【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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一気に書き上げました。遂に前から出そうと思っていたアレが登場します。
物語はクライマックスへ! いよいよ最終決戦!ここまで長かったなぁ…





第91話 勇気、愛、誇りを胸に。

ヴァネッサを迎え撃とうとしたカリバーが突如として消えてしまい、クリスの代わりにレーザーを受けてしまった響は、クリスと共に吹き飛ばされてしまった。

 

「うぅ…へいき、へっちゃらッ!」

 

響はいつもの口癖で自分を奮い立たせる。

 

「この距離なら…ッ!」

 

クリスはヴァネッサから離れた事で、狙撃が出来ると判断してアームドギアをスナイパーライフルに変形させる。すると…

 

「助太刀するぜぇぇぇッ!」

 

何と、倒された筈のミラアルクがチビミラアルクとなってクリスの顔面にへばり付き、妨害する。

 

「邪魔だッ!……ッ! しまったッ!懐にッ!」

 

その一瞬の隙を付いて、ヴァネッサが再びレーザーを放ち、爆発が起こるが、ギリギリの所で響がクリスを抱え、回避する。

 

「クリスちゃんッ! 一緒にッ!」

 

「あたしに接近戦をかッ!」

 

「「ヴァネッサッ!!」」

 

響とクリスは2人揃って懐目掛けて突っ込み、ギアをアマルガムへ移行させて黄金のバリアを生成して一撃をくらわせた。

 

「出来らぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「きゃあああああああああッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、どういう訳かワンダーワールドの自宅の寝室に転送された隼人は、とうとう自分に死期が来たと悟ると、そこでかつて自分の大切な存在だった瑠奈と会っていた。

 

「瑠奈………!?」

 

「久しぶり。隼人。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ッ!?」」

 

響とクリスの一撃で轟音が響き、その音は翼達にも聞こえるほどだった。

 

「どこかで戦闘がッ!?」

 

「きっと近いデスよッ!」

 

そして、予想通り壁をぶち破り響とクリス、そしてヴァネッサ達が現れる。クリスはイチイバルをアマルガムへ移行させ、拳を天に掲げて黄金を生成、巨大な弓矢へ変化させた。

 

「「ヴァネッサッ!!」」

 

エルザとチビミラアルクがヴァネッサを見ると、身体に稲妻が走り、左腕を失って満身創痍だ。

 

「生き……足掻くッ!」

 

ヴァネッサは最後の悪あがきとして胸から光線を放ち、クリスも矢を撃ち出し激しくぶつかるが、クリスの矢が光線を掻き消していく。

 

「リフレクターを先端にッ!?」

 

そう。防御に用いるリフレクターを矢の先端にし、攻撃に用いる事で光線を掻き消しているのだ。

そして矢は月遺跡の壁をぶち破り、穴から宇宙へ空気が吸われていく。

 

「それでもッ! 私達はッ!怪物なんかぃぃぃ! 」

 

ヴァネッサに続いてチビミラアルク、エルザも外へ吸い出されていく。

 

「なりたくなかったぁぁぁッ!」

 

「くらいやがれぇぇぇぇッ!」

 

最後に本音を吐いたヴァネッサ達にクリスの∀∀デ・レ・メタリカが放たれ、自分達はこれで宇宙の塵となると悟るヴァネッサ達。だが、それに反して矢はバリアと化し、ヴァネッサ達はクリス達に助けられた。そして、開けられた遺跡の穴は自動的に修復された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう…して……お前が……?」

 

隼人はどういう事なのか状況が把握出来ていなかった。どうして亡くなったはずの瑠奈が自分の前に現れたのか全く分からなかった。そんな隼人に瑠奈は穏やかな笑みを浮かべる。

 

「ずっと、隼人の事を見てたんだ。この世界に来た時からずっと。だから、話がしたかったの。」

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスに助けられたヴァネッサは、エルザとチビミラアルクに助かって良かったと涙を流されるが、どうして自分を助けたのか理解出来なかった。その答えを、クリスが話す。

 

「助けたわけじゃねぇ……ただ、本当に、今よりここより先に進もうと願うなら……、尚のこと、帰る場所ってのは大切なんだと伝えたかった。あたしは考えすぎるから、きっとまた、迷ったりするかもしれない……だけど、帰る場所があるから、立ち直って先に進んで行ける。それはあんただって……」

 

「ヴァネッサッ!」

 

「もうやめるであります……心まで怪物にしない為にも……」

 

「ウチも……弱さを言い訳に、自分の心を殺すのは、たくさんだゼ……」

 

チビミラアルクとエルザもこれ以上心を怪物にしてまでも、弱さを盾に自分の心を殺すのは嫌だと涙を流しながら本音を吐いた。

 

「帰る場所……私の家族……」

 

ヴァネッサは涙を流しながらエルザとチビミラアルクを抱きしめ、響も表情を緩めていた。その時、その感動の場面をぶち壊す魔の手が迫っていた…

 

「だが、茶番も終わり……ここまでだッ!」

 

そう。シェム・ハだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼人、大人になったんだね。私、凄く羨ましい。」

 

「何言ってるんだよ……世間から見れば俺はまだまだ子供だ……」

 

隼人は暗い寝室の中で現れた瑠奈と話していた。彼にとっては彼女が死んでいるとはいえ、8年ぶりの再会。かつて少ない時間で過ごした思い出が蘇っていた。

 

「それに隼人って今、ヒーローになってるんだね。」

 

「俺はそんなガラじゃない…超えてはならない一線を超えてしまったんだ…いくら悪人でも、人を殺めてしまったんだ…だから俺はヒーローなんかじゃない……裁かれるべき悪党だ……」

 

「……ずっと1人で背負い込んでいたんだね。確かに隼人は許されない事をしたかもしれない。でも、それからは人の為に戦ってたんでしょ? 私にそっくりなあの子やその友達と一緒に。それに、隼人が悪い人になれないのは私は知ってる。だって隼人は優しいんだから。」

 

「……」

 

久しぶりに言われた。あの太陽の様な眩しい笑顔が脳裏によぎる。隼人にとって、瑠奈は自身の暗闇を優しく照らす月の光なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、上條は?」

 

「それが、消えたんだよッ!」

 

「消えたッ!? どういう事ッ!?」

 

翼達が隼人がいない事に気付いたその頃、月遺跡で突然ヴァネッサが飛び上がっていた。

 

「忌々し機ネットワークジャマーは…、手ずから葬らせてもらうッ!」

 

『まさか、シェム・ハかッ!?」

 

シェム・ハによって操られたヴァネッサに反応するかのようにエンキが姿を現した。そしてヴァネッサの顔にシェム・ハの本来の姿が浮かび上がる。

 

「この者を完全怪物と再生させた際に、我の一部を滑り込ませていたのだ。」

 

「た、頼む……神殺し……その拳で、シェム・ハを討て……」

 

ヴァネッサは対抗し、神殺しの力を持つ響にシェム・ハを打つように言う。だが…

 

「そんな事をしたら、ヴァネッサさんまで……」

 

いくら操られているとはいえ、そうしたらヴァネッサは死んでしまう。せっかく最後に分かり合えたのに、そんな事は出来ない。

ヴァネッサはシェム・ハに抵抗する。

 

「私はもう…誰にも利用……されたく……ない……」

 

しかし、抵抗虚しくヴァネッサの身体は操られてしまう。

 

「頼むゼッ!」

 

「頼むでありますッ!」

 

チビミラアルクとエルザも涙を流しながら希望である響に懇願する。

 

「神殺し……頼むッ!」

 

「うああああああああああッ! Balwisyall nescell gungnir tronッ!!」

 

全ての感情が混ざった声と聖詠と共に走り出した響はギアを纏う。しかし、その隙をついて右腕を伸ばされ、制御する石にめり込ませた。

そして、ヴァネッサは響に渾身の一撃をくらわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼人はどうして、自殺なんかしたの?」

 

その質問は、隼人にとって一番答えたくない質問だった。でも、もう自分が死ぬと分かっている今、応えることにした。

 

「……お前がいなくなってから、何だか心に穴が空いた気持ちになった。月日が経つにつれて、お前を忘れて何気ない日々を過ごしてた時、人に騙されて、誰も助けてもらえなかった。信じていた家族にも裏切られて、何も信じられなくなった……そして、命を絶って神様の力で、この世界に来た…そして今、俺の命はもう消えかけようとしている…」

 

「隼人…」

 

「もしお前が生きていたら、俺の歩む道も変わってたんじゃないかなって思うよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くッ! ウイルスプログラムッ! シェム・ハの断章を直接撃ち込まれたかッ!」

 

シェム・ハによってウイルスプログラムが撃ち込まれ、周囲に青い稲妻が走り出し、エンキの姿が乱れ始めた。

 

「恐ろしき哉、神殺しの拳……。だが、その躊躇がもたらす未来がこれだッ!」

 

その時、ヴァネッサが口から血を吐き、悲鳴を上げながら全身から血が噴き出たのだ。

 

「ヴァネッサッ!」

 

「ヴァネッサさんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「情けない顔しないの…あなたは護ったのよ…」

 

目や口から血が流れ、皮膚の下の基盤が剥き出しになっているヴァネッサ。

 

「…え?」

 

「呪われた拳でも、私達の誇りを護ってくれた…」

 

確かに響の拳には神殺しの呪いがある。でも、それは自分達の誇りを護った事になるのだ。だから響にしゃんとして欲しい。

その時、けたたましい警告音と共に管制室が赤く染まる。マリアはエンキに話しかける。

 

「教えてッ! 何が起きてるのッ!?」

 

「このままでは、ここマルドゥークな、新たなシェム・ハと再生───」

 

その時、エンキの姿が乱れ始め、その代わりにシェム・ハの姿が映し出された。

 

「この様にな。」

 

シェム・ハの本来の姿が映し出されて驚く装者達とノーブルレッド達。

 

「万謝するぞ人間。1年前のあの日、刹那が1つに繋がった事で我は蘇り、メガラニカからの浮上を果たせた。」

 

「1年前? 月の落下を止める為に、世界中の人類がAppleに繋がれたから? じゃあ、父祖の地の、あの歌は一体…」

 

かつてフロンティア事変にて月の落下を止める為に、世界中の祈りが込められた事にやはり関係しているのか。その答えをシェム・ハが答える。

 

「形を変えて現代に残る、統一言語の断片、その成れの果てだ。」

 

「人は、1つに繋がらないのではなく、」

 

繋がってはいけなかった……

 

音楽こそが、唯一の統一言語と言われてもいいこの世界。繋がってはいけないからこそ、バラルの呪詛で守られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼人は、死ぬのは怖い?」

 

「……どうしたんだよ急に。」

 

「隼人は一度死んだんだよね? でも、今はどう? 怖くないの?」

 

それは、一度死を経験した隼人は、考えた事も無い事だった。大切な存在を前に隼人は…

 

「……死を恐れてたら…闇の剣士なんて務まらないだろ……今の俺は死を背負って戦っているからな…」

 

と、死を背負って戦っているからと強がって怖くない様に言う。すると瑠奈は…

 

「強がらなくてもいいのに。そういう所、隼人って素直じゃないよね。本当はどうなの?」

 

隼人の素直じゃない所を見抜き、本音を聞く。

 

「………怖いよ……俺だって……」

 

「俺だって死ぬのは怖いよッ!もっと生きたいよッ!でも、俺は間違いを犯したッ! そのツケが回ってきたと思うと受け入れるしか無かったッ!……でも……ッ! 本当は受け入れたく無かったッ!未来を…生きたかった……ッ!」

 

涙をボロボロと流しながら本音をぶちまけた。彼だって本当は死を恐れていない訳じゃない。どこにでもいる、1人の人間なのだ。

 

「自殺して死を経験したのに、どうして?」

 

「あの時は、もう逃げ道が死ぬ事以外無いと思ってた…ッ! でも……この世界で生きてきて……今ようやく分かった……ッ! 生きる事の素晴らしさ…命を大切さをッ!」

 

死を目の前にしてようやく命の大切さを知った隼人。その時、再び闇黒剣月闇の未来予知が発動。啓示された未来は、「月遺跡が破壊され、装者達がシェム・ハによって殺される」というもの。

 

「あいつらを……失わせるものか……ッ!」

 

身体を動かそうとする隼人だが、身体の痛みで動けない。そんな時、瑠奈が口を開いた。

 

「隼人。どうしてあの子達の事を気にかけるの?」

 

その時、瑠奈の言葉と共に、闇黒剣月闇の未来予知が遮断された。

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、真実を知った所で、お前達は月遺跡ごと吹き飛ばされる定め。」

 

その時、月遺跡から火柱が次々に出現し、廊下にも炎が迫り地響きが鳴り始めた。

 

「このままだと地球に帰還どころか、宇宙の藻屑だッ!」

 

「ギアをッ! ギアを纏うデスよッ!」

 

「ギアを纏ったってどうしようも────」

 

「きゃああああああああッ!」

 

その時、管制室の天井が崩れ去り、装者達とノーブルレッドの悲鳴と共に、遺跡を中心を巨大な火柱と共に月面がひび割れ、大爆発が起こった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爽快である。忌々しきは全て塵芥にッ! 実に役立ってくれた。あとは月食に合わせて───む?」

 

倒れたキャロルを見下ろし全ては計画通りだと爽快感に浸るシェム・ハ。すると、空の彼方から何やら三角形の物が見える。それは、自分が切り捨てたノーブルレッドが形成したダイダロスエンドだ。

 

「こ、これは…?」

 

響達はギアをアマルガムへ移行させて、その中をノーブルレッド達に導かれるままに飛んでいた。そう。彼女達のおかげで巻き込まれる寸前、脱出したのだ。

 

「私めら3人が形成する全長38万キロを超える哲学の迷宮はッ!」

 

「遺跡ボカンの衝撃を遮断するだけでなく……、空間を捻じ曲げて、地球への道を切り開くんだゼッ!」

 

「最速で最短……真っ直ぐに、一直線に…だけどッ!」

 

その時、ノーブルレッドの身体が消滅し始める。そう。彼女達は最後の力を振り絞って装者達を地球へ導いているのだ。

 

「勘違いしないで…これは、怪物が苦し紛れにかける呪い…鼻持ちならない正義の味方に、手遅れとなった地球を見せつけたいだけの、ちっぽけな抵抗…」

 

と、ヴァネッサはこれを呪いと称して響に言うが、それでも響は…

 

「うん…だけど、ありがとう。」

 

「ッ!?」

 

突然、響に礼を言われハッとするヴァネッサ。

 

「呪いは、きっと祝福に変えられる……、お父さんがそう言ってたし、私も信じて疑わない……」

 

「どうやら、私めらは…」

 

「ここまでのようだゼ…」

 

エルザとチビミラアルクは、いよいよ自分達が死ぬ事を悟った。

 

「3人の想い、確かに受け止めたッ!」

 

「そして、それを背負うのが、お気楽者の使命なのデスッ!」

 

「あぁ、確かに届けてやる。あたし達の帰る場所に。」

 

そして響も涙を浮かべ、ヴァネッサも涙を浮かべながら頬を背けた。

 

「どいつもこいつも大嫌いよ…シンフォギア装者…そしてカリバーも…私達を、怪物にすらさせてくれないなんて…ありがとう…」

 

ヴァネッサは、響達とここにいないカリバーにお礼とも呪いとも言えない言葉を残し、エルザとチビミラアルクと共に消滅した。こうして、人に戻る事を夢見て、神の力を手にする為に訃堂やシェム・ハの手駒になったノーブルレッド達は、完全な怪物になりながらも、最後の最後に装者達を導き、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてって……何でだろうな……よく分からないよ…」

 

今まで自分は響達と手を貸さないと言っておきながら戦っていた。響に関しては瑠奈に似ていたから無意識に重ねていたから分かる。でも、本当にそれだけなのか? 翼達に感じては何なのかは分からない。

 

「それはね、隼人があの子達に対してある物を持ってるんだよ。」

 

「何だよそれ…」

 

「───、だよ。」

 

「何故そこで愛……?」

 

瑠奈の口から出て来たという言葉。何故そこでその言葉が出て来るのか、隼人には分からなかった。

 

「だって、隼人って手を貸さないとか言っておきながら一緒にあの子達と戦ってるでしょ? それから隼人が落ち込んでいた時も、あの子達に未来を生きて欲しいって思ってるし、自分から助けに行ったり、親しもうとしている。夢を追い続けるように言った事も、背中を押した事も、それは隼人があの子達を大切に思ってるだからだと私は思うな。」

 

「瑠奈…」

 

愛に形は無いって言うし、隼人のそれはもう、じゃない?」

 

微笑む瑠奈を見て、隼人はこれまで響達と戦ってきた事や短いながら過ごした時間を思い出した。今思えば、響を無意識に瑠奈に重ねて以来、翼やクリス、マリアや調と切歌と戦いを共にし、手を貸すつもりは無いと思いながらも、力を貸した。闇黒剣月闇の未来予知で苦しんでいた時は、彼女達に光が照らす道を歩いて欲しいと言っていた。そして、暗闇を彷徨い続けていた自分を響は引っ張り上げてくれた。それから「瑠奈」としてではなく、「立花響」という1人の少女として見るようになっていた。それだけじゃない。翼達も、未来も隼人に取って大切な存在となり、愛情を持っていたのだ。

 

「そうか……いつの間にか持ってたんだな………俺はあいつらに……愛情を……」

 

瑠奈はジャオウドラゴンを持つ隼人の左手を自身の左手に添え、右の手を広げ、ジャオウドラゴンに乗せる。すると、ジャオウドラゴンが光り始め、不思議な事が起こった。

 

【エモーショナルドラゴン!】

 

瑠奈の手によってジャオウドラゴンは、メタリックレッドに金色のワンダーライドブックに変化した。表紙には赤、白、黒の3匹のドラゴンが描かれている。

 

「これは……」

 

「私に出来るのはこれくらいだけど、きっと隼人の力になるよ。」

 

瑠奈は立ち上がり、隼人から離れる。

 

「待ってくれ…待ってくれッ!」

 

どういう訳が身体の痛みが抜けていた隼人は瑠奈を追いかけようとするが、瑠奈は光の粒子となり消滅した。

 

(隼人は、隼人が今、正しいと思う事をすれば良いんだよ。だから、負けないで。)

 

瑠奈の言葉が暗い部屋に響き、隼人は目から涙をボロボロと流す。

 

「瑠奈ぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

そして、瑠奈を名を叫び、嗚咽を漏らす。しかし、すぐに服の裾で涙を拭い、目に力を取り戻し、何かを決意したかの様に立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!? うわぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

その頃、ダイダロスエンドを抜け出し、突然宇宙空間に投げ出される響の手を掴む翼。

 

「誰かと手を繋ぐこと…、こんなにも勇気が必要だったんだな…それを、私は…」

 

「翼さん…」

 

そして、響達は真っ赤に染まった地球に近づく。

 

「こんなになった地球を見ると、どこに帰還したらいいのか分からないわ…」

 

「この星に生きる命は…」

 

「みんなは───」

 

その時、通信機から入電が入った。その声は友里だ。

 

『こちら本部ッ! 応答願いますッ!』

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボロボロなれど、こちらは無事ッ! そして、無事なのは本部だけじゃないッ! 」

 

あの後、ユグドラシルの出現に巻き込まれたS.O.N.G.本部だったが、持ちこたえていた。そして弦十郎が起死回生の一手を出す。

 

「ネットワークシステムを利用した演算でユグドラシルを起動するならば、ネットワークから妨害する事も可能ッ!」

 

そう。ネットワークシステムをハッキングする事が出来るのだ。

そして今、世界中のハッカーが一斉にファイアウォールを張っている。

 

「まさか、エシュロンを応用した、各所にファイアウォールの設置をッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『米国大統領の名において、非常事態宣言を発動するッ!腕に覚えのある者、及び各国機関は、世界規模で発生しているハッキングに対抗せよッ!各端末の演算機能を死守する事で、これ以上の侵食を阻止出来るッ!人類の総力で押しとどめるんだッ!』

 

新大統領によって非常事態宣言が発令され、世界各地でネット民やホワイトハッカー達がハッキングをし、ユグドラシルシステムを妨害。今、人類が一丸となって、戦っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────く……ッ!」

 

想定外の出来事に顔を歪めるシェム・ハ。そこへ…

 

「どうやら貴様の思惑通りには行かなそうだな。」

 

上着を脱ぎ、コートジャケットと白いシャツ、ベージュのズボン姿で汗をかきながら闇黒剣月闇を持つ隼人がやって来た。

 

「貴様…」

 

「侮ったな。人類を。現代の演算能力、なめんなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも……この連携はッ!?」

 

アメリカが出した非常事態宣言とは言え、この連携はどういう事なのか。それは…

 

 

 

 

 

 

「生前の八紘殿の指示により、事あらば協力を要請する書簡を、各国指導者の元に届けるべく奔走していたのだ。」

 

ビルの屋上に立つ赤い服を着た男性、緒川家・現当主 緒川総司と…

 

 

 

 

「流石にこの事態は想定外だけど、それでもうちの店にいる、IT関連の太客達に手伝ってもらったのさッ!」

 

バーでワイングラスを持つ青年、緒川家末弟 緒川捨犬の活躍もあってここまでの連携が出来たのだ。

 

 

 

 

 

「兄上ッ! すてくんッ! 痛み入りますッ!」

 

指令室で緒川が礼を言う。2人は緒川の兄と弟なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『おい、待たせたな。』

 

そして、どういう訳か、響達の通信機から隼人の声が聞こえてきた。ガトライクフォンで響達に繋がれないかと試したら、繋がったのだ。

 

「隼人さんッ!」

 

「上條ッ!」

 

「どこ行ってたんだよッ!」

 

『悪い。野暮用だ。』

 

「ホント、自由なんだからッ!」

 

「いなかった分、」

 

「働いてもらうデスよッ!」

 

響達も隼人の無事を確認しながら、地球へ向かっていく。

 

「繋がれぬ定めを背負いながら、それでも人は…、世界は繋がっていく…ああ……防人が人を護るのは、弱いからではなく…、その勇気、果てなき強さが、尊いからなのですね…お父様…」

 

やっと分かった。防人は何故人を護るのか。その答えを見つけた。勇気が、果てなき強さが尊いから。翼はようやく八紘の遺した言葉の答えを見つけた。

 

「みんな、エクスドライブだッ! 隼人さんッ! お願いしますッ!」

 

『あぁ、任せろ。』

 

「だけど、あいつがいるとはいえ、可能とするだけのフォニックゲインは───」

 

「信じよう、私達の胸の歌をッ! 隼人さんをッ! シンフォギアをッ!」

  

信じる。自分達の胸の歌を。隼人を。シンフォギアを。だからこそ、今、命を燃やして歌うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は死を背負っているようだな…自らの命を散らせ、悲劇に終わらせるつもりか?」

 

シェム・ハは隼人の運命を見抜く。自身の運命が分かっている隼人は、ガトライクフォンのスピーカーを塞ぎ、シェム・ハの言葉を響達に聞こえないようにしている。

 

悲劇? 笑わせんなッ! ハッピーエンドに変えてやるよッ!

 

【ブレーメンのロックバンド!】

 

【ジャアクリード!ジャアクブレーメン!】

 

悲劇になんて終わらせない。今自分がやるべき事を、自分の意思を貫く事を決意した。だから最後まで戦う。そう決意したのだ。

隼人はガトライクフォンをポケットにしまい、ブレーメンのロックバンドを起動して闇黒剣月闇にスキャンし、天へ掲げた。

 

 

 

 

 

 

『軌道算出、ですが───』

 

藤尭が軌道を算出する。そして…

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

響き渡る、戦姫達の生命(いのち)絶唱(うた)

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

この地球に生きる生きとし生けるもの達の想いを、全てを込めて、信じて彼女達は歌う。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

6人は光となり地球へ突入していく。しかし…

 

「この突入角では───」

 

藤尭はこの突入では危険と分かっていた。何故なら…

 

「Emustolronzen fine el zizzl」

 

響達が歌い終わると、守っていた黄金のバリアにひびが入る。そして、ギアインナーのまま大気圏へ突入したのだ。

 

「「「「「「うわあああああああッ!」」」」」」

 

「やはり、隼人さんの力を加えても、エクスドライブを起動させるだけのフォニックゲインは……」

 

「くっ…」

 

弦十郎と緒川は、やはり駄目かと判断する。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

「月からの帰還とは驚嘆に値するッ! なれどここまでよッ! 流れ星───堕ちて、燃えて、尽きて…」

 

まさか響達が月から帰還するとは思わなかったシェム・ハにとって予想外だが、どの道彼女達はここで塵となる。これでもう自身を止められる存在はいないと勝ちを確信した。

だが…それはすぐに消え失せる。何故なら…

 

「そしてぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

「戦姫達が降り立つッ!」

 

響と隼人の言葉で6色の光は、ユグドラシルを薙ぎ倒し、シェム・ハの目の前に降り立つ。その衝撃でキャロルが目を覚ました。

響達のギアはエクスドライブへと移行している。今、ここに6人の戦姫達が集結。

そして隼人も、闇黒剣月闇を地面に突き刺し、エモーショナルドラゴンを起動して表紙を開いた。

 

【エモーショナルドラゴン!】

 

【勇気!愛!誇り!3つの力を持つ神獣が今ここに…!】

 

男性と女性の声でライドスペルによる朗読が語られ、隼人はエモーショナルドラゴンの表紙を閉じる。

 

【ジャアクリード!】

 

隼人は闇黒剣月闇を引き抜き、エモーショナルドラゴンをスキャンして邪剣カリバードライバーに勢いよく装填した。

すると、荘厳な待機音を掻き消すファンタジー調の待機音が流れ始め、隼人はそれに合わせて闇黒剣月闇を構える。

 

(神様…ようやく分かりました…俺が何故この世界に転生させられたのかを…だから…もう少しだけ…もう少しだけ俺に時間を下さい…ッ!)

 

例え自分に存在意義が無くても、偽りの主人公でも、今こうしてここに存在している。生きている。命を燃やしている。だが、もうすぐその灯火も消える。それでも大切な事を知る事が出来た。これが、最後の変身。

隼人は迷う事なく闇黒剣月闇のグリップエンドで邪剣カリバードライバーのボタンを勢いよく押した。

 

【闇黒剣月闇!】

 

すると、エモーショナルドラゴンのページが開き、中から赤、白、黒の3匹の竜の顔が飛び出した。

背後のエモーショナルドラゴンも開き、隼人は自分を変えるあの言葉を言う。

 

「うああああああああああああああッ!! 変身ッ!!」

 

全ての感情が混ざり合った声と共に発せられたその声は、隼人が今まで発した中で1番大きい声だった。

隼人は闇黒剣月闇で斜め上を切り上げ、開いたエモーショナルドラゴンから、勇気の竜ブレイブドラゴン愛情の竜ルーンブライトドラゴン、そして誇りの竜ルーンディムドラゴンが飛び出した。

 

【愛情のドラゴン!勇気のドラゴン!誇り高きドラゴン!】

 

【エモーショナルドラゴン!】

 

3匹の竜は縦横無尽に飛び回り、やがて隼人の身体を高速回転して包み込み新たな姿へ変える。

ジャアクドラゴンをベースに右肩はセイバーと同じブレイブドラゴンの頭部を模したブレイブドラゴンボールドと赤いローブのメイスケイル、胸にはルーンブライトドラゴンの頭部を模したルーンブライトドラゴンブレストに白い前垂れのブライトメイル、背中には白いマントのセイリングマント、左肩はルーンディムドラゴンの頭部を模したルーンディムドラゴンボールドと黒いローブのダウナーメイル、左腕には黒に金色で剣の模様が描かれた滅壊の盾を装備している。

カリバーヘルムにはジャアクドラゴンと同じだが、火、光、闇を司る竜の力を得ており、それぞれの竜の意匠。銀のバイザーにはライトブルーの模様。

 

今、ここに勇気、愛、誇りを司る3匹の竜の力を宿した、誇り高き宵闇の剣士、仮面ライダーカリバー エモーショナルドラゴンが誕生した。

 

【神獣合併!感情が溢れ出す…!】

 




いかがだったでしょうか? 2つの出来事が同時進行する展開は難しい…
いよいよ最終決戦に突入していきます。そして満を辞してエモーショナルドラゴンの登場! ずっと前から登場させる予定だったのでここで登場させました。隼人の初夢の伏線回収です。
そして隼人が知るべき物が遂に判明。彼は何故自分が本来存在意義の無いシンフォギアの世界に転生させられたのかもようやく分かったようです。
ではここで、おさらいも兼ねて解説に入ります。長いので休みながらじっくり読んで下さい。

・瑠奈って誰?

隼人が転生する前、小学6年生の時に出会った川で溺れてる子猫を助けようとした少女。容姿は今の響と髪が黒以外瓜二つ。性格も声も同じなので双子に見える位そっくりです。それから一緒の中学になり、瑠奈の人助けに振り回されてながらも、隼人にとって大切な存在になっていましたが、隼人が中学2年生になった頃、交通事故で14歳の若さで亡くなりました。15歳の誕生日を迎える4日前に。彼女の命を奪った運転手が明らかに過失があるのに無罪になった事で、隼人の心に闇が出来る原因となりました。隼人が響にやたらと甘いのも、無意識にそっくりな瑠奈と重ねていたからなんです。

・隼人が持っていた物=愛 何故そこで愛?

隼人が響達に対して持っていた物。それはです。響に関しては無意識に瑠奈と重ねていました。物語が進むに連れて隼人は闇黒剣月闇の未来予知で苦しめられていきます。その時に見えた最悪な未来で、響達が死ぬ未来が何度も啓示されました。その時、同時に大切な存在だった瑠奈の様に響達を失いたく無いという気持ちが芽生えたのです。
隼人は、自分と繋がれば死なせてしまう為、繋がらずに、響達には光が照らす道を歩いて欲しいと言ってます。
やがて、暗闇を彷徨い続けていた隼人でしたが、響達によってエレメンタルドラゴンが出来上がり、響と手を繋いだ事で隼人は響を「瑠奈」では無く、「立花響」という1人の少女として見る様になりました。やがて戦いの中、鬼になりそうだった翼の代わりに自ら手を汚し、夢を追い続ける様に言い、クリスとはボケとツッコミをする仲になり、かつて敵だったマリアや調と切歌ともやがて打ち解け、話せる様になりました。隼人は響達と繋がった後、戦いで自ら手を貸したり、突然現れては突然帰ったりと自由っぷりを見せながらも親しもうという気持ちになっていきました。
そして響の陽だまりの未来にも信用されて、彼女達と過ごす内にいつの間にか隼人にとって大切な存在となり、響達に対して、愛情を持っていたんです。
愛に形は無いって言いますし、無理矢理かもしれませんが、隼人の行動も愛情ではないでしょうか。
感想で「隼人が愛情に気づく話が見たい」というコメントを見て、なら、最後の最後で愛情に気づかせようという形にしました。


・この瑠奈は本人なの?

厳密に言うと、本人というよりは隼人の心の中の大切な者を想う気持ち…即ちが具現化した物です。もしかしたら、最後の最後に大切な存在となっていた響を想ったから、現れたのかもしれません。


・ジャオウドラゴンは何故エモーショナルドラゴンに変わったのか?

最初、マリア達への怒りで生まれたこのジャオウドラゴン。しかし、隼人が愛情を持っていた事に気付いた事で、エモーショナルドラゴンへと変化しました。
どんな冗談をも怒りと闇で正当化するジャオウドラゴンは、愛情を司るルーンブライトドラゴンに。4匹の邪竜はそれぞれ2匹ずつ、響と手を繋ぎ、勇気を司るブレイブドラゴンに。瑠奈と再会し、自分の意思を貫く事を決意して、誇りを司るルーンディムドラゴンへ変化。
命の大切さ。勇気、愛、誇り。ここまで分かれば、隼人が転生させられた理由は、もうお分かりですよね?

実は、「隼人が愛情を知った事で怒りで生まれたジャオウドラゴンが真の姿であるエモーショナルドラゴンに覚醒した」という裏設定があります。
この裏設定は「(ジャオウドラゴンは)ジャオウドラゴンの皮を被った何かじゃないか?」という感想を見て思いつきました。

次回でアニメパートは最後になります。隼人なりのハッピーエンドが迫って来ました。
そして次回、地味に登場していなかったあのワンダーライドブックが登場します。

今回は4号の巧の台詞を拝借しました。「悲劇? 笑わせるな。ハッピーエンドに変えてやるよ!」個人的にどうしても言わせたかった台詞です。




その4「今年で仮面ライダーは50周年!今年の仮面ライダーといえば…?
完結まであと3話。今回はここまでです。感想お待ちしています。











「この世界に、仮面ライダーカリバーはもう必要ないって事だ。」

「せっかく仲良くなれたのに…ッ!」

「私…隼人さんにまだまだ聞きたい事、話したい事、一緒にやりたい事たくさんあるのに…!」

「隼人さんは…私達の英雄です…ッ!」

「お前に出逢えて…本当に良かった…ッ!」

次回「さようなら、私達の英雄。

「これで話は終わりだ…」

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