真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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1話投稿が去年の今日でした
2年目にしてやっとオリ主が超強化!




87話 チートコード

 疑似契約空間によるアイテムの受け渡し成功により、干吉によって俺がぬいぐるみにされたこと、『無印の』華琳とともに隔離されていることを連絡できた。

 挑発された『俺の』華琳がすぐにくると無印華琳は予想したけど、干吉の言葉を信じるならばここは曹操の墓。

 つまり中国――あっぱれ対魔忍世界なので微妙に違う名前だけど略称はやっぱり中国だったはず。正式な国名はなんだったっけな。

 無印華琳も曹操の墓だと説明したし、ビニフォンの機能によってたぶんこっちの現在地はわかるだろうけど、すぐに到着するのは無理でしょ。

 

 しばらくはぬいぐるみとなった俺を弄んでいた無印華琳だったが、飽きたのか俺を椅子の上に置いて部屋から出ていってしまった。

 よほど干吉は術に自信があったのか、部屋には鍵もかかってなかったようだ。

 

 ……戻ってこない。けっこう長い時間がたったと思うけど、無事だろうか?

 いや、ぬいぐるみになってるせいで体感時間がおかしくなっているので、まだ数分しかたってないのかもしれない。

 どちらにせよ、早く戻ってきてくれれば安心できるのだが。

 動くことのできないこの身体が恨めしい。

 

 やきもきしながら待っていたら、やっと戻ってきてくれた。

 だが、彼女の機嫌が悪くなっていた。

「明るいのはここだけのようね。出口はわからなかったわ」

 出口を探していたんなら俺も持っていってくれればよかったのに。

「干吉だったわね。あの男、必ず殺すわ!」

 イライラしてるな。あ、お腹がすいたのかもしれない。今の俺には空腹感が無かったから忘れていたけれど、ぬいぐるみじゃない身体にはつらいだろう。

 次に疑似契約空間に入った時には忘れずに食料を渡しておかないと。

 

 って、もしかして!

 食事のことを考えていたら、もう一つの可能性に思い当たった。

 俺嫁華琳を成現(リアライズ)できるようになった時、彼女にお願いされたじゃないか。……トイレに行きたいって。

 

 それなら、俺を置いていったことが納得できる。

 どうして気づかなかったんだ! こんな時のために仮設トイレがあるんじゃないか。

 ……どこでしてきたんだろう?

 いっしょに持っていってくれていても真っ暗だろうから見えなくて、それでも音だけは聞こえたのかな? マニアックなシチュエーションだ。

 

 早くまた寝てくれないかな。

 疑似契約空間なら俺も動けるようになるし、ここが寒かったとしても毛布や温かい料理も渡せるのに。

 早く寝て、早く寝て、早く寝て……とそればかり考える。

 ……夢で俺と会話できるってわかった時の華琳もこんな気持ちだったのかな?

 

 

 だが、再び疑似契約空間入りをするよりも早く、迎えがきたらしい。

「きたようね」

 なにか音が聞こえたのだろうか?

 俺も耳をすます。

 ……目を瞑らないで意識を聴覚に集中するって難しいな。ぬいぐるみなので、まぶたがないから仕方ないんだけどさ。

 せめて感知スキルぐらい使えればなあ。

 

 ずううぅん。

 今度はわかった。部屋が揺れたから。

「戦っているようね」

 え? 

 ……俺にも聞こえてきた。

 怒号や剣戟の音が。

 

 なにと戦っているんだろう。

 ゾンビかな。中国にもゾンビタウンあったし。まさか現地の人じゃないよね?

 中国の軍人さんだったら外交問題にされたりしないだろうか。いや、光姫ちゃんたちがいるからそれはないか。不法侵入なんかしないで、ちゃんと連絡してからくるはずだ。きっとそうに違いない。

 ……ぬいぐるみにされていて無いはずの胃が痛む気がする。

 

 無印華琳に渡したビニフォンが初期設定のままの着メロを鳴らす。

『迎えにきてあげたわ。詳しい話は後でするから、そこで震えながら待っていなさい。……煌一になにかあったらそのまま生き埋めにするわよ。必死に守ることね』

「この私が震える? その心配はいらないわね。人形を抱いているもの、寒くはないわ。彼も私の胸に抱かれて幸せそうよ」

 幸せだけど、感触がないのが残念です。

 というより、救助を待ってる雰囲気じゃないよね。同じ華琳同士なんだから仲良くしてくれればいいのになあ。

 

 振動が続くようになり、戦闘音がどんどん近づいてくる。

 爆発音も混じってるな。この振動はそれのせいか。

 一際大きな爆発音の直後、部屋の入り口から大きな風が流れ込む。

「無事か!?」

「やりすぎよお姉様! 煌一さんたちまで吹き飛ばされてたらどうするの!」

 この声は翠と蒲公英ちゃんか。

 となると、今の爆発はモトロイドのロケットカノンか。……まさか中国までバイクで来たの?

 

「問題ないわ」

 うん。なんとか爆風や破片の直撃は受けなかったけど、もう少し気をつけてほしい。

「悪い、入り口が塞がれていてな」

 照明用なのだろう、魔法光球を引き連れて現れた白蓮が謝る。ヘルメットを抱えているところを見ると、バイクで来たっぽい。

 謝罪担当はやっぱり白蓮か斗詩なんだろうか。

 

「私の偽者はどうしたのかしら? 救助を他人にまかせるなんて、夫と言いながらそれほど大事に思ってないのかしらね」

「いや、お前たちが直接会うとどっちかが消えるって言ってたぞ。あと、他人ではない。私も煌一の嫁だ」

 ありがとう白蓮。無印華琳の言葉で落ち込んだ気分が慰められるよ。

 ……どっちかの華琳が消えるってどういうことだろう?

 

 悩む俺に気づかず――動かないぬいぐるみの表情なんてわかるわけはないか――白蓮はチョーカーに触れた。

「煌一を確保した。華琳のそっくりさんもいっしょだ」

 ビニフォンのトランシーバー機能か。

 白蓮はチョーカー内蔵のスピーカー機能を装備者にしか聞こえないように調整していたしく、返答は俺たちにはわからない。

 白蓮は数度無言で頷いて「了解した」と告げるとこちらに向き直る。

 

「戦闘はだいたい終わったらしいから帰るよ」

「誰と戦っていたのかしら? 干吉はいたの?」

「兵馬俑だよ。干吉はいなかった」

 兵馬俑?

 えーっと……埴輪であってたっけ?

 俺はみんなが『はに○』と『ひ○べえ』と戦っている姿を思い浮かべた。

 

 後で聞いた話によるとみんなは自衛隊機で中国にきたようだ。入国の許可を貰うための政治的な取引で次のゾンビタウンの解放は中国に決まったらしいけど、恋姫嫁さんたちの縁の地なので元からその予定だった。問題はない。

 墓のそばには兵馬俑がぎっしりと並んでおり、着陸できそうになかったので各自、箒やロボ掃除機改等で降下した。

 一番早かったのは、飛行能力のあるモトロイドにお姫様抱っこされながら着地したライダーたち。着地後すぐにオートバイ形態のモトサイクルに変形させた彼女たちが墓の入り口に向かって爆走し、次いで着陸した嫁さんたちが動き出した兵馬俑と戦っていたそうだ。

 ……モトスレイヴ、もっと量産してもいいかもしれないな。

 

 外に出ると、夥しい数の破片が散らばっていた。たぶん兵馬俑のものだろう。後で貴重な文化遺産を破壊したとか怒られなきゃいいけど……。

「始皇帝の墓ってここじゃないよな?」

「干吉は曹操の墓と言っていたわね。兵馬俑も干吉が用意したのでしょう」

 でも、無印恋姫でこんなの出てきたっけ? アニメ版なのかも。

 干吉も俺みたいに人形を動くようにできるのかな?

 ……いや、ケロロ軍曹に出てきたナノラを使えばいいのか。

 

「煌一殿!」

「煌一!」

 武装したまま、嫁さんたちが駆け寄ってくる。

 しかし、無印華琳に抱かれている俺の姿を見て、悲しそうになる娘たちが多かったので胸が痛んだ。

 そうじゃない嫁さんたちは俺よりも無印華琳の方が気になっているみたい。

 

「ほ、本当に華琳さまそっくりだ」

「春蘭、私の顔を見て固まるなんてお仕置きが必要かしら?」

「姉者の無礼をお許しください、異世界の華琳さま」

 秋蘭が頭を下げるのに、春蘭と魏武将たちが続く。

 

「そろそろ煌一を渡してもらおうかしら?」

 やっと華琳が出てきてくれた。

 うん。衣装以外じゃ見分けがつかない。最初わからなかった俺、怒られないよね?

 

「いいの? 彼の声が聞けるのは私だけのようだけど」

「そんなことはないわ。ファミリア候補者は他にもいるもの」

 ……そりゃ大江戸学園に戻れば、候補者はもっといるけどね。

 迂闊に疑似契約空間に連れていけないってば。だいたい、どうやって俺といっしょに寝てもらうのさ?

 

「嫌だと言ったら?」

「あまり煌一を悲しませたくないのだけれど」

 スタッシュから七星剣を取り出し、(ほう)ってくる華琳。それを受け取る同じ顔の少女。

 

「同じ世界には同一人物は1人しかいられないらしいわ」

 炎骨刃を手にした俺の嫁。

 まさか戦うつもり?

 

「理屈はわからないけれど、たしかに私は1人だけでいいわね」

 無印華琳は俺を白蓮に預けた。

 俺を巡っての争いじゃなかったの?

 

「私たちが接触した場合、強い方が生き残り、そうでない者は死ぬ。ファミリア候補のあなたなら、カードになるでしょうね」

「かあど? ……まるで見てきたような台詞ね」

「ええ。この目で見たわ。私は、私ともあなたとも違うもう1人の私と会ってきたの」

 なにそれ? 華琳ってそんなにいるの?

 

「その私は、私よりも弱かったせいでカードになってしまったわ」

 そんな……たとえ俺の嫁じゃなくても、華琳が死んだなんて悲しすぎる。

 もしカードがあるのなら、復活させることってできないかな?

「安心なさい、煌一。幸いにもその私は復活できたようよ。お腹の子の力によって」

「お、お腹の子!?」

 ぬいぐるみの俺を抱いている白蓮がビクっとした。あ、春蘭が俺を睨んでいるから、その余波でビビっちゃったのか。

 

「あなたはどうなのかしら? 夫はいるの?」

「夫は不要でしょう? 必要なのは妻よ」

「……わからなくもないわね」

 わかっちゃうんですか。

 俺、やっぱり不要なのかなあ?

 

「けれど、あなたは勝てないわ、嫁も夫もいるこの私には。復活できる可能性も低そうね。……それでもやると言うのなら全力できなさい」

「面白い。受けて立ちましょう」

 ……どっちも挑戦を受ける立場っぽいんだけど。

 こんな戦いは止めてほしいな。喋ることができたとしても、止めてくれそうにないけどさ。

 

「華琳さま?」

「手出し不要よ。もしもあの娘が勝ったのなら、あの娘を華琳として仕えなさい。もっとも、そんなことはありえないけど」

 相手も華琳なせいか、春蘭たちにも止めることはできないようだ。

 稟と風はため息をついて、みんなに命じて兵馬俑の破片をどかし、戦いのためのスペースを準備しはじめた。

 

 そこそこの空間が確保されると、みんなを下がらせて2人の華琳が再び向き合う。

「覚悟はよくて?」

「そちらこそ」

 同じように不敵に微笑むと、同時に彼女たちは動き出した。炎骨刃から炎を出してないのは相手に気を使っているのかな、華琳。

 互いの刃は相手に届かず、ガキィと正面で鍔迫り合い。

 

「おおおおお」

「覇ァッ」

 らしくない気合で華琳たちが叫ぶ。

 それに応えるかのように、彼女たちの剣に異変がおき始めた。

 俺嫁華琳の持つ炎骨刃にピキピキとヒビが入っていき、無印華琳の持つ七星剣に埋め込まれた7つの玉が次々に輝き出す。

 これってもしかして……。

 

「これは……」

「進化したようね」

 華琳の手には3つの玉が埋め込まれた金色の剣、威天剣(いてんけん)が。無印華琳の手には4つの玉が埋め込まれた青い剣、星凰剣(せいこうけん)が握られていた。

 2つの剣とも赤い光を纏っている。

「あれこそまさしく太陽の輝きなのです」

 魅入られたように呟く風。

 

「強敵との戦いでこそ進化すると予想していたけれど、思った通りね。上手くいったわ」

「……まさか、このために私と?」

「ええ。干吉と左慈に勝つためにはもっと強くならなければいけないのよ」

 そうか。華琳が戦いを挑んだのは、武器を進化させるためだったのね。

 言ってくれれば用意したのに。プラモにはさらに強化型の天鳳威天剣と天鳳星凰剣もあるのに。

 ……今の俺には成現はできないか。

 

「ふふふ。この私を砥石代わりにするとは。どうやら私の負けのようね」

 剣を地面に刺し、右手を差し出す無印華琳。

「さっきの話は本当なのだけど。……かまわないのね?」

「ええ。たった一合でもあなたの強さはわかった」

 華琳は無言で頷いて、無印華琳と握手をする。

 華琳の言葉通りに無印華琳が消えてしまった。

 華琳……無印華琳は本当に華琳とよく似ていただけに、心が辛い。なんとか復活させてあげることってできないのかな?

 

「SR曹操……」

 無印華琳が消えたと同時に持っていたカードを眺め、呟く嫁。その声はどこか寂しそうだった。

 

「さあ、帰りましょう」

「後始末は任せなさい」

 あれ? もしかして対魔忍のアサギさんも来ていたのか。入国で世話になったのかもしれないな。

 

「あの華琳は煌一と契約してなかったからポータルを使うためには仕方なかったわね」

 雪蓮、慰めてくれてるのはわかってるけどそれなら自衛隊機で帰ってくればよかっただけだよ……。

「それよりもまずは煌一殿の方が先だ!」

「そうです!」

 もう少し無印華琳のことも……愛紗たちは俺のことを気にかけてくれてるんだ。落ち込んでばかりもいられないか。

 ポジティブになったところで、今の俺にはどうしようもないけどさ。

 

「それについては考えがあるわ。セラヴィーのところへ行きましょう」

 セラヴィー?

 干吉に人形にされた場合は、彼にも戻せないんだけど。

 悩んでいる間にポータル、ゲート、またポータルと移動していて気づけばサンダル城についていた。

 

 

「おやおや。煌一君も人形になっちゃいましたか」

「ええ。戻せる?」

「無理ですよ。そっちの研究はしてません」

 やっぱりか。

 ……セラヴィー、なんかいつも以上ににこにこして嬉しそうなのは気のせい? 俺の被害妄想?

 戻せるのに戻せないって言ってる気がしてくる。もしそうだったら、どろしーちゃん人形を成現して寝取ってやる! ……いや、冗談だからね。すでにものは入手してるけどさ。俺がそんなことするわけないでしょ。

 

「まあいいわ。それなら、人形屋敷もどきはできているかしら?」

 あ、セラヴィー今、舌打ちしたよね?

「気づいちゃいましたか。完成していますよ。残念ですけれど」

 残念ってなに? 俺、そんなにセラヴィーに嫌われることした?

 いや、ただセラヴィーの性格が悪いだけか。

 ……セラヴィーがにこにこしながら、俺の両頬を抓っている。考えを読まれたのかもしれない。

 

「顔に出ていましたよ」

 俺、ぬいぐるみなのに?

 セラヴィーはさすが変態というべきだろうか。

 

 それでもセラヴィーは城内に造った人形屋敷もどきに案内してくれた。

「君が戻らないと、剣士君が煩いですからね」

 まったくこのツンデレさんめ。……セラヴィーはヤンデレだったな、そういえば。

「……」

 だから俺を抓るのは止めて。

 

「どうです?」

「……うん、動けるみたいだ」

 室内には俺の他にも大魔王サンダルのさらった金髪縦ロール(くるくる)の少女たちの人形が何体もいて、彼女たちも動き回っていた。

「世界一の大魔法使いの手にかかれば、こんなものですよ」

「……感謝する。ありがとうセラヴィー」

 いまだぬいぐるみのままだけど、これで少しは楽になった。動けない喋れないってのは辛すぎる。

 

「はわわわ……人形のまま喋る煌一さん可愛すぎます!」

「いやそんなこと言われても嬉しくないから」

 愛紗や桃香、小蓮ちゃんまでうっとりとこっちを見るのは勘弁してよ、もう。

 

「煌一、自分に成現は使えないのか?」

「冥琳も気づいたか。疑似契約空間では使えなかったんだけど……試してみるね」

 スタッシュから旧ビニフォンを取り出し、画面を見ながら固有スキルを試す。

 結果はやはり失敗。ここでもスタッシュが使えたのがせめてもの救いか。

 

「失敗するのは当然ですよ。煌一君からは魔力を全く感じません」

 セラヴィーが教えてくれた。

「そうね。MPや他の能力値もないわね。あるのは耐久度くらい」

 華琳の鑑定結果のビニフォン表示を見せてもらったら、ゼロどころか『ー』になっていた。

 完全にアイテム扱いらしい。

 

「あわわ……で、でもすたっちゅが使えるのですから可能性はあります」

 そうだね雛里ちゃん。諦めちゃ駄目だよね。あの華琳も助けたいし。

「GPで成現……幾らになるか見たくないなあ」

 今はわからないけど、俺のMPは(けい)を超えちゃっていた。能力によって必要な成現コストも変わるから、とんでもない金額になるはずだ。

 

「煌一、なにか忘れてないか?」

 レーティアが俺に左手を見せる。……薬指には銀色に輝く指輪。そうだよ、それがあったじゃないか!

「ビニフォンが使えたんだから、アイテムは使えるはずだ」

「試して」

 外した指輪を渡してくれるヨーコ。指のない両手でしっかりとそれを掴み、魔法を使ってみる。

 使い慣れた光の魔法はミスることなく、1個の光球を生み出した。

 

「やった! これで元に戻れる!」

「煌一!」

 感極まったのか、梓が俺を強く抱きしめる。

 嬉しいけど、それは戻ってからにしてね。戻ってから……できれば年相応の姿に戻りたかったなあ。

 諦めるしかないか。俺が自分の姿をイメージできないから、設定改変もできないし。嫁さんたちとの絆(エンゲージリング)のおかげで人間に戻れるだけでもよしとすべきだ。

 うん。嫁さんたちに感謝しないと!

 

 ……嫁さん? そうだよ嫁さんたちだよ! 嫁さんたちならどうにかできるかもしれない。

「俺の元の姿って、イメージできるか? チャンスは1度しかないからできれば無駄にしたくないんだ」

「チャンスって改竄のか? ……ふむ。やってみる価値はありそうだな」

 クランも考える素振りを見せる。俺の顔を思い出しているのかもしれない。

 

「貴様の顔などワタシはそんなに覚えていないのだが」

 焔耶の台詞に頷く者多数。

 それもそうか。みんなを人間に戻したのって俺が小さくなってからだったもんなあ。ぬいぐるみの時の視界と、人間に戻ってからの視界は違うから、おっさんな俺のみんなのイメージは巨人かもしれないし。

 

「ここは、嫁レン……五嫁大将軍にまかせるべきですー」

「そうだな。頼めるか?」

 穏の案が一番だろう。EPを籠める人数が増えすぎても両さん銅像のようにコストが莫大になるかもしれないし。

 

 EP籠めは夜当番の順で試すことになった。

 といっても、以前のような契約順ならともかく、現在は誰がくるか知らされてないので俺には順番はわからない。

「まずはあたしからだね! ……こんな顔だったよな?」

 梓は俺の従兄妹って設定に改変したから、もしかしたら痕の耕一のような顔を思い浮かべるかもしれない。

 そんな設定にしちゃったのは俺なんだし仕方ないよね、甘んじて受け入れようと思う。俺は自分の顔にそんなに拘ってないし、もしかしたら魔顔の呪いも解けるかもしれないから。

 それに、この後の嫁さんたちで多少は修正されるだろう。

 

「うん。必要MPはみんなの指輪を使えば足りる。……でも、『スキル鬼制御の追加』ってなってるんだけど」

「だ、だって煌一が自分の中の鬼に負けちゃったら……」

 泣きそうな顔の梓。ああ、梓の中では俺も(エルクゥ)の一族の血が流れていることになっているのか。

 自身の鬼の制御ができなくて彼女の両親も叔父もそれに苦悩して自ら命を絶ったんだ。俺もそうなるんじゃないかって不安なんだろう。

 ……いいか。梓が安心してくれるならそのままにしておこう。

 

「次はあたしね」

 ヨーコが俺を抱き上げる。

 巨乳さんが続くのに、感触がないなんて残念すぎる。俺は心で泣いた。

「こんなものでどう?」

「身長とかの数値でしか判断できないけど、いいんじゃないかな?」

 成現後の状態は、文字でしかわからない。画像が表示されれば助かるのに。スキルレベルが上がればなんとかならないかな?

「……『耐性KOCの追加』は必須だよね、うん」

 なんで思いつかなかったんだろう。これがあれば安心してヨーコとキスできる! もちろんそのままにしておこう。

 

「生物の身体を覚えるのはまかせるのだ!」

 クランの番か。彼女は見た目も口調も幼いが、実は才媛。不安はない。

「たぶんバッチリなのだ。感謝しろ!」

「……『スキル愛神化の追加』ってなってるよ」

 変身して翼が生えてくるスキルだろうか? そんなにあの翼が気に入ったの?

 俺としてはむしろ、エロ神の欠片を身体から出したいんだけど、俺もクランを巨人化できるように改変しちゃってるんだし、拒否るわけにはいかないだろう。もちろんそのままで。

 

「……なんか設定改変というか、嫁さんがチートコードを入力して俺のデータを改竄しているような気がしてきた」

「ならば、煌一の呪いの解除もできるのではないか?」

「……今なら試せるか」

「うむ。まかせるのだ!」

 天才少女のレーティアなら問題あるまい。絵も上手だから、造形の把握もしっかりしてるはずだ。

 呪い解除、上手くいかなくてもそれは仕方ないだろう。

 

「……必要MPがバグった。呪い解除は無理みたいだ」

 両さんのHPのように文字化けしている。成現での解除は不可能のようだ。

「そうか……」

「で、でも、駄目だって割り切れるから。届きそうなぐらいに足りなかったら、みんなに指輪にMPを籠めてもらわなきゃいけなかったから、これでいいんだよ。俺、すぐに戻りたいし!」

「……そうだな。姿の方は自信あるから期待してくれ!」

 ふう。

 落ちこませずに済んでほっとした俺は、呪い解除を削除しただけで他の表示を詳しく確認しなかった。……確認してればよかったと成現後に後悔することとなる。

 

「最後は私。煌一とのつきあいが一番長いのだから、当然ね」

 俺の顔を一番見ているのも華琳だろう。呪いに抵抗するために俺の寝顔をじっと観察していたぐらいだ。

 ……もしかしたら俺を女体化させるんじゃないかってちょっと心配だけど。

「どう?」

 恐る恐る表示を見ると、よかった。女体化は追加されていない。俺が男でいいってことだろう。

 そうだよ。元のおっさんに戻ったら、本番を許してくれるって言ってたもん! 期待していいんだよね?

「必要MPは足りそうだよ。『スキル双頭竜の追加』ってのはよくわからないけど」

「平行世界で会った私が教えてくれた彼女の夫の能力よ。とても有用なスキル」

 その世界の華琳を孕ませたというヤツか。羨ましいな。

 首が2本あるドラゴンに変身するのかな? それとも二刀流の流派?

 必要MPもかなり増加したし、華琳が望むほどの能力だから期待してもいいだろう。後で詳しい話を聞いてみよう。

 

 うん。これで準備はできた!

 スキルも増えて強くなれるみたいだし、チート強化された俺がちょっと楽しみだ。

 

 もちろん一番の楽しみは、やっとできる本当の初夜だけどさ!

 絶対に成現を成功させてやる!!

 

 




威天剣と星凰剣、どっちがどっちから進化したのかごっちゃになって調べました

星凰剣 アニメBBWで進化
威天剣 戦神決闘編で進化

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