真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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70話 自信家

 ……しんどかった。

 徹夜でゲームだけならともかく、女性たちと18禁ゲーム。

 恋愛系や泣きゲーならばまだしも鬼畜陵辱系。

 俺のEPがガリガリと削られていきます。

 

「まったく、女の身体をなんだと思っているんじゃ!」

 祭が怒るのも無理はないだろう。

 人体改造すらあったし。

 ……あ。

 俺も改造しちゃってたんだっけ。

 

「情報収集に夢中になってて忘れてた。俺、君たちに謝らなきゃいけないことがあるんだ」

「なんだ? あらたまって」

「紫苑、桔梗、祭なんだけど……」

 どう説明すればいいんだろう?

 嫁さんの貞操を守るついでで処女化しちゃったなんて。

 

「それは、3人を乙女にしてしまったということを?」

「乙女? してしまった?」

 華琳は気づいていたのか。

 クランは首を傾げている。

「なんじゃ、そんなことか。学校に行くためじゃろ。今さら謝ることでもあるまい」

「人形でいる間にも説明されていましたので問題ありませんわ」

 若返らせたことと勘違いしたか。そうじゃなくてね。

 ああ、なんて言えば……。

 

「違うわ。煌一はあなたたちの身体を処女に戻した。そうでしょう?」

「……うん」

「おかしいと思ったのよ。春蘭と秋蘭も処女になっていたもの」

 処女化した際に本人以外のその辺の記憶もいじっているんだけど、華琳はもう成現(リアライズ)しちゃってて設定改変をできなかった。それで気づいたか。

 ……娘がいる紫苑が処女って時点で変か。華琳の鑑定なら3人が処女になってるってわかるだろうし。

 

「い、いろいろと理由があって、3人を処女に戻してしまいました。ごめんなさい」

 深々と頭を下げて謝る。

「……なるほど。嫁になる前からわしらの初めてを奪うつもりだったとはのう」

「えっ、いや」

「初めてを欲しがるのが男じゃ。おかしくはあるまい」

 あれ? そんなに怒ってないのかな?

 

「男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる」

「うむ。ゲーテだな」

 華琳の言葉にクランが頷く。

 もうそんなの知ってるの華琳?

「煌一の初めては梓に予約されてしまったから、私は最後を予約しましょうか」

「ずいぶん気の長い話ですわね」

 最後って……俺、殺されちゃいそうなイメージで怖いんですけど。

 下げていた頭を上げて弁解する。

 

「さ、最初だけじゃなくて、嫁さんは最後まで俺のだから!」

「それはまたずいぶんと強欲ね」

 ため息つかないでよ、華琳。

「じゃが、悪い気はせん」

「ええ、愛されている気がしますわ」

「他を見せんぐらいに満足させる自信があるのは頼もしいのう」

 そういう話になっちゃうの?

 俺、そんなに自信家でもナルシストでもないと思うんだけど。

 

 そのままの流れで情報収集(ゲームプレイ)は中断して、俺の覚悟……ちょっと違うか。ともかく、俺の愛を全員に証明した。

 今までで一番多い人数を一度に相手にしたわけだけど、なんとかがんばれたよ。

 

 

「夜が明けそう……」

「開始したのが遅かったもの。それに、人数も多いのに煌一が張りきっていた」

 ……もしかして俺、対魔忍で興奮してたの? そんな性癖があったの? ってちょっと不安になっちゃた。

「でも……」

 ふふっと笑う華琳。

 その微笑みはとても小悪魔的で。

 

「煌一の性癖がまた1つ確認できたわ」

「性癖って……」

「処女が好きなのでしょう?」

 やっぱりばれてるーっ!

 別に隠すほどのことじゃないけど、なんか恥ずかしい。

 

「安心なさい。春蘭と秋蘭の処女もとっておいてあげるわ」

「あ、ありがとう」

 それは非常に嬉しい。

 無印では非処女だった桂花が処女になった真・恋姫でさえ、2人は違ったもんなあ。

 

「そういえば、昨日の対魔忍も処女だったわね」

「昨日の?」

 昨日、日付的には一昨日俺たちが会った対魔忍といえば、白い装束に巨大な斧を持ったお姉さんが印象深い。

 全クリはならなかったけど、途中までプレイしてわかった彼女、八津(やつ)(むらさき)は対魔忍ムラサキのヒロインだ。

 その彼女が処女?

 この世界は対魔忍ムラサキ開始以前の世界なんだろうか?

 

 

 昨夜の疲れからか、授業はほとんど寝てしまった。

 華琳たちはだいじょうぶかな?

 期末試験も近いんだよなあ……。

 

 放課後は光姫ちゃんに頼んで、文とともに光臣に会う。

 普段は牢に入っているらしいが、今日は呼び出してもらった。

「俺を使う気はないと聞いたが」

「それは俺の嫁さんの方。俺は使えるもんなら使う」

 (あや)の前であんまりな言い方だけど、なめられちゃいけから強気の姿勢を見せないと。

 

「ふん。貴様に使えるものか」

「無理ならいい。誰にだってできないことはある」

「安い挑発だな」

 ごめんね、こういうやり取りって慣れてなくてさ。

 俺が困っているのがわかったのだろう、文が助け船を出してくれる。

 

「兄さん、煌一さんに協力してください」

「妹よ、その服は悪くはないがもうちょっと胸を育てないと……」

 文はあっぱれの渡世人姿ではなく、メイド服風にアレンジした学園の制服を着ている。

 胸のことで注文をつけるとは、光臣はおっぱい星人なのか。エヴァに従っていたのも彼女の胸に目が眩んでいたのかも。

 

 どこに持っていたのか、刀を取り出して攻撃する文。刃はついてないのに畳が切られている。

 あわてて慰める俺。

「俺は文の胸、いいと思ってるから気にするな」

「煌一さん」

 まったく。文の胸は小さくなどないだろうに。

 

「……お前の胸を大きくさせろという難題ではなさそうだな」

 俺のことを睨みながらの光臣。

 もしかして焼きもち?

「胸を無理矢理大きくさせるなんて意味がないだろう。俺が頼みたいのはトウキョウ解放に関係する話だ」

「なるほど。化け物を倒す剣魂を作れと……」

「そうじゃない。そっちは間に合っている」

 一瞬、ぽかんとした顔を見せてくれた。

 こいつでも一番の問題はそっちだと思っているのか。

 

「やつらを倒せる剣魂がいるというのか?」

「剣魂なんていらない。俺たちが倒す」

「……よほどの自信家、いやただの馬鹿か」

 今度は蔑んだ目に変わった。

 むかつく子だ。

 

「兄さん、煌一さんたちはすでに泣き女を倒しているんです」

「なんだと?」

 文、それは極秘情報なんだけどなあ。

 まあいいか。

 

「俺たちはね、剣魂よりも強いの。キュウビが完成していたとしても俺たちの敵じゃないよ」

 剣魂にダメージを与えられる武器を用意してればね。

「言ってくれるな。ならばその強い貴様らが、俺になんの用だ?」

「少しは聞く気になったか。……遺体の処理のことで相談したいんだよ」

 一昨日の戦闘だけでも、かなりの数の遺体が見つかっている。焼却だけでも問題になりそうな量だ。

 

「遺体? ……そうかゾンビどものか」

「話が早くて助かる。今はゾンビとなって防虫されているが、トウキョウ解放時にただの遺体に戻る予定だ。手早く処理しないと面倒なことになる。歯と骨格や所持品、DNA等の高速記録と、遺体の安置場所の確保。もしくは遺体の処理手段が必要だ」

 数が尋常じゃないからねえ。火葬場だけじゃ絶対に足りないし、積み上げて燃やすってのも問題ありそう。

 

「諦めろ。剣魂を使えばできなくはないが、学園島でしか使えん。まさかここに全ての遺体を運ぶつもりでもあるまい」

 できなくはない、か。言ったね。

 

「なら決まりだな。トウキョウでも剣魂は使えるからさ」

「そうか……現場を見せてくれるなら協力してやらんでもない」

「危険だが仕方がないか」

「ずいぶんと物わかりがいいな。俺を信用してるとでも言うつもりか」

「それはない。けど、剣魂製作の能力は信用してる」

 俺が成現で死体処理装置作れればいいんだけど、なんかイメージがわかない。

 いや、イメージはあるんだけど、機械化人の食料工場みたいなんでろくなもんじゃない。

 レーティアが開発するのは、彼女のモデル的にもっとまずいだろう。

 だから、この世界の人間にまかせたい。

 

「カッカッカァー」

 文の剣魂であるジロウが鳴く。カラスの剣魂ジロウは光臣が作ったものだ。製作者に似ず、性格もいい。

「そう。作品はいいと思うよ」

 ジロウに頷いてみせる。

 悪いのは製作者の性格だけだ。

「研究施設の使用許可と予算も出るからがんばってね。たまには文が差し入れ持って行くから」

「兄さんがまた悪事をしないかの監視です!」

 

 

 問題解決とはいかないまでも、一歩目が進んだ帰り道。

 俺と文はそれに遭遇した。

 

 華琳よりもちょっと大き目の身長に、華琳の3倍以上は確実そうな体重であろうぽっちゃりさん。袈裟を掛けて深編笠をかぶっている。

「虚無僧?」

 尺八を持ってないことと、太目なこと以外はどう見ても虚無僧だろう。

 それなのに、話しかけてきた内容といえば。

 

「アナタは神をしーんじますかー?」

 えっと、虚無僧って僧ってんだから仏教なんじゃないの?

 そう、質問を質問で返す。

「江戸に宣教師はおかしいでーす」

 ……TPOをわきまえた布教活動なんだろうか?

 なんか違う気もするけど。

 

「アナタは神をしーんじますかー?」

 また同じ質問だ。

 さっきは思わず聞いちゃったけど、無視して通り過ぎればよかったよ。

 今さらそれはできそうにないので適当に答えるか。

「いるけどそんなに役に立たない」

 いることは信じてる、ってか知ってる。

 でも、うちの駄神は俺の呪いもとけやしない。……口座に入金はしてくれたから、もうちょい評価を上げてもいいかな?

 

 内容はともかく答えてくれたのが嬉しかったのか、虚無僧を偽装した宣教師は続けて質問してきた。

「美女と美少女どっちが好きですかー?」

「美少女」

 ……即答しちゃったけど、なにこの質問?

 

「おっぱいは大きい方がいいですかー?」

「小さい方」

 最近は大きいのも好きだけどね。でもやっぱりベストは小さい方。

 

「処女と経験豊富な女性、どっちがいいですかー?」

「処女以外ないでしょ!」

 あ、文が若干ひいてる?

 でも俺、処女厨だもんなあ。

 

「それではー」

「怪しいやつめ!」

 あ、真留ちゃんがやってきた。

 

「ちょっと番屋にくるです」

「まだ話がおわってないでーす」

「いいからくるです!」

 そのまま、虚無僧偽装宣教師を連れていってしまった。

 なんだったんだろう、アレ。

 

 たしかに目茶苦茶怪しかったけどさ。

 あっぱれにはあんなのいなかったハズだし……まさか対魔忍の方に出てくるの?

 全クリまだしてないから、情報が足りないのかな。

 

 

 その夜。

 ビニフォンで真留ちゃんに呼び出されてしまった。

 大事な話がある、と。

「深夜に神社?」

『おまちしています』

 それだけで切られる電話。

 

「罠ね」

 即答ですか、華琳。

「罠よ」

 雪蓮まで。

「ええーっ!? 煌一さんに告白するのかもしれないよっ!」

 ごめん桃香。俺もそれはないと思うんだ。

 

 電話を受けたタイミングがまずかった。だって食事中でみんなにだいたいの内容がばれたようだったから。

 

「どうするんじゃ?」

「行くしかないでしょ。みんなは……ついてくるみたいね」

 頷く者が多数。

「た、隊長は私が守ります!」

 凪が緊張してるってことは、半分くらい告白されるって疑ってるのかもしれない。

 他の嫁さんたちも、俺の心配と出歯亀の半々なんだろう。

 

「お待たせ」

 予定よりもちょっと早く約束の神社に向かう俺。

 別に期待しているわけではない。

 風呂に入ったし、髪も念入りにセットしたけど期待しているわけではない。

 真留ちゃんは好みのロリだけど期待しているわけでは……。

 

「煌一さん」

 待っていた真留ちゃんにいきなり抱きつかれてしまった。

 ま、まさかマジに?

「ま、真留ちゃん?」

「煌一さん……」

 彼女の顔がゆっくりと近づいてくる。

 夏とはいえ夜風で冷えたのか、青白い顔がゆっくりゆっくりと。

 

「ごめんね」

 真留ちゃんをくるりとターンさせて後ろから抱きしめる。

 強く、身動きできないように。

「いるのはわかっている。出てこい!」

「……」

「誰もいませんよ」

 抑揚のない真留ちゃんの声。

 本当に誰もいなかったら恥ずかしいけど、探知で嫁さん以外の反応もあることがわかっている。

 

 しばらく待っても出てこなかったので、その気配にむかって小さめに調整したマジックミサイルを1発発射した。

「い、いきなりなにをするでーすか!」

 出てきたのは昼間の虚無僧。

 マジックミサイルはちゃんと当たったらしく、深編笠に穴が開いていて、そこから見える目は赤く光っていた。

 

「もう少ーしだったのに」

「いや、最初っからばれてるから。本物の真留ちゃんをどこにやった?」

 真留ちゃんが俺に触れてるのに契約空間に入ってない。彼女は偽者か、もしくは……。

 

「その娘は本物でーす」

 バッと袈裟と深編笠を外す虚無僧。

 中から現れたのは、やっぱり小っちゃくてぽっちゃりさん。その口には牙が生えていた。

「そして、わがしもべデース!」

 ふぁさっとマントをひるがえすが、その体形ゆえに様にならない。

 

「しもべ?」

 まさかと思いつつ、真留ちゃんに逃げられないように注意しながら彼女が普段からつけている首輪をずらすと、そこには2本の牙の痕。

「うそ? もしかして吸血鬼?」

「見ればわかるデース。こんなエレガントな魔族、他にはいないデース!」

 

 ……いや、あんた見て吸血鬼ってわかるやつのが少ないでしょ、絶対。

 

 


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