『まてー!ポイントになれー!』
「ゲドーちゃん突っ込みすぎだよぉ」
もう大体の状況が分かるね。凄いね。
『マタマタのほういったぞ!』
「えっ、ちょっ、急に───」
森林地帯の上を飛ぶのはサメのようなザムドラーグ。何かを追いかけていたようだったが、その追いかけていた何かが別の方向に切り返したらしい。そしてその別の方向───木々をすり抜けながら走行していたゼイダルスに向かってくる何か。そう、敵だね。
「自信ないのに・・・」
『あんしんしろ!サメドラーグならすぐにおいつけるのだ───おわぁ!?』
「ゲドーちゃん!?」
堕ちてはないけど2コマで状況が急変したゲドーリトルちゃん。どうやら別の敵に絡まれたらしい。
『2on2って事を忘れてもらっては困るな!』
『そっちのサメザムドは任せるわよ!』
ゲドーのサメドラーグに食らい付き、足止めをしているのはAGE-2 ダークハウンド。相方にサメドラーグの相手を任せ、反転してゼイダルスに向かってきたのは黒いGエグゼス。宇宙海賊ビシディアンで使われたジャックエッジである。
「たしかジャックエッジは・・・銃剣がある!」
『勉強はしてるみたいね!』
ドッズライフルⅡBからビームを放ちつつ、備え付けられた銃剣を構えるジャックエッジ。ゼイダルスも運動性を活かしてビームを回避し、指が刀身になっているシグルクローで迎え撃つ。
「くうっ!」
『パワーはほぼ互角・・・なら、これはどう!』
「うそっ!?」
銃剣と斬り結んだシグルクロー。膠着状態で時間を浪費するのを嫌い、直ぐに別の一手を打ってくるGエグゼスのダイバー。ゼイダルスの二の腕辺りを蹴り上げ、左手に装備しているシールドをゼイダルスへと向けた。防御装備を無意味に敵へと向けるわけも無く、シールド裏にはやや砲身の長いビームキャノンが仕込まれていた。
既にある程度チャージされているらしきビーム砲。その輝きが牙を剥く瞬間、ゼイダルスに搭乗している少女ダイバー【マター】はバトルに至る経緯を思い出していた。
(これが、そうまとう・・・)
▽▲▽▲▽▲
「先生、さようなら」
「はぁい、さようならぁ。ありがとうねぇ、助かっちゃったわぁ」
ぽわぽわ、という擬音が聞こえそうな女性に紙の束を渡して退出していく小さな女の子。部屋と廊下を隔てる引き戸の上には「職員室」と記された看板のような物が伸びている。
「・・・ふぅ」
小さく息を吐き、何処かへと向かう少女。その行き先は複数のロッカーが連なる場所、下駄箱が置かれた玄関口だった。
「・・・」
上履きから自分の靴に履き替え、外へ出る。そう、この少女は今から「下校」する所なのだ。
「ん・・・」
ふと校庭が目に映る。クラブ活動か、放課後に飛び出してそのまま遊んでいるのか、グラウンドを走り回っている子供達が見えた。知っている顔が居なかったのか、直ぐに視線を外し門へ向かう。
「友達・・・」
そう呼べるクラスメートは居ない。孤立している訳ではないが、遊ぶ約束をしたり、同じクラブだったりする人物が居ないのだ。仲良くなる切っ掛けが一つ少ないという事は、それだけ友人も出来にくくなるという事。結果として、この少女【スダマ・マキ】には友人が居ない。
「だから・・・やりたくなかったのに」
クラス委員長。肩書きだけ見れば立派な物だが、本人としては全く乗り気ではない。生来のコミュ障を発揮し、断る事が出来ないまま、あれよあれよと決まってしまったのだ。一応、担任教師が最終確認をしてくれたが、ほぼ決まったような空気の中で異議を唱える気概は自分には無い、と半ば投げやりに引き受けたのが始まり。
先生の事は嫌いじゃないし、手伝う事も苦にはならないが、やはり一人は寂しいもの。
「はぁ・・・あ」
そんな自己嫌悪と心の靄を抱えながらトボトボ歩いていたら、とある模型店の前まで来ていたようだ。通学路にある模型店。いつもは通り過ぎるが───
「フォーン、ファルシア・・・あと、オブライトのジェノアス」
今までは無かったショーケースが置かれていた。外からも見える位置にあるそれには、今にも動き出しそうな迫力のジオラマが飾られていた。マキが溢したように、ジェノアスOカスタムがフォーンファルシアを相討ちに持ち込んだ場面を再現したジオラマのようだ。
「わぁ・・・カッコいい・・・」
店のガラスに半ば張り付き、ジオラマを眺めるマキ。
「フラム・・・うぅ・・・」
マキの脳裏に甦るAGE視聴時の思い出。ゼハートへの思いと悲壮な覚悟を抱いて臨んだ最後の戦い。そして、そのフラムの最後の相手となったオブライトとレミの関係まで思い出し、気付けば涙を流しているマキ。
「えーっと・・・大丈夫?」
「へっ・・・えっ、あ、あ・・・不審者」
「違うよ!?この店の店員!」
「な、何ですか・・・」
「そりゃ、泣きながら店のガラスに張り付いてる女の子が居たら何事かと思うじゃないかぁ!?」
青地にポケットが複数ついたエプロンを着用した男性。他人に対して警戒心強め、かつご時世も相まってマキに不審者認定されてしまったようだ。悲しいねバナージ。
「むぅ・・・」
「本当に店員なんだってぇ・・・」
「マリイ!ワタシのはまだか!」
「はいはい!ちょっと待って!あー、君は───」
「今の声・・・」
マリイと呼ばれた青年を呼ぶ声。どこか幼さを残す声に反応するマリイだが、マキもまたその声に聞き覚えがあった。声が響いた店内へ入るマキ。ガンプラが陳列された棚に囲まれ、店の出入口の方を睨んでいたのはマキとそう変わらない年齢と思わしき少女。
「リア、ちゃん・・・?」
「む?んー・・・?あーっ!スダママキ!」
リドウ・リア。マキのクラスメートにして、学級一のトラブルメーカーである。
「それ・・・ガンプラ?」
「あたりまえだろう!ここはガンプラやだぞ?」
「厳密には模型店だからね?ガンプラ専門じゃないからね?」
追い付いてきたマリイ青年。彼の言う通り、ガンプラコーナーに比べてややスペースは小さいものの戦車や航空機といった模型キットも陳列されている。
「むっ!おそいぞマリイ!はやくワタシのおかいけーをするのだ!」
「はいはい、取り置きのゴメルね・・・レジにどうぞ」
「むっふふ~、さばくはジャリジャリしてうごきづらかったからな。クジョウキョウヤのエイジツーもうごけなくなるのだ!」
「いやー、潜っても地形ごと・・・いや、何でもない」
秒でマキの存在を忘れ、上機嫌で意気揚々とレジに向かうリア。彼女こそ、無敵のGBNチャンプ クジョウ・キョウヤに何度も挑んでは爆散しているガキンチョダイバー、ゲドーリトルのリアルなのだ。一応リアの事情を知っているらしいマリイ青年は、相手にだけ砂塵デバフ掛かっている状態で、砂中潜行で身を隠してもチャンプなら軽く地形ごと吹き飛ばすのでは?と言いたかったようだがリアの顔を見て止めたようだ。チャレンジ精神は大事、とでも考えているのだろうか。
「ゴメル・・・砂に隠れてキオと戦ってたやつだっけ」
「・・・スダママキ!しってるのか!?」
「ふえっ!?」
一瞬にしてレジへ向けていた足をマキへと向け直して急接近。さらにマキの肩をガッと掴み顔を寄せる。ちなみにクイックターンの際、少し後ろを歩いていたマリイ青年に肘が直撃していたりする。
「エイジ!みたことあるのか!」
「あ、ある、よ・・・?」
「おぉ・・・!ヴェイガンだな!ヴェイガンだよな!」
「えっと、そう、だね・・・ヴェイガンの人達の関係性が好きかな。ゼハートとアセ───」
「そっかそっかぁ!スダママキはゼハートがすきなのだな!」
ヴェイガン大好きキッズのリア。キャラクターの人間模様が好き、というマキの言葉をほとんど聞いていない。本人としては「ゼハートとアセムの切っても切れない友情とか」と言いたかったのだが、リアは気付いていない。なんなら気付いていても流れていく。
「よぉし!きょうからスダママキをワタシのコブンにしてやる!」
「へっ?こぶん・・・子分!?」
「ワタシはデシルがすきだからな!ゼハートはデシルのおとうとだし、とーぜんだろ?」
「えぇ・・・」
中々に滅茶苦茶な理屈である。根本的には「共通の趣味がある同級生を見付けて嬉しい」のだろうが、勢いと謎理論が先行している辺りゲドークオリティである。
「スダママキはGBNやってるのか?」
「まだやってないよ」
「ワタシがおしえてやる!やるぞー!」
トントン拍子。というかゴリ押しもいいところである。
「マリイ!ダイバーギア!」
「リアちゃんと同じ小学生でしょ?親御さんの許可やら設定やらが必───」
「スダママキ!かえってパパかママつれてこい!」
もはや未来のネコ型ロボットのお話に登場するガキ大将である。
◆◇◆
「はい、ありがとうございます。これで設定は完了ですね」
「どうも」
レジとは別のカウンター、GBN関連の対応をするためのブースでダイバー登録を終えたマキとその母親。結局リアの勢いに圧され、母親を伴って模型店に戻ってきたのだった。やや引き気味なマキとは対照的に、マキの母は嬉しそうだったが。
「終わったわよ、マキ」
「あ、うん。ありがと・・・ごめんなさい」
「良いのよ。せっかくお友達が出来たんだから、楽しんでらっしゃい」
「ありがとーございます!スダママキのママ!」
「リアちゃんだったかしら、マキをよろしくね」
遅くならない内に帰ってくること、と約束をして帰路につくスダマ母。学校での出来事をほとんど話さない、話す事が無い内気な娘を心配していたが、友達とGBNをやりたいと言ってきた時は驚く反面嬉しかったのだ。愛する娘のためなら家事を途中で切り上げるくらい何のそのである。
「さっさくいくぞー!ジービーエヌー!」
「ガンプラはどうするのさ・・・」
「あ」
マリイ青年の言葉に迫真の「あ」を発するリア。学校帰りに出会った時はもちろんガンプラなど所持しておらず、母親と共に再度来店した時も持っていなかった。ワンチャン家に帰れば・・・ある、よね?と言うようにマキに顔を向けるが───
「ガンプラは持ってないよ・・・作った事もないし」
ダメでした。
「・・・はぁ、分かった分かった」
と、ここでマリイ青年。ちょいちょい、と二人を手招きした先はガンプラがディスプレイされたショーケース。
「この中なら好きに選んでいいよ。それなりに作り込んだから、GBNでもまぁまぁ動けるんじゃない」
「おぉぉぉぉ!マリイふとってるな!」
「リアちゃん、それを言うなら太っ腹だよ」
どうやら、マキが感情を揺り動かされたフォーンファルシアvsジェノアスOカスタムのジオラマを含め、店内にディスプレイされているキットは店員のマリイ青年が製作した作品らしい。その中から好きな物を貸し出してくれるようだ。
「でも、良いんですか?」
「良いよ、別に。どうしてもって言うなら、うちで何か買ってってよ。それこそ選んだ機体を自分で作ってみるとかさ」
「私の、ガンプラを・・・」
目に映るのは多種多様なガンプラ。マリイ青年の趣味なのか、先程のジオラマを始めとしてややAGE系が多いようだが、原作パッケージ風にディスプレイされたホワイト・ディンゴ隊仕様ジムとジム・キャノンに量産型ガンキャノンや、スレイヤーウィップでガイアを打つハイネ専用グフイグナイテッド等、AGE以外のキットも展示されている。
「うーん」
「・・・」
悩むマキ。そのマキをかなりの至近距離で眺めるリア。その内心は「ゼイドラならこっちだぞ」だったりする。ゼハート好きを信じて疑っていないらしいが、マキはゼハートとアセムの関係性が好きなのであってゼハートだけを推している訳ではないのだ。
「じゃあ、これ貸してください」
「スダママキー、それって───」
◇◆◇
「人いっぱい・・・」
ヴェイガン制服を纏った少女が一人、GBNに新たに降り立った。彼女のダイバーネームは【マター】。スダマ・マキがリアに急かされるまま作ったダイバールックである。初GBNの感想は、学校や会社終わりから少し経過した時間帯へのログインが多い事に対してだった。
「おまえか!」
「ひゃあっ!?」
そんなマキことマターに対して、いきなり声を掛けるダイバーが一人。ヴェイガンのノーマルスーツを着用し、白髪に赤い瞳をした少女というダイバールックのゲドーリトルである。
「ビックリしたぁ・・・えーと、リアちゃん?」
「やーっとみつけた!そうだぞ!ワタシが・・・こっちではゲドーリトルなのだ!」
よくよく見れば顔立ちは然程変わっていない。髪色と瞳の色だけでもだいぶ印象が変わるんだなぁ、と思ったマターだった。
「分かった、ゲドーちゃんで良い?」
「うむ!ねっとりてらしー?はだいじだからな!」
初心者狩りしてた奴がネットリテラシーとか言っても説得力皆無なんだけどねぇ・・・マターは知らないだろうけど。
「で?そっちのなまえは?」
「あっ、私はマターで登録したよ」
「よぉし!ではマタマタ!さっそくバトルだ!」
「えぇ・・・」
略すどころか長くなった愛称といきなりのバトル宣言に対し、ダブルでドン引きのマター。そらそうなるよ。
「せめて動かし方は知りたいな」
「むぅ・・・ならチュートリアルやってこい」
渋々といった表情でミッションカウンターを指差すゲドーリトル。ゲドーだが鬼ではないらしい。
『ようこそ。受けるミッションを選択して決定を押してください』
「ガンプラ大地に立つ?これでいいのかな・・・?とりあえずこれで・・・ゲドーちゃん、ガンプラにはどうやって乗るの?」
「んぁ?ひらいておしてシューンだ」
それで理解できる初心者が何人居るのやら。案の定頭の上にクエスチョンマークを乱舞させたマターを見て、分かってない事を認識したのか実際に操作してみせるゲドー。格納庫まで移動した所で、じゃあワタシはみてるからー、と離れていく。
「自由だなぁ・・・えっと、今日はよろしくお願いします」
借り物だからか、丁寧に挨拶してコックピットに乗り込むマター。見覚えのある出撃シーンを体験できるとあって、流されたとはいえテンションが上がる。発進し、転送ゲートを潜って戦闘エリアに到達したマターは、そのままリーオーNPDとのバトルを行い帰還したのだった。
◆◇◆
「えっと・・・ただいま?」
「おかえりー」
ロビーへ戻ってきたマター。壁に寄りかかり、何やらコンソールを操作していたゲドーがそれに応える。
「何してたの?」
「んー?マタマタのバトルみながら・・・きたー!」
宇宙、ではなく何かが来たらしい。
「何が・・・?」
「ふっふっふー、ワタシのえものだ!」
自分のコンソールをマターに見せるゲドー。そこにはフリーバトルの相手を募集するページと、それに誰かが応じた証である申請受諾の旨が表示されていた。
「ダイバーランクBとC・・・凄いなぁ」
「ワタシはAだぞ?」
「えっ」
ついさっき初ログインしたばかりのマターは当然最低ランクから始まっている。フォース結成や必殺技が解禁される事は知らないが、こういうゲームお約束のランクシステムは何となく理解できる。それ故にBとCまで登り詰め、バトルに応じて更に上を目指そうとしている二人の相手を素直に称賛したマターだったが、そんな二人を学級一の問題児がランク上は軽く抜いている事に驚きを隠せない。
「なんだそのかおは」
「あ、いや、ゲドーちゃんって凄いんだね・・・?」
「そうだ!ワタシはつよくてスゴいんだぞ?」
(性格と実力は比例しないのかな)
一瞬にして調子に乗るゲドーをよそに、心の中は割と容赦無いマターだった。と、ここで「二人の相手」という事にマターが気付く。
「二対一でやるの?ゲドーちゃんって本当に強いんだ」
「ワタシはほんとうにつよいぞ!・・・ん?にたいいち?なにいってるんだ?」
「え、だって相手二人居るし・・・」
「ワタシとマタマタのふたりでたたかうにきまってるだろ?」
「へっ?えぇぇぇぇぇ!?!!?」
やはりゲドー。
◇◆◇
「聞いてないよぉ」
『ワタシとやったらワタシがかってしまうからな!ツーオンツーならワタシのちょーぜつテクニックをみれるだろ?しかも、とくとーせきで!』
「絶対そんな余裕ないよ・・・」
ギャラリーモードでの観戦でも特等席で学べると思うのだが、そこはゲドーくおりてぃ。あーだこーだ言うより実際に戦って確かめた方が早い、という事らしい。やっぱり鬼じゃないか。
『ほらいくぞ!ゲドーリトル!サメドラーグでいくのだー!』
一足先に出撃していくゲドーの機体。サメのような意匠が特徴のザムドラーグ、サメドラーグがカタパルトから飛び出し転送ゲートを潜る。
「もう・・・こっちでもあの調子なら、誰かに迷惑掛けてそうだなぁ・・・」
大 正 解
「・・・ふぅ。マター、ゼイダルスで出撃します」
特徴的な三本スリットに光が走り、マリイから借り受けたゼイダルスが飛び立って行く。
そして冒頭の戦闘に戻る。
▲▽▲▽▲▽
(初めてにしては頑張った方だよね・・・)
Gエグゼスのシールド裏に仕込まれていたビーム砲。ヴェイガン機の扱いに長けた熟練のダイバーなら、電磁障壁で防御したり、無理矢理にでも体勢を変えて致命傷を避けたり出来たろうが、マターはバトルもビルドも一切した事の無い初心者。リーオーNPDをどうにか撃破しただけの経験値では、この状況を打開する方法など思い付かず、実行できるかも怪しい。
『貰っ───なっ!?』
『おいおい、嘘だろ!?』
『あたった・・・じゃなくて!クジョウキョウヤにできてワタシにできないワケないのだー!』
「ふえ?」
自分で自分の行動に困惑し、それを即座に隠して勝ち誇るクソガキボイス。ゲドーのサメドラーグが援護射撃を行い、見事にGエグゼスのシールドへと命中させたのだ。
何故困惑していたかというと、サメドラーグの右腕をダークハウンドのアンカーで拘束され、突き出されたドッズランサーを自由な左手から発振したビームサーベルで防御。いわゆる疑似タイマンに持ち込まれた状況で、光波推進機上部に内蔵されたビーム砲を発射したのだ。しかもゼイダルスとGエグゼスをきちんと視認していないノールックで。組み込んだパーツの恩恵により、「曲がるビーム」というフォビドゥンに近い特性を得たサメドラーグのカーブビーム砲だが、賑やかしに撃ったビームが的確な援護になるとは思っていなかったようだ。
「っ、うわぁぁぁぁっ!!!」
『うっ!こっの・・・!』
シールドごと照準を外され、ゼイダルスの左肩を掠めるだけに終わったGエグゼスの奇襲。いかに初心者といえど、この隙を逃すべきではないと分かるもの。右手のシグルクローを手刀で突き出し、Gエグゼスの左肩関節を貫いた。
『くっ!けど!』
『馬鹿!ヴェイガン機相手にそれは───』
左腕を破壊されながらも、ドッズライフルⅡBの銃剣を振るうGエグゼス。だが、ダークハウンドのダイバーが警告を飛ばそうとしたように、ヴェイガン機に対して至近距離で両腕を使わされるのは正に悪手だった。
「ビーム砲・・・!」
『っは、ヤバ───』
ゼイドラやドラド、バクトにも近接武装として内蔵されている腹部・胸部のビーム兵器。ゼイダルスにも備わっている胸部ビーム砲をGエグゼスに向けて最大出力で撃ち放つ。
『ぐうぅっ!まだ、よ!』
直撃を回避された意趣返しとばかりに、ゼイダルスの至近砲撃を回避してみせるGエグゼス。とは言っても完璧な回避ではなく、使えなくなった左腕の排除も兼ねて強引に機体を捩っただけなのだが。
『これで───かはっ!?』
「引っ掛かって、くれましたね・・・」
銃剣ではなくドッズライフルⅡBによる零距離射撃で仕留めようとしたGエグゼスだが、引き金を引くより早く飛んできた何かに胸を貫かれていた。
『しまっ・・・尻尾か・・・!』
そう、ゼイダルスには尻尾のような多重関節のユニットがあり、その先端にはシグルブレイドが装備されている。それをもってGエグゼスに致命傷を負わせたのだ。
『くっ、ゴメン!やられた!』
『こっちもマズい・・・うおっ!?』
Gエグゼスが撃破判定となり、データの塵になって消え始めたのと同時にダークハウンドのダイバーが衝撃に呻く。マターの視界に映るレーダーには、ほぼ重なった状態で地表に降りてくる二つの光点が表示されていた。
『おりゃぁぁぁぁ!!!サメカミカミィー!!!』
『ぐおぉぉぉっ!?』
腹部のサメドラーグキャノンには鮫の頭部を模したような装甲が追加されている。文字通り「噛み付く」事もできるその部位でダークハウンドを咥え、噛み砕きながら全速力で下降してくる姿が、ゼイダルスを通してマターにも見えた。
『があっ!?くっそ、離しやがれ!!』
『いまはなしてやるのだぁっ!!!』
豪快に着地、というかほぼ墜落の勢いでランディングしたサメドラーグ。ドッズランサーは取り落としてしまったのか、素手でサメドラーグを殴っているダークハウンド。と、次の瞬間───
『サメドラーグキャノォンッ!はっしゃぁ!!!』
サメドラーグの腹部から閃光が迸った。ダークハウンドを咥えたまま、零距離で発射したらしい。高出力のビームに呑み込まれ、ダイバーの声すら聞こえないまま消滅していくダークハウンド。光が収まり、その場に立っていた勝者は、少し顎が焼けたサメドラーグと合流したゼイダルスだった。
【Battle Ended】
【Winner:ゲドーリトル&マター】
▽▲▽▲▽▲
「あー、負けた負けた」
「正直こんな子供に負けるなんて思ってなかったわ。強いのね、貴女達」
バトル後、ロビーにて互いの健闘を称え合う───
「とーぜんだ!ワタシはクジョウキョウヤをたおすおんなだからな!」
称え合ってるかこれ?
「随分とデカい目標だな・・・」
「おまえのおかげで、エイジツーのれんしゅうになったぞ!」
「おいおい俺はチャンピオンの予行練習か?」
「いずれリベンジするからね。GBNのAGE使いはチャンピオンとその副官だけじゃないんだから」
再戦を誓い去っていく対戦相手。その背中には、今度は自分達が勝つ、という向上心はあれど悪感情の類いは感じられなかった。ゲドーの自信満々なクソガキ発言を軽く流せる程度には大人だったようだ。良かったね。
「ゲドーちゃんのお陰で勝てたよ。ありがと」
「むぅ?あー、おきこうげきなー。ヴェイガンつかいにとっては、ひっしゅーかもくだぞ!ちゃんとれんしゅうするのだ!」
バトル前に「ねらえるときにねらうのだ」と教えられていた戦法。Gエグゼスを仕留めた「次の攻撃を置いておく」行動の事だ。特に胸部や腹部、テイルパーツに武装が仕込まれたヴェイガン機使いにとっては、ゲドーの言う通り必修科目だろう。そして、その行動をマターに教え、自分も胸部装甲で応用してみせた辺り、ダイバーランクAの実力が伺える。
「うん、練習してみるね。それで、その・・・」
「なんだ?」
「あの、また一緒に・・・遊んでほしいなって」
「そんなのあたりまえだろ?おまえはワタシのこぶんなのだからな!」
「・・・うん!」
孤独な少女に騒がしい友達が出来た日だった。
▲▽▲▽▲▽
「なんなのだ!」
「なによ!」
「あわわ・・・二人とも落ち着いて。うぅ、どうすれば良いかな・・・」
ゲドー/リアと関係が結ばれた事で、今まで以上に問題に巻き込まれるようになっていく事を、あの時のマキは知らなかった。
胃薬「未来で待ってるよ!」
【スダマ・マキ/マター】
リドウ・リア/ゲドーリトルのクラスメート。三つ編みに眼鏡が特徴の少女。自身やリアの所属する学級の委員長も務めているが、引っ込み思案な性格の為に断り切れなかったというのが実情。登下校路にある模型屋で偶然リアと出会った事でGBNを始めた。
フリットとユリン、アセムとゼハート等の関係性を見るのが好きなおませさん。ガンダムに関してはアニメーションしか知らず、ガンプラを組んだ事も無かった。
ダイバーとしては正真正銘の初心者。だが、ゲドーに合わせたり、抽象的な説明でもある程度は実践できる等センスはある模様。
乗機は特別にレンタルしてもらったゼイダルス。初ログインの際は、チュートリアル後に即対人戦というハードスケジュールだったが、一機撃破で白星スタートを切った。後日、正式に自分のお小遣いでゼイダルスを購入したらしい。
【模型屋 アイデルト】
マキらの登下校路にある模型店。主流のガンプラだけでなく戦車や航空機等のキットも取り扱っている。
店員のマリイによる作例が展示されるようになり、それを切っ掛けの一つとしてマキがGBNを始めた。
【マリイ・セキヤ】
アイデルトの店員。AGEシリーズを筆頭として様々なキットを組んでは店に展示している。本編中でリアの肘が当たったり、在庫整理の際に腰をやったりする等、中々に不幸体質。