真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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66話 幻痕

 凪と亞莎ちゃんが梓の義妹になってしまった。

 楓ちゃんと初音ちゃんの中の人つながりらしい。

 亞莎が初音ちゃん……阿蒙モードが反転初音ちゃんっぽかったりするんだろうか?

 

 梓の前で義妹としちゃうのは変な気分だった。

 いや、もちろん後ろでだったけどさ。

「この2人なら許せる」

 梓はそう言ってたけど、それも自分に言い聞かせている感じだったし。

 やっぱり、嫁さん大増加をまだ怒ってるんだろうか?

 それともホームシック?

 

 梓以外の柏木姉妹も成現(リアライズ)した方がいいのかな。フィギュアはあるんだから……。 裏義姉妹丼後の賢者モードでそんなことを考えていたら梓に見すかされたらしい。

「楓たちを成現する必要はないよ」

「……そうか」

 そうだな。成現しちゃったらファミリアになってほしいし、さらには嫁にもって期待しそう。

 それに戦って貰うのも気がひける。『LEAF FIGHT 97』では戦っていたとはいえ、お玉でゾンビを倒す初音ちゃんなんて嫌だ。長女の千鶴さんは強そうだけどさ。

 

 ならばこれか。

 スタッシュからゲームディスクを取り出す俺。

 マサムネの元となった携帯ゲーム機用のソフト。内容を覚えてないほどのクソゲーなそのソフトにEPを籠める。

 数年待ったあの思いを、結局発売されなかったあの無念を、籠める。

 

 もう、みんなの一生分以上は成現時間延長してるはず。

 だけど最大MPは伸ばしたいので、みんなの時間延長をして残りMPを全消費している。

 今夜は梓が連れてきてくれた2人に驚いて、MPの全使用はまだ行ってなくまだMPが残っていた。

 そのMPでクソゲーのディスクを利用して成現してみた。

 

「できた!」

 けど、上手くいったのかな?

 スタッシュから携帯ゲーム機を取り出し、恐る恐るセットしてみる。マサムネではない。なにかミスってたらまずいからね。

 ゲーム機を起動させると、メーカーロゴの後に、懐かしいBGMが流れる。

「できた!!」

 今度こそ確信する。

 俺は幻のソフトを入手したのだと。

 

「なに? ゲーム?」

 梓が俺の手元を覗く。

 隠すものでもないので、見やすいように角度を変えてやる。

「……痕?」

 そう。これこそが発売中止になった幻の『痕』のコンシューマー版!

 18禁じゃない痕ってどんな話になってるのかな?

 

 

 エロシーンはなかったけど、そんなに話は破綻していなかった。俺の能力ってこんな使い方もあったのか。

 実現には至らなかった幻の作品を形にすることにMPを使うのもいいのかもしれない。富嶽とか。

「千鶴姉……」

 梓が泣いている。

 無理もないか。1周目は千鶴シナリオの千鶴死亡ENDだった。うん、痕のTRUE ENDってよくいわれるあれ。

 一緒にプレイを見ていた凪と亞莎ちゃんも泣いている。

「……うっ、うっ……」

「悲しいお話です」

 いやこれ、ちゃんと生存ルートもあるから。

 セーブを呼び出して、そこから再プレイ。分岐で別の選択肢を選んでHAPPY ENDを見せる。

 

「よかったです」

 今度は嬉し泣き? 凪も亞莎ちゃんも優しいなあ。

 梓もほっとした顔になっている。

「次は、あたしのルートやろうよ!」

「いや、もう遅いから寝ようって」

 気づけば深夜。日付はとっくに変わっていた。

 

「じゃあ、それ貸せ」

「この話は華琳様にも教えたいです」

「呉のみんなにも」

 むう。……プレイした感じではエロシーンはなさそうだから、問題はないかな?

 俺もこの感動をみんなと共有したい気はするし。

 でも、ソフトも携帯ゲーム機も足りない。トウキョウで入手できるかな。……新型の方だとこのディスク形式じゃなくなってるから、難しいかもしれないか。

 

「なら、データを取り込んで……」

 ノートパソコンを起動させて携帯ゲーム機と繋ぎ、ディスク内のデータを読み込む。

 これで成現時間が切れてクソゲーになっても問題はない。

 あとはこれを……どっちにしろ新型のゲーム機を用意しなきゃいけないか。なら、ビニフォンでできれば。

 ……変換アプリはさすがに成現できないか。なにかEPを籠める素材がないと……。

 

 結局、ビニフォンの空きスロットを使ってエミュレーション機能を追加してみた。ゲーム内容的にボタンそんなに使わないから問題ないだろう。

 ノーパからビニフォンにゲームのデータをコピーするとちゃんと動く。

 これでいいだろう。4人分のビニフォンの空きスロットに機能追加程度なら、それほどEPも消耗していない。久しぶりにやった痕の感動で回復もしてるみたいだし。

「これ、他のゲームもできるのか?」

「たぶんね。でも、やってるヒマないでしょ」

 俺たち、けっこうハードなスケジュールだもんなあ。梓は家事があるし、恋姫のみんなは勉強がある。さらには本業(クエスト)もある。

 

 俺だってプラモ作る時間ほしいよ。でも、鍛える時間削るわけにもいかないし。

「まあ、これならいいでしょ。そんなに時間はかからないし、こっちの文字の勉強と思えば」

 教育ソフトをビニフォンに入れるのもいいかもしれないかな?

 

 残ったMPをみんなのチョーカーの時間延長と貞操帯機能用のMPチャージに使って、寝た。

 MPを使う方法を考えないと。

 

 翌朝。梓は眠そうな顔をしていた。

 寝ないでゲームしてたのか。凪と亞莎ちゃんまで……。

「昨夜はずいぶんと激しかったようね」

 にっこり微笑む華琳が怖い。

 誤解です!

 

「これのせいだよ」

 ビクビクしながら華琳のビニフォンにも機能追加して、俺のビニフォンからデータをコピーさせる。

「痕?」

「梓の出ている話」

 あ、これなら恋姫もエロシーンなしのがビニフォンでできるな。あとで用意しておこう。

 

 

 授業中、MPの使用方法を考える。

 またメンバーを増やすか?

 いや、成現したいフィギュアはあるけど、これ以上人数を増やすのも大変だ。

 ならば武器か。武将たちの武器を成現して、剣徒となったみんな用の刃引きの刀に剣魂を破壊できる効果をつけて成現して……2、3日でできちゃいそうだな。

 

 ビニフォンの充電にもMPを使うけど、ビニフォンの機能にしか使わないからもったいない気がする。

 ビニフォンに攻撃機能をつける? なんか違う気がする。

 でも、魔法の武器にMPをチャージしておけば、使い手はMPを消費しないで特殊効果を使えるってのはいいかもしれないな。

 MPで充電するエネルギー系の銃もありか。うん。呪唱銃(スペルガン)作ろうか。

 

 休み時間、十兵衛が口説かれているのを目撃する。適当にあしらわれていたがなんかモヤモヤする。

 他の嫁さんたちも、ナンパされたりしてやしないだろうか?

 

 次の授業もそればかり気になって、授業内容もMP消費方法も集中できなかった。

 休み時間になると光姫ちゃんがやってきた。

「どうした婿殿、怖い顔をして」

「えっ?」

 顔に出ちゃっていたか。

 まったく俺ってやつは独占欲の塊だな。

 

「嫁さんたちがナンパされてないか、心配になっちゃって。ほら、みんな可愛いし」

「そんなことか」

「俺の嫁さんだって知らないやつもいるだろうし……」

 ん、そうか! 一目で俺の嫁だってわかればいいのか。

「この学園ってアクセサリーにもうるさくないよね?」

「まあ、派手なのもおるな」

 イヤリングやトゲ付きのブレスレットとかも取り締まられていない。

「ならさ、指輪は大丈夫かな?」

「なんじゃ、くれるのか?」

 うっ、そう正面から言われるとなんか照れくさい。

 思わず言葉につまってしまった。

 

「そ、そうか」

 光姫ちゃんも真っ赤になっちゃった。

 やっぱりそういう意味だって思ったよね。……そういう指輪を用意しようとしてるんだけどさ。

 左手の薬指におそろいの指輪が輝いていれば、俺の嫁さんだってわかってくれるよね?

 

 その後は授業中も休み時間も指輪のことばかり考える。

 こまめにMPをチャージできるのだったら、俺以外のみんなの最大MP強化にも繋がるだろう。

 問題はそのMPでなにをするかなんだけど……うーん、難しい。みんなに使いやすい機能ってなんだろう?

 

 チャージしたMPがそのままMPとして使えるのが無難かもしれない。

 悩んだ末に出た結論は、プレゼントよりも現金の方が嬉しいよね、的なものだった。

 でも、自分の最大MP以上にMPをチャージできて、それをいざという時に使えたらかなり便利な気がする。

 他の人がチャージしたMPを使えるようにしておけば、もっと便利だ。

 よし! これでいこう。

 

 

 放課後、昨日と同じく2面開発部に移動し、軍師たちに特訓のポータル担当を任せて、俺は十三に思いついた案を相談する。

「ふむ。そういうアイテムも売ってはいるが、チャージした本人しか使えんし、チャージできるMPも使用したMPの5割程度、貯められる最大量によっては価格もかなりのGPになる」

 あるのか、やっぱり。

 それなら参考にできる。

「その高いやつの素材は?」

「ミスリルやオリハルコン、だな」

 やはりそのあたりか。

 素材だけ買って自分で加工、成現しよう。

 

「ミスリルの加工? 素人にゃ無理だぞ。オリハルコンなんて金属加工レベル10は必要だ」

「げっ」

 生産系のスキルも使わなきゃ上がらないしなあ。ドワーフは上がりやすいらしいけど、俺は魔法以外のスキルはさっぱりっぽい。

 魔法使いのスキルなくなったら、マジでいいとこなしな気がしてきた……。

 

「ふむ。加工だけならドワーフに頼めばよかろう」

 そう声をかけてきてくれたのは、最近開発部に常駐しているドワーフの1人。

 名前はフライターク。武器よりもアクセサリーの製作を得意としているらしい。

「頼めるか?」

「ああ。お前のアイディアは面白い」

「いくらぐらいかかる?」

 試作型ビニフォンを電卓モードにして金額をはじく。

 う、けっこうするのね。

 

「格安だぞ」

「身内価格なのはわかるけど」

「それぐらいのGPならあるでしょ。仮設トイレの代金使えば」

 チ子もまじってきた。女の子らしくアクセサリーの話が気になるらしい。

「代金って、もうできたの?」

「おう。煌一たちがくるちょっと前に持っていったぞ。代金もちゃんと払っていった」

「ほんと、今までの運営とは大違いよね」

 いや、俺が驚いてるのは運営じゃなくて、製作スピードの方なんだけど。

 完成品見てみたかったなあ。

 

「このチーム、かなりすごいんじゃ?」

「現代ドワーフと現代エルフが協力すればこの程度、当然だ」

「ええ。それにレーティアの作業機械もよくできてるし」

 そりゃ俺の嫁さんですから。

「巨大ロボが見えてきておる」

 ドワーフやエルフ男たちが遠い目をしている。

 このチームなら近いうちに完成させても不思議じゃないか。

 

「でも、俺がその代金もらっちゃっていいの?」

「ちゃんと女神が計算して分配したから、文句はない」

「あんたのアドバイスがなかったら、あと数日はみんな運営回りしてたはずよ」

 ああ、みんなも運営行くのは嫌なのか。

 第666開闢の間(ここ)担当の前の支部長がろくなやつじゃなかったらしいから、運営にはいいイメージないのかもしれない。

 

「こんなに?」

 渡された金額を見て驚く。テストのための試作品を持って行った代金だよね、これ?

「運営も支部の設備は古いらしくてな、テストという名目でもないと新品にできんと愚痴っておった」

「それに、それでも安いぐらいよ」

「うむ。数年はメンテ費もらえんだろうからな」

 ああ、色んな事情があるのね。

 なら、いいか。

 

 ……でもトイレの代金で指輪購入ってのも……背に腹はかえられないか。

「フライターク、お願いするよ」

「うむ。数は」

「100よ」

 華琳?

 話を聞いてたの? できあがるまで秘密にしておいて、驚かせたかったのに。

 

「いくらなんでも多すぎでしょ」

「予備よ。またいつ増えるかわからないもの」

「増えないってば!」

 これ以上無理だって。

 今だって相当大変なのに。

 

「100よ」

「……わかった。形は同じでいいな。サイズ補正はサービスでつけておく」

「助かる」

 流されてしまった。

 まあ、そんなに場所を取るもんでもないからいいか。

 

 

「あ、仮設トイレの問題点が改良されたらさ、そのノウハウで仮設シャワーもいいと思ったんだけど、そこまでするならポータルで拠点や本拠地に戻るかな」

「海の家にあるようなやつね? それもいいかもしれないわ」

「うむ。救済を終え、そこの世界で暮らす使徒やファミリアも多い。そういった者たちに需要はあるはずだ」

 なるほど。俺たちも救済を終えてからの暮らしも考えないといけないか。……まだ早いな。最近俺の担当の世界には全然行ってないし。

 

 

 みんなの武器を作ったり、集まって勉強したり、そんなこんなで数日後、全員がポータルスキルを覚えた日、完成した指輪を受け取った俺。

「どうだ?」

「ありがとう。シンプルでいつも着けててもいい感じだ」

 ミスリル製の銀の指輪。変に過装飾じゃなくて、俺はこれぐらいの方がいいと思う。

「あら、石はないのね?」

「まだ学生だからね。それは結婚指輪(マリッジリング)で用意するよ」

 今回のは婚約指輪(エンゲージリング)ってことにした。後でまだ追加したい機能も増えそうな気もするからね。

 

 早々と屋敷に戻り、自室にてEPを籠める。

 面倒なので100個全部に。余った分はMPチャージ機能を使ってなにかの部品にしてもいいだろう。

「喜んでくれるかな?」

 ここ数日、夜の当番にきてくれた娘たちは、嫌がってなかったから大丈夫だよね。

「地味って言われたらどうしよう?」

 その時は結婚指輪をそれこそオリハルコンで石は豪勢なのを……。

 

 久しぶりにEP低下のネガティブと戦いながらもなんとか注入を終えて、成現。

 さて、あとは渡すタイミングか。

 今いきなり、じゃおかしいかな?

 トウキョウを解放したら……なんか死亡フラグみたいで嫌だな。

 

 悩んでいたら、部屋にやってきた十兵衛に相談を受けた。

 数日後の満月の夜、ゾンビたちとの戦いに参加してほしいと。

 慌てて指輪をすぐに渡すことを決める。

 

 みんなを集めて、その左手に指輪をはめていく。もちろん、俺がはめてあげてるよ。

「結婚指輪はもうちょい待ってね」

「これだけでもじゅうぶんだって!」

 感極まったのか梓が涙ぐんでいる。

 それを見て、多数の嫁さんたちが微笑んでいた。あの後、みんなのビニフォンも機能追加して痕が出回っている。梓の想いも知っているからだろう。

 ……俺はあの主人公じゃないけど、気にしない。もう梓は俺の嫁なのだ。

 

「結婚式はいつになるかしら?」

 華琳も微笑んでいる。

 結婚式か。俺の身体が戻ってからじゃないと、初夜はできないしなあ。

 

「綺麗な指輪ね」

 じっと指輪を見つめるヨーコ。ニアちゃんの指輪を思い出しているのかもしれない。

 

「サイズが変わるなら、巨大化してもだいじょうぶだな」

 俺の指輪と合わせて、巨大化ってのもよかったかな?

 ……それだとクランが月にいっちゃうか。

 

「ゲッベルスたちにも自慢してやりたいな」

 むう。彼女だと指輪の造形に注文がきそうだ。

 

「ほ、本当に頂いてよろしいのですか?」

「もちろん。俺たちが夫婦だって証だから失くさないでね」

 ビニフォンと同じく、登録者が呼べば手元にくる機能がついてるから失くすことはないだろうけど。

 

「ありがとう兄ちゃん!」

「大事にしますね」

「綺麗なのだ!」

 ロリっ子たちが指輪をして、俺の嫁さんだって主張してくれるのは感動するなあ。

 

「華琳さまとお揃い!」

「恋殿とおそろいなのです!」

「桃香様と!」

 いや君たち、みんなお揃いだからね?

 

「ふふふ。詠美がなんと言うかのう。吉音は羨ましがるじゃろうが」

「これで求婚者も減るというものだ」

 俺としては、親御さんへの挨拶がまだ残ってるんだよなあ。

 

「いいの?」

「仲間はずれは嫌だし……あんたのことは嫌いじゃないから」

 結真ちゃんも指輪を受け取ってくれた。その時にファミリアにもなってくれた。

「探知だっけ? お父さんの刀を見つけるのに便利でしょ?」

 そうは言ってるけど、それだけじゃないだろう。

 俺が学校を休んだ時に心配したって怒られたしね。

 

 


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