GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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人形遊びはお好きですか?


アナタノニンギョウ
マリオネットとバトル


──ねぇ、何であの人あそこに立ってるの?

──俺が知るかよ・・・

──ちょっと怖いよねぇ

──不気味っていうか

──報告する?

──何かされた訳じゃないし、よくね?

──それより今日はどうする?

──あっ!私欲しいパーツがあるの!

 

 

GBN。様々なダイバーが集い、挑み、勝利の美酒を味わい、敗北の苦さを噛みしめ、作り、壊し、また戦う。そんな場所。皆の好きが集まるこの場所には本当に様々な要素があり、楽しみ方がある。

 

ロールプレイガチ勢、バトルしようぜ!、のんびり気ままに、動画配信主、打倒王者、異世界からの漂流者。

 

まぁ最後の一つは事故みたいなケースである上にほぼ知られていないが。なんにせよたった六人挙げただけでもそれぞれに楽しみ方や目的があるのだ。それだけこのGBNは自由で広く、まだ誰にも見付けられていない場所や、解き明かされていない謎もあるかもしれないのだ。

 

では、冒頭の会話は何なのか?それはとある日のセントラルロビーにて雑談していたフォースの会話、その一部抜粋である。今回の主役は彼ら彼女らが話していた【とあるダイバー】。主役足り得るのかって?そう【命令】すればなってくれるんじゃないかな?主役にも脇役にも。

だって彼女は───

 

 

 

見通しの良い平原フィールドに響く爆発音。何者かが戦闘を行っている。戦場に立っているのは三機のモビルスーツ。その内二機は鉄血のオルフェンズに登場した組織テイワズが製作した機体、百錬の改修機【漏影】。その漏影を二機まとめて相手しているのは、同じく鉄血のオルフェンズに登場した【グレイズ・アイン】を改造したと思われる機体。カラーリングこそ同シリーズのレギンレイズを思わせる緑を中心とした塗装が施されているものの、平原で漏影と戦闘を行うグレイズ・アインという原作の場面を再現したかのような対戦カードとなっている。

 

『なんで当たらないのさぁ!』

『落ち着け!焦れば向こうの思うつぼだぞ!』

 

原作ではタービンズの女性パイロットが搭乗していた漏影だが、この二機の漏影にはどちらも男性ダイバーが搭乗していた。射撃を回避され焦りを見せる少年と、それを抑えつつ突破口を探る青年。

 

「・・・」

そしてグレイズ・アインの改造機【グレイズ・スレイブ】のコックピットの中で、喜びも怒りも無い、感情を読み取れない無機質な瞳に戦場を映す女性ダイバー【ユアーナ】。状況確認の為の独り言も、悪態の一つも吐く事なく無言で、無表情のまま相手の漏影を観察する。

 

二機の漏影は片方が、別のテイワズフレームである辟邪のバヨネットライフルとトビグチブレードを所持しており、もう片方がグレネードランチャーとクラブという元から変わらない装備である。

(ライフルの方は勝手に突っ込んでくる、カウンターで潰す)

誰に聞かせる訳でも、聞かれる事を警戒してもいないのに思考すら淡々としているユアーナ。その推測は的中していた。

 

『チマチマ撃ち合っててもジリ貧だ!切り込む!』

『おい待て!・・・ったく!』

 

ライフル持ちの漏影に搭乗しているらしい少年が突撃してくる。一拍遅れてグレネードランチャー持ちの漏影も少年を援護すべく動きだす。

 

『いくぜぇぇぇ!』

バヨネットライフルから弾丸を放ちながらトビグチブレードの間合いまで詰めようとしてくる漏影。わざわざ当たってやる道理は無いと言わんばかりに回避するスレイブ。小刻みにスラスターを吹かし、もう一機のグレネードランチャーの射線に重なるようライフルの漏影を誘導しながら肩部装甲に内蔵されている機銃でダメージを与えていく。

 

『もっと動け!そんな直線的な動きじゃ読まれて当然だ!』

『くっ!わぁってるよ!』

機銃掃射によるダメージの蓄積を嫌がったのか、仕切り直しとばかりに一旦距離を放す漏影。

そんな悠長な事をしていいのだろうか。

 

『なんっ──ガァ・・・!』

『ダリオ!離れろ!』

距離を取る為にバックブーストした漏影だったが、ガンプラとしての作り込みと阿頼耶識システムを再現したスキルを活用して繰り出された、スレイブの鋭い蹴りが左脚部の根元、関節部分に突き刺さってしまう。さらにグレイズ・アインが基になっているため、その両足部はドリルキックとして使用出来るのだ。

 

『アァァァァァ!クソがぁぁぁ!』

高速回転によりドリルとなったスレイブの足から何とか逃れる漏影。撃墜判定は受けずに済んだが、その脚部に深刻なダメージを負ってしまった。だが、ダリオと呼ばれた少年の漏影が攻撃されている隙に、グレネードランチャーの射線を確保出来たもう一機の漏影。スレイブにグレネードランチャーの銃口を向ける。

『もらった!』

放たれるグレネード弾。だが、その全てをユアーナは把握していた。

 

(直撃二発、足元への至近弾一発)

足を引き抜いて脱出された片足立ちの体勢のまま、上半身を反らして一発目を回避、そのまま倒れ込むように右掌とドリルキックとして使用した右脚を接地させて姿勢を下げて二発目を回避、蹴り上げるように左脚を上げスラスターも吹かしながらバック転のように機体を起こし地面に着弾した三発目を回避する。

 

『なっ!?』

(一気に)

驚愕を隠せない漏影の青年ダイバー。背中にシュヴァルベ・グレイズのバックパックを装備した事により、両腰の装甲に移設された大型アックスを引き抜きながらグレネードランチャーの漏影に向けて加速するスレイブ。

『いか・・・せるか・・・!』

大ダメージを負って動きを止めていた漏影がバヨネットライフルを連射するが、その全てを回避される。

『チィッ!』

撃ち切った上に取り回しの悪いグレネードランチャーを捨て、腰のラックからヘビークラブを取り外して構える漏影。

 

(機銃の残弾で撃墜可能なのは一機、もう一方は近接)

残弾の表示を一瞬だけ確認し、プランを立てるユアーナ。その間にも漏影との距離は縮んでおり、機銃の射程内に入っている。両肩の機銃から弾丸を放ち漏影に回避を強要させ、動いた先に両手に保持していたアックスを投げつける。

『クッ!』

右手から投げたアックスが命中し体勢を崩す漏影。その一瞬の間に距離を詰め、左脚のドリルキックを繰り出すスレイブ。何とかクラブで防御したものの、勢いに押し負けクラブが手から離れてしまう。漏影のダイバー、ミムレの目には高速回転するスレイブの右手が映っていた。近接武装として使用出来るのは足だけでなく手もなのだ。その右手、スクリューパンチがミムレの漏影の喉元とも言える首関節に捩じ込まれる。

 

『アンタ強いな・・・』

「お褒めに預かり光栄です」

そんな短いやり取りを終え、捩じ込んだ右手を上に跳ね上げ漏影の頭部を抉り飛ばす。そして軽く跳躍し頭部が失くなった部分に右脚のドリルキックを突き入れ、真上から串刺しにしてトドメを刺す。股関節部分まで貫かれ、奇怪なオブジェとなった漏影がテクスチャの塵になり消えていく。

『テメェ!よくも・・・兄貴を!』

脚関節を破壊された漏影がスラスターを全力で吹かし、左脚を引き摺るようにして突っ込んでくる。それに対して機銃の弾薬を残らず掃射するユアーナ。何としても一矢報いる気なのか、トビグチブレードを持った右腕を後ろに回し左腕で頭部と胴体を防御しながら突撃する漏影。弾痕が至る所に刻まれ装甲が脱落しながらもその加速を止めない。そして漏影の左腕の肘関節が吹き飛ぶのとスレイブの機銃が弾切れを起こしたのはほぼ同時だった。

 

『届けぇぇぇぇ!』

トビグチブレードを振るう漏影。だが───

その刃は届かず。スレイブの左手に手首の部分を抑えられ、受け止められた。それはもうあっさりと、呆気なく、そうなるのが当然だと言うように。

『まだだ!まだ足──がぁ!』

右脚で蹴りを繰り出そうとしたダリオ。それよりも早くスレイブの右手が再びスクリューパンチとなり、機銃によってボロボロになった漏影の胸部装甲を貫く。そのまま強引に右腕を突き入れていき、コックピットの破壊判定となったのかダリオの漏影も完全に機能停止し、ミムレの漏影と同じくテクスチャの塵となっていく。

 

【Winner:ユアーナ】

 

システム音声がユアーナの勝利を告げる。勝者であるユアーナは喜びもせず、ただ淡々とその事実を受け入れる。唯一考えていた事は───

(残弾の管理が甘かった、敵機の装甲強度の見積りも)

自身の反省点だった。

 

 

 

 

「えぇ!?イベントNPDじゃないの!?」

「一応俺は最初から言ってたけどな、話を聞かないからこういう事になるんだよ」

セントラルロビーにて騒ぎ立てる少年ダイバー、ライフルとブレードを装備していた方の漏影に搭乗していたダリオと、彼に呆れた様子の青年ダイバー、グレネードランチャー装備の漏影に搭乗していたミムレの二人。

 

「申し訳ありません。私も説明したつもりでしたが、不足だったようです」

そんな二人に深々と頭を下げて謝罪する女性ダイバー、二機をほぼ無傷で撃破したグレイズ・スレイブの操縦者であるユアーナだ。

 

「いやいや、アンタが謝る事じゃない。このバカが話を聞いてなかっただけだから」

「バカって言うな!ロビーの隅っこにポツーンって立ちっぱだったんだぜ!?何かのイベントかと思うじゃん!」

 

そう、セントラルロビーの片隅に佇んでいたユアーナをイベントNPDと勘違いしてダリオが戦いを挑んだのが始まりなのだ。自身はNPDではないというユアーナの説明と、しっかりそれを聞いていたミムレの注意も聞かずフリーバトルを行ったダリオの自業自得なのだが。

 

「というか、ミッションじゃなくてフリーバトル申請になってる時点で気付くだろ・・・アンタも断ってくれて良かったんだぜ?こっちも戦って勉強になったから、得る物はあったけどさ」

「お気遣いありがとうございます。ですが【自分と戦え】という【命令】を受けたので、断る訳にもいかず」

 

不穏な何かを感じ取るミムレ。質問を重ねる。

「・・・アンタ、ユアーナって名前なんだよな?」

「はい、ダイバーネーム ユアーナとしてログインしております」

「傭兵ダイバーで料金も格安か?」

「はい、傭兵として活動しております。依頼料もそこまで高くない筈です」

「・・・そうか、さっきも言ったがアンタとの戦いは勉強になった、ありがとな。行くぞダリオ」

「えっ?はっ?ちょっ!一人で納得すんな!?待てって!あぁアンタ!次は負けねぇからな!」

会話を切り上げ、足早に去るミムレとリベンジを誓うダリオ。そんな二人に再び頭を下げつつ、見送るユアーナ。

「またのご利用をお待ちしております」

 

 

 

「なぁ!何を一人で納得してんだよ?」

「・・・ダリオ、あの女には関わらん方がいい。間違いなく人として大事な部分が壊れる」

「はぁ?確かに強かったけど性格悪いネーちゃんには見えなかったぞ?」

「腕前も性格も悪くないだろう、だがアレは駄目だ」

「アレって・・・兄貴が人をモノ扱いするの初めてじゃねぇか?」

「・・・かもな」

まだまだ初心者の域を出ないダリオは知らない事だが、そこそこ長くGBNをプレイしているミムレはある程度の情報を持っていた。

 

セントラルロビーの片隅にポツンと佇む女性ダイバー。基本的にギャラルホルンの制服を着用し、茶髪のショートボブ、ハイライトの無い黒い瞳、普段は見えないが肘や膝などが球体関節になっている人形のような身体、傭兵ダイバーであり、ユアーナというダイバーネーム、なにより【命令】という単語。

 

「お前が勘違いしたみたいにNPDならどれだけ良かったかね・・・」

「ホントに何なんだよ・・・」

ハァ・・・とため息を吐いてから説明を始めるミムレ。

 

「アレは傭兵ダイバーだ、依頼料を受け取って依頼主に加勢したり情報を集めたりする」

「よーへーぐらい知ってらぁ、で?あのネーちゃんの何処がヤバいんだよ?」

「病的なまでの服従姿勢って言って分かるか?」

「びょーてきな・・・?」

「・・・要は依頼主の命令なら【何でも】やるんだよ」

「何でもって?」

「文字通りだ。戦闘と情報収集が傭兵ダイバーに依頼する基本的な仕事だが、アレはフォースネストでの茶汲みから着せ替え人形まで何でもやるらしい」

「・・・金に困ってるんじゃ」

「さっきも話してたが依頼料は格安だ、ビルドコイン稼ぎならミッションを周回した方がよっぽど良い。それに今言った内容をタダでやってた所を運営に注意されたから、金銭が絡む傭兵を始めたって噂もある」

「よ、よっぽどお人好しなんだな」

「本気で言えるか?」

「・・・」

 

ミムレの話を聞き、ついには黙ってしまうダリオ。

 

「アレは誰かの命令を聞いてなきゃ満足出来ない人形なんだよ。今までアレと契約した連中も、最初は気分が良いが次第に気味が悪くなって離れていく。リピーターはごく一部の物好きしか付いてない。アレと契約するって事は、アレを【自分のお人形】として認めるって事だ。そしてアレは人形として扱われる事を望んでいる。何でそんな考えなのかは知らんし、知りたくもないが」

「そんな・・・で、でも兄貴が自分で確かめた訳じゃないだろ!?」

「そういう情報しか出てこないんだよ、アレからは。そんなのに依頼する気は起きんし、お前が自分で確かめるとか言い出すなら全力で止めるからな」

「・・・」

 

再び黙ってしまったダリオの頭をポンポンと撫でるミムレ。

「暗い話になって悪かったな。悪人じゃなくてもヤバい奴が居るってのを分かってくれればいい」

そう言って歩き出すミムレと慌ててその後を追うダリオ。

 

 

 

こうして勘違いから始まり、繋がれかけた縁は絶たれた。

兄弟は人形に関わる事は無く、人形も人形を必要としない者に自分から関わりに行く事は無い。

 

そうして人形は待ち続ける。

自分を使いたがる者を。

今日も待ち続ける。

命令してくれる主を。

 

「はじめましてですね」

「ユアーナと申します」

「依頼主様でよろしいでしょうか」

「何をご希望でしょうか」

「ご命令を」

「依頼主様の為なら」

「どのようなご命令でも遂行いたします」




アックス「どうして…」
ドリルキック「ドヤァ」

そして本人ほぼ喋ってない件

【ユアーナ】
一応この話の主人公。
誰かの命令を遂行する事が存在意義。
誰も来ないなら待ち続ける。
倫理コードに触れようがそれが命令ならやる。
(依頼主は確実にBANされる)
機体は依頼主の要望が無ければ基本的にグレイズ・スレイブに搭乗する。

【グレイズ・スレイブ】
ユアーナの搭乗機。
グレイズ・アインをレギンレイズのような緑系統で塗装し、背部の大型アックスを両腰部装甲に移設、シュヴァルベ・グレイズのバックパックを新たに装備している。
今回は基本装備のみだったが、バエルソードやグレイズのライフル、ジムガードカスタムのシールド等、依頼主の要望に合わせて様々な追加装備を使用する。

【ミムレ】
兄。
グレネードランチャーとヘビークラブを装備した漏影に搭乗していた。
そこそこ長くGBNをプレイしており、ユアーナに関しても情報を持っていた。

【ダリオ】
弟。
バヨネットライフルとトビグチブレードを装備した漏影に搭乗していた。
兄に憧れて最近GBNを始めた。
口は悪いが優しい少年。
ユアーナにリベンジを誓ったもののミムレの話を聞き、さらに止められてしまった為ユアーナと会話すらしていない。
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