風譜バッテリー   作:群武

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3球目

「ウチが打てばハーゲンダッツね!」

 

バットを持った茶髪の子はマウンドに立っている真面目そうな子に対して木製バットの先を向ける。

 

「じゃぁ、私も抑えたらハーゲンダッツね」

 

そう応えたマウンドの女学生は振りかぶる。

高く持ち上げた脚を前に出すと共に上体が一気に沈み込む。

 

(アンダスロー!?)

 

私は一塁側のスタンドで見学をしながら驚く。

ボールを持った腕は地面に触れるギリギリの高さを通り、手に持った白球を弾き出す。

弾き出された白球はアンダスローとは思えない球威で左打席に入った茶髪の子目掛けて襲いかかる。

 

パカァン

 

乾いた気持ちいい音を響かせながら打球は真後ろのバックネットに突き刺さる。

(アンダスローであの球威!しかもそれにドンピシャで合わせたバッターの子も凄い!)

 

私はたった1球の攻防で2人の技量の高さに感心する。

そんな私を他所に2人の攻防は続く。

2球目はアウトコースをファール

3球目はアウトコースが外れてボール

4球目はインコースが外れてボール

 

(これで並行カウント。そろそろ変化球があるかも)

 

私は1人で配球を読みながら次のボールを待つ。

そして投じられた5球目はインコース低めに制球された

 

(チェンジアップ!)

 

今までと同じフォームから投げられた全く球速の違うボールに茶髪の子は体勢を崩されながらも辛うじてバットに当てる。

 

(あっ)

 

そのファールボールが私の方に向かって飛んでくる。

 

「「危ない!」」

 

勝負していた2人は観戦していた私に今気付いたみたいで咄嗟に叫ぶ。

 

「よっと」

 

私はボールの進行方向に右手を引き勢いを殺しながら掴む。

ペチッと言う可愛らしい音を鳴らしながら捕球を成功させる。

 

「大丈夫!?」

 

「怪我ない!?」

 

2人は慌てて私の方へと走ってくる。

そんな2人に対して私は大丈夫と答えて返球する。

 

「それにしても2人とも凄いね〜。どこのチームでやってたの?」

 

「よく硬球を素手で捕ったわね。私は梅原愛李。みんな梅って呼ぶわ。よろしくね」

 

「ウチは富山胡桃!胡桃って呼んで!ウチらは嵐山ガールズって所でやってた!」

 

どうやら真面目アンダースローが梅原愛李ちゃんで、木製バットが富山胡桃ちゃんね。

嵐山ガールズと言えば女の子だけのチームで地区大会ベスト4の強豪だったはず。

 

「それで、キミはどこのチームでやってたの?」

 

胡桃ちゃんが興味津々な表情で食い付いてくる

 

「私は涼風鈴音。中学は祇園ボーイズ」

 

「「!?祇園ボーイズ!?」」

 

2人は驚いた表情で見事にハモる。

 

「祇園ボーイズって全国優勝した。あの祇園ボーイズ!?」

 

「あっ、知ってるんだ。その祇園ボーイズで間違いないよ」

 

「すげー!全国区だ!」

 

2人は興奮が抑えきれずにグイグイくる。

 

「これは名門祇園高校復活だ!」

 

胡桃ちゃんはテンションがおかしくなってしまったのかピョンピョン跳ねる。

 

「うーん。それなんだけど高校ではあんまり本気でやりたくないんだよね」

 

私は2人の期待値が高くなりすぎる前に希望を否定しておく。

 

「えーなんでなんで!せっかくなら全国目指そうよ!」

 

勿体ないと言わんばかりに食い下がる胡桃ちゃん。

私が少し困ったような表情をしていると梅ちゃんが助け舟を出してくれる。

 

「ちょっとは落ち着きなさい。そもそも本気でやる気なら宮川に行ってるはずよ」

 

「確かにそうだよね」

 

見るからに落ち込んだ表情をする胡桃ちゃんを見て少し罪悪感を覚える。

 

「そう言えば、勝手にグラウンド使ってるけど許可とか要らないの?」

 

私は罪悪感から逃げるように別の話題を振る。

胡桃ちゃんはまだ諦めてなさそうな表情のまま梅ちゃんと顔を見合わせる。

 

「「それは大丈夫。胡桃(梅)が許可取ってるから。ん?」」

 

そこまでの回答と反応が全く同じになる。

 

「「え?」」

 

2人は息ぴったりで顔を見合わせる。

 

「と、言うことは無許可?」

 

私は少し嫌な感じがする。

 

「勝手に使ってるのは誰だ!」

 

その予感は的中してしまう。

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