【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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今回でXV最終回の部分。アニメパートは最後です。
エモーショナルドラゴンの力は公式サイト等を見つつ、戦闘に入れました。
タイトルにある通り、今回で隼人は…





第92話 さようなら、私達の英雄。

シェム・ハによってユグドラシルが世界中に出現する中、装者達はノーブルレッドの手引きで月遺跡から脱出。人類は一丸となって立ち向かい、装者達はエクスドライブ状態に。

そして、残された時間の中、隼人は響達への愛情に気づき、エモーショナルドラゴンへと変身。果たして、未来を助ける事が出来るのか。今、世界の未来(あした)を賭けた最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人がエモーショナルドラゴンへ変身して、響達のギアがエクスドライブへと移行した所は指令室に映し出されている。

 

「間に合ったのかッ!?」

 

そこへ、新大統領が入電してくる。

 

『間に合わせたのだッ! 我々がッ! 人類がッ! 神の野放図に抗ってッ! 人類の力でッ!』

 

そう。全人類が一丸となって、間に合わせた。神に抗った。カリバーの言う通り、人類を侮った神に見せたのだ。人類の力を。

 

 

 

 

 

起き上がったキャロルの元に、カリバーが歩み寄り、響達がやって来る。

 

「キャロルちゃんと、エルフナインちゃんなんだよねッ! それに隼人さん、その姿は…」

 

「あぁ…だが、色々は後回しだッ!」

 

「俺達がやるべき事は、言うまでもないだろう?」

 

キャロルとカリバーの言う通り、今やるべき事は1つ。

 

「未来…」

 

そう。シェム・ハに囚われた未来を助ける事だ。

 

「呪われた拳……神殺し……、我の依り代たる友の身体を前になんとする?」

 

確かに響の拳は神殺しの呪いが秘められている。シェム・ハは倒せるものの、下手をすれば未来の命が危ないのだ。

 

 

『じゃあ、私が誰かを困らせていたら、響はどうするの?』

 

『───えッ!?』

 

年明け前、未来が何気なく冗談で言った言葉が脳裏をよぎる。まさか本当になってしまうとは思わなかった。

でも、だからこそ言える。響の答えは1つだ。

 

「誰かを困らせる誰かがいるのなら、私は止める、この拳でッ!」

 

「オレ達7人が揃った今なら、神の摂理を覆せるッ! カリバーッ!お前も共に行くぞッ!」

 

「シェム・ハッ! お前の思い通りにはさせないッ! 小日向未来を返してもらうぞッ!」

 

3人の言葉を聞いたシェム・ハは、お手並み拝見と言わんばかりに光弾を放つが、8人は躱す。

 

【月闇居合!読後一閃!】

 

カリバーは闇黒剣月闇を納刀してトリガーを押し、抜刀。放たれた光弾を斬撃波で相殺する。

その隙に響が歌いながら光弾を躱しながら接近する。

 

【必殺リード!ジャアクエレメンタルドラゴン!】

 

【月闇必殺撃!完全読破一閃!】

 

カリバーはすかさず闇黒剣月闇にエレメンタルドラゴンをスキャンし、キャロルは4色の魔法陣を出現させ、共に2人で炎、水、風、土のエネルギーを放つ。

シェム・ハはバリアを張ってカリバーとキャロルの攻撃を防ごうとするが、バリアは粉々に砕かれた。

 

「声を重ねて力を増したか。だが…」

 

やはり、相手は神。ダメージを並行世界の自分に肩代わりさせて無効化させようとするが、無効化されない。

 

「まさか…」

 

シェム・ハが何かに気づく。そのまさかだ。

 

「不条理の執行に、無効化されない?」

 

そう。無効化されないのだ。そこへマリア、調、切歌が3人同時攻撃を繰り出す。が、シェム・ハは全てを弾き返した。

そこへ、翼が刀で斬りかかるが、シェム・ハが受け止める。その隙をついてキャロルが弦を伸ばし、シェム・ハを拘束する。今だと斬りかかる。

 

「フッ…」

 

シェム・ハが不敵に笑うと、4つの小さな丸型の物体から光線が放たれ、翼が引き離され、刀が折れてしまった。

 

「神獣鏡の輝きでッ!」

 

「こっちが神殺しなら、あっちはシンフォギア殺しなのデスッ!」

 

拘束を解いたシェム・ハは光線で弾幕を張り、クリスの銃撃を弾く。

そう。神鏡鏡の力は聖遺物殺し。フロンティア事変にて、クリスのイチイバルのリフレクターもこの力で無力化されているのだ。

そして、バリアで攻撃を防ぎ、爆煙が立ち込める所に…

 

「「ハァァァァァッ!!」」

 

「ぐぅぅぅぅぅッ!」

 

カリバーとマリアが接近し、シェム・ハを斬り裂いてバリアを粉々に砕いてダメージを与えて、撃墜した。

 

「ホントに効いてやがるッ!? これって、エクスドライブとあいつのあの姿の力なのかッ!?」

 

「違う…だけど、まるで位相差障壁を突破するかの様に…」

 

半信半疑だったクリスも、攻撃が効いている事を目の当たりにした。感覚はまるで、ノイズを倒すような感覚だ。

 

「おいッ! 来るぞッ!」

 

カリバーの声と共に、撃墜されたシェム・ハの所から強大なエネルギーがカリバーと響達とキャロルの前に恐るべき物が姿を現そうとしていた。その様子は勿論指令室にも映し出されている。

 

「検知エネルギー、振り切れましたッ!」

 

「周辺脅威レベル増大ッ! 神話級特異災害、開闢しますッ!」

 

ここに来てこれまで無かった神話級特異災害。まさかここで発現するとは。そして、8人の目の前には神々しい巨大な姿を現す。まるで、天使が羽根を広げているかの様な巨大な姿だ。

 

「攻撃が効いたとはいえ、やはり一筋縄ではいかないか…ッ!」

 

「未来さんを依り代とするシェム・ハはッ!」

 

「ここからが本気みたいデスよッ!」

 

その巨体の中央に、シェム・ハがいる。ゲームで例えるならラスボスの第二形態と言うべきだろうか。

 

(言うなればシェム・ハ決戦態…、まさしく、デウス・エクス・マキナとなって…)

 

エルフナインの言う通り、まさしく神に相応しい姿だろう。

 

「我が欲したのは権威や力などではないッ! その先にあるミライだッ!」

 

すると、決戦態のシェム・ハの身体から紋章が浮かびあがり、光と共に無数の飛翔体を召喚したのだ。

 

「我等であっても独立した個を備える以上、擦過して激突するッ!」

 

【必殺読破!】

 

カリバーはエモーショナルドラゴンのページを畳み、邪剣カリバードライバーのボタンを手で押してページを開く。

 

【エモーショナル必殺撃!】

 

「おおおおああああッ!」

 

ありったけの感情を込めた声を出しながら、闇黒剣月闇から斬撃波とブレイブドラゴン、ルーンブライトドラゴン、ルーンディムドラゴンを模したエネルギーを放って無数の飛翔体を撃破する。

 

「だああああああッ!」

 

響は腕のガントレットをスライドさせ、きりもみ回転しながら突っ込み、次々撃破。

翼はその長い髪を文字通り、(つるぎ)としてエネルギーを込めて薙ぎ払う。

クリスは何処かで見た事ある様な形の自身の巨大なエネルギーを召喚して巨大な銃で風穴を開けて撃ち抜く。

 

「それでは完全なる存在とは言えぬ…神とはちゃんちゃらッ…故に我は、この地球(じっけんじょう)にて個の統合を試み、夢と見たッ!」

 

その言葉と共に巨大な羽根が円を作り、まるで鏡を思わせる形にすると巨大な光線を放った。

そこへキャロルが4色の魔法陣で受け止め、カリバーも滅壊の盾の力を使って加わって翼達を守る。

滅壊の盾には、本来破滅の書の力の一部を利用してあらゆる攻撃を無効化する力があるのだが、消耗しているカリバー自身も神の力まで防げるのかは把握出来ていない。その矢先、キャロルとカリバーのいる場所が爆発する。

 

「みんなッ! うあッ!」

 

6人に気を取られている響の背中にシェム・ハが不意打ちをくらわせた。

 

「誰もが痛みに傷つき、分かり合えぬ夜に涙しないミライの為にッ!」

 

「未来ッ!」

 

攻撃を受けながらも、響は振り向き未来を呼ぶ。その時、カラオケで別れた後の事を思い出す。

 

『……また後で。』

 

『うん……響も気をつけてね。』

 

あの時喧嘩したまま別れてしまい、そのまま未来は連れ去られてしまった。言葉にできず、ごめんねも言えないままこうして再会してしまった。だからこそ…

 

「今度はちゃんと言葉にしたいッ!」

 

「分かりあうことすらままならぬ不完全な言葉にか? その言葉で伝えられぬお前への想いを秘めていたからこそ、この依り代は刹那に我を受け入れたというのにッ!」

 

そういうシェム・ハの目からは、涙が流れている。まるで未来の言葉を代弁するかのように、ボロボロと流れている。

 

「未来がッ!? うあああああああッ!」

 

シェム・ハの攻撃を受けて吹き飛ばされる響に飛翔体が襲いかかるが、ルーンディムドラゴンとジャアクドラゴン、翼の千ノ落涙が次々に破壊し、翼が響を受け止める。

そこへ調が無数の丸鋸を生成、切歌が鎌のエネルギーを加え、マリアがダガーを投げて1つにし、巨大なロボットを生成。猛スピードで加速して自爆特攻。だが、これが狙いなのだ。

 

今だッ! オーバードライブッ!

 

「「「「「「オーバーブレイズ ッ!」」」」」」

 

キャロルの声と共に響達はオーバーブレイズ を発動。高出力を前回にして七色の光は1つとなって空へ飛び上がる。

 

【必殺読破!】

 

カリバーも闇黒剣月闇を納刀してエモーショナルドラゴンのページを閉じてボタンを押して開き、右拳にブレイブドラゴンの力を引き出して響達と共に飛び上がる。

 

「───ッ!?」

 

【エモーショナル必殺撃!】

 

シェム・ハが気付いた時には、カリバーと響達が決戦態の装甲に直撃していた。8人はそれぞれ拳をぶつける。

 

「くッ……」

 

このままでは破られると言わんばかりにシェム・ハは顔をしかめる。そして青い稲妻が走り出し、決戦態の装甲は次々に火を吹いて爆発していく。

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおおおッ!」」」」」」」

 

「これで話は、終わりだぁぁぁぁッ!」

 

「未来をぉぉぉぉぁッ!」

 

勝利まであと少し。打ち破れば未来を助けられる。ようやく思いを伝えられる。誰もがそう思っていた。だがここで、思いもよらない展開へ急転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呪われた拳で、私を殺すの?」

 

突然、シェム・ハの表情が悲しげな未来の表情へ変わった。明らかにシェム・ハが揺さぶりをかけてきたのだ。だが…

 

「───ッ!」

 

揺さぶりといえど、響の中で一瞬迷いが生まれた。このままでは未来が死んでしまう。自分が殺してしまうのだ。

 

「不味いッ! 離れろッ!」

 

その時、直前で闇黒剣月闇の未来予知で未来を見たカリバーが叫ぶも、一足遅い。

 

「フンッ!」

 

すぐさまシェム・ハはかかったなと表情を戻す。そして、爆発が起きて8人は吹き飛ばされて、岩に叩きつけられてしまう。

身体を起こした響が見上げると、渦を巻く宇宙を模した巨大な一撃を放とうとするシェム・ハが。

 

「無粋に足掻くッ! だが、せめて散り際は白銀に煌めくがいいッ!」

 

「こんな所で…ッ!」

 

カリバーは立ち上がり、滅壊の盾で防ごうと向かうが、シェム・ハはそれを許しはしない。

とどめを刺すべくシェム・ハは巨大な銀色の光線を放った。そして、大爆発が起き、爆炎が立ち込める。

だが、攻撃は当たっていない。何故なのか。

 

「あッ …ッ!」

 

響の先には、ボロボロになったキャロルと間に合ったカリバーが滅壊の盾でシェム・ハの攻撃から守っていたのだ。やがてキャロルの黄金のバリアで光線はあちこちに乱射され、墓跡や草が銀へ変わった。

 

「隼人さん…ッ!……ッ! キャロルちゃんの…黄金錬成…?」

 

そう。キャロルは錬金術を応用して黄金を錬成していたのだ。

 

「錬金術を応用して…、だが、乱発叶わぬこの力に拮抗するとなると…」

 

いくらキャロルの錬金術が強力でも、この力を放つ代償はシェム・ハもキャロルも承知していた。何故なら…

 

(そう、ボクたち2人の想い出を、全て焼却すればぁぁぁぁぁぁぁッ!)

 

エルフナインとキャロル。2人の想い出を全て焼却している。そんな事をすれば、言うまでもない。だが、エルフナインの叫びで黄金の光線がシェム・ハの光線を押し始めた。そして、どんどん押していく。キャロルが押し、カリバーは守る。だが、破滅の書の力を持つ滅壊の盾を使用しているとはいえ、自分が消耗している事を知っているカリバーもいつ倒れてもおかしくないのだ。

 

「まさか、諸共に…」

 

「キャロルちゃんッ! エルフナインちゃんッ!」

 

「立花響ッ! ……お前はどうするッ! 何を望むッ!?」

 

「私…」

 

「そうだ…ッ!」

 

「言葉にするんだろッ!? 想いを伝えるんだろッ! お前の望みを言えッ! そうしたら、全力で手伝ってやるッ! 」

 

キャロルとカリバーの言葉を聞き、響の導き出す答えは1つだ。

 

「私は……未来を奪いたいッ!人助けなんかじゃなく、私の我儘剥き出しだッ!」

 

遂に響は胸の中の欲望を解放した。未来をこの手で奪いたい。初めて人の為にでは無く、自分の為の望みを言ったのだ。

 

「だったら手を伸ばし続けろッ! いつかのオレにそうした様にッ!」

 

「お前のその手は何の為にあるんだよッ!? 繋ぐ為だろッ!」

 

「だけど、繋ぐこの手は呪われて、未来を殺す力が───」

 

自分のこの手には神を殺す力が宿り、呪われている。だから奪いたくても、奪えない。

 

「呪いと呪うそいつも呪い。その手にあるのは、見ず知らずの誰かの想いだッ!」

 

「呪いがなんだッ! そんな物、大切な人への想いで塗り替えてしまえばいいッ! 」

 

カリバーが滅壊の盾で光線を防ぎ、キャロルの放つ光線がシェム・ハの光線を押し、バリアを破壊してシェム・ハのヘッドギアに掠り、一部が黄金へと変わった。

 

「想い…?」

 

自身の両手を見る響。その時、力を使い果たしたキャロルのファウストローブが解除されてしまい、倒れてしまった。

 

「うわぁぁぁッ! キャロルちゃんッ!?」

 

「おいッ! 大丈夫かッ!?」

 

「忌々しいッ! だが、自分の全てを燃やし尽くした様だなッ!」

 

「……ここまでなの?」

 

キャロルが倒れた事で、もう勝つ術はないのかと立ち上がる翼達は諦めかける。だが、それすらシェム・ハは許しはしない。

 

「否、ここからだッ!」

 

シェム・ハは赤い魔法陣を展開する。その時、強烈な地震がカリバーと装者達を襲う。

 

「「「「「「「「うわあああああああああッ!」」」」」」」」

 

その地震はS.O.N.G.本部にも届き、指令室は大混乱だ。

 

「惑星規模の地殻変動を確認ッ!? いえ、これは…ッ!」

 

「ユグドラシル球殻からの推進噴射によって、地球の公転速度が加速していますッ!」

 

そう。シェム・ハがユグドラシルの力を使い地球の公転速度を加速させている。モニターの太陽系の地図にもどんどん加速していく地球が映し出されていた。

 

 

「さぁ還るのだ。5000年前のあるべき形へッ!」

 

欠けていく月を背に、シェム・ハは地球を5000年前のあるべき形へ変えるべく計画の最終段階へ突入した。

 

「ッ!? ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

そしてここで激しい頭痛と共に闇黒剣月闇の未来予知が発動。恐れていた事…ずっと啓示されていたシェム・ハの災いがついに現実となる時が来てしまった。その時、

 

装者達の身体から紫色のオーラが出始める。そして月が完全に隠れ、世界中の人間からも紫色のオーラが出ていた。中国、フランス、アメリカ。全世界からオーラがシェム・ハに集まっていく。

 

「太陽放射による接続障害を抑制、ここに生体端末のネットワークは構築される……全人類に偲ばせた全ての命と力を統合し、一にして全なるシェム・ハにして凌辱してくれる。」

 

「そうはさせるかッ!」

 

「────ッ!」

 

シェム・ハがカリバーの声を聞くと、そこには黄金の光を放つ響と、ブレイブドラゴン、ルーンブライトドラゴン、ルーンディムドラゴンを召喚したカリバーが立っていた。響は神殺しの力で、カリバーはオムニフォースの力と、エモーショナルドラゴンに備わる大邪を封印する火・光・闇の三つの属性による封印術の力を応用して接続を絶っていた。

 

「貴様…ッ! それに神殺しッ! その力にて接続より免れたかッ!?」

 

 

「立花響。もう一度聞くぞ。お前の望みは何だッ!?」

 

「私は、未来を取り戻すッ!」

 

響は未来を取り戻す為にシェム・ハに立ち向かい、カリバーはブレイブドラゴン、ルーンブライトドラゴン、ルーンディムドラゴンを召喚して響に力を貸すように向かわせる。

 

「立花響に力を貸せッ!」

 

「能わずッ!その拳は呪いの積層ッ! 神殺しッ!撃てば、この身を殺して殺すッ!」

 

「殺さないッ!」

 

響はブレイブドラゴン達とシェム・ハは空中で縦横無尽に動き回り、激しくぶつかり合う。

 

「───ッ!?」

 

「お父さんが教えてくれたッ! 呪いと祝福は裏表ッ! 在り方なんて、どうとでも変えられるッ! 変えてみせるッ!」

 

呪いを変える為に、響はブレイブドラゴンの力を借りながらシェム・ハと激しく撃ち合う。

 

「断章の全てをこの身に集めたのだッ! 人に後れる道理など、ありはしないッ!」

 

「だとしてもぉぉぉぉぉッ!」

 

「私の想いッ! 未来への気持ちッ! 2000年の呪いよりもちっぽけだと誰が決めたッ!?」

 

この想い。未来への気持ち。2000年の呪いなんか足元にも及ばない。

響は右腕のガントレットを大型化させてバーニアで加速。シェム・ハの光線の弾幕を躱しながら、次はルーンブライトドラゴンの力を借りて一撃を与える。

 

「───ッ!?」

 

その時、不思議な事が起こった。装者を初めとした接続された全世界の人間の接続が経たれたのだ。

 

「取り戻す……取り戻す……」

 

「未来を……私達の……明日を……」

 

「この星の、明日を……」

 

 

 

 

「ネットワークに障害がッ!? ──── なれどッ!」

 

ネットワークに障害が起きてもなお、シェム・ハは負けじと弾幕を響に張る。しかし、ブレイブドラゴン達が光線を弾き、響と共に向かっていく。

 

 

「きっと、取り戻すんだ…」

 

「それはとっても大切な…」

 

「本能が求め、叫んでる…」

 

「誰にも等しくある為にッ!」

 

「その手に束ねるんだ立花……、お父様が見せてくれた人の価値を、輝きをッ!」

 

「誰も人の未来を奪う事は出来ないッ! たとえそれが神であったとしてもッ! 立花響ッ! その手で、未来を掴み取れッ!」

 

それぞれの想いが、感情が溢れる中、響に想いを託すカリバーと翼達。空中では響がシェム・ハと打ち合いながらルーンディムドラゴンの力を借りてシェム・ハへ立ち向かう。

 

「バラルの呪詛が消えた今、隔たりなく繋がれるのはカミサマだけじゃないッ! 」

 

「束ねているのは、人の───想いッ!?」

 

バラルの呪詛が無い今、人は繋がれる。響が繋いでいるのは、人の想い。これが響の力。人の想いを、勇気を、愛を、誇りを、繋ぎ、力を1つにしているのだ。

 

「神殺しなんかじゃないッ! 繋ぐこの手は、私のアームドギアだぁぁぁぁぁッ!」

 

「ちぃッ!?」

 

そして拳を開き、その手を、シェム・ハへ伸ばす。それを見たシェム・ハは右手から黒いエネルギーの剣を出現、響を迎え撃つが、響はブレイブドラゴン達と共にシェム・ハへ突っ込んでいき、シェム・ハの剣とぶつかる。

 

「「「「「「未来をッ!」」」」」」

 

「ミクをおおおおおおおッ!」

 

「今だッ!」

 

【必殺読破!】

 

【エモーショナル必殺撃!】

 

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

カリバーは一心不乱にシェム・ハに突っ込む響にブレイブドラゴン達の力を加える。

 

「奪還する為にぃぃぃぃぃッ!」

 

カリバーと響達の叫びと共にシェム・ハの剣が粉々に砕かれ、距離を縮めていく。

呪いが愛で書き換わる。胸の中の感情が溢れ出す。その手で、未来を掴み取り、奪う為に。最速で。最短で。真っ直ぐに。一直線に向かって。

 

「まさかッ!!本当に呪いを上書いてッ!?」

 

人の想いを繋ぎ、未来への想いを、曝け出し、呪いを上書きし、シェム・ハを抱き締めた。そして勇気、愛、誇りの力で放たれたエモーショナル必殺撃の力も加わった響のMETANOIAが炸裂したのだ。

 

「あああああああああああッ!」

 

抱き締められたシェム・ハは断末魔を上げて未来の身体から抜けていき、腕輪は縦に真っ二つに割れて粉々に砕けた。そして、月が再び姿を表し、シェム・ハは断末魔と共に消滅したのだった。

 

「そして、花咲く勇気で、私の大好きを、二度と手放さない為に…」

 

気を失う未来を抱きかかえる響。2人を祝福するかの様に、ブレイブドラゴン、ルーンブライトドラゴン、そしてルーンディムドラゴンが響と未来に寄り添う様に飛び、咆哮をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響が未来を奪還していた頃、本部を離れた弦十郎達は離れた場所から仮設指令部を設営し、ユグドラシルの様子を伺っていた。

そして、設営されたテントには未来とエルフナインが眠っている。

そんな時、エルフナインの中の深い深い意識の中で、沈んでいくキャロルがいた。全てを燃やし尽くしてただ沈んでいくだけ。

 

(世界を壊すはずの歌で似合わない事をした挙句がこれだ……だが…)

 

その時、沈んでいくキャロルの手を誰かが掴んだ。エルフナインだった。

 

「どうしてッ!?」

 

「ッ!?」

 

「もしもの時は、2人の想い出を焼却して、明日を取り戻そうと誓ったはずなのにッ! どうしてッ!?」

 

2人で一緒に明日を取り戻そうとしたのに、どうして1人で突っ走ってしまったのか。

 

「あぁ、情けないな…お前の想い出から消えてしまうのが、堪らなく怖くなったんだ。」

 

「……そんな理由で、ボクの想い出を使わずに自分の全てを焼却させたのですかッ!? うわああああああああッ!」

 

奇跡の殺戮者のキャロルと言えど、エルフナインの想い出から消えてしまうのが怖かった。だからエルフナインの想い出を燃やさず、自分の全てを焼き尽くした。そんな事をしてしまえば消えてしまうのに。

泣きじゃくるエルフナインの頭をキャロルは優しく包み込んで撫でた。

 

「ボクは、ボク達は絶対に忘れないッ! 明日も明後日も、キャロルが護った世界で……いつまでも、いつまでも、君を忘れないッ!」

 

エルフナインの涙を拭き取るキャロルは優しい表情をしていた。

 

「さようならだ。もう1人のオレ。」

 

「うん。また逢う日まで。もう1人のボク。」

 

深い意識の中で抱き合う2人。消えゆくキャロルはエルフナインの耳元で何かを囁き、もう1人の自分のエルフナインに未来を託し消えていった。

そして、涙を流しながらエルフナインは目を覚ました。

 

「キャロル…」

 

その時、突然地響きが発生する。

 

「惑星環境の改造速度、元に戻って───」

 

「状況の報告をお願いしますッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、7人は風鳴邸の地下から出現したユグドラシルの上で状況を確認していた。

 

「目視にて状況を確認。」

 

「本部、シェム・ハは倒れても、ユグドラシルはまだ生きているッ!」

 

そう。シェム・ハは倒したものの、出現したユグドラシルはまだ健在。まだ全ては終わっていないのだ。

 

 

 

『何だとッ!?』

 

その時、世界各地の演算装置から稲妻が走り出し、故障、ショートしと爆発を起こしていた。

 

「世界各地の演算汚染進行中ッ!」

 

「論理防壁、突破されるまで7分と予想されますッ!」

 

時間が無い。一刻も早くユグドラシルを破壊しなければ惑星環境が改造されてしまう。

 

『くッ! 穿孔したユグドラシルをメインシャフトと仮定ッ! 中枢部を破壊して、惑星環境の改造を食い止めるのだッ!』

 

「一刻の猶予も許されない状況だ…」

 

「ユグドラシル…」

 

「行くぞ。なんとかなる。」

 

クリスは響の肩を叩いて、何とかなると言った。

 

「クリスちゃん…」

 

「中枢を叩いて砕くッ! それで各地のユグドラシルも機能停止となるはずだ。」

 

「行くわよッ!」

 

マリアの声と共にカリバーと響達はユグドラシル中心部へと突入。ここからが本番。本当の最後の戦いだ。

 

 

 

 

「頼んだぞ…」

 

ユグドラシル中心部に突入したカリバーと装者達の健闘を祈る弦十郎。

地球の未来は、剣士と装者達に委ねられたのだ。

 

「カリバー、装者、地球中心核行きに向かって降下中ッ!」

 

「距離、9800……10000オーバーッ!」

 

その時、カリバーと装者達の反応が表情されたレーダーに無数の赤丸が表示された。

 

「敵性反応ッ!?」

 

中心部に向かう7人に無数の小型の飛翔体が現れた。恐らくユグドラシルの防衛反応だろうか。

 

「時間が無いというのに…ッ!」

 

「しゃらくさいのが雁首揃えてッ!」

 

「だけど、今のコンディションでは…」

 

シェム・ハとの激しい戦いの後にこの大量の飛翔体は流石に厳しい。だが、時間が無いのだ。

 

「もたもたしてたら、この地球はッ!」

 

「知らない星に作り変えられちゃうのデスッ!」

 

一刻の猶予も許されない状況なのに。このままでは地球は改造され尽くされてしまう。その時、逆境を覆す切り札が現れる。

 

「ッ!? 来たぞ…ッ! 逆境を覆す切り札がッ!」

 

「えッ!?」

 

この時カリバーはある未来を見ていた。それは…

 

「Rei shen shou jing rei zizzl」

 

フロンティア内に響き渡る1つの聖詠。その時、紫の閃光が降り注ぎ無数の飛翔体を次々に消していく。

飛翔体を全滅させて舞い降りてきたのは、神獣鏡のファウストローブを纏う未来。カリバーは未来が来る未来を見ていたのだ。

 

「未来ッ!?」

 

「私、これ以上響の背中を見たくないッ!響の見ているモノを一緒に並んで見て行きたいのッ! だからッ!」

 

(これも、愛情か…)

 

これ以上響に背負わせたりしない。だから自分も、響の力になりたい。だから響の見ているものを隣で見たいから。戦う。

そんな未来の想いをカリバーはこれも愛情かと思うのだった。

 

『間に合いましたッ!』

 

そこへ、目を覚ましたエルフナインが通信で呼びかけてきた。

 

「無事なのッ! エルフナインッ!」

 

「はいッ! ボクも、未来さんも問題ありませんッ!」

 

『キャロルちゃんは?』

 

響がキャロルの安否を聞くが、真実はエルフナインだけが知っている。

 

「───ッ、キャロルから、皆さんに言伝があります…」

 

果たして、キャロルの言伝とは…?

 

 

 

 

 

 

「この先にある中枢部を壊しても、増殖したユグドラシルのいずれかが管制機能を獲得し、稼働は止められないみたいなの。」

 

壊しても壊しても別のユグドラシルが管制機能を獲得して、永遠に止まる事が無い無限ループとなるのだ。

 

「つまり、新たなメインシャフトが誕生し、そいつがどれか分からなくなるのか…」

 

 

「なので、ここがメインシャフトと仮定出来る今、中枢をフォニックゲインで制御し、全ての幹を同時に爆破伐採するしかありませんッ!」

 

新たなメインシャフトを作らせない為に、全ての幹を同時に爆破し、根絶やしにする。一刻の猶予もこの状況を打開する方法はそれしか無い。

 

「フォニックゲインで…だが、私達は一度、上條の力を借りてもチフォージュ・シャトーの起動にも失敗して…」

 

一度チフォージュ・シャトーの起動に失敗している以上、二の舞になるのではないかと不安になる翼。一体何がいけなかったのか、何が足りなかったのかも分からない。だがここで、そのいけない事、足りない物、そして、キャロルが未来を救おうとした理由が判明する。

 

「だがらキャロルは、未来さんを救おうとしていたのですッ!」

 

「7つの惑星と7つの音階、世界と調和する音の波動こそが統一言語。7人の歌が揃って踏み込める神の摂理…世界を識れという、パパからの命題に対するキャロルなりの回答です。」

 

「7つの調和…」

 

その時、翼の脳裏に浮かぶキャロルの言葉。

 

『オレ達7人が揃った今なら、神の摂理を覆せるッ! 』

 

「私達とキャロル、7人と上條の共闘がシェム・ハの埒外物理を突破したのはそういう事だったのか…」

 

これで全てのピースが揃った。7人の戦姫が初めて揃うからこそ神の摂理。だからシェム・ハに攻撃してダメージを与えられたのだ。

 

 

 

 

そして、カリバーと響達はユグドラシル最深部へと降り立った。もう迷わない。やるべき事は1つだ。

 

「だったら何も迷わないッ! 信じようッ! 胸の歌をッ!」

 

「私も、響と、みんなと一緒にッ!」

 

響と未来の言葉に、翼達は頷く。一緒にいれば、もう迷わない。この胸を歌を、全てを、この地球の未来の為に歌う。

そんな彼女達を後ろから見守るカリバーは、ここで響達の歌を世界に届ける事にした。

 

「隼人さん、お願いしますッ!」

 

「あぁ。聴かせてもらうぞ。逆光に舞う、虹色(なないろ)の翼を持つ戦姫達の、この地球(ほし)未来(あした)を紡ぐ歌を。」

 

【オムニフォース!】

 

【ブレーメンのロックバンド!】

 

【ジャアクリード!ジャアクスペシャル!】

 

【ジャアクリード!ジャアクブレーメン!】

 

カリバーはブレーメンのロックバンドで辺り一帯をフォニックゲインを増幅させる空間を作る。

 

「世界中に届けッ!」

 

そして、闇黒剣月闇を天へ掲げ、オムニフォースの力で上空に巨大な本が投影。それと同時に世界各地にも巨大な本を投影させた。そして…

 

「胸に手を当てて───」

 

目を閉じ、胸に手を当てて歌う響の優しい歌声から始まる。翼、クリス、マリア、調、切歌、未来へ続いていく。

すると、中央の結晶の柱が光り出した。

 

(バラルの呪詛…繋がりを隔てる呪いさえ無くなれば───この胸の想いは全部伝わると思ってた…)

 

フィーネやサンジェルマン達がバラルの呪詛。しかし、実際は人類を守ってきたものだった。結晶が光り出し、中央の球体に何やら文字が羅列される様に表示される。

 

(───だけど、それだけじゃ足りないんだ。)

 

そして、響達が歌い始めた時に上空の本が開き、響達の歌声が溢れ始め、世界中の人々は聞き入っている。

 

「7つの調和……まさか、統一言語を求めた了子さんは、そのつもりで、7つのシンフォギアを作っていたんじゃ…?」

 

「真実をつけられないまま言葉を奪われてしまった了子さんは、あらゆる方法で隔たりを乗り越えようとした…」

 

そして、カリバーの力もあって、装者達から光が溢れ、手を伸ばす。辺り一帯は黄金に光り出す。

その時、どういう訳かフィーネが現れ、現れたエンキと手を取る。ここでようやく愛する者と再会出来たのだ。想いの力が奇跡を起こしたというのだろうか。

 

マリア、調、切歌には、厳しくもいつだって愛情を持って接してくれた母親、ナスターシャが。後ろには背を向けてはいるが、愛を教えてくれたウェルの姿が。

 

「そうして生み出されたのがノイズ、歌、様々な異端技術……」

 

それも全て、隔たりを超える為に作られた物だった。

 

更に現れたのは、激しくぶつかり合いながらも、最後に地球へ導いてくれたヴァネッサ、エルザ、ミラアルク。互いの正義をぶつけながらも、最後に響に力を貸したサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ。神へ抗うために最後に共に戦ったキャロルと、彼女の最愛の父イザーク。翼の元には、いつだって夢を応援してくれた父、八紘、永遠の相棒、奏。マリアの元には最愛の妹のセレナ。

 

 

 

「ただ、繋がりたかったという彼女の想いは時を得て、人類全体を繋ぐ奇跡へと昇華した…それは、アヌンナキからの脱却…人類の独立だッ!」

 

そして、世界中に響達の歌が溢れて、人々や街に七色の光がシャワーの様に降り注ぐ。響達の歌声は人々を魅了し、涙を流す人も。

   

1人の女性の恋の気持ちは、やがて人類を繋ぐ想いに。神へ抗い、人類の独立の為に。

やがて光は虹色へなり、装者達は輝く。

その光景をカリバーはそれぞれが想いの人と再会する所をしっかりと見ていた。

 

(これが繋ぐ力…人類を繋ぐ奇跡…ッ!想いは、人と人とを繋ぐ…ッ!)

 

そして、黄金の光は天へと伸びていく。

 

(7人の歌で、)

 

(みんなの歌でッ!)

 

「この奇跡は、私達の軌跡だ。」

 

「繋いだ手だけが紡ぐもの───」

 

「強く、尊く、儚いもの────」

 

「ミライに響き渡らせる為にッ!」

 

「響けッ!この地球(ほし)未来(あした)を紡ぐ生命(いのち)絶唱(うた)よッ!」

 

カリバーは更にオムニフォースの力でブレーメンのロックバンドの力を増幅させる。そして…

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

7人の狂いなく重なり、響き渡る生命(いのち)絶唱(うた)

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

人と人とが繋がる為、未来への物語を紡いでいく為。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

やがてフォニックゲインにより、中央の結晶の柱が輝き始める。

 

「Emustolronzen fine el zizzl」

 

響達が歌い終わり結晶の柱は7色へ輝く。7色の光は天へ伸びる。そして…

 

「これが私達のおおおおおおおおおおおおッ!」

 

「「「「「「絶唱だああああああああああああッ!」」」」」」

 

響達の叫びと共に中央の球体膨大なエネルギーが送り込まれ、限界値に到達。やがて地下を揺るがす大爆発が起きる。カリバーと響達は爆発の中飛び上がり、脱出する。

 

「地球中心核域より、高エネルギー反応ッ!ユグドラシルの自壊を確認ッ!」

 

地球を覆い尽くしていたユグドラシルは響達の絶唱を受けて次々に自壊していく。

 

「世界各地でも、呼応していますッ!」

 

世界各地でも出現したユグドラシルが次々に沈んでいる。

 

「ですがッ!」

 

脱出する響達だが、響のギアの脛部分が破損してしまう。響を皮切りに翼達もギアが破損していく。このままでは脱出する前に間に合わない。

カリバーも既に力を使い過ぎて限界だ。

 

「このままじゃギアがッ!」

 

「もちそうもないデスッ!」

 

迫り来る溶岩。その時、雄叫びを上げて巨大な女性が現れた。

 

「まさかあれはッ!?」

 

そのまさかだ。

 

「シェム・ハなのかよッ!」

 

そう。倒したはずのシェム・ハだ。その両腕を伸ばすと同時に響達のギアは解除され、カリバーを除いて生まれたままの姿になる。その時、8人が捕らえられて沈められ、天へ巨大なエネルギーが伸びていく。

その様子は仮設指令部からも見える。

 

「皆さんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えよ。何故1つに融け合う事を拒むのか?」

 

暗闇の中、響と未来はシェム・ハと対峙していた。

 

「私達は、簡単に分かり合えないからこそ、誰かを大切に想い、好きになる事が出来るッ!その気持ちは、誰にも塗り潰されたくないッ!」

 

人は簡単に分かり合えない。でも、だからこそ誰かを想い、好きになれる。その気持ちは誰にも塗り潰す資格はない。

 

「それが原因で、未来にまた、傷つき苦しむ事になってもか?」

 

「──ッ!」

 

シェム・ハの言葉に未来は言葉を詰まらせてしまう。だが、響は違う。未来の手を取り、口を開く。

 

「だとしても。私達は傷つきながらも自分の足で歩いていける。神様も知らない光で、歴史を作っていけるから。」

 

その言葉に何かを思ったのか、シェム・ハは笑みを浮かべ、浮遊して光りを放つ。

 

「ならば責務を果たせよ。お前たちが、これからの未来を司るのだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外では溢れ出すエネルギーの中からシェム・ハの両手が飛び出した。

 

「あれはッ!?」

 

その光景は、弦十郎達が車を走らせる中エルフナインが見つけた。そして置かれたシェム・ハの手は砂となって崩れ去り、気を失う響達が。

 

「う、うぅ…」

 

やがて溢れる赤黒いエネルギーは跡形もなく消滅して、空は夜明け前の群青色の空へ戻った。目を覚まして立ち上がった響に弦十郎達が車から降りて駆け寄る。

 

「大丈夫か、響君ッ!」

 

「師匠……シェム・ハさんが、繋ぐ大きな手が、私達を…」

 

「あぁ。みんなが繋いだ、明日の世界だ。」

 

戦いは終わった。皆が繋いだ明日が始まる。神様も知らない明日が、歴史が、物語が始まろうとしている。すると…

 

「あ、そうだッ! 隼人さ───あれ…? 隼人さん…?」

 

何かを思い出した響が後ろを振り返ると、一緒にいたカリバーの姿が消えている事に気づいた。

 

「上條がいない…いつの間に…」

 

「あいつ、またふらっとすぐにどっか行ったな。ホント自由な奴だよ。」

 

一体、響達の知らない間に何処へ行ったのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

その頃、カリバーはフラフラになりながら、満身創痍の身体でとあるビルの屋上まで歩いて来ていた。実はあの時、カリバーがどうなるのか知っているシェム・ハによって響達と引き離され、街へ1人移されていたのだ。その場に座り込むと、ある事に気づく。

 

「そういえば…俺、ビルの屋上から飛び降りたんだっけ…」

 

今自分が来ているのはビルの屋上。前世でもビルの屋上から飛び降りて自ら命を絶った場所へ無意識に来ていた。もしかしたら自分はここで死ぬのかもしれない。 

 

「結局…何も残せなかったな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼人さーーーんッ!」

 

「………?」

 

誰かが自分を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「隼人さーーーんッ!」

 

その声は段々大きくなっていく。後ろを振り返ると、遠くからブレイブドラゴンに乗った響と未来、ルーンブライトドラゴンに乗ったマリア、調、切歌、そしてルーンディムドラゴンに乗った翼とクリスがやって来た。

響達は屋上に着地したブレイブドラゴン達から降りて隼人の元へ歩いていくと、ブレイブドラゴン達は何かを察して飛び去って行った。 

 

「ここにいたんですね。もう。隼人さんってば、すぐいなくなるんですから。」

 

「何でここが…?」

 

「ブレイブドラゴン達がやって来て私達を案内してくれたんです。」

 

「……?」

 

実は、カリバーはブレイブドラゴン達を召喚していない。つまり響達を連れて来たのはブレイブドラゴン達が自らの意思で自分の元へ響達を乗せて連れて来たという事だ。

 

「私達、これからまた師匠達の所へ戻るんですが私、隼人さんと一緒にご飯が食べたいとずっと思ってたんですッ! 他にもあの姿について聞きたい事があるんです。師匠達も隼人さんと話がしたいって言ってたので、一緒に行き───」

 

「か、上條ッ! お前…ッ!」

 

「どうしたんですか翼さ…? ッ!?」

 

立ち上がり、変身を解除した隼人を見て驚愕の声を出した翼を見て何事かと思い、響達が見ると、隼人の左手が少しずつ消滅し始めているのだ。それを見て隼人は全てを悟った。

 

「とうとう来てしまったか…お別れの時が…」

 

「お別れって……どういう事よッ!?」

 

「この世界に、仮面ライダーカリバーはもう必要ないって事だ。」

 

消滅が始まっている隼人の言葉に響達が導き出す事は1つ。隼人が死ぬという事だ。

 

「上條…あの時自分の未来はとっくの昔に無くなっていると言っていたが、まさかお前は、もう自分が死ぬ未来を見ていたという事なのかッ!?」

 

翼はあの時、隼人の言葉で嫌な予感がしていたが杞憂であって欲しいとずっと思っていた。が、それが本当になってしまうとは信じたく無かった。翼の言葉に隼人は静かに頷く。

 

「バカ野郎…ッ! 何で黙ってたんだよ…ッ!」 

 

「せっかく仲良くなれたのにッ!」

 

「さよならなんて嫌デスよッ!」

 

「どうしてよ…どうしてあなたが死ぬのッ!? 闇黒剣月闇の力で苦しみながらも戦い続けてきたあなたがどうして死ななければならないのッ!?」

 

「何で私達に相談してくれなかったんですか…ッ!響にも1人で抱え込む必要無いって言われたのに…何で1人でいつも抱え込むんですかッ!?」

 

隼人は心の闇や闇黒剣月闇の未来予知で苦しみながらも、仮面で涙を、傷を鎧で隠しながら戦い続けて来た。そして響と手を繋いだ事でようやく未来へ進む事が出来た。しかし、そんな彼が今、自分達の前で消滅して死に至ろうとしている。

何故彼がこんな理不尽な目に遭わなければならないのか。彼にも未来を生きる資格はあるというのに。どうして彼が死ななければならないのかと響達は心を痛め、涙を流していた。

 

「俺はかつて人を殺めている…そのツケが今になって回って来たんだ…お前達にも、余計な心配はかけたくなかった…これは俺のわがままだな…」

 

「だからとてッ! 何故お前は自分が損をする決断ばかりするッ!?」

 

「私…隼人さんにまだまだ聞きたい事、話したい事、一緒にやりたい事たくさんあるのに…!お別れなんて…そんなの嫌です…ッ!」

 

「約束、守れなくてごめんな…俺は、この世界の人間じゃない…お前達の世界に元々存在意義が無い虚無の存在なんだ…だから、何にもなれなかった俺は最初から消える運命だったのかもしれない…」

 

消滅が進んでいく隼人は、響達に自分がこの世界の人間では無い事、このシンフォギアの世界に最初から存在する必要がない虚無の存在である事を打ち明けた。ずっとこれだけは話す事を拒んでいたが、今、消えていくこの時こそ話そうと決意した。

すると、隼人の言葉に未来が口を開く。

 

「何言ってるんですか。」

 

「…?」

 

「隼人さんは、虚無なんかじゃありません。存在意義とか別世界の人間だとか関係ありません。隼人さんは響や私は勿論、翼さん達や、沢山の人々を救って来たんです。感謝しても仕切れません。だから、隼人さんは…私達の英雄です…ッ!」

 

「隼人さんほど存在意義がある人なんて見た事無いよッ!」

 

「そうデスよッ! 存在意義ありまくりデスッ!」

 

存在意義は無いと思ってた。真実を知った時から、虚無の存在で偽りの主人公だと思ってた。しかし、幾多の戦いを共にしてきた響達や未来にとって、上條隼人、そして仮面ライダーカリバーは存在意義の無い虚無ではなく、紛れも無い英雄だった。

 

「俺は英雄なんかじゃない…どこにでもいるただの人間だ…」

 

「ったく…こういう時くらい喜べよ……」

 

「本当…素直じゃないんだから…」

 

未来と調と切歌の言葉に謙遜する隼人に翼とクリスとマリアは涙を流しながらも、もっと素直になればいいのにと心の中で思うのだった。

 

「それに感謝しているのは俺の方だ。過去に囚われ、出口の無い暗闇を彷徨っていた俺にお前が手を伸ばして引っ張り上げてくれた。そのお陰で俺は前を向けた。お前に教わったよ…未来は変えられる、人は変われる事を…」

 

ずっと過去に囚われ、闇黒剣月闇の未来予知に苦しめられ、誰かと繋がる事を恐れて暗闇を彷徨っていた自分の手を取ってくれた。だから未来へ進むと決意出来た。

 

「だから、お前に出会えて…本当に良かった……ッ!」

 

身体も消滅が始まっていく中、胸の内の想いを打ち明けた。最初は瑠奈に似ていた少女から、やがて大切な人へと変わり愛情を持っていた。出会えて本当に良かったと言える程だった。隼人の胸の内を聞き、響も涙を流しながら答える。

 

「私も…隼人さんと出会えて本当に良かったです…ッ!」

 

すると、隼人のジャケットのポケットが光り始めた。取り出して見ると、身に覚えのないワンダーライドブックが生成されていた。やがてジャアクドラゴンと同じ紫色になるが、黒い部分は茶色だ。そして表紙が浮かび上がる。

 

【闇黒剣月闇!】

 

そのワンダーライドブックには、表紙に闇黒剣月闇を持つカリバーが描かれている。それは、ワンダーワールド物語 ストーリオブ闇黒剣月闇。仮面ライダーカリバーの歴史が記されたライドブックだ。

 

「ワンダーライドブック…?」

 

「これは…お前が持っててくれ。」

 

隼人は響に歩み寄り、響の右手に自分の左手に乗せ、ストーリーオブ闇黒剣月闇を持たせて右手で握らせた。隼人の手は、涙を流す響の右手を優しくかつしっかり包み込んでいた。

 

「俺がこの世界で生きた証だ…お前だからこそ、安心して託せる。」

 

「これからも人と人とが繋がり、分かり合える為にこの手をずっと伸ばし続けて、信念を…思いを貫き通して欲しい。たとえその信念が、何千回何万回踏み躙られようと貫き通して欲しい。約束してくれるか…?」

 

どれだけ信念を否定され、踏み躙られようと、分かり合う為に手を伸ばし続ける響に、隼人はこれからも信念を、思いを貫き通して欲しいと約束して欲しいと願う。もちろん響の答えは1つだ。左手を隼人の右手に重ねる。

 

「もちろんですよ。「だとしても」と共に、貫き通します…ッ!」

 

隼人の予想通りの答えだ。「だとしても」の言葉と共に貫き通す事を隼人と約束した。

そして、朝日が昇り始め、隼人の身体は徐々に白い光の粒子となり、包み込んでいた両手も響の手からすり抜ける。同時に隼人の影はカリバーの形になっていた。

 

「……ッ!」

 

「これで話は終わりだ…これからの世界の未来を…頼んだぞ…ッ!」

 

その言葉を最後に隼人の身体は、朝日が昇ると同時に闇黒剣月闇やワンダーライドブックと共に完全に消滅した。

 

こうして、人に騙され、そして裏切られ、自ら生きる事を諦め、転生した本来存在意義も役割も無いこの世界で響達と出会い、闇黒剣月闇の力に振り回されながらも、手を差し伸べてくれた響のお陰で過去の自分に見切りをつけ、未来に向かって歩き出し、運命に抗いながら最後まで戦った誇り高き宵闇の剣士 仮面ライダーカリバー 上條隼人は、夜明けと共にシンフォギアの世界から消えていったのである。

 

隼人に託されたストーリーオブ闇黒剣月闇を握りしめる響は、昇る朝日を未来と翼達と共に大粒の涙を流しながら見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら……隼人さん……」

 




いかがだったでしょうか? シェム・ハと最終決戦。気がつけば2万字近く書いてました。エモーショナルドラゴンの力を調べながら何とか書いてみました。
ダメージが無効化されずに通じるならシェム・ハの攻撃も滅壊の盾で防げるんじゃないかと思いました。公式サイトに破滅の書の一部の力であらゆる攻撃を無効化すると記述してあったので。
後エレメンタルドラゴンの必殺リードの音声はオリジナルにしています。

未来を救う所とユグドラシル破壊の所はカリバーを入れたら絶対にダメだと思って、手助けするという形にしました。終盤のシーンで少しウルってしまったのは内緒です。




そして遂に、隼人がシンフォギアの世界から消滅。その最期は「愛情を持っていた響達の前で想いの果てに、夜明けと共に消えていく」というものでした。
実は、第4章の予告通りなら、隼人が人知れず消えていくというものでした。しかし、バラルの呪詛が解除されて響が想いを束ねた事で未来が変わったのです。
隼人が愛情に気付いた事で迎えたアニメパートにおける隼人なりのハッピーエンドは何と言われようとこの結末以外はあり得ないと考えて書きました。夜明けの部分も改変してます。
ちなみに隼人が響の手を取る部分はエレメンタルプリミティブドラゴンの回の2人と対になっているんです。
そして登場したワンダーライドブックは、ワンダーワールド物語 ストーリーオブ闇黒剣月闇。仮面ライダーカリバーの歴史が全て記されたライドブック。ここで隼人は自分がシンフォギアの世界で生きた証として響に託しました。
お気づきの方はいると思いますが、未来を含めた7人に合わせてカリバーのフォーム数が7つになっています。

・ジャアクドラゴン
・ジャオウドラゴン
・プリミティブドラゴン
・エレメンタルプリミティブドラゴン
・オムニフォース
・ハッピージャアクドラゴン
・エモーショナルドラゴン

これはオムニフォースを出した時から狙ってました。
そして、今回でプロローグから数えて108話となります。
サブタイトルの元ネタはセイバー第46章の「さようなら、私の英雄。」です。
アニメパートも終わり、次回、遂に上條隼人の物語の最終回です。

その5 「2人というよりは、1人で2人の方が正しいかもしれません。

完結まであと2話。今回はここまでです。感想お待ちしています。





「俺の物語は、これで終わりなんです。」

「これは、俺なりのハッピーエンドなんです。」

次回「これで話は、終わりだ。」

「神様、ありがとうございました。」

「お疲れ様。上條隼人。」



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