真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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65話 義姉妹

 風呂はいい。

 風呂は命の洗濯って言ったのは特務機関の作戦部長だっけか。

 

 風呂はいい。

 何人も入れる大きな浴槽だというのに、雪蓮に抱っこされて入浴しているという状況なのは謎だが。

 

「あんなにさせといて、子供扱いするな」

「えー」

 えーじゃない。おっぱいを押しつけないでくれ!

「まだ物足りないのか?」

「んー、余韻を楽しんでるかな?」

 なんで疑問系?

 まあ、もう1回と言われなくて助かったけど。

 

「わたしの火照りのこと、知ってたのね」

「うん」

「……ねえ、なんで穏と稟の体質は対抗策とったのに、わたしのはほったらかしだったわけ?」

 答えるつもりはないとの意思表示に、口元まで湯に浸かる。

 湯船の中で喋ってるかのごとく、口から息を出す。ぶくぶく。

 忘れてたって知られたら怒られそうだから。

 

 本当に忘れていたのだ。

 俺は真・恋姫†無双の雪蓮の拠点イベントは1回通しでやっただけ。他の娘は何周もしたのにさ。

 雪蓮は死んじゃうんで悲しくなるもん。

 あと、非処女ってのも大きな理由。中古に興味はありません!

 でも、こんなこと言えないよね。

 

「ふーん」

 雪蓮も真似してぶくぶくとやってるのか、俺の後頭部が変な感じ。

 怒ってないのかな?

 ……勘がいいという雪蓮のことだ。たぶんなにか気づいてるんだろう。

 

「ぶはっ」

 息苦しくなって頭を上げる。

「たしかにその体質なんとかしないと……」

「……煌一はやっぱり嫌?」

 どうなんだろう。男としてはあんなに求められるのは悪い気もしないのはたしかなんだけど。

 俺の嫁さんなわけだし、辛いのなら楽にしてあげたい。

 

 でも、なんか違う気もする。

 大切な人とすれば収まるんだっけ?

 誰でもいいわけじゃないのがわかってたってことはさ、1度はその誰でもいい誰かとしちゃったってことだよね。それで大切な人とじゃないと駄目なのがわかったはず。

 近くにいた親衛隊の女性兵士だといいなあ。まあ、もしも男だったとしても、その記憶も雪蓮の身体もリセットしちゃってるから気にはしないけど。確認しようもないしね。

 

 ああ、こんなこと考えるなんて俺って小さい男だ……。

 でも、嫁さんの初めての男は俺じゃなきゃ嫌だし。というか、最初から最後まで俺じゃなきゃ駄目。

 これってたしか処占(処女独占)厨だっけ?

 

「雪蓮とエッチするのは嬉しいけど、よくわからん興奮の対処療法的なのは嫌かな」

「そんなもんなの?」

「ええと、例えば俺が他の女の子の裸で興奮しちゃったから雪蓮に解消して、って頼んだらいい気しないでしょ?」

 我ながらどうかと思う例えだ。

「それは微妙ね……怒るかも」

 わかってくれたのか、抱っこされたままの俺には雪蓮の顔が見えないけど声は小さかった。

 落ち込ませちゃったかな?

 

 なんとかしてあげたい。これからもっと激戦が予想されるし。その度に興奮してたら大変だ。

 でも、1度成現(リアライズ)しちゃってるから、穏や稟とは違って設定改変できないし……。

 ……待てよ? 穏と稟のは体質改善はMPを消費するスキル扱いになっていた。たしか、興奮抑制ってスキル名だったはず。

 なら、雪蓮もそのスキルを覚えればなんとかなるかもしれない。

 

「雪蓮、解決できるかもしれないからあとで特訓しようね」

 今はいいよね。疲れてるから。

「本当に?」

「たぶんね」

 そう言った直後、ぎゅって抱きしめられた。

 柔らかくて気持ちよく、そして、痛いほど強く。

「うん。あんた最高!」

 これだけ喜んでくれるってことは、気にしていたんだろうなあ。

 そう、薄れ行く意識の中で思った。

 

 

 のぼせた扱いで自室の布団に横たわる俺。

 正確には雪蓮に絞め落とされたんだけど、秘密にしておこう。

 このまま寝ちゃおうかな?

 ……夕食は食べなきゃまずいか。

「あ、十兵衛を迎えにいかないと」

 

 そう思って着替えて部屋を出たら十兵衛がいた。

「ふむ。やはり待っていればよかったかな?」

 俺の独り言を聞かれていたらしい。恥ずかしい。

「もう目は治ったので、寝ながら待つのも退屈して帰ってきてしまったよ」

「おかえり。本当にちゃんと治ったの?」

「ほら」

 つけたままの眼帯をくいっと持ち上げる。そこには健康な左目が。よかった。傷跡も綺麗に治っている。

 

「それなら眼帯はいらないんじゃない?」

「トレードマークというわけでもないが、ないと寂しいのだよ」

 俺の眼鏡みたいなものだろうか?

「1人で帰ってきたの? 大変じゃなかった?」

「なに、大江戸学園の拠点を使ったらそれほど大変ではないよ」

 十兵衛1人ならいきなり駅に現れても騒ぎにはならないか。隠形も覚えているし。

 ゲートや拠点のWP機能を使えばポータル覚えてなくても転移はできる。病院に残すために十兵衛は小隊に入ってなかったから小隊長扱いで使えたのだろう。

 この屋敷内に拠点がほしいなあ。

 路面電車を延長して終点にすれば拠点にならないかな?

 ……冗談でもそんなこと言ったら柔志郎がその気になるかもしれないか。止めておこう。

 

 今回は待ってないでいいからと、みんなに先に夕食をとってもらっている。

 俺が行くまで待たせていると、かなり気が引けるもん。

 食事前に俺は剣の訓練。少しは強くなっているといいけど、ビニフォンの熟練度表示しか実感がない。

 俺は魔法やMP使用するスキル以外は成長度は普通か悪いようだ。そのせいもあって魔法使いが捨て辛い……。

 それでも十兵衛は指導してくれるのでありがたい。

 

 

「ごめんね、もうかたしちゃったのに」

「いえ、兄様に食べてもらえない方が困ります。ちゃんと食べてください」

 可愛い小言とともに流琉ちゃんがご飯をよそってくれる。

 できた嫁さんだ。梓に匹敵する主婦力でありながら口うるささはない。流琉ちゃん、そのままでいてくれ。

 いや、梓も可愛いしあの気安さも嬉しいんだけどね。

 

「おかわり!」

 俺の隣ではすでに食後だったはずの食欲三魔神が椀を重ねている。

「もう、兄様の分がなくなっちゃう」

「いいよ。1人で食べるのは寂しいし」

 ちょっと前まではそれが当たり前。寂しさを誤魔化すために見たい番組がなくてもテレビをつけながら食事してたっけ。

 だから、みんなと食べるご飯は本当においしい。この娘たちの食費、がんばって稼がないとね。

 

 食後はみんなにゾンビやトウキョウの感想を聞いてきた。

 やはりショックが大きかったようで、今晩は1人で寝る娘は少ないらしい。怖い夢を見ないといいけど。

 部屋に戻った俺は、姿見を見ながら変身練習。

 雪蓮の相手もこの姿ではしんどすぎた。早く元の姿に戻れるようにならないと。

 

「……駄目か」

 変身魔法のスキルレベルは上がっているのに、やはり元の姿に戻れない。

 イメージが大事なんだろうけど……。

 俺の固有スキルからいってもその辺の妄想力はあるはず。

 試しに華琳に変身したら、あっさりと成功してしまった。姿見に映った姿もとても可愛らしい。

 

 他の嫁さんたちにもチャレンジしたが、だいたい成功した。

 さっき見たばかりの雪蓮の姿のまま悩む。

 こんなに簡単にイメージできるのになんで自分本来の姿になれないんだろう?

 

「あ! ……そうか」

 俺が俺自身をイメージできないのは当然か。

 俺は自分が大嫌いだったから。女の子に嫌われる自分の姿が。

 だから自分の顔なんてはっきりと覚えてないのかもしれない。

 

 落ち込んでいたら、もう時間になったのか今夜の当番がやってきた。

「夜伽にきてやったのじゃ!」

 レーティアが連れてきたのは予想通り、彼女の義妹となった美羽ちゃんと七乃。

 2人は部屋に入るなり固まった。

 

「そ、孫策?」

 ガタガタブルブルと震える美羽ちゃん。

 あ、まだ変身したままだった。慌ててPoMっと変身を解除する俺。

「こ、煌一?」

「うん。驚かせちゃってごめんね?」

 俺が抱きしめると、やっと震えが治まってきた。

 なのにさ。

 

「お嬢様、その煌一さんは孫策さんが化けてるのかもしれませんよー」

「な、なんじゃと!?」

 また震えだしちゃったじゃないか。

「ゲッベルスより性質が悪い……」

 レーティア、ジト目で七乃を見る気持ちはわかるよ。

 でもたしか、ゲッベルスって君の恥ずかしい姿がプリントされた記念コインを販売するような宣伝相じゃなかったっけ。どっこいのような……。

 

「七乃、これ以上美羽ちゃんを怖がらせたら……」

「どうするんですかー?」

「1週間美羽ちゃん禁止、七乃だけ呉屋敷で暮らしてもらうよ」

 このままずっと美羽ちゃんに怖がられるなんてことになったら、絶対に許さない。

「横暴ですー」

 美羽ちゃんの教育のためにはそれが一番だと思うけどなあ。

 

「美羽、そいつは煌一だから安心していい」

「おお、れーてぃあ姉さまがそう言うなら本物じゃな!」

 やっと落ち着いてくれたか。

「うぅ、私よりもれーてぃあさんの方を信用するなんて……これが寝取られるってことですかー?」

 悔しいんだか余裕があるんだか。……あのうっとりした顔からわかるのは、七乃は変態だってことぐらいだ。それも、俺とは違うベクトルで。

 

 レーティアたちも冥琳から雪蓮の事情を聞いていたようで、俺が疲れていると判断され今夜もいっしょに寝るだけだった。

 ありがたいけどちょっと残念。美羽ちゃん相手だったら死ぬ気でがんばったよ、俺。今のサイズならちょうどいいと思うし。

 ……ジュニアだけ元のサイズに変身ってできないだろうか? MPを全部、みんなの成現時間延長に使っちゃったから今は無理だけど、あとで練習してみるかな。

 元のってどんくらいだっけ? オリジナルより大きくしちゃうと、見栄はってって白い目で見られるかもしれないから難しいかも……。

 

 

 翌日。

 貰った刀を忘れずに佩いて登校すると吉彦もクラスにきていた。もう回復したようだ。桃子も喜んでいるだろう。

「天井さん、お世話になりました」

「いや、君の妹さんのおかげだよ。元気になったようでなによりだ」

 握手は求めてこなかった。契約空間のことや徳河の人間と契約したくないことを光姫ちゃんから聞いているのかもしれない。

 

 授業は滞りなく終わり、屋敷に戻った俺たちは使徒としての活動開始。

「今日はぽーたる訓練です」

「やはり、みなさんが覚えた方がいいと思います」

 朱里ちゃんと雛里ちゃんが説明している。

 軍師や華琳たち君主と話し合って今日の予定を決めた。

 すぐには無理でも2、3日かかっても全員に覚えさせるという。これには、不慣れなスキルの習得にどれぐらい時間がかかるかを確認したい、との理由もある。

 育成計画は、いつのまにか俺の手を離れていたらしい。……最初っからそんなものはなかった気もするけどさ。

 

 すでにスキルを覚えている梓、稟、月ちゃん、詠は家事担当で残ることになった。

「あたしがいないからって、また嫁さん増やしてくんなよ」

「これ以上どうしろっていうのさ」

 梓たちにばかり負担をかけるのも気が引ける。早く帰ってきて俺も夕食の準備をしたい。

 

「オレたちは新しい拠点を目指すッス」

 今回は柔志郎たちも出陣する。

 キタセンジュが新たな拠点となったので他の駅も起動させたくなったようだ。

「わかった。気をつけて。遅くなるようだったら連絡くれ」

「了解ッス!」

 

 俺たちは2面の開発部へと移動する。相変わらずの夜だ。ネオンは眩しいが。

「おおっ、ちょうどいいところに」

 開発部につくなり、十三たちに捕まってしまった。

 なんでも例の特殊便座が運営に好評で、多種族用のテストのためにもっと用意してほしいとのこと。

 

「巨人や小人、小妖精向けにいくつか用意したんだが、欲しがってる支部がバラバラらしくてな」

「できれば設置までしてくれっていうのよ。こっちは時間が惜しいってのに」

 ああ、それは面倒だろうな。

 さらに、電気や水道もなく魔法でなんとかしてる支部も多いらしい。

「煌一、行ってくれるか?」

 ……そりゃそういうスキル持ってるけどさあ。わざわざ行くのはちょっと。

 運営の人なんて気を使う相手は、そう知り合いにほしくない。名刺交換するにも、まだ名刺つくってないし。

 

「設置してもさ、テスト用のだよね」

「ああ、モニターしてくれるっていってる」

「ならさ、問題があってもなくても、何度かそこへ行かなきゃいけなくなるよね?」

 設置して終わりというわけではないだろう。

「うむ。そうなるな」

 そんなのは勘弁してほしい。

 ……設置しないで、持ち運ぶか。

 

「便座だけじゃなくて、トイレつくっちゃおう」

「え?」

「移動できるのをさ。ほら、仮設トイレだっけ?」

「ああ、工事現場にあったようなやつか」

 あれなら、スタッシュで持ち運べるはずだ。

「あのガワに照明や稼働用の電気、貯水タンクを仕込めばいいんじゃない?」

「ふむ。排泄物の処理をなんとかして、水を再利用できるようにすれば……いいかもしれんな」

 再利用って濾過するの? それは気分的に微妙かも……。

 水が貴重なとこなら当然なのかな。

 

「外側のボックスは使用中に襲われてもいいように、最高の強度を持たせてみるのもいいな」

「いや、避難所がわりにされるのはちょっと。強度を過信されてトイレで死なれるのも可哀想だから、ほどほどでいいんじゃない?」

「そんなもんか?」

 こっちにPL法があるかは知らないけど、あとからそんなクレームがきても困る。

 簡易トイレにミスリルやオリハルコンといったファンタジー金属なんて、もったいないでしょ。

 

「必要なのは照明と自動で消臭、殺菌がかかる機能、あと透視や念写等のノゾキ対策じゃないかな」

「音洩れと盗聴の対策も必要よ」

 チ子が追加してきた。やっぱり音も気になるのか。

 音楽流すのが早いだろうけど、魔法で音を遮断ってのもいいかもしれない。

 

 音が外部に洩れないなら、そこですることもできるか。トイレでのプレイってのもいいかも。

「少しぐらい広くしておかないと、武器や鎧も置くだろうし」

「スタッシュに入れればいいんじゃない?」

 いや、2人入れないと……。

 最中を見られても困るな。

「鍵がしっかりかからないとまずい」

「それもそうね。魔法での解錠も簡単にはできないようにしないと」

 あとはシャワーがあれば……あれ? なんだか目的がすり替わっちゃったか。

 仮設シャワーはトイレが出来上がってから、その技術を応用すればすぐにできるだろう。

 

 だいたいの案がまとまるとすぐに、ドワーフたちはボックスの製作に、エルフたちは使用する術式をこめた部品の準備にかかった。

「みんな乗り気だね」

「これは売れる! というより私が欲しいわ」

「出陣中のトイレというのは大変なんだよ」

 ヘンビットも頷く。

 そりゃそうか。トイレ完備のダンジョンなんて違う気がするし。

 ……うちの嫁さんたちも喜ぶだろう。翠や桂花とか。

 

 俺はできることもなさそうなので、トイレ班とは別にペストXさん製作のレーティアやポータルマスター済みの娘たち以外と工場の外へ。

 残って作業を見学したがった真桜ももちろん連れてきた。

「隊長のいけずー」

「ポータル覚えたら、ここに通ってもいいから」

「ホンマか!?」

「うん。真桜には武器を作ってもらいたい」

 ここの設備なら作れるだろう。

 ドワーフたちから話も聞けるかもしれないし。

 ……素材を融通してもらいたいなあ。さっき浮かんだミスリルやオリハルコンってあるのかな?

 サービスセンターで売ってるといいけど、なければトウキョウのホームセンターや町工場で鉄やアルミを探すことになりそう。

 あ、ESD製の武器ってのもいいかもしれないな。うん。零戦にも使われた超々ジュラルミン。後で組成を調べてみるか。

 

 真桜もやる気になってくれたので、ポータル特訓。

 途中、休憩も入れながらポータルをくぐるだけの単純な作業を3時間ほどやった。

 ……飽きたな、これ。

 でも、俺はポータルの再展開や、全員が戻ってきてるかの確認もあるので、別の作業をやりながらってわけにもいかない。

 

 で、今回マスターしてくれたのは十兵衛と光姫ちゃん。さすがは元から現役学生だったことはある、のかな?

「ふっふっふ。零れべるは覚えたんや。もうすぐであっちで作業できるようになる!」

 やはり軍師以外は魔法スキルの覚えは悪いか。それでも真桜が0レベルで入手したってことは知力が関係してるんだろうな。それともやる気?

 他の娘たちも数人が0レベルで習得してくれたので、時間をかければ全員ポータルを使えるようになるかもしれない。

 

 

 屋敷に帰って夕食の準備。そして夕食、剣の稽古、入浴といういつもの流れ。

 もう少し時間が取れるようになって、みんなとの時間を増やしたい。

 アパートの頃のように食後にアニメ鑑賞会をしたいな。今度はマクロスを。

 このあっぱれ世界のネットも少し触ったけれど、恋姫†無双もマクロスもないらしい。ガンダムはあるのに。

 嫁さんたちが騒がれないのは助かるけど……って、じゅうぶん騒がれてるか。注目されてたね。

 

 プラモも作りたいなあ。霞にバイクも用意しなきゃいけないし。

「バクシンガーあったっけ?」

 あれなら翠や蒲公英、白蓮にも渡せる。でも、巨大化するからMP足りないか。

 ジャングラーもいいな。野生の勘を持つ娘なら乗りこなしてくれるだろう。

 

 コンコンコンコン。

 ノックの音で妄想から帰還する俺。

 いかんな。EP籠めでもないのに無駄使いするとは。

 まあ、作業じみた妄想じゃないから、EPは減ってないか。

「どうぞ」

 俺の返事で入ってきたのは今晩の当番である梓と2人の少女。

 もちろん俺の嫁さんなわけなんだけど、予想外の2人だった。

 

「凪と亞莎ちゃん?」

「は、はい!」

「よ、よろしくお願いします!」

 緊張してるなあ。なんでこの2人なんだろう?

 俺は梓が連れてくるのは、性格が似てそうな翠か、不遇という共通点がある白蓮と華雄、って予想してたんだけど。

 凪は俺の素顔を見られた時にがんばってくれたから、梓も認めているのでわからないでもないけど、亞莎ちゃんはどこで?

 

「なんでって顔してるな」

 うん。顔に出ちゃったか。

「ほら、2人とも教えた通りに」

「は、はいっ! ……こ、こういちさん」

 梓に促されて凪が俺を呼ぶ。消え入りそうな、いつもとは違う呼び方で。

 なんだろう、いったい?

 

 その答えは次の亞莎ちゃんで判明した。

「こ、こういちお兄ちゃん……」

 恥ずかしいのか、顔は真っ赤だ。

 俺もなんとなく照れる。でもわかった。

 

「楓ちゃんと初音ちゃんか」

「正解! この2人さ、なんとなく似てる気がすんだよね」

 そりゃ中の人同じだし。でも、性格や外見は違うでしょ!

 楓ちゃんと初音ちゃんは梓の妹で、梓と同じく『痕』のヒロイン。

 2回目のリメイクやメーカーさんの作品ごちゃ混ぜの格闘ゲームで声がついたんだけど、そういやそうだったか。

 

「梓、寂しいのか? その……家族と会えなくて」

「……あの子たちに会えなくて寂しくないったら嘘になるけどさ、家族はたくさんいるから」

 凪と亞莎ちゃんの頭を抱えるように自分の顔も合わせて。

「今はこの2人もあたしの妹だよ!」

 いつの間にそんなことになったんだろう。

 華琳とヨーコとクランの義姉妹、レーティアと美羽ちゃんの義姉妹を見て羨ましくなったのかな?

 

「2人はそれでいいの? 梓の妹の身代わりみたいなもんだよ?」

「はい。梓様の妹になりました」

「こら。梓様じゃなくて姉さんだって言ったろ」

 凪の頭を軽く小突く自称姉さん。

「梓さ、梓お姉ちゃんにはよくしてもらってます」

 言い直した亞莎ちゃんはさらに赤くなった。

 可愛いなあ。

 

「この2人が楓や初音じゃないのはちゃんとわかってるって。それとは別の追加の妹だよ」

「よくわかないけど3人がそれでいいのなら……」

 長女担当いないけど? ってツッコミを入れるかどうか迷うなあ。

 

 




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