GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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ベータ───


若き光と力

(出口ー何処だー出口ー)

 

いきなり何を言っているんだと思うだろうが、この発言をしたダイバー、もといガンプラのゼットは大真面目にGBNからの出口を探している。

 

(ハァ・・・そろそろ光の国に戻らないとマズいんだよなぁ・・・師匠なら鮫怪獣は倒せるだろうけど、タルタロスの事もあるし)

 

ゼットが鮫怪獣ことゲネガーグを追っていた時は、アブソリュートタルタロスと名乗る者によって光の国は混乱に陥り、その騒動の最中にライザーとメダルをゲネガーグに奪われたのだ。しかもそのゲネガーグを追って飛び出したゼットが行方不明になっている。少なからず光の国に負担を掛けてしまっているだろう。

 

(相変わらずガンプラとダイバー達は喧嘩吹っ掛けてくるし・・・ウルトラ疲れる状況が続くなぁ)

 

完全に情報が出回ってしまったのか、ゼットの事をレアなNPDと勘違いして戦闘を仕掛けてくるダイバーが後を絶たないのだ。自動で修復されるガンプラゼットボディでもさすがにキツいらしい。

 

(にしても、やっと荒野を抜けたと思ったら今度は森って・・・もしかして俺呪われてる?)

 

ぼやくゼットの現在地は見渡す限りの森林地帯。アジアン・サーバーのエスタニア・エリアを出て、いつの間にか別のエリアまで来てしまったらしい。

 

(何か、シュンッみたいな感覚あったんだよな。もしかして時空を移動したとか?)

 

ゼットの言うシュンッとした感覚は恐らく転送ゲートの事だろう。ディメンションを時空と形容するならその考えで間違ってはいないが。

 

(跳んだ感覚はあったけど・・・確か逃げてたよな。しつこいんだよなぁ・・・三人組)

 

コドウと出会う切っ掛けとなった戦闘。クシャトリヤの改造機を使うダイバーとの遭遇戦。あれ以降ターゲットにされてしまったのか、何度か襲撃を仕掛けて来たのである。それも仲間を引き連れて。

 

(ともかくこの森を抜けて通訳してくれるダイバーを探さないと・・・花畑と荒野が奇跡的だったんだなぁ)

 

何故かゼットに搭乗せずとも会話が可能だった花畑の少女と、戦いの中で心を通わせたダイバーであるコドウ。どちらも今は何処で何をしているか分からない。

 

(いや、むしろこの森の中でダイバーを探すか?ジービーエヌっていう地球であって地球じゃない世界なら、森で元気にやってるダイバーも居るんじゃないか?)

 

居なくはないだろうが、一部も一部な上に出会える確率はかなり低い。

 

(どっちにしろ出口探しながらになるし、会った奴に何とか一体化してもらわないと。気合いとボディランゲージだ!)

『デェェェェス!!!』

 

ゼットが考え事をしている最中、真上から振り下ろされる大鎌。それを回避し、距離を取るゼット。

 

『くぅあぁ!毎回毎回避けるなデェス!』

 

『シュア・・・』

(あーやっぱりコイツかぁ・・・て事はもう二人も居るよなぁ・・・)

 

どこかで見た光景にため息を吐くゼット。もうすっかりお馴染みになってしまったクシャトリヤのダイバーことキルカである。何度戦っても全く仕留められない事に苛立っているのか、キルカも最初から滅茶苦茶な事を言っている。避けるなと言われて素直に従うダイバーが何人居る事やら。

 

『今日こそレアデータを貰うのデス!仏の顔もスリーチャンス!三度目の正直デェス!』

『仏の顔も三度まで、だよキルちゃん』

『わたしが加わってから数えても三回は超えてるわね』

 

そんなキルカのクシャトリヤことイガリヤに続き、木々を揺らしながら舞い降りる二つの影。ビームローターで浮遊している機体と、ゼットの背後に着地し槍のような武装を向ける黒い機体からそれぞれの搭乗者が声を発する。キルカの発言を訂正したのがピンクのシャッコーを操るシラブ、回数に言及したのが黒いレオールに搭乗しているメリアである。何れのダイバーネームもゼットは知らないが。

 

『ここまで来たら意地なのデス!』

『しぶとい分ドロップは期待できそうだし』

『わたし達もNPD一機すら墜とせないダイバーと言われるのは癪に触るのよ、今日こそは倒す!』

 

(やるしかないか・・・行くぜ!)

『シェア!』

 

ゼットも覚悟を決めて構える。

 

『先手必勝ォ!デェス!』

 

【切・呪リeッTぉ】

 

(それはもう何回も見た!)

 

何故かゼットにしか見えていないらしい文字化けしたようなテロップと共に、クシャトリヤの持つ大鎌からビームの斬撃が放たれるが、それを容易く回避するゼット。腰のラックからドッズライフルを外して保持する余裕も見せる。

 

(お返しだ!)

『テェヤ!』

 

言葉通りの反撃としてドッズライフルからビームを連射する。さすがに命中はしなかったものの気勢は削げた。

 

『前より反応速くないデスか!?』

『明らかに強くなってる・・・!』

 

(こちとら育ち盛りの5000歳だ!日々ウルトラ学んでんだよっぶねぇ!?)

 

『二人に見惚れてて良いのかしら!わたしも居る事を忘れないでほしいわね!』

 

少し調子に乗ったゼットの背後からビームの槍が突き出される。GNランスをベースに改造を施された槍による連撃を回避するゼット。コドウとの共闘以降、挑みに来るダイバーを退け続けた結果ガンプラボディにようやく感覚が馴染んだらしい。ランスの突きを回避しつつ懐に潜り込み、黒いレオールに正拳突きを見舞う。

 

『ぐぅっ!』

『メリア!?』

『やらせない・・・!』

 

散開していたクシャトリヤとシャッコーがレオールのフォローに入る。ビームローターを回していない方の腕からヨーヨーのような武装を飛ばしてくるシャッコー。カバカーリーのビームリングだろうか。

 

(それ避けるのムズいんだよなぁ!)

 

不規則な軌道を描くビームリングをギリギリで回避するも、ドッズライフルを取り落としてしまう。そこに斬り込んでくるクシャトリヤ。始めからレオールへの注意を逸らし、本命をクシャトリヤに託すつもりの牽制だったらしい。

 

(刃が無い部分なら───あっヤベェ!)

 

『デェス!』

 

【封伐・PィNo奇ぉ】

 

クシャトリヤ側に踏み込み刃の無い柄の部分を掴んだゼットだったが、クシャトリヤのバインダーが可動したのを見て思い出す。ファンネルの運用機能を廃した代わりに、バインダーに内蔵されたサブアームには常にビームサーベルが保持してあるのだ。機体の前側のバインダーからサーベルを発振し、大鎌を抑えているせいで身動きが取れないゼットに突き立てようとするキルカ。

 

(まだだぁ!)

『ディヤ!』

 

頭部から光刃を放つゼットスラッガーが置き換わった頭部バルカン砲。それを右から迫り来るサブアームに連射して破壊すると同時に左腕を大鎌から離し、もう一方のサブアームを掴んで止める。

 

『なんと!?器用過ぎ──ガハッ』

 

ゼットの事をNPDと勘違いしているキルカを始めとするダイバー達。適切かつ迅速な対応をするゼットに驚愕したキルカは一瞬動きを止めてしまう。その隙を見逃す事なく、可能な限りの力と勢いを込めた膝蹴りをクシャトリヤの腹部に叩き込むゼット。

 

『キルちゃん!』

『待ちなさいシラブ!足並みを揃えて───』

 

焦った様子で突撃してくるシャッコー。態勢を立て直したレオールから注意が飛ぶが、既にシャッコーはビームローターを回し、ゼットに接近しながら再びビームリングを射出している。リングに気付いたゼットはクシャトリヤの頭部を抱え込み、回し蹴りでビームリングを弾く。

 

『嘘っ!?』

『ちょおぉぉぁ!?乙女にヘッドロック掛けるとかどういう神経してるデース!』

(そりゃ悪かったな!)

 

クシャトリヤの頭部を解放し、蹴りを入れつつ距離を取るゼット。その途中でドッズライフルを拾うのも忘れない。

 

『本当にNPDなのかしら!ダイバーが乗っているなら、わたし達が恥をかく前に出てきてほしいのだけれど!』

(言葉が通じないんだからしょうがないだろ!)

 

息つく暇も無く黒いレオールが槍を突き出してくる。このままでは先程と同じ状況に逆戻りしてしまう事に焦るゼット。

 

(クッ!アルファの剣があればもう少し捌けるのに!)

 

コドウと心を通わせた事で生成されたメダル。それによって変身したアルファスキル形態の剣が使えれば、と嘆くゼットだがメダルはコドウに預けてしまい、そのコドウも何処に居るか分からない。

 

『一気呵成デェェス!』

『仕留めるよ・・・!』

(ゴリ押しが一番キツいんですけど!?)

 

ゼットを釘付けにする事に成功したレオール。それを好機と見たクシャトリヤとシャッコーがそれぞれの得物をゼットに向け襲い掛かってくる。あわや撃破か、と思われた瞬間。

 

閃光が疾る

 

『あぁっ!』

『シラブ!』

『攻撃!?誰が───』

 

突如シャッコーの背後からビームが放たれ、ビームローターの基部ごと左腕を吹き飛ばしたのだ。動揺する三人に対して、突破のチャンスを待っていたゼットの行動は早かった。

 

(今だ!ゼスティウム───)

『っ!』

 

(光線!!!)

『ディィヤァァァァ!!!』

 

ガンプラとなったゼットに残された数少ないウルトラ戦士の技。それも武器を介さなければ使えないという制約はあれど、それでもゼットの「必殺技」と呼ぶにふさわしい威力を誇る「ゼスティウム光線」が正面に居たレオールに直撃する。

 

『メリアぁ!』

『だい、じょうぶ・・・さすがに撃破を貰うのは不味いわね・・・退くわよ』

『ごめんなさい・・・』

 

咄嗟にマントで防御したらしいレオールだが、完全には防ぎきれなかったらしくマントの左半分が焼失し、左腕は肩ごと消し飛んでいる。アンノウンからの攻撃と機体のダメージ状況から戦闘を続ける事を危険と判断したメリア。ゼットも追う気は無く、撤退していく三機を警戒しつつ見送る。

 

(あぁー・・・何とかなったぁぁぁぁぁ!)

 

やがて三機が完全に見えなくなり、ほぼ誰にも聞こえない声で叫ぶゼット。先程の戦いでかなり心労が蓄積したらしい。

 

(もう来ないでほしいけど、また来るよなぁ・・・)

 

もはや腐れ縁になってしまいかねない三人組を次はどう相手にするか考えながら、背後に注意を向ける。

 

(で、誰だったんだ?さっきの)

『あ、あの!大丈夫でしたか?僕の攻撃当たってないですか?お邪魔でしたか?でしたら本当にすいませんでした!困ってるように見えたのでつい・・・』

 

空から舞い降りる青い機体と、畳み掛けるように謝罪を口にするダイバー。口振りからするに善意でゼットの援護をしたらしい。

 

(あー・・・まず落ち着け、俺には当たってないから)

『えーと・・・やっぱり当たっちゃいました?ご、ごめんなさい!ちゃんと狙ったつもりだったんですけど!』

(やっぱり通じないかぁ・・・)

 

青い機体───リペイントしたセイバーガンダムのダイバーはネガティブな性格というか悪い方向への思い込みが激しいタイプらしく、一言も返答しないゼットを怒っていると判断してしまったらしい。ゼットもゼットで言葉が通じなかった為に落胆し、セイバーのダイバーによる謝罪の嵐に困惑もしている。

 

(まずはコミュニケーション!開け!腹!)

『えっ?あっ、直接お話ですか・・・わ、分かりました』

 

コドウの時で感覚は掴んだのか、スムーズにコックピットハッチを開くゼット。セイバーのダイバーは直接文句を言われると勘違いして気が気じゃない様子だが。

 

 

(あぁ怒ってるよねぇ・・・ちゃんと話できるかなぁ)

 

セイバーガンダムを待機させゼットことナラティブガンダムのコックピットへと向かう少年ダイバー。その足取りは重く表情は暗い。膝をつき、片手を少年に差し出すゼット。

 

「あ、どうもすみません」

(そこまで厳しい人じゃないのかも?でもなぁ・・・)

 

コックピットに辿り着いた少年。操縦しているダイバーに謝罪しようとするが───

 

「Gガン式・・・あれ?」

 

モビルトレースシステムのようなコックピットに驚いたが、肝心のダイバーが見当たらない。

 

「あの、すいません!待機しているセイバーを操縦していたシンリと申します!どちらにいらっしゃ───」

『やっと話せるでございますことよ・・・』

「うひゃあ!?誰!何!?」

『またこのパターンかぁ・・・』

 

誰も居ない閉所で声が聞こえたら基本的に誰でも驚くよねっていう。

 

 

-若き光説明中-

 

 

「つまりゼットさんは宇宙人で・・・気が付いたらGBN に迷いこんでいて、言葉も通じないから途方に暮れていると」

『そういう事なのでごぜーます』

「・・・あの、その言葉遣いは」

『やっぱり変でやがりますか・・・』

「そう、ですね・・・特に語尾あたりが」

 

改めて指摘され落ち込むゼット。シンリと名乗った少年ダイバーは何かを考え込んでいるようだ。

 

(そういう設定のイベントなのかな・・・襲撃されてる所を助けてコックピットに行くと始まるみたいな。でもここまで自然な受け答えが出来るイベントNPDなんて聞いた事も見た事も無い・・・言語出力はちょっとバグってるみたいだけど)

 

出会ったばかりのコドウと同じく疑っているらしい。当然の事ではあるが。

 

『まぁコミュニケーションできるだけマシって事にしといてくだせぇ。で、シンリは出口って分かるか?』

「うーん・・・そもそも根本的にダイバーと違うみたいですからね。僕達はログアウト操作で帰れますけど、ゼットさんはシステムコンソールとか呼び出せないですよね?」

 

こんな感じで、とコンソールを開くシンリ。

 

『・・・どうやら無理みたいでございます。技術局の方々が似たようなのをピコピコヒュンヒュンしてたのは何度か見た事ありますが』

「そうですか・・・それ以外のログアウト方法となると、寝落ち強制ログアウトとかだけど・・・」

『どうやって寝るんだっけ?』

 

ブラックな会社勤めのような発言をするゼット。ガンプラボディだからなのか、GBNで目覚めてから一睡もしていないどころか眠気を覚えた事も無い。

 

(これは設定なのか本気で言ってるのか分からなくなってきた・・・でも宇宙人ってそんな事あるのかな)

『本格的にヤバみを感じる状況になってきたよう気がしますです・・・』

「宇宙人・・・そうだ、GBNの宇宙には行った事ありますか?地上エリアに無い物とかもありますし」

『ジービーエヌの宇宙でございますか・・・確かにジービーエヌで目が覚める前は宇宙に居ましたな!もしかしたら手掛かりがあるかもしれない!』

 

かろうじて希望は消えなかったようだ。元来のポジティブを発揮し、GBNの宇宙を目指す事にしたゼット。それを聞いてシンリも安堵したらしい。

 

(NPDにせよ本物にせよ、これで一歩前進したのかな)

「少しでもお役に立てたなら幸いです」

『少しどころか大手柄でございますことよ!で、宇宙へはどうやって行けば?』

「そうですね、宇宙エリアへの転送ゲートを使うか、マスドライバーなどで直接上がるか」

『転送ゲートかマスドライバー、よし!覚えたぜ!』

 

シンリはコックピットに居る為見えていないが、ガンプラゼットはガッツポーズをしていた。内部のシンリを揺らさないように配慮した小さい動きだが。

 

「ちょっと羨ましいな」

『ん?何がですかな?』

「えっ?」

『羨ましいって』

「口に出てました!?あぁ・・・ごめんなさい」

 

羨ましい、と呟いたシンリ。コックピット内での発言をゼットが聞き逃すはずもなく、言葉の意味を問い掛けるゼット。完全に無意識の発言だったのか若干赤くなりながら謝罪するシンリ。

 

『いや、謝る必要は無いと思います』

「ごめんなさい───あぁ、すいません・・・癖になってるというか、染み付いてしまってまして」

『気にするなですよ。それで羨ましいってのは?』

「き、聞いちゃいますか。えーっと、その・・・僕とは真逆な性格が、ですかね?」

 

宇宙警備隊の新人で(自称)弟子だったせいか、羨ましいと言われたのが嬉しかったゼット。いつもより少しだけグイグイ聞きに行っている。それに対してシンリの返答は、本人も考えをまとめきれていないのか疑問系だった。

 

『性格?』

「はい、僕はその、自分で言うのもなんですけど弱気で他の人の意見に流されやすくて、一度悪い方向に考えると止まらなくなってしまって」

『さっきもウルトラ謝ってたもんな』

「えぇまぁ、でもゼットさんは元気で自信に満ち溢れていて、ポジティブな方向に考えを修正できて、優しい人っていう印象を持ったんです」

『お、おう・・・そう言ってもらえて嬉しいぜ!』

 

元気有り余るポジティブなアホの子とも言うが。

 

「だから自分に無いモノを持ってるゼットさんが羨ましいなって」

『そこまで自覚出来てるなら問題なさげに思えますがなぁ。あとは踏み出して変わるだけだと思いまする!』

「簡単に変われたら苦労はしませんよ・・・」

 

僅かな苛立ちが混ざった苦笑を浮かべるシンリ。舞い上がって踏み込み過ぎた発言をゼットが謝罪しようとした瞬間───

 

『シンリー!何処に居るのー?』

 

ゼットでもシンリでもない、女性の声が聞こえてくる。それを聞いたシンリは何故か動揺している。

 

「なっ、何で?今日はまだ時間じゃないのに・・・」

『シンリを呼んでいるみたいでごぜーますが、知り合いか?』

 

状況が飲み込めていないゼット。シンリに問い掛けた瞬間、シンリの青いセイバーの近くに別の機体が着地する。

 

『こんな所に居たのね?全く駄目じゃない、私がログインする前に一人で勝手に出歩いちゃあ』

 

新たに現れた機体はガンダムSEEDに登場した地球連合軍のG兵器ことストライクの改造機と思われる機体。ベースとなったストライクを背部のエールストライカーも含めて、全て青く塗装しているのが特徴的だが、何よりも頭部がストライクをベースにした量産機であるストライクダガーの物になっているのが一番の特徴だろうか。

 

「え、あ、その・・・僕、は」

『ねぇシンリ?私言ったよね?私の言う事を聞きなさいって。なのにロビーで待ってないし、勝手に変なナラティブに乗り換えてるし』

『変とは何だ変とは!・・・っ!?この感覚はまさか』

 

ゼットが変なナラティブ呼びに抗議した瞬間、青いストライクから紫色のオーラが立ち上る。コドウと共闘した際の相手だったザク兄弟と同じ気配を感じたゼット。

 

『ちょっとオシオキ、ね?』

 

そう、ブレイクデカールである。

 

『まずは脚から!』

『あっぶねぇ!?』

 

青いストライクの持つビームライフルから強化されたビームが放たれる。脚から、という発言通りゼットの右脚を狙ったそれはギリギリの所で回避される。

 

『やっぱりあの黒赤ガンプラと同じか!』

「お、降ろして!降ろしてください!キョウコさんに謝らないと!」

『こんな状況で降ろせますか!?』

 

応戦しようとするゼットと戦闘を拒否するシンリ。一体化=モビルトレースシステム型が裏目に出てしまい、ガンプラゼットとしての動きがぎこちない。やむを得ず回避に徹するゼットだが、命中しない事に業を煮やしたストライクが腰のマウントラックからもう一つのビームライフルを取り外して構えるのを見て焦る。

 

『どうして逃げるのシンリ!お仕置きにならないでしょう!』

『シンリ!あのダイバー知り合いでごぜーますか!ちょっと説明してほし───カスった!あっぶねぇ!』

「・・・」

 

シンリに配慮して最低限の動作しか取れないゼット。それでも完全に衝撃を抑える事が出来ず、コックピット内に倒れてしまうシンリ。その瞳に光は無く、ゼットの呼び掛けにも応えない。

 

『クッソォ!武器だけでもどうにかしないと!シンリ!ちょっと揺れます!』

『なっ!?急に何よ!シンリが私に歯向かうっていうの!?』

 

回避からの一転攻勢。一応シンリに呼び掛けてから突撃するゼット。コドウから学び、すっかり十八番になった正拳突きを繰り出す。

 

『デェヤ!』

『きゃあ!?』

 

両手にライフルを持たせた状態ではアーマーシュナイダーもビームサーベルも抜けない為、蹴りで迎撃を試みるストライク。だが宇宙警備隊として訓練を積み、コドウから動きを学び、賞金稼ぎやキルカ達などのダイバーを退け続けたゼットにとってその蹴りはお粗末過ぎた。簡単に避け、キックはこういうモノだと言わんばかりに返しの回し蹴りでストライクを蹴り飛ばす。

 

『シュア!』

 

倒れたストライクへの追撃ではなく、取り落としたビームライフルの破壊を優先したゼット。頭部バルカンでビームライフルに無数の穴を穿つ。

 

(まず一つ!このまま───何だ?)

 

妙な出力をされるコックピット内言語ではなく、独り言で戦果を確かめるゼットだが、ストライクの様子を見て怪訝に思う。ブレイクデカールの紫色のオーラだけでなく、赤いオーラも纏い始めたのである。

 

『・・・言い訳は後でゆっくり聞いてあげるよシンリ。今は本気で・・・潰す!!!』

 

青いゴーグルの奥に血のような赤い光を宿し、ゆらりと立ち上がるストライク。やがてゴーグルも赤く染まり、荒く呼吸するかのように排熱を行う様はゼットに危機感を抱かせた。

 

(何かよく分からないけどヤバい!ゼスティウム!)

 

気を持ち直し、このままでは危険だと判断したゼット。ゼスティウム光線で大ダメージを与えて止めようとするが───

 

(光線!)

『シュワッ!』

 

直撃。確かに爆発光は発生し、舞う粉塵がストライクはその場から動いていない事を知らせている。

 

『シュア・・・』

(やったか?)

 

ゼットがフラグを建てた瞬間、振り払われる腕。無傷とは言わないまでも致命傷には至っていないストライクが煙を引き裂いて現れた。

 

『片腕が残ればいいと思ったけど治るんだ?アハッ』

『ヘアッ!?』

(嘘だろ!?)

 

煙を振り払ったのはライフルを持った右腕。小型のシールドを装備した左腕はゼスティウム光線を防御して吹き飛んでいたが、ストライクのダイバー「キョウコ」が言った通りに修復が始まっていた。

 

(ならもう一発!)

『さすがに見逃さないわ!』

 

もう一度ゼスティウム光線を放とうとするゼットだが、青いストライクが突撃してきた事でチャージを中断してしまう。

 

(クッ!技はデタラメだけどパワーがヤバい!力比べになったら確実に負ける!)

 

ゆっくりと、しかし確実に追い込まれていた。

 

 

 

───何でこんな事になったんだろう

───出会ってしまったから?

───違う

───僕が弱いからだ

───謝らなきゃ

───弱くてごめんなさいって

───迷惑でごめんなさいって

 

 

───誰に?

 

幼い頃から病弱で、怪我もして、何回も入院して、退院しても自宅療養が多くて、そんな自分に友達なんて出来るはずもなく。久々に登校した学校で自分を覚えているクラスメイトなんて居る訳もなく。画面の向こうで勇ましく、儚く戦うガンダムだけが心の支えだった。

 

───本当は皆とガンダムについて話したかった

───僕も見たよ!カッコいいよね!って

 

「ほら!学校行こ!私がついてるから大丈夫!」

 

転機は唐突に訪れた。隣に引っ越してきた家族。同い年の女の子と知り合って、やたら自信満々で、正直最初は鬱陶しいとさえ思っていた。でも、少し嬉しかった。入院したらお見舞いに駆け付けて、自分を覚えてくれていて。何よりもガンダムの話しが出来て。

 

「別に良いじゃん!女がガンダム好きでも!もっと自信持ちなよ!ほら、行こ!」

 

彼女のお陰で友達も出来た。陰キャとかオタクとか言われたけど、好きな物は好きだと言えるようになった。でも、その頃から少しずつ彼女は変わっていった。

 

「GBNだって!これならガンプラも壊れないし安心だよね!私もやるから一緒にやりなさい!」

 

GPDは観戦するのは好きだったけど、折角のガンプラが壊れるのは嫌だった。多分自分と同じ考えの人はそこそこ居ると思う。だからこそGBNには惹かれたし、プレイするつもりだった。でも輝かしいGBNライフは幻想に過ぎなかった。

 

「私が守ってあげるわ。シンリは弱いんだから」

「勝手に動かないで!弱いのに前に出過ぎよ!」

「弱いんだから守られるのは当然でしょ?私がずっと一緒に居てあげる」

「私が居ないとダメなんだから」

「私がログインするまで待っててね?勝手にミッションなんて受けたら・・・分かってるわね?」

 

───そうだ、僕は弱いんだ

───だから謝らなきゃ

 

───弱くてごめんなさ

 

『シンリ!!!』

 

 

 

「っ!」

『気が付いたでございますか!心配したですことよ』

 

記憶の泥濘から意識を引き上げたのはゼットだった。ステータス画面を開いていない為シンリは把握できていないが、ゼットの装甲は所々汚れや裂傷が目立つようになっていた。無論キョウコのストライクによって付けられたモノである。

 

「ぜっ、とさん・・・」

『もう説得は出来そうになさげでございます!シンリのお知り合いには申し訳ないが、本気で倒すしかない!』

 

未だ心は折れていないゼット。シンリはそんなゼットに困惑と苛立ちを募らせる。

 

何で抗うのだろう。守られていた方が楽なのに。

何で戦うのだろう。僕はこんなに弱いのに。

 

『弱くはないだろう!』

「へっ?」

『またっ!口に出てたぞ!シンリは弱くなんてない!』

 

右手にライフル、左手にビームサーベルを持ったストライクの猛攻を何とか捌きながら、シンリの無意識の言葉を否定する。だが、その言葉にシンリの苛立ちは限界に達してしまったらしい。

 

「なに、が・・・何が分かるんですか!ついさっき初めて会ったばかりのクセに!僕の何が分かるって!僕の今までも!僕の弱さも知らないあなたに!」

『確かに全部は知らないさ!でもシンリが優しい奴だって事は分かる!』

「は?」

 

ストライクの手首を抑えてサーベルを無力化し、ライフルの銃口を自身から外しながら答えるゼット。その言葉に迷いや嘘は無かった。

 

『弱虫で臆病なだけなら、何で俺を助けた!言いなりになるだけの人形なら、何で言い付けを破って一人で出歩いたんだ!お前が困ってる奴を見捨てられない優しい地球人で!一人で何かを見つけたい好奇心を持っているからじゃないのか!!!』

「そ、それ、は・・・ゼットさんがレアなNPDで」

『それこそ俺の事を知らなかったのに裏があって助けたのか!?』

「う・・・」

『お前言ってたよな!困ってるように見えたからついって!どれだけ自分を誤魔化しても体が勝手に動く熱い奴なんじゃないのか!見捨てられないって!』

 

今まで誰にも言われた事の無かった言葉。ゼットの叫びがシンリの胸を打つ。

 

『シンリが弱いってんなら!俺も弱い!警備隊の新人だし師匠にも三分の一人前とか言われたし!あれウルトラショックだったけど!』

 

愚痴が混じり始めた。

 

『でも最初は誰だってそうだ!それを認めて強くなれば良い!足りないなら仲間を頼っても良い!一緒に高めあえば良いんだ!』

「一緒に、強く・・・」

『半分は受け売りだけどな!』

 

コドウから技と共に分かち合った信念。受け売りで締まらないが、それでもゼットの言葉はシンリへと届いた。

 

───一緒にやろ!

 

「あの頃の・・・ミツキに戻ってほしい・・・一緒に笑い合って、一緒に泣いて、楽しかったあの頃に・・・一方的に守って守られてじゃない・・・一緒に、前に進みたい!」

 

ミツキ───キョウコの本名を口にするシンリ。涙を流しながらも、その瞳には決意が込もっていた。

 

『グアァ!』

『いい加減にしつこいのよ!墜ちなさい!私の言う事だけ聞いてれば良いの!』

 

自身が予想した通り力比べで押しきられてしまったゼット。強烈な蹴りを受け、大きく吹き飛ばされてしまいシンリも体勢を崩して倒れてしまう。

 

『やっぱりパワーじゃ負ける!シンリ大丈夫でございますか!』

「だい、じょうぶ・・・ゼットさん!お願いします!今だけでも良い!力を貸してください!」

『シンリ?』

「ゼットさんの力だけじゃ駄目かもしれない!僕のミツキへの思いも重ねて、一緒に戦うんです!思いだけでも力だけでも駄目なんです!」

 

微かな光がコックピット内に宿り始める。

 

『思いだけでも力だけでも・・・か』

「これも受け売りですけどね」

『へっ!上等です!』

 

光が強くなる。

 

『よし!三分の一人前同士!行きますよシンリ!』

「それだともう三分の一足りませんけど・・・」

『残りは気合いと根性と勇気で補う!』

「・・・はい!」

 

やがて光は三つに分かれ、シンリの手に宿った。

 

「これは?」

『ウルトラ!いやガンダムメダルでごぜーます!それを使えば何とかなるかもしれない!』

「どうやって───えっ?これに?」

 

シンリの目の前に浮かび上がるコンソール。コドウの時と同じく三つのスロットが空いている。

 

「ふぅっ・・・いきます!」

 

スロットにそれぞれのメダルを装填し、表示に従ってコンソールを横にスライドさせるシンリ。やがてメダルをロードした事を知らせる電子音声が聞こえてきた。

 

【RED FRAME】【ASTRAEA TYPE-F2】【AGE-1】

 

『よぉし!力が漲った!景気付けに一緒に叫べ!シンリ!』

 

【ご唱和ください!我の名を!ガンダムゼット!】

 

「はい!ガンダーム!ゼーット!」

 

【GUNDAM Z BETA POWER】

 

 

 

「くうっ・・・今度は何よ」

 

ゼットを追い詰めていたキョウコだが、突如として赤に青が混じった強烈な光を発したゼットに怯んで動きを止めてしまう。そして───

 

『ガンダァァム!ゼェェェット!ベータパワァァァ!イェアァァァァァ!』

「へ?っきゃあぁぁぁぁぁ!?」

 

衝撃。訳も分からないまま大きく吹き飛ばされるストライク。先程とは逆に、土煙の中から立ち上がったのは新たな姿となった光の戦士だった。

 

『イィヂ!』

 

赤いボディ

 

『ヌィ!!』

 

青いライン

 

『ザァン!!!』

 

マッシブな装甲

 

『ダァァァァァァァァァ!!!』

 

右腕を大きく振り上げ叫ぶ彼の名は

 

【ガンダムゼット ベータパワー】

 

 

『なによ・・・私と同じ事してたんじゃない』

 

光を発したと思えば瞬く間に追加装甲を纏い、強力な一撃を見舞ってきたゼット。その様子を見たキョウコは自分と同じ、つまりシンリもブレイクデカールを持っていたと解釈したらしい。

 

『セイバーに乗ってなかったのもナラティブで実験したかったから?へぇ?ふぅん?・・・何を生意気に強くなろうとしてるのよ・・・シンリのクセに・・・弱いクセにぃぃぃぃ!』

 

激昂するキョウコ。スラスターを全力で噴かし、ライフルを乱射しながらゼットに接近してくる。

 

「ゼットさん!」

『おう!』

 

対してゼットはシンリの声に応え、拳に緑色の粒子を纏わせて迎え撃つ。

 

『デェヤ!ドゥア!シャア!』

 

ゆっくりと歩きながらストライクに近寄りつつストレートパンチ、水平チョップ、裏拳を繰り出し直撃コースだった三発のビームを全て弾いてみせるゼット。力の基になった一機「ガンダムアストレア TYPE-F2」のGNリフレクションの応用である。

 

『このぉっ!』

『ダァッ!!!』

 

射撃は効果が薄いと考えたのか途中でライフルを投げ捨て、両手にビームサーベルを保持するキョウコのストライク。大上段から振り下ろされたサーベルを手首を掴む事で止めるゼット。差異はあれど先程と同じ力比べの状況となり、笑みを浮かべるキョウコ。また押し切ってやるとばかりにストライクの腕を動かそうとするが全く動かない。それどころか───

 

『ヌゥッ!ディヤァ!』

 

ギギギ、と嫌な音を立てながら左右に開かれていく腕。EXAMをベースにしたリミッター解除の強化システムに加え、ブレイクデカールによるブーストも乗ったストライクがパワー負けしている。信じられないと目を見開くキョウコ。次の瞬間、機体上部から鈍い音が響く。

 

「すいませんゼットさん!大丈夫でしたか?」

『なんのこれしきぃ!むしろ良い一発だったぜ!』

 

シンリがモビルトレースシステムを使って放った渾身のヘッドバットが炸裂した。ゴーグルが砕け、カメラアイを露出しながら後退するストライク。

 

『ぐぅぅぅ!シンリィィィ!』

 

徐々に破損したゴーグルが修復されていき、元通りになる頭部。キョウコの怒りを体現するかの如く全身から廃熱を行うストライク。シンリとゼットは油断なく構え、次の動きを見極める。

 

「半端なダメージは修復される・・・」

『なら修復が追い付かない連続攻撃で一気に倒す!』

 

正面から必殺コンボを叩き込むという脳筋理論に落ち着いたらしい二人。時にはIQを捨てて殴った方が手っ取り早いのはどの時空でも共通なのか。

 

『うわぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

二本のビームサーベルを両手で合わせて持ち、長大なビームの刃を形成するストライク。奇しくもビルドダイバーズのリクが行った攻撃と同じだが、リミッターの解除とブレイクデカールによる出力上昇によってその長さは桁違いである。だが───

 

『これで・・・え?』

 

消失するビームサーベル。メインカメラからの映像が右半分だけ途切れる。残った視界で捉えたのは右腕を斜め上に、左腕を斜め下に伸ばしたゼットだった。

 

『決めるでございますよぉ!シンリィ!』

「はい!」

 

両腕からビームの刃を放ち、ストライクの腕部と頭部の一部をそれぞれ斬り飛ばしたゼット。そのままストライクに全力で走り寄る。俗に勝ち取りダッシュと呼ばれるような走法で。

 

『シャオラァ!』

 

ストライクの修復が完了する前に接近し、鋭いチョップを命中させる。さらにボディブローで体勢を崩して頭部を下げさせ、そして───

 

「これが!」

『俺達の!』

「『ベータフレイムだぁぁぁ!」』

 

超重量のヒットエフェクトと鈍い音と共に機体を大破させるストライク。全身全霊全力全開のアッパーがクリーンヒットしたのである。

 

戦いはゼットとシンリの勝利でゴングとなった。

 

 

 

 

『本当に一人で大丈夫か?』

「大丈夫ですよ。それにリアルにどうやって付いてくる気ですか?」

『そうは言ってもですなぁ・・・』

 

言葉が通じなくなる前にコックピット内で会話するゼットとシンリ。既にベータパワーの力と装甲は消え、元の素体ナラティブガンダムの状態に戻っている。

 

「本当に大丈夫です。いや、大丈夫じゃないかもしれませんけど・・・」

『なら!』

「それでもミツキと話さなきゃ。今まで逃げ続けた分、向き合わないといけないんです」

 

ゼットと出会ったばかりの頃のオドオドした弱気な少年はもう何処かに消えてしまったらしい。いや、消えてはいない。

 

「前だけを見る事は出来ないかもしれない。後ろを振り返る事もきっとしてしまう。でも俯く事だけはもうしないって決めたんです。その場に立ち止まって何もしない事が一番駄目だから」

『シンリ・・・お前やっぱり強い奴だよ』

「ゼットさんに教えてもらったんですよ?」

『そうか?・・・そうだな!よし!メダルは持っててくれ!餞別と御守りと戦友の証だ!』

「もう、調子に乗って」

 

 

「それでは!ゼットさんも頑張ってください!」

 

コックピットからシンリを降ろし、言葉が通じない状態で向き合うゼット。シンリの激励に頷いて応える。空、厳密には森の出口を見据えて屈むゼット。そして───

 

『シュワッチ!』

 

飛行にもある程度慣れたのか、意図的にZの文字を空に描いて飛び去るゼット。それを見たシンリには、

 

「エヌ?ん?横に倒したゼットかな」

 

何とか伝わっていた。

戦闘中もずっと待機状態だった愛機のセイバーガンダムに視線を向けて言葉を投げ掛けるシンリ。

 

「ごめんね、セイバー。今日は殆ど構ってやれなくて。明日から・・・とは確約できないけど、君も一緒に戦おう。っていうのは虫が良すぎるかな?」

 

───まったくだ、仕方のない主よ

 

完全な待機状態となり、粒子になって消えていくセイバーガンダム。言葉無きやり取りを終えた一人と一機は新たな道へと向かう。

 

「ふう・・・よし」

 

覚悟が揺るがぬようにとログアウトするシンリ。現実の肉体へと意識が戻り、目覚めたのは自分の部屋。これが本当の自分だと嫌でも突き付けてくる気だるさがシンリを───アケノ・ヒマリを襲う。

 

「行かなきゃ」

 

それでも伝えなければならない。撃破されてロビーに戻り、ゼットと話していた時間も合わせればそろそろ戻って来るはずだ。急いで靴を履き、玄関の扉を開けて外に出た瞬間───

 

「っ!?くっ!」

「えっ?まっ、待って、待ってミツキ!」

 

ダイバールックとは違う黒髪の少女がアケノ家の前を通り過ぎようとしていた。家は完全に隣、自宅に駆け込むのは容易だろう。身体能力でもミツキに劣っている自覚はある。それでも───

 

「何よ!離して!」

「まっ、ゲホッコフッ、待って・・・ミツキ、話が」

「何なのよ・・・!今日は本当に何がどうなってるのよ!」

 

扉を開けた所で何とかその手を握る事が出来た。端から見れば不審者だろうが、それでもヒマリはミツキの手を離す事は出来なかった。

 

「ミツキー?どうしたの?」

「ママ・・・」

「あらヒーくん?」

「お、お騒がせ・・・して、ます」

 

ミツキの母親が玄関まで出てきた。いつもの二人とは違う様子を察したミツキの母。

 

「込み入った話みたいね?入って入って。ゆっくり二人で話合いなさいな。ヨウちゃんには私から話しておくから」

 

ヨウちゃん───ヒマリの母親であるヨウカには自分が説明するというミツキの母。さすがにここまでお膳立てされてしまっては応じるしかないと観念したのか、ミツキも大人しく自室へと向かう。

 

「早く入りなさいよ・・・どうせ私を笑いに来たんでしょ・・・」

「違う、よ・・・ふぅ、一緒に進みたいんだ」

「わけ分かんない・・・」

 

 

ここから二人がどう進むのか。

それはまた別のお話。




セイバー「戦闘が終わるまでスタンバってました」
言語出力「熱い場面なので少し仕事サボりました」


【ベータパワー】
「アストレイ レッドフレーム」
「ガンダムアストレア TYPE-F2」
「ガンダムAGE-1」
それぞれのガンダムメダルを使って変身するガンダムゼットのパワー特化形態。原典のベータスマッシュとは色合いが異なり、黒い塗装部分が青くなっているのが相違点。また、シンリが「力」を求めそれにゼットとブレイクデカールが呼応した結果なのか、「パワードレッド」「フルウェポン」「タイタス」の要素が特に強く表れている。

「ゼスティウムリフレクト」
GNリフレクションのゼット版。粒子を拳に纏いビームを弾く。
「レッドストレートウェーブ」
ストライクの腕と頭を斬り飛ばしたビーム刃。居合い構えから右腕を上に、左腕を下に伸ばし敵にビームを飛ばす。ガーベラストレートの切れ味を再現した攻撃。
「シグルチョップ」
素早く叩き込む鋭いチョップ。数少ないスパローベースの技。
「GNハンマーブロー」
アストレアのGNハンマー並みの破壊力が有れば良いなぁという願望も混ざったボディブロー。実際に強い衝撃を発生させる。
「ベータフレイム-光の一撃-」
ベータパワー形態の必殺技。
レッドフレイム-赤い一撃-を基にした渾身のアッパーカット。


【シンリ/アケノ・ヒマリ】
リアルは病弱な少年ダイバー。両親との関係は悪くはないが互いに気を使ってどこかよそよそしい。
後述のキョウコ/ミツキとはそれなりに長い付き合いであり、当初は自分を見てくれるミツキに感謝していたが、次第にミツキが変わり始め憧れや感謝から恐怖と完全な依存にスライドしてしまった。
ゼットとの出会いと共闘で弱い自分を言い訳にする事を止め、立ち止まらない事を決意しミツキとの和解に臨んだ。
ベータパワーはシンリの「力」を求める思いによって発現した姿だが、本人の搭乗機は可変機であるセイバーガンダムを青くリペイントした物。さらにどちらかというと射撃の方が得意だったりする為、ゼットとの共闘はかなり必死だった。


【キョウコ/ヨイミ・ミツキ】
シンリ/ヒマリの幼なじみ。常に自信満々で悩む姿など人には見せない。幼少時に家族で引っ越し、アケノ家のお隣さんになった事を切っ掛けとしてヒマリと知り合った。病弱で弱気なヒマリを引っ張って前に出る事が日常的になり、いつしか「自分が居なければ」と歪んだ保護者としての自覚を持つようになってしまった。
ゼットと共闘したシンリに敗れ、現実でヒマリと話し合う事になったが……
乗機はブルーディスティニー1号機をモデルに、ストライクガンダムとストライクダガーを組み合わせ、青く塗装した「ブルーコスモス1号機」。
ブレイクデカールに手を出したのは簡単に強くなれるからという至極単純な理由。
シンリを「弱い」と断定し、従わせているのは「自分が強くないと見てくれなくなるかもしれない」という独占欲が有ったり無かったりするから。


【メリア】
ゼットを追うダイバーの一人にしてキルカとシラブの保護者。乗機は黒く塗装し、レオスのマントを纏わせた黒いレオール「ガングオール」。マントはABCマントとなっている為、ビーム兵器への耐性を持つ。また主兵装の槍はジンクスⅢのGNランスを改造した物。
ABCマントを機体と槍に干渉させず巧みに操る等操縦技術は中々の物。


【アブソリュートタルタロス】
ゼットの独白にて語られた存在。光の国に混乱をもたらした謎の宇宙人。
めっちゃ良い声で「我は究極生命体アブソリューティアンの戦士、アブソリュートタルタロス」と毎回のように自己紹介してくれる。
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