こちらはテイワット情報局!! 作:アヴァターラ
「で、鍾離先生。こんなところに呼び出して何の用?大体察しはつくけどさ」
「さすがに理解しているか。単刀直入に言おう、俺と契約してほしい。これからのことについてだ」
そう言いながら璃月港を背にした鍾離先生が振り返る。切れ長の瞳を少し鋭くした彼はあくまで俺を尊重する形で俺に選択権を渡してきた。ついでにコメント欄も
・ななななななんちゅうイケメン!
・展開についていけないんじゃが?この人神様ってマジ?
・さっきのイベントで死んだ神さまはなんだったのか
・が、顔面が輝いてらっしゃる・・・後光が見える・・・!
・見えちゃいけないもん見えてて草
・ゴリラ!説明!説明!
ズラーッとコメントが飛び交うスマホに気付いた鍾離先生は少しだけ顔を緩める。やはり神様、別世界の存在には気づくか。だが度量が広い。観測される程度ならまったく気にしないのだろう。武神とされる割にはおおらかなことだ。
「異界の者たちか。すまんが少しこいつを借りるぞ。ああ、自己紹介がまだだったな。名はたくさんあるが今は鍾離と名乗っている。普段は往生堂で客卿をしている。こちらでは岩王帝君、といったほうが通りがいいが・・・何分長く生きているとその名の高名さは少し煩わしくてな。他言無用で頼む」
「とまあ本物の神様だぞお前ら。会えてよかったなーご利益あるかもよ?」
「俺の正体を知っていてもなお態度を変えないお前は相変わらずだな・・・まあ下手に畏まられるよりもいいのだがな」
「本当に畏まってほしいならそうするけど先生はそういうのあんまり好きそうじゃないからな」
万民堂で会った時もそうだ。敬語使ったら一発でバレた。つまり初対面の敬語と神を畏まって使う敬語の違いを一言で見抜いたんだ。そんであれよあれよという間に芋づる式に俺のすべてが暴かれてしまった。そして秘密を話したことで面倒が消えた俺と食事をとって仲良くなれたのである。ついでに万民堂で箸を使ったのも判断材料だった。そこはわからんて。
さすが神様なだけあって話が面白く、璃月の創生から今に至るまでの歴史の話は大変勉強になった。だってほぼ正史だもんね。本より正確なことに定評のある先生だもの。
・神様にフランクなゴリラ
・ほんとに神様がいる土地だったんだな
・コイツほんまなんなん?
・ほーんでさっきの迎仙儀式でやられたのはなんなんだ?
・あ!それそれ!神様ピンピンしてんじゃん!もう一回降臨してあげなよ
「あー・・・それな、それなんだけど・・・。すまん、あれ狙ったものなんだ。どういうことかというと・・・」
「璃月には俺はもう不要、害になりかねんと考えてな。一芝居打たせてもらった。ノクリアは協力者のようなものだ。ただ、この危機を人と仙人が乗り越えられねば璃月に発展は望めないだろう。そうならねばもう一度俺が璃月を庇護する。その件について呼び出したのだ」
「そーゆーことらしい。璃月は迎仙儀式で降臨した岩王帝君の予言によって1年間運営される。これをなくして人の赴くままに璃月を発展させてほしい、だっけか」
「概ねそうだ・・・ある商人の会話を聞いた。「君は君の責務を果たした。今はゆっくり休むのだ」と。ただの会話だった・・・しかし俺は自分にこう問うた「俺の責務は果たされたのか」と。それを確認するための今回の事件だ」
・3000年だっけか・・・確かに長い。
・俺達には全くわからんけどな
・ようは引退したいけど自分のいない後が心配って話?
・一気に俗っぽくなったな
・それでなんでゴリラに話があるんだ?
「さて、契約だ。我が友、本日より「璃月の趨勢が決まるまでは核心に触れ、それを他の者に伝えるのを禁ず」「お前自身が璃月の趨勢を決めるものに参加することを禁ず」・・・以上の契約を結んでほしい。対価はお前が決めろ」
「じゃ、質問だ。俺はこの後凝光さんに呼び出されている。彼女に協力すること自体は契約に反するか?」
「真実を伝えないならば反しない。協力をするしないはこの契約に含まれない」
「あくまで、この一連の真実を隠すならばってことだな?じゃあ、契約成立だな。対価は・・・そうだな・・・鍾離先生自身が稼いだモラで飯でもおごってくれよ。前は俺が払っただろ?」
そう伝えると彼は少し呆れたような顔になってため息をついた。なにその反応、俺結構それしてくれたらうれしいんだけど~?
「ハァ・・・お前というやつは・・・それでは平等ではないだろう。確かに俺はお前に一度馳走になった。それを返すだけならいつでもしてやる。もう少し何かないのか」
「・・・じゃあ、あくまで提案だ。「一度のみ、助力を求められた場合に限って上記の契約を無視することができる」俺側の保険としてどうだ?」
「・・・いいだろう。それを加え、この契約は結ばれたものとする。反した場合は岩王帝君より罰が下るだろう・・・なんてな。無理をさせたのは悪いと思っている。どう思ってもらっても構わん」
「友達なんだろ?ま、最悪璃月から追い出されるかもと思ってたからな。こんくらいなら軽い軽い・・・用はそれだけか?この後は?」
「実は冬国の武人から呼ばれていてな。そちらのほうにいく。そら、いま千岩軍と戦っている男だ」
「ああ、あれね」
目線とカメラを下げるとちょうど千岩軍に追われて大立ち回りしていた蛍ちゃんとパイモンちゃんが頭に仮面を斜めにかぶったイケメンに助け出されたところだった。今世では初めて見るが、あれがタルタリヤさんね・・・なるほどたしかにバトルジャンキー扱いされるのもわかる。立ち振る舞いが武人のそれだ。あれでオリジナル笑顔でも浮かべようものなら完全に別作品に出張できるだろう。
「俺はそろそろ行くとしよう・・・ノクリア、契約が果たされお前と席を共にするのを楽しみにしている」
最後にそういった彼はすべてを包み込むような微笑みを浮かべて岩元素の粒子に紛れて消えて行ってしまった。はー、最後の最後まで顔がいいな。とりあえず行動方針は決まった。
・イケメンは何をしてもイケメンなんだな
・なんで俺の顔はこんな・・・
・神様と比べてはいけない(戒め
・蛍ちゃん逃げきれたっぽいな。よかったよかった。
・喜んでいいのだろうか・・・お尋ね者扱いだよな?
「ま、とりあえず玉京台に戻るか。そのあとすごい場所に連れてってやろう。度肝を抜かれること間違いなし、だ」
・自信満々やな
・凝光様に会いにいくんか
・あの人相手に隠し事できるんかお前
・偉い人につながりがあるゴリラ
・ほんまコイツよーわからんわ
山を下りて玉京台に降りる。気づかれないように璃月港に入るともうすでに町は大騒ぎ、玉京台に続く道はすべて封鎖され、千岩軍のお兄さんがたがせわしなく動いていた。正直なところ邪魔するのは非常に申し訳ないが呼び出しのこともあるので声をかける。
「あー、申し訳ない。この先に用があるのですが・・・通行しても?」
「え!?すいません、いま玉京台周辺は封鎖の処置が発行されてまして・・・この先にどんな御用で?」
「えー、まあ・・・群玉閣にですね、呼び出されまして・・・」
そう言って凝光さんが俺に向かって放った宝石を見せる。宝石はいつも彼女が攻撃に使っているものとは違い、カットが施されている。それを見た千岩軍のお兄さんは一気に顔色を変えて頭を下げた。この宝石、正確には岩元素を固めて作ったこれは符丁なのだ。凝光さんが作り、彼女だけしか作成を許されていない形。この璃月においてこのカットが施された宝石は彼女が作ったものを除いてほかにはない。あっても骨董品、これを持つだけで証明になるのだ。
「ももも申し訳ありません!まさか「天権」様のお客様とはつゆ知らず・・・!すぐに部隊長が参りますのでそのままお待ちください」
「通してくれるだけでいいんだけどなあ・・・」
慌てて隊長を呼びに行ったお兄さんに対して心の中で土下座しているとお兄さんがいかにも古強者といった感じのおじいさんを連れてきた。古傷が走る鎧がよく似合っているおじいさんは非常に渋い声で
「若いのが失礼を働いたようで申し訳ない。天権様のお客様とお聞きしました・・・ははあ、なるほど。焔腕騎士、ですな?天権様がこの非常時に呼ぶのも納得ですわい。では騎士殿、老い耄れ同伴で申し訳ないが群玉閣にいく浮遊岩のもとまでご一緒させていただきます」
「お詳しいようで。といってももはや自分は正式な騎士にはありません、凝光さんもあなた方を頼ってますよ。面倒をおかけします」
「よろしいのですよ。では、まいりましょうか」
・こんな年の取り方したい。
・鎧と槍の古傷に強者感を感じる
・つーかゴリラの二つ名隣国まで響いてんの?
・下っ端のにーちゃんが「焔腕騎士・・・!?」って驚いてるの草
・すまんそいつただの脳筋なんですわ
・過去になにやらかしたんですかね
おじいさんとハスの花が咲く不卜廬に面した道を抜けて琉璃百合が咲いている玉京台へ戻る。そしてどどんと中央寄りにそびえたつ建物においてある緑がかった岩を見つけてそれに乗る。俺が乗ると不思議なことに何も手を加えずとも浮くとされる岩、浮遊岩に刻まれた術式が発動して一人でに天高くに向かって登り始めた。穏やかに手を振るおじいさんに手を振り返して向き直る。
「つーわけで今から、群玉閣にいくぞー。群玉閣っていうのはだな、天に浮かぶ凝光さんの城みたいなもんだ。この岩に乗ってればすぐだからな」
・ラピュタは本当にあったんだ!
・ふはははは!見ろ!人がごみのようだ!
・茶番乙
・お、見えてきた・・・って本当にラピュタじゃん!
・すっげー、城が浮いてるわ
「待っていたわ、ノクリア。私がたまたま外に出たタイミングで着くなんて狙ったのかしら?」
接岸した浮遊岩を降りるとドアが開いて凝光さんが姿を現した。思ったより落ち着いているようでよかった。事情を完全に把握しているとはいえあんなことがあった後だ。多少は取り乱しているもんかと思ったが・・・結構いつも通りっぽいな。さすが凝光さん、七星だけのことはある。
「狙ってなんかないですよ。それよりも思ったよりも冷静ですね?帝君が殺されたというのに、もう少し切羽詰まってるもんかと思いましたが」
「・・・いいことを教えてあげるわノクリア。人間はね、自分より取り乱している人物を見ると冷静になれるのよ」
「・・・はい?」
「ついてらっしゃい。まずあなたに頼みたいことはそこで説明するわ」
・若干疲れた顔してるけどしゃーないわな
・んだんだ。芝居とはいえ目の前で神様が死んじゃったわけだし
・おお、豪華な建物だなあ
・内装も豪華だなあ、ツボ一つくらいとっても・・・ばれへんか
・通報してやろうか
・許してヒヤシンス
「ついたわ。ここよ」
「ここって・・・甘雨の執務室?なるほど、書類整理ですか?まああんなことがあったわけだからマンパワーが不足していると」
「・・・違うのよ。見ればわかるわ、ノックせずにはいりなさい」
「・・・女性の部屋に?ノックもなしで?」
「・・・いいから」
「・・・わかった」
ガチャリ、とドアを開けて執務室に入る。するとそこには・・・
「が、岩王帝君が・・・岩王帝君が・・・うふふ・・・・あはは・・・えっと、どうすればいいんでしたっけ・・・?」
「か、甘雨?」
「えっと・・・儀式?そうです、送仙儀式・・・往生堂に依頼のほうを・・・それと、えっと・・・」
か、甘雨が壊れている!?豪奢な執務机に座っている黒い角の生えた青みがかった銀髪、背中がぱっくりと空いた大胆な服を着ている美女がうわごとのように何事かをつぶやきながら手だけは高速で動いてすさまじい速度で書類を整理している如何ともしがたい光景であった。やばい、瞳からハイライトさんが出張している。こんな甘雨見たことないぞ
「迎仙儀式で岩王帝君が身罷られてからずっとああなのよ・・・仕事はしてるのだけど、さすがに心配だわ。あなたが連れ出して休ませてあげて頂戴?私はほかの仕事をするから」
・なんだろう。美女、角付きで完璧にタイプなのに悲惨さが勝る
・美女なのに素直に喜べない
・うーんこの。事実を知ってると心が痛い
・目が死んでいる・・・!
・と、とりあえずゴリラ知り合い?
「とにかく!甘雨の仕事は私が代わりにやるから元に戻してあげてね?じゃあ、お願いするわ」
「えー・・・・」
凝光さんそりゃないよー・・・丸投げじゃーん・・・俺は脊髄反射で仕事をし続ける甘雨をどうにかするためスマホに向き直って相談を開始するのだった。