【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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先に謝っておきます。どうしてもこういう文章と展開にしたかったんです。申し訳ありません。

そしていよいよ訃堂(げどう)へのお仕置き回です。

ワンダーオールマイティーと究極大聖剣、予約しました。このまま月闇と金型流用で虚無も出して欲しいです。


第87話 大義の為の、犠牲となれ。

復活したキャロルと共に顕現したシェム・ハを破壊すべくカリバーと装者が結集するも、あと一歩の所で届かない。

危機に陥った時に響が颯爽と登場。禁止されているアマルガムを使用し、勝利を掴み取ろうとした所で、未来を神の力が取り込んでしまい先史文明期の神、シェム・ハが降臨したのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(未来。私の親友、小日向未来。ずっと仲良し。幼馴染。時々喧嘩しても、同じ数だけ仲直り。多分、そんな2人のまま、この先もいられるのだと思ってた。だけど…)

 

必死の思いで助け出そうとした陽だまりは神に取り込まれ、響の手を取る事なく流し目を送っていた。

 

(陽だまりは踏み躙られて、キミと繋ぐはずのこの手には、どこまでも残酷な結末を約束されてしまう。あの日、私の大切な物は、全て奪われてしまった。)

 

「行っちゃダメだッ! 遠くにッ! 未来ッ!」

 

そのまま響は手を未来に伸ばしながら落ちて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーしッ! 出来たぞッ! 知ってるか? インスタントとはいえ、最近のは侮れないんだぞ。」

 

洸が鍋に入れたインスタントのラーメンを炬燵の上に置く。

響は父 洸が住むアパートに来ていた。その時、響の腹が鳴る。

 

「動いていないのに、お腹って空くんだね。」

 

「…それは今、響が生きているって事さ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来が現実の物になろうとしている…ッ!」

 

その頃、疲労していた隼人は寝室で遂に闇黒剣月闇の未来が現実の物になろうとしていた事を危惧していた。一刻も早く何とかしなければならない。しかし、変身すればする程自分の命が削られる。その時…

 

「ッ!? ゴホッ! ゴホッ!」

 

突然胸の辺りが苦しくなり、口を手で押さえて咳き込む隼人。更に口から何かがゴボッと飛び出した。何事かと思い、手を離してみると…

 

「………ッ!?」

 

手のひらがに染まっていた。そう。隼人は吐血したのだ。

 

「嘘だろ…」

 

呆然とする隼人。そこへ追い討ちをかける様に頭痛と共に闇黒剣月闇の未来予知が発動する。そこに啓示された未来はやはりシェム・ハが災いを起こす未来。同時に再び咳き込み、さらに吐血する。

 

「時間が無い…」

 

隼人は手のひらに溜まった血を見ながら自分に残された時間が少ない事を悟りながら、口元の血を拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。」

 

「実際、かなり旨かったな。しかし驚いたな。まさか響が、規則を破って謹慎とは…」

 

そう。響は使用を禁止されていたアマルガムを使用した事で謹慎処分になったのだ。

 

「大切なモノを無くして、奪われて……どうしていいのか分からなくなったら、無性に何処かに逃げ出したくなって…気がついたら、ここに足が向かってた。」

 

「そうか……ハハ。まぁ、逃げ出す事に関しては、筋金一本入ってるからな……俺は。」

 

洸もまた、家族から一度逃げ出した身。だからこそ、父親として、娘の気持ちが分かるのだ。

 

「違うよ。お父さんだからだよ。」

 

「……?」

 

「良かったら……1人で抱え込まず、俺に話してみないか?」

 

「……。へへ…」

 

洸の言葉に僅かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行っちゃダメだッ! 遠くにッ! 未来ッ!』

 

未来に伸ばした手を取られず、響は思い切り地面に叩きつけられてしまいギアが解除されてしまった。

 

『立花ッ!』

 

 

『み…未来…ッ!』

 

起き上がった響の上にゆっくりと降りていく未来。

 

『良きかな、ヒトの生き汚さ…100万の夜を越えて尚、地に満ち満ちていようとは。』

 

そこへ、カリバーと装者達が響とシェム・ハの元へ降り立つ。

 

『よしなさいッ! あなたにそんな物言いは似合わないッ!』

 

『小日向未来を解放しろッ!』

 

カリバーとマリアにそう言われてもシェム・ハは表情を変えず月を見上げる。

 

『後は、忌々しき月の───』

 

その時、シェム・ハの身体に異変が起き、頭を抱え悶える声を出しながら突然苦しみ出した。

 

『うぅ…ッ、く、ううう……』

 

『未来…?』

 

『小日向…ッ?』

 

その時、カリバーとクリスが未来が纏う物に気づく。背中に赤い紋章が浮き出ている。

 

『ッ! 身に纏うそいつは、まさかあの時と同じ─── 』

 

『神獣鏡かッ!?』

 

そんなまさか。目の前の物はフロンティア事変にて未来がウェルに唆されて纏った最凶にして最弱のシンフォギア、神獣鏡だとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を訃堂はモニターでこれを待っていたと言わんばかりに見ていた。

 

『まずは餌の確保。刻印、起動。』

 

その時、訃堂の声と共に翼の瞳がスタンドガラスの様になる。

 

『未来…一緒に帰ろ───ッ!?』

 

『止めろッ! 風鳴翼ッ!』

 

カリバーが翼に向けてカラドボルグを手にして振り下ろすが、機動力に勝る翼に避けられ、何とシェム・ハを連れて空中に飛び上がったではないか。

 

『先輩ッ!?』

 

『何で…? 翼さん…?』

 

何故だ。どうして彼女が自分達を裏切って未来を連れ去ろうとしているのか。

 

『目を覚ませッ! 風鳴翼ッ!それが防人としての答えかッ!?』

 

『全てはこの国の為にッ!』

 

その言葉と共に翼の瞳がステンドガラスの様になる。その時、翼が刀を天へ掲げ、カリバーと装者に向けて千ノ落涙を放つが、マリアが響を抱え、全員が回避する。

 

『ただ、面で制圧するなんてッ!』

 

『らしくないバラまき──およ?』

 

『しまった…ッ!』

 

切歌が動こうとするが、身体が動かない。カリバーが気づくが時すでに遅し。そう。カリバーと装者達は乱れ影縫いにて動きを封じられていた。

 

『動きを封じて…ッ!』

 

『翼さんッ!』

 

『私は、この国の防人なのだッ!』

 

そう言うと翼は未来を抱えて宵闇の空へ飛び去って行った…

 

『ッ!? ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

『隼人さんッ!?』

 

『おいッ! どうしたんだよッ!?』

 

突如、カリバーに激しい頭痛と共に闇黒剣月闇の未来予知が発動。カリバーにこれでもかと言わんばかりに最悪な未来がサブリミナルの様に次々と啓示されていく。同時に姿もジャアクドラゴンへと戻る。

 

『闇黒剣月闇の未来予知ッ!? 何が見えているのッ!?』

 

『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

次々に啓示される最悪な未来を見るカリバーの叫び声が宵闇の空へ響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてS.O.N.G.本部にて。クリス達は何故翼が裏切ったのか、そして事件の黒幕についてエルフナインと共に話していた。

 

「先輩…」

 

「一連の事件を操っていたのが風鳴機関だなんて…」

 

「信じたくは無いデスよ…」

 

実は、クリス達が真実を知る前に裏で起きていた事で風鳴機関が一連の事件を操っていた事を知ることになった。それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一連の黒幕だと?』

 

『そうだ。お前がよく知っている人間だ。』

 

カリバーはあの後、八紘の元へ行っていた。あの時カリバーは闇黒剣月闇の未来予知にて啓示された未来にて、訃堂と風鳴機関がある限りありとあらゆる災いが引き起こる未来を見ていたのだ。

 

『奴は、国の為ならば全てを利用し尽くし、防人としての務めよりも、己自身の野望を優先している。ノーブルレッドを裏で操っていたのも、奴だ。』

 

『……まさか…』

 

そのまさかだ。カリバーの言うその人物に、弦十郎は気付いた。

 

『そうだ。この一連の事件の黒幕は、風鳴機関並びに風鳴訃堂だ。』

 

『やはりか…ッ!』

 

父親として見ていた訃堂がまさか一連の事件の黒幕だったなんて。息子としてショックだった。曲がりなりにも防人として国を護ろうとしていた父親が真の敵とは信じたくなかった。

 

『…協力感謝する。だが、何故組織を嫌う君が我々に?』

 

『……闇の剣士の気まぐれだ。』

 

 

 

 

 

 

そして、カリバーから伝えられた事を八紘から弦十郎に、帰還したクリス達に話され真実が明らかになったという訳だ。

 

「それでもあたしは信じてる。不器用なあの人に、裏切りなんて真似出来るものか…」

 

「私だって、疑ってないッ!」

 

「翼さんは、大切な仲間デスッ!」

 

信じたい。翼が裏切りなんてするはずが無い。大切な仲間だから信じている。

 

「恐らくは、あの魔眼に…」

 

エルフナインが翼の魔眼に何かがあると推理していると、マリアの通信機が震える。画面には「招集 至急発令所まで」という文字が。

しかし、それはマリアだけだ。

 

(私だけ…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、風鳴機関が保有する施設の中、訃堂に連れられて翼は未来がある装置にかけられている場所へ来ていた。

 

「小日向…?」

 

「否ッ! 我が国に相応しき神の力であるッ!ダイレクトフィードバックシステムによる精神制御は間も無く完了する。その時こそ、宵闇の剣士と同じ次世代抑止力の誕生よッ!」

 

「しかし、櫻井女史亡き今、どうやって新たなシンフォギアを…」

 

翼の言う通り、シンフォギアを作成出来る了子がいない今、どうやって生み出すのか。その答えを訃堂が答える。

 

「シンフォギアに非ずッ!神獣鏡のファウストローブよッ!だが、それを作った者も、今はどこぞで果ててしまっておるがな…フフフフ…」

 

訃堂の発言で翼はその人物が始末されたのでは無いかと悟った。

 

(そうしなければならぬと囁かれ…あの時は疑いもせずに行動した…なれど、本当にそれが正しかったのか…私は…)

 

「うう…」

 

思わず口を押さえる翼。あの時自分の行動は本当に国の為なのか。平和への道だったのか。涙が浮かんで来る。

 

「翼ッ!」

 

「ッ!?」

 

「何故連中にトドメを刺さなかった故、宵闇の剣士を物としなかった?」

 

「そ、それは…」

 

「まぁ良い。だが惑うな。その様に脆弱な心では、やがては折れてしまう。護国の為に鬼となれッ! 歌では世界を救えぬのだッ!」

 

「はい…」

 

かつて言われた事をまた言われ、弱々しく返事をする翼。そんな翼を尻目に訃堂は未来を見る。

 

(さぁ来い…宵闇の剣士…ッ! 餌はここだ…ッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、マリアは召集をかけられ、指令室まで足を運んでいた。

 

「お呼びでしょうか?」

 

「すまないな。急に呼び出して。」

 

マリアを出迎えたのは弦十郎と緒川、そしてモニターに映る八紘だ。

 

『早速だが、君に新たな任務の通達だ。』

 

「かねてより進めていた内偵と政治手段により、風鳴宗家への強制捜査の準備が整いました。間も無く執行となります。」

 

カリバーの情報提供もあり、遂に一連の事件を操っていた黒幕が風鳴機関並びに風鳴宗家への強制捜査…即ちガサ入れの準備が整ったのだ。

 

「風鳴宗家ってあなた達や、翼の…」

 

「そうだ。もはや一刻の猶予も無い。」

 

『風鳴訃堂自らが推し進めた護国災害派遣法違反により、日本政府からの逮捕依頼だ。状況によっては、殺害の許可も降りている。』

 

「殺害って、それは翼に対してもッ!?」

 

殺害という言葉にマリアは驚いた。訃堂ならまだしも翼にも該当するからだ。

 

「服務規程違反によって謹慎中の響さん並びに未成年スタッフに任せる訳にはいかないと判断しました。」

 

装者達はマリアを除いて未成年。そこで唯一成人しているマリアに白羽の矢が立ったのだ。だが…

 

「そこで、マリアさんに──」

 

「任務とはいえ、承服出来ないわ。」

 

当然、マリアは納得しない。

 

「刃の下に心を置くってそういう事? 違うわよねッ!」

 

「……」

 

「どんな理由があろうと、家族が家族を殺すなんて間違っているッ!私は翼を引きずってでも連れて帰る為に同行させてもらうわッ!」

 

信じている仲間だから。必ず連れて帰る。だから殺させない。マリアは弦十郎達にそう断言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

その様子をシャボン玉を通して見ていた隼人は八紘とのやり取りを思い出していた。

 

 

 

 

『奴等の仕業と分かったなら、私が即刻闇に消す。邪魔をするな。』

 

『待ってくれッ!』

 

カリバーが部屋を立ち去ろうとすると、八紘が呼び止めた。

 

『カリバー、この件は我々に任せてもらえないだろうか?』

 

『何?』

 

『弦と共に風鳴の人間として、息子としてのけじめをつけるつもりでいる。我々に任せて欲しい。』

 

八紘はこの一連の事件を引き起こした風鳴機関と訃堂の一件を風鳴の人間として、息子として弟の弦十郎と共にけじめをつけるつもりだった。

 

『…そうさせてもらうか。頼んだぞ。政治の防人。』

 

そうカリバーは八紘の目の前から姿を消した。

しかし、この決断が再び手を汚さなければならない事をカリバーは知る由もなかった…

 

「嫌な予感がする……ッ!! うがぁぁぁぁぁぁッ!」

 

再び隼人の身体に激痛が襲い、更に胸や頭にも激痛が走る。

確実に死が近づいている。苦しむ隼人の様子を闇黒剣月闇と無銘剣虚無、プリミティブドラゴンとオムニフォースが嬉々しく光っている事をジャアクドラゴンとジャオウドラゴン、エレメンタルドラゴンだけが知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、洸が住むアパートにて。

 

「あぁ…うん…途中から気づいていたが、どうにも俺なんかでは、助けになれそうな話じゃなさそうだ。」

 

「話を聞くって言ったの、そっちのくせに!」

 

聞いておいて助けになれそうに無いと放り投げて横になる洸を見て、何て呑気なんだと響は思った。

 

「それはそうなんだが…すまん。」

 

「はぁ…私、呪われてるかも…」

 

「───ッ…」

 

ため息を吐きながら夕焼けの空を見る響が口にしたその言葉に洸は何かを感じた様な反応をした。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、ガサ入れと訃堂の逮捕の為、八紘と弦十郎率いるエージェント達が風鳴宗家の門まで来ていた。

八紘の眼をセキュリティが承認する。

 

「開門ッ!」

 

門が開いたと同時にエージェント達が突入を開始する。

 

「私の権限の及ぶセキュリティは解除可能だッ!速やかに風鳴訃堂、ならびに帯同者の逮捕、拘束を───」

 

その時、突如アルカ・ノイズが襲来、エージェント達を消滅させてしまう。

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

マリアがギアを纏い、アルカ・ノイズを斬り裂く。

 

「ここは私にッ!」

 

「いいかマリア君ッ! アマルガムは──」

 

「分かってるッ! 私だって謹慎は御免よッ!」

 

そう。まだアマルガムは認可が下りておらず使用できない状況なのだ。響の二の舞はマリアも避けたい。

 

「頼むぞ。これ以上の横紙破りはS.O.N.G.の国外退去に繋がり兼ねないのだッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子は勿論指令室にも映し出されていた。

 

「予定時間にエンゲージッ!」

 

「だけど、活動制限の完全解除がまだ──」

 

「一体何が起きてるんだッ!?」

 

そこへクリス達とエルフナインが指令室に駆け込んでくる。彼女達は招集されていない為この任務を知らないから当然の反応だった。

 

 

 

 

 

 

 

「フッ! ハァァッ!」

 

外ではマリアがアルカ・ノイズを斬り裂き、八紘率いるエージェントは風鳴家へガサ入れを開始する。

 

「家宅捜査、急げッ! 証拠を押さえよッ!」

 

「ここは危険ですッ!こちらにッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、訃堂がいる和室に到着した弦十郎とエージェント達。

訃堂が睨みを効かす、エージェントが怯むが弦十郎は大丈夫だと肩に手を置き、訃堂の元へ歩み寄る。

 

「国連の犬と成り下がった親不孝者め…ッ!何のつもりでまろび出た?」

 

「無論、あんたを止めるためだッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

マリアが蛇腹剣でアルカ・ノイズを斬り裂く中、突然将棋が吹き飛ぶ。

 

「何ッ!?」

 

マリアが見ると、そこには弦十郎と刀を持つ訃堂が背中を合わせているでは無いか。

訃堂の持つこの刀は風鳴家の伝家の宝刀、護国挺身刀・群蜘蛛だ。

 

「司令ッ!」

 

と、その時、横からマリアへ斬撃波が放たれるが、マリアがバリアで防ぐ。

 

「そうね…そうよね…逢えて良かった。あなたには、訊きたい事が沢山あるわッ! 翼ッ!」

 

塀には満月を背に、ギアを纏い刀を手にして翼が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ!」

 

「ハァッ!」

 

翼とマリアがお互いに刀とダガーを打ち合い、互角の戦いを繰り広げ、鍔迫り合いとなる。

 

「風鳴訃堂に与する事が、あなたの言う人を防人るという事なのッ!?」

 

「そうだッ! 神の力はその為にこそッ! 全ては国を護る為ッ! それが、真の平和へと至る道だッ! お祖父様も、そう言っておられたッ!」

 

翼から距離を取るマリア。

 

「全く血の通わない言の葉ねッ!」

 

「言うに事欠いてッ! はぁッ!」

 

翼は刀を大型化させ、蒼ノ一閃を放つがマリアは避け、2本目のダガーを取り出し、斬りかかる。

 

「思い出しなさいッ! あなたの居場所ッ! あなたの仲間ッ! あなたがあなたである理由ッ!」

 

「私が私で───?」

 

「そうよッ! 神の力なんかじゃないッ!あなたがあなたの力で、人の命を護る理由をッ!」

 

マリアは必死に呼びかけるが、腹に蹴りを浴びせられ、怯んでしまう。翼は刀を元に戻す。

 

「知れた事をッ!」

 

翼は飛び上がり脚部ブレードを展開、独楽の様に高速回転しながらマリアに攻撃を仕掛ける。

 

「人は弱いからだッ!弱き命だからこそ、強き力で護らなければならないッ!」

 

マリアへ一撃が命中し、ギアインナーが傷つく。そのまま縦横無尽に駆け巡り、一撃をくらわせようとするが、マリアは受け止めた。だが、頬から血が滴り落ちていた。

そこでマリアが揺さぶりをかける。

 

「弱いから護るだなんて、傲慢ねッ!」

 

「何だとッ!?」

 

「まるで、誰かを護っていないと、自分を保てないみたいじゃないッ! 」

 

その言葉と共に、渇いた音が響き渡った。マリアは翼に平手打ちを浴びせたのだ。

 

「ッ!?」

 

「いつからあなたは、誰かではなく、自分を護る様になってしまったのッ!?」

 

その時、翼の中の刻印が砕け散った。ようやく洗脳が解けたのだ。腕の力が抜け、刀を落とした。

 

「…弱きを護るは、理由たりえない…」

 

後退りしながらギアが解除される。

 

「じゃあ私は…何の為にいつまでも防人防人と馬鹿みたいに繰り返してきたのよ…」

 

顔を手で覆い隠し、膝を落とす翼。口調もかつて奏を失う前の口調に戻っていた。

今まで自分は何の為に防人だと自分に言い聞かせてきたのか分からない。涙が溢れる。

 

「分からない…分からないわ…」

 

啜り泣く翼を前にマリアはギアを解除した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、屋根の上では、群蜘蛛を手にした訃堂と拳を構える弦十郎が対峙していた。

先に訃堂が斬りかかり、弦十郎は交わしながら切先を掴み、手刀を浴びせようとするが訃堂も避け、群蜘蛛で突風を起こす。その衝撃で瓦が吹き飛んだ。

 

弦十郎は宙返りで避ける。訃堂は群蜘蛛を振り上げるが弦十郎が刀身を掴んでいた。そのまま回転の勢いで訃堂から引き剥がした。

 

「もらったッ!」

 

そのまま弦十郎が握り拳を作り、一撃を浴びせようとするが、訃堂は避けており、十郎に手刀で腹を突いていた。

 

「あ……あ……ッ!」

 

「果敢無き哉ッ!」

 

「がは…ッ!」

 

弦十郎は吐血し、訃堂は弦十郎を捕らえて飛び上がり、重力を利用したジャーマンスープレックスを浴びせた。

 

「儂を殺すつもりで突いてあれば、あるいは──、とことんまでに不肖の息子よ。」

 

訃堂は弦十郎が自身の父親故に性分の甘さが敗北に繋がったと吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、未来が囚われている施設内に、ノーブルレッド達が密かに忍び込んでいた。

 

「奴らが派手にやり合っている今こそ、ウチらのターンだゼッ!」

 

「どうするでありますか?」

 

「神の力の管理者権限を、こちらに移し替えるの。私達を簡単に切り捨てた風鳴訃堂には、相応の報いを受けてもらわないとね。」

 

ヴァネッサがキーボードを操作して、神の力の管理者権限を書き換えようとする。そして、装置が動き出す。

 

「よし。これでダイレクトフィードバックシステムを───」

 

その時、未来が目を覚ました。

 

「───ッ! 何をッ!?」

 

「お、おいッ! これってッ!」

 

エルザを光の刃で斬り裂き、更にミラアルクも斬り裂いて倒してしまった。

 

「エルザちゃんッ! ミラアルクちゃんッ!」

 

駆け寄ったヴァネッサも光の刃で斬り裂かれ、倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう…」

 

「帰ろう、翼…みんなの所に…」

 

あなたには帰る場所がある。みんな待っている。だから一緒に帰ろうと啜り泣く翼に優しく呼びかけるマリア。その時…

 

「トァァァッ!」

 

「あぁぁッ!」

 

突然訃堂が割り込み、マリアに一撃を浴びて倒してしまった。

木に叩きつけられたマリアに駆け寄る翼。

 

「マリアッ!」

 

「儂の元へ来い翼ッ! 防人ならばッ! 風鳴の血が流れているならばッ!」

 

訃堂は洗脳が解けた翼に対してなお、自身の元へ来い叫ぶ。だが…

 

「出来ません…もはや、何を力と換えて立ち上がればいいのか…分かりません…」

 

翼は戻る気は無かった。もはや自分は何の為に、何を力にして立ち上がればいいのか分からなかった。

 

「刻印、起動ッ!」

 

訃堂が再び従わせようとするが、洗脳が解けた翼にはもう効かない。

 

「──私は、もう…」

 

「お前もまた、風鳴の面汚しか?」

 

訃堂は懐から拳銃を取り出し、翼に照準を合わせる。とうとう翼を用済みと判断したのだ。 

 

「この、親不孝者めがぁぁぁッ!」

 

翼に命中する寸前、何者かが割り込む。

 

「ッ!?」

 

翼に代わって弾丸を受けたのは、何とハ紘だった。

 

「あ…あぁ…」

 

その光景を翼と、エージェントを担ぐ緒川がしっかりと見据えていた。

勿論、指令室の藤尭と友里も、クリス達も見ていた。

 

「あ、あぁ…お父様ッ!」

 

「ふん。ここにもまた、愚息がおったか。」

 

実の息子を訃堂は愚息と嘲笑う。翼は涙を流し、八紘の身体に掴まる。

 

「どうして…お父様が…」

 

「私以外の男に…お前の父親面などされたく、なくてな……がはッ!」

 

再び痛みが走り、八紘は血を吐く。翼の目からはボロボロと涙が溢れ出す。

 

「うわぁぁぁ……あぁぁ…ッ!」

 

「翼…人は弱いから護るのでは、無い…人には、護るべき価値があるからだ…それを、忘れるな…」

 

その言葉を最後に八紘は目を閉じ、息を引き取った…

 

「ああああああぁ……お父様ぁぁぁぁッ!

 

八紘が死んだ事に泣き叫ぶ翼。どうして大切な人ばかり離れていくんだ。どうして自分の為に散っていくのか。

 

「逝ったかッ! 親に逆らうからだッ!大義の為の犠牲となれ八紘ッ!

 

醜悪な笑みを浮かべ、八紘が死んだのは親に逆らったからと言い、亡骸に大義の為の犠牲となれと吐き捨てる訃堂。

その言葉に翼が立ち上がる。

 

「護るべき人の価値…それがなんなのか、未熟な私には知るべくもありません……それでも、私の歌を、聞いてくださいッ!」

 

まだ自分には分からない。護るべき人の価値とは何なのか。だからその答えをこれから見つけるべく、翼は立ち上がり、八紘へ歌を手向ける。そして…

 

「imyuteus amenohabakiri tron」

 

宵闇の空に翼の精鋭が響き渡り、翼はギアを纏う。

遂に生身の人間とシンフォギアを纏う人間の戦いが始まった。

翼は歌いながら刀を手に走り出し、訃堂へ斬りかかる。しかし、訃堂は簡単に翼の斬撃を最小限の動きで避け、投げ飛ばす。しかし、負けじと翼は脚部ブレードを展開して斬りかかるが、それも見切る。

訃堂は距離を取り、地面に突き刺した群蜘蛛を引き抜いて構えた。

翼は刀を2振り取り出して連結し、炎を纏わせて回転させて突撃。訃堂も身構えて迎え撃ち、翼の風輪火斬風輪火斬何するものぞで見切ってしまった。

あの弦十郎の父親だからだろうか?

 

 

訃堂の力はその様子は勿論指令室にも映し出されている。

 

「生身でギアを圧倒…ッ!このままでは…ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌で世界は護れないッ! 人が繋がり、わかり合うなど片腹痛しッ!その様な世迷言、血を流し、命を礎としてきた先達に、顔向けできぬと何故分からぬッ!」

 

訃堂は翼に斬撃を浴びせながら臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前の九字護身方の印を結び、身構える。

翼も飛び上がり、風輪火斬の構えを取る。そして、訃堂の技と翼の技がぶつかり合うが、訃堂が翼を吹っ飛ばしてしまった。

 

「散華せよッ!」

 

更に追い討ちに一撃を浴びせた。だが…

 

 

 

 

 

「ま、間に合ったのか…?」

 

正解。ここに来てアマルガムの使用認可が下り、翼は天羽々斬をアマルガムへと移行させ、黄金のバリアで防いでいたのだ。

 

「お父様ァァァッ!」

 

翼は叫び右腕を天へ掲げ、黄金と青の剣を生成し、青色の炎を纏わせる。

ここから流れは変わる。先程までの苦戦が嘘の様に翼の斬撃が訃堂を追い詰めていく。そして、訃堂を蹴り飛ばして吹き飛ばす。

そのまま一心不乱に突っ込む翼。八紘の仇を取る為に目の前の訃堂を斬り伏せるべく突っ込む。その時…

 

【月闇必殺撃! 習得一閃!】

 

翼を闇のエネルギーが拘束し、更に起き上がった訃堂の足元にも命中して爆発が起きる。

 

「ッ!?」

 

「ぬぅ…ッ!」

 

訃堂を斬ろうとした翼を止めた者が歩きながらやってきた。銀の仮面のスリットから赤い光を放ち、闇黒剣月闇を持つカリバーだ。

 

「上條…ッ!?」

 

「フフフ…ようやく来たか…宵闇の剣士…ッ!」

 

この時を待っていたと言わんばかりに訃堂は不敵の笑みを浮かべた。

 

「宵闇の剣士…お前とは一度、腹を割って話したいと思っていた…だが、話すにはその仮面は邪魔だな…ッ! 拝ませて貰おうか…その素顔を…ッ!」

 

要するに、自身に素顔を見せろという訳だ。腹を割って話がしたいという割には素顔をさらせとかなり陰湿な部分もある。

 

「…そんなに見たければ見せてやる。」

 

カリバーはジャアクドラゴンのページを畳んで引き抜き、変身を解除する。そして姿は、口元に血が僅かに付着し、手にも血を拭き取った後がある隼人の姿へと戻った。

実は、弦十郎達が風鳴邸に突入した同時、隼人に闇黒剣月闇の未来予知が発動し、「訃堂がありとあらゆる災いを引き起こす」「翼が訃堂を斬って、鬼になってしまう」といった最悪な未来を立て続けに見てしまい、どうしようもなくなって向かおうとしたが、隼人を邪魔するかのように胸の激痛やシェム・ハの災いの啓示や吐血の影響で向かう事が出来ず、ようやく来た時に、翼が鬼になる寸前で止めたのだ。

 

「まさか…宵闇の剣士が若造だとはな…」

 

そこへ弦十郎がやって来る。

 

「隼人君…ッ!」

 

「上條…何故…」

 

「お前を鬼にさせない…その手を、夢へ羽ばたく翼を血に染めさせやしない…ッ!お前はただ、夢に向かって飛べば良いんだよ…ッ!」

 

翼を鬼にさせない。夢に向かって飛んで欲しい。その代わりに、自分自身が手を汚す。それが隼人の結論だった。

 

「宵闇の剣士よ…儂の元へ来い…ッ!共にその力を護国の為に振えッ! 護国の鬼として…ッ!」

 

訃堂は隼人に自身の元へ向かう様言い、闇黒剣月闇を護国の為に使えと言う。自身の目の前にいるのは幾度となく国を護ってきた護国の鬼。必ず来ると確信していた。だが…

 

「貴様の様な民も護ろうとしない外道に、この国が護れるものかッ!民がいるからこそ国があるッ! 民のいない国の他に空虚で虚しい物は無い…ッ!本当に国を護ろうと思うならば、民を護れッ!」

 

「果敢無き哉ッ! 国があるからこそ民が生きるッ! それが分からぬとは、やはりお前も愚息だったかッ! 失望したぞッ!」

 

「知るか。貴様の戯言など…ここで始末させてもらう…ッ!」

 

隼人は訃堂に闇黒剣月闇を向ける。

 

「上條ッ! お前が手を汚す必要は無いッ!」

 

「隼人君ッ! もうこれ以上俺達の為に泥を被るのは止めるんだッ!」

 

「お前達の意見は求めんッ!」

 

隼人の口調と振る舞いは、素顔ながらかつて翼達が見た冷酷無情な闇の剣士と同じになっていた。

 

「何故だ…ッ! 何故お前は私達の為に手を汚せるッ!? ようやく未来へ進む事が出来たお前が、どうして汚れ役を引き受けるッ!?」

 

「俺の未来は…とっくの昔に無くなっている…だから俺は覚悟を決めた…ッ! 泥を被り、全ての罪を背負い…お前達や、立花響達(あいつら)の未来の礎になるとなッ!」

 

隼人は、自分に残された時間が少ない事は分かっていた。

あの時初めて人を殺めた時からもう未来は無かったのかもしれない。

だから自分は自ら汚れ役を引き受けて、翼と響達や弦十郎達の未来を切り開く為の礎になると決意したのだ。

 

その様子は勿論指令室に映し出されており、クリス達も聞いていた。

 

「何でお前がいつも汚れ役を引き受けるんだよ…ッ!」

 

「私達の…未来の為に…」

 

 

 

 

 

「小さき存在の親不孝者と国連の犬共の未来に何の価値があるッ!? 礎となるなら、この国の未来の礎となれッ!」

 

「貴様が知る由はないッ! 風鳴訃堂ッ! 貴様がどれだけ強大な力を手にしようが、貴様こそ小さいッ! その薄汚い口で、二度と下らない戯言を語るなッ!」

 

翼を鬼にさせない為、翼達の未来を護る為に、隼人は、今だけは冷酷無情な闇の剣士に戻る事にした。

 

「若造如きに、我の信念は分からぬッ! ならばその力、我が物としてくれるッ!」

 

訃堂は隼人の持つ闇黒剣月闇とワンダーライドブックを我が物にするべく、群蜘蛛を構えた。

 

「貴様が手にするのは…破滅だッ!」

 

隼人は口元の血を拭い、ジャオウドラゴンを取り出して起動し、表紙を開いた。

 

【ジャオウドラゴン!】

 

【邪道を極めた暗闇を纏い数多の竜が秘めた力を解放する…】

 

ライドスペルによる朗読が響き渡り、隼人はページを閉じて闇黒剣月闇にスキャンした。

 

【ジャオウリード!】

 

荘厳な待機音が流れる中、隼人はジャオウドラゴンを邪剣カリバードライバーに装填。そのまま闇黒剣月闇のグリップエンドでボタンを押した。

 

【闇黒剣月闇!】

 

「変身!」 

 

【Jump out the book. open it and burst.

 The fear of the darkness.

 You make right a just,no matter

 dark joke. Fury in the dark.

 ジャオウドラゴン!】

 

【誰も逃れられない…】

 

ジャオウドラゴンと4匹の黄金の竜が隼人を包み込み、カリバーへと変身。赤い複眼がギラリと光る。

 

「所詮は若造…ッ! どれだけ力を持ってしても儂に敵わぬ…ッ!テヤァァァァァァァッ!」

 

訃堂はカリバーが自身より若い故負けるわけが無いとたかを括りながら、群蜘蛛を手に猛スピードで斬りかかるが、カリバーは左腕で難なく受け止めた。

 

「ッ!?」

 

「なるほど…そんなに護国の為に力を欲するのか…」

 

訃堂の斬撃を弾いたカリバーは闇黒剣月闇で訃堂を殴りつけ、さらに腹を蹴って吹き飛ばした。

 

「本当に強欲な外道だな…ッ!」

 

訃堂は吹き飛ばされるが、すぐに態勢を整えて斬りかかる。しかし、それをカリバーは許しはしない。

 

【プリミティブドラゴン!】

 

「ぐぅぅ…ッ! ぬぉぉぉ…ッ!ぐあぁぁぁぁぁぁッ!」

 

カリバーがプリミティブドラゴンの力を解放し、ボイドタロンで訃堂を捕らえると、そのまま締め付けながら地面や塀に叩きつけて引き摺り回し、更に屋敷の壁に突っ込ませて破壊し、地面に叩きつけた。

 

「ぐはぁぁぁぁ…ッ! ぬぅぅ…ッ!」

 

なおも立ち上がろうとする訃堂に追い討ちをかけるようにカラドボルグを投げつけ群蜘蛛を弾いて訃堂の手から引き離し、ジャオウドラゴンと黄金の竜達が訃堂を撹乱し、体当たりを浴びせ執拗に痛めつける。

その蹂躙は翼は勿論、弦十郎や緒川、指令室の藤尭と友里、クリス達も言葉を失い呆然としている。

 

 

やがて訃堂はボロ雑巾の様にボロボロの姿となり、なおもカリバーは無銘剣虚無で群蜘蛛を無に帰し、闇黒剣月闇から闇を放出し、訃堂を拘束した。

 

「そんな物か?」

 

「この儂が…ッ! こんな若造如きに…ッ!」

 

「貴様の真理は何だ?」

 

カリバーは訃堂に歩みながら、自身の真理は何か問う。

 

「真理だと…ッ!? 簡単よッ!夷狄の蹂躙よりこの国を護る為、身も心も国に捧げ護国の鬼となるッ!それが、風鳴訃堂の真理だ…ッ!」

 

「貴様の真理など…ッ! フンッ!」

 

「ぐぉぉ…ッ!」

 

「机上の空論ッ!」

 

カリバーは訃堂の真理を机上の空論と切り捨て、影を斬り裂いてダメージを与え、エネルギーを纏わせた闇黒剣月闇の切先を向ける。

 

「俺の真理は……ハァァァァァァァァァァァッ!」

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

カリバーは闇黒剣月闇からエネルギー波を飛ばして訃堂に命中させ、塀へ吹き飛ばし、激突させた。

 

「この(つるぎ)の中にある…ッ!」

 

訃堂が倒された光景に、翼達と弦十郎達も指令室の藤尭達も言葉を失っていた。

 

「が……がは……ッ!」

 

塀に叩きつけられた訃堂はそのまま地面へ倒れた。すると…

 

「ク……クククククカカカカカカ…ッ!」

 

突如乾いた笑い声を出し始めた。

 

「この国に必要なのは防人ではなく護国の鬼…ッ!儂は死んで護国の鬼とならん…ッ! さぁ、儂を殺せぇッ!フハハハハッ!」

 

どこまで狂っているのだろうか。自ら鬼となるべく殺せとカリバーに笑いながら言うこの男は、国に取り憑かれている奴隷というべきだろうか?しかし、その目論見もすぐに消える。

 

「殺す? そんな甘い事はしない。」

 

その言葉と共に闇黒剣月闇とジャオウドラゴンが光出し、訃堂の身体から闇が噴き出す。

 

「ッ!?」

 

「あれはまさか…闇黒剣月闇の力…ッ!?」

 

「貴様を護国の鬼にしてたまるか。どこにでもいるただの人間だ。生きたまま余生を闇の中で過ごせ。」

 

「バカな…ッ!」

 

カリバーは訃堂を殺さず、護国の鬼にもさせない為闇黒剣月闇の力で生きたまま闇へと葬る選択をしたのだ。

 

「これで話は終わりだ。消えろ、永遠の闇に…ッ!」

 

その言葉と共に訃堂は最期の言葉も言う事を許されず消滅した。

こうして、護国の為に神を飼いならそうとありとあらゆる手段を使ってきた男は、手駒にしたノーブルレッドに未来を解放され、自身が鬼と認めたカリバーに生きたまま闇へ葬られる事となり、自身の護国の鬼となる野望も全て消えたのである。

 

その時、突然地響きが起こり始める。それでマリアが目覚めた。

 

「地震? この鳴動は───」

 

「いえ、あれをッ!?」

 

緒川が見る方向には、赤い光が天へと伸びている。

 

「何なんだ…こいつは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい……はいッ、でも、私の謹慎は? 分かりました。本部に向かいますッ!」

 

アマルガムの使用認可が降りた事で響の謹慎も解除され、動けるようになった。

 

「行くのか?」

 

「うん…行かなきゃ。」

 

響は本部は向かうべく急いで身支度を始める。

 

「なぁ…響…」

 

「うん?」

 

「へいき、へっちゃらだ。」

 

「へ?」

 

突然響の口癖を言う洸。一体どうしたのか。

 

「何もしてやれないダメな父親が、娘にかけてやれる唯一の言葉だ…」

 

すると、響の小学校の入学式の写真を見る。

 

「同じ言葉でも、根性無しの俺には、いつしか呪いと変わっていった…だけどお前は違うだろ?」

 

「お父さん…」

 

「物事を、呪いととるか祝福ととるかなんて、気の持ちよう1つだ。」

 

「呪い…うん、そうだね。」

 

「それにほら、なんだ…呪いも祝福も、漢字で書くとよく似てるだろ?」

 

言われてみれば、呪と祝は同じ「兄」という言葉が入っておりよく似ているかもしれない。

 

「裏と表で……お? 俺の言ってる事もあながち間違いじゃないかもな…」

 

「───ッ、何それ?」

 

洸の言葉に思わず吹き出てしまう響。

 

「来年の今頃にはきっと名言だ。」

 

「けだし名言だよッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして響は身支度を終わらせ、急いで本部へ向かう。

 

「行け!響!お母さんの事は任せろッ!」

 

「ありがとう、お父さんッ!ラーメン、美味しかったッ!」

 

そう言いながら響は父に見送られながら本部へと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、月ではカリバーが修復した部分から光が放たれ、月の遺跡へと伸び、頂きから光を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけエピソード

 

03話 必要ない、偽りの主人公(ヒーロー)

 

 

 

「俺は一体何の為に存在しているんだぁッ!?」

 

 

自分は一体何の為に存在しているのか。そんな事、今までこれっぽっちも考えずにこの世界で生きてきた。

突然物語に存在する意味が無いと言われ、おまけに死の宣告をされた。

この世界の物語の主人公は立花響。そして俺は偽りの主人公(ヒーロー)であり、虚無の存在。

俺に存在する意味も役割も無いなら、何故存在しているのか。何故この世界に転生させられたのか。

 

「……俺に存在意義が無いなら…何で……」

 

自身の存在する意味を問いかける隼人。そんな時だった。

 

「…?」

 

部屋の本棚に収納されてある1冊の分厚い本が僅かに光を放っていた。隼人は立ち上がり、徐に本を取り出した。

その本を表紙には、「戦姫絶唱シンフォギア」と書かれていた。

 

「これって…富加宮さんが言っていた…この世界の物語…」

 

富加宮が言っていた始まりと終わりが全て記されたこの世界の物語の本。隼人は恐る恐る本の表紙を開きその本を読み始めた。

 

八千八声…啼いてを吐く…ホトトギス…

 

その一文からシンフォギアの世界の物語が始まった。

まずは4年前に起きたツヴァイウィングのライブに当時中学生だった響が行けなくなった未来の分まで楽しんでいた。

そして悪夢が訪れ、翼と奏がギアを纏いノイズを殲滅する中、奏の活動時間が限界を迎える時、砕けたガングニールの破片が響の破片に突き刺さってしまう。「おい死ぬなッ! 目を開けてくれッ! 生きるのを諦めるなッ!

奏が放った言葉で響が目を開ける。

最後に奏が絶唱を使いノイズを殲滅するも、命を落とし17歳の生涯を閉じた。

 

それから2年後、リディアンに進学し、ノイズに襲われる中戦姫として覚醒する響。戦い覚悟を問われる中彼女の苦悩と成長、クリスとの出会い、そしてフィーネとの戦いの末、落とされた月の破片を砕くべく翼とクリスと共に絶唱を使った事も。

最後に3人が未来と再会、響と未来が流れ星を見る場面でルナ・アタック編は終了した。

 

「俺がいなくても…物語として成り立ってる…ッ!」

 

隼人は震えながら、自分がいなくてもこの世界の物語が成り立っている事を実感した。しかも自分が経験した出来事や戦いとほとんど同じ流れだった。いてもいなくても変わらない。

次のフロンティア事変においても自分が経験してきた流れとほとんど同じ。マリア、調、切歌との出会いからフロンティア浮上、未来が神獣鏡のシンフォギアを纏った事も、ネフィリムを倒した事も全て記されいる。

その次の魔法少女事変もほとんど同じ流れ。装者のイグナイト習得も自分が経験した戦いも何もかもがこの物語に全て記されている。読んでいくうちに隼人の顔はどんどん青ざめていく。

パヴァリア光明結社との神の力を巡る戦いも、自分がいなくても響を主軸に物語が記されている。読んでも読んでも、探しても探しても自分が介入する場所なんか、どこにもなかった。

読んでいく内最後の章に入り、そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「物語の結末も…しっかり記されている…」

 

そのまま裏表紙を閉じた。隼人は、このシンフォギアの世界の物語の結末まで読んでしまった。

完成されている。物語における全てが既に完成されている。このシンフォギアの世界の物語が、自分がいなくても1つの物語として完成されている。

 

「やっぱり俺…この世界に存在する意味が…全く無い…」

 

改めてこの世界に存在する意義も役割も無い事を実感した。途中で自身がフィーネの魂を闇の世界に送った事や、ステファンの足を再生した事など、思い返せば存在意義の無い自分が、最初から完成していた物語を勝手に改変していただけに過ぎなかった。

 

「結局俺…最初から立花響達の物語に、入る余地なんて無かったんだ…」

 

ただならぬ虚無感が部屋の中を支配していた。そんな時…

 

「ッ!」

 

闇黒剣月闇の未来予知が発動。隼人はそのまま立ち上がる。腰に何やら違和感があるのでよく見たら、何故か覇剣ブレードライバーが巻かれていた。彼の中の虚無に反応したのかどうかは分からない。隼人は闇黒剣月闇を持ち、無銘剣虚無も手にして、ブレードライバーに納刀して部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルの屋上にやって来た隼人は、エターナルフェニックスを取り出して起動、ページを開いた。

 

【エターナルフェニックス!】

 

【かつてから伝わる不死鳥の伝説が今現実となる…】

 

隼人はページを閉じ、エターナルフェニックスをブレードライバーに装填。すると、重々しくも軽快な待機音が流れ、背後にエターナルフェニックスが降りてくる。そして無銘剣虚無のグリップを握り、抜刀した。

 

【抜刀…!】

 

すると、全ての音が消え無が空間を支配する。

 

「…変身。」

 

全ての音が消えた空間で隼人の声だけが聞こえる。

 

【エターナルフェニックス!】

 

神獣エターナルフェニックスが飛来し、隼人の身体を翼で広げたと同時に包み込み、翼が開かれ隼人は不死鳥の剣士、仮面ライダーファルシオンに変身した。

 

【虚無!漆黒の剣が無に帰す…!】

 

右手に無銘剣虚無を持ち、闇黒剣月闇を必冊ホルダー納刀してファルシオンは背中に翼を生成して飛び立って行った。

 

 




いかがだったでしょうか?
今回遂に訃堂へのお仕置き回です。そして隼人が更にボロボロになっていきます。悩んだ末に訃堂はキーアイテムであるジャオウドラゴンに変身したカリバーに闇に消されるという形にしました。
納得できなかったら申し訳ありません。
個人的は弦十郎に引き渡して「どこにでもいるただの人間として裁いてやれ」という案もありましたが、今回は初期のカリバーみたいに闇へ葬る事にしました。
今回のサブタイトルはビルドの幻さんの決め台詞から取ったものですが、意味としては国の為に永遠の闇に消された訃堂と、少し無理矢理ですが響達の未来の為に泥を被った隼人に対しての意味です。
カリバーとローグって紫繋がりなので意識させました。
実は、隼人にとって響達がある存在へとなっています。それがどういう事か分かれば、隼人があと1つ知る物が分かるはずです。

後は結構ライダーネタがあるので探してみて下さい。

今回のおまけエピソードは第83話の没展開「シンフォギアの物語とその結末を読んでしまった隼人」と「隼人がファルシオンに変身する」というものです。

エピソードに出てきた隼人がシンフォギアの無印からXVまで記された本を見て改めて自身に存在意義がない事を知るというものでしたが、あまりにも隼人が可哀想なので没にしました。
ファルシオンに変身も、最初はあったんですが、既にもう変身しないと公表しているのと、隼人が更に虚無感に押し潰されそうになるので没にしました。
次回のおまけエピソードはもしかしたらヤンデレ共が出るかもしれません。


セイバー増刊号、面白かったです。これからリバイスも楽しみ!セイバーのVシネマの予告を見たんですが、まさか新たなアレが出るとは…ッ!それにライドブックも…どうしよう…

完結まであと7話。今回はここまでです。感想お待ちしています。
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