【完結】月闇絶唱シンフォギア   作:ネガ

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いよいよアニメ部分も折り返しに差し掛りました。今回隼人がどんな未来を見たのか明かします。


少女の歌には、が流れている。青年の目には、 (みら)が見えている。








第63話 どうあがいても、絶望。

パヴァリア光明結社の目的…それは、神の力を持ってしてバラルの呪詛を解き放ち、月の遺跡を掌握するいう物だ。

 

 

「月にある…遺跡を…?」

 

「人が人を力で蹂躙する不完全な世界秩序は魂に刻まれたバラルの呪詛に起因する、不和がもたらす結果だ。」

 

「不完全を改め、完全と正すことこそサンジェルマンの理想であり、パヴァリア光明結社の掲げる思想なのよ。」

 

「月遺跡の管理権限を上書いて、人の手で制御するには神と呼ばれた旧支配者に並ぶ力が必要なワケダ。その為バルベルデをはじめ、各地で儀式を行ってきたワケダ。」

 

しかし、どれだけそれが人類の為でもやり方を間違えてしまったらかえって人々を苦しめてしまう。

 

「だとしても、誰かを犠牲にしていい理由にはならないッ!」

 

「犠牲ではない。流れた血も失われた命も革命の礎だ!私達は私達の正義を貫くッ!」

 

スペルキャスターを構えるサンジェルマン。すると、正義という言葉にカリバーが反応して口を開いた。

 

「正義か…今までもそうやって自分達が正義だと思っている奴なんて沢山いた…そして俺は最善の行動と思いそいつらを斬った…」

 

淡々と暗い声で話すカリバー。生存者を迫害していた人間達が脳裏によぎる。

 

「そういえばあなたは、私達の行いを身勝手な正義と言ったな?あなたも人を手にかけた事も理由はどうであれ、それも身勝手な正義と言えないか?」

 

それは、カリバーにも言える事だった。3年前の生存者迫害で加害者を手にかけた彼の行動も、他人から見れば身勝手な正義と言える。

 

「別に否定はしない…他の奴らから見れば最善だと思って行った俺の行動も身勝手な正義と言われてもおかしくない。最も恐ろしいのは自分達が正義だと思っている人間…正義の為なら、人間はどこまでも残酷になれる生き物…それが、自己満足だとしても…それに俺は自分が正義だなんて微塵も思っていない…」

 

本当に恐ろしい人間は悪ではなく自分達が正義、正しいと思っている人間。

正義の暴走がどれだけ恐ろしい物か。正義の為なら人間はどこまでも残酷になれる。

悲しい事にそれは全ての人間に当てはまる。揺るがない正義と正義が戦いを生む。それは決して無くならない。

 

「お前が正義でないのなら、何なワケダ?」

 

プレラーティの問いかけにカリバーは答える。

 

「悪人であり…化け物だ。」

 

【ジャオウドラゴン!誰も逃れられない…】

 

ジャオウドラゴンになったカリバーを見てサンジェルマンはスペルキャスターを発砲。7人は避ける。

上空の翼がサンジェルマンに向けて天ノ逆鱗を放つ。サンジェルマンはかわすとスペルキャスターの弾丸を針状に変形させ、翼の巨大な剣を貫通して翼に命中する。

 

サンジェルマンはカリバーに向けて発砲すると、カリバーは無銘剣虚無で弾丸を斬りながら接近。向かってきた響にも発砲すると、着弾した銃弾が黄金の結晶になり、響はそれを避ける。

 

 

カリオストロは走るマリアに向けて光弾を放ち避けながらマリア蛇腹剣を引き抜き、斬りつけるも、カリオストロがバリアを展開する。

 

「これならどうだ!」

 

そこへクリスがクロスボウで矢を放つも全て防がれる。

 

「何時ぞやのお返しなんだから!」

 

カリオストロはバリアを巨大な光球に変化させると、クリスとマリアにくらわせた。調と切歌はプレラーティと交戦。かわされた剣玉をハンマーで打ち返して調に命中させる。

 

「あぁぁッ!」

 

「調ッ!」

 

切歌が調に気を取られると、プレラーティは切歌に狙いを定めて打つ。ギリギリ避けた調と切歌はこのままでは不味いと判断。

 

「だったらやるデスよ!調!」

 

調と切歌はペンダントマイクに手を置く。

 

「イグナイトモジュール!」

 

「「抜剣ッ!/デスッ!」」

 

調と切歌がペンダントマイクを起動した。

 

「いけませんッ!ダインスレイフの力は賢者の石の力によって!」

 

エルフナインの通信の叫びも虚しく、調と切歌はイグナイト形態へ移行した。ダインスレイフと賢者の石は最悪の相性。しかし、それを承知の上での抜剣だ。

 

「先走るワケダ。」

 

「当たりさえしなければ!」

 

調は空中からα式 百輪廻、切歌は切・呪りeッTぉを繰り出すも、賢者の石の力の光を浴びせられ、2人の体に激痛と稲妻が走る。

 

「ノリの軽さは浅はかなワケダ!」

 

そしてイグナイトが強制解除され、地面に叩きつけられてしまう。

 

「月読ッ!暁ッ!」

 

翼が2人に駆け寄る。すると、闇黒剣月闇が光り出す。

 

「ぐぅぅ…!? あぁ…!はぁ…!やめろ…!」

 

カリバーが頭痛の中、息を荒げる。今、彼には「自分がいるにも関わらず響達がサンジェルマン達に敗れ命を落とす」という最悪な未来が見えている。

 

「隼人さん…?」

 

「上條…!?」

 

「うぁぁぁ…!まただ…!何故…!こんな未来が…!」

 

カリバーの中に誰かを失う深い哀しみが流れ始める。誰も死なせたくない。自分のせいで誰かが死ぬのは嫌だ。死なせたくない。その思いが、原初の竜を呼び寄せる。

 

「うぁああああああァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

【プリミティブドラゴン!】

 

「またか!」

 

「ヤバイぞ!プリミティブドラゴンになりやがった!」

 

哀しみの咆哮と共にカリバーはプリミティブドラゴンに姿を変えた。

そして、闇黒剣月闇を抜刀、無銘剣虚無との二刀流で調と切歌を攻撃したプレラーティに一心不乱に突っ込み、無銘剣虚無で一撃を与える。

 

「ぬぅッ!」

 

カリバーの一撃を受けたプレラーティは地面を転がるも、

すぐに体制を立て直し、剣玉をカリバー向けて叩きつけようとするが、それをジャンプ台にして飛び越え、左手の闇黒剣月闇を逆さまに持って鈍器の様に頭を殴りつけた後、無銘剣虚無で追撃に斬り裂く。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

「隼人さんッ!」

 

「余所見をするなッ!」

 

カリバーに気を取られた響にサンジェルマンが発砲し、響が弾丸を避ける。

 

「明日の為に、私の銃弾は躊躇わないわ。」

 

「何故…!どうして!?」

 

「分かるまい…だが、それこそがバラルの呪詛!人を支配する軛…!」

 

サンジェルマンの脳裏によぎる衰弱死した母の亡骸。全てはバラルの呪詛を解き放つ為。

 

「だとしても!人の手は誰かを傷つけるのではなく、取り合う為に!」

 

響の言葉に反応して睨みつけるサンジェルマン。

 

「手を取り合うだと!? 謂れなき理由に踏み躙られた事のない者が言う事だ!」

 

サンジェルマンはスペルキャスターから狼の様なエネルギーを放つ。

 

「言ってる事、全然分かりませんッ!」

 

「何ッ!?」

 

響は右腕のギアを大型化し、そのエネルギーを拳で打ち消した。これにはサンジェルマンも驚き、その衝撃で後退りする。煙が晴れると、響のナックルガードが目と鼻の先までで止まっていた。

 

「だとしても…あなたの想い、私にもきっと理解出来る。」

 

サンジェルマンと同じ迫害されて踏み躙られた過去。忘れる事の出来ない心の闇。だからこそ解り合いたい。

 

「今日の誰かを踏み躙るやり方では、明日の誰も踏み躙られない世界なんて創れませんッ!」

 

「お前…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぐぁぁぁッ!!」」

 

「ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

その頃、カリオストロとプレラーティはカリバーの猛攻に押される中、クリスがカリオストロ向けてガトリングを放つと、水のバリアで弾丸を弾き、むず痒いわよとお返しに光線を放つ。

だが、カリバーは装甲に当たろうがお構い無しに突っ込み、カリオストロを何度も殴りつける。

光線がクリスに当たる直前、マリアがバリアを張ってクリスを守る。しかし、跳ね返した光線が響とサンジェルマンに向かってくる。その時、響が思いもよらない行動に出た。

 

「こっち!」

 

何と、サンジェルマンを連れて共に流れ弾をかわしたのだ。どうして敵である自分とかわすなんて。立ち上がりながらも理解が出来なかった。

 

「…私達は共に天を戴けないはず…!」

 

「くぅ…だとしても…です…」

 

「思い上がるなッ!明日を拓く手は、いつだって怒りに握った拳だけだ!」

 

響の手を払い除けるサンジェルマン。すると、大きな爆発と共にカリオストロとプレラーティがサンジェルマンの方へ吹き飛ばされる。

 

「カリオストロ!プレラーティ!」

 

飛んできた方向には哀しみ、怒り狂うカリバーが。

 

「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

怒りと哀しみの咆哮と共に無銘剣虚無のグリップでプリミティブドラゴンのページを1回押す。

 

【グラップ必殺読破!】

 

カリバーの身体から青黒く禍々しいオーラと共に闇黒剣月闇と無銘剣虚無の刀身にエネルギーが纏う。そして闇黒剣月闇のグリップエンドで邪剣カリバードライバーのボタンを押す。

 

【クラッシュ必殺斬り!】

 

「グゥゥゥゥ…!ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

闇黒剣月闇と無銘剣虚無から放たれた巨大な斬撃波が3人に直撃し、その余波で響達が怯む。

 

「「「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」」

 

直撃を受けた3人は大きく吹き飛ばされ、身体に稲妻が走る。

 

「これ以上の戦闘は無意味だ…!預けるぞ!カリバー、シンフォギア!」

 

「健全な判断なワケダ…!」

 

「そうね…!」

 

フラフラになりながらも3人はこれ以上の戦いは無意味と判断、テレポートジェムで姿を消した。しかし、装者達の戦いはまだ終わらない。

 

「隼人さん…!」

 

戦う獲物がいなくなった獣の如く響達を見つけると、一心不乱に襲いかかり、攻撃を仕掛けてくる。

 

「隼人さん!目を覚まして下さい!」

 

響の叫びも虚しく、ただひたすら本能のままに荒れ狂う。

 

「くっ…上條を止めるぞ!」

 

「ええ!」

 

まず、翼がカリバーに向けて影縫いを放って動きを封じると、今度はプリミティブドラゴンからボイドタロンを放ち攻撃しようとするがマリアが蛇腹剣で縛り付け、クリス、調と切歌が引きずられない様にマリアの身体を押さえる。そこへ響と翼が向かい、翼が左腕を押さえ込み、響が右手を両手で掴んだ。その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!! ここは…!?」

 

響の意識は、カリバーの中に入った。辺りは真っ暗闇。すると…

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

ボイドタロンに縛られて、身体に激痛と稲妻が走る隼人の姿が見えた。

 

「隼人さん!」

 

響が向かおうとすると、辺りから紫色のオーラが響を取り込もうとする。

これは一体何なのか。彼の心の闇の中なのか。そう考えていると、すぐに響の意識は元に戻る。

すると、響の両手が光り出す。前と同じ暴走が止まった時と全く同じ光景。

 

「グォォォォ…!? ガァァァ…! グァァァァァァ…!!」

 

苦しそうな声と共にカリバーの変身が解け、徐々にカリバーから隼人の姿に戻っていく。そして、膝を突き、掌を地面に付いた。

 

「隼人さん…!」

 

「治ったか…しかし、一体どうして…?」

 

何故響が手を掴んだ時、暴走が治ったのか。あれは一体何なのか翼達は全く分からなかった。そこへクリス達もやって来る。そして隼人が闇黒剣月闇と無銘剣虚無を支えに立ち上がり、ゆっくり顔を上げると…

 

「隼人…さん…?」

 

「か…上條…!?」

 

彼の姿に装者達は驚いた。服装は上は紫のTシャツにズボンはベージュの夏用ズボン、靴は黒いスニーカーだ。しかし、これはどうでもいい。彼女達が驚いたのは彼の顔だ。

 

「………。」

 

髪はボサボサ、顔面は蒼白、瞳に光は無く、死んだ魚の様な目に、目の下にはクマが出来ており、まるで廃人の様な容姿だ。

 

「どうしたんだよあいつ…!?」

 

「一体何があったの…!?」

 

「「…………!!」」

 

彼をS.O.N.G.で保護してから数日見ないうちに変わった彼の顔。調と切歌には刺激が強く、一体何があったのか全く分からなかった。

 

「お前達には関係ない…」

 

淡々と暗く低い声で言うと、背を向けてその場を去る。すると…

 

「隼人さん!待って下さい!お願いです!私達に力を貸して下さい!」

 

「おい!あの時お前の言った通りノイズが分裂したのを見た!闇黒剣月闇の未来予知じゃねぇのか!?」

 

「上條、お前の力があれば、奴等が起こす未来の災いを未然に防ぐ事が出来る!私達に力を貸してくれ!」

 

響と翼とクリスが、隼人の持つ闇黒剣月闇の力があれば、パヴァリア光明結社が起こす未来の災いを未然に防ぐ事が出来るといい、力を貸して欲しいと頼む。しかし…

 

「それは出来ない…」

 

振り返り、協力の申し出を断った。

 

「どうしてですか!?」

 

「俺は…未来を見た…俺が世界を滅ぼす未来を…」

 

「えっ…?」

 

「どういう事…?」

 

隼人が見た自分が世界を滅ぼす未来とは一体何なのか。それが今、明らかとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人がS.O.N.G.に保護され、協力を拒否して帰宅した時、隼人にある未来が見えていた。

それは、響達と手を繋ぐ…すなわち、仲間になったらという所から始まった。彼の加入に皆が歓迎してくれた。響は勿論、翼達も歓迎してくれた。

しかし、それが滅亡への序章だった。

 

 

場面は変わり、廃墟と化し変わり果てた東京。そこでは、カリバーと装者達が敵と戦っている。

彼等はカリバーの持つ闇黒剣月闇と無銘剣虚無、そしてワンダーライドブックを狙う者達だ。倒しても倒しても現れる。

そんな中、弦十郎を初めとしたS.O.N.G.のメンバーや民間人が犠牲になり、次々と装者達も命を落としていく。

 

『何だよこれ…!』

 

今見えている未来に恐怖に満ちた表情を浮かべる隼人。だが、それに追い討ちをかける様に、大切な存在と瓜二つの響も命を落としてしまう。響達に駆け寄るカリバー。彼の中に哀しみが溢れ出す。

 

『あぁ…!あぁぁ…!!』

 

そして装者達や民間人の亡骸で膝を突くカリバーに敵である兵士や錬金術師達が口を開く。

 

 

『大人しく渡していれば良かったのに。』

 

『お前が大人しく渡さなかったせいで、余計な犠牲が出たんだぞ?』

 

『つまり、こいつらが死んだのはお前のせいだ!』 

 

カリバーを嘲笑う様に刺さる敵達の言葉。自分達が狙って戦いを起こし、響達や民間人を殺した事を棚に上げ、カリバーのせいにする敵達。

彼等に対する怒りが滾る。それだけじゃない。これまで守ってきた民間人からは…

 

『化け物め!お前のせいで息子が死んだ!』

 

『私達の平和な世界を返して!』

 

『お前なんかいなければ良かったんだ!』

 

掌を返した様な言葉だった。守ってきた民間人からは裏切られ化け物扱い。

仲間を奪った敵への怒りと響達を失い、民間人からも裏切られた哀しみがカリバーの中に込み上げてくる。そしてその怒りと哀しみは、原初の竜を呼び覚ます。

 

『ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!』

 

哀しみの咆哮と共にカリバーはプリミティブドラゴンへと変わり、敵達に飛び掛かり、手にした闇黒剣月闇と無銘剣虚無で斬り裂く。

兵士や錬金術師は次々に八つ裂きにされ、2本の聖剣とカリバーを彼らの血が紅に染め上げる。

それだけじゃない。自分を化け物呼ばわりした民間人達にも牙を剥き、血祭りにする。

 

『やめろッ!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』

 

いくらやめろと隼人が叫んでも、これは未来の自分。止められないのだ。

そして、闇黒剣月闇と無銘剣虚無の力で世界が暗闇に包まれ、虚無と化す。

気がつけば世界は滅んでいた。自分の目の前にあるのは変わり果てた東京と、あたりを埋め尽くす老若男女の民間人や兵士や錬金術師、響達装者や弦十郎や緒川をはじめとしたS.O.N.G.のメンバー、響の父 洸と母と祖母や陽だまりである未来やクラスメートの板場、寺尾、安藤の亡骸だ。

誰もいなくなった世界で血に染まった骸骨竜は2本の聖剣を手にまるで誰かを探す様に彷徨い続けた。

 

『これが…!未来なのか…!? 』

 

しかし、隼人に絶望する暇を与える事なく闇黒剣月闇は未来を見せる。

それもまた、響達と手を繋げば、自分の力を狙う敵との戦いで響達や大勢の民間人が犠牲になり、プリミティブドラゴンとなった自分が世界を滅ぼす未来だった。

 

『あぁ……!はぁ…!はぁ…!』

 

そしてまた、同じ結末の未来が見える。

 

『あぁぁぁぁぁ…!!』

 

そしてまた。

 

『やめろ…!やめろ…!』

 

そしてまた。

 

『やめてくれ……!!』

 

そしてまた。

 

『うぅ……あぁぁぁぁぁ…!!』

 

何度も。何度も。同じ結末。

何十、何百、何千、何万通り全てが、自分が世界を滅ぼしてしまう未来だったのだ。  

 

『うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…未来が…?」

 

「私達が…死ぬ未来…!?」

 

隼人の見た未来の話に装者達は言葉が出なかった。自分達が死んで、今まで一緒に戦ってきた隼人が世界を滅ぼしてしまうなんて考えられなかった。

 

「お前達の何気ない日常も…平和も…大切な人も…みんな俺が壊してしまうんだ…」

 

「そ、そんな事ないですよ!まだ決まった訳じゃ──」

 

「俺は全ての可能性の未来を見た…!行き着く先は絶望と滅亡だ…!」

 

隼人の口から全ての可能性の未来と聞いて驚く装者達。全てを破壊し、行き着く先は破滅、どうあがいても絶望、そして世界は滅亡する。結論は1つ。誰とも手を繋がない。

 

「そんなの…やってみなければ分かりませんよ!未来は変えられます!…っ!?」

     「やってみなければ分かりませんよ!未来は変えられます!私なら暴走もさっきみたいに止められます!……だろ?この未来も見た…いくつもの未来を見た…!でも、希望なんて1つも無かった…!!」

 

響は自分が言おうとした台詞が隼人が重ねて言った言葉と全く同じ事に驚いた。まさか本当に未来を見たなんて。翼達も驚きを隠せなかった。プリミティブドラゴンの事も頭からすっ飛んでしまう。

 

「闇黒剣から聞こえるんだよ…「人殺しで化け物のお前が、今更誰かと手を繋ぐなんて許される訳がない」ってな…」

 

「お前、ソーニャに言われた事引きずってたのかよ!?」

 

隼人の化け物という発言にクリスはまさか引きずっていたなんて思ってもいなかった。自分の為に憎まれ役を買った彼が自分と同じ過去を引きずっていた事に。

 

「本当の事だ…俺にお似合いの言葉だ…」

 

「そんな事ないデスよ!」

 

「あなたのおかげで救われた人が沢山いるのに!」

 

「そう言っても…未来は変わらない…」

 

調と切歌がフォローするも、彼にとってはその発言も信じられなくなっていた。自分のせいで死んでしまう装者達に言われても、それもどうでも良くなっていた。

 

「あなた…まだ人を信じられないの!? 」

 

「もう信じる信じられないの問題じゃない…!俺がお前達と手を繋げば…必ず俺が見た未来の通りになる…世界は滅びる…だから…!俺達は手を取り合ってはいけない!繋がっては…いけない…」

 

幾つもの未来を見た隼人の精神は擦り切れ、涙が流れていた。そのせいで支離滅裂な言動に聞こえてしまうが、何故か本当の様に聞こえてしまう。

 

「隼人さん…」

 

「………これで話は終わりだ。」

 

最後にそう言うと、隼人は闇黒剣月闇で空間を斬り裂き、闇の中へ消えていった。6人はただ隼人が消えた場所を見つめる事しか出来なかった。

 

「あれが…私達が今まで見てきた冷酷無情な闇の剣士なのか…?」

 

「あいつ…泣いていた…」

 

「上條隼人は、カリバーという仮面で涙を隠して戦ってたのね…」

 

「私達が死んで…世界が滅ぶ未来…」

 

「そんな未来…悲しすぎるデスよ…」

 

(隼人さん…どうして泣いているんですか…?私はただ…隼人さんと手を取り合いたい…繋がりたい…ただそれだけなのに…どうして1人で抱え込むんですか…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パヴァリア光明結社の目的は、月遺跡の掌握…」

 

「その為に必要とされる、通称「神の力」生命エネルギーより錬成しようとしていると…」

 

S.O.N.G.指令室では、モニターに映し出されたヨナルデパズトーリを見ながら、響達から聞いたサンジェルマン達の目的について話していた。

 

「仮にそうだとして…響君の一撃で分解するような規模ではいくまい。恐らくはもっと巨大で強大な…」

 

「その規模の生命エネルギー、一体どこからどうやって…」

 

「まさか、レイラインでは!?」

 

「何ッ!?」

 

友里は、そのエネルギーはキャロルが利用したレイラインからのものではないかと推測。そしてモニターに全国各地のレイラインの地図が表示される。

 

「キャロルが世界の分解解析に利用したレイライン…巡る知脈から、星の命をエネルギーと取り出す事が出来れば…」

 

「パヴァリア光明結社はチフォージュ・シャトーの建造に関わっていた。関連性は大いにありそうですよ。」

 

パヴァリア光明結社かキャロルの計画に携わっていたのならレイラインの利用も納得出来る。関連性は大いにあるだろう。

 

「取り急ぎ、神社本庁を通じて、各地のレイライン観測所の協力を抑ぎます。」

 

「うむ。後は、装者達の状況だな…LiNKERは問題なく作用したらしいが…それより気になるのは、隼人君…」

 

「響さん達から聞いた、闇黒剣月闇の力で彼が見た未来についてですが…」

 

「隼人君が仲間になれば、私達が犠牲になって…世界が滅ぶ未来…そんな未来が来ると…」

 

「しかも全ての可能性で同じ結末…どうあがいても絶望…」

 

響達から聞いた絶望しかない未来。それも自分達が犠牲になる未来。隼人が仲間になると、そんな未来が来るのかと弦十郎達が複雑な思いを抱いていた。

 

(隼人君…君は一体…何処に向かっているんだ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、病院服姿の調と切歌は、マリアと共にメディカルルームにいた。

 

「ごめんなさいデス…」

 

「マリアとエルフナインが、命を懸けてLiNKERを作ってくれたのに…」

 

調と切歌の口から出たのは謝罪の言葉だった。

 

「それは私も同じ…戦う事さえ出来ればどうにかなると思っていた。けど、甘かったわ。」

 

どうにかなると思っていたが、相手はそれ以上に格上。イグナイトも封じられて、思うようにいかない。

 

「上條隼人が見た…世界が滅ぶ未来…」

 

「そんな未来が本当に来るの…?」

 

「手を繋いだだけで、そんな未来になってしまうんデスか…?」

 

マリア達も隼人が見た未来について頭から離れないでいた。にわかには信じがたいが、闇黒剣月闇の災いの啓示を見せる力なら納得だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!何なんだよッ!」

 

悔しい気持ちで自販機を殴り付けるクリス。翼は窓を見つめ、響は俯いたままだ。

 

(私達に術は無いのか…? 上條…お前は何処に向かっているんだ…お前から聞いた未来が、本当に来るのか…?)

 

(サンジェルマンさんと手を取り合いたい…隼人さんを…助けたい…でも…どうすれば…いいの…? )

 

 

 

「賢者の石による抜剣封殺…その対策を急いで講じなければ…」

 

「エルフナイン君は?」

 

「無理は禁物と言っているのですが、ずっとラボに篭りっきりで…」

 

その頃、エルフナインは自身のラボで何やらノートに書いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。リディアンの寮にて。未来はビーフストロガノフを煮込んでいる中、響はノートにシャーペンを走らせていた。まだ終わっていないのだ。夏休みの宿題が。

 

「大丈夫と信じてたけど、ニュースでは詳しい事が流れないから心配だったんだよ?この位でいいかなー、じゃあ次は牛乳を入れて…」

 

「今日はいつかのリベンジ。あれからこっそり作り方を勉強してたんだから。」

 

「…未来」

「ん?」

 

「何かを手に入れたいと思ったら、他の何かを手放さなきゃいけないのかな? 全部何とかしたいって思うのは、わがままなのかな?」

 

何かを得る為には何かを捨てなければならないのか。何かを手放さずに全てを救うのは出来ないのか。そんな気持ちが芽生えていた。

 

「私…響のわがまま、好きだよ?」

 

(中学の頃、短距離走の記録に伸び悩んでた私にとって、周りはみんなライバルで…誰かを思いやる事なんて簡単には出来なかった。)

 

中学時代、陸上部だった未来の周りは誰もがライバルだった。帰り道、木に引っかかった風船を取ろうとしている響を見つける。

 

『もうちょっと…!』

 

『響!何してるの!?危ないよ!』

 

『へいき!へっちゃら!っ!あぁぁーッ!』

 

風船は取れたものの、響は木から落ちてしまった。子供達とその母親は礼を言いながら去っていった。

 

『大丈夫?』

 

『うん。泣いてる子がいたからさ。ちょっと頑張り過ぎちゃったよ。』

 

響の鞄には罵詈雑言の落書きが書かれていた。まだ、カリバーが動く前の事だった。そして思い浮かぶいじめ。それでも笑みを浮かべて響は歩いていく。

 

(本当は、誰よりも泣きたくて救ってもらいたいはずなのに…それでも、誰かの為に無理をする…誰かの背中なんて見たくなかったあの頃。でも、私の前を行く優しい背中だけは特別だった。誰かの前を走るのではなく、ずっと並んで歩いて行きたいと思ったあの日…そして私は中学卒業と同時に陸上部を辞めた。私の胸の内は、きっと誰にも打ち明けられないだろう…それでも想いをカタチにしたくて…いつか、ピアノを習いたいと思った…)

 

ビーフストロガノフを食べながら課題を進める響を見つめる未来。そして時刻は20時5分。

 

「ごちそうさまでした!」

 

「お粗末様でした。」

 

そして仲良く2人で食器を洗う。

 

「ねぇ響。」

 

「ん?」

 

「響が…響のままやりたい事がわがままなら、私は響のわがままを応援する。だから──」

 

「……」

 

「響のわがままはね、きっと困っている人に差し出された手なんだよ。」

 

「未来…ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、S.O.N.G.本部では、弦十郎がエルフナインのラボにて台車に山積みされた資料を持ってきていた。

 

「異端技術に関する、資料らしい資料は掻き集めたつもりだ。他に必要なものがあったら何でも言って欲しい。」

 

「はい。ありがとうございまっ!?」

 

突然、疲れが溜まってきたのかふらついて倒れてしまう。そんな中1冊の本を手にする。

 

「大丈夫か!?…根を詰めすぎちゃいないか?」

 

「ご、ごめんなさい…。でも…キャロルから貰った身体です。2人で1人。だから2人分頑張らないと…っ!?」

 

その時、手に取った小さな本のページに載っていた響の体内から出た鉱石の写真が目に入る。

 

「これは…!」

 

これが、全ての逆境を跳ね除ける鍵だとは、まだ誰も思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は誰とも手を繋げない…」

 

暗い部屋の中、隼人は虚な目と暗い表情でそう呟く。そしてそれに同調するかの様に闇黒剣月闇とプリミティブドラゴンが光り、再び見せられる世界が滅ぶ未来。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 




いかがだったでしょうか?隼人が見た未来。正解は「響と手を繋げば、カリバーの力を狙う者達との闘争の中、響達や大勢の民間人が犠牲になった事を自分のせいにされ、怒りと哀しみでプリミティブドラゴンとなった自分が世界を滅ぼす」というものでした。予想していた読者の皆様は当たりましたか? さて、隼人が「俺は誰とも手を繋げない病」にかかってしまいましたが、ここから彼はどんどん追い詰められて行きます。行き着く先は破滅か滅亡か。それとも───


今回はここまでです。感想お待ちしています。

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