【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

109 / 111
第93話 これで話は、終わりだ。

人にはそれぞれ人生という名の物語がある。誰もが物語の主人公として生まれて生きて死んでいく。

出会いと別れを繰り返し、楽しい事も、悲しい事も、辛い事も、全てが合わさって物語となる。やがて死ぬ時、人生が終わりその人の物語は完結する。

物語の結末を決めるのは自分自身。今、ここで1人の青年の物語が終わりを迎えようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

辺り一面真っ白の空間で目を閉じて立っているのは、上條隼人。彼は転生者だ。前世で誰も信じられなくなって自殺した彼は、仮面ライダーカリバーとなって「戦姫絶唱シンフォギア」の世界で戦った。そして戦いの中、心の闇と闇黒剣月闇の未来予知で絶望のどん底に陥った時、シンフォギアの主人公である立花響と手を繋ぎ、未来へ進む事を決意した。最後の戦いの中で命の危機が迫る中、最後まで戦い、想いの果てに消えていった。

 

「ここは…」

 

目を開けた隼人はここにいる場所が何処なのかは分かっている。一度自殺した時、ここであの人に会っているのだ。

 

「あっ……無い……」

 

気がつけば手元に闇黒剣月闇も無ければ腰に邪剣カリバードライバーも巻かれていない。まさかと思いポケットを弄ってみると、持っていたワンダーライドブックもガトライクフォンも無くなっていた。

 

「まぁ、無くなってて当然か…」

 

自分はもう死んだ。だから聖剣もライドブックも手元にもう無いのも納得出来る。

自分の経験から考えればここにあの人が現れるはずだ。そう思いながら辺りを見回していると…

 

「上條隼人。」

 

背後から聞いた事のある声が聞こえて来た。予想通りだ。こうして会うのは4年ぶりか。

 

「久しぶ……え?」

 

隼人が振り返ると、やってきた人物を見て思わず間の抜けた言葉が出てしまう。そこには、顔に絆創膏やガーゼを貼り付け、明らかに怪我をしている白いおっさん……ではなく神様が立っていた。

 

「ど、どうしたんですかその怪我ッ!?」

 

「あ、あぁ…いろいろあってな…」

 

「いろいろッ!?」

 

(いろいろって何…? 気になるけど、聞いたらいけない気がするから聞くのはやめよう…)

 

何故神様が怪我をしているのか。一体何があったのか。いろいろとは何なのか気になるがそれは聞かない方がいいと隼人は判断した。

何故なら神様も口が裂けても言えない事があったからだ。

 

「お久しぶりです。」

 

「こうして会うのは、お前が転生前以来だな。」

 

「俺もまた神様と会うとは…思いませんでした。」

 

お互い軽く挨拶を交わし、神様は本題に入ると言った。

 

「どうだったかな? 戦姫絶唱シンフォギアの世界は。」

 

「本当にいろんな事がありましたよ。立花響達と出会い、戦いからは逃れられず、破滅の未来に絶望したりしましたね。でも、そのお陰で過去に囚われた自分に見切りをつけて未来へ進む事を決意する事が出来ました。まさか自分が1つの物語の世界でそもそも最初から存在意義が無いって言われた時は流石に酷く落ち込んだ事もありましたが、最後まで命を燃やせたと思ってます。」

 

隼人の脳裏に様々な出来事が浮かび上がる。仮面ライダーカリバーに初めて変身した事。ライブ生存者への迫害を止めた事。響達と出会い、共に戦った事。並行世界へ行った事。破滅の未来で絶望のどん底に叩き落とされて陰鬱していた事。死ぬ前に瑠奈に会った事。そして、愛情を持っていた響達の前で想いの果てに消えた事。

穏やかな表情で語る隼人を見る神様は、彼もあの世界で成長したんだなと実感した。

 

「でも、まさか2度目の死を迎えたのは予想外でした。今思えば自分が選んだ力で死ぬなんて凄い皮肉だなと感じましたよ。」

 

「……」

 

頭を掻きながら話す隼人を見て、神様は隼人が自分の死因は富加宮のついた嘘を信じているのかと思いながら何やら思い詰めた表情を浮かべた。真実を知らないまま死んだのはあまりにもかわいそうではないかという気持ちが心の中に芽生えていた。

 

「どうしました?」

 

「……いや、何でも無い。それより見せたい物がある。」

 

やっぱり言えなかった。あんな恐ろしい理由、言える訳が無い。このまま知らない方がいいのかもしれない。知らぬが仏とはこの事か。神様は気を取り直して咳払いをすると、取り出したタブレットを操作して空中に地球を投影する。

 

「これは?」

 

「お前が転生した本来の戦姫絶唱シンフォギアの世界だ。更に…」

 

神様はタブレットを操作すると、そのシンフォギアの世界から光のラインが伸び、いくつもの地球が現れた。

 

「本来の世界…いわゆる原作の世界から更に物語が生まれる。いわば、二次創作だ。」

 

「二次創作…まさか…」

 

よくネット小説のサイト等で見る原作から生まれる二次創作。神様の言葉を聞いて隼人は何かに気づく。そのまさかだ。

 

「そう。お前が転生したシンフォギアの世界も、二次創作の物語だ。確かに本来の原作の世界ならお前はそもそも存在意義が無い虚無なのかもしれない。しかし、この二次創作の世界でお前は戦い続け、多くの人を救った。だからお前にも存在意義はある。」

 

未来や調と切歌に言われた事と同じ様に、自分にも存在意義はあった。何故だろう。心が温まる。自分が誰かに必要とされているなんて考えた事なんて無かった。でも、今だからこそ自分は響を始めとした人達に必要とされていたと思える。

投影されている地球を見て、隼人が心の中で自分にも存在意義があったと実感していると、中央の原作世界からまた地球が現れ、ラインで繋がる。

 

「…ッ!」

 

「お、また新たな物語が生まれたな。私達がこうやって話している間にも、新たな物語が始まっている。シンフォギアの世界だけじゃない。沢山の原作の物語から新たな二次創作の物語が生まれている。」

 

「凄いな…」

 

恐らく自分以外にも転生者はたくさんいる。そしてまた物語が次々に生まれている。人生と同じだ。誰もが物語の主人公なのだ。

 

「……さて、話はこれくらいにして本題に入ろう。」

 

「本題?」

 

「あぁ。お前を生き返らせようと思っている。あの世界なら存在意義は確かにある。お前はまだ若い。やり残した事やまだ立花響達とやりたい事があるだろう。だったらあの世界で生きろ。立花響達と再会出来て、お前にとっても悪くない話だ。」

 

神様が隼人に持ちかけたのは、死んだ隼人をシンフォギアの世界に生き返らせるという話。あの世界で隼人は人と繋がる事を、ようやく未来へ進む決意をする事が出来た。神様はそんな隼人が2度目の死を迎えるのは流石にかわいそうだと思い、せめてあの世界でもう一度人生を歩んで欲しいという気持ちがあった。それは神様の善意から生まれた提案だった。

人はもし死んだ後に生き返らせてやると言われたらどうするのか。それは誰もが一度は考えたはず。

多くの人はまだまだやりたい事や、やり残した事があるから生き返らせて欲しいと言うのかもしれない。もしかしたらこのまま静かに眠らせて欲しいと言う人もいるかもしれない。そして、隼人の出した答えは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、もう良いですよ。」

 

「……?」

 

何と、隼人は神様の提案を断った。悪くない話なのに何故断ったのか、神様は疑問の表情を浮かべた。

 

「ありがとうございます神様。俺、神様に凄く感謝しています。自殺した俺に転生させてくれて、特典までくれて、おかげで19歳から22歳まで生きる事が出来ました。生き返らせてやるって言われて最初は嬉しかったです。でも、そうなると俺が何故転生させられた理由の意味が無くなってしまうと思いました。」

 

「本来あの世界で何故俺が転生させられたのか。神様は俺に2度目の人生を歩んで欲しいと言っていましたが、違うんですよね?

本当は俺に大切な事を学ばせる為にあの世界に転生させたと思ってます。」

 

隼人は、何故自分が転生させられたのかその答えをシェム・ハとの戦いの中ようやく導き出す事が出来た。

 

「まずは、命の大切さ。俺はかつてたった一度しか無い命を投げ出してしまいました。そしてあの世界に転生してから戦いはあったものの、何不自由なく生きてきました。そんな時に富加宮さんから命の危機が迫っていると聞いて、最初は自分が行ったツケが回ってきたと思いました。でも、死が近づくにつれて、死ぬのが怖くなりました。もっと生きたいと思いました。その時、命がどれだけ大切なものなのかを知りました。」

 

たった1度しか無い命を投げ出した事のある隼人。戦いの中、運命を宣告され、死が迫る中、死ぬ事への恐怖を覚えた。その時もう助からないけどもっと生きたいという気持ちが心の中に芽生えていた。2度目の死を迎えたからこそ、命が大切だという事を知った。

 

「次は、勇気。人に騙されて、裏切られた俺は人との繋がろうとせず、過去に囚われていました。でも、立花響のおかげで、俺はもう一度人を信じてみよう、未来へ進もうと決意する事が出来ました。」

 

心の闇と破滅の未来で暗闇を彷徨っていた隼人。暴走した時、響が手を伸ばしてくれた。その時、翼達の言葉も手伝って響に自ら手を伸ばしていた。あれは間違いなく勇気。それ以外にあり得ない。ようやく自分を変える事が出来た。

 

「3つ目が。死が迫る中、俺は大切な存在だった瑠奈と再会しました。その時、何で俺が立花響達を気にかけるかと問われました。その答えは、愛でした。あいつらと過ごしていく中、自分にとって大切な存在になっていて、いつの間にか愛情を持っていた事に気づけました。」

 

死が迫る時、大切な存在だった瑠奈と再会した。その時何故響達を気にかけるかと問われ、瑠奈からそれは愛だと知った。過ごしていく中で隼人にとって響達は大切な存在へとなり、いつの間にか愛情を持っていた事に気付けた。

 

「最後が、誇りです。お別れの時に、小日向未来が俺の事を「英雄」って呼んでくれました。俺は英雄なんかじゃないって言ったんですけど、正直言うと少し嬉しかったです。立花響と手を繋げた事。あいつらの未来を守れた事、多くの人の命を救えた事。逃げずに最後まで戦うという自分の意思を貫けた事。今では大変誇りに思ってます。」

 

自分は響達と出会い手を繋げた。何度も破滅の未来を見ながらも響達の未来を守れ、多くの人達を救えた。未来には''私達の英雄''と賛辞の言葉をもらった。自分は英雄だなんて思っていないが、正直に言うと少し嬉しかった。そもそも存在意義が無い虚無だった自分があの世界で必要とされていた。最後まで逃げずに戦えた事、自分の意思を貫けた事を誇りに思える。

 

「俺が転生させられた理由は、2度目の人生を歩む為じゃなくて、無くしていた大切な事を知る為だったんです。そして、それらを知って死ぬまでが俺の人生…物語です。俺が生き返ったら命の大切さを知った意味が無くなってしまいます。本来死んだ人は生き返ってはいけない。それはどの世界でも不変のルールです。死んだからこそ、俺の物語に意味があるんです。」

 

「……」

 

「授かった命は尊く、儚く、美しいもの……だから生き返ってはいけないんです。そして自分の物語の結末の決めるのは自分です。なので、俺の物語は、これで終わりなんです。ハッピーエンド……とは言えないかもしれませんが、これは、俺なりのハッピーエンドなんです。」

 

隼人の出した答えは、生き返るのではなく、死を受け入れる事だった。自分が転生させられた理由は、命の大切さと勇気、愛、誇りを知る為のだった。つまり、死んだからこそ、自分の物語に意味があるのだ。生き返ってしまったら命の大切さを知った意味が無くなってしまう。だからこそ、2度目の死を受け入れて完結させる。ハッピーエンドとは言えないかもしれないが、この決断は隼人なりのハッピーエンドなのだ。あの時シェム・ハに「ハッピーエンドに変えてやるよッ!」と言ったのも、自身の運命が分かっていたからこそだった。

 

「それが、お前の答えか?」

 

「はい。」

 

「お前はやはり、普通の転生者とは違うな。」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ、これまで沢山の転生者を見てきたが、お前の様な奴は初めてだ。」

 

神様は穏やかな表情で隼人を見る。その後隼人はシンフォギアの世界でどう過ごして来たのか、神様は富加宮と何をしていたのか等とたわいもない会話をして盛り上がったのだった。

 

「じゃあ神様って本当は天国にいるんですか?」

 

「そうだ。私の他にも沢山の神や私の神友が天国の秩序を保っているんだ。お前が死ぬまでは現世と天国の間の場所で魂になっていた富加宮と一緒にいたがな。」

 

「神様は普段何やってるんですか?」

 

「天国を見守ってたり、転生者の様子を見ていたりする。後は知り合いの富加宮と酒を飲んでたりしてたな。」

 

などと、神様の意外な一面を知ったりと天国について話していたりしていると、遂にその時が来た。斜め上から、隼人に温かい光が照らされる。

 

「旅立ちの時が来たな。」

 

神様の言葉と共に上から光と共に階段が造られていく。

 

「やっぱり旅立ちの時って階段登るんですか?」

 

「いいや? よく見てみろ。」

 

神様は階段をよく見る様に隼人に言うと、徐々に階段が形成されると同時に段差部分がある物へと変わる。そう。階段ではなくエスカレーターだ。

 

「エスカレーターだッ!」

 

「最近階段だと不便だからエスカレーターに作り直したんだ。」

 

「なるほど…」

 

意外な事を知りながらも隼人はいよいよこれで自分の物語も終わりなんだなとどこか物寂しげな気持ちになる。ゆっくりと一歩一歩エスカレーターへ向かい、乗る前に立ち止まると神様の方へ身体を向ける。

 

「神様、ありがとうございました。」

 

隼人は神様の前で転生させてくれた事、特典を与えてくれた事、大切な事を教えさせてくれた事に礼の言葉を言いながら深々とお辞儀をした。

 

「いってきます。」

 

「……いってらっしゃい。」

 

神様も穏やかな笑みを浮かべ、旅立つ隼人を送り出す事に。そして隼人は一歩、二歩と歩んで乗る。すると、天国へのエスカレーターが動き出し、天国へ向かっていく。そして上から注がれる光で隼人の姿は消えていき、遂に旅立っていった。

 

こうして、22歳の生涯を終えた宵闇の剣士 仮面ライダーカリバー 上條隼人の物語は完結したのである。

 

「お疲れ様。上條隼人。」

 

天国へ旅立って行った隼人へ労いの言葉を送る神様。そこへ…

 

「あいつも、悔いなく旅立って行ったな。私もようやく安心して行くことが出来る。今まで世話になった。ありがとう。」

 

神様と同じ顔に絆創膏やガーゼを貼り付けた富加宮がやって来たのだ。魂となっていた彼も旅立ちの時が来た。

神様と富加宮は握手を交わす。

 

「元気でな。」

 

「向こうで待ってるぞ。また一緒に美味い酒を飲もう。」

 

2人は天国でまた一緒に酒を交わす事を約束する。そして富加宮も天国へのエスカレーターへ乗り、旅立って行ったのだった。

 

「これでまた1つの物語が完結した。しかし、物語の終わりは新たな物語の始まり。人はいつも、物語を生み出す。世界には沢山の物語が溢れている。そして今もまた、新たな物語が生まれている。……おや? どうやらまた新たな転生者となる魂がやって来た様だ。さて、次は一体どんな物語が始まるのか。楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

人はいつも物語を生み出す。物語は人から人へ語り継がれていく。そこからまた新たな物語が生まれ、未来へ続いていく。それは決して失われる事は無い。この世界を生きる誰もが皆、物語の主人公なのだから。

 




いかがだったでしょうか? 遂に上條隼人の物語が完結しました。
この物語は、隼人が命の大切さ、勇気、愛、誇りを知る物語だったんです。そして隼人は白いおっさんが生き返らせてやろうと言いましたが、それを断りました。生き返っては命の大切さの意味が無くなってしまうからです。だから、死を受け入れて、自身の物語を完結させました。
これがずっと書きたかった隼人なりのハッピーエンドです。
納得出来ても出来なくても、隼人に「お疲れ様」と言ってやって下さい。
ちなみに度々白いおっさんと富加宮さんがいたあのリビングは天国と現世の間の場所で、富加宮さんは白いおっさんの提案で天国に行くまでの間隼人の様子を見ていたんです。
サブタイトルも「これで(上條隼人の)話は、終わりだ。」という意味です。
そして次回、長かったこの小説も遂に最終回を迎えます。スペシャルゲストも登場!
なお、隼人はほんの少ししか登場しませんが、その代わりに白いおっさんと富加宮さんは天国での出来事で登場します。
次回完結!今回はここまでです。感想お待ちしています。





……あれ? 何か忘れているような……何故白いおっさんと富加宮さんは怪我をしていたのか気になりますね……それに隼人の本当の死因って確か……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。