GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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ブメの投げ合い


魔少女(笑)と砂漠

「クジョウキョウヤクジョウキョウヤクジョウキョウヤクジョウキョウヤクジョウキョウヤクジョウキョウヤ」

 

セントラルロビー外周部のベンチに深く座り、念仏か呪詛のようにとある男【クジョウ・キョウヤ】の名を呟き続ける少女が居た。ゲドーからポンコツかガキンチョにクラスチェンジしつつあるゲドーリトルである。

 

「クジョウキョウヤ・・・あー!なんで!たたかわないのー!リベンジしたいのにー!」

 

キョウヤに恥をかかされたと逆恨みしているゲドーリトル。日々ディメンションで憎きAGE-Ⅱマグナムの姿を、黒い制服を纏ったキョウヤを探しているのだが、どれだけ目をこらそうがレーダーで索敵しようが見付からない。リベンジに燃えるゲドーリトルにとってはフラストレーションが溜まる一方なのだが、そもそも広大なGBNでたった一人のダイバー、たった一機のガンプラを足で探す事の方が馬鹿げた行動である事に彼女は気付いていない。

 

「ぐぬぅ・・・クジョウキョウヤはいったいどこにいるのだ・・・」

 

以前の遭遇、打倒キョウヤを掲げる切っ掛けになった戦闘は運が良かったと言えば良いし、悪いと言えば悪い。さらにキョウヤも今は謎の改造ツールの情報を集める為に、様々な場所を飛び回っているのだ。何のアポイントメント無しに、彼一人に狙いを絞って出会う事はほぼ不可能に近い。

 

「みつかるまでさがせばみつかるのだな!」

 

当たるまでガチャ回せば確率100%のような事を呟いて立ち上がるゲドーリトル。本当に何が彼女を突き動かすのか。

 

「パパがいってた、ききこみをしてみよう」

 

セントラルロビーのミッションカウンターへと向かうゲドーリトル。様々なダイバーが集まるそこなら情報も集まるだろう。

 

「おい!おまえ!」

 

聞き方・・・

 

 

-数分後-

 

ロビーの壁に寄りかかり不満気な表情をしているゲドーリトルの姿があった。案の定聞き込みがうまくいかないようだ。あんな聞き方をすれば誰だって不審がるし、気分も良くないだろう。むしろマギーやキョウヤといった面々が善人すぎる、大人の対応が出来ているだけなのだが。

 

「くぅ・・・どいつもコイツもクジョウキョウヤのいばしょをしらないとは・・・やっぱりサメドラーグでさがしたほーがはやい───」

 

「チャンプをペリシアで見た?」

 

「なぬ?」

 

ゲドーリトルが愛機であるサメドラーグでの探索に戻ろうとした瞬間、ギリギリ聞き取れるボリュームで聞き捨てならない内容の言葉が聞こえてきた。

 

「そうそう、ビックリしちゃった。こんな所にも来るんだなぁって」

「まぁガンプラ愛強い人っぽいし、息抜きも兼ねて時々見に来るんじゃない?フォースリーダーも楽じゃないって事でしょ」

「息抜きかぁ、あの完璧超人が疲れてる姿なんて想像出来ないけどな」

 

ゲドーリトルから少し離れた位置で会話している三人組のダイバー達。女性二人に男性一人の構成だ。その話を盗み聞きしたゲドーリトルは悪い笑顔を浮かべながら、格納庫へと移動しサメドラーグに搭乗する。

 

「むふふぅ!いーことをきいたぞぉ、ペリシアにチャンプ、つまりはクジョウキョウヤ!オマケにつかれてる!」

 

疲れているのは話をしていたダイバーの憶測であり、確定した情報ではないのだが。

 

「まってるのだクジョウキョウヤァ!ゲドーリトル!サメドラーグいくのだぁ!」

 

意気揚々と転送ゲートを潜り、ペリシアエリアへと向かうサメドラーグ。格納庫へ移動するゲドーリトルの背中を見つめる視線があった事に気付かないまま。

 

 

 

-ペリシア・エリア-

よりも遥か手前。砂漠をあっちにフラフラこっちにフラフラと飛行する鮫のような機体。勿論ゲドーリトルの操縦するサメドラーグである。

 

「ペリシアってどういくの?」

 

完全に迷子になっている。ペリシアという場所が存在するという事と、砂漠地帯にあるという事以外は何も知らないゲドーリトル。打倒チャンプの執念と勢いだけで飛び出した結果がこれである。

 

「ぬぅ・・・だれかにきければ」

 

こんなだだっ広い砂漠のど真ん中で聞き込みが出来る他のダイバーが居るのだろうか。それ以前にセントラルロビーでしていたような聞き方ではマトモな情報は集まらないと思うが。

 

「すこしおりる・・・うごかしづらいなぁ、どーしたサメドラーグ?」

 

高度を下げようとするゲドーリトルだが、出撃時と今で機体操作に違和感を感じているらしい。その原因はすぐ近くどころか現在進行形でサメドラーグを苛み続けているのだがゲドーリトルは気付いていない。ヴェイガン機が大好きなら今自分が居るフィールドとゴメルの存在を思い出してほしいところだが。

 

「なんかザリュザリュする・・・ステータス・・・なんできいろ!?」

 

ついさっきの高度を下げて他のダイバーを捜索する考えを改め、完全に着陸する事にしたらしい。ゲドーリトルの気付かないうちに舞っている砂塵が機体に付着したり隙間から入り込んだり、機能不全の手前まで状態が悪化していたのだった。ギリギリの所でステータスチェックを行い、機体の状態がイエローゾーンに突入している事に気付く事ができたようだ。砂中に潜行する事が可能なゴメルはともかく、防塵処理を施していないザムドラーグの改造機では何とか動かすのが限界だろう。

 

「たたかってないのに・・・ぐあいわるいの?サメドラーグ」

 

第一声が「おいお前」という偉そうな聞き込み時と異なり、機体を慈しむような声色のゲドーリトル。やはり自分の愛機は心配なのだろう。ガンプラに対して具合が悪いのか、という子供特有の表現だが。

 

「しかたない、あるいてこー」

 

着陸し、サメドラーグから降りるゲドーリトル。待機状態になった機体が粒子となって消えるが───

 

「あついあるきづらいザリザリするむりィ!」

 

また直ぐに出現させコックピットに乗り込んだ、というか逃げ込んだ。事前に情報を仕入れずに弾丸砂漠渡りを決行した当然の報いである。

 

「うみゅぅ・・・サメドラーグはぐあいわるいし、そとあついしザリザリするし・・・どーすればいーのだー・・・」

 

一旦戻ればいいのでは。

 

 

 

「何をしてるのかねぇ、アレはさ」

「普通に遭難してるんじゃないんスかね・・・」

 

立ち往生しているサメドラーグを離れた位置から双眼鏡で観察している二人組。呆れた様子でサメドラーグを見ているのは、どことなく機動戦士ガンダムSEEDの登場人物であるアンドリュー・バルトフェルドを思わせる容姿をした長髪の女性ダイバー。若干の同情を示しているのは同じくSEEDシリーズのマーチン・ダコスタのような男性ダイバー。

 

「偽者騒動を起こしたヤツが懲りてないのかと思ったけど、アレは別のダイバーみたいだねぇ」

「そういやシャフリヤールの偽者もザムドラーグを使ってたんでしたっけ」

 

ペリシアにて、ビルダーとして名高いシャフリヤールの名を騙った偽者騒動の犯人もザムドラーグの改造機を使用していた事から、たまたま見かけたサメドラーグを怪しんでいたらしい。

 

「どうします?一瞬だけ降りた所を見るに子供みたいっスけど」

「砂漠エリアの仕様を知らずに来てエンストだろうさ。見捨てるのも寝覚めが悪いし、疑ってジロジロ見ちまった謝罪も兼ねてコーヒーでも出してやるかね」

「・・・そっスね」

 

女性ダイバーのコーヒー発言に男性ダイバーが微妙な顔をするが、とりあえず手助けする事にはなったらしい。背後に停められていたジープの運転席に男性が、助手席に女性が乗り込みサメドラーグに向けてジープを走らせる。

 

「むぅ・・・うむぅ・・・ぬ?」

 

コックピット内で腕を組み、うんうん唸っていたゲドーリトルがジープの接近に気付く。

 

「そこのクルマ!なんのよーなのだ!」

『お困りじゃないかい?もし良ければ拾ってあげようか?』

「ふん!あやしーおとこについてっちゃダメなのだぞ!ひっかからないからな!」

 

 

「だってさ?怪しい男くん?」

「えぇ!?自分のせいっスか!?」

「あたしは女だからねぇ」

 

妙な所で子供らしさを発揮するゲドーリトル。微笑ましい意地の張り方に笑いながら運転席の男性をからかう女性ダイバー。

 

「まぁ強要してる訳じゃないさ。あんたもペリシアが目的かい?なら向こうで───」

『まてまて!ペリシアにいくのか!?ならワタシもつれてけー!』

「一瞬で食い付いてきた・・・」

 

こうしてゲドーリトルのペリシア行きは何とかなった。

 

 

 

「あぁ~すずしーかいてきーサイコー・・・」

「さっきまで露骨に警戒してたクセに・・・」

「まぁ子供はこれくらい素直な方が良いさね」

 

レセップス級陸上戦艦

それがゲドーリトルとサメドラーグが相乗りさせてもらっている艦であり、女性ダイバー【アン・ティー】がリーダーを務めるフォース【C&Y】のフォースネストでもある。そのラウンジのテーブルに突っ伏し、冷房万歳状態でグダグダしているのが今のゲドーリトルである。C&Yの副リーダーである【マーチ・タコスノ】が言っていた通り、レセップスに乗り込んだ当初は露骨に不審がって警戒していたのだが、ラウンジに通されるなり快適な環境に順応し現在に至る。即落ち何コマとか言ってはいけない。

 

「ねーねー、なんかのみものないー?コインはそこそこあるのだがー?」

「なんつー図々しいガキンチョだよ・・・」

「ちょうど良いじゃないさ、コーヒーは飲めるかい?」

「のめるよーパパがコーヒーすきだから、ワタシものむようになったのー」

 

厚顔無恥極まるゲドーリトル。もはや冷房の効いた部屋でぐうたらしている、ただの子供である。そんなゲドーリトルにコーヒーを振る舞おうとするアン・ティー。二人のやり取りを見たタコスノは密かにゲドーリトルに同情した。

 

「子供にコーヒーの味を教えるとは、あんたの親父さんとは良い話が出来そうだね」

「にへへーパパはスゴいんだぞー」

(これ今日のブレンド試そうとしてるな・・・)

 

そんなこんなでコーヒーが完成し、ゲドーリトルの前にカップが置かれる。

 

「ほれ、飲んでみな」

「おぉーアンティーのコーヒーいただきまーす」

 

カップを両手で持って一口。結果は───

 

「ん・・・むぅ・・・にゅぅ・・・んぅ?」

 

名探偵黄色いネズミの如くシワシワな顔になるゲドーリトル。美味しいとは言えず、かと言って不味い訳でもない不思議な味わいに感想という感想が出てこないらしい。

 

「ブレンドは要改良かねぇ」

「こんなバグみたいな表情になるのかGBN・・・」

「ペリシアまで送る代金という事で協力して───」

 

アン・ティーがブレンドの研究にゲドーリトルを誘おうとした瞬間に走る衝撃。レセップスが何者かからの攻撃を受けている。

 

「っ!普通の揺れ方じゃない、攻撃か!?」

「被害は?」

『直撃はありません!艦の進行を止めるように周囲の地形に撃ち込まれています!』

 

直接の被害は無いものの至近弾によってレセップスが揺れている。おそらく他のダイバーからの攻撃だろうと、対応を考えるアン・ティーとタコスノだったが───

 

「!」

「あっおい!」

 

ゲドーリトルがラウンジを出て走る。おそらくは格納庫に向かいたいのだろう。

 

「まさかアイツが?」

「内通・手引きなんて出来そうなタイプには見えなかったけどねぇ。もし本当にあたし等を潰す為に一芝居打ってたなら、大した役者さね」

 

そう言ってゲドーリトルが出ていったのと同じ方向に向かうアン・ティー。

 

「どちらにせよ打って出る。喧嘩を売る相手は選ばなきゃねぇ」

 

 

「サメドラーグどっちだっけ・・・」

 

ゲドーリトルはといえば案の定迷っていた。そんな彼女に容易く追い付くアン・ティー。

 

「何やってんだい」

「アンティーのかたきをとる!」

「あたしは死んでないがねぇ・・・」

「コーヒーのかたきとる!」

 

警戒していた時やぐうたらしていた時とは違い真剣な声で決意を言葉に乗せるゲドーリトル。

 

「パパがいってた!ひとにだしてもらったコーヒーにはありがとうしなきゃダメ!さっきのドッカーン!でコーヒーこぼれた!タコスもこーげきっていってた!だからたたかう!まだアンティーのコーヒーのみおわってない!ありがとういえてない!」

「・・・あんたの事、疑ってばかりで悪いね。戻ってきたら最高のコーヒーを淹れてやるさね」

 

ポンポン、とゲドーリトルの頭に手を乗せるアン・ティー。通ってきた通路を示し、ゲドーリトルを案内する。

 

「格納庫はこっちだ、行くよ」

「うん!」

 

 

一方、レセップスに攻撃を仕掛けたダイバー側。空に浮かぶ機影が二つ。キマリス・トルーパーの上半身に風雲再起の首から下を合わせ、ケンタウロスのようになっている機体と、大型MAである事以外は原型が分からない機体。

 

『本当に撃って良かったの?』

「出てこないんだから仕方ないだろう」

「そうそう、それにフォース丸ごと倒せばポイントもザックザクよ」

 

不安げなキマリスのダイバーと、悪びれる様子の無い大型機のダイバー。大型機は複座式になっており、男女が一人づつ搭乗しているらしい。

 

「もういっそレセップスごとやっちゃおうよ」

「いや、お出ましのようだぞ」

 

レセップス中央のゲートが開き、サメドラーグとカスタムしたラゴゥと思われる機体が出てきたのを見て大型機の男性ダイバーは笑みを見せる。

 

 

『万全な状態じゃないんだ、無理はしないことさね』

「ムリになるまえにたおす!」

『勇ましいねぇ・・・手の空いてるやつは付いて来な!タコ坊は艦砲射撃で援護!』

 

空戦が可能なサメドラーグが上昇していき、陸戦用のラゴゥが地上から様子を伺う。

 

『一機で上がってくるとはな!』

『飛んで火に入る夏の虫・・・鮫?』

「コーヒーのかたきぃぃぃ!」

 

ゲドーリトルの言葉にハテナマークが飛び交う大型機のダイバー二人。直ぐに気を持ち直し、機体正面のビーム砲をまとめて放ってくる。

 

「おそいおそい!クジョウキョウヤよりおそいのだ!」

 

機能不全手前まで状態が悪化し、大型のシルエットであるにも関わらず一発も被弾しないサメドラーグ。操縦しているゲドーリトルは元々初心者狩りで楽に稼いでいたが、素の実力が無い訳ではないのだ。

 

『当たらない!コイツ初心者じゃない!?』

『クジョウ・キョウヤってチャンプだろ!?憧れてるから会いたいんじゃなかったのかよ!』

「あこがれだとぉ!?ワタシのポイントかせぎをじゃましたクジョウキョウヤになんであこがれるのだ!」

 

どうやらセントラルロビーで、ペリシアにチャンプが居るらしいという会話をしていた三人組のダイバーだったようだ。チャンプを探し回っていたゲドーリトルを、チャンプに憧れる初心者と勘違いしてペリシア付近に誘い込んだらしい。つまりゲドーリトルと彼らは───

 

『ポイント稼ぎ・・・?お前同業者かよ!』

 

元初心者狩りと現初心者狩りが勘違いの中で出会っただけだった。

 

「あったれー!」

『効くかよんなもん!』

「ぬっ!?」

 

サメドラーグお得意の誘導ビームを放つゲドーリトルだが、機体に着弾せず装甲表面付近で流された。その巨体をカバーする為の防御機能を備えているのだろう。

 

 

 

「Iフィールドかねぇ・・・モノアイも見えるしジオン系モビルアーマーの改造機ってところかい」

 

ラゴゥのコックピット内で自分の考えを口に出すアン・ティー。彼女の予想通り、大型のMAはノイエ・ジールをベースに様々な機体の装備をミキシングし、改造によって竜のようなシルエットとなった【ドラゴンノイエ】である。

 

「ビーム武装がメインのヴェイガン系じゃ、ちと難しい相手だねぇ・・・タコ坊、連装砲ならそこそこダメージが入るだろうから、隙を見て叩き込みな」

『無茶言ってくれるっスね・・・でも了解っス!』

 

Iフィールドがある以上、ビーム兵器しか備えていないサメドラーグでは有効打は望めない。またアン・ティーのラゴゥも、頭部ビームサーベルの代わりに仕込まれたビーム砲はサメドラーグと同じく期待出来ず、ハシュマルから移植したテイルブレードは届かない。どうにかして高度を下げさせたい所だが───

 

『あのー・・・そろそろ許してもらえたりは』

「無理さね」

『ですよね・・・あの、本当にごめんなさい』

 

ラゴゥに踏みつけられる形で砂上に横たわっているのは、ドラゴンノイエの隣に居たケンタウロス型のキマリスである【スタートルーパー】なのだが、撃破手前の大破状態になっている。サメドラーグが上がって来たのと入れ替わる形で地上のラゴゥとレセップスを狙って降りて来たのだが、アン・ティーとC&Yメンバーの連携の前にアッサリやられていたのだった。

 

 

『あぁもう!何で当たらないのよ!私達と変わんないレベルなんでしょ!』

『同じ初心者狩りのよしみで墜ちろっての!』

「ふん!クジョウキョウヤいがいにやられたことなんてないのだ!おまえたちみたいなヨワヨワダイバーになんてまけないのだ~」

『嘗めやがってぇ!』

 

相手の冷静さを奪う為の嘘か本当に忘れているのか、クジョウ・キョウヤ以外では謎のナラティブガンダムとカプルの改造機のコンビに敗北している。調子にノリやすいゲドーリトルの性格からして、おそらく忘れている。だが状況が好転した訳ではない。サメドラーグは決定打に欠け、ドラゴンノイエの攻撃はサメドラーグに当たらない。互いに完全な膠着状態に陥ったと思われたが───

 

「ぬぅっ・・・やっぱりうごかしづらい!」

 

つい先程アン・ティーから言われた事、「万全な状態ではない」という事実がついに牙を剥いた。ただ飛行してペリシアを探していた時よりも、激しい戦闘機動をとっていたのだ。砂塵による機体への蓄積ダメージは通常飛行の比ではない。

 

「でもこんなやつにまけない!」

『冷静になりな!降ろしてくれれば援護できる!』

「アンティー?」

 

いつの間にかレセップスから離れた位置に来てしまっていたサメドラーグとドラゴンノイエ。地表に視線を向ければアン・ティーのラゴゥとC&Yの所属機が各々の武装を構えていた。その光景を見たゲドーリトルの脳裏にマギーの言葉が浮かぶ。

 

(リトルちゃんは一人で戦おうとしすぎよん?折角のGBNなんだから皆で楽しまなくちゃ!)

 

「みんなで・・・わかった!」

 

サメドラーグをドラゴンノイエの頭上に向かって加速させるゲドーリトル。

 

「サメドラーグ!もうすこしだけがんばれ!」

 

その言葉が届いたかのようにドラゴンノイエの迎撃を潜り抜け、直上を取るサメドラーグ。

 

『バァーカ!死角だとでも思ったか!』

 

メカニカルな羽根が特徴的なバックパック。元はインフィニットジャスティスのファトゥムだったのだろう。機体の真上を向いたハイパーフォルティスビーム砲から放たれるビームがサメドラーグを襲う。

 

「ぐぅ!けどまけない!うって!サメドラーグ!」

 

左肩に一発直撃しながらも、胸部装甲を開き原型機から出力を上昇させたサメドラーグキャノンを至近距離から浴びせる事に成功する。完全に防ぐ事は出来なかったのか、バックパックのビーム砲部分が溶解している。そのまま逃げるように、今度は下方向へ向かって加速するサメドラーグ。それを逃がすものかと追い掛けるドラゴンノイエ。

 

『待ちやがれテメェ!』

「もうちょっと・・・!もうちょっとだけ!」

『ヤバいよ!これ以上スピード出したらぶつかる!』

 

ビームを乱射しながらサメドラーグを追うドラゴンノイエだが、もう一人の搭乗者が状況に気付く。まるで地面に突っ込もうとしているサメドラーグの軌道。今減速しなければ自分達も激突は免れないだろう。

 

『クッソォ!』

『うぇぇ・・・』

 

急減速を掛け、何とか低空に止まるドラゴンノイエ。サメドラーグは───

 

「ぬうぅぅぅぅぅ!アシュラリトルスペシャルゥゥゥゥゥ!」

 

割と余裕な感じで減速からの急加速で地面との激突を回避していた。あとそれはAGEではなく00だし、阿修羅すら凌駕したのはトリニティとの戦闘中だし、空中変形した訳ではないのでスペシャルでもない。

 

『逃がすかよクソガキが───』

『随分と視野が狭いねぇ』

 

 

「敵MAに向けて一斉射撃!」

 

回頭を完了したレセップスの連装砲と垂直ミサイルランチャーからそれぞれ砲弾とミサイルが放たれる。低空まで降りてきたドラゴンノイエにレセップスの攻撃とC&Y所属機の実弾火器が叩き込まれた。

 

『うおぉぉぉぉぉあぁぁぁぁ!?』

『きゃあぁぁぁ!』

 

さすがに大型機のIフィールドでも実弾は防げない。攻撃のほぼ全てが直撃したドラゴンノイエは撃破寸前の満身創痍だった。

 

『ま、まだ・・・墜ちては───』

『視野が狭いって言ったばかりだろう?』

 

僚機が踏み台となりジャンプしたラゴゥのテイルブレードが、ズタズタになったドラゴンノイエの腹部メガ粒子砲だった部分に突き刺さる。ワイヤーの引き戻しを利用してドラゴンノイエの装甲に取り付き、口部ビーム砲を至近距離で解き放った。損傷によりIフィールドが機能しなくなったドラゴンノイエにこれを防ぐ術は最早無く。ゆっくりと落下していく偽竜は落着とほぼ同時にテクスチャの塵となり、舞い上がる砂塵の中に消えていったのだった。

 

 

「ワタシがカッコよくやっつけるはずだったのにぃ」

「それは悪かったねぇ」

「てこずってたクセに良く言う・・・」

 

戦闘終了後

改めてペリシアへと向かい、ようやく辿り着いたC&Yとゲドーリトル。降参したスタートルーパーのダイバーは謝罪の為、一時的にC&Yの雑用として働くらしい。ペリシアの展示エリアに到着したゲドーリトルにアン・ティーが言葉を掛ける。

 

「あたしらは野暮用があってペリシアに来たが、そういやあんたは何の為に来たんだい?」

「ふふーん、クジョウキョウヤがここにいるらしいからな!ワタシにはじをかかせたうらみをはらすため、ちょーせんじょーをたたきつけてやるのだ!」

 

そのやり取りを聞いたスタートルーパーのダイバーがビクッと体を震わせた。

 

「ペリシアにチャンプが?そんな話聞いた事無いっスけどねぇ」

「そこのヤツがはなしてたのだ!ペリシアでクジョウキョウヤ、チャンプをみたとな!」

「え、えーと・・・そのぉ、あの話は・・・う、ウソでして・・・」

 

「へ?」

 

ゲドーリトル会心のポカーン・・・である。その様子を見たアン・ティーは苦笑しながら、タコスノはため息を吐きながら、あぁそういう事か、と察した。

 

「えっ?えぇ?ウソ?ここまできたのに?いない?クジョウキョウヤいないの?」

 

まだ現実を飲み込めないゲドーリトル。次の瞬間、膝から崩れ落ちた。

 

「なぁんでぇぇぇぇぇ!」

 

少女の叫びがペリシアに響き渡った。

 

 

 

「・・・」

 

所変わってレセップス内のラウンジ。ペリシアに向かっていた時と同じくテーブルに突っ伏しているゲドーリトルだが、快適な環境でぐうたらモードだった行きとは違い、不機嫌そのものな表情をしている。なんなら少し涙目である。

 

「人生そうそう上手く行くもんじゃないさね」

 

不貞腐れたゲドーリトルの傍にコーヒーカップを置くアン・ティー。

 

「・・・む」

「終わったら最高の一杯を淹れてやるって言っただろう?」

 

ムクリと起き上がり、コーヒーを飲むゲドーリトル。驚いた様子で目を見開く。

 

「おいしい!」

「お気に召したようでなにより。近々この艦を使って店をやる予定なんだ、一つ試食してみてくれるかい?」

「いいよ!」

「ヨシきた」

 

メニューとして提供予定だというドネルケバブを頬張るゲドーリトル。先程までの不機嫌オーラは何処へやら、満面の笑みでケバブを平らげコーヒーも飲み干した。

 

「ごちそーさまでした!」

「お粗末様」

「アンティー!」

「ん?」

 

笑顔を崩す事なく、父親の教え通りに───

 

「おいしかった!ありがと!」

 

しっかりお礼が言えましたとさ。




お礼はちゃんと言おうね。

【アン・ティー】(出典 朔紗奈 様)
朔紗奈様の許可をいただき、「可愛い子達に会いに行く」の本編より過去の時間軸でお借りしました。
本編との違いとして、「酒場ト・フェルドは開店していない」「フォースC&Yは結成した直後くらい」となっています。
「砂漠戦に限りロンメル隊とも互角以上に戦える」という点から、フォースとしてそこそこ長くGBNをプレイしている。という本編未使用の設定をお借りさせていただいた事、御礼申し上げます。
搭乗機の正式名称は「ラゴゥレッドフレームカスタム」

【マーチ・タコスノ】(出典 朔紗奈 様)
アン・ティーと同じくお借りしたキャラクター。
フォースC&Yの副リーダーも務めている。
「ヒルドルブ」に搭乗して戦闘も行うが、今回はレセップスからの支援を担当した。

【テラナ、ノーバ、フィニィ】
ゲドーリトルをペリシアに誘い込んでポイントを奪おうとした初心者狩りダイバー達。
テラナがケンタウロス型キマリス「スタートルーパー」を操縦する女性ダイバー。
ノイエ・ジールを改造した複座式の大型MA「ドラゴンノイエ」にノーバとフィニィが搭乗し、ノーバが火器管制を担当、フィニィが操縦担当となる。
なお、両機とも砂漠での奇襲用に防塵処理済み。
テラナは酒場ト・フェルドの開店を手伝う雑用として一時的にC&Yに所属し、後にソロダイバーとして再出発したが、ノーバとフィニィは撃破されてからの詳細は不明。
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