「青年の目には、
第53話 追憶、安らぎの夏休み。
並行世界の戦いから数日後、季節は夏真っ盛り。世間では夏休みと言うだろうか。真上からジリジリと照りつける太陽の下、街の中を汗をかきながら歩いているのは仮面ライダーカリバーこと上條隼人だ。
(暑い…夏だからなぁ…でもこんなに暑かったっけ…)
隼人は自分が感じていた夏の暑さよりこの世界の夏の暑さの方が暑いと感じていた。自分がいた世界は2020年。
しかし、この世界の西暦は2044年。つまり、考えられるのは地球温暖化が進んでいる可能性があると言う事だ。
(温暖化の影響じゃなきゃ良いけど…)
そんな事を考えてながら歩いていると、横から会話が聞こえて来た。
「夏休みの宿題どれくらい終わった?」
「ほとんど。」
「さっすが!俺なんかまだ日誌だけだぜ!」
「えぇ〜!?」
「うっそ〜!」
「何だよも〜!」
隼人の横で中学生らしき少年2人がプールバッグを持って歩きながら夏休みの宿題について話していた。
(夏休みか…懐かしいな。そういや学生だった頃、クラスメートとどっちが早く終わらせるか競争してたっけ…ん…? 宿題と言ったら…)
中学生達の会話を聞きながら隼人は自身が学生だった頃を懐かしむと、夏休みの宿題について、ある事を思い出した。それは…
『では、規則正しく夏休みを過ごす様に。』
隼人が中学1生の時の夏休みに入る前の日だった。休み時間、誰もが友人達と話をしている中、早くも隼人は1人夏休みの日誌を進めていると…
『あれ?隼人もう日誌やってるの?』
誰かが話しかけてきた。それは、隼人にとって大切な存在だった瑠奈だった。
『あぁ。今の内にやれる所まで進めておけば、後が楽だろ?』
『真面目だね〜。休みに入ってからやればいいのに〜。』
『何言ってんだ。休み明け実力試験あるだろ? それの勉強もしなきゃいけないからな。そう言うお前は大丈夫なのか?』
呑気に言う瑠奈に隼人は日誌を進めながら言う。
『大丈夫大丈夫!私後から本気出すタイプだから!』
課題は後からまとめてやる派の人が言うであろう言葉を瑠奈は笑いながら言った。勿論、隼人は彼女が終盤になって「絶対手伝って欲しい」と泣きついてくるだろうと予想していた。そして案の定…
そして夏休み終盤…
『宿題終わらないよ〜!!』
『だから言っただろ! 早めに終わらせとけって!』
涙目になりながら慌ててシャーペンを走らせる瑠奈に隼人は呆れながら叫ぶ。
誰もが経験したであろうこの逃れられない宿命。遊び呆けて課題を放置し、終盤になってから事の深刻さに気付くが、時既に遅し。
刻一刻と迫る課題提出日。とにかく終わらせなければ新学期は気持ちよく迎えられない。
『隼人はもう終わってるの!?』
『お盆の前にとっくに終わらせたよ!』
何気に隼人はお盆に入る前に課題を全て終わらせ、新学期にある実力試験のテスト勉強をしていた。
『隼人〜! お願い手伝って〜!』
『やらなかったお前が悪い!』
『このままじゃ新学期迎えられないよ〜!! お願いお願い〜!!』
瑠奈は隼人のシャツを掴んで涙目になりながら隼人の揺さぶった。隼人の予想通りだった。
『ああもう分かった分かった! テスト勉強もひと段落したから!』
『本当!?』
『あぁ。』
瑠奈の頼みに折れたのか隼人は手伝うことにした。
『ありがとう〜!! やっぱり隼人は優しい〜!!』
『分かったから離れろよ!』
(何だよ…全く…涙目になってたら…途端に可愛い笑顔見せやがって…。)
嬉しさのあまりに瑠奈は隼人に抱きついていた。隼人にはその時に見せた笑顔が、いつもよりも輝いて見えた。
(その後2人で必死にやって、何とか地獄の最終日…8月31日の前日に終わらせて、最終日は思いっきり遊んであいつに付き合ってやったっけ…)
隼人はかつて過ごした夏休みの日々を思い出しながら、誰もいない近くの公園にやって来て日陰のベンチに座りながらスポーツドリンクを口にした。
「まただ…どうしてこの世界に来てから瑠奈の事を思い出すんだろう…あいつはもういないのに…どうして…」
隼人は、この世界に転生して何故か瑠奈の事を時々思い出す事に疑問を抱いていた。もう彼女はいないはずなのに、どうして。
「ま、そんな事を思い出してもあいつはもう帰って来ない……よし!せっかくの夏休みだ。せっかくブックゲートもあるし、旅行でもするか!………というか今の俺からしたら毎日が夏休みみたいなものか。」
そう。隼人は働いていない。転生した時に0が沢山ある預金通帳を貰っているので金には困らない。所謂、ロイヤルニートだ。
「そうと決まればどこ行こっかな。…そうだ。とりあえず沖縄にでも行くか。」
隼人はガトライクフォンでマップを起動し、沖縄本島に行き先を決めると、誰もいない事を確認してブックゲートで沖縄へ向かった。
「旅行シーズンだからめっちゃ人いるな…」
沖縄の那覇に来た隼人の目の前には見渡す限り人。人。人。旅行シーズンもあってか観光客が多い。
しかし、せっかく来たのだから満喫しないと。今日は戦いの事も全て忘れて旅行を楽しむべきだ。
それから隼人は昼食に沖縄名物のソーキそばを食べ、街歩き、その後はとりあえず海へ向かったが、ビーチには沢山の人が海水浴に来ていた。
どうせなら誰もいない所で思いっきり泳ぎたい隼人は、ブックゲートを使って沖縄の離島や無人島を巡る事に。
「ふつくしい…!」
思わず感動の声を漏らしてしまう隼人。青く広がる空。白い砂浜に透き通った海と珊瑚礁。木のてっぺんには名も知らない鳥が鳴いている。まさに神秘的な楽園だろう。
それから隼人は童心に帰り、時間を忘れて海で泳いだ。自分以外誰もいない中、何もかもを投げ出したくなってしまう。
それくらい彼は疲労していた。しばらくして隼人が無人島で遊んでいると、時刻は既に午後6時50分。水平線の彼方に夕陽が沈んでいく。その光が海を鮮やかに照らしていた。
「1日、あっという間だったな…」
夕陽を見つめていると、腹が鳴る。
「さ、飯食ってお土産買って帰るか。」
本島に戻った隼人は夕食にタコライスを食べ、お土産に紅芋タルトやちんすこう、サーターアンダギーに黒糖チョコレートといった菓子類や沖縄のビールや酒にシーサーの置物等を買って、ワンダーワールドの自宅に帰宅したのであった。
ちなみに旅費は食事代とお土産代のみであり、交通費は当然ながら無しだ。
「あぁ〜疲れた…旅行なんて何年ぶりだろう…」
帰宅して寝室に戻った隼人は風呂に入り、そのままリビングに行くと、買ってきた酒に菓子類をつまみにして晩酌しながらテレビを見た。
何気に隼人はワンダーワールドにいて電気やガス、水道がどういうシステムで使えるのかは全く分かっていない。そして時刻は午後22時。隼人は寝室に戻り、ベッドに入り灯りを消した。
(こんな平穏に暮らせる日が、いつまでも続きます様に…)
平穏に暮らせる日がいつまでも続く様祈ると、眠りについたのだった。
いかがだったでしょうか? まずは主人公の夏休みを書いてみました。前回の断章から終えて、今回と次回は第4章に入る前のプロローグみたいな感じで読んで頂ければ幸いです。
皆様は夏休みの課題はどう進めていましたか? 自分も進める所はとにかく進めて終わらせていました。課題なんてなければ良いのにと思います。
次回も主人公の夏休みの回を書くつもりですが、セイバー本編の展開次第で第4章の進め方が変わっていくので少し更新が遅れるかもしれません。
今更ですが、この小説はフィクションであり、登場する地名や名前については実在するものに基づいていますが、現実の物とは一切関係ありません。
短いですが今回はここまでです。感想お待ちしています。