人間誰しも思い出したくない事や、関わりたくない事象というのはあるだろう。離別、喪失、恐怖。様々なトラウマや闇を抱えて必死に今日を生きているのだろう。
今回は思わぬ形で、それと向き合う事になってしまった女性ダイバーの(非)日常を覗いてみよう。
-アジアン・サーバー内 神尾神社-
「待てやゴルァァァァァァ!」
「キャハハ!待てって言われて待つバカはいないよ!」
「その気色悪りぃ話し方止めろぉぉぉぉ!」
様々な特徴を持つ各サーバー、各エリア。タイガーウルフのフォース虎武竜の拠点が存在するアジアン・サーバーのエスタニア・エリアや、中立として設定されビルダーの聖地と呼ばれる砂漠地帯のペリシア・エリア等が有名だろう。その中でアジアン・サーバーの中に「和」をモチーフとしたエリアがあり、「神尾神社」と名付けられた施設が存在する。
「いい加減にしやがれ!何なんだテメェは!」
「さっき言おうとしたんだけどなー」
立派な御神木も生えている境内に、逃げる者と追う者がそれぞれ一人。追い掛けているのは赤い一本角を額から生やした目付きの悪い女性ダイバー「マガツ・ロー」。いつもの茶色に青い差し色の入ったジャージを着用している。そしてもう一人、逃げている者は異形と言える女性と思わしきダイバー。
「くっ・・・ハァ、ハァ・・・」
「あらら、大丈夫?ママ?」
「だから!その顔で!オレをママって呼ぶな!」
鬼ごっこを中断し、御神木の前で距離を取って向き合う二人。マガツは膝に手をつき息切れし、異形の少女は疲労を感じさせない様子でニヤニヤしている。【ママ】と呼ばれ、それを全力で否定するマガツ。【その顔で】と言った通り、少女の顔立ちはマガツにそっくりだった。
「心配してるのは本当だよ?それは信じてほしいな」
「チッ」
事の発端は数時間前───
-現実・マガツキ家-
「全然疲れ抜けねぇ・・・歳はとりたくねぇな・・・」
自身の年齢と身体の衰えを嘆きながら、一階へと降りてきたマガツキ・アキラ。GBNをプレイしているダイバーの一人、マガツ・ローのリアルの姿である。
「っあぁ、これダメなパターンだ・・・風呂・・・」
現状あまり体調が良くないと判断したアキラ。今までの経験から「風呂に入ればマシになる」という我流療法を実行する事にしたらしい。寝間着のまま自室がある二階から降りてきてしまった為、着替えを取りに階段に向かうが───
「・・・良いや、上がってから」
着替えるか。と続けたかったのだろうか。とにかく今は一刻も早く湯船に浸かりたいらしい。
「あ・・・沸かしてねぇじゃん・・・」
そもそも沸いていない風呂には入れない。寝間着の上を脱いでから気付いたアキラだったが、仕切りガラスの向こうにうっすら見える湯船の蓋が閉まっている。
「掃除したよな・・・」
夜に軽く掃除して開けたはずの蓋が閉まっている事に違和感を覚える。
「ヒカリか、カスミ?」
アキラの娘であり、六姉妹の中で毎日競うように早起きしている次女と四女。昨夜はなんとか取り繕ったつもりだったが、疲労が透けて見えていたのだろうか。ちゃんと保温状態になっている辺り、しっかりものの次女ヒカリが気を利かせて給湯予約してくれたか、スポーツ女子の四女カスミがジョギング終わりにシャワーを使ってついでに沸かしてくれたかだろう。少なくとも自分で操作した記憶は無い為、娘の優しさに涙が出そうになるアキラ。
「はぁ・・・ちったぁマシだな」
身体を洗い湯船に浸かるアキラ。体調に多少の改善が見られたようで、寝起きよりも幾分サッパリした表情となっている。ふとシャンプーやらボディソープやらのボトルが並ぶ棚に視線を向ける。
(随分増えたな・・・昔はデカいボトル二つで良かったのに)
六人の娘達をそれぞれ一種類のシャンプーとボディソープで洗っていた過去。今は成長し、各々好みのメーカーや体質に合わせた物を使用している。
(美容だなんだ言うようになったな・・・もうオレの娘じゃなくなる日も近かったりしてな・・・)
GBN内の強気なマガツや、現実の職場で見せる頼れる年長者感から決して折れない強い女性というイメージが出来上がっているが、実際は今回のようにふとした事で感傷に浸る普通の母親なのである。
「娘の居ないオレは何なんだ・・・あぁ、嫌だなぁ」
普段のマガツキ・アキラ/マガツ・ローからは全く想像出来ない弱々しい言葉。それだけ娘達の存在が彼女の中で比率の多くを占めているのだろう。
(でもどっかで折り合い付けなきゃならないよな)
浴槽の縁にもたれ掛かり天井を見上げるアキラ。
「なぁ、お前だったらどうする?」
かつて自分と共に居た、とある男の背中が目に浮かぶ。その背に、つい問い掛けてしまうアキラ。自分と全力で向き合ってくれた男。自分が愛し、自分を愛してくれた男。そして、自分と娘を置いて消えてしまった男。もうその背中に追い付く事は出来ず、ただアキラの記憶に残り続けるだけ。
(答えてくれる訳ねぇよな。結局オレのワガママなんだから)
悲しげに微笑むアキラ。左肩と下腹部に残る傷痕を優しく撫でる。下腹部の傷は帝王切開で娘を出産した結果残ってしまったモノ。肩の傷は荒んでいた学生時代にヤンチャして付いたモノ。どちらも他人に見せびらかすようなモノではないが、アキラにとってはとても大事な証でもある。
「そろそろ出るか」
身体と心、どちらもサッパリはしていないが、これ以上一人で考え込んでも悪循環に嵌まるだけと考えたアキラ。出ようと浴槽から立ち上がりかけるが───
「母さん!!!」
「うおっ!?」
曇りガラスが割れかねない勢いで浴室の戸を開ける者。アキラの娘にして六姉妹の四女カスミである。
「緊急事態が───」
「お、おう?」
沈んでいた精神状態を引きずっているのか、浴槽に座ったまま固まるアキラ。カスミも何かを言いかけたがアキラの体勢を見て、別の意味でフリーズする。
「あっ、あの、そっそうだよな!母さんも溜まっている時はあるものな!お、おおお邪魔してしまって本当に申し訳ない!」
「何が溜まってるんだ?・・・っ!」
何とか復帰したカスミだが、今度は赤面しながら目を逸らしてアタフタしだす。そんなカスミの様子と発言を怪訝に思うアキラだったが、「溜まっている」という部分と自分の体勢を見て気付く。右手で左肩の傷を撫で、左手は下腹部の傷に。そう下腹部である。
「ちがっ違うからな!?誤解してるぞカスミ!」
「いやいや!良いんだ!私もする時はあるから!」
「母親に何て事カミングアウトしてんだ!?」
急いでいる時ほどすれ違う。
「それで?何が緊急事態だって?」
「簡単に言えば偽者かな」
「偽者だぁ?誰の?」
「母さん」
手早く髪を乾かし、改めてリビングで話をする二人。何やらGBNでマガ家に関わる何かが起きているらしい。
「オレを騙るたぁ良い度胸してやがる。ヒカリからめっちゃ連絡来てんじゃねぇか・・・」
昼過ぎに起床し、端末を見ることなく風呂場に直行したアキラ。次女であるヒカリからの連絡に気付いていなかったようだ。
『おはよう母さん今日は私が一番早起きだね。無理はしないで、ゆっくり休んでね』
『そろそろ起きたかな?昨日の残りだけど、簡単に朝食作っておいたから食べてね』
『姉さんと妹達と相談して、マガ姉妹で配信する事にしたんだ。もし良かったら途中から顔見せてほしいな』
『今ちょっと休憩中。なんだけど、リスナーさんから変な事言われてね?母さんログインしてないよね?ミッションエリアで母さんを見掛けたって言う人が居たんだ』
『母さん起きてる?ちょっと緊急事態なの。GBNで待ってるね』
『母さん!カスミが戻るから一緒に来て!』
「作ってくれた朝飯はもったいねぇけど」
「ヒカリ姉さんなら怒らないよ、行こう母さん」
-GBN内・マガ家フォースネスト-
配信を行い内装も公開される関係上、リアルの家と瓜二つにする訳にはいかないが、一軒家である事は共通しているマガ家のフォースネスト。マガツとマガ姉妹のスタート地点に設定されたリビングにGBNのアバターとなったマガツキ・アキラ/マガツ・ローが現れ、数秒置いてもう一人ダイバーが現れる。本人曰く赤いエミューをイメージしたというダイバールックの少女、マガツキ姉妹四女マガツキ・カスミのGBNアバター【マガジョウネツ】である。
「ヒカリは?他の姉妹はどうした?」
「母さん名前・・・配信してないから大丈夫だとは思うけど」
「すまん。けど緊急事態なんだろ」
「そうだね。ヒカ・・・サイゴ姉さんは配信部屋で情報整理中、マキガイ姉さんとツバッシャ組は機体に乗って捜索。ランキ姉さんは機体を動かせない街とかで聞き込みをしている」
マガ姉妹達は各々動いているらしい。詳細を聞く為に配信部屋へと向かうふたり。
「悪い、遅れた」
「母さん!良かったぁ本物だ・・・」
「母親としての立場も役目も、渡す気はねぇし辞めるつもりも無いから安心しろって」
(お前達に必要とされなくなるまで、な・・・)
まだ感傷を引き摺っているマガツ。表面上はなんとか取り繕ってヒカリことマガサイゴから話を聞く。
「偽者ってのはどういう事だ?」
「これを見て」
配信をアーカイブし、確認する為のモニターを操作するサイゴ。先程まで行われていたマガ姉妹配信を映し出す。
「ここ。このコメント」
「ん?」
シークバー操作によって該当箇所を再生するサイゴ。マキガイ、サイゴ、ランキの姉組が休憩し、ジョウネツ、ツバッサ、バシャバシャの妹組に交代する辺りだった。
『ママオロチ居ないの?さっき会わなかった?』
『お?ナンパか?』
『一周回って新手のナンパ』
『とんだ命知らずが居たもんだな』
『我もさっき見掛けたゾイ』
『戻ってないだけでは?』
『娘の配信に顔見せしないで一人とは考えられんが』
「母さんはログインしてないはずなのに、何人か母さんを見たってコメントしてて」
「一応、その場で姉妹全員のログとフレンド欄を確認して、母さんがログインしていない事を確かめている」
「なるほど?だからオレの偽者がGBNに居るってか」
「うん」「ああ」
同時に返事をする二人。配信でママオロチことマガツの姿を見慣れたリスナーも間違う程にそっくりなダイバールックをしているらしい。
「今は実害ねぇんだろ?それにGBNで名前やら服やらガンプラやらの被りを気にしてたらキリがねぇぞ」
「そっくりなだけの別人なら良いんだが、母さんを騙って何か悪い事をされたら傷付くのは母さんだ。そんな事は絶対に許さない」
拳を握り締めるジョウネツ。サイゴも頷いて同意している。
「私達だけじゃなくて姉妹全員そう思ってるから」
限界だった。気が付いたら二人を抱き締めていた。入浴中に想像してしまった最悪でいつか現実になるかもしれない未来。たとえ今だけでもそれを払拭してくれる娘の言葉に救われた気がした。
「母さん?」
「どうしたんだ?」
急に抱き締められて不思議に思う二人。だが今は顔を見せられない、見せたくない。娘達の前では強い母でいたいから。この涙は墓まで持って行かなければならない。
「悪かったな!朝は会えなかったもんだから、ちょっと補給しねぇと」
「変な母さん。でも母さんならいつでも良いよ」
「姉さんだけズルいぞ!母さん!私も!私もいつでも大丈夫だからな!存分に抱いてくれ!」
何とか泣き顔は見せずに誤魔化せたマガツ。母親であるマガツが大好きな部分は共通しているが、虎視眈々と一人占めを狙うのがマガ姉妹クオリティー。そしてジョウネツは抜けている所があるのか発言の内容が微妙に怪しい。
「さすがに娘は抱けねぇぞ?」
「え?・・・あっ違っ、違うんだ母さん!いつでもハグしていいという意味であって!決してそういう意味ではない、というか分かってて言ってるな!?」
「当たり前だろ?」
悪戯成功と言わんばかりの笑みを見せるマガツ。からかって悪かったとジョウネツの頭を撫でているのだが、サイゴの視線が危うい事に気付いてほしい。そして危険なオーラを放っているのは次女だけではない。
-三女聞き込み中-
「チッ・・・」
「ランキちゃん?どうしたのヒトヲノロエソウナメヲシテル…」
とある街では普段無表情な三女マガランキが聞き込みをしているのだが、マガ家のファンであるリスナーが恐怖を覚えるヤバい目の見開き方をしていたり。
-五女&六女捜索中-
『おねーちゃん笑いながら怒ってる~器用だね~』
「アハハ!そう言うバシャも目が笑ってないぞー!」
機体に搭乗し、フィールド部分を捜索しているのは元気なアホの子である五女マガツバッサと常時眠たげ六女のマガバシャバシャ。二人も微妙に負の感情が見え隠れしていたり。
-長女捜索中?-
「ハァッ!?クオン様!?何故、何故こんな所に!あっそうかお散歩配信!後でアーカイブになるかなぁ・・・見なきゃ亡者失格───ってそうじゃない!ママの偽者を探さなきゃ!あぁでもクオン様・・・いやいや!ママの一大事・・・でもちょっとだけ、いやいやいや!」
ツバッシャ組と同じく機体に搭乗しての捜索担当のはずだった、愛すべきポンコツ長女マガマキガイ。捜索中に自分の推しであり、【マガマキガイというダイバー】を作り上げた憧れの女性ダイバー「クオン」を偶然見付けてしまい、機体から降りてしまっている。大好きなママ、けど憧れの人が、と物陰でメチャクチャ葛藤していた。軽く不審者である。
このように一人を除いて「先を越された」事を感じ取っているマガ姉妹達。Xラウンダーか何かなのだろうか。
「うっし!オレも出るわ。ランキ一人で聞き込みは大変だろうし」
「むぅ・・・私はここで皆の情報をまとめてるよ」
「なら私は機体組の方に行こうかな。少しでも捜索範囲を広げよう」
アジアン・サーバー内の特定の地域で目撃されているらしいマガツにそっくりなダイバー捜索に加わる為、各々出発するマガツとジョウネツ。
『では母さんも気を付けて』
「おう、そっちもな」
機体に搭乗し、広範囲を捜索する予定のジョウネツを見送るマガツ。ジョウネツの機体はゼイドラの改造機なのだが何故か首が二つ存在する独特なカスタムが施されていた。
「マガジョウネツ!パンドラ、行く!」
何とも禁断の気配漂う名称のゼイドラが飛び立つ。
「さてと、何処から行くか」
アジアン・サーバーの簡単なマップを表示するマガツ。そこにサイゴがまとめた目撃地点を重ねる。
「手分けしてる以上、まだ見てねぇ所が良いよな」
ランキがまだ回っていない場所を探す事にしたマガツ。最初の捜索地点に選んだのは神尾神社───
「こんな場所があったのか・・・神社っていやぁ狐っ娘のフォースが印象強くて他は知らなかったな」
マガツの言う【狐っ娘】とはフォース【天地神明】のリーダーであるダイバー【テンコ】の事である。その天地神明のフォースネストが【天地神社】という旅館と神社が一体化したような施設であり、個人・フォース共にランク10位という魔窟のダイバーテンコと精鋭揃いのフォースメンバーの知名度もあって現在のGBNで神社といえば、という程である。
「ちょっと寂れてるな・・・こういう設定なのか?」
「わたしは好きだよ?この雰囲気」
「あ?」
マガツの独り言に反応し、言葉を返す者が一人。怪訝に思うマガツが振り返った先には大きな御神木。地表に露出した根に腰掛けている女性と思わしき人物。
「まさか最初に大当たりとはなぁ」
「んー?」
「本当に似てやがる・・・けどオレはそんな危ねぇ格好はしてねぇぞ?」
マガツに声を掛けたのはマガツそっくりな女性ダイバーだった。だが本人が言ったように服装はかなり異なる。というか「服」なのかどうかも怪しい。青い触手を束ねて全身に巻き付け、その上に茶色の装甲を纏っている。大事な部分は隠れているが、中々にニッチかつ扇情的な格好をしていた。
「・・・随分と熱狂的なファン、って訳でもないか」
マガツの視線は茶色の装甲のような部位に注がれている。その装甲モドキは蛇のように伸び、ほぼ全身を覆っている触手服の一部を防御しているように見える。が、問題は蛇の頭のような一際大型の装甲部分。マガツの愛機であるハメツオロチの頭部そっくりなのである。
「ファンって言えばファンかなぁ、ママの事は知ってるしさ」
「・・・は?」
何者か探りを入れようとしていたマガツだったが、少女の言葉にフリーズする。目の前の少女は今なんと言ったのか?
「ようやく会えたね。ママ」
「・・・オレが、お前の?」
「そうだよ?だってわたしは───」
少女が言い終わる前に全力疾走で近寄るマガツ。その行動に少女は驚くが、直ぐに笑顔を見せる。
「やっとママと遊べるね!」
「オレの娘はアイツらだけだ!訳の分からねぇ事言ってんじゃねぇ!」
ここから二人の鬼ごっこが始まり冒頭の場面へと戻る。
「じゃあそろそろ話しても良いかな?」
「・・・」
「沈黙は肯定と受け取りまーす」
言葉を発していないだけでなく、思い切り睨んでいるのだが少女はそれに臆す事なく悠々と語り出す。
「気が付いたら森の中でー、ママに会わなきゃいけないって思ってー、でもママの居場所知らなくてー、聞いてみても分からなくてー、フラフラしてたら見付けて会えた!以上!」
内容ペラっペラだった。
「・・・そんな訳分かんねぇ話を信じろってか」
「わたしがママから生まれたのは本当だよ?」
「っ!ふざけるなぁ!!!」
ついに激昂するマガツ。非戦闘エリアである事も忘れて愛機であるハメツオロチを呼び出そうとする。が、勿論不可能な行為である。
「クソッ!」
「おっ?今度はガンプラ?良いよ!って言いたい所だけど、わたし持ってないんだよねぇ・・・残念」
GBNにログインしているにも関わらずガンプラは未所持と言う少女。それも一応可能だがかなりの少数である事は間違いない。
「表出ろぉ!!んなふざけた事二度と言えねぇように叩き潰してやる!!!」
戦闘可能エリアへの移動を促すマガツ。かなり荒々しい言い方だが。そんな険悪な雰囲気が漂う境内に現れる人物が六人───
「母さん!大丈夫!?」
「お前ら・・・」
「面白くなってきたねぇ」
マガツの本当の娘である六姉妹だった。少女を見るなり全員驚愕している。
「ママそっくり・・・」
「母さんの偽者、よく作ってあるね」
「私達と同じくらいかな?あの格好は中々・・・」
「・・・」
「偽者めー!悪さするなら許さないぞー!」
「わぁ~似てるね~」
前言撤回。驚いているのはポンコツ長女のマキガイことアミだけであり、サイゴことヒカリは少女を観察する視線が鋭く、ランキことチユは表情も発言も微妙に危なくなっており、ジョウネツことカスミは無言で睨み付け、ツバッサことフウは単純に怒り、バシャバシャことミレンはいつも通りのほほんとしているが目が笑っておらず瞳から光が消えている。
「やぁやぁお姉ちゃんたちハジメマシテー」
そんなマガ姉妹達にもニコニコしながら手を振る少女。
「お姉ちゃん」発言に怪訝な表情を浮かべる姉妹達。
「お姉ちゃん?」
「そう、お姉ちゃん」
「聞く必要ねぇぞ。オレから生まれただの気付いたら森に居ただの言ってんだ」
マガツの言葉でさらに悪化する空気だが、サイゴだけは冷静さを保っていた。
「もしかして、だけど」
「んー?」
「ELダイバーって事かも」
全員がサイゴに注目し、言葉の続きを待っている。サイゴも、多分だけどと前置きした上で語り出す。
「GBNで何人も確認されてる電子生命体。GBNの余剰データから生まれるらしいんだ。母さんから生まれたっていうのは、母さんのデータが基になったって事じゃないかな?見た目もそっくりだし・・・何であんな格好なのかは分からないけど」
「森で目が覚めたとも言っていたらしいが、それは誕生した場所が偶然その森だったというだけだろうね」
サイゴの推察にランキが補足を入れ、他の姉妹達も幾分か納得した様子。マガツだけは未だ不機嫌だが。
「ママだけじゃなくてお姉ちゃん達にも会いたかったんだよ?みーんなわたしのお姉ちゃん!」
「マガ家全員のデータで生まれたって事かな・・・」
「配信も大体何人か一緒にやっているからね。姉上の考えで正解だと思うよ。本当にELダイバーであるなら、の話だがね」
疑念はまだ晴れないが、現状「マガ家のデータがメインとなって誕生したELダイバー」という認識に落ち着いたらしい。
「で、コイツをどうするかだ」
「一緒に行くよ?」
「ちょっと黙ってろ」
「はーい」
やはりまだ和解は出来ないらしい。
「まずはELバースセンターで確認と登録かな。途中で妙な事をするようなら、後ろから撃つなり地面とキスしてもらうなりすれば良いから」
「うわぁーお姉ちゃんってば物騒ー」
「ちょっと黙ってて」
「うぇーい」
やはり性格が違っても親子という事なのだろうか。さらっと恐ろしい事を言うサイゴだが、全く気にしていない少女も大概である。
ELバースセンターに到着するまで、誰の機体に乗せるかで少し揉めたり、到着後にELダイバーとして認定された際名前が無い事に今更気付いたり、マガツは最後まで不機嫌だったりと短時間の間に幾つかの問題が連続して発生したが、ダイバーマガツ・ローを現状の後見人として少女は引き取られる事になった。
「では改めて、ELダイバーマガショクだよ!ヨロシクね!お母さん!お姉ちゃん達!」
マガ姉妹達とはそれなりに打ち解けたショク。特に六女であり姉しか居なかったバシャバシャは喜んでいるのだが、マガツだけは距離感を掴みかねている。
「オレはあんな親にはならないって決めたんだ・・・娘は絶対に幸せにする・・・」
思い出すのは苦い記憶。【同じ顔】【オレとわたし】【母親】【捨てられた】そんな言葉が脳裏に浮かんでは消える。
後見人を断る事も考えた
だがショクを捨てたらあの女と同じになる
ショクは自分を母と呼ぶ
自分と同じ顔で
それがあの女の記憶を呼び起こす
でも見捨てられない
悪循環
「どうすりゃ良いんだ・・・誰か教えてくれよ・・・」
その言葉に応えてくれる者は居ない。
どうしてこうなったのか。
バッドエンドという訳ではないです。
【マガショク】
新たに誕生・認定されたELダイバー。
マガ家のダイバーのデータと、悪ガキ(リスナー)のデータが基になって誕生したと思われる。顔はマガツ本人や娘達が驚き、リスナーが間違える程にマガツそっくりだが、マガ姉妹達と同じ少女と言えるくらいには幼い。ようするに10代のマガツといった容姿。
青い触手を束ねて全身に巻き付け、茶色の装甲で各部を覆ったような服装(?)をしている。関節部分は茶色の装甲で覆い、他は青い触手とマガツのダイバールックとは配色が逆になっているのが特徴。引き取られてからは「母さんが誤解されると困るから」という理由で、サイゴに黒いコートを着せられている。
マガショクという名前はマキガイが命名した。
【マガジョウネツ】
マガ姉妹の四女。快活なスポーツ娘。
ダイバールックは「赤いエミュー」をイメージしたとの事で、妹のツバッサと同じく鳥類と人を合わせたような異形娘型。赤い羽毛に包まれているが溶岩のような甲殻を纏っている部位もあり、「鳥のような化物」感が強い。
乗機はゼイドラベースの改造機「パンドラ」。本来の頭部の代わりにバクゥハウンドのケルベロスウィザードから移植したツインヘッドを備えている。武装はツインヘッドのビームファングとビーム砲に加え、ゼイドラガンやビームバスターといった元々の武装を流用している。
【神尾神社】
アジアン・サーバーの和風エリアにひっそりと存在する神社。広い境内と大きな御神木がある以外は特に何も無いフレーバーエリア。静かに時間が流れる独特な雰囲気を気に入るダイバーも少ないながらも存在する。ガンプラの呼び出し、および乗り入れが出来ない非戦闘区域。
【天地神社】(出典 アルキメです。様)
ランク10位のダイバー「テンコ」が率いるフォース「天地神明」のフォースネストにして宿泊施設。神社と旅館があわさったような施設であり、フォースと所属ダイバーの知名度もあって神社といえば、というまでに有名。