GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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GBNの空に海原を見た


海の男とゼーゴック

GBNにて再現された仮想の宇宙空間。

その宇宙を漂う機体が一機。機動戦士ガンダム00の2nd seasonに登場した、疑似太陽炉搭載型モビルスーツの【ジンクスⅢ】である。海を思わせる青系統に塗装されたジンクスは静かに漂い、同じく再現された地球を見下ろしていた。

 

「おぉー!スッゲー!地球すげー!何かスゲー!」

「語彙力・・・まぁ俺も初めて見た時は感動したけど」

 

そのコックピット内は騒々しいが。

感動を勢いだけで表現したのが【シゼ】、理解を示しつつも呆れているのが【ミズキリ】である。シゼはGBN内のデータから生まれたELダイバーであり、ミズキリは正式にその保護者兼後見人となっている。誕生した孤島から一度も出た事が無いシゼの要望で様々なエリアを連れ回され微妙に疲労を感じているのがミズキリである。

 

「歳・・・とは思いたくない・・・」

「んー?何か言った?」

「いや別に」

「あっ、りーくんもアリガトね!」

 

───どういたしまして!宇宙を楽しんでね!

 

ガンプラの声を聞く事が出来る。というのがELダイバーの能力(?)らしいのだが、シゼは特にその力が強いか感覚が鋭いのか、ガンプラと普通に【会話】する事が多いのだ。ちなみに【りーくん】というのはミズキリの愛機である【ジンクスⅢ(スリー)】の事であり、スリーだからりーくん。との事らしい。もう一機の愛機である【スペルビアジンクス】の事はすーちゃんと呼んでいるのですーくんだと被るからか、りーくんと呼ぶ事にした模様である。

 

(そもそも遠く離れた俺に声を飛ばせる辺り、シゼの能力ってかなり強いのかね)

 

ノイズがかり、囁くような弱々しい声になっていたものの、セントラルロビーのミッションカウンターに居たミズキリに孤島から自分の言葉を届けた事もあるシゼ。そう遠くない過去を思い返しながらシゼを見つめるミズキリ。それに気付いたシゼもモニターからミズキリへと視線を移す。

 

「どったんミズキリ?あれぇ?もしかして、ようやくシゼの魅力に気付いたぁ?」

 

ニヤニヤしながら右手で腰を、左手で後頭部を持ち、胸を突き出すセクスィーポーズをとるシゼだが途端にミズキリの視線の温度が下がる。

 

「何度も言わせんな・・・俺の好みはボンッキュッボンの美女なんだよ。お前みたいなチンチクリンは恋愛対象外どころか色気の欠片も感じられん」

「うがー!チンチクリンって言うな!オジサンのくせに!」

 

売り言葉に買い言葉。ガキンチョとオッサンの低レベルな争いがジンクスⅢのコックピットで始まった。

 

「誰がオジサンだ!オジサン呼ばわりされる程、歳とってねぇわ!」

「さっき、よるとしなみって言ってた!」

「結局聞いてんじゃねぇか!てか何処で覚えたそんな言葉!」

───本当に仲良しだねぇ

 

もはやスペルビアジンクスと同じ感想しか出てこないジンクスⅢ。自分の腹の中で低次元な喧嘩をされている、いわば被害者なので仕方の無い事だが。というか地上エリアを飛び出して宇宙エリアを見学するという当初の目的が完全に抜け落ちているのだが。

 

 

「ミズキリのせいで疲れた・・・」

「お前が身の丈に合わん事するからだ・・・」

───争いは同じレベルの者同士でしか起きない

「むー・・・りーくんまでそういう事言う・・・」

「俺はジンクスの言葉は分からんが、バカにされたって事は分かった」

 

この元データにしてこのELダイバーありである。

 

「宇宙も地球も見たし帰ろ」

「操縦してんのは俺なんだが?」

「じゃあ早く帰って。目の前に地球あるし」

 

中々の無茶振りである。このジンクスは基本装備しか持っておらず、そのまま大気圏突入などしたら普通に撃破判定をもらう事になる。ロビーへの帰還ならその方が早いだろうが。

 

───なるほど、僕に燃え尽きろと

「大気圏突入なんて出来る訳ねぇだろ・・・パラシュートパックなんて持ち込んでねぇし」

「じゃあゲートまで行くしかないの?」

「そうなるな」

「えぇー・・・」

 

ちなみにフォースネストへのショートカット機能もあるのだが、現状はミズキリとシゼしか所属しておらず、またミズキリがその機能を知らない為、現ポイント→転送ゲート→ロビー→フォースネストのルートしか無いと思っている。便利機能に疎い。やはりオッサンでは。

 

「ひーまーだーなー」

「操縦してんのは俺なんだが?二回目だぞ?」

「ねーねー?シゼの新しい体まだ出来ないのー?」

「それはあのメガネ君に言ってくれ」

 

メガネ君。ELバースセンターで応対してくれた人物であり、現在シゼの躯体になるモビルドールの製作を依頼している。ぶっちゃけ名前は覚えてない。手続きやら躯体のイメージやらなんやらでバタバタしていたのだ。慣れない事はするもんじゃない。コーワンだかケーイチだかそんな感じじゃなかったか?

 

「やーっとゲートだよー」

「だから操縦してんのは、もういいや・・・着くし」

 

転送ゲートから格納庫へ、そしてロビーへと戻ってきたミズキリとシゼ。様々なダイバーが集まるセントラルロビーでもアロハシャツは目立つらしく、注目を集めてしまうミズキリ。だが、それ以上に注目されているのがシゼである。

 

「ほーれ見たかー!皆シゼの魅力にメロメロだよぉ?」

「そらアロハ二人組が現れたら目立つだろうよ」

「シゼの魅力は限界を知らないらしいなぁ!」

「俺はお前に魅力が備わってた事を知らなかったわ」

 

───ガッ!

 

「痛っ!何だよ!?」

「ごめ~ん踏みやすそうな足だったからぁ」

「テメェこの野郎・・・!」

 

ミズキリの左足を思いっきり踏みつけたシゼ。軍用ブーツを抜いてダメージを入れるビーチサンダルとは。

(いつもの)喧嘩の空気になる中、二人に近づく人物が一人。

 

「あらぁ~!ミズ君にシゼちゃぁん!相変わらずの仲良しさんねぇ」

((((えっどこが?))))

その場に居た他のダイバー達の思考は一つにまとまっていた。

 

「マギーだ!イエーイ!」

「あらあら元気ねぇ」

 

マギー。もう説明不要のお姉さん(?)である。

そんなマギーを見付けた途端に走り寄り、ジャンプしてハイタッチするシゼ。元気なシゼのハイタッチに笑顔で応えてくれるマギー。やはり良い人。

 

「こらこら、いきなり何してんだ・・・悪いな」

「いいのよぉ、子供は元気が有り余ってるくらいで」

「むぅ!マギーもシゼを子供扱いする!シゼは立派なレディだもん!」

 

ぷくぅ、と頬を膨らませ不満を主張するシゼ。ごめんなさいね、と謝罪しながらも笑顔のマギーと、そういう所が子供っぽい、と呆れ気味のミズキリ。

 

「コイツの躯体が完成したらリアルの店に行こうかと思ってるんだが」

「あらぁ!是非是非いらっしゃいな、待ってるわよ」

「メイお姉ちゃんとも会う!」

 

マギーが現れただけで先程までの喧嘩ムードが霧散する。

 

「カフェテリアのコーヒーでもどうだ?マギーがヒマならだけど」

「あら、お誘い?守備範囲広いのねぇ?」

「残念ながらマギーは俺の好みから外れててな、ELバースセンターへの案内と紹介してくれた礼がまだできてないだろ」

「あれぐらいお安い御用よ?ちょっと休憩しようと思ってたからお言葉に甘えようかしら」

 

冗談交じりに会話する二人。シゼよ、これが少なくとも子供にはそうそう出来ない会話というものだ。

 

 

 

カフェテリアにて。

コーヒーを注文し、それを飲みながら会話するミズキリとマギー。シゼもちゃっかりミズキリの手持ち金でオレンジジュースを注文し、ストローを使って飲んでいる。

 

「あぁそういえば、アレはもう出来たの?」

「あー、さすがにアレは時間が・・・」

「まぁミズ君はビルド狂いってタイプでもなさそうだしねぇ」

 

以前ELバースセンターを紹介してもらった縁から、相談等もするようになったミズキリ。その中で話した、とある機体に言及するマギー。当然のようにシゼも食い付いてくる。

 

「うん?アレってなーに?」

「お前が見付けたヤツだよ、海の中にあった」

「あー!ぜごくん!出来たの!?」

 

ぜごくんこと【ゼーゴック】。ミズキリとシゼがフォースネストとして登録した無人島の近海深くに眠っていたレアデータである。本体のデータだけでなく、原作にて装備していた各種兵装のデータも含めてという大盤振る舞いだったのだが。

 

「さすがに作りきれん・・・全部作ろうと思ったら、かなりの時間射出成型機を占拠しちまうし、他の連中に悪いだろ」

 

そう、パーツ数が多くコンテナと武装が大型の為、データからランナーに起こすだけでも一苦労なのだ。ゼーゴックと武装コンテナを丸々セットで作ろうと思うのはそれこそ一部のビルド狂いか、原作である【MS IGLOO】のファンくらいだろう。

 

「作ってはいるんでしょう?」

「まぁチマチマとはな。一応俺なりの案があるから、クーベルメは作ってある」

「なんか美味しそうな名前だね」

「お前は何を言ってるんだ」

 

クーベルメとはゼーゴックの武装コンテナに搭載される装備の一つであり、モビルアーマービグ・ザム用に試作された拡散ビーム砲である。決してシャレオツな料理とかスイーツとかそんなんではない。

 

「へぇ?ミズ君なりのアレンジ、完成したら見てみたいものねぇ」

「気長に待っててくれよ」

「本当に作るのー?最近はほとんど島でグダグダしてるのにー?」

 

ジュースを飲み終わり、ストローを口に咥えてミズキリの生態を暴露するシゼ。普段は元気が取り柄の娘という印象が強いシゼだが、ミズキリに関しては毒舌だったり容赦無かったりする。

 

「あのなぁ、誰のせいだと思ってるんだ?お前があっちこっち引っ張り回すから、それ以外はのんびりしてんだろうが」

「あーあー、ぜごくんが可哀想だなぁ」

「シゼちゃん、ミズ君にはミズ君の都合があるのよ」

「はーい」

「何でマギーの言う事は素直に聞くんだよ」

 

人柄の差だろうか。

 

「さてと、コーヒーご馳走さま。アタシはもう行くわね」

「おう、また店に寄らせてもらうわ」

「えっ?もう行くの?これ飲むからちょっと待って」

「・・・お前飲み終わってたろ!いつの間に追加しやがった!」

 

ミズキリのビルドコインで勝手に二杯目を追加注文していたシゼ。ミズキリの懐事情にも容赦無いのがシゼクオリティーである。

厳しいならアタシが出しましょうか?というマギーの提案を男の意地で断り、マギーと別れる二人。そもそもジュース程度で厳しくなる程寒い懐ではないのだ。想定外の出費ではあるが。

 

 

 

「じゃあまた明日ー」

「歯磨いてさっさと寝ろよ?」

「だーかーらー!シゼを子供扱いするなー!」

「実際子供だろうがよ」

 

マギーと別れ、フォースネスト兼シゼの寝床の島に帰ってきた二人。DNAに刻まれたやり取りをしてログアウトしようとするミズキリだが───

 

「あぁそうだ、シゼ」

「・・・なに」

 

子供扱いにご立腹のシゼ。完全にミズキリから視線を外し、全身から不機嫌オーラを発生させている。だが、そんな「自分怒ってます」アピールも、ミズキリが次に発した言葉で崩れ去る。

 

「乗りたいか?ゼーゴック」

「へ?完成してないんじゃないの?」

「アレンジが出来てないだけだ、本体は完成してないなんて一言も言ってないだろ」

 

そう、マギーに対しても「未完成」とは言ってないのだ。

先程までの不機嫌オーラは吹き飛び、目を輝かせながらピョンピョンしだすシゼ。

 

「乗る!乗ーる!」

「分かった分かった、明日持ってきてやるから跳ねるな」

 

コロコロ感情が移り変わる所が子供っぽい、と思ったミズキリだが今回は口には出さなかった。ゼーゴックに乗るのが楽しみなのは自分もだからである。

 

 

 

翌日、格納庫にて

 

「おぉぉぉ!ぜごくん初めまして!」

「コンテナも格納庫に入るのか。我ながら良い出来だ」

 

大はしゃぎでピョンピョン跳ねるシゼと、自画自賛しながらも内心作れて安心しているミズキリが居た。

 

───アンタらは波に乗れるかな?

 

「おぉ・・・ミズキリより海の男っぽい」

「おい、ゼーゴックって水中運用する機体じゃないだろ」

 

ミズキリに若干の精神ダメージが入った。

 

「本当に作ったんか・・・スゲーな」

「来たか、今日は頼むぞ?」

「任せろ!つっても引っ張るだけだがな!」

 

格納庫に現れ、ゼーゴックに感心しつつミズキリと親しげに話す男性ダイバー。以前ミズキリにフォース戦の助っ人を頼んだフォースリーダーである。

 

「ミズキリ、それ誰?」

「それってお前・・・そういや会った事ないか、コイツは───」

「おいぃぃぃ!誰だよこの可愛い子は!」

「それぞれ説明すっから落ち着け・・・」

 

 

-海の男説明中-

 

 

「───つー訳で俺が後見人やってる、名前はシゼ。で、シゼ、コイツはリット。俺のダチだ」

「シゼだよ!よろしくね、リット!」

「おぉ、元気な子だな!俺はリット!よろしくな!シゼちゃん!」

 

ファーストコンタクトは良好だった。それどころか意気投合しそうな雰囲気まである。

 

「で、リットもぜごくん見に来たの?」

「それもあるが、転送ゲートから地球の大気圏近くまでゼーゴックを引っ張るんだよ。護衛も兼ねてな」

「どうせなら大気圏突入したいだろ?」

 

そう、リットが呼ばれたのはゼーゴック牽引の為である。護衛も兼ねる為、傭兵に依頼してもいいが気兼ね無い間柄のリットなら信頼できる。本人も助っ人の礼をしたいと快く引き受けてくれた。

 

「よーし!リットを引き連れ、宇宙にゴー!ぜごくんの初陣だー!」

「なぁさっきから気になってたんだが、ぜごくんってゼーゴックの事か?」

「独特なセンスだろ?ちなみにスペルビアの事はすーちゃんと呼ぶ」

「おぉう・・・」

───ふっ

 

何故か得意気なゼーゴックだった。

 

 

 

「宇宙広ーい」

「まぁメインの戦場になる事多いし、印象的なシーンも原作にあるだろうしな」

『もう少しで到着するぞー、お二人さん』

「・・・リットのガンプラ変わってるね」

『え、今さら?』

 

今さらシゼが注目したリットの機体は、MA形態のイージスガンダムにミサイル等の搭載数を減らし、コンパクト化したウェポンコンテナとジャイアントガトリング、フォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーを取り付けた、【オージス】である。そのオージスから牽引ワイヤーを伸ばし、ゼーゴックを目標地点まで輸送している。

 

『コアはイージスだが、デンドロでジオンの機体を運ぶのも妙な感じだな』

「安心しろ、GBNだと良くある事だ」

『ま、そうだな』

「おぉー!前より近い!綺麗!」

 

コックピットの中ではしゃぎだすシゼ。今回はお試し大気圏突入として、地球降下後にミズキリとシゼのフォースネストにそのまま帰還できるコースになっている。

 

『もう少し近づいて降ろすから待っ───』

 

閃光がオージスとゼーゴックを照らす。リットとミズキリが何かしたわけでもなく、シゼも驚いている。つまり───

 

「ミズキリ!後ろから撃たれてる!」

「あぁ!分かってる!」

『どこの馬鹿だチクショウが!』

 

ゼーゴックの背後からビームを放ちつつ迫るのは二隻のサラミス級。そしてリットとミズキリの目には【ANOTHER MISSION START】の文字が映る。

 

『はぁ!?ミッション!?受注した覚えねぇぞ!』

「アナザー?特定の条件で自動スタートするってやつか!」

『おいおい、マジかよ!成功条件・・・艦船の撃破!?』

 

何故いきなりミッションが始まったのか分かっていない。そんな状況の中でミズキリが下した結論は

 

「リット!ゼーゴックを降ろせ!」

───俺を降ろせ!

「!ぜごくん・・・」

 

ほぼ同時に、同じ考えに至ったミズキリとゼーゴック。

 

『予定ポイントからかなりズレるぞ!』

「二機まとめて墜とされるよりはマシだ!それに」

 

 

「ワクワクすんだろ?こういうのさ!」

───良いねぇ、初乗りが荒波ってのも悪くない!

 

『・・・だな!次を回避したら降ろす!』

「ミズキリ・・・」

 

珍しく不安な表情を見せるシゼ。そんなシゼの頭に手を置き、やや乱暴に撫でる。ミズキリの表情にネガティブな感情は一切無かった。

 

「お前も予想外を楽しめるような女になれよ?」

「・・・シゼはもうレディだし!」

「上等だ!」

 

『後ろのサラミスは俺に任せろ!イグルーの再現ミッションなら下からまだ来るはずだ!ワイヤーカット、行くぞ!』

 

ゼーゴックを振る事なく、連射されたメガ粒子砲を軌道変更だけで回避するリット。次の瞬間ゼーゴック側のワイヤーが外れ、オージスは反転しサラミスへ向かう。

 

『グッドラックだ!お二人さん!』

「お前もな!」

「あリットー!」

 

 

 

地球への降下軌道に入るゼーゴックを見送り、しつこくメガ粒子砲を連射してくるサラミスを見据えるリット。

 

「なーんか最後に名前と感謝をごっちゃにされた気がするが・・・」

 

それは気のせいではない。

 

「まぁいいや、ステイメンに代わってイージス&オーキス!リットが行くぜぇ!」

 

リットとオージスがサラミスを撃破すると信じて───

 

 

 

 

 

地上、ジャブローエリア水辺にて

 

「いやーまさか、こんな所で他のG-TUBERに会うとはねぇ」

「お邪魔 しちゃって すいません」

「いーのいーの!こっちも驚かせちゃったし、お互い様!」

 

ジャブローの水辺で会話する二人のダイバー。機体の上に座っているのが、セーラースク水という刺激の強い格好に、酒の缶を手に持った【イヨカ】。ハッチに手を掛け、頭とハロカメラを機体外に出しているのが、エラやヒレのような部位とウロコのある肌が特徴の【ウォーターハザード】である。ちなみに二人とも水中、水上のミッションを攻略したり、海や浜辺のお散歩を配信したりするG-TUBERであり、今もライブ配信中である。

 

『ワイ2画面同時視聴。幸せで倒れそう』

 

という二人の配信を同時に視聴している猛者も居るらしい。

 

二人が出会ったのは偶然であり、趣向を変え【海発~ジャブロー着 トリロバイトクルーズ配信】の為にやってきていたハザードと、ジャブローの水中ミッション攻略のついでに酒盛りする予定のイヨカがばったり遭遇したのである。と言ってもハザードはゴールし、イヨカもミッションクリアしたので配信はどちらも終盤だが。

 

「正式なコラボはまたいつか、ね」

「はい その時は よろしく お願い します」

 

それぞれのリスナーに惜しまれながらも配信を終了しようとする二人。

 

「それじゃあみんな!そしてハザードちゃんのリスナーさんも!」

「では みなさん イヨカさんの リスナー さんも」

 

「次の配信で───」

「次の海で───」

 

二人が終わりの挨拶を言い終える直前。凄まじい爆音が響く。

 

「おわっと!何!?」

「凄い 音 ですね あっ」

「どしたの?あー・・・アレかぁ」

 

何かを見付けたハザードにつられ、ハザードと同じ方向に視線を向けるイヨカ。二人の視界には真上に上昇していく艦が映っていた。

 

 

 

 

ジャブロー上空にて

 

「ミズキリ!下!の右!何か来る!」

「リットが言った通りか!」

 

無事に地球へ降下したゼーゴックだったが、空の景色を楽しむ間も無くシゼが何かを感じ取った。下の右という相変わらず微妙に困る表現だが。

 

上がってきたのはマゼラン級が一隻とサラミス級が四隻という、見事に【黙示録 0079】の第一話を再現した組み合わせ。だが、原作にてゼーゴックに搭乗していたヴェルナー・ホルバインとミズキリでは状況が違っていた。

 

「少し遠いか!」

 

ほぼ垂直に降下した原作とは違い、ミズキリのゼーゴックは敵艦に対して斜めからのアプローチになってしまっているのだ。事前の降下予定ポイントを外れての突入となった為、敵艦との距離が若干遠い。

 

「やるしかねぇ!多少強引にでもぶち抜く!」

 

武装コンテナの外装がパージされ、拡散ビーム砲クーベルメが現れる。原作で発生した、コンテナパージの不具合は起きなかったようだ。そのまま降下を続け、マゼランとサラミスを捉えるミズキリ。トリガーに指を掛け、発射しようとした瞬間。

 

「まだ!もう少し!」

「シゼ?」

 

急に声をあげたシゼ。ミズキリも発射を躊躇ってしまうが───

 

「いま!」

「!」

 

ミズキリのタイミングから少しズレて照射されたビームは、斜め上からマゼランと四隻のサラミスを貫いていた。その照射の最中、ミズキリがクーベルメの異常に気付く。

 

(一基だけ射角が変わってない?)

 

クーベルメは基部が可動し射角を変更出来るビーム砲を五基備えているのだが、一基だけ射角変更操作を受け付けず正面にビームを照射し続けていたのだ。シゼがタイミングをズラしていなければ一隻、逃がしてしまっていたかもしれない。

 

爆散する艦船を尻目にクーベルメをパージし、ジャブロー上空から離脱していくゼーゴック。

 

「サンキューな、シゼ」

「シゼは何もしてないよ、ぜごくんが教えてくれたの」

───道具はしっかり手入れしろ

 

(帰ったらしっかり調整しねぇとな)

 

ジャブロー空域を離脱し飛行を続けるゼーゴック。

 

「で?ミッションクリアなのか?」

 

艦船の撃破という条件は満たしているはずだが、クリアの表示もシステム音声も何も無い。疑問に思うミズキリに再びシゼが声を掛ける。

 

「後ろ!まだ何か来る!」

「やっぱ終わってねぇよな!」

 

ゼーゴックを後方から追撃せんと迫るのはコア・ブースターⅡインターセプトタイプ。コア・ブースターの高高度迎撃仕様である。コア・ブースターに対してゼーゴック唯一の武装である左腕に内蔵されたメガ粒子砲を放つミズキリだが、さすがに戦闘機相手にドッグファイトは分が悪く、命中しない。

 

「当たらねぇ!」

 

焦るミズキリ。そして遂に、コア・ブースターのガトリング砲から放たれた弾丸がゼーゴックに命中してしまう。

 

「きゃあ!」

「ぐぅ!嘗めんなぁ!」

 

被弾によって飛行が不安定になるゼーゴック。ミズキリは被弾した衝撃を利用して機体を回転させ、トドメを刺そうと背後に付いたコア・ブースターを一瞬だけ正面に捉える。発射されたビームはコア・ブースターの右翼を貫き、撃墜には至らないものの戦線から離脱させる事に成功する。だが追撃してきたコア・ブースターは二機。残った機体がゼーゴックに迫る。

 

「さすがに無理か!」

 

ミズキリが諦めかけた瞬間、【緑色の】ビームがコア・ブースターを後ろから貫いた。そしてゼーゴックに繋がる通信。その主は───

 

『おお!当たった!俺って天才?』

「リット!?お前、何で」

『フリーダムに出来たんならイージスでも行けるかなぁって、まぁゲシュ盾あってこそだったけど』

 

ギリギリのタイミングでミズキリを救ったのはリットのオージスだった。オーキスモドキは影も形も無くなっており、装甲は所々に損傷が確認出来るが。どうやらサラミスを片付けた後、Iフィールドジェネレーター代わりに装備していたゲシュマイディッヒ・パンツァーを盾として大気圏を抜け、駆け付けたらしい。

 

『へへーん、感謝しろよなぁ?』

「今回ばかりは助かった、サンキュー」

「あリットー!」

『お、おおう・・・素直に感謝されると照れるな。そしてシゼちゃん、あリットー気に入ったの?』

 

そんなやり取りをしていると、ジオン軍の攻撃空母と呼ばれるガウが現れた。

 

『お迎えが来たぜ?あれに収用されればクリアじゃねぇの?』

「もう無いよな?さすがに疲れた・・・」

「トゲトゲした感じはしないから大丈夫だと思うよ?」

 

被弾によりフラつきながらも何とか飛行しているゼーゴックと、MA形態に可変したオージスがガウの後部ハッチから収用されると同時にミッションクリアの表示がポップした。

 

「あぁー・・・つっかれたぁ」

「シゼも・・・シャワー浴びたい」

『お疲れさん、俺も今日はログアウトするわー』

 

意図せず始まったミッションは、本来とは異なる結末を迎えたのだった。

 

 

 

「じゃあまたなー」

「おう、じゃあな」

「お疲リットー!」

 

格納庫に戻った三人。本人が言った通りにログアウトしていくリットだが、シゼの別れの挨拶に苦笑していた。リットを見送り、今回かなり酷使されたゼーゴックに目を向ける二人。

 

「初陣からゴタゴタしてたなぁ」

「ぜごくんお疲れ様!」

───そちらもな

「えへへ!」

 

どうやらゼーゴックとも良い関係を築けそうである。

 

「ミズキリ!」

「ん?」

「楽しかったね!」

「あぁそうだな、疲れたけど」

 

遊びだからこそ本気になれる。初めてシゼも熱くなり、ミズキリも久々に燃えていたようだ。ハプニングがありつつも、むしろハプニングがあったからこそゼーゴックとの絆が育まれたのではないだろうか。

二人の表情は晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 

 

これで終わればミズキリとシゼの新たな仲間の話なのだが。

少しだけ時間を巻き戻してみよう。

 

 

 

 

ジャブロー水辺にて

 

「おぉ?あれゼーゴック?」

「イグルーの 再現 ミッション でしょうか」

 

そう、宇宙から駆け付けたリット以外にこのミッションには観客が居たのだ。偶然コラボになったイヨカとハザードの二人である。配信終了直前だった事も忘れ、ゼーゴックの挙動に注目する二人。そしてクーベルメから照射されたビームがマゼランとサラミスを貫いた。

 

「おぉー、お見事ー」

 

称賛しながらいつの間にか開けていた缶を傾け、酒をノドに流し込むイヨカ。ゼーゴックを肴に酒を飲むG-TUBERなどかつて居ただろうか。一方ハザードはパチパチと拍手を空に送っていた。

 

「プハァ!いやー!レアな光景見れたね!」

「そうですね どんな 人が 乗ってるんだろ」

 

ここで終わればイヨカの言う通りレアな光景で済んだのだが、ミズキリはクーベルメを使用した後どうしたかを思い出してほしい。

 

「じゃあみんな!今度こそおしまいだね、チャオチャオ!」

「こっちも 終わり ましょう 次の海で あれ?」

 

ハザードが【切り離された】クーベルメに気付いた。そしてそれが徐々に自分たちの居る方向に落ちて来ている事にも。

 

「あ あの! イヨカさん!」

「ん?どしたの?」

「コックピットに 早く 戻って ください!」

 

物静かでゆっくりとしか喋れないハザードが珍しく語気を強めている。

 

「あの 機体の パーツが こっちに」

「・・・まさか?」

 

ハッチからひょっこり出した頭を縦に振って、イヨカの嫌な予想を肯定するハザード。

ゆっくりとした喋り方を最後までしっかり聞こうとしたのが裏目に出たのか、微妙に間に合わない事を悟るイヨカ。

元々頭とハロカメラだけ出していた体勢が功を奏し、どこか申し訳なさそうにコックピットへと戻りハッチを閉鎖するハザード。

そして───

 

 

途中で破損しながらも、ほぼ原型を留めたまま二人の近くに落下するクーベルメ。地表ではなく水中に落ちた為、テーマパークのアトラクション以上の水飛沫がトリロバイトの装甲とイヨカを襲った。衝撃が収まってからハッチを開け、辺りを伺うハザード。

 

「イヨカさん! 大丈夫 ですか!」

 

イヨカの機体であるハルファスシレーヌの上には

 

「大丈夫・・・ストゼロは守りきった!」

 

自身の手で蓋をし、水が入らないようにストゼロ缶を守った、水も滴る良い女が居た。そして偉業を成し遂げた者の証である、凄く良い笑顔だった。

 

 

 

 

ちなみに後日、リスナー→マギー→ミズキリという経路でクーベルメによる事故を知ったミズキリは、菓子折りを持ってレイヴンズ・ヒルへ、菓子折りならぬ、つまみ折りを持ってイヨカの元に謝罪に行ったらしい。

 

「本っ当にすいませんでしたぁぁぁぁ!」




ジャブローの空模様は快晴ですが、突発的なクーベルメに注意してください。

【ゼーゴック】
ミズキリの新たな機体。
フォースネストの島近海の深くに眠っていた所をシゼが感知し、データとしてミズキリの所有物となった。
原型から変わっていないが、ミズキリには改修案があるらしい。

【リット】
ミズキリのフレンド。
気の良い兄ちゃんダイバー。
以前ミズキリにフォース戦の助っ人を頼んだ人物。
ダイバールックは「0083 STARDUST MEMORY」で、コウ・ウラキらが着用していた半袖タイプの地球連邦軍制服。

【オージス】
MA形態のイージスガンダムをコアユニットとし、搭載数を減らした代わりに小型化したウェポンコンテナと、メガビーム砲代わりのジャイアントガトリングとIフィールドジェネレーター代わりのゲシュマイディッヒ・パンツァーを装備した「オーキスモドキ」を纏った機体。クローユニットと大型ビームサーベルはオミットされている。ガトリングとパンツァーを支えているアームは、元のオーキスよりも可動域が広い。
必殺技はクロービームサーベルを展開したコアイージスを敵に向けて電磁加速させ、質量弾として撃ち出す【俺自身がダインスレイヴになる事だ】
コアイージスのカラーリングは試作3号機 ステイメンに合わせており胸部は青、それ以外の部位は白。

【ウォーターハザード】(出典 屋根裏部屋の深海様)
傭兵ダイバーが集まるフォース「レイヴンズ・ヒル」所属のダイバーにしてG-TUBERの少女。
エラやヒレ、ウロコといった人魚のようなダイバールックが特徴。
過去のトラウマからゆっくりとしか喋れないらしい。
トラウマが水に起因する事からクーベルメ事件の際も、申し訳なさそうにコックピット内に避難した。
乗機はアームユニットを外したグラブロとトリロバイトを組み合わせ、ホバーユニットによって陸や水上でも活動できるようになった「スティグロ・トリロバイト」

【イヨカ】(出典 青いカンテラ様)
セーラースク水という刺激的な格好をしたダイバー。
ミッション終わりの一杯は格別。という発言をする程の酒好き。
クーベルメ事件では退避が間に合わない事を悟り、手に持っていた開封済のストゼロを守った。
乗機はハルファスガンダムをハルファスベーゼに改造し、さらに水中用の改造を施した「ハルファスシレーヌ」

【アナザーミッション】(出典 屋根裏部屋の深海様)
受注形式ではなく、フィールド上で特定の条件を満たすと自動でスタートする特殊ミッション。原作において描写されなかった部分や、ifの結末をモチーフにしている。
今回のミズキリの一件は、「ゼーゴックで大気圏付近に接近する」という条件を満たした結果発生した。クリア条件は「艦船の撃破」だが、その後追撃してくるコア・ブースターの撃破ないしは撃退までがセット。その為、帰還用のガウが出現するまでにコア・ブースターをどうにかするか、ガウを守りながら戦う事になる。さすがに難易度が高いからか、リットのように援護する仲間が居ても問題ない。
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