【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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アニメパートも折り返しに突入しました! 次回からいよいよ後半戦…
訃堂へのお仕置きは次の次の辺りの予定しています。







第85話 奇跡の殺戮者は、二度甦る。

ノーブルレッドと風鳴機関に何らかの繋がりがある事を突き止めた緒川を始末するべくヴァネッサが強襲。戦いの末カリバー、クリス、マリアはヴァネッサを追い詰めるが同時にチフォージュ・シャトーからメロディが聞こえ眩い光が天へと伸びる。そして、何やら女性の身体らしき物が現れ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは何かのジェネレーター……ッ!? こ、これはッ!?」

 

エルフナインがチフォージュ・シャトー内にて、ジェネレーターに人形の残骸を発見した時…ある事が起きていた。

 

「あなた達は…一体何を企んで…」

 

「あぁッ!」

 

ミラアルクはいきなりエルフナインの首を掴み上げ、翼と同じ刻印を施す。すると、エルフナインの瞳も翼と同じスタンドガラスの様になった。

 

「バイオパターン照合。」

 

ミラアルクはエルフナインの首を離す。エルフナインはそのままジェネレーターの制御する部分へ向かう。

 

「さぁ、認証を突破してもらうゼ。マスター。」

 

エルフナインが制御する部分に近づくと、何やら英文が浮かび上がった。

 

「その庭に咲き誇るは、ケントの花….知恵の実結ぶ、ディーンハイムの証なり…」

 

エルフナインが文章を読み上げると、文字はピンク色に変化し、下から上へとエネルギーが上っていき、そのまま蓄積されて天へと伸びていく。

 

「稼働は順調……廃棄されたとはいえ、高密度のエネルギー体。これを利用しない手は無いでありますッ!」

 

「そしてこいつの利用価値はここまでだゼ。後は心を破壊して…」

 

稼働さえ出来ればエルフナインは彼女達にとって用済み。再び刻印を施そうとしたその時…

 

(これ以上オレを覗き込むなッ!)

 

突如、エルフナインの瞳がミラアルクを睨みつけ、一人称が"ボク“から"オレ"に変化。口調も声色も変わったのだ。

 

「うッ!?」

 

突如、ミラアルクに頭痛が走る。

 

「どうしたでありますかッ!?」

 

「こいつ…何を…ッ!?」

 

すると、エルフナインは気を失って倒れる。その時、チフォージュ・シャトーが揺れ始める。エルザはモニターに映し出されたシェム・ハの腕輪が設置された起動装置を見る。

 

「制御不能ッ! 腕輪からの抽出されるエネルギーが抑えられないでありますッ! このままでは…」

 

設置されたシェム・ハの腕輪が閃光を放ち、またメロディを奏でる。そしてその横で未来はまだ眠ったままだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が起きている…ッ!?」

 

指令室ではチフォージュ・シャトーから放たれる光を見て、弦十郎と何が起きているのか分からない。

そして外ではカリバー、クリス、マリア、そしてヴァネッサもその光を見ている。

同時に女性の身体の様な物が姿を現した。

 

 

「まさか、チフォージュ・シャトーが稼働しているのッ!?」

 

「こいつら、廃棄施設をアジト代わりに使ってやがったのかッ!」

 

「つまり、小日向未来とエルフナインは、あそこだッ!」

 

ここでノーブルレッドのアジト…未来とエルフナインがいる場所が確定。

3人がチフォージュ・シャトーに気を取られている隙に起き上がったヴァネッサがクリスを蹴り飛ばす。

 

「ハァァァァァッ!」

 

すぐ様マリアが斬りかかり、避ければカリバーが殴り付る。形成不利だと判断したヴァネッサは逃走図ろうとする。

 

「逃すかよッ!」

 

クリスが短銃をヴァネッサに向ける。すると、猛スピードで突っ込み銃口に指を押し込んだではないか。

 

「ッ!?」

 

思いもよらない行動に驚くクリスだが、引き金を引いて爆発させヴァネッサから離れる。

 

「どこまで奔放なのッ!?」

 

爆発した後、ヴァネッサの右手は無くなっているが彼女は平然としている。

 

「びっくりさせちゃった? だけどこちらも同じくらい驚いてるのよ。」

 

ヴァネッサは胸からテレポートジェムを取り出して落とし、姿を消した。

 

「してやられちまったか…ッ!」

 

「う……ッ!」

   

「どうしたッ!?」

 

「まさか、未来予知ッ!?」

 

カリバーが頭を抑える。ここで闇黒剣月闇の未来予知が発動。ここで啓示された未来は「チフォージュ・シャトーにて響、翼、調、切歌、囚われの未来とエルフナインが死ぬ」という物。それと同時に…

 

「やっぱり…この音は…!」

 

再び聞こえて来るこの音。やはりマリアはこのメロディが口ずさんでいるあの歌に聞こえる。何故なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

『本部ッ! 状況を教えてくれッ!』

 

「先日観測した、同パターンのアウフヴァッヘン波形を確認ッ!」

 

「腕輪の起動によるものだと思われますッ!」

 

チフォージュ・シャトーから発するこの音は、ノーブルレッドの旧アジトにて観測された物と同じ。つまり、シェム・ハの腕輪が起動したという事だ。

 

「これがシェム・ハ…アダムが予言した、復活のアヌンナキ…」

 

「先に行ってるぞ…ッ!」

 

カリバーはチフォージュ・シャトーへ向かうべく闇黒剣月闇で空間を斬り裂き、闇の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、カリバーが未来で見た通りのメンバー響、翼、調、切歌がヘリでチフォージュ・シャトーへ接近していた。

 

『そちらに向かっていた翼さん達を、至急、対応にあたらせましたッ!』

 

『イチイバル、アガートラームも、至急合流されたしッ!』

 

 

 

 

 

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!」」」

 

謎の物体はヘリを敵と見做したのか光線を発射して来た。

衝撃に押され響、調と切歌は尻餅を突いてしまう。 

 

「くッ…敵は大筒・国崩しッ! ヘリで詰められる間合いには限りがある……』

 

翼の言う通りこれ以上ヘリで接近すれば撃墜させる危険性がある。

 

「それでもッ! ここまで来れたらッ!」

 

「十分デースッ!」

 

4人はヘリから飛び降りる。そして…

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「Various shul shagana torn」

 

「Zeios igalima raizen tron」

 

4人は聖詠を唱えギアを纏う。謎の物体は響達に向けて光線を放つが、調が丸鋸を展開して盾として防御。

3人も光線を弾きながら接近していく。

物体は触手を伸ばして響達を攻撃するが、それを利用して職種の上を滑りながら迫る。

その内の一本が調に迫る。が、切歌がバーニアを点火し、鎌で防御し弾く。そこへ再び触手が迫るが切歌は鎌で弾く。

 

 

 

「調ちゃんッ! 切歌ちゃんッ!」

 

その隙に響と翼がチフォージュ・シャトーの上部に降り立つ。

 

「機動性においては、こちらに分があるッ!」

 

翼が纏う天羽々斬は機動力に優れている。刀を駆使して触手を弾き、持ち前の速さで次々と避けていく。

 

「まずは距離を取りつつの威力偵察だッ! 行けるなッ!?」

 

「はいッ!」

 

「デスッ!」

 

翼の言葉に返事をした2人に触手が迫るが、切歌が鎌で受け止め、調も地面を滑りながら丸鋸で弾く。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「装者応戦ッ! ですが……」

 

「高次元の存在相手に、有効な一撃を見舞えていませんッ!」

 

「ああ……」

 

響達が戦う様子は指令室にも移しだされているが、一向に有効な一撃を与えられてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

切歌は触手を弾きながら、鎌を2本に分け合体。刃を鎖付きの手裏剣状に変形させて凶鎖・スタaa魔忍ィイを繰り出す。一撃は触手を切断するが、ダメージが無効化される。

そう。ヨナルデパズトーリと同じくこれは神の力だ。

 

「ッ!? きゃああああああッ!」

 

油断した切歌は触手の一撃を受け、吹き飛ばされてしまう。

 

「切ちゃんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神を殺すのはやはり…」

 

戦闘風景を見ていた指令室の弦十郎が呟く。そう。神を殺すのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れた切歌に切断した触手が動き出し、再び迫る。だがそこへ…

 

「うおおおおおおおおッ!」

 

響がバーニアで加速し、触手に渾身の一撃を浴びせて打ち砕いた。

 

 

 

 

「神殺しの拳ッ!」

 

弦十郎が言った。そう。神に対抗するなら、神殺しの拳を持つ響だ。神を退ける力を持つ切り札である。

そして大丈夫?と言わんばかりに響は切歌に笑みを浮かべた。

 

「響さんッ!」

 

安心の表情を浮かべる切歌。しかし、安心も束の間、響に8本の触手が取り囲み、響に巻き付いてエネルギーが響を襲う。

 

「うぁぁぁぁぁぁッ!」

 

身体に激痛が走り、叫び声を上げる響。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エネルギー集束ッ!」

 

「このままでは響ちゃんがッ!」

 

いくら神殺しの力を秘めていても、攻撃を当てなければ意味が無い。そこを狙われて動きを封じられてしまったのだ。

 

「負けられない…ッ! 私は未来を……未来にもう一度ッ!」

 

「もう一度ッ!」

 

そうだ。こんな所で負けるわけにはいかない。未来を助ける為に。ごめんねと謝って仲直りする為に。負けられない。必ず助ける。

その思いが響を動かす。触手の隙間から強い光が溢れ始め、響は気合で拘束を解いた。

 

脱出はしたものの、力を使い果たしたのか響のギアが強制解除されてしまう。

 

「へいき…」

 

疲れ果てた響に調が駆け寄る。

 

「分かってるッ! だから、今は無茶出来ないッ!」

 

「へっちゃら…」

 

「おいッ! 大丈夫かッ!」

 

口では大丈夫そうに言う響。そこへクリスとマリアも到着する。ここに来て神殺しの力を秘めた響が戦闘不能となってしまった。

再び響達に触手が迫る。その時…

 

【OMNIBUS LOADING!】

 

【SOLOMON BREAK!】

 

「フンッ!」

 

掛け声と共に翼達の背後から赤黒い衝撃波が放たれ、神の力にダメージを与えた。

後ろを振り向くと、オムニフォースに変わったカリバーが立っていたのだ。

 

「隼人さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カリバーが到着ッ!」

 

「神に対抗するもう1つの力…神の力に等しい全知全能の書の力を持つカリバー…ッ!」

 

不完全とはいえ全知全能の書の力を持つカリバーもまた、神に対抗出来る。

クリス達より先に向かったのに何故遅れたのか。実は、闇への空間移動の途中、闇黒剣月闇の未来予知が発動。そこで啓示された未来は「響が力を使い果たした所を狙われて殺され、同時に翼達と未来、エルフナインが殺される」というもので、同時に胸に激痛が走っていたのだ。

しかも、明らかに前よりも痛みが増している。更に自分を使えと言わんばかりにオムニフォースが光っていた為、やむを得ず使用し、今に至るという訳だ。

 

 

 

神の力の触手はカリバーを捉えると、一斉に攻撃を仕掛ける。

 

【OMIBUS LOADING!】

 

カリバーは触手を避け、オムニフォースのページを閉じ、闇黒剣月闇で2回邪剣カリバードライバーのボタンを押してページを開いた。

 

【SOLOMON STLASH!】

 

手にしたカラドボルグから赤いX字状の斬撃波を放ち、神の力を怯ませた。

 

「ッ!? ぐあぁぁ…ッ!!」

 

「隼人さんッ!?」

 

翼が頭を左手で押さえるカリバーを見ると闇黒剣月闇が光っている。

 

「闇黒剣月闇の未来予知かッ!? 」

 

激しい頭痛と共にまた闇黒剣月闇の未来予知が発動。しかし同時にカリバーの胸に激痛が襲っているのだ。

ここで啓示された未来は、「このまま進めばノーブルレッドは倒せるものの、神の力が完全に顕現し、その代償に自分だけが生き残り響達が死ぬ」という物。

 

「このまま進めば……ッ! 救えない……ッ! ぐぁぁ…ッ!」

 

「何ッ!?」

 

「上條がいるとはいえ、切り札の1人である立花を失えば、それだけ遅れを取ることとなる…ここは撤退し、態勢を整えなければ……」

 

いくらオムニフォースの力を持つカリバーがいるとはいえ、闇黒剣月闇の未来予知で行動が縛られるカリバーや戦闘不能となった響の事を考えれば状況は万全ではない。

ここは翼の判断で撤退する事に。

 

「立てるか? 本部に戻るぞ。」 

 

クリスが響に肩を貸し、支える。

 

「2人を助けるのにあと1歩だが、立花響の事を考えれば…ッ!」

 

未来とエルフナインを助けるまであと1歩だが、戦闘不能となった響の事を考えてカリバーも翼の意見に賛成。

 

【ランプドアランジーナ!】

 

【ジャアクリード!ジャアクアランジーナ!】

 

カリバーはランプドアランジーナを起動し、闇黒剣月闇にスキャンすると、魔法の絨毯を召喚し、響達を乗せて撤退した。

そして外の様子をモニターでミラアルクとエルザは見ていた。

そこへヴァネッサがやって来る。

 

「ヴァネッサ。帰還したでありますか。」

 

「早速でごめんね。状況を教えて。」

 

モニターには未だ眠る未来と、神の力が映っている。

 

「神の力は固着を開始……だけど、想定以上の質量に、城外へと緊急パージしたのが…このていたらくだゼ。」

 

「遊び無しの、いきなりすぎる展開はそういう…」

 

「遠からず、この場所は突き止められていたはず…むしろ、神の力の顕現でカリバーとシンフォギアを退けられたのは僥倖でありますッ!」

 

エルザの言葉にミラアルクは頷く。

 

「そうだといいんだけど…」

 

「決戦が近いとなると、お荷物の処分は早めに済ましておきたい所だゼ…」

 

お荷物…すなわち用済みとなったエルフナインの事だ。ミラアラクは軽蔑した目で気を失っているエルフナインを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、響はすぐ様メディカルルームへ運ばれ、治療を受けているが、ダメージは大きい。

 

 

 

「見た目以上に響君のダメージは深刻……だが、翼の撤退判断が早くて最悪の事態は免れたらようだ。」

 

「いえ、弱きを護るのは防人の務め……きっと、奏だってそうしたはずです。」

 

頬を赤らめてそう言う翼に一体どうしたんだと言う表情を見せる弦十郎。

 

「司令。マリアさんから提案のあったデータの検証、完了しました。」

 

「データの検証?」

 

「何デスか? それは…」

 

「腕輪の起動時に検知される不況和音に、思うところがあってね…」

 

「あの音に、経年や伝播距離による言語の変遷パターンを当てはめて、予測変換したものになります。」

 

「言語の変遷パターンを?」

 

藤尭によって2つの音声データが指令室に流し出される。そして、その2つの音はマリアの予想が的中する事なる。

 

「この曲…何処かで聴いた…」

 

「いつかにマリアが歌ってたデスよッ!」

 

もちろん調と切歌も聴いたことのある曲だ。

 

「知ってるのか?」

 

「歌の名はApple…大規模な発電所事故で遠く住む所を追われた父祖が、唯一持ち出せた童歌…」

 

「変質、変容こそしていますが、大本となるのはマリアさんの歌と同じであると推測されます。」

 

やはりマリアの予想が的中した。その童歌が何故シェム・ハの腕輪の起動と関係しているのか。

 

「アヌンナキが口ずさむ歌と、マリアの父祖の土地の歌…」

 

「フロンティア事変にて見られた共鳴現象……それを奇跡と片付けるのは容易いが…マリア君の歌が引き金となっている事実を鑑みるに、何かしらの秘密が隠されているのかもしれないな…」

 

かつてフロンティア事変にてマリアの呼びかけて世界中の人々の祈りが70億と絶唱となったあの共鳴現象。それとこの歌には何か秘密が隠されている可能性がある。

 

「敵の全貌は未だ謎に包まれたまま…それでも根城は判明したッ! 俺達は俺達の出来る事を進めようッ! 未来君とエルフナイン君もそこに囚われているに違いないッ!」

 

「「「「「了解ッ! /デスッ!」」」」」

 

「ところで、隼人君の様子はどうだ?」

 

「それが…かなり疲れている様でした。」

 

「隼人さんに聞いたんですが、ここ最近頻繁に闇黒剣月闇の未来予知が発動しているらしいです…」

 

「あいつもあいつで大変だよな…最悪の未来を何度も見せられている中で戦ってる…精神崩壊してもおかしくないぞ…」

 

翼達は撤退時に隼人から頻繁に闇黒剣月闇の未来予知が発動している事を聞いていた。

この戦いの中で未来の災いを何度も見ている隼人。啓示されれば重要な部分は見えずにまた別の未来の災いに掻き消される。

 

「うむ…」

 

しかし、響達は知らない。隼人がそれ以上に残酷な運命へ向かっている事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

その頃、自宅に戻った隼人はベッドで横になり、身体を休めていたが翼の言っていた通りかなり疲れた様子だった。

未来予知が頻繁に発動している中、彼の疲労も蓄積されていく。それと同時に…

 

「うぁぁぁ…! あぁぁ…ッ!」

 

隼人を胸の痛みが襲う。明らかに今までよりも痛みが増している。確実に死が近づいているのだ。

 

「ハァ…ハァ…! 言えない…あいつらに言えない…ッ!」

 

そうだ。言えない。言える訳が無い。隼人は響達に、自分に死が迫っているなんて口が裂けても言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じ頃、チフォージュ・シャトーで気を失って倒れているエルフナインの手がピクリと動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあ、私が誰かを困らせていたら、響はどうするの?』

 

『え?』

 

年明け前に観覧車の中、2人で交わした何気ないあのやり取り…

 

『例えばの話よッ!例えばッ! …でも、その時は響に止めて欲しいな。』

 

『何で私が…?』

 

未来は響の手に自分の手を重ねる。

 

『響にはそれが出来るんだもの。私の大好きな、世界で1番優しい拳で。』

 

『よく…分からないよ…』

 

『お願いね。私の全部を預けられるのは、響だけなんだから。』

 

 

 

「未来…」

 

 

 

 

メディカルルームで眠る響は、未来の名を呟きながら交わした約束を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新調した右手の具合を確かめなくちゃ。」

 

その頃、チフォージュ・シャトーでは倒れているエルフナインを前にヴァネッサ達が集結していた。

ヴァネッサの失った右手は元に戻っていた。

 

「たまにはお姉ちゃんらしい所を見せないとね。神の力が、神そのものへと完成するまでには、もうしばらくの時間が必要…それを邪魔する要因は、小さくても取り除かなくっちゃ。」

 

ヴァネッサは右手を超振動させてエルフナインを貫こうとする。が、目が覚めたエルフナインがそれを避けた。

 

「こいつ…ッ!」

 

「気づいていたでありますかッ!?」

 

エルフナインも息を荒げているが、直前まで迫っていた事もあり避けるのはギリギリの様子だった様だ。こんな所で死ぬ訳にはいかない。

 

「あら。自分が原因で世界に仇為してしまった以上、生きているのも辛くないかしら。」

 

「確かに昔のボクならば、世界を護る為に消えていいとさえ思ってました。だけど、この身体は大切な人からの預かり物です。今はここから消えたくありませんッ!」

 

そうだ。この身体はかつて消えかけた時に大切な人から授かった物。だからこんな所で死ぬ訳にはいかないのだ。

 

「そう…だけど、それは聞けない冗談ね。」

 

「どうすれば…だけどボクでは……」

 

ヴァネッサが自分に迫る。

自分には戦う手段も、身を護る手段は無い。どうすればいいのか分からない。でも、こんな所で死ねない。未来と共に生きて響達の元に戻る為に。

 

「次は外さないわ。」

 

「誰かぁッ!」

 

エルフナインが叫び、ヴァネッサの腕が迫る。万事休すか。と思いきや…

突如何者かがヴァネッサの腕を防いだ。それを防いだのは何と、かつて魔法少女事変にてキャロルの配下としてカリバーと装者達に立ちはだかったオートスコアラーのファラだった。

 

「ッ!?」

 

「な、何なのッ!?」

 

剣殺し(ソードブレイカー)。その一振りを、あなたが剣と思うなら…」

 

そう。今、ヴァネッサの右手は剣の様に尖らせている。つまり、ファラの哲学兵装でなら、砕ける。

 

「ッ!?」

 

そして、ファラの言う通りヴァネッサの右手が砕けた。

 

「な……ッ! 日に2度もッ!?」

 

まさかヴァネッサも1日に2度も腕を破壊させるとは思ってもいなかっただろう。

 

「しっかりするでありますッ!」

 

そして、ジェネレーターの3つの棺桶から黄色、赤、青の光が飛び出し…

 

「先手必勝ッ! 派手に行くッ!」

 

レイアが言葉の通りにヴァネッサ達にコインを投げつける。そこへ…

 

「アハハハハッ! ちゃぶ台をひっくり返すのは、いつだって最強のあたしなんだゾッ!」

 

ミカが宝石状の剣を手に、後ろから不意打ちでヴァネッサ達を殴りつけて吹き飛ばした。

 

そして逃げる中、姫抱きでエルフナインを運ぶのは、ガリィだ。

 

「あなた達は…炉心に連結されていた廃棄躯体の…」

 

よく見れどのオートスコアラー達も顔に傷が付いており、身体も傷だらけだ。

 

「スクラップに、スペアボディ? 呼び方いろいろあるけれど、再起動してくれたからには、やれるだけの事はやりますわよ。」

 

「マスターようでマスターではない、少しマスターっぽい誰かだけど、マスターの為に働く事があたしたちの使命なんだゾッ!」

 

「この身に蓄えられた残存メモリーをエネルギーに利用しようと目論んだようですが、そうは参りません。」

 

「さてマスター、今後の指示を頼む。このまま地味に脱出するのもよし。無論、派手に逆襲するも…」

 

「だったらッ、やりたい事がありますッ!」

 

なら自分がやるべき事は1つだ。エルフナインがやりたい事とは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、S.O.N.G.の指令室のモニターにエマージェンシーコールの文字が表示されていた。

 

「司令ッ! 外部より専用回線にアクセスですッ!」

 

「専用回線だと? モニターに回せるか?」

 

「はいッ! ……うわぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

藤尭がモニターを映すと、突如画面いっぱいにガリィとレイアが映し出された。これには藤尭も驚いてしまう。

 

『ごめんなさいッ! ボクですッ!』

 

2体の間に分け入り、エルフナインが顔を出した。

 

「エルフナイン君ッ!」

 

エルフナインは、かつてキャロルが座っていた玉座の下の近くに設置されたパソコンからS.O.N.G.の指令室へ入電していた。そしてミカがノーブルレッド達が来ないか見張っている。

 

「通信を行った以上、捕捉される恐れがある為、要点だけ手短にッ!」

 

『現在地点はチフォージュ・シャトー内部ッ! ボクと未来さんはここにいますッ!』

 

「未来さんも、そこにッ!?」

 

エルフナインの言葉に感極まったクリスは思わず涙を流すが、それを拭う。

 

「……たりめーだッ! そう信じていたから無茶してきたんだッ! あたしらも、あのバカも、あいつもッ!」

 

2人が無事である事を信じてたからこそ、身体に鞭を打ってきた。響も、翼達も、そして隼人も。

 

「これからオートスコアラー達の助けを借りて、未来さんの救出に向かいますッ!」

 

モニターには囚われの身である未来が眠っているのが映し出されている。エルフナインはかつて敵対したオートスコアラー達と共に彼女を助けに行くのだ。

 

『神そのものへと完成していない今なら、まだ間に合いますッ!』

 

「君がッ!? 無茶だッ!」

 

確かに弦十郎の言う通り無茶だ。

 

『そう無茶ですッ! だから応援をお願いしますッ!』

 

エルフナインの気迫に思わず目を見開いて驚く弦十郎。ここまで積極的に無茶をするエルフナインは見た事無いから当然だ。

 

「───ッ!」

 

「ここは敵の只中です。どうしたって危険が伴うのであれば、戦うしかありません。」

 

「───く…ッ、こちらも負傷で神殺しを欠いた状態にあるが…」

 

『この局面に響さんを…』

 

「そして隼人君もまたかなり疲労している状態との事だ。救出に向かうまで、何とか持ち堪えて欲しい。…頼んだぞ。」

 

『はいッ!』

 

必ず持ち堪える事を約束してエルフナインは通信を終了した。

 

「マスター…」

 

何かに気付いたファラの声と共に振り返ると、いつの間にかノーブルレッドの3人が立っていた。

 

「地味に窮地…今度は流石に不意を突けそうにないかと…」

 

「えいッ!」

 

まずは先手必勝と言わんばかりにエルザがテール・アタッチメントで襲いかかると、ファラとレイアが向かい、エルザの攻撃を受け止めた。

 

「2人ともッ!」

 

「ここは私達に…ガリィはマスターのエスコートをお願いするわ。」

 

「任せて。目的地までの道のりは、ココに叩き込んでるから。」

 

ガリィは自身の頭を指差し、ファラは風を引き起こしてテール・アタッチメントを引き離した。

 

「エルザッ!」

 

「ミカも一緒にッ!」

 

「お前が付いていれば、私もファラも憂いが無い。」

 

「元気印の役回りは、心得てるゾッ!」

 

そしてミカも2人と共に未来の元へ行く事を引き受ける事に。

 

「マスターッ! 今のうちにッ!」

 

「あッ……? ごめん……違うッ! ありがとうッ! ファラッ!レイアッ!」

 

エルフナインは最後に残ったガリィとミカに連れられて未来の元へ急ぐ。ファラとレイアは僅かに笑みを浮かべた。

 

「行かせやしないゼッ!」

 

ミラアルクが生かせまいと迫るが、ファラが風を起こして引き離し、レイアがトンファーを手に殴りつけ怯ませる。ミラアルクに立ち塞がる。

 

「この道は通行止めです。他を当たって頂きましょうッ!」

 

「あぁ。行かせる訳にはいかないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエルフナインはガリィとミカと共にエレベーターに乗り込み、足止め役を引き受けたファラとレイアは大丈夫なのかと心配していた。

 

「ファラとレイアなら……きっと大丈夫ですよね?」

 

「……不足はいろいろありますが、それでも全力を尽くしてます。だからマスターも、全力で信じてあげてくださいな。」

 

「……」

 

ガリィはファラとレイアを信じてあげる様にエルフナインに言う。その時、エレベーターのドアが外側から腕を大型化させたミラアルクによってこじ開けられた。

 

「待たせたなッ! お仕置きの時間だゼッ!」

 

「ぞなもしッ!」

 

ミラアルクの腕がミカを捕らえると、ドアごとぶち破り投げ飛ばした。

 

「うわ? うわあああッ!」

 

「あぁもうッ! しっちゃかめっちゃかッ!」

 

「え…? うわぁッ!」

 

ガリィはエルフナインの手首を掴むと、そのまま飛び降りて先を急ぐ。

 

「させないゼッ!」

 

それに気づいたミラアルクが2体に迫るが、ミカが飛びかかり床に押さえつけた。

 

 

「はぁぁッ!」

 

「く……ッ! このッ!」

 

「マスターを頼んだゾッ! そんな楽しい任務、ホントはあたしがしたいけど……、こんな手じゃ、マスターの手を引く事なんて出来ないからら、残念だゾ…」

 

自分の獣の様な腕ではエルフナインの手を引けない。その役目をガリィに任せて自分はミラアルクを足止めする役目を引き受けた。

 

「ミカ…」

 

「分かってる…あんたの分まであたしに任せて。」

 

「ミカッ!」

 

名前を呼ばれて笑みを浮かべるミカ。最後に残ったガリィに引っ張られながらエルフナインは先を急ぐ事に。

 

「…だけど、カッコいいですッ! ミカのその手ッ! 大好きですッ!」

 

エルフナインの言葉に嬉しくなって反応したミカをミラアルクが殴り飛ばして引き剥がした。

 

「褒められたゾッ! 照れ臭いゾッ!」

 

「廃棄躯体がナメてくれるゼ……」

 

「こうなったら、照れ隠しに邪魔者をぶっ飛ばしちゃうゾッ!」

 

ミカは嬉しそうな声で張り切りながらミラアルクに突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……うう……」

 

そして、囚われの身となり装置の台の上で眠る未来は、何かに魘されている様だった。

 

 

 

 

「あそこですッ!」

 

「あの向こうに、未来さんが…ッ!」

 

ガリィはエルフナインを姫抱きしながら床を凍らせて滑りながら移動、そして遂に、未来の居場所へたどり着いた。だが…

 

「…ッ!? えい…ッ!!」

 

「何をッ!?」

 

突然何かに気づいたガリィがエルフナインを投げつける。同時にガリィの腹にワイヤー付きのロケットパンチが打ち込まれ、吹き飛ばされた。

 

「ガリィッ!」

 

「やーっと追いつけたわ。」

 

そして廊下の暗闇からヴァネッサと、交戦していたエルザ、ミラアルクが歩いてきた。

ノーブルレッドの3人が後にした場所では、エルフナインを護る為に戦ったファラ、レイア、ミカの残骸が虚しく残されていた。

エルフナインはガリィの元へ駆け寄り、抱き起こした。

 

「ガリィッ! ボクを護る為に…ッ!」

 

「嫌ですよ、マスター……性根の腐ったあたしが、そんな事するはずないじゃないですか…」

 

「だけど…!」

 

「もっと凛としてくださいまし。あたし達のマスターは、いつだってそうだったじゃないですか。」

 

「キャロルは…」

 

そこへヴァネッサが無情にもガリィを蹴り飛ばした。

 

「手に余るから、足で失礼しちゃいます。」

 

「ガリィ…みんな…」

 

自身を護る為にオートスコアラー達は散っていき、とうとう1人になってしまったエルフナインにヴァネッサ達が迫る。

 

「手間をとらせやがるゼ。」

 

「みんなボクの為に…」

 

「だけど、それもここまでであります。」

 

「じゃあ、ボクはみんなの為に何を…」

 

「あなたに出来る事は、もはや1つッ!」

 

ヴァネッサが飛び上がり、足を変形させてエルフナイン目掛けて飛び蹴りを放つ。

 

「みんなのためにボクはッ!」

 

その時、不思議な事が起こった。エルフナインが魔法陣を展開し、ヴァネッサの飛び蹴りを防いだのだ。

 

「ッ!? 何なのッ!?」

 

突然何が起きたのか分からない3人。更に不思議な事が起こる。魔法陣からダウルダブラが出てきたではないか。

エルフナインは何も言わずにその弦を振るわせる。

そして、ダウル=ダブラが変形、弦が伸び、エルフナインの姿を変えたのだ。

 

「それですよ…マスター…あたし達が欲しかったのは…」

 

その光景を見ていた破壊されたガリィが嬉しそうに言った。

 

「この土壇場でデタラメな奇跡をッ!」

 

「奇跡だと? 冗談じゃないッ!」

 

彼女は奇跡を起こす者では無い。奇跡を殺す者…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは奇跡の殺戮者だッ!」

 

今ここに、奇跡の殺戮者 キャロル・マールス・ディーンハイムが蘇ったのだ。




いかがだったでしょうか? 今回で折り返しも終わりいよいよ後半戦に突入します!
そしてセイバー本編を見て、鳥肌が立ちました。全てが全知全能の書に書いてあった通りの出来事…もしかしたらこの小説も…? 22日が楽しみになってきました。
完結まであと9話。今回はここまでです。感想お待ちしています。
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