【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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顔合わせの回です。サブタイトル通りになりそうですが…









第61話 話して、分かる事じゃない。

メディカルルームのベッドに病院服姿の1人の青年が眠る。暴走した後に突如強制的に変身が解除されて気を失った隼人だ。

あの後響が彼を抱え、クリスが闇黒剣月闇と無銘剣虚無、そしてライドブックを回収し帰還したのだ。

だが、それは彼にとって屈辱だろう。自分が忌み嫌う組織に助けられたのだから。目を覚まさない隼人を見つめるのはマリアだ。彼が目を覚ましたら伝える様に言われたのだ。

 

(カリバー…あなたは一体何者なの…? 何を背負って戦ってるの…? )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S.O.N.G.指令室にて、用意された長い台の上に置かれたショルダーバッグ、ガトライクフォン、ブックゲート、ジャアクドラゴン、ジャオウドラゴン、プリミティブドラゴン。

そして闇黒剣月闇と無銘剣虚無とリングノート。台を囲むのは響、クリス、調、切歌と、藤尭、友里、エルフナイン。

そして隼人を回収したと聞いて急遽帰還した弦十郎、翼、緒川だ。なお、今指令室には彼ら以外の人物はいない。弦十郎の計らいで他の人物が入らない様に釘を刺してあるのだ。

 

「藤尭、友里、俺達以外誰もいないな?」

 

「はい。関係者以外は入らない様に釘を刺しておきました。」

 

「今はマリアさんを除いて私達以外誰もいません。」

 

「彼の力を持ち出そうとする不届き者を入らせる訳にはいかないからな。」

 

カリバーがどういう人物なのかを知っている弦十郎はこの部屋に聖剣とワンダーライドブックを狙う人物が入ってこない様他の職員に通告していたのだ。

 

「師匠。カリバーさんは、大丈夫なんですか?」

 

「検査の結果、気を失ってるだけで命に別状はない。今はマリア君が見ている。目を覚ましたらこちらに伝える様言っておいた。」

 

「良かった…」

 

安堵の声を出す響。そして弦十郎が話し出す。

 

「では、本題に入ろう。響君とクリス君が確保したカリバーについてだ。緒川。」

 

「はい。カリバーに変身していたあの青年の名前は上條隼人。名前については彼が持っているこのノートに書かれていた物です。」

 

緒川は隼人のリングノートを手にして一同に見せ、台に置いた。

 

「上條…隼人…さん…」

 

「それがカリバーの本名…」

 

「あいつも普通の人間って訳か…ところでそのノートには何が書いてあんだ?」

 

全員が隼人の名前を知った時にクリスは、そのノートに何が書いてあるのかと言った。

 

「少し見てみた所、彼の持つ剣や本について書いてありました。」

 

響がリングノートを手に取り、表紙を開くと最初のページに闇黒剣月闇の事や秘められた力について書き込まれていた。書かれているのは、以下の通り。

 

・光の聖剣 光剛剣最光と共に作られた最初の聖剣

・2000年前に異世界 ワンダーワールドが生み出した

・闇から闇へ移動、斬ったものを闇の世界に送る

・聖剣の封印について

・未来の災いの啓示

 

「何かよく分からないけど…隼人さんの持つこの剣が凄い物だって事は分かる…」

 

「闇の世界へ送る…存在そのものを消すと言っていたがあながち間違いではないか…(つるぎ)の封印も出来るのか…!? 」

 

「未来の災いの啓示って事は未来予知か!? どんだけチートなんだよ闇黒剣月闇って…!漢字も超中二病じゃねぇか…!」

 

ノートを覗いた響達は書き込まれていた闇黒剣月闇に秘められた力に驚くが、さらに驚く事が書かれていた。それは、聖剣の封印についてこう記述されていた。

 

・この能力を応用して相手の力や聖遺物など、またはシンフォギアの封印が可能か不明だが…仮に敵対した場合検証の価値あり。

 

「シ、シンフォギアの封印デスか!?」

 

「そんな事も出来るかもしれない剣なのこれ…!? 」

 

「おいおい…!あたし達があいつと敵対してたらギア封印されてたかもしれねぇって事か!?」

 

恐るべき能力を秘めていた闇黒剣月闇。彼女達装者にとって一歩間違えれば最大の敵になりかねないカリバー。

今思えば敵対していれば間違いなく勝てないであろう。反則的な力に加えシンフォギアを封印出来るかもしれないからだ。

 

「恐らく、その能力は力が悪用されるのを防ぐ為のセーフティと思われます。そしてノートに2000年前に作られたという文を見てボクの推測ですが、この闇黒剣月闇は聖遺物、それも完全聖遺物に近い類いだと思われます。」

 

「完全聖遺物か…」

 

「そう考えれば、2000年前に作られてここまで状態が良かったらそう考えてもいいかもしれない…」

 

エルフナインの推測に藤尭と友里も納得する。闇黒剣月闇は完全聖遺物に近い存在。

そう考えれば今まで見てきた力が強力なのも納得だ。そしてページを捲るとワンダーライドブックや全知全能の書について書かれている。

その中で響達が注目したのはジャオウドラゴンについてだ。

 

「人間に使いこなせるかどうか分からない代物だと!?」

 

「絶対何かありそうデスよ!」

 

「しかも出来た経緯が私達への怒り…」

 

マリア達への怒りで誕生したあの強大なジャオウドラゴンの力。その力がどれだけ凄まじいのか戦った調と切歌は知っているからこそこの力が出来たのも納得出来るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここは何処だ……俺は暴走して……立花響達に運ばれて……一体何処へ連れてかれたんだ…)

 

深い意識の中眠る隼人。そして、彼の目の前にある光景は映し出された。

 

「………!? 」

 

目に映るのは、変わり果てた世界だった。空は赤く染まり街は瓦礫の山と化しコンクリートやアスファルトは砕け地表は剥き出し。

海は血で染まりS.O.N.G.本部が煙を出しながら座礁している。極め付けは、地面を埋め尽くす大量の人間の亡骸

老若男女や民間人や兵士、錬金術師も問わず屍の山が築き上げられ、見渡す限り死体。死体。死体。

血がアスファルトや地面を染め、中には真っ二つに引き裂かれた物、首が刎ねられた物も。

 

「何だよこれ…!」

 

隼人は恐怖に満ちた顔を浮かべ震える。一体これは何なんだ。何が起きたんだ。何故これが映し出されているのか全く分からなかった。場面が変わり映し出されたのは…

 

「………!!」

 

響を始め装者達の亡骸が横たわっていた。

それだけじゃない。弦十郎や緒川、藤尭や友里にエルフナインといったS.O.N.G.の仲間、響の父 洸や母と祖母。

友人の板場、寺尾、安藤、そして響の陽だまりでかけがえのない存在である未来の亡骸も。

 

「あぁ…あぁ……!!」

 

響の亡骸を見て隼人の脳裏に瑠奈が亡くなった光景がよぎる。そこへ思いもよらない人物が現れる。

悲しみに満ちた唸り声をあげながら歩いて来たのは、何と返り血を浴び真っ赤に染まったプリミティブドラゴンに変身した自分だった。

手には血で染まった闇黒剣月闇と無銘剣虚無を刀身で掴んでいる。

 

「あれは…俺…!?」

 

まさかこれをやったのは自分なのか? どうして? 何があったのか? そんな考えが頭の中で渦巻ながら恐怖と絶望に押し潰されそうになる。

そしてカリバーに変身した自分が変わり果てた東京の中心で哀しみの咆哮をあげ、その光景を見ている自分も絶望に満ちた叫び声を出す。

 

「ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

そして勢い良くベッドから飛び起きた。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

息を荒げる隼人。先程の光景は夢だったのだ。いや、ただの夢では無い。

 

「目が覚めた?」

 

声のする方を見ると、マリアがベッドの近くに立っていた。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ…」

 

「あなた、錬金術師との戦いで暴走して気を失ったのよ。それに眠っている間魘されてたけど何か悪い夢でも見てたの?」

 

「お前には関係ない事だ。」

 

隼人がベッドから降り、そばに畳んである自分の衣服を取ろうとすると、マリアが隼人に質問をする。

 

「目を覚ましたばかりで悪いんだけど、聞かせてくれない? あなたの事を。」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かつて封印されていた禁忌の聖剣…」

 

(つるぎ)の力を無に帰す(つるぎ)…無銘剣虚無…」

 

「あの害鳥野郎の剣だ…思い出しただけでムカつく!」

 

隼人が目を覚ました頃、響達は隼人のノートを見ながら無銘剣虚無について書かれている事を読んでおり、クリスは害鳥野郎こと鳳真司の事を思い出して腹を立てていた。

無銘剣虚無について書かれていたのは、

 

・1000年前に古の無の剣士が手にした

・封印されていた禁忌の聖剣

・無属性ではなく全てを無に帰す、そして無限

・聖なる力を無に帰す力で他の聖剣の力を無効化する

 

といった感じだ。そして最後に「この力を応用し、賢者の石のファウストローブの力を無効化出来るか検証の価値あり。」と記述されていた。

この情報は隼人が無銘剣虚無を手にした時に頭の中に入ってきた情報を書き込んだものだ。

 

「ボクも見ていましたが映像でカリバーが錬金術師と戦っている所で、ラピスの力が入った弾丸を無効化していた所を見ました。1000年前に存在していて誰かが手にしていると書かれているという事はこの無銘剣虚無も完全聖遺物に近い物だと思います。」

 

「現状対抗出来るのはこの無銘剣虚無を持つ彼だけという事ですか…」

 

「ヤバ過ぎデスよ!」

 

「闇黒剣月闇といいこの無銘剣虚無といいここまで強大な力を持つ剣があるなんて…」

 

「隼人さん、どこでこれらとワンダーライドブックを手に入れたんだろう…」

 

無銘剣虚無に秘められた力に驚きながらも闇黒剣月闇やワンダーライドブックをどこで手に入れたのか響達は気になって仕方が無かった。一体彼は何者なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話してもらわなきゃ分からないのよ!」

 

「話して分かる事じゃない!」

 

一方メディカルルームでは隼人とマリアが言い合いをしていた。

話してもらわないと分からない。彼が何者なのか。

一体何処で聖剣とワンダーライドブックを手に入れたのか話して欲しいマリアに対して話して分かる事じゃないと言いながら着替えて律儀に病院服を畳み、ベッドメイキングをする隼人の姿が。

忌み嫌う組織の筈なのにベッドメイキングをするのは彼なりの感謝の意なのかそれは分からない。

 

「お願いだから話して!」

 

「話す必要は無い!」

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りがメディカルルームで行われている事を知らずに一同がプリミティブドラゴンについて話していた。

あの力は一体何なのか。暴走しながらも錬金術師達を圧倒したあの力は何処で手に入れたのか。そんな考えが響達の頭の中で渦巻く。

 

「プリミティブはどういう意味デスか?」

 

「原初とか太古っていう意味だな。」

 

プリミティブの意味を聞く切歌にクリスは教えている。そんな中響がリングノートのページを捲るとあのページに差し掛かった。

 

「悲しみの物語…?」

 

それは、隼人が自宅で見つけ解読した古文書に書かれていた物語だった。

どんな物語が書かれているのか読んでみて欲しいと弦十郎に言われたので読んで見る事に。

そこには、暴走を引き起こしたプリミティブドラゴンの秘密が書かれた物語だった。

 

 

 

 

 

 

昔々、始まりを知る竜がいました。

心優しい竜は人間をとても気に入り、見守り、時には助け、人間と友達になりました。

竜は人が物を知り、成長し繁栄するのをとても喜んでいました。

そして竜の一族と人は仲良く暮らしていたのです。

時が経ち、始まりの竜が居眠りについた頃、増えすぎた人は竜たちと違う場所に住まうようになり、やがて竜のことを忘れてしまいました。

竜たちは再会をとても喜びましたが、現れた人間たちは突然竜たちを攻撃し始めました。

昔友達だったことなど忘れて、竜のことを化け物だと思っていたのです。

竜たちはかつての友情を忘れられず、戦うこともせず、一匹、また一匹と倒れていきました。

最後の一頭の命が尽きる頃、永い眠りから覚めた始まりの竜は驚きました。

そして仲間と友達をいっぺんに失ったことをとても悲しみました。

悲しみに暮れた始まりの竜は仲間を求めて彷徨いました。

世界中、何年も何百年も何千年も、寿命が尽きて、死んだ事にも気付かずに仲間を求めて彷徨い続けました。

骨となり、魂だけになってもまだ、何年も何百年も何万年も彷徨い続けました。

忘却の果てには悲しみが、その悲しみは未来永劫続く悲しみ。

吟遊詩人たちも詠っている。悲しみから永遠に救われず、今も仲間を求めて彷徨っている竜の歌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

読み終えた響も、弦十郎達もこの悲しみの物語に表情を曇らせていた。

 

「これって…」

 

「人間に裏切られ、失った仲間を求めて彷徨う竜の物語…」

 

「酷ぇな…その物語の人間…」

 

「これじゃあバッドエンドデスよ!」

 

「このドラゴンに救いがないよ…」

 

人間に裏切られ、敵視されて仲間も友も失った竜の悲しみの結末に皆が心を痛める中、響は最後に一回り大きい字で書かれていた言葉を読んで呟く。

 

「忘却の果てには哀しみが それは破滅を求める手……ハッ!」

 

その時、響の脳裏にプリミティブドラゴンとなった暴走しながらカリバーが哀しみに満ちた咆哮を上げていた事、カリバーの手を取った時に見た光景を思い出した。そしてある1つの結末が浮かぶ。

 

「どうしたんだ?響君。」

 

「もし…この始まりの竜が…隼人さんの事だったら…!」

 

原初の竜の力に乗っ取られたカリバーが、この悲しみの物語に登場する始まりを知る竜なら、何処へ向かうのか容易に想像出来た。

 

「行き着く先は…破滅…!」

 

「破滅って…!!」

 

忘却の果てには悲しみが それは破滅を求める手。まさか今まで自分を助けてきた彼が破滅へ向かっている事なんて思いもよらなかった。故に響が考えるんだ事は1つ。

 

「助けなきゃ…隼人さんを助けなきゃ…!」

 

助けたい。彼を助けたいという気持ちが響の中に芽生えていた。その時…

 

 

 

 

 

 

「だから話してもらわないと分からないのよ!」

 

「話す必要はないと言ってるだろ!」

 

お互い言い合いをしながら隼人とマリアが指令室に入ってきたのだ。

 

「目が覚めたのか!」

 

「隼人さん!」

 

響の嬉しそうな声に隼人が反応した。しかし、今までずっと変身後の名前で呼ばれていたので自身の本名で言われる事は彼にとってあまりよろしくない事だ。

 

「あの後気を失ってどうなるかと思いましたが、命に別状は無いって聞きました!本当に良かったです!」

 

明るい笑顔を浮かべて安心する響を見てまさか助けられると思わなかった隼人は複雑な気持ちだった。すると、弦十郎達の方を見る。

 

「お前ら何やってんだよ。」

 

隼人は不機嫌そうな声で自分の荷物やショルダーバッグが置かれた台を囲む弦十郎達を見て言った。ふと視界に響が自分のリングノートを開いているのが見えた。

 

「…見たな?」

 

「え…いや…その…」

 

「フッ…ダメじゃないか…勝手に人の物見たら。」

 

隼人は響からリングノートを取り上げて、台まで移動するとショルダーバッグを手に取りワンダーライドブックやガトライクフォンを仕舞うと、闇黒剣月闇と無銘剣虚無を手にする。

 

「おい待て!色々聞きたい事が山ほどある!聖剣とワンダーライドブックを何処で手に入れた!?」

 

「何で害鳥野郎の剣を持ってんだよ!?」

 

「あなたは何を背負って戦ってるの!?」

 

「あのバキボキの奴は何なんデスか!?」

 

「あなたは一体何者なの?」

 

装者達に一斉に質問攻めされる隼人。しかし、話したところで色々と面倒になる事は分かりきっている。故に彼の答えは…

 

「話して分かる事じゃない!どうせ話してもお前達には理解出来ない!」

 

拒否する。例え何を聞かれようと話すつもりは無い。隼人はブックゲートを取り出して指令室から出ようとする。

 

「カリバー!いや、隼人君!」

 

隼人を呼び止めたのは弦十郎だった。

 

「何だ?」

 

「君の事を話してもらえないだろうか? 君についての情報が調べても一切出てこない。聖剣やワンダーライドブックの入手経路よりも気になる事だ。頼む。話してくれないか?」

 

「話して分かる事じゃないって言ってるだろ!それを聞いてどうする!?」

 

自分は転生者で一度死んでこの世界に転生したなんて言えるわけがない。そんなアニメやライトノベルみたいな展開を話したってどうせ誰も信じてもらえず、バカにされて笑われるだけだ。故に彼は話さない。

 

「君の立場は分かっているはずだ!今君は世界において最強の抑止力として扱われている!世界中が君を狙っているんだぞ!日本や各国政府、国連も君を手に入れて戦力か軍事兵器に利用しようとしている!」

 

弦十郎の言う通り、既存の兵器やシンフォギアを凌駕する闇黒剣月闇と無銘剣虚無、ワンダーライドブックを持つ隼人は世界において最強の抑止力として扱われている。

日本政府は彼を利用して世界が日本に攻め込もうならカリバーが黙っていないと圧力をかけ、各国政府や国際連合も日本と静かな冷戦状態だという。

 

「だったら何だ?」

 

「隼人君。S.O.N.G.に所属して貰えないだろうか? 我々が責任を持って君を手助けする。勿論君の力については一切模索も解析等もしない。これは君を守る為だ。頼む。現状パヴァリア光明結社の錬金術師に対抗出来るのはプリミティブドラゴンと無銘剣虚無を持つ君なんだ。力を貸してくれ!」

 

「俺がお前達と初めて会った時に言った事を忘れたか?」

 

弦十郎は隼人に分かってもらえなくても力を貸して欲しいと懇願した。

パヴァリア光明結社の錬金術師のラピスのファウストローブに対抗出来るのは暴走の危険のあるプリミティブドラゴンと、全てを無に帰す聖剣、無銘剣虚無を持つ彼だけだ。

しかし、隼人はかつて弦十郎達に「自分は組織に属するつもりはない」と断言している。すると…

 

「私からもお願いします!」

 

「響君?」

 

弦十郎に続いて頼んだのは響だった。響の頼みに隼人も一瞬驚きの表情を浮かべた。

 

「私、あの時隼人さんが暴走した時に手を取った時に一瞬だけ見えたんです。苦しんでいる隼人さんや、人に騙されたり、裏切られた事、人を手にかけた事や、並行世界の出来事とか隼人さんが背負っている心の闇が。」

 

実はあの時、響がカリバーの手を取った時に、一瞬だけ隼人の意識にリンクし、隼人の心の闇や骨の手に縛られて苦しんでいる隼人が見えたのだ。

 

「もしかしたらもう一度隼人さんの心に繋がれば暴走を抑えられるかもしれません。」

 

「やめろ…」

 

「このままじゃあの哀しみの物語通りに隼人さんが破滅してしまうかもしれないんです!力を貸してください!話してくれればきっと…!」

 

「俺に構うなッ!」

 

響の言葉に大きい声を上げる隼人。

 

「これ以上…俺に関わるな…ほっといてくれ…!」

 

隼人は闇黒剣月闇で空間を切り裂いて闇を作り出し、その中へ入っていった。

 

「隼人さんッ!」

 

指令室を気まずい空気が支配していた。弦十郎や装者達は隼人が消えた所をただ見つめるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…何で重なるんだよ…あいつと…瑠奈が…!」

 

家に帰ってきた隼人はリビングで響と瑠奈が重なっていた事に震えながら疑問を抱いていた。

 

「分かってる!あいつは瑠奈じゃない!なのに…どうして…!」

 

もうこの世にいない大切な存在と響が何故重なるのか全く分からなかった。その時…

 

「っ!!」

 

闇黒剣月闇が強く光り、隼人の目に何かが映し出される。

 

「あぁ……あぁぁッ……!!」

 

恐怖に震え頭を抱える隼人。彼の目にある光景が映し出されている。それは、彼を絶望のどん底に突き落とす物だった。

 

「やめろ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、雨音が響く鎌倉にある屋敷にて。部屋の前の廊下に正座をしているのは翼だ。そして中の広い和室に座る八紘と弦十郎。目の前には訃堂だ。

 

「…して、夷狄による蹂躙を許したと?」

 

「結果、松代の風鳴機関本部は壊滅。大戦時により所蔵してきた機密の殆どを失う事となりました。」

 

「外患の誘致、及び撃ち退けること叶わなかったのはこちらの落ち度に他ならず、まったくもって申し開きは─」

 

「聞くに堪えんッ!」

 

弦十郎の言葉を遮った訃堂は立ち上がり襖の前に立ち止まる。

 

「分かっておろうな?」

 

「国土防衛に関する、例の法案の裁決を急がせます。」

 

「有事に手緩い。即時施行し、宵闇の剣士を物としろ。」

 

八紘は国土防衛に関する法案の裁決を急がせる様言うが訃堂は即決し、カリバーを捕らえろと即答した。そして翼が襖を開けると、訃堂は廊下に出る。

 

「まるで不肖の防人よ。風鳴の血が流れておきながら嘆かわしい。」

 

「我らを防人たらしめるは血に非ず。その心意気だと信じております。」

 

翼の言葉を鼻で笑うと、訃堂はその場を立ち去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、S.O.N.G.の本部にてマリアとエルフナインが頭にヘッドギアを装着。いよいよ実行するのだ。そして友里も側にいる。

 

「始めましょうか。」

 

「えぇ。あなたが私の(ここ)に入ってくる訳ね。」

 

「正しくは、仮想空間に複写したマリアさんの脳構造に接続。ボクとマリアさんの意識を共有します。」

 

つまり、マリアとエルフナイン、2人で1つとなる訳だ。

 

「了解。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、出店が並ぶ広場で切歌はクレープと睨めっこをしていた。マリアとエルフナインの事が気になってしょうがないのだ。

 

「切ちゃん? 心配なのは分かるけど…」

 

クレープと睨めっこをしている切歌を見ているのはクリスと調だ。

 

「分かってるデス!全ては、分かった上での決断なのデスッ!」

 

そういう時一口クレープを食べる。すると、奇妙な味が口の中に広がる。

 

「チョコ明太子味なんて冒険するから…」

 

「あたしの奢りを残すなよ。常識人。……美味いじゃねぇか。」

 

どうやらクリスも同じ物を頼んでいたらしく、クリスの口には合う様だ。

 

「これは願掛けなんデス!全部食べられたら、マリアとエルフナインの挑戦はきっとうまくいくのデス!」

 

そんな切歌を微笑ましく見つめるのはかき氷を頼んだ未来だ。隣にはソフトクリームを頼んだ響も座っていたが、何か浮かない様子。

 

「響。ねぇ響。」

 

「え? 何?」

 

未来がソフトクリームを指さすと、溶けている。

 

「溶けちゃってるよ?」

 

それを見て慌てて頬張る響。未来はハンカチを取り出して響の口元を拭く。

 

「話を聞いたり、隣で溶けたアイスを拭うぐらいはしてあげる。…だから、何かある時は頼ってよね。」

 

「ありがとう未来。やっぱり未来は私の陽だまりだ。」

 

すると、街頭テレビにニュースが入る。

それは、内乱が続くバルベルデで戦火に屈しずに大好きなサッカーを続けるステファンが夢の第一歩として日本のプロサッカー選手やジュニアチームと交流をして日本とバルベルデ、海を越えて遠く離れた国でもサッカーで繋がる為に来日したというものだった。そのニュースにクリスが反応する。

 

「将来は、プロサッカー選手になって日本で活躍したいです!」

 

笑顔でインタビューに答えるステファン。

 

「良かったね…あの子、夢への一歩を踏み出せるんだね。」

 

「…だといいんだけどな…」

 

響に答えるクリスの表情は暗い。

 

「悩んで下した決断が、いつも正しいわけじゃない…それどころか、初めから正解が無いなんて事もザラにある…」

 

どうやらまだ自分がステファンの足を切断して、カリバーが再生したものの、そのせいでソーニャにカリバーが憎まれ役を買って化け物と罵られた原因を作った事をまだ引きずっている様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わりS.O.N.G.本部にて。

 

「良いわね?行くわよ。」

 

友里が装置を起動させる。そしてモニターに2人の意識が1つになっていく。その中でエルフナインが見た光景は、大自然が広がり、一面に花が咲き誇る光景だった。何処からか歌が聞こえる。

 

「これが…マリアさんの脳内…記憶が描く心象風景…」

 

そしてエルフナインの近くには、幼き日のマリアと妹のセレナが花を摘んでいた。

 

「マリアさん…」

 

そこに現れたのは、ナスターシャだ。場面は変わりナスターシャが鞭でマリアの腕を叩く。同時にエルフナインの腕も痛み、傷が出来る。2人は意識を共有しているのだ。

 

「どうして…」

 

「今日からあなた達には戦闘訓練を行ってもらいます。フィーネの器となれなかったレセプターチルドレンは、涙より血を流す事で組織に貢献するのです。」

 

冷酷な表情を見せるナスターシャに怯えセレナはマリアの背中に隠れる。

 

(意識を共有しているからには、記憶と体験はボクにも及ぶ…)

 

 

 

そして雷鳴が轟く夜。F.I.S.の研究施設にて、マリアとセレナを含めた子供達は暗い部屋の中にいた。クマのぬいぐるみを抱いて眠るセレナにマリアは寄り添う。その光景を見ながらエルフナインはギアと繋がる領域を探していた。

 

(何処なんだろう…ギアと繋がる脳の領域は…)

 

 

そして研究員に連れられランニングマシーンを走らされ、装置に座らされ何かを見せられ、LiNKERを飲まされる。

 

「早く飲みなさい。」

 

冷酷な目付きでマリアに飲む様迫る。そして起動前のネフィリムの前に立つセレナを見つめるマリア。その隣には櫻井了子が。場面は変わり、廃墟が並ぶ所でエルフナインはノイズに囲まれる。

 

「これは…ノイズの…記憶…?」

 

そして一歩、また一歩とノイズが迫る。エルフナインが逃げれば、ノイズは追いかける。

 

(もしここでボクが死んだら、恐らく、現実のボクも目を覚さない!)

 

ここで死ぬ訳にはいかない。走る中つまづいて転倒してしまう。そして背後にはノイズ達が。万事休すか。その時…

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

曇り空に聖詠が響き渡る。そして空から小太刀が降り注ぎノイズ達を粉微塵にする。エルフナインの目の前にはマリアが。

 

「マリアさん!?」

 

「いくら相手がエルフナインでも、思い出を見られるのはちょっと照れ臭いわね。」

 

「あの、いつの記憶の、どのマリアさんですか?」

 

「一緒に戦うって約束したばかりでしょ? この場に意識を共有するのなら、いるのはあなただけじゃないッ!私の中で、私が暴れて何が悪いッ!」

 

そうだ。2人で戦うと決めた。だからここにいるのは一心同体状態のマリアとエルフナインだ。マリアはダガーを手にノイズ達を斬り裂く。

 

「記憶じゃない…マリアさんの意識がッ!」

 

「突破する!」

 

「はい!」

 

2人は手を繋ぎかけ出す。その時、現実世界でマリアの身に異変が起きていた。場所は変わって雪原地帯。

 

「ここ…どこ?」

 

「マリアさん自身も忘れかけている深層意識のイメージでしょうか?」

 

「深層……ッ!?」

 

その時、空にワームホールが開く。そしてマリアとエルフナインの足元にも。次第に大きくなっていく。そして現実世界で、2人の様子に変化が出始めた。

 

「2人の様子は?」

 

通信の相手は翼だ。

 

「バイタル、安定域から大幅に数値を下げています。このままの状態が続けば…」

 

2人は今危険な状態に差し掛かっている。このまま続けば大変だ。

 

「やむをえまい…場合によっては、観測の一時中断を─」

 

弦十郎が観測中断を提案したその時、警報が指令室に響き渡る。

 

「どうした!?」

 

モニターの地図に表示されたのは巨大アルカ・ノイズの反応。映し出されたのは首が7つある八岐大蛇の様なアルカ・ノイズだ。

 

「東京湾にアルカ・ノイズ反応!」

 

「空間を切り取るタイプに続き、またしても新たな形状…しかも、かなり巨大なタイプの様です!」

 

「まかり通らせる訳には…!行きます!」

 

翼は駆け出し、指令室を飛び出した。そして東京湾上空にはステルス機能で消した空中戦艦が。

 

「オペラハウスの地下にはティキ以外にも面白いものがゴロゴロ眠ってたのよね〜」

 

「もったいぶってなんていられないワケダ。」

 

「そう。我らパヴァリア光明結社は神の力を持ってして、世の傍をあるべき形へと修正する…」

 

乗っているのは、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティだ。

 

『お前らの様な身勝手な正義を振りかざしてくだらん悪事を正当化する奴が1番嫌いなんだよッ!!』

 

『それが誰かの為ならば…私達…きっと手を取り合える…』

 

サンジェルマンの脳裏に隼人と響の言葉が浮かぶ。

 

「大義は…いえ…正義は我らにこそあり…行く道を振り返るものか。例え1人でかけたとしても。」

 

「1人じゃない。1人になんてさせないワケダ。」

 

「サンジェルマンのおかげで、あーし達はここにいる。何処だって3人一緒よ。」

 

彼女達は仲間意識が強く、信念を貫く気持ちも強い様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かりました!ヘリの降下地点に向かいます!」

 

街頭テレビのニュースに認定特異災害発生の文字と、アルカ・ノイズの映像が。指令を受けて響達は向かう。

 

「もたもたは後回しだ!行くぞ!」

 

クリスは一足先に駆け出す。

 

「私達は本部に!」

 

調の声に切歌は一気にクレープを口に詰め込む。

 

「マリア達の様子が気になるデス!」

 

調と切歌は本部へ駆け出して行った。

 

「未来も、学校のシェルターに避難してて!」

 

「響!」

 

駆け出す響を未来が呼び止める。.

 

「…誰だって譲れない思いを抱えている。だからって、勝てない理由になんてならない。」

 

「勝たなくてもいいよ。だけど絶対に負けないで。」

 

未来の激励を受け、涙を浮かべる響。しかし、すぐに立ち直り胸に手を当てる。

 

「私の胸には、歌がある!」

 

絶対に負けない。未来が見送る中、響は駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…リア…」

 

「マリア…」

 

深い深い意識の中、マリアを呼ぶ声がする。2人が目を覚ますとそこにある人物がいた。

 

「あ、あなたは…!」

 

「そうとも。僕は行きずりの英雄…」

 

「ドクターウェルッ! 死んだはずでは!?」

 

そう。死んだはずのウェルだ。

 

「それでもこうして君の胸に生き続けている。死んだ人間ってのは…大体そうみたいだねぇッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして東京湾に現れたアルカ・ノイズの反応を検知したある人物が闇の中から出てきた。その人物の目に光は無い。無言のまま反応の場所へと静かに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?主人公と響達と顔合わせです。装者達の隼人の呼び方どうしようかな…

今回隼人が話して分かる事じゃないと連呼していましたが実際転生者って言ってもアニメやライトノベルみたいな展開なんて信じてもらえないと考えてこういう結果になってしまいました。納得出来なかったら申し訳ありません。

とんでもない事に気付きました。この世界での隼人についての身分設定をすっかり忘れてました。転生小説を書く上で致命的なミスをしてしまいました。本当に申し訳ありません。

そしてステファンの来日理由は夢の第一歩として日本のプロサッカー選手とジュニアチームとの交流という形にしました。さらに隼人が見た光景。隼人は何を見たのか? ヒントは眠っている時に見たあの悪夢です。さぁ始まりますよ。「俺が世界を救う病」ならぬ「俺は誰とも手を繋いではいけない病」が。「話して分かるものじゃ無い」も「これで話は終わりだ」に変わります。

なお闇黒剣月闇の封印の所でシンフォギアの封印が可能かどうかの分はあくまでも主人公の予想なので今後シンフォギアが封印される事は絶対ありません。


今回はここまでです。感想お待ちしています。
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