【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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今回はちょっと主人公の出番は少なめかもしれません。マリア達を第3章以降登場させる為にどうするか考えています。


第26話 終焉を望む者、臨む者。

武装組織フィーネが起こした革命の中3人の装者との戦いの中、響は調に言われた罵倒で2年前の過去を思い出して翼とクリスの前で泣く。一方、隼人はマリア達への怒りを静かに滾らせながら断罪を決意するのだった。

 

 

 

 

「奴等の革命から1週間が経ったが、何も行動は無いな。」

 

隼人は、1週間が経ってもマリア達に動きがない事に疑問を抱いた。彼女らの目的は一体何なのか。断罪する前にそれを聞き出さなければならない。そして行方が分からなくなったウェル…。奴が仮にマリア達の内通者だとしたらソロモンの杖を持ち出しながら身を隠し、あの場所でノイズを召喚出来る。

 

「奴は一体何処にいる…?」

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってリディアン。かつてフィーネの召喚したノイズの襲撃で壊滅した校舎から新校舎に移転していた。授業中の響は、マリアが纏った黒いガングニールの事を頬杖をつきながら考えていた。

 

(ガングニールのシンフォギアが2つあるんだ…だったら、戦う理由がそれぞれあっても不思議な事じゃない…。 )

 

そして再び脳裏をよぎるあの出来事。

 

『私は、困っている人を助けたいだけで…! だから…!』

 

『それこそが偽善…!』

 

その様子を隣で心配そうに見る未来。

 

(私が戦う理由…自分の胸に嘘なんて付いて無いのに…)

 

「響!響ったら!」

 

未来が小声で響を呼ぶ。担任が近づいてきたのだ。

 

「立花さん。 何か悩み事でもあるのかしら?」

 

担任が響に話しかける。

 

「はい。とっても大事な…」

 

「立花さんにだって、きっといろいろ思う所もあるんでしょう。例えば私の授業より大事な。」

 

ハッとする響。

 

「あっ…あれ!?」

 

「新校舎に移転して、3日後に学祭をも控えて誰も皆新しい環境で新しい生活を送っているというのにあなたときたら相も変わらずいつもいつもいつもいつもいつもいつも!」

 

担任の言葉に響は立ち上がる。

 

「でも先生! こんな私ですが、変わらないでいて欲しいと言ってくれる心強い友達も案外いてくれるものでして…!」

 

「立花さん!」

 

「…バカ。」

 

担任の怒鳴り声が教室に響く。未来は呆れた様子で小声で呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でね!信じられないのは、それをご飯にジャバ〜っとかけちゃった訳デスよ! 絶対におかしいじゃないデスか! そしたらデスよ!?」

 

その頃、とある場所で調と切歌はシャワーを浴びていた。切歌の話に何も反応せずに調は思い詰めた表情をしていた。

 

「まだ…アイツらの事を…デスか…?」

 

『話せば分かり合えるよ! 戦う必要なんか…!』

 

『いずれ貴様は後悔する。立花響を偽善者と罵った事をな。』

 

響とカリバーの言葉が脳裏をよぎる。そして2人への憎悪が湧き上がる。

 

「何にも背負ってないアイツが、私達より強い力を持つアイツが、人類を救った英雄だなんて認めない。」

 

「うん。本当にやらなきゃならない事があるなら、例え悪いと分かっていても背負わなきゃいけない物だったり…」

 

調の言葉を聞きながら切歌はシャワーを止め、調は壁を殴りつける。

 

「困っている人達を助けるというなら、どうして…!」

 

響の言葉に対してよけいに怒りが込み上げてくる。そんな調の拳を切歌は両手で包み込む。そこへ、マリアがやって来てシャワーを浴びる。

 

「それでも私達は、私達の正義とよろしくやっていくしか無い。迷って振り返ったりする時間なんてもう…残されていないのだから。」

 

「マリア…」

 

その時、突如警報が鳴り響く。施設内の鉄製のドアが次々に閉められ、厳重に封鎖させる。それを行ったのは、ナスターシャだった。モニターには謎の獣の様な何かが映し出された。

 

(あれこそ、伝承にも描かれし共食いすら厭わぬ飢餓衝動…。やはりネフィリムとは、人の身に過ぎた…)

 

そこへ、足音と共に誰かがやって来る。

 

「人の身に過ぎた先史文明記の遺産…とかなんとか思わないで下さいよ?」

 

現れたのは、ウェルだった。

 

「ドクターウェル…」

 

「例え人の身に過ぎていても、英雄たる者の身の丈に合っていればそれでいいじゃないですか?」

 

「まさかカリバーの力がネフィリムの起動させるとは。」

 

「えぇ。カリバーが放ったあの歌声の様な音…マリアやオーディエンスを遥かに凌駕するあの音がフォニックゲインの代わりになり、ネフィリムを目覚めさせたのですから。」

 

実は、ナスターシャ達はネフィリムを目覚まされる為にマリアと翼のライブにてネフィリムを起動させようとしたものの失敗に終わり、結果、分身したカリバーがノイズを倒す為にブレーメンのロックバンドの力で放った歌声の様な音がネフィリムの起動を成功させたのだ。

 

そこへマリア達が走って来る。

 

「マム! さっきの警報は!?」

 

「次の花は未だ蕾ゆえ、大切に扱いたい物です。」

 

「心配してくれたのね。でも大丈夫。ネフィリムが少し暴れただけ。隔壁を下ろして食事を与えているから気も治るはず。」

 

すると、突然衝撃と共に部屋が揺れる。

 

「マム!」

 

「対応措置は済んでいるので大丈夫です。」

 

「それよりも、そろそろ視察の時間では?」

 

フロンティアは計画遂行のもう一つの要…起動に先立ってその視察を怠る訳にはいきませんが…。」

 

ナスターシャがウェルを心配そうに見る。

 

「こちらの心配は無用。留守番がてらにネフィリムの食料調達の算段でもおきますよ。」

 

ウェルは笑みを浮かべて言う。

 

「では、調と切歌を護衛に付きましょう。」

 

「こちらに荒事の予定はないから平気です。むしろそちらに戦力を集中させるべきでは?」

 

「分かりました。予定時刻には帰還します。後はお願いします。」

 

ウェルの提案を採用したナスターシャはマリア達を引き連れて部屋を後にした。

 

(さて…巻いた餌に獲物はかかってくれるでしょうか…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リディアンでは学園祭に向けて準備が行われていた。すでに出店などの準備が行われており、翼とクリスは学園祭の飾り付けを教室で作っていた。

 

「まだこの生活に馴染めていないのか?」

 

「まるで馴染んでる奴なんかに言われたく無いね。」

 

クリスは素っ気なく返す。

 

そこへ翼のクラスメート3人もやってきて一緒に飾り付けの作成を手伝う事になった。学園祭まであと少しだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、今夜中に終わらせるぞ!」

 

通信の相手は弦十郎。その夜、響達はとある廃墟にいた。

 

「明日も学校があるのに、夜半の出動を敷いてしまいすみません,」

 

緒川も通信で答える。

 

「気にする事は有りません。これが私達、防人の務めです。」

 

「街のすぐ外れにあの子達が潜んでいたなんて…」

 

そう。ここは武装組織フィーネ達のアジトなのだ。

 

「ここは、ずっと昔に閉鎖された病院なのですが、2ヶ月前から少しずつ物資が搬入されているみたいなんです。ただ、現段階ではこれ以上の情報が得られず、痛し痒しではあるみたいなんですが…」

 

「尻尾が出てないからこちらから引き摺り出すまでだ!」

 

そう言うとクリスが走り出す。クリスに続いて翼と響も走り出す。

 

 

「さて、俺も行くとするか。」

 

その様子をシャボン玉で見ていた隼人も、闇黒剣月闇を手にして部屋を後にした。

 

 

 

 

「おもてなしといきましょう。」

 

響達が突入していく様子を見ていたウェルはキーボードのエンターキーを押す。すると、アジト内に赤い霧が立ち込める。そして廊下の奥からノイズ達が響達を出迎えた。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「Killter Ichaival tron」

 

夜の廃病院に3人の聖詠が響き渡る。そして3人はギアを纏う。先陣を切ってクリスがBILLON MAIDENでノイズ達を蜂の巣にする。しかしすぐさま光弾が放たれそこからノイズが生まれる。

 

「やっぱりこのノイズ…」

 

「あぁ。間違いなく制御されている!」

 

3人はノイズが何者かが操っている事に気づく。そして3人はノイズ達を攻撃していく。しかし、体に穴を開けられていたにもかかわらずノイズは炭素にならない。翼が刀を大型化し蒼ノ一閃を放つ。斬撃波を受けたノイズは一度は崩れるも、再び再生する。

 

「!?」

 

「何でこんなに手間取るんだよ…!?」

 

「ギアの出力が落ちている!」

 

その頃司令室では3人の適合係数が低下している様子がモニターで映し出されていた。このままでは戦闘不能となる。どうすればいいのか息を荒げてる3人の背後から突然紫色の斬撃波が通り過ぎ、ノイズ達が斬り裂かれる。攻撃を受けたノイズは再生しようとするも、崩れ去り消滅した。

 

3人が後ろを振り返ると足音と共に何者かがやってきた。そう。カリバーだ。

 

「カリバーさん!」

 

「カリバー! 何故ここに!?」

 

「お前達の動きを少しばかり見ていたからな。」

 

その時、廊下の奥からネフィリムが4人に襲いかかってきた。翼は咄嗟に刀で切り裂くが、手応えは感じられない。

 

「アームドギアで迎撃したんだぞ?!」

 

「なのに何故炭素と砕けない!?」

 

「どうやら奴はノイズでは無さそうだな。」

 

「じゃああれは何なの…?」

 

すると、廊下の奥から拍手と共に何者かが歩いて来る。ウェルだ。すると、ネフィリムがウェルの持っていたケージへ戻っていく。

 

「意外に聡いじゃ無いですか。シンフォギア装者、それにカリバー。」

 

「やはりお前がノイズを操っていたか。」

 

「やはりって…博士は岩国基地が襲われた時に…。」

 

カリバーの言葉に響はウェルが岩国基地で行方不明になった事を思い出す。 

 

「カリバーの言う通り、ノイズの襲撃は全部…!」

 

「明かしてしまえば単純な仕掛けです。あの時すでにアタッシュケースにソロモンの杖は無く、コートの内側にて隠し持っていたんですよ。」

 

「ソロモンの杖を奪う為に自分で制御し、自分に襲わせる芝居を打ったのか!」

 

「バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し、制御する事を可能にする事などこの杖をおいて他にありません。」

 

ウェルはソロモンの杖でノイズを召喚する。

 

「そしてこの所有者は、今や自分こそが相応しい! そう思いませんか?」

 

「思うかよ!」

 

クリスが叫ぶと共にウェルがノイズ達を前進させる。クリスはミサイルユニットを展開してミサイルを発射する。

 

「ぐあああああ!!」

 

クリスの絶叫と共にミサイルはノイズ達へ直撃。爆発でアジトの一部が吹っ飛ぶ。

 

「適合係数の低下に伴うギアからのバックファイアが装者を蝕んでいます!」

 

二課の司令部では3人の危険な状態である事をモニターのCAUTIONの文字が表していた。

 

その頃、爆発の中から4人は脱出し、外に出ていた。クリスは疲労し、翼に肩を貸してもらっていた。

 

「クソ…何でこっちがズタボロなんだよ…!」

 

(この状況で出力が大きい技を使えば、最悪の場合…バックファイアで身に纏ったシンフォギアに殺されかねない…!!)

 

その時空に巨大なノイズがネフィリムが入ったゲージを運んでいるのが目に見えた。

 

「ノイズがさっきのケージを持ってる!」

 

当然その様子を二課も見ていた。

 

「このまま直進すると、洋上に出ます!」

 

(さて、身軽になった所で…もう少しデータを取りたい所だけど…)

 

ウェルはカリバーを一瞬見た後に響を見る。身構える響に両手を上げるウェル。

 

「立花!その男の確保を!雪音を頼む!」

 

そういうと翼は刀を抜刀して走り出す。

 

(天羽々斬の機動性なら…!)

 

翼はノイズとの距離を縮めていく。ここままでは海だ。しかし弦十郎は翼に飛べと伝える。さらに緒川から海に向かって飛べと言われる。そして翼は飛び、脚部ブレードで滑空する。

 

 

「仮設本部!急速浮上!」

 

弦十郎の声の元、海面から巨大な潜水艦が浮上する。そう。フィーネとの戦いで壊滅した二課は本部を潜水艦という移動基地にしていたのだ。潜水艦の艦首からジャンプし、ノイズを斬り裂く翼。落下するケージを回収しようとする翼。その時、突然攻撃を受け海に落下する。海面には一本の槍が立てられていた。

 

そして槍の持ち手に降り立ち、ケージを持つ人物。

 

「やはり来たか…!」

 

カリバーの声と夜明けと共にその人物の顔が明らかとなる。そう。マリアだ。

 

「時間通りですよ。フィーネ。」

 

「フィーネだと!?」

 

ウェルの言葉にクリスが反応する。

 

「終わりを意味する名は、我々組織の象徴であり彼女の二つ名でもある。新たに目覚めし、再誕したフィーネです!」

 

ウェルは高らかに響とクリス、そしてカリバーに言う。

 

「無駄な事を…。」

 

(まさか…ありえない…!)

 

そうだ。ありえない。何故なら響は知っているからだ。

フィーネの魂は既にカリバーによって闇に葬られているのだから…。

 




いかがだったでしょうか?マリア達はフィーネの魂が闇に葬られている事には気づいていませんが、響はカリバーに伝えられているのでそれを知っていると言う感じで書きました。
今回はここまでです。感想お待ちしています。

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