なぜか今回は梓に殴られなかった。
逆に不安になってしまう。
もう怒る気にならないほど、愛想をつかされてしまったんだろうか?
それともまさか、痕をプレイしたせいであっちの耕一の方がいいってなってしまったんじゃ?
「事前に華琳に言われてたから今回は許すよ。さすがにあれはどうかと思うし……」
根回ししていたのか華琳。……梓にも対魔忍シリーズをプレイさせてたりするのか?
エロゲの管理はしっかりしておかないとまずいな。ノートパソコンのパスワード変えた方がいいか。
「え、ええと、俺の呪いのことは言ってもいいけど、君たちが嫁になっちゃったことは秘密にした方がいいと思う。特にゆきかぜちゃん」
対魔忍たちには呪いを知られてもかまわないだろう。隠すと余計に調べられそう。
「私?」
「君のお母さんを利用される可能性が高い」
人質や罠の餌として。生きているのならたぶん、魔族のとこに捕まってるんだろうし。
俺の言っている意味がわかったのか、ゆきかぜちゃんも神妙な顔で納得してくれた。
「……わかった」
「私と凛子も報告しないでおく」
紫教官の言葉に凛子も頷いた。
「それで、君たちが望む異世界魔族を倒せる力なんだけど、それは使徒と契約してファミリアになること。加護がついてやつらにダメージを与えられるようになるんだ」
「ファミリア……」
「ただし、人間を止めることにもなるんでよく考えてくれ。あと、このことも極秘ね。これ以上ファミリアが増えても大変だからさ」
仲間にできる上限とかありそうだし。……システム的にGMでその上限を増やすってのもありそうだけど、うちの神様だとちょっと期待しにくい。
「ファミリアになればデュラハンを倒せるのね?」
「たぶんね。ただ、デュラハンはかなり強いらしいから苦戦するかもしれない」
剣士と柔志郎も倒せなかった相手だ。強敵だろう。
鎧が硬いらしいから対策が必要。技をそろそろマスターする時期か。
「そう。契約するわ」
「だからよく考えてってば」
人間止めさせるのって気が重いんだからね。
「でもよ兄ちゃん、ファミリアにならないと夜のお楽しみで困るぜ」
宝譿の指摘で気づいた。
嫁さんになってもらっても、ファミリアじゃないと触れることもできないのか。それってかなり悲しい。
「あ、それならだいじょうぶッス。契約空間入りはON、OFFできるらしいッス。設定をOFFにしておけば、ファミリア候補に触れても契約空間入りしないですむッスよ」
「……そういうことはもっと早く教えてくれ」
「最近気づいたんスよ。オレのクラスに候補が多いみたいなんでOFFにできて助かってるッス」
ああ、柔志郎は主人公のクラスだもんな。ファミリア候補は多いか。
いい加減、あっぱれの主人公である八雲君にも会っておきたい。十兵衛の弟だから呪いもかからないはずだしね。
「とにかく、そういうことだからファミリアになるかは一晩ゆっくり考えてから決めてくれ」
勢いで決めて後悔されると胸が痛いので。
「あと、今夜は当番いいから。1人で寝る」
「煌一?」
嫁さんたちが驚いた顔をしている。そんなにおかしい?
いきなり俺を捕まえる梓。
「どこか痛いのか? 頭ぶつけたんだったよな、ちょっと見せてみろ」
「いや、反省したいだけだから」
俺が眼鏡を外さなければ、こんなことにはならなかった。
感知を使ったとはいえ、相手は忍者。隠形ぐらい持ってて当然、ということに気づかなかったのは痛恨のミスだ。
……感知でわからないってことは、もしかして夜の営みも覗かれていたりするんだろうか? やばい、滅茶苦茶恥ずかしい。
「そうね、華琳様に手を出したことをおおいに反省するのよ、このませガキお尻愛好家!」
桂花、俺が反省したいのはそっちじゃないんだけど。……その呼称はなにかな?
「真留、ゆきかぜは来なさい、大事な話があるわ」
「ふむ。たしかにその2人は資格ありじゃな」
真留ちゃん、ゆきかぜちゃんは桂花と光姫ちゃんに連れて行かれた。朱里ちゃん雛里ちゃん、シャオちゃんや風までついていったところを見るに、貧乳党ってもう結成しているのかもしれない。
「なら、文ちゃんたちはこっちだね。夜の順番を相談しよう!」
真っ先に相談するの、それですか桃香。
他に説明すること、あるでしょうに。
さて、反省しよう。
前だったらお酒飲んでたとこだけど、今の身体じゃあまり美味しくないからアルコールに逃げずに反省できるな。
嫁さん増えて、みんなと本番なしだけどエッチできて浮かれてて、呪いの対処を現状維持にしてたのが一番のミスか。
まずはそれを改善するしかない。
「眼鏡がなくても大丈夫。眼鏡がなくても大丈夫。眼鏡がなくても……」
自分にEPを籠めて呪い解除を試みる。
設定改変は1度しかできないんで、今までためらっていた方法だ。自分自身に使えるかも不明だし。
『EP注入
女神の加護解除』
……できるのか?
ビニフォンの表示に呆気にとられる俺。
続いて、秒間必要MPを確認する。
固有スキルか、システムツールスキルかはわからないが、レベルが上がったおかげで
試していないので1回には入らず、何度でもやり直しできるのがありがたい。EPは消耗するけどさ。
「……やっぱり無理なのか」
がっくりと肩を落とす。表示は文字化けしていた。一瞬希望が見えただけに余計に辛い。
人形からじゃないと駄目なのだろうか?
それともやはり、アっちゃん女神の呪いが強力すぎるのか……。
うまくいくのなら、俺の姿も元に戻す予定だったのに。
ならば、呪われちゃった娘をなんとかする方法で考えてみるか。
今のところ、美少女な上に処女という最高な条件で済んでいるから嫁さんにするという手が使えている――そのせいで華琳がそう仕向けているんじゃないかという疑いもある――けれど、これからもそうとは限らない。
婆さんや人妻に見られでもしたら、結婚という解決策は使えない。……俺が養子にでもなるしかなさそうだ。
人形からじゃなくて、人間に直接使えるかはまだ不明なEP注入での設定改変後の成現で……もう試せるのは、はじめちゃんだけか。嫌われちゃってるけど実験へ協力してくれるだろうか?
記憶操作は……呪いだから俺の顔の記憶がなくなっても意味はないだろう。
覚えてなくても呪いは発動しちゃってるんだし。
じゃあ、時間操作? 青狸の秘密道具で呪い発動前に戻すか。
……呪いがなかったことになればいいけど、若返りで失敗してるせいか、その辺は上手くいかない気がしてならない。そんなイメージではアイテムを作るわけにはいかないだろう。
やはり予防しかないのか。
眼鏡以外のいつもつけていても辛くないアイテムで考えてみよう。はじめちゃんのおかげで、俺の顔を隠すことが条件ってわけじゃなさそうなことがわかったし。
俺もチョーカーをつける? ……今はいいけど元に戻ったら、のど仏で変になりそうだからパス。
ならば……そうだ、指輪に加護封じの力を与えればいい。
結婚指輪にはその効果を付与しよう!
これで顔を洗うときに苦労しないですむようになる。
メモメモ、っと。
だけど、すぐに結婚指輪を作ることはできない。素材はオリハルコンを狙ってるんだけどすごい高そうだし。
この世界にあればいいのに。あるかな? ネットで調べてみるか。
……ふむ、サイコフレームってオリハルコンなの? コンピューターチップを金属粒子レベルで鋳込んでるのか。
これなら指輪サイズでも使えそうだな。レーティアやドワーフたちに相談してみるか。
オリハルコンが入手できたら、それにチップを鋳込んでみるのもいいかもしれない。超オリハルコン……キカイオーの超物質オリハルコン合金っぽいか。なら、オリオリハルコンってとこだな。
どっちにしろ、すぐにはできそうにないか。
俺の婚約指輪の空きスロットにその機能を追加して、しばらくは眼鏡を外さないで我慢しよう。
そもそも、ゆきかぜちゃんたちが強行手段をとったのも異世界魔族にダメージが通らないからだよなあ。
これをなんとかすれば、この世界の救済も進むだろう。
……神の加護がないとこっちの人間じゃ無理か?
加護っていわれてもなあ。
魔族にダメージを与える加護……聖水とか?
聖水ってたしかサイコロ世界の百貨店で瓶入りで売ってたよな。ペットボトルじゃなかったのは、投げてぶつけた時に割れるようにだろうか。それとも、ペットボトル自体を扱ってないのかも?
けっこうな値段したけど作れないかな。
翠に協力してもらうか、仮設トイレに回収装置を設置して……ってのは冗談だ。変態がすぎる。
他のやつに使うなんて許せないし!
調べてみるか。こっちでもネットが使えるので
……へえ、聖別すりゃいいのか。聖別ってお祈りだよな。
こっちの人のお祈りじゃもう駄目かもしれないけど、使徒やファミリアがやればなんとかなるかな?
祝詞や聖歌が通用したんだし、可能性は高いはず。
……どうせ祈るなら、巫女さんがいいなあ。
俺、巫女さん大好きなんだよね。
メイドさんと巫女さんのどっちかを選べって問われたら悩むけど、たぶん巫女さんを選ぶね。メイドさんより処女率高そうだし! あくまで俺のイメージだけどさ。
誰がいいだろう?
サクラ先生。
はらったま、きよったま、ってやってくれそうだ。フィギュアあるかな?
ナコルル。
フィギュアはあるけど、物理以外はどうなんだろ? 真のエンディングのせいで、お祈りは命と引き換えのイメージあるし……。
セーラーマーズ。
智子が喜ぶかもしれないな。戦闘力も高そうだし候補にしておこう。
おキヌちゃん。
お祈りはどうかな?
ネクロマンサーとしては役に立ってくれるかも。
富樫こより。
戦国エースのの方が好きなのに、フィギュアは戦国ブレード版なんだよなあ。……エロいけどさ。
トモエ。
武者巫女だからやっぱりお祈りが不安。
戦闘力は高いだろうけどね。
倉木鈴菜。
シースルー巫女服がいいよね……あれ? 初夜服だったっけ?
主人公がヘビースモーカーだったから感情移入はしにくかったけど、こういちなんだよなあ。
ヒミコ。
いや、巫女さんじゃなくて忍者だし。ヒミコ忍法はいろんな意味で強そうだけどさ。
……あ、卑弥呼も巫女だったか。貂蝉と卑弥呼、まだ売り場に残ってたんだった。
そろそろ回収して干吉と左慈の情報を引き出さないと。でも、俺の貞操がピンチになりそうな気もする。
いっそのこと、成現する時に設定改変して女体化しちゃうか? ……中身があれだと知っていると微妙だなあ。でも、元ネタは女性なんだからおかしくはないのかも。
……いや、元ネタがそうだからって考えると華琳たちが男じゃないと、とか思いそうになる。パスだパス! 女体化は無し!
剣士がGP貯まっているようだったら買うだけ買って、剣士の部屋で保管しておいてもらおう。うん、それがいい。
メールしておこう。めるめる……これでよし。
フィギュアがありそうなメジャーな巫女さんはこんなとこか?
意外と少ないかもしれないな。
巫女装束だからアクションフィギュアは向いてなさそうだし。
……よし、作るか。
俺は今、反省してるんだから女の子増やしたりなんかできないって。
でもさ、ロボならいいよね!
フィギュアはゼロから作ったことはないけど、ロボならなんとかできそうだ。
巫女装束といったらやっぱり緋袴だよな。赤か……消防車、いや、梯子車が変形して巫女さんになるようにしよう!
梯子は変形後に巨大な
黒歴史ノートにラフと設定を書き込んでいく。
どうせだから尼さんロボやシスターロボも考えてみよう。
尼さん……海女さんてことで海モノだな。Uボートから変形とかいいかもしれない。レーティアにEP注入を頼めば、水場が無くても空間に潜ってくれるのができそうだ。
となるとシスターは空か。梯子車がいるからジャンボだとダグオンぽいなあ。じゃあヘリか。シスターだから黒いヘリ……空気狼だな。
さらに3体が合体して、剣士神の巫女として完成!
うん。悪くなさそう。
マサムネみたいに玩具サイズで成現すればコストもなんとかなるはず。
ん? コスト……遠坂神社の巫女さんなら金でなんとかしてくれそうな気もするな。稟と名前がまぎらわしいけどさ。
あ! 生産関係はGP消費で作成や加工するんだっけ。スキル覚えたらなんとかなるかな?
解決策が見つかった俺は、黒歴史ノートを閉じてスタッシュに収納する。
みんなに巫女さんやシスターになってもらって、お祈りで聖水を作ってもらおう。
武器も聖別すれば、効果があるようになるかもしれない。
なにより、嫁さんたちの巫女姿は是非とも見たい!
みっこみこにしてやんよ!!
……やばい、滾ってきちゃった。
寝れるかな?
興奮してあまり眠れず、ロードサンダーを完成させてしまった。
「巫女?」
「うん。こっちの人間の攻撃手段を増やしたい」
朝食の準備中にアイディアを説明する。今朝は華琳も準備に参加していたのでちょうどいいだろう。
「面白そうだけど、神社はどうするのかしら?」
しまった! 巫女さんにテンション上がりすぎててそれを考えてなかった!
「学園の神社じゃまずい、か……」
この学園島にも神社はある。が、仕打ち人への依頼場所にもなっているので、そこを使うのは気が引ける。
「4面に建てるか、2面の神社を借りるか、でしょ」
味噌汁用の大根を切りながらの詠。
2面なら交流戦の舞台になった神社があったか。ポータル訓練で転移先にも選んだことがあるから、みんな知っている。……誰を祀ってるのかは不明だけど。ワルテナの神社なのかな?
「詠は反対しないのか?」
「なんか月がやる気になってるみたいだしね」
「はい。お祈りならお役に立てるかもしれません」
月ちゃん、戦闘に参加してないことを気にしてるのかな?
そして詠はきっと、月ちゃんの巫女姿が見たいから協力的に違いない。
「月は家事で役に立ってるって」
月ちゃんの擁護をする男前は梓。……戦闘も家事もこなす梓が言ってもそれはあんまりフォローになってないかも。
「月さんのご飯、わたし好きですよ」
流琉ちゃんがほめるように俺も月ちゃんの料理は好きだ。いや、嫁さんの手料理ならみんな好きなんだけどさ。
あれ? そういや料理下手な嫁さんの料理はまだ食べたことがないな。……忙しいから、そんな暇がないか。
「じゃあ、巫女装束を注文して、それが届いたら巫女修行も始めよう!」
「修行……いいわね」
なんだろう? 華琳が喜んでいる。定番の滝行とか想像してるんだろうか?
濡れた白装束が透けるのはいいかもしれないけど……うん、いいな!
修行に向いた滝を紹介してもらおう!
朝食後、確認をすると全員がファミリアになってくれるというので、浮かれた気分が重くなる。
「ファミリアにならなくても魔族にダメージを与える方法を準備中だって説明したよね?」
「確実じゃないんでしょ? それを待つつもりはないわ」
ゆきかぜちゃんの口調が砕けてきているのは親密になってきている感じがして嬉しいんだけど、この娘も一度決めたら変更はないタイプっぽい。
「オレは殴るほうが得意だから、ファミリアにならなきゃ駄目だろ」
朱金は奉行の仕事があるじゃん。
あまりこっちの仕事を任せるわけにはいかないんだけど……。
「私もお願いします」
「詠美ちゃん、執行部やめるからって
「そんなことはありません!」
自棄になってるみたいだ。
俺の嫁さんになっちゃったのも自暴自棄の理由の1つかもしれない……。
「仲間が増えるんだから喜びゃいい」
「翠、そう単純なものじゃなくて……」
「部下の命をあずかるってのはそりゃ重いけどさ、みんながついてんだ。なんとかなるって!」
ああ、みんなもたくさんの部下を率いていた経験があるんだっけ。
俺の悩みなんてちっぽけに感じてるのかも。
「みんな、俺に力を貸してくれる?」
「頼りない夫を支えるのも悪くはないわね」
華琳、本当に? 今の台詞を録音しておけばよかった!
「頼ってください。妻なのですから」
ありがとう愛紗。
「あなたの力になるわ」
蓮華まで。
それからも次々と嫁さんたちが俺を助けてくれると宣言するので、思わず泣いてしまった。
「ありがとう、ありがとうみんな……」
「よしよし」
……なんで梓が俺をなでているかな?
「次あたしね!」
ヨーコ、なんの順番?
見たらヨーコの後ろにも雪蓮、星、凪、恋……ってずらっと並んでるし!
逃げちゃ駄目なんだろうか?
「こいつのファミリアになってだいじょうぶなの?」
「男は簡単に泣くものではない」
俺の泣き顔で不安になったのか、ゆきかぜちゃんたちがひそひそ話してる。
でもね、ファミリアになるんならさ、チョーカーの前に精神攻撃に耐えてもらうことになるんだよ。
君たちも泣くことになるからね!
……気が重いなあ。
もう少し、みんなになでられてからにするか……。
一言でつっこまれたので、呪い対策を