真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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対魔忍ユキカゼのネタばれがあります


72話 雷来

 水城(みずき)ゆきかぜ。

 対魔忍ユキカゼのヒロイン。身長155センチと小柄で胸も薄い。水着あとの残る日焼け娘。

 雷遁の術を使う対魔忍で、鈴々ちゃんが言っていた電気鼠はこの娘かもしれない。……5000ボルトらしいので電気鼠には及ばないが。

 得物は雷撃制御の触媒となる特製の2丁拳銃。別名、電撃の対魔忍。

 拳銃は参考に見せてもらいたいなあ。

 

 秋山(あきやま)凛子(りんこ)

 ゆきかぜの通う学園の先輩対魔忍。身長は172センチと高い方。

 ゆきかぜの恋人の姉でブラコン。

 逸刀流剣術皆伝で得物は太刀。空間跳躍すらする空遁の術の使い手。

 別名は斬鬼の対魔忍。

 

 対魔忍ユキカゼは行方不明の母親の捜索のため、ゆきかぜちゃんと凛子が敵地の闇の地下都市ヨミハラに娼婦として潜入するという寝取られゲー。

 ……うん。やっぱりしんどかった。

 ユキカゼちゃんたちは可愛いのに肝心のシーンでは男のケツばかり見せられてしまうという苦痛も含めて。

 

「なんで彼女たちが大江戸学園にきちゃったんだろう? しかも、俺たちの護衛として」

 対魔忍の2人は光姫ちゃんと十兵衛に相手をしてもらい、その間に華琳と元熟女の3人と打ち合わせる。対魔忍シリーズをともにクリアした彼女たちだからだ。

「奴隷娼婦の刻印はなかったようじゃが」

 祭の言うように彼女たちの舌にはそんな刻印はなかった。

 

「洗脳も改造もされてないようね。もちろん処女よ」

 華琳の鑑定スキルだとそこまでわかるか。

 俺もこの島で人物鑑定スキルを試しまくってけっこう熟練度を稼いだんだけど、まだそこまでわからない。魔法スキルだったらよかったのに。

 

「ゆきかぜちゃんのお母さんの捕まっているヨミハラはトウキョウの地下なのでしょう。行くのは大変ではないかしら?」

 対魔忍ユキカゼの舞台である地下都市に行けなかったらこっちにきたってこと?

「あの吸血鬼もこちらの魔族と敵対しているようなことをぬかしておった。ゲームとは事情が違うのかもしれんのう」

 その可能性もあるか。

 この世界は対魔忍シリーズの近未来というよりは、あっぱれの色が強いのかもしれない。……あっぱれも近未来っぽいか。

 

「でも油断はできない。みんなをあんな酷い目になんて絶対に遭わせるわけにはいかない」

 俺たちが敵とする魔族と、こっちに元からいる魔族が戦っていたとしても、どっちも危険なことにかわりはない。

 嫁さんたちの安全のためにも対策を考えないと。

「そうね。魔族は殲滅しましょう。……女以外は」

「女以外って……」

「イングリッドは欲しいわ」

 武器の名前が魔剣ダークフレイム……な魔界騎士か。

 騎士道に準じた正々堂々さはいいかもしれないけど。

 

「ゆきかぜ、凛子も今のうちに確保しておきましょう」

「確保?」

「このままでは、不幸になる可能性が高いわ」

 ……ゲームではヨミハラの潜入で一歩目から任務失敗という感じで先行きが不安なゆきかぜちゃんたちだ。浮沈艦と同じ名前なのに、あっさり堕ちた印象だし。

 対魔忍そのものな世界じゃないとしても、やはり気がかりではある。

 

「私としては護衛として送りこまれたのが彼女たちというのが気になりますわ」

「うむ。あの吸血鬼から情報が漏れているやもしれん。ほれ、ゆきかぜは煌一の好みだからのう」

 うっ、紫苑と桔梗の指摘通り、対魔忍シリーズの中では俺はゆきかぜちゃんが一番好みだ。ドストライクといっていいだろう。

「まさか、ハニートラップをしかけてくるっていうのか? そんなことをしてなんになる?」

「魔族を倒せるというだけで利用価値はいくらでもあるわ」

 そうだった。こっちの魔族はともかく、俺たちの敵である魔族は――異世界魔族とでもしておこう――には、使徒やファミリアである俺たちでしかダメージを与えられない。

 サウンドエナジーシステムで泣き女(バンシー)対策やゾンビの弱体化をできることも示しちゃったし、取り込みたいって思うのは当然か。

 

「総理のお誘いを断ったの、まずかったかなあ?」

「会っていたらそれこそ、政治利用されておったじゃろうな」

 祭もそう思うか。

 魔族を倒したり、ゾンビタウンを解放したりしてこの世界の救済はしたいけど、政治には関わりたくないんだよなあ。

 トウキョウを解放できたらそんなこと言ってらんなくなるだろうけど、今はみんなにもう少し学生生活を楽しんでもらいたいし。

 

「わかった。用心することにするよ」

「煌一、いっそのこと、ゆきかぜと凛子も嫁にしなさい。そうすれば彼女たちも安心よ」

「……なんでそうなるのさ?」

 これ以上嫁さんなんて増やせるか。

 また梓を泣かすことになるでしょ!

 

「妻にすればこのチョーカーを渡せるでしょう。彼女たちを守りやすくなるわ」

 そりゃ、ゆきかぜちゃんたち用にも用意した方がいいかもしれないって思ったけど。キメラ微生体を消滅させる機能もつけてさ。

「……別に嫁にする必要はないでしょ。ゆきかぜちゃんには恋人がいるんだし、嫁さん以外用のチョーカーを渡せばいい」

「どうかしらね」

 不満そうな華琳。たしかにゆきかぜちゃんの恋人はちょっと頼りない。でも、寝取るのはいけないでしょ!

 俺だって寝取られるのは絶対に嫌なんだしさ!

 

「と、とりあえず、催眠や洗脳、快感増幅系にかからないような対策をチョーカーに追加しよう」

 まだ機能追加用の空きスロットはある。それとも新しく成現(リアライズ)しようかな。

 

 

 ゆきかぜちゃん、凛子は屋敷に泊まりこみで護衛ということになった。

「よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

 しばらくは様子見だ。魔族のことはおいおい聞いていくことにしよう。

 

「真留ちゃん、ここでの生活はどう? なにか不自由してない?」

 魔族に狙われるかもしれないと、2人に紹介するついでに会った真留ちゃんに屋敷での暮らしを聞く。

「は、はい! も、問題ありません」

 真っ赤な顔でどもりながらの真留ちゃん。

 どうしたんだろう?

 

「はっ! 遠山様がお風呂を覗きにいっている気がします! こ、これにて失礼しますっ」

 赤い顔のまま、逃げるように真留ちゃんが去ってしまった。

「……嫌われちゃってるのかな」

 吸血鬼に襲われて、今も不安な状況。その原因は俺。謝った時は許してくれたはずなんだけど、やっぱり俺のせいだって気持ちがあるのかもしれない。

 

「……ずいぶんと女性ばかりが多いんですね?」

「あれ、聞いてない? 真留ちゃんは違うけど、ほとんどが俺の嫁さんなんだよ」

 絶句してる対魔忍2人。

 おかしいな。事前の情報収集ぐらいしてないのかな?

 ……もしかして、この屋敷が対魔忍ユキカゼの娼館扱いってことはないよね? 嫁さんたちがそういうことをするっていっても、相手は俺だけなんだし……。

 

 

 今夜の当番であるヨーコが連れてきたのは穏、思春、明命の呉の3人。

「眼鏡をお取りにならないんですか?」

「うん。しばらくは用心のためにね」

 感知も使っていたほうがいいだろうなあ。

 万が一にも俺の呪顔を見られるわけにはいかない。

 

「そ、そうですか」

 明命ががっかりしている。もしかして俺の顔を見たかったのかな?

 今度、猫になってあげるからそれで勘弁してね。

 

「ふむ。あの者たちが忍者か」

 しきりに頷く思春。思春も明命も忍者みたいなもんだから通じるとこがあるのかな?

 

「やっと順番です~。よろしくお願いします~」

「……もしかして、もう欲情してるの?」

「はぁい。今夜はスキルでごまかさないでいいんですもぉん」

 読書で欲情する体質の穏。成現時に追加したスキルによってそれは解消されたと思っていたんだけど、そのせいで物足りなかったのかもしれない。

 嫁さんの不満は解消しなくては!

 

 

 昨夜も素晴らしかった。

 穏だけじゃなくてヨーコまで張り合うように胸でしてくれたし、それを怨むような目で見ていた明命と思春が脱いだら褌だったのもよかった。こっちでも普段、制服の下は褌らしい。

 今度制服でさせてくれないか頼んでみようかな。

 

 学校では朝のホームルームに新任教師が紹介される。

 ……この前の満月の戦いで俺たち魏チームとともに戦った対魔忍のお姉さんだった。

 

 八津(やつ)(むらさき)。対魔忍ムラサキのヒロイン。

 なんで彼女までが?

「やはり護衛だろう。エヴァの一件もあって、政府もこの学園の防衛に神経質になっている」

「だからって……」

 まさか、この学園島が東京キングダムってわけじゃないよね? どっちも東京の人工島って共通点はあるけどさ……。

 華琳が言うには処女らしいし、対魔忍シリーズと異なる運命を進んでいるのだろうか?

 

「まあ、気にしてもしかたなかろう」

「そうだぜ。我輩に守ってもらいたいのはわかるがな」

 こいつの衣装も対魔忍スーツっぽい。まさか銀次も? ……いや、ただの趣味だろう。変態だし。

 

 放課後、霞にせっつかれる。

「いい加減、ウチの馬代わり用意せんかい!」

 ああ、対魔忍のことで心配になりすぎて、すっかり忘れていた。

「そうだな……霞、バイクは見たことあるよな?」

 学園にも少数だがバイク持ちの生徒はいる。

 あっぱれにもオートレースをするイベントもあった。

 

「あるで! あれをくれるんか?」

「そうしようと思うんだけど、免許がいる」

「免許?」

 大江戸学園は各種資格の習得も奨励している。講座や試験もまめに行われており、学園島内に教習所もあったはず。

 ……俺もとった方がいいかな? この世界じゃ無免許だし、交通法規も違うかもしれない。

 

「うん。期末テストがおわったら翠たちも誘っていこう」

 あって困りはしないだろう。身分証明もしやすくなる。

「せやな。バイクか、楽しみやな!」

 カメアリで確保した本田さんの銅像を成現して教えてもらうのも……いや、無理か。バイク乗ると性格変わるもんなあ。

 バイクはこっちで売ってるのを買うか……やっぱり作ろう。そろそろプラモ作りたい。

 なんにするかな?

 

 恋にはバイクに変形する三国伝の赤兎馬を……いや、あれはSD体形だから乗れるのかもしれん。別のにしよう。

 ガーランドは好きだけど、デカすぎるしなあ……。

 金田のバイクもいいかも……。

 4面本拠地(アパート)に戻ってネットで調べながら、気になったプラモや玩具をポチっていく。

 剣士のおかげで予算があるから、気が大きくなってしまい、ネットオークションにも手を出してしまった。買えるといいなあ。

 

 

 しばらくは試験対策のために訓練やトウキョウ入りはお休みし、みんなで勉強会。

 不安な子たちを俺の小隊に入れて、契約者が小隊長となっている小隊にいることでのボーナスを利用して熟練度を上げ、少しでも学力向上を目指した。

「試験終わったらさー、海行こうよ、海」

「それもいいな」

 教習所に行くつもりだけど、みんなの水着も見たい!

「楽しみなのだ!」

「鈴々、赤点をもらったら補習でそれどころではないらしいぞ」

 すぐに逃げ出そうとする鈴々を脅す愛紗。

 

「そうだな、赤点とらなかったら水着買ってあげるよ」

 本当ならスクール水着の方が好きなんだけど、少しでもやる気が出るようにそう励ます。

「兄ちゃん、ボクもいい?」

「もちろん。みんなの分もね。だからがんばって!」

 俺が強気なのは剣士が入金してくれたおかげではない。こっちの世界の口座と違うから関係ないの。学園島の通貨は独自通貨エンだし。

 太っ腹の理由は満月の夜の戦いの報酬がニホン政府から支払われたからだ。

 結界のことを相談する際に戦女神(ワルテナ)にも確認をとったけど、使徒が報酬を貰っても問題はないらしい。お布施だと思えばおかしくないのかな?

 

「シャオ、どんな水着がいいかなあ?」

「ど、どうしよう?」

「走るしか……」

 焦っているのは桃香ほか数名。ダイエットが必要には見えないんだけどなあ。

 

 そんな感じで数日すごし、オークションでの注文も無事に届いて、剣士からそれを受け取る。

「勉強会とは大変じゃのう」

「ああ。気分転換が必要だったからちょうどよかったよ。剣士の分と、こっちは華佗の分で、こっちはセイバーライオンの分、でこれをセラヴィーに渡しておいてくれ。あ、イナズマのは……」

 勉強中に作りたくなった料理をせっせと弁当箱に詰めていく。逃避行動じゃないけど、勉強以外のことをしたくてしかたなかったよ。

「豪勢じゃのう。ありがとうぜよ」

「そっちも仕事、がんばれよ」

 

 屋敷に戻ると、受け取った物の確認。

「資料集めないとなあ」

 今回ネットオークションで購入したのは、霞用のバイクのガレージキットだ。

 

 選んだのはロードサンダー。超音戦士ボーグマンに登場するオートバイ。

 ハイドロイオンエンジン搭載で最高時速310キロ。人工知能搭載で喋る。

 ライダーは主人公の響リョウ。

 うん、張遼と名前(リョウ)繋がりってことで。妖魔と戦っているし、ちょうどいいんじゃないかなってさ。

 

 ……いかん、久しぶりのキット作成に時間がかかってしまった。

 途中だけど今日はこれぐらいにして風呂入ってこよう。

 

「ふ~、ふん、ふ~ん」

 危惧していた対魔忍からのハニトラもないし、みんなの水着も見れそうだ。俺は上機嫌でボーグマンのオープニングを鼻歌で歌っていた。

 油断していたわけではない。

 

 油断していたわけではないが、伸びてきた髪が眼鏡にくっついて洗いづらかったため、眼鏡を外していた。

 外す前にちゃんと感知スキルを使用して浴場に誰もいないのを確認していたし。

 浴場からちょっと離れた地点に詠美ちゃん、朱金、真留ちゃんたちの反応があった。

 もしかしたら風呂を覗こうとしてる詠美ちゃんと朱金を真留ちゃんが止めているのかもしれない。……まさかね。そんなわけはないでしょ。

 

 シャンプーの泡を流していたら、背後から声をかけられる。

「お背中、流します」

「え?」

 つい、振り向いてしまった。

 

 そこにはバスタオルを巻いただけの対魔忍の2人がいた……。

 

 


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