真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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77話 我が闘争

「イカスミで印刷?」

「なんか生臭そうだな。っていうか、あの娘からそんなのとれるのか?」

 呪符の作成にイカ娘に協力してもらおうという俺のアイディアに首を捻るヘンビット。

「とれるって言うと語弊がある。別にイカちゃんを解体するわけじゃないんだし」

「そうなのか?」

「味もいいらしいし」

 イカちゃんが口からでろーっと出すという方法はあまり説明したくはないので別方向に話をそらすことにする。

 

「味? 食べられるの?」

 華琳はそっちの方に興味があるのか。

 イカスミスパゲティは美味しいみたいだよ。

 作り方を見て食べたくなるかは疑問だけど。……美少女の口から出るものなら華琳は平気かもしれない。

 

「そもそも、そのイカ娘というのは何者?」

「あれ、会ったことなかったっけ?」

「あの娘はドンさんとこのファミリアだろ。ドンさん抜きではここにきたことないから、女子は会ったことはないだろう」

 そうだった。彼女と契約した使徒のドンさんは海神(ポセイドン)っぽい神の分霊(アバター)

 女癖の悪さから、女使徒や女ファミリアから敬遠されている。……なんでか俺もドンさんに次ぐ危険人物視されているらしい。納得できなくもないけどさ、俺から無理やりってのはないんだけどなあ。

 

「可愛いの?」

「うん。そりゃ俺がフィギュア持ってたぐらいだし」

「そう。会ってみたいわね」

「ドンさんに聞いてみるか」

 ビニフォンでドンさんにメールしてみた。

 暇だったらしく、すぐに電話がかかってくる。

 

『おう、達者か?』

 電話越しでもでかい声だ。

「おかげ様で。そっちは?」

『当然だ。イカ娘も元気だぞ』

 よかった。あれ以来会ってなくて、ちょっと心配してたんだよ。

 

「ビニフォンの調子はどう? 海の中でも使える?」

『故障はしていないな。娘たちもほしがって騒ぐのが問題だが』

 ドンさんは妻子もちだもんな。

 育児のことで悩んだら相談してもらうのもいいかもしれない。

 

「イカちゃんに頼みたいことがあるんだけど、こっちに寄越してもらえないかな?」

『ならば俺も行くぞ』

「えっ?」

 急いで嫁さんたちを避難させないと……。

 

『心配はいらん。お前の関係者に手は出さん』

「……本当?」

『海神の名に誓おう』

 その海神がちょっと実績あって信用できないんですが。

 

 俺が拒否する前にドンさんとイカちゃんが来てしまった。

 相変わらずでかい。

「久しぶりだな」

「……ええ。会いたくはなかったですが」

 ワルテナは仲が悪いのかな?

 あからさまに嫌な表情を見せている。

「まったく。お前はそんなだから嫁にもいけんのだ」

「セクハラですわ。第一、私は処女神。お嫁になどいきませんわ」

 むう。かなり険悪なムードだ。

 

「ここにいる女性たちに不埒なことをしたら許しませんわ」

「ほう?」

 戦女神の注意を受けて開発室を見回す海神。

 そして大きくため息。

 

「心配せんでも相手がおらん。小娘ばかりではな」

「華琳さまが小娘だと!」

 あ、春蘭がキレた。

「春蘭、小娘と言われただけなのになぜ私が出てくるのかしら?」

 華琳に睨まれてすぐにおとなしくなったけど。

 

「ふむ。お前たちが煌一の妻か。小娘と言ったのはわびよう」

「そんな、ドンさんが謝るなんて……」

 ワルテナが驚いている。

 

「俺はエロ坊と争うつもりはない」

 ああ、なんかドンさんって俺の中に欠片があるというエロ神を苦手にしてるみたいだもんな。

「なるほど。アっちゃんが怖いのですわね」

 え、そっち?

 エロ神じゃなくて俺を呪った女神の方?

 

「……あいつは女神たちの中でもでかい派閥を持っているからな」

 なんと。俺ん中のイメージだと、男受けはいいけど同性からは嫌われてるんじゃないか、だったのに。

「あれで面倒見はいいですからね。以前は彼女を嫌っていた処女神たちでさえ、最近はお洒落の相談をしているぐらいですわ」

「それは敵対派閥のトップだったお前が急接近したからだろう」

 やっぱりアっちゃん女神とワルテナは仲が悪かったのか。

 だけど腐教することでワルテナを取りこんでしまったと。

 

「彼女は大親友ですわ」

「……娘たちにもあれのファンは多い。困ったものだ」

 美の女神ではあるし、ファッションリーダー的な扱いなんだろうか?

「神様のお洒落は気になるのー」

 沙和が目を輝かせている。

 俺としては嫁さんたちをアっちゃん女神に会わせたくはないんだけどね。

 

 事情を話してイカちゃんに協力してもらい、イカスミを手に入れた俺たち。

 入手時は引きつっていたドワーフたちもイカスミを混ぜたインクを調べてテンションアップ。

「すごいな。これならいろいろできそうだぞ」

「当然でゲソ!」

 報酬として出されたエビフライを頬張りながらのイカちゃん。

 うん。イカスミで失った栄養を補給しておいてね。

 

「……これなら効果がありそうだ」

 プリントアウト後、さっきのよりも格段に質が上がった結界符の満足の俺たち。戻ったらさっそく屋敷の周りに張っておこう。

「次はコンカだな」

「そっちはコンカを作ってるとこと相談して、ビニフォン用のコンカを作ってもらった方が早いんじゃないか?」

「作ってくれるか? ライバル商品になるはずだが」

「だからこそだよ。とって代わる必要があるわけでもないんだし」

 コンカ作ってるとこを敵に回したいわけじゃない。

 儲けられるんだったらそれにこしたことはないけど、技術を持っているとこは味方にしておいた方がいいって。

 

「そうだったな。俺たちは他にもやりたいことがあったんだ。ビニフォン専門にされても困るか」

 やりたいこと……巨大ロボットは男のロマンだよね。

「コンカは調べたところ、何枚もの呪符を重ねて作られている。しかも手書きだった。この技術を提供すれば、安く作ってくれるかもしれん」

 コンビニエンスカードは多機能だけに、手間がかかってそうだもんな。だから高いのだろう。

 

「コンカ屋さん次第だけど、量産型ビニフォン完成の目処が立ったな」

「うむ。巨大ロボが近づいてきたな」

 このチームなら本当に巨大ロボが作れそうな気がしている。

 俺の最大MPも(けい)を超えちゃっているし、そろそろ大物の成現(リアライズ)を試してもいいかもな。

 

 

 学園島に戻った俺たちは神職、巫女スキルの効果が現れ、その時に習得した新たなスキルをすぐにOFFにした。

「そりゃ巫女さんって、霊と戦うイメージもあるけどさ」

「霊視スキルねえ」

 そう、OFFにしたのは霊視スキル。幽霊が視えるようになってしまっていた。

 

「滝にいた精霊以外にも視えるようになっていたのね」

「精霊? そんなのいたんだ」

 幽霊なんかよりもそっちの方がいい。俺も見たかったなあ。

「兄ちゃん……」

 震える季衣ちゃんの頭をなでる。

「視えるだけでなにもしてこないからだいじょうぶだよ」

 とはいえ、たとえ幽霊でも嫁さんたちのプライベートを覗かれるのは嫌だな。

 

 幽霊除けとして早速、完成した結界符を屋敷に張った。

 隠蔽の魔法も仕込んであるので、張った途端に札が見えなくなる。

 これで幽霊や魔族の侵入は防げるはずだ。霊視スキルをONにしても屋敷内には幽霊はいなかった。

「もっと多く用意して島自体に結界張りたいなあ」

「ふむ。タワーと地下にも仕込むか」

 結界符を調べているレーティアが頷く。

 彼女は、期末試験の順位が学年トップだったんだよなあ。

 古代中国出身という軍師たちと違ってハンデがなかったのが大きいか。

 

「今度はこっちのを見てくれ」

 スタッシュから1機のI・D(インターセプトドール)を取り出す天才少女。

「カンプさん?」

「うん。強化が終わった。もうペストXさんには負けない」

 コンバットさんのレーティアVer。それがカンプさん。

 金髪でドイツ語仕様だったりするんだよな。

 

 ふむ。見た目は4面本拠地(アパート)のコンバットさんとあまり変わらないな。

「それは?」

 今度は俺がスタッシュホールを呼び出したのをレーティアが問う。

 取り出したのは、プラモデルの部品。

「コンバットさんの隊長ユニットとR.I.Vewだよ」

 そう。コンバットさんの強化パーツである。

 どちらも頭部に装備するもので、隊長ユニットはオリジナルの物とは違うアンテナ。R.I.VewはHMDっぽいバイザーだ。

 

「まだプラモだから特殊効果はないけどね」

 装備しただけでだいぶ感じが変わった。

「成現しちゃっていい? このカンプさんごと」

「……それはカンプさんが自我を持つということか?」

 さすが天才、話が早い。

 このカンプさんなら戦力になってくれるだろうし、マサムネも喜ぶはず。

 

「大きさはこのままで、君の護衛ってことで」

 学年トップになっちゃったから、注目されるだけじゃなくて嫌がらせを受けるかもしれない。用心しておいた方がいいだろう。

 それにレーティアは戦闘力自体は低いから護衛が必要だってずっと思っていたし。

 よく一緒にいるのは美羽ちゃんと七乃だけど、彼女たちじゃ護衛対象が増えるだけだ。

「そうだな……頼む」

「わかった」

 レーティアが手塩にかけた作品なだけあって、EPは十分に籠もっていた。

 俺が籠めるのはせいぜい強化パーツの分だけ。それもすぐに完了し、成現もあっさりと成功した。

 衣装は大帝国のレーティアと同じミニスカ軍服。アンテナとR.I.Vewもそれに合わせた黒と銀のカラーリングになっている。

 

「ヤー!」

 ビシッと敬礼をするカンプさん。

「うん。よろしくな、マイン」

「マイン?」

「このカンプさんの名前だ」

 ああ、カンプさんは製品名……種族名ってとこか。

 それとも姓でマイン・カンプさんになるのかな?

 OVAアッセンブル・インサートにマインカンプG-1ってパワードスーツ出てきたんだけど、そのガレージキット(ガレキ)持ってるんだよね。マインの強化外骨格にしてみようかな?

 

 マインとファミリア契約をして彼女にチョーカーと指輪を渡す。

「レーティアのこと頼むね」

「ヤー!」

 レーティアは俺の部屋を出て行った。みんなに見せびらかしに行ったのかも。

 

 

 華琳がまだ巫女スキルを得てないので、残った修行をこなすため、魏の娘たちも華琳につきあい、断食中。俺も当然、食事抜き。

 せめてお茶でも、と月ちゃんが淹れてくれた。

「ありがとう。その格好もとても可愛いよ」

「へぅ……」

 真っ赤になって照れている月ちゃん。

 彼女は今、巫女装束を纏っている。

 

 月ちゃんだけではない。彼女と同じく今夜の当番である梓と詠も巫女さんになっていた。

「着方がわかったからね」

「嬉しいだろ?」

 梓の質問にぶんぶん首を振って頷く俺。巫女さんサイコー。

 

「梓も詠も似合っている。巫女さんとできるなんて……」

「ちょ、泣くほどのことか?」

「え? 今日もするの?」

 俺の感涙に若干引いた感じの梓。詠は別の方で驚いているな。

 

「もしかして嫌?」

 この前初めて詠とした時、やはり月ちゃんも一緒だったけれど、そんなに嫌がった風には見えなかったのに。

「……そんなわけじゃないから泣くな」

「詠ちゃん?」

「だ、だから違うってば。ボクは嫌じゃないって!」

「嫌じゃないんだね、詠ちゃん」

 にっこりと微笑んでいる月ちゃんと耳まで赤く染まった詠。

 

「あー、あれだろ、煌一がメシ抜きだから今日はおとなしく寝ると思ったんだろ?」

 そうか。空腹で辛いから無駄に体力を消耗しないだろうって、判断してたのか。

 甘いな。空腹だからこそ、他の3大欲求で誤魔化すのだ。

「俺の身体を心配してくれたのか。ありがとうな、詠」

「なんでそうなる!」

 さらに赤くなった詠を月ちゃんとともに堪能した。

 

 

「巫女服の袴ってああなってたんだな」

「なんだ、巫女フェチのくせに知らなかったのか?」

 さすがに衣装の構造までは知らなんだよ。

 おかげで巫女服のままするのにも悩んだ。

 

「汚れちゃったけど、だいじょうぶ?」

「心配するんなら脱ぐまで待ちなさい!」

「コスプレエッチってさ、脱いじゃ駄目だと思うんだ!」

 俺の力説に詠が頭に手を当てながら大きくため息。

 でもやっぱり、せっかくの巫女さんを脱がせちゃ勿体無いでしょ?

 

「あんたはやっぱり変態だわ」

「そうほめなくても」

「ほめてない!」

 うん。詠も可愛いなあ。月ちゃんも俺と同じ意見らしく微笑んでいるし。

 

「巫女服なら予備があるから安心しろ。……たぶん華琳もこれを見越して余分に発注したんじゃないか?」

 なるほど。これからは巫女さんプレイも楽しめるわけか!

 華琳も今頃、巫女さんな桂花や春蘭たちと楽しんでいるのかもしれない。

 

 ……巫女服の予備は思いついたのに俺の分は用意してなかったのは、気づいたけどどうでもよかったんだろうか?

 それともまさか最初から俺を巫女さんにするつもりで……。

 

 

 翌朝。

 断食が効いたのか、華琳たち巫女スキルを習得していなかった修行参加メンバーも、スキルを入手していた。

「たった1日で参加者全員がスキルを覚えるなんて、使徒やファミリアは習得しやすいのかもしれないな」

「そうなのかしら? ともあれ、これで安心して巫女を楽しめるわね」

 どうやら華琳たちは巫女スキル習得のため、さすがに断食延長は嫌だと、昨夜はおとなしく寝ていたらしい。

 やはり、煩悩があったらスキル会得は無理なのだろうか?

 

「今日は孫呉が巫女修行ね」

「ウチらは教習所やな」

「夏休みだってのにまた勉強かよ」

 翠が愚痴っている。

 そりゃ俺だって遊びたいけどさ。

 

「まあまあ。バイクに乗るためだと思ってがんばって」

「そうだよお姉様、試験に受からないと免許もらえないんだよ」

 さすがにこの島で毎日、運転免許試験は行われていない。なので、試験日を逃すと、次の試験まで待たされることになるからちゃんと勉強しておいてほしい。

「免許とれるころにはバイク用意できてるはずだからさ」

 車種はもう決めてある。数が多いんでプラモの製作は真桜にも手伝ってもらう必要があるかもしれないな。

 

「補習がなければ春蘭たちも教習所へ行かせたかったのだけど」

「面目ありません……」

 補習組は巫女修行や教習所もなし。

 

「煌一はどうするの?」

「俺? 開発部に顔を出すよ」

 呉のみんなの巫女さん姿を撮影するのは絶対だけどね。

 

「海に行くのは巫女修行と補習が終わってからだね」

「そうだな。その前に水着買っといてね。約束したからお金は出すよ」

「ええーっ! 煌一さん、いっしょに選んでくれないの?」

 そんなに驚くことかね、桃香。

 人数多すぎるからそんなことしたら1日かかってもおわりそうにないでしょ。

 

「現場で見せてもらった方が新鮮でしょ。楽しみにしてるからね」

「試着のセクシー水着で煌一を悩殺する予定だったのに」

 シャオちゃん、そんなに頬を膨らませなくても……。

「さすがに煌一さん以外に面積の少ない水着を見せるわけにはいけませんわね」

「ならばそれは夜用に別枠で購入するとしようぞ」

「楽しみじゃのう」

 ロリ熟女たちが相談している。

 どんな水着を選ぶのかすごく気になってきた。ベストはスクール水着だけどね。

 白スクって売ってないかな?

 

 

「いい! すごくいいよ!」

「テンション高すぎだぞ煌一」

 クランのロリ巫女さんもいい。

「こんなところに連れてこられたと思ったらコスプレとは……」

 巫女姿にまったく違和感のない紫が嘆いている。

 ゆきかぜちゃん、凛子は今日はまだ学園島にいる。教え子に先がけて異世界へきて安全を確認したかったのかもしれない。

 

「うんうん、大喬ちゃんも小喬ちゃんも可愛いわね。美羽も似合っているわ」

 雪蓮も上機嫌だな。

 美羽ちゃん、レーティアのおかげか赤点を取らずにすんでいて本当によかった。

「俺としては明命も巫女さんがバッチリはまっているように見えるぞ」

 神社にいた猫に気を取られている明命は本職といってもいいぐらいに調和している。

 

「まったく。昨夜といい、修行よりも巫女さんが目的なんじゃないか?」

 ぎくっ。

 梓、鋭いなあ。

 

 




今回巫女修行のメンバー

呉第1小隊
 クラン、雪蓮、冥琳、祭、穏、美羽、七乃、紫
呉第2小隊
 梓、蓮華、思春、明命、亞莎、小蓮、大喬、小喬

煌一は別枠

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