本編も遂に80話まで来ました。このまま進めばプロローグから断章も含めて100話突破しますね。
サプライズにマリアが登場した翼の凱旋ライブにて、突如パヴァリア光明結社の残党の1人、ミラアルクが解き放ったアルカ・ノイズが襲来。
戦いの中、大勢の人間が犠牲になり更に目の前で幼い命が奪われ、更に会場は崩壊。かつて4年前に起きた惨劇の再来となった。
アメリカ ロスアラモス研究所にて。
灰化したアヌンナキの遺骸に付けられていた腕輪の起動実験が行われようとしていた。
(崩れ落ちた骸に用は無い。必要なのは、先史文明期の遺産であるこの腕輪…)
「起動実験の準備、完了しましたッ!」
「我が国の成り立ちは、人が神秘に満ちた時代からの独立に端を発している。終わらせるぞ神代ッ! 叡智の輝きで人の未来を照らすのはアメリカの使命なのだッ!」
研究室長が高らかに宣言する。しかしそれは新たな災いの始まりに過ぎなかった…
『ステージによって仕掛けられた爆発物の被害により、死傷者・行方不明者数は、既に1万6000人を超え、今後さらに増えると───』
朝、リディアンの寮にて昨日の惨劇の様子をニュースで未来が痛々しい思いで見ていたが、耐えられずに切ってしまう。
10万人の内の約8割は割はカリバーの助けもあり、脱出する事が出来た。しかし、我先に逃げようとして密になり纏めてアルカ・ノイズの餌食にされた者達、瓦礫の下敷きになった者や、ステージの崩落に巻き込まれ転落死した者、行方不明者等を合わせれば1万6000人を超え、今も海上保安庁や自衛隊による行方不明者の捜索が行われているという。
「うん……そうだよ。私は全然。へいき、へっちゃらッ! ホントだってば。また今度、アパートの方にも顔出すから、心配しないで。」
近くから、明るい響の声が聞こえる。誰かと通話しており、自分は大丈夫である事を伝え、電話を切った。
「おじさんとおばさん達、結局、まだ一緒には暮らしてないの?」
「時々一緒。だいたい別々って感じかな?」
電話の相手は父である洸だった。魔法少女事変の後、響の後押しもあり家族と再会し、少しずつだが関係を修復し時々実家に訪れるまで戻った。しかし、完全な修復には至らず洸はアパートで1人暮らしをしている。
「何年も放ったらかしにしてきたわかだまりは簡単にはなくならないし、お互い、上手く伝えられない想いもあるみたいだし……」
「うん、あるかもね……、上手く伝えられない想いって、誰にでも……」
心の中では伝えたい。でも、伝えられない想いは誰にだってある。
その頃、隼人は寝室で昨日の惨劇でもう少し早く未来が分かれば全員を救えたのではないかと考えていた。
(俺がもう少し未来予知を把握していれば、もっと被害は抑えられたはず…)
しかし、悔やんでも奪われた命はもう戻って来ない。
なら自分が今するべき事は、これ以上犠牲者を増やさない事だ。
そう考えていると、頭の中である事が引っかかった。
(奴の狙いは風鳴翼だと言っていた。俺の事は挨拶しに来たと…奴が俺でなく風鳴翼が狙いなら、直接狙うはずだ。ライブを襲撃する必要があったのか…? )
ミラアルクの狙いが翼なら、直接狙うはず。1万6000人を殺してまでする事なのか。考えられるとしたなら…
「……誰かに命令された?」
既にパヴァリア光明結社を統べるアダムはもういない。
だとしたら、何者かの手先となり足場を固めている。その可能性が高い。それが誰なのかはまだ分からない。思考を張り巡らせていると…
「うぅ……ッ! ハァ…ハァ…またか…ッ!」
再び頭痛と共に闇黒剣月闇の未来予知が発動。
啓示された未来は、昨日と同じ「何故か翼が裏切り、訃堂が災いを起こす未来」と、「ファウストローブを纏う未来に似た人物が災いを起こす未来」だ。
「何故風鳴翼が敵対している……ッ! こいつらは誰なんだ……ッ!? 1人は…小日向未来に似ている……ッ!」
何故翼が敵対しているのか。そして災いを起こす訃堂。しかし、隼人は名前だけ知っている状態であり、未来に映る彼がまだ訃堂である事を知らない。
もう1人は小日向未来に似ている。これが一体何を表しているのか…?
そして隼人が未来予知で顔を歪めているのを尻目に背後で闇黒剣月闇が嬉々と怪しく光り、無銘剣虚無、プリミティブドラゴンにオムニフォースも便乗して光っていた。
場所は変わり、響はS.O.N.G.本部のメディカルルームへ足を運んだ。
昨日の戦いで疲労した翼とマリアへ会いに来たのだ。
「マリアさんッ! もういいんですかッ!?」
メディカルルームには、病人姿のマリアと、クリス、調と切歌、そして緒川がいた。
「私はピンシャン。それよりも……」
ウインクをするマリアだが、すぐに心配そうな顔をする。
「翼さん……」
あの惨劇の後、マリアと共に検査を受けたのだが一向に目が覚めないのだ。
「脳波に乱れがあるものの、身体機能に異常は見られません。ですが……」
「悪夢を超える現実に、まるで意識が目覚める事を拒んでいるみたいだ。」
「無理もないですッ! だってッ! あんな……」
「……」
目の前で助けられるはずの幼い命をあと1歩の所で助けられずに、闘争の中、命を奪ったミラアルクの行動に憤怒、憎悪を激らせ、殺意に突き動かされたなら同然だろう。
マリアも静かに怒りを燃やしている。
「解体された結社残党の仕業……というには規模も被害も大きくないかな?」
調が、ミラアルクが引き起こしたこの惨劇が1人で引き起こした割には規模と被害が大きいのではないかと緒川に述べた。
確かに残党1人にしては大きいのが不自然だ。
「何者かの手引き……例えば強力な支援組織の可能性も。あるいは…」
「恐らく、前者の可能性が大きいだろう。」
突然声が聞こえてきた。その方向を一同が見ると隼人がいつのまにかいたのだ。
「隼人さん…!」
「昨日は協力していただき、ありがとうございました。」
緒川が隼人に礼の言葉を言う。
「でも、10万人の内の1万6000人は助けられなかった…もう少し早くを未来が分かっていたら全員救えたはずなんだがな…」
「あなたのせいじゃないわ。あなたが来てなかったら全員、或いは7万人が犠牲になってたんだもの。」
惨劇の後、隼人から未来を聞いたマリアがフォローする。
「それより、何者かの手引きが可能性があるってどういう事だよ?」
「あの錬金術師、風鳴翼が狙いだと言っていた。俺の事は挨拶に来たと言いながらな。だがあの惨劇を起こしてまで狙う必要だったのかが腑に落ちない。本当に風鳴翼が狙いなら、街にアルカ・ノイズを解き放ち誘い出すか、直接狙いに来るはずだ。」
「言われてみれば…それなら何者かが命令したって事になる…」
「そもそも奴にとってはする必要はなかったが、支援している何者かに命令されて実行したと見ていいだろう。結社を統べるアダム・ヴァイスハウプトがいない今、遺骸を狙って現れた奴も命令した奴の手先になって足場を固めている可能性がある。」
ミラアルクにとって本来必要ないが、何者かによって命令され実行したと隼人は推測した。
「その誰かって、未来予知で分からないデスか?」
「そこまでは分からなかった。昨日の事もあって頭の中の整理がつかない。」
未来の災いを見続けている隼人は昨日の事やかき消する様に啓示された2つの未来を見ていたのか思い詰めた表情をしている。
「隼人さんも…大変ですね…」
「こうしている間にまた未来予知が発動するかもしれない。そろそろ俺は戻る。」
そう言うと隼人はブックゲートを開いて戻っていった。
湾岸埠頭にて。ミラアルクとエルザが2人の黒服の男性からアタッシュケースを受け取り、中身を確認している。
「あざまーすッ!」
「確かに受け取ったであります。受領のサインは必要でありますか?」
「い、いや、上からの指示はここまでだ。俺達もすぐに戻らなければ…」
何やらこの2人はミラアルクとエルザの事を何やら知っている様子だ。
「別に生まれた時からの怪物って訳じゃないんだゼ? 取って食ったりするもんか。」
顎ピースをしながら2人を食わないと言うミラアルク。発言から2人は人間では無いという事になるが…
「こんな身体でも、私めらは人間。過度に怯える必要…」
「ッ! ガルルルルル……ッ!」
突如、エルザの髪の狼のような耳が逆立ち、獣の様な唸り声をあげ、コンテナの方を見る。
「ッ!? モロバレッ! 逃げるべッ!」
隠れてその様子を見ていた数人の暴走族の気配を察知していたのだ。
すぐに逃げ出す暴走族達。
「不味いッ! 見られたかッ!早く連中を…ッ!」
すると、ミラアルクとエルザがいつの間にかいなくなっていた。
「はッ……行ったか……」
「どうせ奴等は消耗品。尻拭いくらいには役立ってもらおう…」
やはり彼らは、何か繋がりがある様だ。そして向かうミラアルクとエルザの手には、アルカ・ノイズを召喚する結晶が握られていた。
「奴等か……ッ!」
ガトライクフォンでアルカ・ノイズの反応を検知した隼人も闇黒剣月闇を手にすると…
「うぅ……ッ! こんな時に……ッ!」
頭痛と共に再び未来予知が発動。啓示されるのはさっきと同じ未来。
しかし、こんな事で行かない訳にはいかない。頭を押さえながらも反応の場所へ向かうのだった。
同時にS.O.N.G.指令室にもアルカ・ノイズの反応を検知して警報が鳴り響いている。
そこへ、マリア、調、切歌が指令室に駆け込んで来る。
「状況はどうなってるデスかッ!?」
「湾岸埠頭付近に、アルカ・ノイズの反応を検知ッ! 」
「防犯カメラからの映像に、パヴァリア光明結社の残党も確認していますッ!」
湾岸埠頭には、セグウェイ型と飛行型の個体に空中にミラアルクと、地上にエルザが逃げる暴走族を追いかけている。
そして1体が急接近し、2人を殺害。残った総長と思われる男が必死に逃げ回る。
「人的被害、なおも拡大中ッ!」
「急がないとッ!」
湾岸埠頭上空には、響とクリスを乗せたヘリが向かっていた。
「既に現場には、響君とクリス君を向かわせているッ!」
「2人とも…頼んだわよ…!」
今戦えないマリアに出来るのは、2人の無事を祈る事だけだった。
「うおおおおおおぁぁぁぁぁッ!」
ミラアルクとエルザ、アルカ・ノイズの群れから必死に逃げ回る総長。しかし、運悪く転倒してしまう。その様子をミラアルクは顎ピースをしながら笑みを浮かべた。
「いっててててて……ッ!?」
幸い命に別状は無いものの、目の前にミラアルクとエルザ、アルカ・ノイズの群れが総長を追い詰め、袋の鼠と化していた。
「お前らが仲間を……ッ!」
「気合の入った運転技術でありました。」
「だけど、赤旗振らせてもらうゼ?」
「嫌だぁぁッ! 神様、天使様ァッ!」
まさに蛇に睨まれた蛙。万事休す。ここで目に見えているのは死。死にたく無い。神様と天使に助けを求めようと叫ぶ総長。その時…
【Get go under conquer than get keen.(月光!暗黒!斬撃!) ジャアクドラゴン!】
「Balwisyall nescell gungnir tron」
「Killter Ichaival tron」
突如、近くから邪悪な変身音と、曇り空から美しい聖詠が聞こえてきた。
先手必勝、クリスがギアを纏い歌いながら空中で2丁の短銃でアルカ・ノイズを撃ち抜き、カリバーが闇黒剣月闇で斬り裂く。
着地し、短銃で撃ち抜きながらアーマーからリロードする。
後ろからエルザのテール・アタッチメントが迫るが、カリバーがすんでの所で弾き、エルザは悔しそうに睨みつけ、クリスは空中へ大きく跳躍しながら空中から3体を撃ち抜き着地した。
そこへ、再び2体のアルカ・ノイズがクリスに迫るがカリバーが斬り裂き、響が蹴りで粉微塵にした。
「カリバーだッ!天使だッ! ここは地獄で極楽だッ!」
「死にたく無ければとっとと失せろッ!」
カリバーの言葉を聞かずに涙を流し鼻を垂らして助かったと安心する総長の後ろに2体のアルカ・ノイズが迫る。
「ハァッ!」
「フンッ!」
迫る直前にカリバーと響がアルカ・ノイズを斬り伏せ、倒した。
「そういうのいいからッ!早く逃げてッ!」
「いいから来いッ!」
「うおおおぁぁぁッ!?」
暴走族の総長はカリバーに胸ぐらを掴まれ遠くへと強引に連れて行かれた。
「邪魔はさせないぜッ!」
カリバーが響から離れた後にミラアルクが空中から翼を脚に巻き付け響に飛び蹴りを喰らわせるが、響は受け止めた。
「カリバー、イチイバル、ガングニール、1名の救助に成功ッ!」
「付近住民の避難を急ぎますッ!」
指令室でも、市民の避難をさせるべく藤尭、友里をはじめオペレーター達も動き、弦十郎達もスクリーンを見ている。
ミラアルクは翼を両腕に絡ませて大型化し、真正面から力で迫り、響も迎え撃つ。お互いの力はほぼ互角ながらもミラアルクはニヤリと笑う。
(くッ…正面きっての力比べ……、こんな時…)
イグナイトがあれば押し返せるのにと思ったその時…
「分かるゼ? 今、イグナイトモジュールがあれば……って、考えてるんだろう? 決戦機能を失って、戦力ダウンしたと調べはついているんだゼッ!」
ミラアルクがジリジリと押していく。イグナイトはアダムとの戦いで失われた。敵が何故それを知っているのか。
「だからって、負ける訳にはッ!」
負けじと響もじりじりと押し返す。その時、再びミラアルクの両目にステンドグラスの様な模様が浮かび上がる。
「ッ!?」
一瞬何が起きたか分からなくなった響だが、ミラアルクの腕を振り払う。その時、そこへカリバーが乱入し、エネルギーを纏わせた闇黒剣月闇でミラアルクを斬りあげる。咄嗟に右腕で防ぐミラアルクだが、痛みに顔を歪ませ、空中へ翼を広げて浮かんだ。
「な、何ッ!? 今のは……」
「流石に虚をつかないと目眩し程度か……しかもあいつの目は隠れてやがる……ッ! エルザッ!ヴァネッサが戻るまでは無茶は禁物ッ!アジトで落ち合うゼッ!」
部が悪いと判断したヴァネッサはクリスの弓の弾幕を避けていたエルザに撤退する事を伝える。
「ガンスッ!ここはひとまず撤退でありますッ!」
エルザはテレポートジェムを飛び出すが、クリスの放った矢に砕かれる。
「エルザッ!」
ミラアルクは腕に翼を巻き付けて大型化し、壁を殴りつけクリスに向けて瓦礫を放ち視界を遮り、カリバーに向けて置き土産に巨大アルカ・ノイズを放った。
「こしゃくな…ッ!」
「クリスちゃんッ!」
カリバーはジャオウドラゴンを取り出して起動、クリスは響に向かって走り出し、響の腕をジャンプ台にして大きく飛び上がる。
【ジャオウドラゴン!】
【ジャオウリード!】
【闇黒剣月闇!】
【ジャオウドラゴン!誰も逃れられない…】
ジャオウドラゴンと4匹の黄金の竜に包まれカリバーはジャオウドラゴンになり、クリスはアームドギアをスナイパーライフルに変化させ、ターゲティングを開始する。
【ジャオウ必殺読破!】
カリバーはジャオウドラゴンのページを閉じて、邪剣カリバードライバーのボタンを押して再び開き、クリスはターゲティングで逃走するエルザを捕捉した。
「くらいやがれぇぇぇぇぇぇッ!」
【ジャオウ必殺撃!】
巨大アルカ・ノイズに向けてカリバーが放つ巨大な斬撃波が放たれ、同時にエルザに向けてRED HOT BLAZEが放たれた。
「これで話は終わりだ。」
【You are over.】
斬り裂かれた巨大アルカ・ノイズはカリバーの宣告と共に大爆発を起こした。
「ッ!!」
クリスがエルザに向けて放たれた一撃は周囲を木っ端微塵に吹き飛ばし、大爆発が起きた
しかし、その場所にエルザはおらず、焦土となった場所に残されていたのは中身が見えているボロボロになったアタッシュケースだけだった。
そこにカリバーが歩み寄り、闇黒剣月闇の切先でケース開け、中身を見る。
(これは……輸血パック…?)
何故彼らが輸血パックを持っているのか、カリバーは疑問を持つのだった。
夕方、S.O.N.G.にて回収したアタッシュケースの解析が行われて、指令室に全員が集合していた。
「回収したアタッシュケースの解析完了。」
「結果をモニターに回します。」
映し出されたのは、血が充填された輸血パックと、アタッシュケースに入れられた複数の同じ物だった。
「まさかの……ケチャップ……?」
「この季節にバーベキューパーティーとは、敵もさる者ひっかく者デス…」
調が思わずケチャップではないかというが、そうでは無い。
「あれは、全血製剤。成分輸血が主流となった昨今、あまりお目にかからなくなっている代物だ。」
「それ以上に気になるのが、その種類です。Rhソイル式……140万人に1人とされる稀血と判明しています。」
そんな希少な血液を何故パヴァリア光明結社の残党が所持しているのか。謎が深まる。彼女達の目的は一体何なのか。
「まさか、輸血を必要としているとでもいうの……?」
そこへ、指令室に緒川が入ってきた。あの後暴走族の総長へ聞き込みを行っていたのだ。
「被害者からの聞き取り終わりました。埠頭にて、彼女達と黒ずくめの男2人を目撃し、麻薬の取引現場だと思った様です。」
ミラアルクとエルザと共にいた黒ずくめの男2人…これで疑念が確信へと変わる。
「つまり…隼人君の言う通り、パヴァリア光明結社の残党を支援している者がいるということか。」
彼女らに協力者がいる。これまでの出来事でそれが誰なのか推測するなら…
「考えられるのは、これまで幾度となく干渉してきた米国政府…」
「先だっての反応兵器発射に、これまでの行為を全世界に公開されて以来、冷え切った両国の関係を改善するために、月遺跡の共同調査計画……疑い始めたら、それすらも隠れ蓑に思えてきてしまうわね。」
候補として挙げられるのは米国政府。これまで戦いでも幾度となく干渉してきたが、反応兵器発射や隼人によるこれまでの行為を全世界に公開されて以来、日米の関係は冷え切っており、それが関係しているのではないかと思うが、政府の人間は一新されている為、考えにくい。すると、突然モニターに炎上するアメリカのロスアラモス研究所が映し出される。
「米国、ロスアラモス研究所が、パヴァリア光明結社の残党と思わしき敵性体に襲撃されたとの報せですッ!」
「何だとッ!」
モニターには燃え盛る研究所の背後に襲撃したと思う女性…ヴァネッサが映し出され、防犯カメラに気づいたのか、笑みを浮かべた。
「フフ…」
その夜、廃屋のミラアルク達のアジトにて、息を荒げベッドに横になるエルザにミラアルクが寄り添っていた。
「はぁ…はぁ…私めの不始末であります。あの時、死んでもケースを手放さなければ…」
「何言ってんだ。死んだら元も子も無いんだゼ?」
「ですが、血液を必要としているのは、ミラアルクだって同じ事てあります……」
やはり彼女達は、血液を必要としている。
「戦わなければ、しばらく力ももつはずだ。ヴァネッサが戻るまでには何とかしてみせるゼ。」
「……」
(ウチはどんな手を使ってでも……エルザとヴァネッサを……)
エルザの頭を撫でるミラアルク。何故彼女達は血液を必要としているのか。あらゆる手段を用いて何をしようというのか。
翌日、S.O.N.G.指令室にアメリカからの入電から1日が経った頃、弦十郎は八紘と通信でノーブルレッドの動きについて話し合っていた。
「昨日の入電からまるで1日……目立った動きは無さそうだが、兄貴はどう見ている?」
『ロスアラモス研究所は、米国の先端技術の発信打点。同時に、異端技術の研究拠点でもある。米国を一連の事件の黒幕と想像するにはいささか無理がありそうだ。』
八紘もアメリカの仕業とは思えない様だ。だとしたら、一体誰の手引きなのか。
「米国の、異端技術って…」
「あぁ。」
その時、マリア、調、切歌がハッとする。アメリカ、そして異端技術…当てはまるのは1つ。
「断言は出来ないが、ロスアラモス研究所は、かつてF.I.S.が所在したと目されている所だ。」
3人にとっての因縁の場所。まさかかつて所属していた者たちが支援しているのではないかとマリアは考えていた。
同じ頃、護衛に囲まれて八紘は車の後部座席に乗り込みながら弦十郎と通信していた。
「かつての新エネルギー、原子力の他、エシュロンといった先端技術も、ロスアラモスでの研究で実現したと聞いている。」
「そんな所を襲ったって事は、やっぱり何か大事なモノを狙ってデスか?」
「伝えられている情報では、さしたる力も無いと思われる幾つかの聖遺物……そして…」
「これってッ! やっぱそう来るのかッ!」
モニターに映し出されてたのは、遺骸に付けられていた腕輪。彼女らがロスアラモスを襲撃した理由ならこれなら納得だ。
『極冠にて回収された先史文明期の遺産……腕輪に刻まれた紋章を、楔形文字に照らし合わせるとシェム・ハと解読出来る箇所があるそうだ。』
「シェム・ハ…シェム・ハの腕輪…」
『事件解決に向け、引き続き、米国政府には協力を要請していく。これが私の戦いだ。』
「恩に着る、八紘兄貴…」
弦十郎は八紘に感謝の言葉を述べながら通信を終了した。
「シェム・の腕輪…アメリカの仕業じゃ無いなら…」
その様子をシャボン玉を通して寝室で見ていた隼人は、ノーブルレッドの目的はこのシェム・ハの腕輪で何かをしでかすのではないかと考えていた。だが、それなら何故エルザが輸血パックを持っていたのか。何故ミラアルクは翼が狙いと言っていたのか。
未来予知で見たあの2人が関係しているのでは無いか考える。
八紘との通信を終えた時、指令室にある人物が入ってくる。それは…
「「「……!」」」
「「あぁ…!」」
安心感笑みと声を出す5人。入って来たのは翼と、そして緒川だ。
「もう大丈夫なんですね、翼さんッ!」
「心配をかけてすまない。だが、もう大丈夫だ。」
「ッ!」
その時、シャボン玉に映る翼を見てある光景が脳裏に浮かんだ。それは、未来予知で見た翼が何故か敵対しているという事だ。
「一体どういう事なんだ…まさか…」
未来予知で見たあの2人が関係しているんじゃないかと呟こうとしたその時…
「うぅ……ッ! またか……ッ!何度も何度も……ッ!」
頭痛と共に闇黒剣月闇の未来予知が発動。またしてもあの2つの未来が啓示された。一体どういう事なのか。最近頻繁に未来予知が発動する。
「ハァ……ハァ……どうなってるんだ…ッ!」
何故彼にこの未来が何度も見せるのか。
それは、何やら嬉しそうで妖しく光る闇黒剣月闇だけが知っている。
その日の夕方、調と切歌は公園のブランコに揺られながら何やら黄昏ていた。
「翼さん、とても大丈夫には見えなかったね…」
「復活の直後に、あのどんでん返しは無いデスよ…」
一体何があったのか? 実は翼が指令室に入って来た時に起こっていた。それは…
『心配をかけてすまない。だが、もう大丈夫だ。』
翼がそう言ったその時、突然指令室の照明が消え、暗闇が支配する。
『大丈夫とは、何を指してのことであるか。』
声と共に画面に映し出されたのは、鎌倉から入電してきた訃堂だ。
『───ッ!お爺様…』
『ッ! お爺様…? 未来で見た…こいつが風鳴訃堂かッ!?』
シャボン玉に映るこの白髪の老人…隼人は初めて彼が翼の祖父、風鳴訃堂である事を知った。
『夷狄による国土蹂躙を許してしまった先の一件、忘れたとは言わせぬぞ翼ッ!』
『無論、忘れてはいません。あの惨劇は、忘れてはならぬ光景であり、私が背負うべき宿業そのもの…』
『真の防人足り得ぬお前に、全ての命を護ることなど、夢のまた夢と覚えるがいいッ!』
『ッ! 今の私では…護れない…?』
訃堂に守れないと言われ、翼は今の自分では人を護る事は出来ないのではないかと思い始めた。
『歌で世界は護れないということだッ!』
『ッ!? 歌で……世界を……?』
『お前にまだ、防人の血が流れている事を期待しておるぞ…』
その言葉を最後に訃堂は通信を切った。
悔しい気持ちで握り拳を作る翼。その後ろ姿を響は見ていた。
『翼さん…』
『案ずるな立花。可愛げのない剣が、簡単に折れたりするものか…』
立ち直った直後に自身の好きな歌では世界を護れないと否定され、また無力感が翼の中に生まれ始めた。
「あらよっとッ!」
夕暮れ時、ブランコから元気よく体操選手の様に切歌は勢いよくジャンプし、着地した。
「暁選手、見事な着地で金メダルデスッ!」
「…いまだ見えない、敵の正体…」
「……それにしても、血を欲しがるなんて今度の相手は本当に吸血鬼みたいデス───って。およよーーッ!?」
突然、何かに気づいたかの様に声をあげる切歌。
「どうしたの? 切ちゃんッ!?」
「分かってしまったデスよッ! 常識的に考えてッ! 血がいっぱいある所ッ!例えば、献血センターとかッ! ああいう、おっきな病院に違いないデスッ!」
切歌はノーブルレッドが次に狙うであろう場所に、目の前の献血センターをビシッと指差す。
「そんな単純なものじゃ…」
確かに単純すぎる。いくら血が目的でもそれは流石にあり得ないと感じる調。
だが、目の前の献血センターのサーチライトをミラアルクを照らし出す。切歌の予想は…
「「え………? あぁーーーーーッ!!」」
当たってしまった。
ミラアルクを見つけた調と切歌は友里と通信しながら看護師達の静止を無視して病院の廊下を駆ける。
『こちらでも確認出来たわッ! でも危険よッ! 2人とも先走らないでッ!』
「そうも言ってられない状況なのデスッ!」
「現場に1番近い私達に任せてください。通信終わり。突撃開始。」
LiNKERを取り出し、エレベーターに乗り込んだ調と切歌は通信を終了した。
「がはッ! こっちもそろそろ限界かもだゼ…」
屋上に立ち、口を押さえるミラアルクは何やら自身の身体に不調を感じ、活動の時間にも限界が近づいている事を悟っていた。
そこへ調と切歌と、未来予知で「献血センターのスタッフや患者、調と切歌がミラアルクに殺される」未来を見て、顔を隠して変装した隼人がブックゲートでやって来た。
「やはり現れたか…まさか血液が狙いだとはな…」
「ことと次第によっては荒事上等のアタシ達デスがッ!」
「その前に、あなたの所属と目的を聞かせてくださいッ!」
調はまずミラアルクに所属と目的を話すように伝えるが…
「そんな悠長、これっぽっちも無いんだゼッ!」
話すつもりの無いミラアルクは3人にアルカ・ノイズの群れを解き放つ。
「話す必要は無いという訳か。ならば、力ずくで聞き出すまでだ。」
隼人はジャオウドラゴンを取り出して起動した。
【ジャオウドラゴン!】
【ジャオウリード!】
【闇黒剣月闇!】
「変身。」
【ジャオウドラゴン!誰も逃れられない…】
ジャオウドラゴンと4匹の黄金の竜が包み込み、隼人はカリバーへと変身した。そして…
「Various shul shagana torn」
「Zeios igalima raizen tron」
宵闇の空に2つの聖詠が響き渡り、調と切歌はギアを纏った。
カリバーは闇黒剣月闇でアルカ・ノイズを斬り裂き、調は歌いながら空中から踵の大型の丸鋸を展開し、真っ二つ、切歌もバーニアで加速しながら鎌で斬り裂く。
その様子は指令室にも映し出されていた。
「敵の狙いはやはり、Rhソイル式の全血製剤…?」
「だとしたら好機……行動予測が立てやすい今、一気に切り崩せばッ!」
「……」
それならば行動予測が立てやすい。未然に被害を防げるかもしれない。勝利への道が見えてきた。
そんな中弦十郎は1人、何か腑に落ちない顔をしてモニターを見ていた。
【月闇居合!読後一閃!】
カリバーは闇黒剣月闇を納刀してトリガーを押し、抜刀して自身に迫るアルカ・ノイズを纏めて斬り裂く。
切歌も災輪・TぃN渦ぁBェルでアルカ・ノイズを蹴散らす。そこへ巨大なバナナ型のアルカ・ノイズ2体が現れる。
【ピーターファンタジスタ!】
【ジャアクリード!ジャアクピーターファン!】
カリバーがピーターファンタジスタの力で闇黒剣月闇の先から鎖付きフックを伸ばし、ヨーヨーを伸ばす調と共に拘束した。
「あなたの行動は、護国なんとかカントカ法に抵触する違法行為デスッ! これ以上の抵抗はやめるのデスッ!」
「それを言うなら護国災害派遣法だッ!」
【虚無居合!黙読一閃…!】
切歌の言葉を正しく訂正しつつカリバーは無銘剣虚無を取り出し、納刀してトリガーを押し、再び抜刀、斬撃波を飛ばして切歌と共にアルカ・ノイズを斬り裂き、無に帰した。
「慣れない御託が耳に障るゼッ!」
ミラアルクが不意打ちで切歌を攻撃しようとするが、カリバーに腕を無銘剣虚無で防がれ、腹に肘鉄をくらい、闇黒剣月闇で斬り裂かれる。
「ぐあ…ッ!」
「得意の卑怯な手も、そんなスピードじゃ捉えられないデスッ!」
切歌に蹴り飛ばされるも、空中に逃げるミラアルク。
「調ッ! ザババの刃を重なるデスッ!」
「───れでぃごッ!」
切歌は鎌を2本にし、地面に突き刺し、調が髪のヘッドギアとヨーヨーを組み合わせたノコギリ状の飛翔体を形成、カタパルトと化した切歌に肩車になる。
「これで決めるぞ。」
カリバーはジャオウドラゴンのページを閉じ、再び邪剣カリバードライバーのボタンを押して開いた。
【ジャオウ必殺読破!】
そして、カタパルトからザババの刃が1つとなった一撃が発射された。
【ジャオウ必殺撃!】
同時に闇黒剣月闇からもジャオウドラゴンのエネルギーと共に禍々しい斬撃波がミラアルクに向けて放たれる。
ミラアルクはそれらをギリギリで避けるも、ジャオウドラゴンのエネルギーと斬撃波、そして2人の刃はミラアルクを捉え、そのまま直撃、大爆発を起こした。
「「「これで話は終わりだ。/終わり。/終わりデスッ!」」」
【You are over.】
3人の技を受けたミラアラクはボロボロになり、3人の目の前に転落した。
「やったの?」
「むしろ、やり過ぎてしまったかもデス。」
「ッ!? おい、奴を見ろッ!」
カリバーが2人にミラアルクを見るように言う。煙の中、ボロボロになりながら左腕を押さえながらミラアルクは立ち上がった。
「負けないゼ……負けられないゼ……ッ! ウチは守る……2人を……家族をぉぉぉぉぉッ!」
突如、涙を流しながら家族を守ると叫ぶミラアルク。
「…家族?」
その言葉に反応したのは、調だった。
「ッ! 不味いぞ……ッ!」
「えっ…?」
そこへ、招かれざる客が動き出す。
「家族だなんて…ちょっとくすぐったいけど、悪くは無いわね。ありがと☆」
その言葉人共に宵闇の空に何かが打ち上がり、青い稲妻が落ちる。すると、突然東京中の明かりが次々と消えていく。そして、付近一帯を暗闇が支配した。
「照明がッ! 何も見えないデスッ!」
「切ちゃんッ! 落ち着いてッ!」
「おいッ! 迂闊に動くなッ!」
そこへ、遠く彼方からワイヤー付きのロケットパンチが飛んでくる。明らかに調と切歌を狙った一撃。暗闇の中昼間と変わらない明るさで見えるカリバーは2人を引き離し、2発とも闇黒剣月闇で弾いた。
「残念。外れちゃった。でも、付近一帯のシステムをダウンさせました…早くしないと、病院には命に関わる人も少なくないでしょうね?」
月を背後に現れたのはヴァネッサ。彼女が付近一帯を停電させ、調と切歌にロケットパンチを浴びせようとしたのも彼女だ。
「貴様……ッ!」
「入院患者を人質に…!?」
「あいつは…」
調と切歌も、記憶に新しい人物。そしてミラアルカが安堵しながらその名前を言う。
「来てくれたのか…ヴァネッサ…!」
しかし、現れたのはヴァネッサだけでは無い。
「駆けつけたのは、ヴァネッサだけではありません。それに、お目当てのモノも騒動の隙に獲得済みであります。」
いつのまにかトランクに座り、踵で叩くエルザ。これで3人が遂に勢揃いした。
「うおおおおおおおおッ! ヴァネッサッ! エルザッ! ダイダロスエンドだゼッ!3人揃った今、最大出力で…!」
「ッ!!」
彼女達が何かをしでかすのではないかと感じ、身構えるカリバー。しかし、ミラアルクは力なく膝を落とした。
「それはまた次の機会に。消耗が激しいミラアルクちゃんもエルザちゃんに無理はさせられません。ここは退きましょう。お姉ちゃん判断です。」
「あなた達は…」
「何者だ?」
「ノーブルレッド…きっとまた、お目にかかりましょう? カリバー、あなたの力、必ず頂きます。」
ヴァネッサはテレポートジェムを取り出して落とした。
「逃すもんかデスッ!」
「待てッ! 付近一帯が停電しているッ!」
「そうだよッ!今は患者さん達をッ!」
カリバーと調が止めると、ヴァネッサ達はそのまま姿を消し、切歌は悔しそうに鎌を地面に突き刺した。
そして、アジトにてミラアルクとエルザが輸血を行なっている間、ヴァネッサはある人物にパソコン越しに強奪したシェム・ハの腕輪を見せた。
「ご所望の物はこちらに。シェム・ハの腕輪にございます。」
ヴァネッサが話すその人物とは…
『そうだ。七たび生まれ変わろうとも、神州日本に報いるために必要な神の力だ。』
何と、風鳴訃堂だった。
そう。彼こそノーブルレッドを操っているこの一連の事件の黒幕だ。
『後は…宵闇の剣士を手中に収めれば、神の力と闇の
「お任せ下さい。」
いかがだったでしょうか? 原作の7万人の犠牲者は1万6000人にまで減らす事になりました。
少し減らしすぎかなと思ったんですが、前回で救助活動を行っていたので原作よりも遥かにマシという結果にしました。
納得出来なかったら申し訳ありません。
暑くなって来ましたね。じっとしているだけで汗が出てきます。
皆様も夏は体調を崩しやすいので健康管理と手洗いうがいに消毒を忘れずに。
今回はここまでです。感想お待ちしています。
「何だ…この胸を槍で貫かれた様な痛みは……ッ!?」
FEAR IS COMING SOON…