(言葉がぜんっぜん通じねぇ・・・)
荒野のようなエスタニア・エリアをトボトボガションガションと歩く一人、いや一機のガンプラ。白いドレスの少女と別れ、この世界を見て回る!と意気込んで飛び出した元ウルトラ戦士、現ガンプラのゼットである。
(何であの地球人とは話せたんだ?ウルトラ謎だぜ・・・)
あの後数人のガンプラに出会ったのだが、カプルがそうだったようにゼットの言葉が全く通じなかったのだ。
(似てる見た目の奴は何人か見たけど俺の言葉は通じないし、でも俺は向こうの言葉分かるし、全員別の種族?さすがにそれは無いよなぁ)
ガンプラは自由。という言葉を残した男が居たが、このGBNに於いてもそれは当てはまる。外見はキットそのままに内部構造を作り込む者や、原型機が何なのか分からないレベルでカスタムを施す者も居るのだ。そういう意味ではゼットの全員別の種族という推測もあながち間違いではない。
(カッコ悪いけど、花畑に戻ってあの地球人に通訳頼もうかなぁ・・・)
それが一番の近道だろう。あの少女がこの世界の知識に疎かったとしても言葉が通じるだけで難易度が桁違いだ。だが、その考えを実行するには大きな問題がある。
(ここは何処で花畑はどっちなんだ・・・)
ゼットにはマップ機能が付いていなかった。
(とにかくこの荒野を抜けな───)
『なんとクシャトリヤァァァァ!』
『ヘアッ!?』
突如として聞こえた何者かの声。センサーとレーダーに連動するウルトラ感覚が危険を察知し、驚きながらもその場から飛び退くゼット。一瞬前までゼットが居た位置に何かが突き刺さった。
『あー!避けないで当たるのデース!』
(あんだけ叫んどいて避けるなって言われてもなぁ)
地面に突き刺さった何か、湾曲した刃に長い柄が付いた近接武装である鎌を引き抜き、両手で構え直す機体が立っていた。どうやらゼットの上を取って振り下ろしつつ着地したらしい。
(黒と緑のがんぷら・・・話通じてるか?)
『およ?デスヘルじゃないんだ?ってお前は言わないんデスね。まぁNPDなら当然デスか』
通じてなかった。
(えぬぴーでぃー?また知らない言葉が出た・・・)
ノンプレイヤーダイバー略してNPD。ロビーでミッションの受付をしたり、ミッション中に味方や敵として登場したり、話し掛ける事でイベントに参加できたりとその役目は様々である。無論、白いドレスの少女以外とマトモな会話をしていないゼットは知らない事だが。
『まぁいいデス!謎のフリバNPD!ここで倒してレアデータを貰うデスよ!あとビルドコインも大量に貰えるならなおよしデース!』
追加の欲望に忠実な少女と思わしき声。その話の内容はゼットを困惑させた。
(ふりばえぬぴーでぃー?レアデータ?何とかコインって何だ!?何の話してんだお前!?)
『行くデェェス!』
(クソッ!やっぱり言葉通じてねぇ!)
変わった語尾の少女ダイバーが操る機体は、奇襲(?)の際に本人が叫んでいた通り【クシャトリヤ】である。そのカラーリングは黒の比率が多く、元の緑は少なくなっている。そしてガンダムデスサイズのようなビームではなく実体型の大鎌を両手で構えているのが特徴だろう。
(危ねぇ!近づいたら真っ二つにされちまう!)
得意な武装なのか四基のバインダーに干渉させず、馴れた手つきでサイズを振るうクシャトリヤ。文字通り死神の一振りになりかねない攻撃をなんとか回避するゼット。
(もうこれの使い方も分かったんだ!反撃開始だぜ!)
腰のラックからドッズライフルを外し、右手に保持するゼット。さすがにもうライフルそのものを投げるというアホみたいな事はしないようだ。
『うえぇ!?そんな急にパターン変わるんデスか!?』
ゼットの事をパターン化されたNPDだと思っているクシャトリヤのダイバー。戦闘開始からそれほど時間が経過しておらず、互いにダメージも入っていないのに回避からライフルによる攻撃に切り替えたゼットを見て困惑する。
『のわっ!?ちょっ!ぬぅ・・・格闘しか出来ないと思ったら大間違いデース!』
ドッズライフルから放たれるビームを回避したものの、サイズの間合いから逃げられてしまったクシャトリヤ。だが、次の瞬間サイズを振りかぶる。
(投げる気か!?)
かつての自分を思いだしサイズそのものを投擲してくるのかと警戒するゼット。
『そりゃ!』
【切・呪リeッTぉ】
(?文字?ってうおぉぉぉぉ!?)
文字化けした何かが視界に映ったような気がした瞬間、クシャトリヤが振り抜いたサイズからビームの刃が二つ飛んでくる。飛来したビームを回避し体勢を立て直すゼット。
『また避けた!?どんだけレベル高いNPDなんデスか!?』
(当たれって言われて当たる奴は居ないだろ!)
『もういっちょデェェス!』
再びビーム刃を飛ばしてくるクシャトリヤ。さらに距離を詰めようとそのまま加速してくる。
(一か八かやるしかないか!?)
扱い慣れていないドッズライフルはエネルギーの無駄使いの為、決定打になるのは格闘戦かゼスティウム光線のどちらか。だが近接戦闘は向こうも得意であり、ゼスティウム光線は今の状態で撃っても余裕で回避されるだろう。
【封伐・PィNo奇ぉ】
『デェス!』
『シェア!?』
(また文字!?ってか増えた!?)
バインダーのサブアームを展開し、さらにサブアームに保持させているビームサーベルを発振させるクシャトリヤ。これで手数が増えてしまった。
『このヘンゲンジザイ!見切れるデスか!』
鎌を振ったかと思えば時間差でサーベルが襲い掛かり、背を向けたと思えば背中側のサーベルで斬り掛かってくる。一瞬の隙を見つけたかと思えばいつの間にか持ち直していた鎌を股下を潜らせてカウンターしてくる等、1on1だからとはいえ、かなりトリッキーな動きで相手を翻弄するのがこのクシャトリヤとその操縦者の持ち味なのだろうか。特にゼットのような格闘がメインの機体とは相性が悪い相手だ。
『ぐぬぅ・・・何で全部避けるデスか!』
(ここまで一発も当たってない俺を誰か褒めてくれ)
被弾ゼロのゼット。互いに決め手に欠ける状態が続くが手数が少ない分ゼットの方が不利だろう。
『こうなりゃ必殺技デース!』
(当てるしかねぇ!ウルトラ気合いだ!)
それぞれ必殺技とゼスティウム光線の使用を決断したクシャトリヤのダイバーとゼット。だが───
『ぬるいな』
『え?』
(誰だ!)
空から蹴りと共に現れた別の機体。クシャトリヤとゼットのちょうど中間地点の地面を蹴り砕きながら着地する。
『誰デスか!せっかくカッコよく決めようと思ったのに!』
(何者だ・・・?)
乱入に怒るクシャトリヤのダイバーと、警戒を強めるゼット。
『お前』
ゼットに向き直る乱入者。
『あの程度に手間取るようではな、素質は良いのだろうがその分余計に残念だ』
『ちょっ!?今あの程度って言ったデス!?無視された上にディスられたデス!』
(言葉がウルトラ厳しいなコイツ・・・)
「あぁもう!あったまきたデス!バラバラに──」
『キルちゃん?』
「ふぇ!?シラブ!?」
『やっと繋がった・・・今何処に居るの?連絡もしないで何処かに行っちゃって。皆心配してるよ?』
「え、えぇと・・・レアNPDと乱入してきた奴が──」
『ご飯抜き』
「すぐ戻りますデス!」
『謎のフリバNPDと謎の乱入マン!次に会ったら覚えとけデース!今はご飯の方が大事なのデス!』
(ご飯?)
『さらば!』
何やら慌てた様子で離脱していくクシャトリヤ。ご飯という単語が聞こえた気がするが。
『ふん・・・おいお前、NPDかダイバーかはこの際どうでもいい。俺と戦え』
(おいおい、いきなり何だってんだ?)
『行くぞ!』
『グゥア!?』
(速い!それに重い!)
一瞬の踏み込みからの一撃。何とか防御したものの、その威力に驚愕するゼット。
『さすがに今のは防ぐか・・・なら続けて行くぞ!』
(今ので本気じゃないのかよ!?)
一方的に攻め立てる乱入者、次々に繰り出される殴打と蹴りを受けながらもダメージは抑えるゼット。
『そらそら!どうした!』
(強い!けど、こんな所で負けられるか!)
新人とはいえ厳しい試験を突破した宇宙警備隊員の面目躍如と言ったところか。
(けどさすがに厳しいか・・・!)
ゼットが焦りを感じ始めたその時。
『バカ野郎がぁぁぁぁ!』
『!?』
『ヘアッ!?』
上空から現れ、地面を砕きながら着地する影。流行りなのだろうか。
『お前って奴は・・・!さすがに見損なったぞ!』
『チッ・・・』
(な、なんだぁ?)
土煙を吹き飛ばし、何かの落着点から現れたのは緑色の機体。狼と虎を従えた龍。【ガンダムジーエンアルトロン】とそれを操る獣人【タイガーウルフ】である。
『少しは頭が冷えたかと思えば!無関係な奴にまで因縁付けてタコ殴りとはな!』
『アンタには関係無いだろうが』
『お前・・・!』
『ちょうどいい、ここで果たさせてもらうぞ。師匠破りを!』
『・・・そうか。良いだろう、これが最初で最後だ。見せてやるよ!俺の全力をな!』
互いに構えるジーエンアルトロンと乱入者の【リバースブリザードガンダム】。ほぼ同時に加速し激突する。そして拳が、脚が、何度も交わされ───
『雪花氷獄鳥!』
『龍虎狼道ぉぉぉぉ!』
氷で形作られた鳥のようなエネルギーと龍を模したような衝撃波がぶつかり合う。さらに両者は同時に跳躍し、空中ですれ違う。ジーエンアルトロンは手刀で、リバースブリザードは蹴りで。跳躍した時と同じように同時に着地した両者。だが互いの機体の状態には目に見える違いがあった。ほぼ無傷で脇腹に該当する部位にだけ小さな損傷があるジーエンアルトロン。装甲が砕け、全身にへこみと裂傷のようなダメージがあり、スパークが散るリバースブリザード。
(これは・・・勝負あったな)
ゼットの言葉通りデュアルアイから光が薄れ、大破判定によって機能の殆どが停止し膝を着くリバースブリザード。誰の目にも明らかな勝者はタイガーウルフだった。
『分かったか?これが俺の全てだ。もう二度と虎武龍の門は跨ぐな』
『くっ・・・』
『分かりやすく言えば破門だ。お前は・・・もはや言う必要も無いな』
その動きを止め、ボロボロになったリバースブリザードに背を向け歩き出すジーエンアルトロン。その途中で足を止めゼットに顔を向ける。
『お前さんも災難だったな。アレが悪い事をした』
(事情がよく分かってないんだが・・・助かったよ、サンキューな)
『あん?無口なのか嫌われたのか・・・まぁいい。じゃあな』
(やっぱ通じてねぇ・・・)
そう言って今度こそ去っていくジーエンアルトロン。
(あの格闘技術、凄まじかったな・・・師匠も全力出したらあんな感じだったりするのか?)
去り行くジーエンアルトロンの背中を見送るゼット。今は会う事の出来ない師匠ことゼロに思いを馳せていた。
(そういやアイツも師匠がどうのって・・・あれ?)
膝をついたリバースブリザードが居た筈の場所に視線を向けるゼットだが、そこには何も無かった。厳密に言えば一人、ジーエンアルトロンが去った先とは逆の方向に歩く小さな姿。
(地球人・・・だよな?いつの間に?あのガンプラも居ないし)
ガンプラ=地球人の鎧、またはロボットという事に気が付いていないゼット。
(花畑の地球人とは話が出来たし、もしかしたら地球人とは話せるかもしれない!)
(おーい!そこの地球人!ちょっと良いか?)
踏まないように歩いて近づくゼット。その振動と音で振り向く男性。
「まだ居たのか・・・俺を笑いにでも来たか?」
(この声・・・さっきのガンプラ?何で?)
「・・・何だ?」
(あれ?通じてない?俺の声聞こえてる?)
「何だと聞いている!」
(ヤッベェ!ウルトラ怒ってる!何か話す方法!師匠とか先輩方が地球人と一緒に戦った時とかどうやって意思疎通してたんだ?)
元より縮んだとはいえ大きな身体で慌てだすゼット、機械のボディでコミカルな仕草を取っているのはシュールな光景だろう。
「本当に何なんだ・・・言いたい事があるなら言え、チャットでもいいだろう」
そんなゼットの様子に毒気を抜かれたのか、GBNでのコミュニケーション方法を提案してくる男性。だが残念ながらゼットはチャットの方法を知らない。
(・・・そうだ!一体化!そうすりゃ精神が繋がって話が出来る!・・・でもどうやるんだ?元の身体ならともかくこの機械の身体だと───うぉっ!?)
「・・・意地でも降りない気か」
(腹!俺の腹がカパッ!って!何これ怖っ!)
コックピットカバーが開いたのだが、未だ謎の多いメカボディのゼットには驚愕と恐怖でしかないだろう。
「本当に訳の分からん奴だな・・・直接顔を合わせて話がしたいとでも?」
そう言って跳躍し、ゼットの装甲を登り始める男性。
(地球人スゲェ!さすが兄弟や師匠達と一緒に戦った種族だ!)
GBNというゲームのサポートあってこそだが。余談だが生身で怪獣に立ち向かう地球人は割と居たりする。
「トレース型か?また凝った趣味だな」
簡単にゼットの腹部まで辿り着いた男性、ゼットのコックピットは機動武闘伝Gガンダムのモビルファイターに採用されていたモビルトレースシステム型に似ていた。
「・・・?何処に居る?」
コックピットの中には誰も居ない、男性がさらに奥に足を進めると───
『不思議な感覚ですな』
「!?」
『これで一体化完了でよいのでごぜーますか』
「何だ!?誰だ!」
『うぉっ!?いきなり叫ばないでほしく存じます!』
白いドレスの少女に続いて二人目とのコンタクトはグッダグタだった。
「別の世界から来た宇宙人・・・にわかには信じられんな」
『ゲームの世界・・・何でそんな所に飛ばされてしまったんだ?怪獣の考えは訳が不明なのです』
「・・・先程から気になっていたが、その言葉はどうにかならんのか」
『普通に喋っているのでごぜーますが?変なのですでしょうか』
「大分な」
『やっぱり地球の言葉はウルトラ難しいぜ、まぁ通じているのなら無問題でした』
「・・・話を戻すが、お前が宇宙人というのは信じられん。シークレットミッションのNPDと言われた方がまだ説得力がある」
『マジかぁ・・・』
「だがただのプレイヤーという訳でもなさそうだ、ダイバーが見当たらなければ、ミッション受注画面がポップアップするNPDでもない。機体を遠隔操作して俺の反応を楽しんでるという線もあるが」
『そんな侵略宇宙人みたいな真似しません!心外なのです!』
「まぁいい、俺はそろそろ行く」
『えぇ!折角話できたのにですか!?』
「興味深くはあったよ。通訳なら他を当たって───」
『危ねぇ!』
立った姿勢のまま一体化した(?)男性と会話していたゼットだが、急にバックステップでその場から飛び退く。
「爆発だと?おい、何やった」
『自分じゃねーですよ!』
ゼットが立っていた場所で爆発が起きる。
その前方に赤と黒の機影。二機のガンプラが立っていた。
『ずいぶんヒョロい機体だなぁ!その分回避は得意ってかぁ?』
『タイガーウルフを潰す準備運動にはちょうどいいんじゃないか?兄貴ぃ!』
攻撃を仕掛けた機体は、黒いザクファントムと赤いザクウォーリア。爆発は腰のグレネードを投擲したと思われる。
「タイガーウルフを潰すだと?」
『それってさっきの・・・』
『オレ達の実力に嫉妬して破門だとよ!ふざけるなってんだ!』
『兄貴とオレのコンビネーションは最強だから仕方ないけどよ!』
【破門】
その言葉が男性ダイバー【コドウ】の中に落ちていく。
「感謝すべきか、お前が馬鹿やって引き留めなければ俺もああなっていたかもしれん」
『お前・・・今バカって言いました?』
台無しである。
「俺が破門された事実はもはや覆らない。せめて同類の始末は俺がする!」
『何をする気で───うおわぁ!また腹がパカッて!』
ゼットのコックピットから飛び出すコドウ。そして───
「来い!リバースブリザァァァド!」
コドウが指を鳴らすと同時に粒子が集まり、リバースブリザードガンダムの姿が形作られていく。
『何で二機持ってんだ!?』
『落ち着け!よく見ろよ、ボロボロだぜ?』
兄と思われる黒いザクファントムのダイバーが言う通り、リバースブリザードはジーエンアルトロンとの戦闘で負ったダメージが残ったままである。
「もう少しだけ付き合ってくれ、ブリザード!」
『ハンデのつもりか?バカにしやがって!』
侮られていると感じたのか、ゼットを無視しリバースブリザードに襲い掛かるザク兄弟。どういう手段かは不明だが、ボロボロの機体に乗り換えてナラティブ側には誰も搭乗していないという判断もあるだろう。
「何が最強のコンビネーションだ、こんな粗末な動きのどこが連携なんだ?」
『なんだとこの野郎!』
「あの男に代わって言ってやる、お前らは破門じゃなくて門前払いだ。そんな物言いに加えて自分の実力を過信し過ぎて───」
自分の言葉に動きが止まる。
実力を過信しているのは自分ではないか?自分の力だけにしか目を向けず、そんな自分に危機感を覚えたからこそタイガーウルフは、師匠は自分に頭を冷やせと、なのに自分は・・・
『隙ありぃ!』
『シェアァァァ!』
『なっ!?もう一人乗ってたのか!』
「・・・何故」
完全に動きの止まったリバースブリザード。文字通り隙だらけの状態を好機と見てビームトマホークで斬り掛かってくる赤いザクウォーリア。だが、ブリザードを背後から飛び越えてジャンプキックでザクウォーリアを蹴り飛ばす機体、ゼットが居た。
(先に喧嘩売られたのは俺だしな・・・それに困ってる奴を見捨てて逃げるなんて出来るか!)
この場の誰にも聞こえぬ声で言い放ち、ザク兄弟と対峙するゼット。
『ヒョロガリが調子に乗んな!』
体勢を立て直した赤いザクがトマホークを振り下ろしてくるが、簡単に受け止めるゼット。
(アイツや師匠に比べれば遅すぎるぜ!)
『デェヤァ!』
『ぐおぉ!』
ゼットの正拳突きが腹部に直撃し、ノックバックするザク。
『アカト!同時に仕掛けるぞ!』
『了解だ兄貴!』
黒いザクファントムのクロキと赤いザクウォーリアのアカトが、今度は同時に攻めてくる。
(ウルトラ踏ん張るぜぇ!)
「アイツのように、自分以外の何か、誰かの為に戦える奴が真の強者だとでも言うのか・・・なら俺は、俺の今までは・・・」
狙ってか偶然か、ブリザードから距離を離すようにザク兄弟と戦闘を行うゼット。動きを止めたブリザードのコックピットで項垂れるコドウ。
(今まで・・・そもそも俺は何故力を求めた?技を磨いた?何で───)
───父さん!俺、強くなる!皆を守れるように!
───また準優勝だってさ、永遠の二番手
───もう空手はいいのか?
───気晴らしにやってみたら?じーびーえぬ
───強っ!お前初心者じゃないだろ!
───少しは頭冷やせ、焦りすぎだ
───宇宙人って事なのでごぜーます
思い起こされる記憶。力を求め、技を磨く根元は幼少期の純粋な憧れ。挫折を味わい、打ち込んでいた空手から離れた苦い記憶。ゲームでもやって気分転換を勧める母の言葉に従い、ログインしたGBN。持ち前のセンスで対戦相手を撃破してきた勝利の記憶。次第に通じなくなり始めた己の技。そんな空気を払拭しようと、虎武龍の門戸を叩いた日。焦りから他の者との衝突が絶えない自分を窘めるタイガーウルフ。結局ゲームの中でも変わらない自分に嫌気が差して飛び出し、辻斬りまがいのバトルをするようになった日。自分と同じように筋は良い機体を見つけて挑発した瞬間。かつての師に敗れ破門を言い渡された時。そして今この瞬間戦っている、宇宙人を自称する変な奴。
無意識に封じ込めていた過去。
思い出したくなかった。
忘れていたかった。
力に溺れていたかった。
そうすれば傷付かずに済むから。
誰かを傷付ければ自分の方が強いと勘違いできるから。
でも───
「悪かったな・・・ブリザード、お前にまで重荷を背負わせて・・・お前ともう一度歩む為にも、今はゆっくり休んでくれ」
そう言ってリバースブリザードを待機状態にするコドウ。粒子となって消えるブリザード。コドウの目には光が宿っていた。
(コイツら・・・急に強くなった?)
『まさかタイガーウルフの前に使うとは思わなかったぜ』
『けどこれで終わりだ!』
ゼットと戦闘を行っていたザク兄弟。今その機体は紫色のオーラのようなモノを纏っていた。その状態のままトマホークを振りかぶるザクウォーリア、先程のように手首の部分を受け止める構えのゼットだが───
(っ!?重い!)
比較にならない程に重くなった一撃。ボディに蹴りを入れて離脱する。
(動きのキレは変わってない、パワーだけ妙に上がってるな・・・マトモに受けたらアウトだぜ)
『よそ見してるヒマがあるのかぁ?』
クロキのザクファントムがビーム突撃銃からビームを放つが、それも出力が大幅に上昇していた。
(俺の光線よりは弱い・・・でも当たるとマズイ!)
さすがにゼスティウム光線ほどの威力は無いものの、当たって無傷で済むという物でもない。
(蹴った時の感触も硬かった・・・隙間を狙えば倒せるかもしれないが、黒い奴の飛び道具を避けながら赤い奴と殴り合える自信はさすがに無いぞ・・・)
攻め手に欠けるゼット。そんな彼に声を掛ける者が一人。
「おい!宇宙人!もう一度俺を乗せろ!」
(さっきの地球人!?乗せろって・・・)
ゼットの元に全力で走るコドウ。
『何をする気か知らねぇが!』
ビーム突撃銃を連射し、コドウを狙うクロキ。背中を向けてコドウを庇いながらコックピットハッチを開くゼット。数発被弾しながらもクロキを搭乗させる事に成功し、ザク兄弟から距離を離すゼット。
『どうして生身で来たんでございやがりますか!』
「トレース型なら俺の動きを使えるだろ!俺の技を貸してやる!」
『一緒に戦ってくれるのか?』
「・・・あぁそうだよ!ここで前を向かなきゃ俺は一生進めなくなる!あのザクはあり得たかもしれない俺の未来で同類だ、ケジメは俺がつける。それに・・・」
『?』
「師匠が伝えたかった事、一部しか見えてないのに全力を出してる気になるな。全部を知って全力を出せる奴が強い。そして自分じゃ気付かない部分は他の誰かの視点じゃないと見えないんだって。俺は焦り過ぎて他人も、自分の事すら見えなくなってたんだって!」
『そうなのか・・・凄い師匠ですな』
「知らん!俺の推測だ!」
『ハァ!?』
「学びたいなら勝手に学べって言われたからな!勝手に考えて辿り着いた答えだ!そして理解した!俺の拳はどんな奴にだって届く!」
覚悟を決めたコドウ。その言葉と共に繰り出された拳をトレースし目の前に迫ったザクウォーリアに正拳突きを叩き込むゼット。その威力は謎の強化状態になったザクを大きく吹き飛ばす程だった。
「今だけでいい、俺と一緒に戦ってくれ」
『・・・分かった!お前の覚悟、俺にも届いたぜ!』
ゼットがコドウの覚悟を確かめた瞬間、コックピットに三つの光が現れた。
「何だ?」
『俺にも何がなんだか・・・』
光はコドウの元に集まり、その形が明らかになった。
「メダル?」
『ウルトラメダル!?いや、ちょっと違う?』
『この野郎ぉ!』
吹き飛ばされたザクウォーリアに代わって距離を詰めてくるザクファントム。ビームを回避しながらゼットに問い掛けるコドウ。
「おい!これは何だ!どうすればいい!」
『どうすればって・・・ライザーも無いのにどうするもなにもですなぁ・・・』
言葉に詰まるゼットだが、ライザーという言葉を発した瞬間コドウの目の前にコンソールが浮かび上がる。
【FUSION DOCKING Z】
「フュージョンドッキング・・・ゼット?」
『何か言いましたか!?そろそろ俺一人で避けるのキツいのでしたり!?』
コンソールには何かを嵌め込むスペースが三つ空いている。
「このメダルか?おい宇宙人!何か起きそうだから先に言っておくぞ!」
『何かって何がですの!?』
ゼットを無視してメダルを嵌め込んでいくコドウ。そして三つ全てを嵌め込むと右方向へのスライドを促す表示が出現する。
「これで!」
『だから何が───っ!?』
【GOD】【MASTER】【TRY BURNING】
『いける・・・いけるぞ!力が漲りました!地球人!』
「コドウだ!自己紹介が遅れたな」
『コドウ!俺はこの身体だとガンダムっていう種族でよろしいですな?』
「ああ、ナラティブガンダムだと思うぞ」
『よぉし!では!』
【ご唱和ください!我の名を!ガンダムゼット!】
「ん?」
『気合い!こういのはノリと気合いでごぜーます!』
「お、おうガンダムゼット?」
『もっと気合いを込めて!ガンプラ呼ぶ時はもっと叫んでたでしょうが!』
「っ!・・・ガンダァム!ゼェット!」
【GUNDAM Z ALPHASKILL】
『なっ!?何だ!』
『うおっ眩し!』
コドウがヤケクソ気味に叫ぶと同時に光に包まれるゼット。光が収まり、現れたのは───
『追加装甲だと!?』
『どうやったんだそんなん!』
ナラティブの原典には無い未知の姿だった。
『おぉぉぉぉ!ウルトラフュージョン出来た!今ならどんな技でも使えそうだぜ!行くぞ!コドウ!』
「・・・あぁ俺の神業、見せてやる!」
ビームトマホークを持ったザクウォーリアに突撃するゼット。迎え撃つ為にトマホークを振り上げるアカトだが───
「遅い!」
ボディに突きと手刀を右腕に当て、ビームトマホークを弾き飛ばす。そして回し蹴りを頭部にヒットさせ、ダウンさせる。その蹴りを放つ際には脚部に炎を纏っていた。
「威力もキレも申し分ない・・・!」
『テメェ!』
ビーム突撃銃を連射しながらクロキのザクファントムが距離を詰めてくる。
「装甲で受け流すには威力が高いか・・・何か武器は無いのか?」
『これでどうですか!』
コドウの言葉にゼットが応え、両腰の装甲から何かが射出される。力と装甲の基になったゴッドガンダムのビームサーベルとトライバーニングガンダムが使用した炎の剣を模した実体剣。その柄をマスターガンダムのクロスが繋いでいる。
「変わったヌンチャクだな・・・」
微妙に困惑するコドウだが軽く振って感触を確かめるとニヤリと笑う。そのままザクファントムに向かってゼットを走らせる。
『風穴空けてやるよぉ!』
正面から向かってきたゼットに強化されたビーム突撃銃を向け、連射するクロキ。高出力携行火器の代名詞でもあるビームマグナム並みに強化された筈の突撃銃だったが───
「フンッ!ハッ!シッ!テェイヤァ!」
直撃コースのビームを全てヌンチャクで弾き、受け流していくゼットとコドウ。スピードを落とさず走り続け、ザクファントムとの距離を縮めていき、前宙でザクファントムを飛び越えるゼット。飛び越える瞬間にヌンチャクをザクのバックパックに叩き付けるのも忘れない。
着地し振り向くと同時にヌンチャクを投げ付ける。投擲されたそれは、よろめいていたザクの後頭部に直撃した。さらに体勢が崩れたザクに再び走り寄り、ビーム突撃銃を蹴り上げて弾き、その手から離す。そのままザクを掴み膝蹴りを入れ、ザクウォーリアの方に蹴り飛ばす。
『アカトぉぐ!』
『兄貴!?どわぁ!』
衝突するザク兄弟。倒れなかったのは技術か強化の恩恵か。
「思いっきり跳べ!」
『よっしゃあ!』
ザク兄弟に向かって、初めてまともにスラスターを吹かし跳躍するゼット。ザク兄弟が体勢を立て直すのとゼットが直上に跳んで来たのはほぼ同時だった。
「『デヤァァァァァ!』」
連続キックでザク兄弟の頭部を蹴り飛ばしたのだ。
「トドメだ!」
『おう!』
「俺のこの掌が光を放つ!」
『平和を守れとウルトラ叫ぶ!』
「『アルファ!フィンガァァァァ!』」
両手を手刀の形にし、それぞれザクの腹部に突き入れるゼット。フィンガーとは言ったが、最初からヒートエンドのような物である。
『ぐおぉぉぉ!?』
『ちくしょおぉぉ!』
エネルギーを流し込まれ、内側から爆発するザク兄弟。
戦いはゼットとコドウの勝利に終わった。
『勝ったでございますな・・・』
「あぁ」
『そのですな・・・コドウはこれからどうするので?もし良ければ、俺と一緒に』
「一人で行く」
『それは良かった!やっぱり通訳ってえぇ!?』
「お前には感謝してる。誰かと一緒にというのが心強く大事だという事も分かった。だが、俺は今一度自分を見つめ直す必要がある」
『さ、さようでごぜーますか・・・』
「安心しろ、もう迷ったりはしないさ。俺は俺の答えを見つけたからな」
『分かりました!なら餞別代わりにメダルは持っていてくださりますことよ』
「良いのか?これがあればさっきの姿に」
『きっと一体化する地球人、ダイバーでしたか?が居ないと意味が無いと思われましてな。戦友の証という事で』
「分かった・・・ありがとうな」
コックピットから出ようとするコドウ。その直前にゼットは白いドレスの少女の言葉を思い出す。
───カプルの人がゼットに伝えてくれって
───それとカプルからも
『本当に二人居たんだ・・・』
「ん?どうした?」
『コドウのガンプラにもヨロシク!』
「・・・?」
『互いにウルトラ頑張ろうなって!』
「おかしな奴だな。まぁ伝えておくよ」
「じゃあな!次に会ったらお前の技も見せてもらう!」
コックピットを出た為言葉が通じなくなったゼット。言葉の代わりに頷いて返答する。
『シュワッチ!』
飛び立つゼット、長距離の飛行は・・・
(上手く飛べないから歩いてたんだった!忘れてた!)
「エヌ?ゼットなのに?本当におかしな奴だな」
その飛行の軌跡は【N】に見えた。
「さてと、破門されたのは自業自得だが、ボコボコにされたのは忘れないぜ?師匠」
ネガティブな発言だが、コドウの表情は晴れやかだった。
「いずれ超えてみせる、俺の拳はどんな奴にだって届く!」
───俺も一緒だ!高みに行こうぜ相棒!
コドウの決意。
彼に聞こえない言葉を発した相棒。
彼等は歩き始める。
見据えた高みに向かって。
「まったく・・・変な方向に振り切りやがって」
コドウが歩き出した方向に呆れたような言葉を発する獣人が居た。
「だが面白れぇ・・・挑みに来るなら歓迎してやるよ。俺の拳でな」
自分の機体に付けられた傷を見つめ、獣人は笑みを浮かべた。
こんな(長くなる)はずじゃなかった。
等と供述しており。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
いや、本当に。
【ガンダムゼット アルファスキル】
コドウの技と繋いだ絆によって生み出された「ガンダムメダル」の「ゴッド」「マスター」「トライバーニング」を使用して変身する強化形態。姿や色はアルファエッジ準拠だが、頭部のスラッガーが存在せず、右腰にビームサーベル、左腰に実体剣が追加され、その二つの柄をマスタークロスで繋いだヌンチャク「フレイムチェインスラッガー」が専用武器。
トライバーニングのようなクリアパーツが両腕に追加される為、ドッズライフル無しでも腕から直接ゼスティウム光線を放つ事が可能。
もう一つの必殺技はゼスティウム光線のエネルギーを解放せずに蓄積したまま相手に触れ、エネルギーを流し込んで爆散させる「アルファフィンガー」
【ガンダムメダル】
本来の歴史でゼットが使う筈だったウルトラメダルのような何か。ゼットと絆を結ぶ事で形作られ、ブレイクデカールの性質も利用して生成された。その為、分類的にはこれもブレイクデカールである。また、ゼットのコックピットに乗った時点で認証扱いの為、ライザーは不要。ゼットの機体そのものがゼットライザーである。
【コドウ】
過去に挫折を味わい気分転換として母に勧められたGBNを今でもプレイしているダイバー。
その格闘センスは中々の物だが、上位のランカーに通じなくなった事から焦りを感じ冷静さを欠いていた。
ゼットとの出会いは最悪の形だったが、共闘した事で迷いを振り切った模様。
タイガーウルフの「元」弟子である事を誇らしげに語る。
【リバースブリザードガンダム】
コドウのガンプラ。
かつてGPDのアーカイブ映像で見た、カミキ・セカイに憧れて製作したトライバーニングを模した機体。
全身のクリアパーツが存在せず、赤い部分は青に、白い部分は黒に塗装されている。
トライバーニングのカラーリングを逆転させ、セカイのような熱い心を持てなかった自分を皮肉って名付けられた。
【ザク兄弟】
兄のクロキ、弟のアカトの二人組。
乗機はそれぞれディアッカ専用ザクファントムとルナマリア専用ザクウォーリア。
タイガーウルフに破門されたと言うが、実際はコドウが言った通り門前払いだった。その事を逆恨みし、ブレイクデカールに手を出して虎武龍を襲うつもりだったが、ゼットとコドウによって撃破される。
【キルカ】
ゼットを謎のフリバNPDと呼んだ少女ダイバー。
乗機は実体型の大鎌を装備し、黒の比率が多くなったクシャトリヤの改造機「イガリヤ」
【シラブ】
キルカに通信を送ってきた少女。
実は近くまで来ていたので、キルカを拾って(捕まえて)一緒に帰った。
登場はしていないが乗機は黒とピンクで塗装したシャッコーの改造機「シュルシャッコー」
【タイガーウルフ】
原作キャラ。トライファングとも呼ばれる。
人狼のようなダイバールック。
この作品ではコドウの師匠でもあった。
【謎のフリバNPD】
ゼットの別名。キルカが呼んでいた。
GBN内を彷徨う内に何度か目撃されたゼットだが、戦いを挑んでも逃走される。以外と強い。会話に応じない。という点から「レアなデータをドロップするNPDではないか?」という推測が立ち、一部のダイバー達が探している。キルカが出会ったのは偶然だった。さらに、キルカの(仮定の)話を聞いたシラブから他のダイバー達にも伝わり、レアデータだけでなくビルドコインも大量に獲得できる、という情報が上乗せされてしまった。