【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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第2章もあと少しとなりました。このまま完結まで頑張ります!


第35話 蘇りし、救済の方舟。

響は、神獣鏡のシンフォギアを纏った未来を救う為に本気でぶつかる。

そんな中、遂に、人類救済の方舟フロンティアが復活するのだった。しかし、クリスが翼を背後から銃撃し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、緒川は手錠を掛けて拘束した調と共にいた。

 

 

「すみませんが、これは預からせて頂きますね。」

 

緒川は調からペンダントを没収した。

 

「お願い…みんなを止めて…」

 

調は声を振るわせて緒川に言う。

 

「助けて…」

 

 

 

 

その頃、司令室ではモニターに復活したフロンティアの映像が映し出されていた。

 

「映像回します! 」

 

「これが、F.I.S.が求めていた…フロンティア…?」

 

モニターにはフロンティアの全体像が映し出されていた。それは、一つの巨大な大陸の様な物だった。

 

「海面に出ている部分は、全体を見てほんの一部です。フロンティアと呼ばれる程はありますね。」

 

藤尭は答える。

 

すると、アラームが鳴り、モニターに艦隊の映像が映し出された。

 

「新たな米国所属の艦隊が接近しています。」

 

「…第2陣か。」

 

フロンティアに接近する艦隊を睨む弦十郎。そこへ弦十郎の元に斯波田から通信が入る。相変わらず蕎麦をすすってだが。

 

「まさか、アメリカさんは、落下する月を避ける為にフロンティアに移住する腹じゃあるめぇなぁ?」

 

斯波田はまた蕎麦をすする。

 

「我々も急行します。」

 

弦十郎は答えた。

 

 

 

 

 

 

「あれが奴等が言っていたフロンティア…!まるで大陸だ…」

 

その頃、隼人は一度自宅に戻って二課が映したフロンティアの全体像をシャボン玉を通して見ていた。本当は突入しようとしたのだが、解決策がまだ見つからず、下手に動いて取り返しの付かない結果になるのを避けるためだった。そして一瞬だけだがクリスが翼を背後から撃った事を見た。

 

「まさか…雪音クリスの狙いは…」

 

隼人は何かに気づいた。

 

 

その頃、未来は二課の治療室にいた。 ふと未来の脳裏にカリバーの叫びが思い浮かぶ。

 

 

 

 

『お前は立花響の親友として、陽だまりとして、何気ない日常を過ごし、共に未来へと歩いていく!!それがお前の本当の愛じゃないのかッ!?』

 

 

 

 

 

 

そこへ顔に絆創膏を貼った響と頭に包帯を巻いた翼、友里がやってくる。

 

「未来!」

 

響は入ってくるなり未来に抱きついた。

 

「小日向の容態は?」

 

「 LiNKERの洗浄も完了。ギア強制装着の後遺症も見られないわ。」

 

「良かった! 本当に良かった!」

 

友里の言葉を聞いて喜ぶ響。翼も笑みを浮かべた。

 

「響…その怪我…」

 

未来は響の頬に貼られた絆創膏に気づく。そして響に攻撃した事が思い浮かぶ。

 

「うん。」

 

「私の…私のせいだよね…。」

 

未来は目に涙を浮かべて啜り泣く。

 

「うん! 未来のお陰だよ!」

 

響の言葉に未来は驚く。どうして笑っているのか。

 

「ありがとう!未来! 」

 

「響…」

 

「私が未来を助けたんじゃない。未来が私を助けてくれたんだよ!」

 

「え…?」

 

 

そして響の身体のレントゲンが映し出された。そこには、胸にあったガングニールのカケラが綺麗さっぱり無くなっていた。

 

「これ…響…?」

 

「あのギアが放つ輝きには、聖遺物由来の力を分解し、無力化する効果があったの。2人のギアのみならず、響ちゃんの身体を蝕んでいたガングニールのカケラの除去されたのよ。」

 

「ふぇ……?」

 

「小日向の強い思いが、死に向かって疾走するばかりの立花を救ってくれたのだ」

 

「私が本当に困ったとき、やっぱり未来は助けてくれた!ありがとう!」

 

響は未来の手を取り感謝の言葉を伝えた。

 

「私が…響を…」

 

未来は表情を明るくし、響は頷く。

 

「でも…それって…」

 

すぐに表情を暗くする未来。そこへ…

 

 

 

 

 

 

 

「喜んでいる場合か?」

 

突然男性の声が聞こえた。声のする方向を振り返ると、自動ドアから茶色いドアが生成され、中からカリバーが出てきた。あの後響と未来の様子が気になって来たのだ。

 

「カリバーさん!」

 

「カリバー? 何をしに来た?」

 

「胸のガングニールのカケラが無くなったと言う事は、立花響はもうギアを纏えないと言う事だ。」

 

「あっ…」

 

カリバーの言葉にハッとする響。そうだ。天羽奏から受け継いだガングニールが無くなった今、自分はもう戦えない。

 

「命の危機が無くなったかと思えば今度は戦えなくなるとはな。一難去ってまた一難とはまさにこの事か。それよりも連中は遂に方舟を蘇らせた。」

 

「方舟…?」

 

響はカリバーの言葉に首を傾げる。

 

「フロンティアの事ね。 F.I.S.は遂にフロンティアを浮上させたわ。本当の戦いはこれからよ。」

 

「F.I.S.の企みなど、私1人で払って見せる。心配など無用だ。」

 

「1人? そう言えば、クリスは?」

 

未来の問いに表情を曇らせる3人。

 

「奴等に寝返った。」

 

「え…?」

 

カリバーが未来に真実を教えた。愕然とする未来。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、マリア達と寝返ったクリスは浮上したフロンティア近くに来ていた。

 

「こんなのが海中に眠ってたとはな…」

 

「あなたが望んだ新天地ですよ。」

 

クリスの脳裏に翼を背後から撃った事を思い出す。

 

『仲間を裏切ってアタシ達に付くというのデスか?』

 

『こいつが証明書代わりだ。』

 

『しかしデスね…』

 

『力を叩き潰せるのは、さらに大きな力だけ。あたしの望みは、これ以上戦火を広げない事。無駄に散る命は1つでも少なくしたい。』

 

クリスの言葉に頷く切歌。

 

 

  

 

 

 

 

一行はフロンティア内部を懐中電灯で照らしながら進んでいた。

 

「本当に私達と戦う事が、戦火の拡大を防げると信じてるの?」

 

マリアはクリスの行動が戦火の無くす事が出来るのか疑っていた。

 

「信用されてねぇんだな。気に入らなければ、鉄火場の最前線で戦うあたしを後ろから撃てばいい。」

 

「勿論、そのつもりですよ。」

 

クリスの言葉にウェルが答えた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、中心部に到達した。目の前には巨大な装置が。

 

「付きました。ここがジェネレータールームです。」

 

「何デスかあれは…?」

 

ウェルが歩き始め、ケースからネフィリムの心臓を取り出し、巨大な球体に取り付けた。すると、球体は輝き始めジェネレータールームを美しく照らした。

 

「ネフィリムの心臓が…」

 

「心臓だけとなっても、聖遺物を喰らい、取り込む性質はそのままなんて、卑しいですねぇ。フフフ…」

 

ウェルは不敵に笑った。外では草木が岩や遺跡から生えてきている。

 

「エネルギーが、フロンティアに行き渡った様ですね。」

 

「さて、僕はブリッジに向かうとしましょうか。ナスターシャ先生も、制御室にてフロンティアの面倒をお願いしますよ。」

 

ウェルはジェネレータールームを後にした。輝きを放つ球体を見る切歌にカリバーと調の言葉が浮かぶ。

 

『貴様は大勢の人間を切り捨てる気か?』

 

『ドクターのやり方じゃ、弱い人達を救えない!』

 

「そうじゃ無いデス…フロンティアの力でないと、誰も助けられないデス! 調だって助けられないんデス!」

 

ジェネレータールームに切歌の叫びが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、二課の司令室のモニターには拘束され、俯いた調の姿が映し出された。

 

「助けてほしい。そう言ったのか?」

 

「はい。目的を見失って暴走する仲間たちを、止めて欲しいと」

 

「うむ……」

 

弦十郎は緒川から調のペンダントを受け取る。そこへ、響と未来、翼と友里がやって来るが、カリバーの姿は無かった。

 

「まだ安静にしてなきゃいけないじゃないか!」

 

「ごめんなさい。でも、いてもたっても居られなくて……」

 

「クリスちゃんが寝返ったと聞いたら、どうしてもって……」

 

弦十郎は2人の主張にとりあえず納得した。

 

「確かに、響君とクリス君が抜けたことは、作戦遂行に大きな影を落としているのだが……」

 

「でも、翼さんに大事が無かったのが本当に良かった。致命傷を全てかわすなんて、流石です。」

 

(かわした?あの状況で雪音の射撃をかわせるものか。だとしたら、あれは……)

 

 

「雪音クリスが寝返ったのはソロモンの杖が狙いだ。」

 

一同が声のする方向を振り向くと、目の前は居なくなった筈のカリバーがいた。

 

「カリバー…」

 

「カリバーさん! それって…」

 

「それはどういう事だ?」

 

翼がカリバーに聞く。

 

「奴はフィーネに利用されソロモンの杖を起動させてしまった事を悔やんでいた。だから1人で奪いに行き、お前達を裏切った。罪滅ぼしのつもりなんだろう。」

 

カリバーはかつて裏切られた事もあってか人が何故裏切ったのかが分かる様になっていたのだ。

 

「なるほど…」

 

カリバーの言葉に弦十郎は腕を組む。

 

「フロンティアの接近はもう間も無くです!」

 

その時、藤尭が声を上げる。モニターにはフロンティアが映し出された。

 

 

 

 

 

一方、フロンティアではマリアとウェルがエレベーターの様な物で中心にある紋様の刻まれた球体を紫色の結晶が囲む元に歩みを進めた。ウェルが薬液の入ったピストル型注射器を取り出す。

 

「それは?」

 

「LiNKERですよ。」

 

ウェルは左腕の袖をまくった。

 

「聖遺物を取り込む、ネフィリムの細胞サンプルから生成したLiNKERです。」

 

ウェルは迷いもなく左腕に打ち込んだ。その時突然ウェルの手が変化し、異形と人間が混ざった手となる。その手で球体に触れると、聖遺物であるフロンティアを取り込んだのだ。そして結晶の様な物に文字の羅列が走っていく。

 

「フへへへへ… 早く動かしたいなあ……ちょっとくらい動かしてもいいと思いませんかぁ?ねぇ、マリア?」

 

不敵に笑うウェルを見るマリア。すると、結晶から米国の艦隊の映像が映し出される。

 

「ウヘヘ…」

 

ウェルがフロンティアを起動した頃、ナスターシャは制御室にてエネルギーの管理をしていた。

 

 

(フロンティアが、先史文明期に飛来したカストディアンの遺産ならば、それは異端技術の集積体……月の落下に対抗する手段もきっと……)

 

すると、水晶のようなモニターに一つ情報が表示された。

 

「っ。これは……!」

 

 それと同時にブリッジからウェルの通信が入り、米国の艦隊の映像が映し出される。

 

「どうやら、のっぴきならない状況の様ですよ?一つにつながることで、フロンティアのエネルギー状況が伝わってくる……これだけあれば、十分にいきり立つぅ……」

 

 恍惚とした表情を浮かべるウェル。

 

「早すぎますッ!ドクターッ!」

 

それまで落ち着いていたナスターシャは焦る。

 

「さぁ! 行けーーーーっ!!」

 

ウェルの声と共にフロンティアへエネルギーが充填される。3本の光の柱が天へ伸びる。その光は交わり1つとなり、巨大な手となり地球から月へ伸びた。そしてその手で月を掴んだ。

 

 

 

「どっこいしょーーーーー!!!」

 

そして、フロンティアが地響きを起こして浮上し始めた。

 

 

「加速するドクターの欲望!手遅れになる前に、私の信じた異端技術で阻止して見せるッ!」

 

暴走するウェルを止める為、ナスターシャは動く。

 

フロンティアが浮上した事で海流が攪拌され、潜航していた二課の潜水艦を揺らす。

 

「一体何が!?」

 

「フロンティアが浮上したか。さて、私は野暮用を済ませてから行くとするか。」

 

カリバーは背を向けて炎の渦を出した。

 

「カリバーさん! 待ってくだ…!」

 

響が呼び止めようとしたが、カリバーは姿を消した。

 

「広範囲にわたって海底が隆起!我々の直下からも迫ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遂に人類救済の方舟フロンティアがその全貌を明らかにした。

 

「作戦本部より入電です!制圧せよと……」

 

「あんなのとは聞いてないぞ……」

 

米国の艦隊の兵士も司令官も困惑を隠せない。艦隊は艦砲射撃を行うが、これといって効果は無い。その様子をウェルがニヤニヤしながら見ていた。 

 

 

「楽しすぎて眼鏡がずり落ちてしまいそうだぁ……」

 

ネフィリムの腕を介して、ウェルがテンションを上げながらフロンティアに指示を出す。

島の底にある巨大な突起状の機器が光を放ち、海上の艦艇を持ち上げ、空中で圧をかけ、次々と爆破していく。その光景を楽しそうに眺めるウェル。

 

「ふぅん……。制御できる重力はこれくらいが限度の様ですねぇ……フフハハハハハ!」

 

(果たしてこれが、人類を救済する力なのか……?)

 

子供の様に高笑いをするウェルの横で、マリアはフロンティアの力が本当に人類救済の力なのか疑い始めた。

 

「遂に手に入れたぞ……!蹂躙する力を……!伝説は塗り替えるもの!英雄はただ1人でいいッ!! この僕だァァァァァァァァァ!!! ヌハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

ウェルのテンションは最高潮になり、天を仰いで狂ったかの様に嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上ではフロンティアの力と全滅した米国艦隊をテレビ局のヘリに乗るキャスターが日本中に中継で伝えていた。

 

 

「御覧ください!大規模な地殻変動と発表された海域にて、軍事衝突です!米国所属の艦艇が一瞬で……!う、うわぁぁぁぁッ?!」

 

 ヘリが全方位から圧をかけられ、爆発。断末魔と共に中継は途絶えた。それをビルの街頭テレビから板場達が見ていた。

 

「テラジ、こういう事件て……」

 

「まさか立花さん達も……」

 

「関係してたりして……」

 

 

その頃、二課の潜水艦は陸上に上がっていた。

 

「下からいいのを貰ったみたいだ!」

 

「計測結果が出ました!」

 

友里がキーボードを操作すると、映像にはフロンティアから光が天へと伸びる映像が映し出された。

 

「直下からの近く上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込むことで……」

 

「フロンティアを引き上げた……?!」

 

緒川が驚きの声を上げる。

 

「はい……!それだけでなく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと張り切りすぎて、月を引き寄せちゃいました。」

 

ウェルは悪びれる事なくマリアに言う。

 

「月を…!?落下を速めたのか!」

 

 

「救済の準備は何も出来ていない!このままでは本当に、人類は絶滅してしまう!」

 

マリアは操作しようとするが、球体が光を失ってしまう。

 

「どうしてッ?!どうして私の操作を受け付けないのッ?!」

 

「いししし…LiNKERが作用している限り、制御権は僕にあるのです。人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね。これが僕の提唱する、一番確実な人類の救済方法です。」

 

ウェルは両手を広げ、自ら正しいと豪語する。

 

「そんな事の為に私は、私は悪を背負ってきたわけではないッ!」

 

マリアはウェルに詰め寄ろうとするが、ウェルの裏拳で殴られて倒れてしまう。

 

「ここで僕を手にかけても、地球の余命が後僅かなのは変わらない事実だろう!? ダメな女だなぁ! フィーネを気取ってた頃でも思い出してぇ、そこで恥ずかしさで悶えてな!」

 

ウェルはマリアを嘲笑う。マリアの目から涙が溢れる。

 

「セレナ…セレナ…私は…!」

 

「そうやっていつまでも泣いてなさい。帰ったらぁ、わずかに残った地球人類をどう増やしていくか。一緒に考えましょう?」

 

泣くマリアを尻目にウェルは球体の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…」

 

浮上したフロンティアにカリバーが立っていた。目の前にはノイズの大群が立ち塞がっていた。二課の司令室では、翼がライダースーツに着替えて弦十郎達の前に立っていた。

 

「翼、行けるか?」

 

弦十郎の言葉に無論ですと答える翼。司令室を後にする前に響に呼び止められる。

 

「大丈夫だ。ステージに1人で立つ事に慣れている身だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「imyuteus amenohabakiri tron」

 

潜水艦の先端から出た道から発進、精鋭を唱え、翼はギアを纏う。バイクから巨大な刃を展開、前方に装備される。翼はスピードを上げ、ノイズを騎刃一閃でノイズを蹴散らしていく。すると…

 

 

 

【ライドガトライカー!】

 

翼の後ろからノイズをガトリング砲で撃ちながらライドガトライカーに乗ったカリバーが走ってきたのだ。

 

「カリバー! 何故!?」

 

「お前達と目的が同じだけだ。」

 

カリバーはスピードを上げる。

 

 

 

「流石翼さん!…え? カリバー!?」

 

画面にライドガトライカーに乗ったカリバーが映る。

 

「カリバーが現れたのは心強いですが、こちらの装者は現状ただ一人。この先、どう立ち回れば…」

 

緒川がこの先をどうするかと言うと響が口を開く。

 

 

「いえ、シンフォギア装者はまだいます。」

 

「ギアのない響君を戦わせるつもりはないからな。」

 

響は弦十郎を正面から見つめる。

 

「戦うのは、私じゃありません」

 

「響……」

 

独房にいた調は緒川によって指令室に連れ出された。

 

 

「捕虜に出撃要請って……どこまで本気なの?」

 

「もちろん全部!」 

 

「あなたのそういうところ、好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者のあなたが……」

 

「私、自分のやってることが正しいだなんて、思ってないよ……」

 

「以前、大きな怪我をした時、家族が喜んでくれると思ってリハビリを頑張ったんだけどね。私が家に帰ってから、お母さんもおばあちゃんもずっと暗い顔ばかりしてた……それでも私は、自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる。」

 

「手を繋ぐ…そんな事本気で…」

 

「だから調ちゃんにも、やりたい事をやり遂げて欲しい。もしもそれが私達と同じ目的なら、少しだけ力を貸して欲しいんだ。」

 

調の手を取って両手で包み込む響。

 

「私の…やりたい事…」

 

「やりたいことは、暴走する仲間たちを止めること、でしたよね?」

 

黙り込む調に緒川が話す。恥ずかしくなった調は響の手をほどいて後ろを向いた。

 

「みんなを助けるためなら、手伝ってもいい……」

 

 響と未来は嬉しそうな顔をする。

 

「だけど信じるの?敵だったのよ?」

 

何故敵だった自分を信じるのか。調は響に困惑していた。

 

「敵とか味方とかいう前に、子供のやりたいことをさせてやれない大人なんて、カッコ悪くてかなわないんだよ」

 

「師匠!」

 

そして弦十郎はペンダントを取り出し、調に渡す。

 

「こいつは可能性だ。甘いのは分かってる。性分だ。」

 

「ハッチまで案内してあげる!急ごう!」

 

 

調の手を掴み、響は走っていった。そして調はギアを纏いハッチから丸鋸をタイヤ代わりにして走る。その後ろには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響!」

 

何と、響が調と一緒にいたのだ。

 

「何をやってる! 響君を戦わせるつもりは無いと言ったはずだ!」

 

思わず声を荒げる弦十郎。

 

「戦いじゃありません! 人助けです!」

 

 

「減らず口の上手い映画など、見せた覚えはないぞ!」

 

「行かせてあげてください。」

 

弦十郎に未来が落ち着かせる様に言う

 

「未来君?」

 

「人助けは、一番響らしいことですから!」

 

未来を見て笑みを浮かべる弦十郎。

 

 

「こういう無理無茶、無謀を言うのは、本来俺の役目だったはずなんだがな。」

 

「弦十郎さんも?」

 

未来が目を丸くして聞く。そうだ。彼はこれまでもOTONAの力を発揮してきたのだ。

 

「帰ったらお灸ですか?」

 

緒川の問いに弦十郎は笑いながら答えた。

 

「特大のをくれてやる!だから俺たちは!」

 

「バックアップは任せてください!」

 

「私達のやれることでサポートします!」

 

藤尭、友里が答える。

 

「子供ばっかりに、いいカッコさせてたまるか!」

 

弦十郎は指の関節をポキリとならす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立花とあの装者が一緒に…? 了解です。直ちに合流します。」

 

翼は弦十郎からの通信で響と調が来る事を知り、通信を切った。

 

「立花響と月読調が来るのか。」

 

「だが、ノイズを深追いしすぎた様だな。」

 

カリバーと翼の目の前にはフロンティアの巨大な遺跡が聳え立っている。

 

「どうやらお出ましの様だ。」

 

「何?」

 

カリバーの声に翼が反応する。その時、2人に向けて多数の矢が放たれる。翼は避け、カリバーは闇黒剣月闇から斬撃波を放ち矢を相殺した。

 

「やはりお前か。雪音クリス。」

 

2人の前にはギアを纏ったクリスが岩の上に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、調は響と共にフロンティアの巨大遺跡に向かっていた。

 

「あそこにみんなが?」

 

「分からない。…だけど、そんな気がする。」

 

 

「うわわぁ! 急にどうしたの!?」

 

すると、突然調が急ブレーキを掛ける。そして丸鋸をしまい、目の前の建物を見る。そこに立っていたのは、切歌だった。

 

 

「切歌ちゃん!」

 

 

 

 

「Zeios igalima raizen tron」

 

 

聖詠と共に切歌はギアを纏った。

 

「切ちゃん!」

 

「調! どうしてもデスか!?」

 

切歌はアームドギアである鎌を取り出す。

 

「ドクターのやり方では、何も残らない! カリバーにも言われたでしょ!?」

 

調は切歌に訴える。カリバーの言った通り、ウェルのやり方は大勢の人間を切り捨てる事だ。

 

「ドクターのやり方でないと何も残せないデス! 間に合わないんデス!」

 

「二人とも!落ち着いて話し合おうよ!」

 

睨み合う2人を落ち着かせようとする響。

 

「「戦場で何を馬鹿なことをッ!」」

 

2人の声が重なった。

 

 

 

「あなたは先に行って。あなたならきっとマリアを止められる。手をつないでくれる」

 

「調ちゃん……」

 

「私とギアを繋ぐLiNKERにだって、限りがある。それにカリバーに言われたの。話し合うよりも、お互い全力でぶつかり合った方が手っ取り早いって!だから行って!」

 

「カリバーさんに?」

 

実は調が独房にいる時、カリバーと接触していたのだ。彼の野暮用とは調に会う事だったのだ。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『月読調。お前にとって暁切歌とはどういう存在だ?』

 

カリバーの問いに調は…

 

『切ちゃんは…私に取って大切な人…施設に入れられた時から知り合って…一緒に過ごしてく内にかけがえのない存在になったの…。でも、マリアやマム、ドクターと一緒に世界を敵に回して、正しい事をしてるって言い聞かせてきた。 でもマリアがフィーネでない事、あなたにその魂が消された事を聞いた。最初は嬉しかった。マリアが私の知る優しいマリアであった事を。でもマリアは、ドクターのやり方で世界を変えようとしている。切ちゃんもその考えに乗った。それを聞いて、目が覚めたの。』

 

『お前はどうしたいんだ?』

 

カリバーは調に聞く。

 

『私は切ちゃんに伝えたい!ドクターのやり方だと、あなたの言った通り大勢の人が見捨てられるって事を分かって欲しい!』

 

調は少し感情的になってカリバーに言う。

 

『……ならば、話し合うよりも、全力でぶつかれ。』

 

『全力で…ぶつかる…?』

 

『話し合うよりも、お互い全力でぶつかった方が手っ取り早い。お前の心の気持ちを全て曝け出せ。』

 

『……』

 

カリバーの口調はいつもの様な冷酷な話し方ではなく、少しだけ優しい口調になっていた。

 

 

 

 

 

 

「調ちゃん…うん!」

 

響は頷き、走り出す。

 

「させるもんかデス!」

 

切歌が響を追おうとすると、調が丸鋸を飛ばしてくる。それを構えを回転させて防ぐ。

 

「調!何であいつを!あいつは調の嫌った、偽善者じゃないデスかッ!」

 

「でもあいつは、自分を偽って動いてるんじゃない。動きたいときに動くあいつが、眩しくて羨ましくて、少しだけ信じてみたい……ぶつかり合って、そう思った……」

 

調はヘッドギアから高速回転する巨大な丸鋸2枚を展開した。

 

「さいデスか……。でも、アタシだって引き下がれないんデス!アタシが生きている内に何かを形で残したいんデス!」

 

「切ちゃんが生きている内に……?」

 

「調やマリア、マムの暮らす世界に、アタシがここに居たっていう証を残したいんデス!」

 

「それが理由? なら切ちゃん…全力でぶつかろう!!」

 

「望む所デス!」

 

切歌は先制で切・呪りeッTぉを放つ。調もγ式・卍火車で応戦、2人の全力の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、クリスとカリバー、翼も戦いを始めていた。クリスが銃撃すると、翼が弾丸を跳ね返し、カリバーがクリスを斬りつける。

 

「ぐぁぁ!!」

 

斬りつけられたクリスは地面を転がる。カリバーは闇黒剣月闇を納刀し、トリガーを押し、抜刀する。

 

【月闇居合!読後一閃!】

 

「ハァ!」

 

掛け声と共に放たれた斬撃波がクリスに放たれる。

 

「くっ!」

 

クリスは辛うじて避けるも、爆発の衝撃波で吹き飛ばされ、倒れてしまう。

 

「……あれは…」

 

カリバーの目線にかなり遠くで走っている人物が見えた。響だ。それを見たカリバーは闇黒剣月闇を納刀した。

 

「先に行かせてもらうぞ。ギアも纏っていない人間を放っておく訳にはいかないからな。」

 

「何?」

 

カリバーはそういうと、ブルーのワンダーライドブックを取り出して起動した。

 

【ライオン戦記!】

 

すると、何処からか咆哮と共に青いライオン、ライオンセンキがカリバーの元へやってきた。

 

「青い…ライオン…!?」

 

「何だありゃあ…!?」

 

翼もクリスも突如現れたライオンセンキに驚いていた。カリバーは2人を無視してライオン戦記に乗ると響の元へ向かっていった。ノイズに襲われたらひとたまりもない彼女の事を放っておかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、切歌は鎌で調に斬りかかり、調は巨大な丸鋸4枚を展開し、裏γ式 滅多卍切を繰り出す。鎌と丸鋸が打ち合う音が響き渡る。

 

「この胸にッ!!」

 

切歌はもう1本の鎌を取り出す。

 

「ぶつかる理由がッ!」

 

「「あるのならぁッー!」」

 

2人は全力でぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翼とクリス。クリスは2丁拳銃で攻撃。マガジンを素早く交換し、脚部ブレードを展開して斬りかかる翼に向けて発砲する。翼も負けじと交わしながら刀を振るう。クリスの銃撃をかわしながら水溜りに着水する翼。そしてお互い刀と拳銃を構える。その様子を双眼鏡でウェルが見ていた。

 

 

「ウヘッ…ウヘヘヘヘヘヘヘヘ…!! イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…!」

 

ウェルはそんな2人を醜悪な笑みを浮かべ笑っていた。

 

 

 

 

 

その頃ブリッジでは調と切歌、翼とクリスが戦っている映像が結晶に映し出された映像を見て、マリアは愕然としていた。

 

「どうして…あんなに仲の良かった調と切歌が…私のせいだ…!私の選択は……こんなものを見たいがためではなかったのに……!」

 

自分の無力さに涙が出る。その時…

 

「マリア」

 

「っ!!マム!」

 

ナスターシャの声を聞いて顔を上げるマリア。

 

「今、あなた一人ですね?フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました」

 

「え……!」

 

「最後に残された希望……。それには、あなたの歌が必要です!」

 

「私の……歌……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響は息を切らしながらもマリアを止める為に走る。

 

 

 

 

「胸の歌が、ある限りぃーーーーーッ!」

 

 

響の心の叫びがフロンティアに響き渡った。

 

 

 




いかがだったでしょうか?第2章もあと少しで完結になります。マリア達は第3章に出す為に結末も既に考えてました。どうか第2章完結までよろしくお願いします。

今回はここまでです。感想お待ちしています。
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