「我流・・・蒼天紅蓮拳ッ!」
『ぐあぁぁぁ!?』
青と黒で染められた拳が、変わったカラーリングのインパルスガンダムを吹き飛ばす。最初は憧れて見よう見まねで使い始めた技だが、今となっては彼の切り札の一つにまで昇華している。
『サダメ!』
『VPSを軽く抜いてきやがった!下がれ嬢ちゃん!ジャベリン程度じゃアレは捌けん!クロスレンジに踏み込まれたらアウトだぞ!』
「残り二つ!」
前衛を務めていたのが仇となり、ダメージの限界を迎えてデータの塵となって消えるインパルス。青と黒で塗装されたトライバーニングガンダム───リバースブリザードガンダムを操るダイバー コドウは、残りの二機を見据えてアームレイカーを握り直した。
『仕方ない、俺が前に出る!援護は頼むぞ!』
『りょ、了解!』
1対3という有利な状況を破綻させられたチーム。やむを得ず前に出てきたのは、撃破されたインパルス───厳密にはデスティニーインパルスを援護しつつ、適度に格闘も振ってきたストライクガンダムのカスタムタイプ。
もう一機は砲撃支援に徹し、何度もコドウの回避先を潰してきた、別のインパルスガンダム。その背中にはブラストシルエットを装備し、四連装ミサイルランチャーとビームライフル以外の射撃武装をリバースブリザードに向けている。
(先にブラストインパルスを潰しておきたいが、あのストライクが許さないだろうな・・・溜めの隙を作るしかないか)
基本的に格闘戦しかできないリバースブリザード。砲撃機であるブラストインパルスなら、接近さえできれば一息に倒せる自信がある。だが相手はもう一機居る。恐らくネオ・ロアノーク専用機のカラーリングを再現したと思われるジェットストライカー装備のストライクだ。先ほどまでの戦いでも、縦横無尽に動き回るストライクからの攻撃で、致命傷こそ無いものの無視するには重いダメージを受けている。
(相手の中でも一番の手練れか。さて、どう出る)
指示も出しつつ遊撃を担当する。最も警戒すべき相手にストライクのダイバーを定めた所で、そのストライクが動き出す。
『おぉりゃあ!』
「正面から!」
コドウは知る術の無い事だが、ウィンダムとのミキシングにより各部位が改修されているストライク。カスタムポイントの一つである腰部装甲からビームサーベルを引き抜き、ビームライフルからビームを連射しつつリバースブリザードへ迫る。
「前に出ろ!守りを捨てて!回避すら攻めとして!」
『コイツは!?』
だが、そんな攻めの姿勢を見たコドウの闘志にも火が着いた。熱く荒ぶる魂に反比例するようにリバースブリザードの機体周辺から熱が奪われていく。戦友にして先を越されたくない相手でもある【自称宇宙人のゼット】との共闘後に開花した、コドウとリバースブリザードの必殺技【ブリザードクロス】を発動したのだ。
「一気に終わらせる!」
『強化システムか!切り札を切ったって事は、もう隠し球は無いって事だよなぁ!言い換えれば後が無くなったって事だ!』
ストライクのダイバーの言葉は的を射ている。リバースブリザードは武器を持たず、相手の意表を突けるのはコドウの格闘家としての技とブリザードクロスだけ。それらを全て捌かれた場合、残るのはコドウの闘志だけになる。戦いにおいてメンタルは重要だが、それだけで勝てるものでもない。
「そこだ!」
『うおっ!?』
だからこそ勝負を急ぐ。急ぐと言っても焦っている訳ではない。今までのコドウならば負に寄った感情に呑まれ、ストライクに敗北するどころかデスティニーインパルスを撃破する事すらできなかっただろう。だが今のコドウは違う。多少の迷いはあるものの、その迷いが拳を鈍らせる事はない。持ち得る全てを使ってこの戦いに勝利する事を目指している。
この強化の間に倒すという明確な意思と闘志、そして驕りではない信念がコドウの身体を、リバースブリザードの機体を動かしているのだ。
「せあッ!ふっ!」
『ぐっ、くぅ!さすがに・・・マズいか!』
『位置取りが・・・これじゃ撃てない!』
格闘機に格闘を振り返した時点で間違い、とはGBNより遥か前のガンダムゲーから言われてきた事。よほど発生の早い一撃か、敵の間合いごと潰せる長射程高出力武装でもなければ今のコドウは止められない。そして、離脱を許さない猛攻でリバースブリザードがストライクに張り付き続けており、誤射の危険性が非常に高く援護したくても出来ないブラストインパルス。細かくポジションを変えてはいるが、その動きもしっかり認識しているコドウ。
敢えて強烈な一撃を回避させ、その先で手数重視のコンボを繰り出し足を止めさせる。そうやって誘導する事でブラストインパルスの支援射撃を封じているのだ。ストライクのダイバーとしても、物理攻撃に強いヴァリアブルフェイズシフト装甲を抜いてインパルスを撃破した拳撃を受ける訳にもいかず、誘導されていると分かった上で回避せざるをえない。
『しゃあねぇ・・・!』
「っ!来るか!」
リバースブリザードの右ストレートに、シールドではなくビームライフルを合わせるストライク。防御装備ではなく、しっかりと受けの構えを取れていた訳でもないため、当然ライフルは砕ける。ライフルを砕き、そのままストライクの胸部右側にまで達した拳。大きく仰け反るストライクだが、ジェットストライカーも含めた全推進機関を全力稼働させ、強引に体勢を戻す。更に左肩をリバースブリザードにぶつけ、タックルで隙を作るまでやってみせた。
「ぐっ」
『これでどうよ!』
さらに追撃。シールドで隠していた左手には、チャージの一瞬で抜刀したらしきナイフを握っていた。それを逆手のまま突き出してくるストライク。
───カチッ
「なっ!?」
何かのスイッチが入る音が聞こえた。そこから一拍置いて爆発が起きる。ストライクの左腕とリバースブリザードの腹部に爆発痕が刻まれ、衝撃で距離を開けられてしまった。
「スティレットか!」
『ご名答!嬢ちゃん!』
ストライク本来の標準装備であるコンバットナイフ、アーマーシュナイダー。それと置き換える形で装備され、土壇場で自機の腕ごと爆発させたのはウィンダムの武装である短剣型爆弾「スティレット」。装甲を貫徹し、機体内部で爆発させる物の為か爆発のダメージは少ない。だがリバースブリザードの隙を作る事が最重要なストライク側としては、多少の損傷やダメージ量は二の次。待ってましたとばかりにブラストインパルスがケルベロスを向けてきた。
「まだだ!」
ケルベロスの砲口からビームの塊が吐き出される瞬間、リバースブリザードも瞬間的にエネルギーを集束させていた。コックピット内のコンソールには【FINISH MOVE 01】の文字が浮かび上がっている。
『いっけぇー!』
「雪花・・・氷獄鳥!」
左腕で正拳突きを繰り出し、右腕は左腕の下に支えとして添える。普段とは異なる出力を抑えた型で撃ち出されたのは、猛禽類を思わせるシルエットのエネルギー弾。それがケルベロスから解き放たれたビームと正面からぶつかり、一瞬で打ち勝った。
『ウソでしょ!?』
「残念ながら現実だよ」
いわゆる「射撃打ち消し」の効果がある雪花氷獄鳥。照射ビーム等の絶え間無く攻撃判定が発生する武装でも、強引に押し切れるのが強みだ。同等以上の威力を持つ攻撃とぶつかった場合はその限りではないが、今回はケルベロスのビームより高出力と判定され勝てたのだろう。
『今のでも駄目か・・・どうするかねぇ』
『あんなの直撃したら堪ったもんじゃない・・・』
左腕にダメージが残るストライクのダイバーは次の一手を考え、ブラストインパルスのダイバーは雪花氷獄鳥の威力と特性に驚愕している。
「畳み掛ける!」
僅かに、だが明確に離れてしまった距離を再び詰めようとするコドウ。リバースブリザードがブーストを噴かした瞬間、コックピットにアラートが鳴り響く。
「っ!」
『何だ!おいリーダー!俺達以外に誰か入れたのか!』
『攻撃!?誰が!』
間一髪、自機を狙った「何か」を避けたコドウとリバースブリザード。ストライクとインパルスのダイバーも困惑し、自分達のフォースリーダーに通信で確認している辺り相手側の作戦でもないらしい。
「空が・・・!」
『おいおい、何がどうなってる』
『アレって・・・』
フィールド設定「汎用・晴天の草原」で戦闘を行っていたコドウ達だが、突如として空が雲に覆われ日が消えた。代わりに雷鳴響く曇天の夜が訪れ、空が砕け、裂けるようにヒビ割れが走る。そんな世界の悲鳴を背に一機のモビルスーツが降りてきた。
「ユニコーン、いやバンシィか?」
『ユニコーンで合ってると思うぞ。黒く塗ったペルフェクティビリティたぁ、ややこしい』
襲撃者の正体は、ユニコーンガンダム2号機バンシィと見間違う漆黒に染められた1号機。それに各種アームドアーマーを装備した「完全」なるユニコーン。
『キミの仲間ってわけでも無いみたいね』
「あいにくマスダイバーの友人は居ないな」
『マスダイバー、ね。アレが噂のブレイクデカールってやつか』
互いの状況確認が済んだのとほぼ同時に変形、ならぬ変身を始めるユニコーン。スライドした装甲の隙間から、血のように赤く禍々しいサイコフレームが覗く。
「最終確認だ。あのユニコーンは敵、で良いんだな?」
『ああ』
『じゃあ先制攻撃───』
インパルスがケルベロスを構えた刹那、その上半身が揺らぐ。コドウとストライクのダイバーがユニコーンの動きを認識した時には既に、インパルスが機能のほとんどを停止していた。
『嬢ちゃん!』
「あの距離から振ってきたのか!」
左腕を動かしたらしきユニコーン。その手に握っているのは鉄の棒と呼べる何か。それを離れた位置から振るいインパルスの頭部と左上半身、ブラストシルエットを両断したのだ。デタラメな威力と射程を誇る棍に警戒しつつ、リバースブリザードに距離を詰めさせる。と、同時にストライクもユニコーンへ向かう軌道を取っていた。
『気が合うな!逃げ回ってたら逆にヤバい相手だ!』
「分かっている!」
救難信号に応えてくれるダイバーを待つ、という手もあるが、即座にそれを却下。今までの戦闘でダメージが残っている二機では、受けに回った時点でジリ貧が確定してしまい、間違いなくやられる。ならば多少強引にでも攻撃した方が良いという判断だ。
『それに、仲間をやられて引き下がったら・・・男が廃るってもんだろ!』
『・・・』
「今のは」
通信回線が開かれていないのか、黒いユニコーンのダイバーが言葉を発しても分からない。はずなのだが、ユニコーンから僅かに感情のような物が漏れた気がした。明確な「苛立ち」のような物が。
「確かめる!」
『ちょっ、おい!・・・しゃあねぇな!』
大きくは軌道を変えず正面からユニコーンへ向かうリバースブリザード。ストライクのダイバーも、それを援護するために左方向へ軌道を膨らませつつ、ウェポンラックから外した予備のビームライフルを構えさせた。
「どれだけ速かろうが!」
真正面から突撃してくるリバースブリザードに対してユニコーンが取った行動は棍による迎撃。金属質で硬度の高そうな見た目とは裏腹に、鞭のようにしなり獲物を狙う。二度、三度と振るわれた棍だが、リバースブリザードには当たらない。強力な武装でも「構えて、使う」という動作は必要になる。特に鞭は、一度振ると途中で軌道を変える事はかなり難しい。扱いに長けた者でも「軌道を変えるための動き」をする。
(あの時のザク兄弟より強い。だが───)
「勝てない相手というわけでもない!」
格闘家としてのコドウは【見る】事に長けている。相手の癖を見抜く、即席で模倣して意表を突く。その目と感覚を持ってして、ユニコーンの棍を潜り抜けた。
「っらぁ!」
選んだ択はストレートパンチ。攻撃は様子見無しの全力投球。正確にユニコーンの胸部装甲を捉えたはずだったが、ダメージを与えたという手応えが無い。
「チッ」
棍の連撃を抜ける際に他の武装での追撃や隙潰しが無いのが気になっていたが、この防御力に自信があったのだとすれば納得できる。拳を弾かれたリバースブリザードに反撃を繰り出すユニコーン。右腕に装備されているアームドアーマーVNを見せ付けるように振り上げ、凶爪で引き裂かんとするが、その右腕に連続してビームが着弾し動きを止める。
『俺も居るんでね!』
ストライクによる援護射撃。リバースブリザードの拳撃と同じくまともなダメージが入っていないが、注意を引く事はできた。
「せいっ!」
煩わしい、と睨むようにストライクへ視線を送るユニコーン。そこへリバースブリザードの回し蹴りが炸裂し、衝撃は殺しきれずよろめく。蹴りの勢いのまま離脱して一旦着地するリバースブリザード、ジェットストライカーを稼働させて距離を取るストライク。
『どう見る?ブレイクデカール使って舞い上がってるのかねぇ』
「慢心ともまた違う気がするが。どちらかと言えば、誇示しているような」
『だよなぁ、お前達の攻撃なんて無意味だ、って言われてる気がするぜ』
懐に潜り込まれても動きが緩慢だった理由。強大な力を手に入れ性能を過信しているというよりも、敢えて攻撃を受け、無傷を示し無力感を植え付けるのが目的に見える。現に二人が作戦会議の通信をしている暇がある。
『その気になれば、嬢ちゃんのインパルスみたいに一撃で墜とせるってか。タチ悪いのに目ぇ付けられちまったもんだな!』
「っ!あんた!」
『今度はお前が援護だ!やられっぱなしは趣味じゃないんでね!』
何もしないよりマシ、とビームライフルを連射しながら接近するストライク。もう一度ブーストを噴かしユニコーンへの再接近を図るコドウ。
『弱いやつが───』
『あん?』
「女?」
『吠えるな・・・!』
動きの少なかったユニコーンだが、操っているダイバーが口を開いたのと同時に急加速した。ストライクが放ったビームが直撃するが、そんな事はお構い無しと接近するユニコーン。棍を振るいながらアームドアーマーを構えている。
『はっ・・・やいな、チクショウ!』
棍による攻撃はどうにか回避するも、本体は止められず至近距離へ潜る事を許してしまう。咄嗟にシールドを掲げるが、左腕ごとアームドアーマーの凶爪に掴まれてしまった。
『ってぇな・・・けどよ!』
捕縛した相手を超振動で粉砕するアームドアーマーVN。ブレイクデカールによる強化も相まってシールドごとストライクの左腕を砕き、引き裂いた。だが、ストライクのダイバーは、そうなる事など折り込み済み。捕まった時点で機体を捩り、自ら腕を引きちぎりながら右手のビームライフルを投棄させ───
『やられっぱなしは趣味じゃないっつったろうが!!』
『・・・ッ!?』
渾身のパンチをユニコーンの顔面に叩き込んだ。
『一発は返すぞ、この野郎』
『お前・・・ごときがっ!!!』
「でぇやぁぁぁぁっ!!!」
弱者と断じたストライクから予想外の反撃を受け、ダメージこそ無いものの激昂するユニコーンのダイバー。不躾な野良犬を八つ裂きにせんと再びアームドアーマーを振り上げるが、飛び込んできた烈氷に妨害される。ストライクに隠れる形で近付いていたリバースブリザード。左腕でボディブローを打ち込み、損傷の少ない右腕で必殺の一撃へ繋ぐ。
『お前はぁ!』
「打ち抜く!」
『消す!』
リバースブリザードが全身全霊のコークスクリューパンチを放ったのと、ユニコーンが紫のサイコフィールドを発生させたのはほぼ同時だった。
「ぐっ、くぅっ!」
『潰れろ!這いつくばれ!』
「お、れは・・・」
【戦友の証って事で】
「おれは・・・!」
【互いにウルトラ頑張ろうなって!】
「俺はぁっ!!!」
インベントリにデータとして収納されていたはずのアイテムが一つ、勝手に形作られコドウの目の前に浮かぶ。決意の証であり、絆の証でもあるそれは───
「アルファ・・・フィンガァァァッ!!!」
【トライバーニングガンダム メダル】
『なっ!?』
ユニコーンのサイコフィールドを切り裂き、突き出されたアームドアーマーVNの中に突き入れられたリバースブリザードの右掌。コークスクリューの握り拳から貫手の手刀へと組み替えたその掌は、ブレイクデカールの強化すら穿ち、アームドアーマーを抜いて肘関節付近まで貫通していた。
「ゼスティウム!エンドォッ!!!」
そして、歪に絡まった両者の腕を中心に、光が爆ぜた。
光熱爆破の威力が強すぎたのか、右腕の肘から先を失くし、黒煙を上げながら落ちていくリバースブリザード。対してユニコーンはアームドアーマーとビームトンファーが消失し、手の甲辺りまで装甲が砕け焼け爛れているものの、損傷はそれだけ。
『今のでも腕一本がやっとかよ・・・』
『もう、いい・・・潰してやる!お前だけは!』
「まだっ・・・動けるだろう!立ってくれリバースブリザード!」
派手に墜落し、左腕で起き上がろうとしているリバースブリザード。効果時間切れに度重なる損傷でブリザードクロスも解除されている。ユニコーンのダイバーは、そんな満身創痍のコドウにトドメを刺そうと左腕の棍を構えさせるが、そこに別の人物が割り込んできた。
『残念だけど、おいたはここまでよん?』
男性と思わしき声で女性口調。コドウとストライクのダイバーは一瞬で察した。
『そぉーれっ!』
『!』
掛け声と共に飛来するビームのカマ。リバースブリザードに向けて振り下ろそうとした棍を咄嗟に別方向へと振るい、ガードに成功する。
「マギー・・・さん」
『オネェがここまで頼もしく見える日が来るとはな』
『リットくんからラブコールされちゃったのよぉ。来てみたら、予想外なお客さんが居たけれど』
弾かれたビームカマをキャッチし、独特な持ち方で構えながら滞空しているのはガンダムラヴファントム。搭乗しているのはGBNの良心、善なるオカマ、人脈接着剤、お節介オネェさん等々様々な異名を持つハイランカー、マギーその人である。
『はじめまして、あなたがシャドウロールね?アタシも含めて、あなたとお話したいダイバーが何人も居るんだけど・・・』
『・・・チッ』
物腰は柔らかいが、目が笑っていないマギー。シャドウロールと呼ばれたダイバーは、心底憎らしげにラヴファントムを、そしてリバースブリザードを睨み付けてから撤退を選択する。
「逃がすか!」
片腕で雪花氷獄鳥の構えを取るリバースブリザード。コドウが氷鳥を放とうとした瞬間、足元に強烈にしなる何かが打ち込まれた。ユニコーンが棍を鞭のように振るったのだ。
『させないわよぉ!』
『っ!』
コドウのフォローに動こうとするマギーだが、ユニコーンが鞭を引き戻し、棍を投げ槍のように構えるのを認識し、ラヴファントムに回避行動を取らせた。モーションに違わず棍を投擲し、さらに空いた左手をリアスカートに伸ばすユニコーン。再びカマを投げ付けるマギーだが、一手早くユニコーンが別の武器を宙に放る。
「くっ!」
フラッシュバン。強烈な閃光を発し、視界が潰されるコドウ。マギーとストライクのダイバーも同様にユニコーンを目視できなくなっている。ようやくモニターが機能を回復した時には既にユニコーンは消えていた。初めからそこに居なかったように。
▲▽▲▽▲▽
「シャドウロール・・・」
「そう呼ばれてるわ。AVALONと幾つかのフォースが連携して追ってるけど、追い詰めてもさっきみたいに雲隠れしちゃってね」
戦闘終了後、セントラル・ディメンションのテラスにて情報を共有するマギーとコドウ、そしてコドウとバトルしていたフォースの面々。
「なぁ、何だってアイツは乱入してきたんだ?」
「・・・メガ粒子杯の参加者を狙っているらしいのよ」
「メガ粒子杯の参加者?」
初心者の登竜門「メガ粒子杯」。Cランクから参加でき、時折ランク詐欺の猛者も混じる公式のイベント。マギーが言うには、シャドウロールと呼ばれるダイバーは直近に開催されるメガ粒子杯の参加者を狙っている、との事らしい。
「そう言えば知り合いが言ってたわ。今回はエントリーキャンセルが多いって」
「それって・・・」
「奴に潰されたんだろうな。何だってそんな事を」
「アタシもそれは分からないわね・・・」
ブラストインパルスに乗っていた女性ダイバー、ソルセレナが知人の言葉を思い出す。それに反応したフォースリーダー リットも、ストライクに搭乗していたポッシボーも苦い表情となる。
「コドウくん・・・」
「俺は問題無い、です。俺を狙っていたなら、巻き込む形になってしまって申し訳ない」
そう言ってリット達に頭を下げるコドウ。マスダイバーを呼び込んだ事への叱責は覚悟していたが───
「いやいやいや!君が謝る事じゃないって!」
「そうそう!逃げずに立ち向かった姿、カッコ良かったよ?」
「ソル!?」
「バカップルは他所でやってくれ・・・原因がお前だって言うなら、アレを撃退してチャラになってるだろ?気にすんな、とは言えんが責めるつもりも無いね」
「良い対戦相手に恵まれたみたいね?」
「・・・はい!」
今度は乱入無しでキッチリ戦おう、と再戦を誓い別れる両者。テラスに残ったコドウへマギーが言葉を掛ける。
「メガ粒子杯はどうするの?」
「勿論このまま参加します。俺の心を折るなんて二万年早いって事を示してやります」
「頼もしいわねぇ。アタシも楽しみにしてるわ、頑張ってね!」
眩しい笑顔で激励を送ったマギーも雑踏に紛れていく。今度こそ本当に一人残されたコドウは、表情を引き締め手に握っていた一枚のメダルを眺める。
「お前に助けられたな。けど、使いこなすには俺もリバースブリザードもまだまだ未熟か。それに───」
恐らくこれもブレイクデカールの一種。厳密には違うとしても、GBNを揺るがしかねない【力】である事には変わりないだろう。
「戦友には申し訳ないが、封印だな。これは」
インベントリへの収納を選択し、データの粒子となって解けていくトライバーニングのメダル。メダルが完全に消えた所で、何かを確かめ、誓うように拳を握るコドウ。
「高みへ・・・宇宙人だろうがシャドウだろうが、俺の拳は届く」
コンソールからログアウトを選択し、現実へと戻っていくコドウ。早速自宅へ戻り、リバースブリザードの調整を始めるのだった。
今はまだ届かなくとも
【シャドウロール】(出典:守次 奏 様)
ユニコーンガンダム ペルフェクティビリティを黒く染め、装備箇所の変更やオリジナル武装の追加等を行ったカスタム機を操るマスダイバー。
「メガ粒子杯 バトルカイ」の参加者を無差別に襲撃しては、ブレイクブーストによる圧倒的な性能差で心を折るという行動を繰り返しているらしい。その理由は不明であり、AVALONや幾つかのフォースアライアンスが追っているが、捕縛と事情聴取が目的のため撃破はされておらず逃げられている。
【フォース テイクイットイージー】
コドウが対戦していたフォース。
今回バトルしていたメンバーは、サダメ、ソルセレナ、ポッシボーの三人。リーダーのリットは愛機の改修の為にガンプラ無しでログインしており、バトルには不参加だった。
後にメンバーも増え、別章の主人公ミズキリとの縁が深くなる。
【マギー】(原作:ガンダムビルドダイバーズシリーズ)
オネェェェェェいッ説明不要!!