋力とか敏捷力とかの能力値。能力値は使うごとに鍛錬度ってのが貯まって、それが一定に値になると、その能力値が上昇するんだ。MPは成現を使えば一気に全消費できるから鍛錬度の上がりもいいみたいですぐに貯まっている」

「えむぴい?」

 横文字台詞に首を傾げる華琳ちゃんも可愛いな。

「マジックポイント。魔法やスキルを使う時に消費する値、でいいのかな。GPのかわりにこれを使って俺のスキルを使っているんだ」

 マナって言うと華琳ちゃんたちには別のものになっちゃいそうだ。

 

「資金のかわりにそれを使っていたのね。私が戻っていられる時間が延びているのもそれが増えたからね」

「うん。最初は2桁だったMP最大値が寝る前には10000を超えてた」

「そこまで増えてもあの短い時間なのね」

 MPだとコストパフォーマンスが悪いよねえ。

 GPだと永続……だといいなあ。その分高いけど。

 

「MPを使いきったら完全に回復するまでにはあのベッドで1時間かかる」

 最大値が増えてもかかる時間が同じというのは有難いな。

 2桁の時も同じ時間かかったって考えると損してた気もするけど。

「ならば、その1時間を有効に使いましょう。ただ寝ているだけではもったいないわ」

「うん。他のステータスも使っておいた方が得だと思う」

 ネトゲやソシャゲで全回復するレベルアップ前にMPや攻撃ポイントを使いきるみたいにさ。

「上げやすそうなのはHPかな。生命力のことなんだけど、ただ、痛そうなんだよねえ」

 筋力とかスタミナは痛くなさそうだけど、腕立てとか走りこみ等、トレーニングする時間がかかる。

 

「痛そう?」

「HPを使うってことは傷を負うってことだから。HPが零になるとたぶん死ぬから加減も考えないといけないし」

 軽い打撲とか試して、少しずつ増やしていくしかなさそう。

 HPは回復時間がかかるけど、MPといっしょに鍛えられたら効率いいよね。

「煌一が死なない程度に傷つければいいのね」

「え?」

 ……もしかして余計なこと言っちゃった?

 華琳ちゃんの目が輝いている気がする。

 

「あ、あの」

「武器はないの? ……そう。素手でも問題ないわ」

 なんか凄いやる気になっているし。

「せっかく元に戻った短い時間を無駄にするよりも、煌一の強化のために有効に使いましょう!」

「ちょ、ちょっと待って!」

 痛いのは勘弁してほしいんですが!

「安心なさい。ちゃんと手加減してあげるから」

 にっこりと微笑んだ華琳ちゃんに見惚れてしまい、俺はなにも言い返せなくなっていて。

 

 

「マジですか……」

 気づけば朝になっていた。

 どうしよう?

 そりゃHP上がるんなら必要なことかもしれないけど。

 でも、痛いのは……。

 

 EPも回復してしまうベッドの効果か、ネガティブな思考は長続きできない。

 ……逆に考えよう。自分で怖がりながら傷つけるよりも、美少女にやってもらう方がよくないか?

 武器を使わないってことは、直接華琳ちゃんに触れられるわけだ。

 女の子とのスキンシップ! 喜ぶべきじゃないか!!

 

 ……はあ。

 無理矢理ポジティブシンキングしようとしたけどやっぱり気が重いなあ……。

 

 念のためにマニュアルで死亡時のことも調べてみる。

 死亡時、死体は死んだ場所に残して魂がスピリットとして本拠地に召喚される、というのは涼酒君に聞いた通りだ。

 その際、召喚料として能力値に応じたGPを接収されるらしい。デスペナだね。

 そして、死体にスピリットが接触できればその場で完全復活。死んだ時の装備も戻るとのこと。

 死体からアイテム奪われたりはしないのか。それは助かるかも。

 もし、死体回収が無理な場合は、本拠地で新たな身体を用意することもできる。もちろんGPを取られる。

 ……クローンボディ?

 

 その時は能力値やスキルレベルはそのままだけど、鍛錬度、熟練度がゼロになり、死体が装備していたアイテムは戻らない。

 こりゃがんばって死体回収した方がいいか。

 死なないのが一番だろうけど、俺弱いしなあ。

 最終な幻想の2みたいにパーティーアタックで華琳ちゃんに鍛えてもらうしかないのか。

 

 

 これ以上変な性癖に目覚めないといいなあ……。

 

 


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