草原。
見渡す限りの緑、豊かな大地、澄んだ青い空、吹き抜ける風。
───ドッカァーン!
そしてゾルタン、ではなく爆発音。何故穏やかな草原で爆発音?と思うだろう。人の手が入っていない大地に似合わない明らかな人工物が一つ。厳密には人工物だった物だが。大きな箱のような物、台座に乗ったそれは簡単に人が入れてしまう大きさであり真下から爆破された形跡がある。先程の爆発音はこの箱が爆破された時に発生したのだ。
『シェア・・・』
そしてその箱だった物を見つめる機械の巨人。ナラティブガンダムの素体を改造したような機体、GBNに迷い込んだゼットである。
(おいおい・・・本当に大丈夫なのか?)
表情という表情が無い為分かりづらいが、その内心は何かを心配していた。
「お客さん!」
『ヌッ?』
「こっちこっち!」
不安げなゼットに声を掛ける人物が一人。ゼットの背後に立っていたのは若干際どい衣裳を纏った女性だった。
「テッテレー!だーいせーいこーう!」
『ヘアッ!?』
(うおっ!?ウルトラテレポート!?)
箱の爆発、ゼットの驚愕。どうやら脱出マジックを行っていたらしい。ゼットを驚かせた女性マジシャンはGBNのアシストも使って飛び上がり、派手な回転を加えて着地に向かう。その途中でデータの粒子が形を成し、一機の小柄なガンプラとなっていく。
「ふっ!以上!シーエオの大脱出マジックでしたー!センキュー・・・」
(おおー!スゲー!こんな事も出来るんだな地球人!さすが歴代の諸先輩方と一緒に戦った種族だ!)
ガシャンガシャンと機械の手を叩いて拍手を送るゼット。派手なジャンプから自身の愛機「奇術士ローニュー」の掌に着地を決め、カッコつけたお辞儀をした女性ダイバー「シーエオ」は密かに安堵していた。
(良かった・・・!成功した・・・)
大掛かりな爆破マジックを見物しているナラティブガンダムと、ピエロなのかバニーガールなのかどっち付かずな女性という妙な状況。
何故こうなったのか、各々の時間を巻き戻してみよう。
▲▽▲▽▲▽
現実某所。札付きの悪が集まる訳でも美しい百合の花が咲き誇っている訳でもない、いたって普通の女子校。思春期真っ盛りの女子高生が部活に勉強にと日々を忙しなく過ごす学校である。
「あぁ~やっと終わった~」
そんな女子校の校門を出て帰路に就く生徒が一人。部活で友と切磋琢磨し汗を流すでもなく、図書室に残って自習するでもなく、さっさと学校を出る者。
「晩御飯どうしよっかなー野菜は残ってるけど、何となくお肉の気分なんだよなぁ」
クモヨリ・ウミノ
それがこの夕食をどうするか悩んでいる少女の名である。
「作ったら作ったで嗅ぎ付けてくる駄目な大人が居るんだよねぇ・・・いや一緒に食べるのは楽しいから良いんだけど」
ウミノの脳裏に浮かぶのはガチャガチャの前でありとあらゆる神仏精霊に祈りレア物を祈願し、大人げないやり方で子供との遊びに興じ、年下の女子高生の部屋に押し掛けては食事を集り、挙げ句の果てに家賃を数ヶ月も滞納する駄目な大人の極地とも言える一人の女性。
「ホントあの人今までどうやって生きてきたんだろ」
ウミノが実際に目撃し、思い返しただけでも中々の残念っぷりを発揮している女性。これでまだ一部だと言うのだから全力で堕落した場合どうなってしまうのか恐ろしい限りである。
「それでも憎めないのはもはや才能というか、人柄のなせる技というか。私にも構ってくれるし」
発言の後半から無意識に自分の髪を弄るウミノ。風に揺れる彼女の髪は綺麗な金髪だった。自分で染めたわけではなく産まれ持った地毛なのである。この髪色が誤解されギャルだったりヤンチャな娘として見られる事が多く、特に大人しいクラスメートからは関わりを持たれないのだ。また、本物のギャルからは煙たがられており、こちらも関わりが無い。
いわゆる【ボッチ】なのである。
「あー・・・イマリちゃんのご飯食べたくなってきたなー・・・お手伝いするから一緒に食べよ!は、さすがに図々しいかなー。でもソラさんよりはマシ・・・いやいや、あの人は基準にしちゃダメだ。せめてミヤコさんだね、うん。あの人はまだしっかりしてるから、まだ」
やたらと「まだ」を強調するウミノ。駄目な大人ことヒムロ・ソラよりはマシだと思えるミヤモリ・ミヤコ。彼女もまたソラと同じくイマリちゃんことタマキ・イマリに飯を集りに行く駄目な年上予備軍なのだが、ソラと違って家賃滞納だけはしない。
「あっ、リッテアロ過ぎちゃった。まーいっか!今日はイマリちゃんとご飯たーべよ」
独り言をしながら歩いていたら夕飯候補の一つだったファストフード店を通り過ぎてしまったウミノ。開き直って同じJKのイマリと夕食を共にする事にしたらしい。
「そうと決まればお肉お肉ー!残ってるのを適当に買えば良いよね。イマリ飯は何でも美味しいし」
足取り軽くスーパーへと向かうウミノ。歴戦の主婦と主夫が激闘を繰り広げた後の時間の為、恐らく安い値段のセール品は残っていないだろうが、これから訪れる天使のような心優しいJKとの夕食の為なら通常価格でも安いモノだ。
「たっだいまー!」
「あらあらあらぁ、お帰りなさいウミノちゃん」
「あぁ・・・大家さんに出迎えてもらえる・・・人の暖かみが染み渡る・・・」
「んふーふ、大げさだねぇ」
スーパーで牛肉を購入し、ホクホクで帰宅したウミノを出迎えたのは大家さんことミト・アオイ。現在ウミノが一人暮らしをしているアオイ模型荘の管理人である。
「あらぁ?お買い物してきたの?」
「です!イマリちゃんと夕飯食べようと思って!」
「あぁー・・・」
イマリと夕飯。その言葉を聞いた瞬間アオイの表情が気まずそうに曇る。その様子を怪訝に思うウミノ。
「大家さん?どうしたんですか?」
「えっとねぇ・・・言いづらいんだけど」
「はい?」
「イマリちゃん、学校の友達と遊ぶから遅くなるってさっき出掛けたんだよねぇ・・・」
とすっ。とウミノが手に持っていたビニール袋が地面に落ちた。分かりやすいリアクションをとる女子である。
「・・・マジですか」
「マジなんだよぉ・・・」
店の会計の方に呼ばれ、ごめんねぇとその場から離れるアオイ。ウミノの元にだけ冷たい風が吹いた。
「・・・そーだよね。イマリちゃん天使だもんね・・・そりゃ学校でも人気者だよ、うん」
気まずい雰囲気だったアオイは悪くない。むしろ勝手に予定を立てて勝手に落胆しているウミノの方が確実に悪い。真っ白になっていくウミノに背後から近寄る人物が一人。落ちていた肉の入ったビニール袋を拾い上げウミノに手渡そうとする女性。
「こんな所でどうしたんです?貴重な食材を落っことして」
「・・・あっ、ソラさん」
駄目な大人の女ことヒムロ・ソラその人が立っていた。スーパーで買った牛肉を貴重な食材と言う辺り今月も懐が寒いのだろうか。
「いえ、ちょっと・・・」
「ふーむ?もしかしてイマリさんですか?実は私も夕飯に困っていまして」
「でしょうね」
「即答は酷くないですか」
鋭い勘を発揮するものの、いつもの事だろうと一蹴されてしまったソラ。ちゃっかりイマリ飯に集ろうとしていた辺りお察しである。
「まぁ良いでしょう。フラれてしまった者同士、仲良く晩御飯といきませんか」
「あー・・・私もちょっと出掛けてきます。そのお肉は差し上げるので煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
「ほほう煮込みですか焼き肉ですかでは台所の方に、今出掛けるって言いました?」
何故調理法が先に来るのかこの駄目な大人は。他の住人の事もすっかり忘れ、お肉をソラに渡してそのまま出掛けるウミノ。一人残されたソラは肉を見ながら立ち尽くす。
「調理前の状態では食べられないのですが」
本当にこの駄目な大人は・・・
▽▲▽▲▽▲
(やっべぇ・・・ゲートとマスドライバーが見付からねぇ・・・何で行き方も聞いとかなかったんだ俺は)
GBN内の某所。トボトボ歩く一機のナラティブガンダム。現在ウルトラ迷子のゼットである。シンリから聞いたGBNの宇宙に手掛かりがあるかもしれないと、宇宙エリアを目指しているのだが、その宇宙に行く方法である転送ゲートとマスドライバーが見当たらないのだ。
(あの三人組以外はマシになったんだよな、襲撃)
相も変わらずゼットをレアなNPDと勘違いして攻撃してくる三人組。それ以外のダイバーからの襲撃はマシにはなったが───
(なんつーか・・・量より質みたいな?あの白い四つ目とかヤバい奴も増えたし)
マシになったのは回数であり、襲撃してくるダイバーの質が上がっているような気がするゼット。巧みに槍を扱うメリアとコンビネーションが徐々に熟成されてきたキルカ&シラブ。さらにゼットの記憶に色濃く残る白い四つ目の機体を操るダイバー。他にも何人か噂を聞き付けた手練れと思わしき者が仕掛けて来たのである。何れもなんとか撃退するか、撤退に成功してはいるのだが。
(ボヤボヤしてるとまた襲ってくるからなぁ)
『何度目かの正直ぃぃ!!デェェェス!!!』
(そうそうこんな風に・・・って危な!?)
もはや呪いか、はたまた前世で何かあったのか。ゼットの頭上から振り下ろされた大鎌。闘志が先走ったのか確実に仕留めるという意思の表れか、鎌だけでなくバインダーのビームサーベルも最初から展開している。
『ぬあぁぁぁぁ!!あったらない!!なにゆえ!!なのデェスッ!!』
(そりゃあんだけ叫んでたら誰でも気付くだろ・・・)
もはやため息しか出ないゼット。回避され地面に突き刺さった鎌を引き抜きながら憤慨しているのはクシャトリヤの改造機イガリヤに搭乗したキルカである。
『今日という今日は墜ちてもらうのデェス!!そしていい加減にレアデータとビルドコインをいただいていく!するのデェス!』
(だからデータだのコインだの何の話・・・あれ?一人で来たのか?今回は)
初遭遇時と同じく一機しか見当たらないキルカ。ここ最近ならばメリアとシラブも含めた三人組がデフォルトだったのだが、今日は一人らしい。
『いざ!尋常に勝負デ───うひゃあ!?』
『ヘアッ!?』
(何だ!?)
因果応報なのか。毎回真上から奇襲(?)を掛けているキルカが今度は奇襲された。奇襲はこうやると言わんばかりに無言で。大柄な機体が災いし、直撃こそ回避したものの左前のバインダーに裂傷を刻まれてしまうキルカのイガリヤ。ダメージを与えて地面に突き刺さったのは大型の「槍」だった。
(仲間割れ?いや、違う奴か!)
『チッ・・・』
『ちょおぉぉぉい!?いきなり何デスか!?』
舌打ちと共に槍を引き抜く乱入者。オレンジと黒で塗装された槍を構え直すのは、槍と同じ色合いのガンダム・キマリス。ビビッドなオレンジで明るい印象を与える機体とは裏腹にダイバーは明確な憎悪を放っているが。
『おい、クシャトリヤの奴・・・』
『ヒッ・・・な、何デスか!?』
『ブレイクデカールを受け取ったってのは本当か?』
(ブレイクデカール?何の話をしてるんだコイツ)
油断無く構え、殺意すら込められた視線を向けるキマリスのダイバー。キルカに対してブレイクデカールがどうのと聞いているが、ゼットは急に何の話だと全く理解できていない。
『ぶ、ぶれいく?デカール?・・・あぁ!もしかしてあの胡散臭いフードが言ってたやつデス?』
『胡散臭いフード、ねぇ・・・』
『それなら買ってないデスよ?ウチにそんな余分な物を買う余裕は無いのデース!』
『・・・ほぉ?』
一段と鋭くなる乱入者の視線。実際に向き合っている訳でもないのに寒気を感じる威圧的な口調も相まって、キルカも冷や汗が止まらない。
『ほ、本当デス!簡単に強くなれる~とかGBNをぶっ壊せる~とか何か言ってたデスけど、そんな甘い話がお手頃価格な訳無いのデス!あとでトンでもない額のビルドコインを追加で請求されるに決まっているのデェス!いわゆる詐欺の類い!』
『・・・』
『ふっふーん!キルカちゃんは賢いデスからなぁ!そんな見え透いた詐欺には引っ掛かりませんとも!』
次第に発言が元気になっていくキルカ。凄まじい自己肯定で調子に乗っているらしい。それを見聞きしたキマリスのダイバーも構えを解き、少し離れた位置に居たゼットにも分かるレベルだった殺意も霧散する。どうやら呆れているようだ。
『賢いかは微妙な所だが、デカールに関してはあたしの勘違いだったらしい。悪かったな』
『分かってくれれば良いのデス───ん?今さりげなくディスられた気がするデスよ?』
(丸く収まった・・・のか?)
『じゃあな』
『はいデス!では───ちょおっと待ったぁ!羽根!羽根に思いっきり傷付けてるデェス!これどうしてくれるデスか!』
『それも含めて謝ったろ。悪かったって』
『含めてデスとぉ!?自動で修復されるとはいえ時間掛かるデスよ!?』
(収まってないな・・・今のうちに)
問答無用で機体にダメージを負わされたキルカの怒りが噴出した。もう用は無いと立ち去ろうとするキマリスだが、さすがに無視すると余計に面倒な事になると理解しているのか、話は聞いているらしい。元々は自業自得なのだが。そんな二人のやり取りに紛れて静かに撤退を始めるゼット。抜き足差し足レオキックである。
『もう完全に怒ったのデースッ!バトル!バトルで白黒つけてやるのデス!』
『はぁ・・・ったく面倒な奴に絡んじまったな・・・良いぜ?相手して、っくぅ・・・』
(今日は早いな・・・)
僅かに視界が歪み、頭痛を感じるキマリスのダイバーこと「ソウ」。GBNをプレイするにあたって自身の体質に問題がある事は理解していたが、今日は想定より早く「時間切れ」が来たらしい。
『聞いてるデスか!早く受けるのデェス!』
律儀にフリーバトル申請を送ってきたキルカ。それをゼットにも送れば違和感に気付けたかもしれないのだが。
『・・・また会った時に、一人目なら相手してやるよ』
『はぁ?何言って───』
申請を拒否し、キルカが言い終わる前にログアウトを実行するソウ。キマリスもデータの粒子となって消えていく。
『ちょちょちょっとぉ!?当て逃げは許さんのデス!』
せめて一発入れなきゃ気が済まないとばかりにイガリヤに鎌を振りかぶらせるキルカ。だが、振り抜いた時には既にキマリスの影も形も無かった。
『・・・ぬがぁぁぁぁ!!!逃げられたのデェスッ!厄日デスか今日は!?』
厄日だと思う。
『こうなったら予定通りにフリバNPDを・・・アレ?』
もう居ないけど。
『・・・しまったのデェス!こっちにも逃げられた!ぐぬぬ・・・まだ遠くには行ってないはず・・・イガリヤなら簡単に追い付け───』
『キルちゃん』
『ほえ?シラブ?奇遇デスねこんな所で。あ!今例のNPDを追っかけるつもりなのデェス!メリアにも連絡して三人でやっつけ───』
『今日はミーティングだって言ったよね?』
『へ?・・・あっ』
フォースを組んでいる三人組。どうやらミーティングで集まる予定をキルカが忘れ、ゼットを探してフィールドに出ていたらしい。それを連れ戻しにきたシラブ。その顔は能面の如く無表情で瞳にハイライトは無く恐怖すら感じるモノだったが。
『え、えと、あの・・・その』
『晩御飯抜き』
『直ぐ戻りますデス!!!』
(うぅ・・・今日は厄日デス・・・)
▲▽▲▽▲▽
キルカがシラブに捕まり、フォースネストでお説教が始まった頃。ゼットは襲撃された地点から離れた場所で一息ついていた。
(撒けたみたいだな・・・ウルトラしつこいぜ、あのデスデス地球人・・・)
ゼットの中でキルカの呼び名がデスデス地球人に決定した瞬間だった。もう少しマシなネーミングは出来なかったのか。
(にしてもまた知らん場所に出ちまったな・・・あぁ、宇宙が遠くなった気がするぞぉ・・・)
ゼットが辿り着いたのは清風吹き抜ける草原地帯。綺麗な場所ではあるが今のゼットにとっては何の慰めにもならない。
(広いなぁ・・・それ以外言う事ないけど、っと?)
辺りを見回すゼット。ふと視線の先に何かを見付けたらしい。
(何だありゃ?箱?)
箱。箱としか言いようが無いまでに箱。ただそのサイズはそこそこ大きい物だが。丁度人間が一人入れる程の大きさをしたそれが、鉄の台座に鎮座している。
(と、地球人・・・ダイバーか?)
なにやら忙しなく動き、時折システムコンソールを出しては何かをセッティングしているダイバーが一人。
(うーん・・・話を聞きたい所だけど、襲われたら面倒だしなぁ・・・ウルトラ悩むぜ)
▽▲▽▲▽▲
「ふいー・・・セッティングだけで一苦労だよもう。まぁGBNだからこそある程度楽できるんだけど」
愚痴を言いながらも作業を完了させたらしいダイバーの少女。ビビッドな黄色と緑が目を引くピエロのような衣裳が特徴的だが、足はニーハイブーツとガーターストッキングで露出していたり、胸元はいわゆる北半球状態で開けていたりと、やや際どい格好をしている。頭には小さなシルクハットと右側だけのウサギ耳が付いている等ピエロなのかバニーガールなのかどっち付かずなダイバールックの少女の名は「シーエオ」。ゼットは知る術も無いが、「クモヨリ・ウミノ」のGBNアバターである。
「さってっとー?後はお客さんだけど・・・うん、まぁ期待はしてなかった・・・まぁ居るだけ良いか」
彼女はGBNにて規模の大小に関わらずマジックを披露している変わったダイバーである。今回のマジックを告知した結果、集客できたのはたったの二人。イマリと晩御飯できなかった為にログインし、突発的に開催した今回のマジックだが客足は芳しくない。酷評されている訳ではなく見向きもされていないのだ。
「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心とはよく言ったもんだね・・・こっちでもボッチ度が進行してる気がするなぁ・・・はっ!違う違う!ボッチじゃない!断じてボッチじゃないよ私は!」
悲しき独り言が止まらないシーエオ。
「やあ、エオちゃん。少し早かったかな?」
「ぅぇ・・・エラコさん」
「ちょっと間があったような気がしたんだけど」
自分で漏らしたボッチ発言を全力否定するシーエオに話しかける人物が一人。エラコと呼ばれた女性ダイバーは笑顔でシーエオに近づいてきた。それに対してシーエオは若干ひきつった表情となっているが。
「えぇと・・・まだ開演前なんですけど」
「まぁまぁ、そう言わず。ボクとエオちゃんの仲じゃない。バックヤードにご招待!みたいな感じでさ、ちょっとお話しない?なんならトリックを予想してみようか」
「さすがにタネ明かしはちょっと・・・もう一人観覧予約してくれた人もいるので、その人が到着次第始めますからもう少しだけ待っててください」
やっぱりこの人苦手だなぁ。と考えているシーエオ。初めてマジックを披露した時の最初のお客さんがこのエラコなのだが、それ以降毎回観覧予約を入れてくるようになったのだ。しかも今回のように事前告知無しで突発的に開催しても確実に来るのである。
(来てくれるのは嬉しいけど、ちょっと怖いんだよねこの人・・・)
「うーん、もう一人か・・・ボクとしては早く観たいんだけどなぁ」
「ありがとうございます。ちょっと確認して・・・あれ?キャンセルしてる・・・」
ついさっきまで二人だった観覧予約者リストがエラコ一人に減っている。この数分でキャンセルされてしまったらしい。
「それは残念だねぇ。エオちゃんのショーをドタキャンするなんて・・・まぁ来ない人の事なんていいでしょ。早く見せてよ!」
「え、えぇ・・・じゃあ開演しますね・・・」
(とうとう二人っきりになっちゃった・・・大丈夫だよね?うぅ・・・誰か飛び入りで観に来てくれたりしないかなぁ)
不安を感じ始めたシーエオだったが、ふと辺りを見回した瞬間一機のガンプラを視認した。
(襲ってきませんように襲ってきませんように襲ってきませんように襲ってきませんようにぃ!!!)
覚悟を決め、接触を選んだナラティブガンダムことゼットだった。内心祈りまくっていたが。
「チッ・・・」
▲▽▲▽▲▽
そして始まるシーエオのマジックショー。即席の観客席に座る一人のダイバーと体育座りで最後尾に陣取るナラティブっぽい何か。絵面がシュールすぎる。
「ではまずお見せするのは~」
(何であの人降りないんだろ・・・一言も喋らないし)
箱を使った大掛かりなマジックの前に、トランプ等の小道具を用いた手品を披露するシーエオ。ゼットが気になっているようだが、その機体そのものが本人であり搭乗してもらわないと会話が出来ない事は当然知らない。
(俺を見て襲ってこない・・・第一関門突破!けど言葉は通じないから花畑チャレンジは失敗だぜ)
言葉が通じた花畑の少女と同じ状況になるかどうかを花畑チャレンジと表現しだしたゼット。間違ってはいないのだが。
-10分後-
「ふっ!以上!シーエオの大脱出マジックでしたー!センキュー・・・」
そして最初の場面へと戻るのである。
自機の掌でお辞儀するシーエオに拍手を送るゼットとエラコ。短いゲリラショーは無事終演となった。
「ちょっとぉ?もしかして文無しとか言わないですよねぇ?さすがにタダでは見せられないんですよ?」
無事ではないようだ。
(ウルトラ困ったぜ・・・払おうにも払えないし、言葉通じてないし・・・)
本来は予約時にチケットとして支払う料金。飛び入り観覧のゼットの知識不足と、少し焦っていたシーエオの不注意もあるのだが、終演後にチケット代を受け取ろうとしたシーエオに対して全く喋らずビルドコイン増減の気配も無いゼットに対してシーエオがキレたのである。
「聞いてます!?ボランティアでやってる訳じゃないんですよこっちも!何か言ったらどうなんですか!通報しますよ!」
(ヤベェ!ああクソっ!伝われ!)
誠意のハラキリならぬ賭けのハラパカ。光の国にもそういう習慣があるのか、GBNに迷い込んでから何処かのタイミングで学んだのか綺麗な正座に移行するゼット。その途中でハラパカことコックピットハッチの開放を瞬時に行う。
「ひゅいっ!?・・・おぉう、美しきジャパニーズセイザ・・・素早い正座、私でなきゃ見逃しちゃうね。じゃなくて!って、うん?」
ナラティブっぽい機体の突然の行動に驚き、瞬時にノリツッコミを入れ、正座しコックピットを指差す動作に気付くまでを完璧に行うシーエオ。芸人か何かなのだろうか。
「えー・・・うん、コックピットだね?・・・いや降りてきなさいよ。支払いをしてほしいんですけど」
指差した先がコックピットである事は分かるのだが、その意図が分からないシーエオ。困惑しながらも再び機嫌が悪くなり始めたのを見て土下座とまではいかないが、正座のままお辞儀するゼット。それを見たシーエオの困惑はより深まり、少し遅れて慌てだす。
「ちょっ!そんな深々と頭下げられても・・・うー、何か私が悪いみたいじゃん・・・降りれない理由あるの?バグったとか?」
何か事情があるのかと察し始めたシーエオ。頭を上げ、手を合わせて頼み込む動作をし始めたゼットを見てシーエオも意図に気付く。
「もしかして乗れって事?えぇ・・・変な事したらソッコー通報するからね」
報告画面をコンソールに開いた状態で恐る恐るゼットに近づいていくシーエオ。それを見たゼットは掌を上にした状態で伸ばす。シーエオをコックピットまで運ぶつもりなのだが、その前に自力でジャンプしてゼットの腹部まで簡単に辿り着くシーエオ。しかもコンソールを誤操作する事なく開いたままで。
(おぉ・・・スゲェな地球人・・・コドウもやってたし地球人って器用なんだな)
微妙に間違った認識を持つゼット。GBNのアシストあってこそなのだが。
通報画面に指を添えながらゼットのコックピットに恐る恐る入り込むシーエオ。装甲で死角になる部分を警戒しつつ未払いのダイバーを確かめようとしている。やっている事はほぼFPSのクリアリングである。
「んー?あれ?どこ行った?あの一瞬で降りたわけないし・・・ちょっとー!チケット代払ってくださいよ!本当に通報しちゃいますよ!」
『喋りますので通報は勘弁なのでございます』
「ひぃ!?」
知 っ て た
▽▲▽▲▽▲
「通報ボタン押さなかった私を褒めてほしい」
『申し訳ない・・・そして感謝しておりまする』
突如聞こえた声にビビりながらもギリギリの所で踏みとどまり、通報ボタンを押さなかったシーエオ。だがコミュニケーションが始まっただけで問題は解決していないのである。
「で?」
『で?』
「しーはーらーいー!」
『あー・・・そのですな・・・この世界の通貨は持っていなくてですな』
「押すわ」
『ちょちょちょっと待ってほしく存じます!事情の説明をさせてほしいであります!』
ガンプラ繋がりなのか語尾がどこぞのカエルモドキ軍曹のようになりつつあるゼット。このGBNにも居るのだろうか。必死なゼットの声を聞いて通報ボタン直前で指を止め、疑いの眼差しを虚空に向けながら待つシーエオ。根は優しいのかお人好しなのか話は聞くらしい。
『で、では改めて・・・ンンッ俺の名はゼット。このジービーエヌに迷い込んでしまった・・・まぁいわゆる宇宙人って事になりま』
「押すわ」
『待って!待ってほしいのです!続きありますから!』
無慈悲に通報しようとするシーエオとそれを何とか止めて話を聞いてほしいゼット。コントでもやっているのだろうかこの二人は。
「はぁ・・・嘘つくならもうちょいマシな設定考えた方がいいよ?・・・設定・・・あぁ!もしかしてNPD?なーんだ、それなら最初から出してよ~」
『えーと?』
「ミッションだよミッション!コミュニケーション成功したら出してくれるパターンのやつでしょ?てか受け答え上手だねー技術の進化を感じるよ」
自己完結した結果、完全にゼットの事をNPDと勘違いしてしまったシーエオ。これにはゼットも困惑するしかできない。
『えーとですな、俺は本当に───ッ!掴まれ!』
「は?何にぶえっ!?」
どうにか誤解を解こうとした矢先、回避行動を取るゼット。何の事やら分かっていないシーエオは受け身を取れないままひっくり返り、後頭部を強打する。
『デスデス地球人に追い付かれましたか!?』
「いったぁ・・・いきなり何よ!てか、そのダサいネーミング誰の事!」
『ダサい!?』
そりゃあねぇ。
『へぇ?反射神経は良い方?面倒だなぁクソがよ!』
『いきなり撃ってきて悪口言われましても!』
ゼットに回避を強要させ、シーエオが頭を打つ事になった原因は他のダイバーからの攻撃。感情的な罵倒と共に空から降りて来たのは、各部を改造し武装を追加したジムのカスタムビルドと思われる機体。右腕に保持している特徴的な射撃武装の砲身がスパークしている事から、ゼットに向けて射撃を行ったのはこれだろう。
『あと一押しでリアルまで持っていけそうだったのによぉ!テメェが飛び入りしたせいで予定が全部パァだ!クソッタレが!』
『何だ?何の事言ってますかコイツは』
「この声、それに飛び入りって・・・」
『死ねやぁ!!!』
ストレート極まりない暴言を吐きながら、再び右腕の武装───アトラスガンダムのレールガンをゼットに向けて発砲しつつ突進してくるジム。だが、宇宙警備隊の訓練とGBNでの戦いで経験を積んだゼットにそんな直線的な攻撃はもう当たらない。レールガンから吐き出された弾丸を回避しつつ、腰のラックからドッズライフルを引き抜き反撃のビームを放つ。
『ドッズ!?何でそんなモン持ってんだよ!』
『俺も知りたいですよ!』
コックピット内でしか聞こえない声を発し、ジムを迎撃するゼット。一方なりゆきで巻き込まれたシーエオは、事情が分からないまま揺さぶられ続けていた。
「ちょっ!戦うなら私を降ろしてから、っ痛ぁ!話を聞けー!通報するぞコラー!」
衝撃で操作を手放していたシーエオ。コンソールを再び呼び出し通報画面を開く。それとほぼ同時にゼットは嫌な気配を察知し、ジムのダイバーも機体のステータスを弄っていた。
(この感じ・・・まさか!)
『最初から使ってれば良かったよ・・・!』
「押しちゃうからね!」
ゼスティウム光線より威力を落とす代わりにチャージモーションを簡略化し、通常よりも素早く放てる【ドッズシュート】でジムを攻撃するゼット。その着弾と、ジムが紫色のオーラに包まれたのはほぼ同時だった。
───ERROR!
「へっ?何で!?」
ゼットのコックピット内ではシーエオが焦っていた。確かに通報ボタンを押したはずだが、即座にエラー画面が表示されたのだ。とてつもない負荷が掛かってサーバーそのものが落ちている、なら分かるが、障害が発生したという情報やお知らせは出ていないのだ。そもそも緊急手段である通報がエラーを起こすなどオンラインゲームであってはならない事である。
『ってぇな・・・まぁ機体は治るから良いけどさ』
(やっぱりコドウやシンリの時と同じ・・・!)
ブレイクデカール。ゼットはその名前を知らないが、二回戦った事はある。コドウと共闘して撃破したザク兄弟と、シンリに執着を見せたストライクの女性ダイバー。三度立ち塞がられるとは思っていなかったが。
「ちょっと!通報が出来ないんだけど!アンタ何したのよ!」
『俺は何も・・・何かしたのは多分アイツでごぜーますことよ』
「あのジム?何あのモヤモヤエフェクト・・・」
左腕に装備していたシールドでドッズシュートを防ぎ、不気味に佇むジム。その頭部には、ジムやガンダム等の地球連邦軍機には無いはずの特徴があった。
「モノアイ?ジムじゃない!」
『四つ目だったり一つ目だったり忙しいでございますな!』
シーエオが指摘し、ゼットがツッコミを入れたように、攻撃を仕掛けてきたジムの頭部にはザク等のジオン公国軍機の特徴である「モノアイ」が存在していた。よく見れば左腕のシールドの連邦軍マークも、十字架のように簡略化されている。
「ミヤコさんに聞いた事ある・・・たしか、ゲム?」
【ゲム・カモフ】漫画版のMS IGLOOにて登場したモビルスーツであり、ザクⅡ等のジオン公国軍機を改修して連邦軍のジムに似せた偽装・撹乱を主な目的とした機体。ブレイクデカールによって出力が上昇し、そのエネルギーを抑えきれないのかモノアイの発光が一際強い。ジムとしての偽装を完全に止め、悪意を込めた一つ目の視線がゼットを射抜く。
『完全にヤル気満々だな・・・シーエオでございましたか?ちょっと力を借りたいでごぜーます!』
「いやいやいや!絡まれてんのアンタだけじゃん!私は無関係だから!さっさと降ろしてぇあぁぁぁ!?」
シーエオが完全に言い終わる前に動くゼット。ゲムがレールガンだけでなくバズーカまで使い始めたのを見て、咄嗟に回避したのだ。バックパックから伸びるアームが保持しているのを見るに、サイコ・ザクの物だろうか。ちなみにシーエオはモビルトレースシステムに馴染みが無くまたひっくり返っている。
『この状況で降ろすとなると!放り投げるしかないですが!よろしいですね!』
「分かった!分かったから!」
高弾速のレールガンにバズーカを織り交ぜ、緩急をつけた攻撃を行うゲム。ガンプラボディに慣れたゼットはその全てを回避できているが、それもいつまで続けられるか。と、そこに苛立っているのがよく分かる声が響く。ゲムのダイバーが通信を開いたらしい。
『初心者でもエンジョイ勢でもないか・・・何でそんな奴が場末の手品ショーなんざ見にくるのかねぇ!』
「場末って・・・」
『うおっ!?あっぶねぇ!』
仕留められない事に痺れを切らしたのか、左腕に展開した180㎜キャノンを持たせて弾幕を厚くするゲム。ゼットはドッズライフルと頭部バルカン砲で反撃を行いながら回避も続ける。一方シーエオはゲムのダイバーの発言が引っ掛かっており、その声も聞き覚えがあるような気がしていた。まるで自分の事を、ショーの事も知っているのかような───
「まさか・・・」
『シーエオ?どうしたのでござっぶね!』
『まぁ理由は分かってるけど!あの女のダイバールック目当てだろ?あんなポンコツでも見てくれは良いもんなぁ!ショーの間は合法的に視姦できるもんなぁ!!!』
『アイツ何言ってるんだ?』
「・・・」
弾切れを起こしたのか、武装を構えたまま動きを止めるゲム。ゼットはゲムのダイバーの発言内容が理解できていないが、シーエオは顔を青くして俯いている。
「あのひと・・・」
『シーエオ?大丈夫でございますか!?ウルトラ顔色悪いぞ!?』
『ランキングは化物の巣!フォースを組みたくてもコミュ障で話なんざロクに出来ない!そりゃそうだよなぁ!現実じゃガンプラ作ってるだけのクソオタなんだからよぉ!戦いも仲間も出来ないなら同じような連中で楽しむしかないよなぁ?』
「っ・・・」
『シーエオ・・・』
アバターではない、生身ならば血が滲んでいるのではないかという強さで唇を噛み締めているシーエオ。ゲムのダイバーの言葉と真意が分からなくても、シーエオが傷付いている事は伝わってくる。だが、傷心の彼女にどう声を掛けて良いか分からない。
『そんな中で見付けてやったんだよ!気が弱くて腕前も微妙で、見た目だけ凝った勘違い女を!ちょっと褒めてやれば調子に乗るバカな奴!ぽろっとリアルを漏らせば直ぐ飛んでってやるってのに、そこら辺はキッチリ良い子ちゃんだしよぉ』
『ウルトラムカついてきたぜ・・・コイツぶん殴っていいか?』
「・・・」
シーエオを貶す言葉が次々に飛び出してくるゲムのダイバー。次第にゼットも苛立ちを覚え始めるが、万が一シーエオの知人なら無闇に倒すのも不味いと考え、グッと堪えている。だが、動かないゼットをショックで身動きが取れなくなっているとでも思ったのか、ゲムのダイバーの暴言は止まらない。そしてついに一線を越える言葉が発される。
『わざわざ他の客叩きのめして丁寧に下準備したのに』
「・・・は?」
『今なんて言ったコイツ!』
あまり知名度は高くないとは自覚していた。それでも続けていれば多くの人に見てもらえるかもしれないと思っていた。けれど観客は増えず、むしろ減っていった。やはりGBNというゲームの中ではマジックは珍しくもないのか。機体に搭乗せずとも、宙返りや岩を拳で砕くといった、現実では訓練しなければ出来ない事が出来るようになるこの仮想世界では。そんな中で唯一のリピーターだった女性ダイバーが居た。初めはマジックを称賛してくれたけど、次第に趣味を聞いてきたり時にはリアルの事も遠回しに聞き出そうとしたり。少しずつ怖くなっていった。その人の名は───
「エラコさん、だよね・・・」
先程のゲリラショーでゼット以外に観客として座っていた女性ダイバー。ショーの終演と共にいつの間にか消えていた。彼女自身の言葉から推察するに、シーエオのリアルを特定し、好きに弄ぶ為に他の観客を何らかの方法で潰して回っているのだろう。そして今回その標的としてゼットが選ばれた。だが、特殊な事情を抱えているゼットに詰め寄ったシーエオ本人が乗っている事はさすがに知らないらしい。
「やっぱり私・・・この体に呪われてるのかな・・・リアルじゃ煙たがられて、こっちじゃ変な目で見られてストーカーされて・・・他のお客さんにも迷惑かけて」
いっそあの人にメチャクチャにされれば良いのかな
絶望し、全てが嫌になって、そんな言葉を溢しかけた瞬間。
『ぜってぇ許さねぇぇぇぇぇ!!!』
一人の若き戦士がキレた。
▲▽▲▽▲▽
『デェヤァァァァァ!!!』
「急に何だよ!推しをボロクソ言われてキレたか?キモオタが!」
ドッズライフルからビームを乱射しながら突進してくるナラティブガンダム。それを見て一瞬動揺するも、直ぐに見下すような嘲笑を浮かべ、ゲムに迎撃態勢を取らせるマスダイバー エラコ。彼女のマスダイバー歴は以外にも長く、ブレイクデカールが出回り始めた初期型の頃から使っているのである。その為、実力はゼットが今までに戦ったマスダイバーの中ではトップクラスだったりする。
「ほらほら頑張れ頑張れザコくん!誰も助けてくれないよぉ~一人でどうにかしないとぉ。出来ればの話だけどなぁ!ハハッ!」
さらにエラコの意思と主な使用用途を汲み取ったブレイクデカールが効力を拡張し、機体性能の強化という基本機能に加えて【ありとあらゆる通信システムを無力化する】という追加機能も備えているのだ。シーエオの通報がエラーを起こしたのも、エラコのブレイクデカールによる効果であり、何かしたのは敵の方、というゼットの発言は間違っていなかった。
「ライフル以外に手持ちは無しか。素体の作り込みに熱中しすぎて武器が疎かになった?初心者ではないけど初心者に毛が生えた程度って事か・・・じゃあ結局ザコだよなぁ!」
『グアァ!』
どうにか距離を詰めて格闘戦に持ち込もうとするゼットだが、多彩な武装を駆使する【RFゲム・カモフ】の前に苦戦を強いられ、接近する事ができない。先程までは遊びとでも言いたいのか、レールガンにバズーカ、180㎜キャノンによる苛烈な攻撃を仕掛ける。バズーカの着弾によって発生した爆風を受けて動きを止めてしまったゼット。その胴体に強化されたレールガンの弾丸が直撃する。
「そんなに殴り合いたい?ほら、来いよ」
180㎜キャノンを折り畳み、シールドもパージして左腕を自由にするRFゲム。誘うように指を動かし、ゼットを挑発する。ゼットもまた、誘いだと分かっていても一発殴らなきゃ気が済まないとスラスターを噴かして突進する。
「はい、ざんねぇん!」
ドッズライフルを保持していない左腕で殴り掛かったゼットだが、エラコはレールガンの砲身の長さを活かしてそれを捌く。さらに背後から腰を通って新たなサブアームが現れた。そのサブアームが持っていたのはF2型のザクⅡ等が装備していたMMP-80 90㎜マシンガンである。それを至近距離で連射し、ゼットに確実なダメージを与えていく。
「どうする?降参してGBNは二度とやらないって誓うなら、ここらで勘弁してあげるよ」
仰向けに倒れたゼットにサブアームの物も含めて、全ての銃口を向けるエラコ。今までもこうして他の観客達を潰してきたのだろう。徹底的に痛め付けて、自分のお気に入りに近寄るなと。また来ればこれ以上に酷い目にあわせるぞと。ブレイクデカールによる強化と、エラコ自身のそれなりに高い技量も相まって出来た事だろう。
だが今回の相手は違う。暑苦しくてお人好しで、修羅場を潜ってきた宇宙人。光の国からやってきた───迷い込んだ若き戦士。
『デュアッ!』
ゼットなのだ。
▽▲▽▲▽▲
『さっきから好き勝手言いやがって!お前だけは絶対に許さねぇからな!』
頭部バルカンを正確にRFゲムのモノアイに命中させ、一瞬の隙を作り離脱するゼット。ケンプファーの攻撃を強引に回避したNT-1を彷彿とさせる、背中を地面に擦らせながらのやや不恰好な動きだが。推進機類を噴かしたまま上体を起こし、小さくジャンプして着地する。仕切り直せたものの、再び距離が開いてしまい攻め手に欠ける状況に逆戻りである。
(とは言ったものの、どうするか・・・)
ブレイクデカールによって、バイザーとモノアイが修復されていくRFゲム。このタイプを倒すには、コドウやシンリと共闘した時のような強化形態に変身するか、サメのようなザムドラーグを撃破した際に行った連携攻撃しかない。だが今はコドウもシンリも居らず、即席で連携出来そうな仲間も居ない。デスデス地球人ことキルカが追って来ていれば協力できたかもしれないが、そのキルカはフォースネストでお説教中である。
「ねぇ・・・何でそこまで戦うの?」
攻めあぐねているゼットにシーエオが話し掛けた。その瞳に光は無く、頬には涙が伝った跡がある。
「もういいよ・・・降参して、私を降ろせば、それで終わりなんだから。あなたはこれからもGBNを楽しんで。許してもらえるように私が頼むから・・・」
悲しい手違いからゼットといがみ合っていたが、やはりシーエオ───クモヨリ・ウミノという少女は優しいのだ。他人を思いやり、自分を犠牲にしてでも助けたいと思える。だが今この場において、その優しさは絶望から来る諦めと投げやりな自己犠牲だった。
『・・・何言ってやがりますかぁ!!!』
「っ」
そんな悲しい顔で、体が泣き終わってもまだ心が泣いている女の子を、傷付いて苦しんでいる人を、放っておける程ゼットは冷たくも無関心にもなれない。
『あんな見る目の無い奴の言葉に負けるな!俺はウルトラ驚いたぞ!スゲェって思った!地球人ヤベェ!って!感動してたんだ!俺は!』
「う、ウソだよ・・・あんな、子供騙しの」
『確かに俺は5000歳の若造だけど!諸先輩方や教官に師匠だってシーエオのアレを見たらビックリするはずだ!少なくとも俺の知り合いと仲間に!頑張ってる姿を馬鹿にする奴は居ない!!!』
『お悩みタイムはもういいかなぁ!抵抗するなら徹底的に潰してやるよぉ!!』
嘘偽り無い、心からの言葉をシーエオにぶつけるゼットだが、猶予はたっぷりあげたろ?とエラコのRFゲムが襲い掛かってくる。それらを回避し、時に防御して耐えながら言葉を紡ぐ。
『シーエオにだって居るだろ!居るはずだ!お前の技を見て喜んだり驚いたりする仲間が!友達が!』
「仲間・・・友達・・・?そんなの───」
居ない。とは言えなかった。学校では孤立し、GBNでは閑古鳥が鳴いているが、自宅となっているアオイ模型荘の面々とは交流がある。
んふーふ。今日もお疲れ様~
おや?美味しそうなお野菜が複数人分・・・消費なら任せてください。
あー!ダメダメ!パーツはもっと丁寧に、こう。ね?
ウミノさん!この前の手品もう一回見せてください!今日こそ仕掛けを見破ってみせます!
(大家さん、ソラさん、ミヤコさん、イマリちゃん。私のマジックを見てくれて、一緒にご飯食べて、ガンプラの相談もして・・・)
仲間、友達。それだけではない、確かな繋がりがあるように思えていた。人の総意の器を名乗る男が言ったように、人の心は謎だ。もしかしたら迷惑がっているのかもしれない。この思いは一方通行なのかもしれない。
「それでも私は・・・皆の笑顔が見たい・・・大切な人達と笑い合いたい・・・」
なんで忘れていたのだろう。
今より子供の頃、拙いながらも見せた手品で両親が笑ってくれた。そこから手品で、マジックで色んな人を笑顔にしたい、ビックリさせたいと思った。
人付き合いが苦手なのを母譲りの容姿のせいにして、誰にも見てもらえないからと諦めて。挙げ句の果てにGBNに逃げ込んで、好きだったマジックもただの手段になって。
「でも、もう逃げたくない・・・私は、私のやりたい事で、好きな事で!皆を笑顔にしたい!」
『なら、今やるべき事は分かりますな!』
「うん!まだ少し怖いけど・・・」
『ここまで来たら最後まで手伝います!一緒にアイツをぶっ倒しますぞぉ!』
コックピット内に光が溢れる。ゼットにとっては三度目となる現象。その光は機体外にまで漏れていた。
『何する気か知らねぇけどよぉ・・・一人でどうにかなる状況じゃねぇっつってんだろうが!!!』
「一人じゃない!!!」
『はっ?えっ?ちょっ、今の声・・・』
狼狽するエラコ。動きが止まったRFゲムから距離を取ったのと同時にシーエオの手元に光が集まっていく。
「これって」
『セットするでございますよ!ウルトラフュージョンだ!』
目の前に浮かんだホロスロットに光の結晶───ガンダムメダルを装填し、表示に従ってスライドさせるシーエオ。
【UNICORN】【∀】【00】
『来たぁ!パワー全開!シーエオ!』
【ご唱和ください!我の名を!ガンダムゼット!】
「えっ?ご、ご唱和ください?」
『ゼット!ガンダムゼットの部分だけで!』
「あ、ハイ・・・ガンダーム!ゼーット!」
【GUNDAM Z GAMMAHEART】
▲▽▲▽▲▽
「うっ・・・ん?どこ行った!?」
『ここだけど?』
散々こき下ろしたシーエオの声が聴こえかと思えば、ナラティブガンダムが光に包まれ、視界から消えていた。と、思えば背後から再びシーエオの声。そこに立っていたのは───
『フッ・・・シュアァ』
技でも力でもない、新たな【心】を宿した戦士だった。
▽▲▽▲▽▲
「レディースエーンジェントルメーン!ただいまより開演しますは、人の夢を嘲笑い踏みつけるロクデナシをぶっ倒す世紀のマジックショー!お代は不要、どうぞご覧あれ!」
『・・・調子に乗るなよアバズレェ!』
サブアームのマシンガンと右腕のレールガンを向け、ゼットを蜂の巣にせんと攻撃するRFゲム。その弾丸はゼットを貫通したが、エラコの望んだ結果にはならなかった。何故なら───
「ざぁんねぇん外れです!本物はぁ、こっち!」
何も無い空間から現れたゼット。ゲムが撃ち抜いたのはホログラムだったのだ。自身はステルス機能で姿を隠し、ゲムの背後にホログラムを投影して欺いたのである。激昂したエラコがゲムを振り向かせ、今度こそ蜂の巣にしてやると全武装のトリガーを引くが、ゼットとシーエオの方が一手早かった。
『ゼスティウムハンマー』
何故かいつもよりクールな声音のゼット。両腕からそれぞれ緑と赤のビーム鞭を発生させ、それをゲムに叩き付ける。どう制御しているのか、ビームの先端部分はトゲ付き鉄球のように肥大化していた。
『ガッ、ぐうっ・・・クソッタレがぁ!』
レールガンと180㎜キャノンごと両肘から先を破壊されたゲム。被害を免れたサブアームのマシンガンで攻撃を行うが、それすらも魔方陣のようなフィールドに弾かれる。
『何なんだよ!何なんだよテメェは!』
両腕を再生させながら後退していくゲム。だが、それを見逃すほどシーエオとゼットの怒りは弱くない。
「少し早いですが、このショーもクライマックス!お見逃しのないように!」
「『ガンマトリック!』」
二人の声が重なり、同時に左手でフィンガースナップを行うゼット。次の瞬間、ゲムの後退を遮るように【三機のガンプラ】が現れた。
『なっ!?』
【ユニコーンガンダム NT-D】
【ターンエーガンダム】
【ダブルオーライザー】
ゼットの新たな姿、ガンマハートの基になったガンダム達である。
『こっ、コイツら!?どこから!?』
《マグナムで!》
《ビームライフル、持つか?》
《敵戦力を削ぐ!》
ゲムを三方向から取り囲むように展開した三機。それぞれ手に持ったビームマグナム、ビームライフル、GNソードⅡでゲムに射撃を行う。
『どうせまた偽もっ───』
さっきと同じホログラム。そう思い込んだのが運の尽き。実際にダメージが発生し、マグナムで頭部を吹き飛ばされ、ビームライフルからの照射で左肩とバックパックが溶解し、三日月状のビームに右腕と胴体を切り裂かれる。そしてゲムの正面ではゼットが両腕を構え、ポジションを変え、エネルギーをチャージしていた。
『決めるぞ、シーエオ!』
「オッケー!」
「『ゼスティウム光線!』」
素体状態ではドッズライフルを介さなければ使えない、ウルトラ戦士 ゼットとしての必殺技。十字に組んだ腕から放たれた光の奔流が、再生の追い付かないゲムに突き刺さり、数秒と経たず貫通した。
『あ、あぁ・・・アァァァァァ!!!』
「これにて終演・・・」
背中から倒れ、地に触れた瞬間爆散するゲム。
組んだ両腕を解き、右腕を大きく広げてから再び胸の前に持っていき、コックピット内のシーエオに合わせてお辞儀をするゼット。爆発をバックに盛大なフィナーレとなったのであった。
▲▽▲▽▲▽
「ありがとね、ゼット。お陰で忘れてた初心を思い出せたよ」
『俺は一緒に戦っただけでごぜーます。前に踏み出せたのはシーエオが強くて優しい地球人だからです』
「あはは・・・ストレートに言われると照れるな」
戦闘終了後、それぞれ草原とコックピットで仲良く体育座りしながら会話している二人。慌ただしい空気は完全に吹き飛んでしまったらしい。
「助けてもらったお礼に・・・手品でも見る?」
『それも是非見たいですが、もし知っていたら教えてほしい事がありやがります』
「ん?何?」
-若き光説命中-
「なるほどねぇ。今でも信じがたいけど、GBNだから、で片付けられない現象見せられたら信じるしかないか」
『それで、手掛かりを求めて宇宙に行きたいのであります。マスドライバーか転送ゲートの場所を教えていただきたく』
「転送ゲートは基本的にセントラルのしか使ってないからなぁ・・・マスドライバーはここから遠い、というか真逆だったと思うよ?」
『ウルトラショックだぜ・・・』
ガックリと項垂れるゼット。コンソールを呼び出してマスドライバー施設を検索し、ほらやっぱり真逆、と見せるシーエオだが今のゼットにはクリティカルヒットの追撃になっている。
「あー、まぁその・・・頑張れ?」
『頑張るでございます・・・ところでシーエオは?どうするであります?』
「どうするって?」
『イマイチ助けになったか分からんでして、あの最低ダイバーの事もありますし』
コドウとシンリが居れば、遠回しにせよストレートにせよ助けになってないという発言を否定するだろう。二人ともゼットとの出会いによって、自分の道を正し、間違いに気付けたのだから。そしてシーエオもまた、そんな二人と同じくゼットに手助けされた一人となったのだ。
「熱血なのか天然なのか分からないねゼットは。むしろ両方?」
『褒められてます?』
微妙な所。
「充分助けになったよ、本当に。エラコさん・・・あのゲムのダイバーだけど、相談できそうな人に心当たりあるから、何とかなると思う」
筋肉質なオネェさんかな。
「私は大丈夫!とは言い切れないけど、逃げないようにはするよ。頑張ってみる!」
『・・・分かった。ちょっと無責任ですが、信頼するのも仲間の使命でごぜーますな!』
「恥ずかしげもなく仲間とか・・・もう」
▽▲▽▲▽▲
「じゃあね!また会えたら、もっとスゴいマジック見せてあげる!」
別れの時。
コックピット外に出た為、シーエオにはゼットの言葉が聴こえなくなっている。彼女の別れの挨拶に頷く事で応え、一拍おいて空を見据えるゼット。膝を曲げてから大きく跳躍し、マスドライバーを目指して飛び立つ。
『シュワッチ!』
事件解決の記念にでもなったのか、意図的に飛行軌道を二回ほど曲げ、【Nの文字】こと【横倒しのZ】を描いて飛び去るゼット。それを見たシーエオは。
「ふーん?宇宙人にしては洒落てるじゃん」
ショーを主催する者として、演出を考える者として対抗心を燃やしていた。
「さて、やらなきゃいけない事が山積みだね」
コンソール画面からセントラルロビーへのショートカットを選択し、データの粒子に解けていくシーエオ。次の瞬間には馴染み深いセントラルロビーの外周部にアバターが再構築されていた。そのまま総合受付のある内部へ入り、目的の人物を探す。
「まだマギーさん居るかな」
「居るわよん。呼んだかしら?」
「うひゃあ!?」
今日は驚いてばっかだね君。
▲▽▲▽▲▽
-三日後-
シーエオではなく、クモヨリ・ウミノとして学校に通学しようとしている現実の姿があった。ゼットと別れてから、マギーを通じてエラコとの一件を報告したウミノだったが、その成果は芳しくなかった。
(チート改造・・・まさか巻き込まれてたなんて)
運営側への報告と軽い事情聴取によって、現在GBNを騒がす事件に巻き込まれていた事を知ったウミノ。該当ログデータを洗えないという元来の性質に加え、エラコのブレイクデカール効果である離脱・通報等の完全ブロックによってシーエオ側に証拠が残っていないのだ。もう一人の当事者であるエラコも戦闘になった日から行方が分からず、【多発している事件の一つ】になってしまったのである。無論、運営側も事件の解決に向けて動いており、相談したマギーも親身に対応してくれたので、ウミノとしてはそこまで不安は感じていないのだが。
(でもゼットに関してはミスったかなぁ・・・)
唯一残る不安点はゼットに関して。エラコとの戦闘において話さざるをえなかったのだが、運営側もマギーも正体不明のガンダムを不審がっていたのだ。さすがに宇宙人云々の部分は伏せたが、もし自分が原因で恩人に迷惑が掛かったらどうしようという思いが中々拭えない。
それはそれとして【ゼットなら何やかんや乗り切るだろう】という妙な確信もあるのだが。
「まぁ、こっちはこっちで頑張らないと。まずはクラスで友達・・・話のできる知り合いを作ろう。うん、もう逃げないって決めたからね!」
友達じゃなくて知人にした辺り日和ったね。
「でもどうやって話掛けよう・・・」
「おーい、そこの人ー!」
「友達になってください!・・・告白か?」
「ちょっとー?聞こえてるー?」
「お話しませんか!・・・必死感がキモい」
「他に生徒っぽいの居ないんだけど!ねぇ!」
「うあぁ~人間関係ムズい~」
「無視すんなゴラァ!」
「グフッ」
陸戦型かな。
思考の沼にハマっていたウミノに話し掛け続ける一人の少女。無視する形になってしまったウミノに対し、渾身とまではいかないものの、それなりの威力がありそうな脇腹ツンツンで気付かせる。
「いっつ・・・なに・・・どちら様・・・?」
「それ、ユージョーの制服っしょ」
「そうですけど・・・」
「あたしも!」
(それが何だってのさ)
ユージョーこと悠詩女子高等学校。そこに通っているウミノは、当然指定の制服を着用している。いきなりウミノの脇腹を突いた少女も、若干着崩してはいるが同じ制服を着ている。だが、この同じ学校の生徒と思わしき女子とは面識が無いのだ。ほぼ100%初対面である。
「あたし最近引っ越して来てさー。今日が初登校なんだよね」
「はぁ」
「という訳で案内ぷりーず」
「はぁ・・・はぁ!?」
いきなり何を言い出すのか。困惑している内にガシッと肩を組まれるウミノ。距離の詰め方がエグい。
「いーじゃんいーじゃん!同じ金髪染めどうし仲良くしよーよ!」
「いや、あの、これ地毛───」
「あ、あたしサヨね!シラキ・サヨ!よろしく~」
「えぇ・・・く、クモヨリ・ウミノです・・・」
(友達作るとは決めたけど、これは難易度高いよぉ)
頑張って。
ドン千「許されなかった気がした」
【ガンダムゼット ガンマハート】
「ユニコーン」
「ターンエー」
「ダブルオー」
上記三つのガンダムメダルを使用して変身するゼットの強化形態。シーエオが磨り減らしていた【心】を取り戻す事を望んだ結果誕生した。規格外にして神秘の力を行使したガンダムを基にしているだけあり、今までの強化形態の中で最もブレイクデカールらしい能力を発揮する。その代わり運動性はアルファに、剛性や出力はベータにそれぞれ劣る。
「ゼスティウムハンマー」
ターンエーが使用していたガンダムハンマーをビームで再現した技。両手から発生させたビームハンマーで打ち付ける。GN粒子とサイコフレームの色を模しているのか、それぞれ赤色と緑色になっている。
「GNIアス」
読みはそのままジーエヌアイアス。GNフィールドとI・フィールドを魔方陣のように同時展開して攻撃を防ぐ。その性質上、特にビーム攻撃に強い。
「ガンマトリック」
ガンマハート形態における必殺技。ベースとなった三機の力を自身から分離させて召喚する。視覚的なプレッシャーに加えて、それぞれ個別に攻撃が可能。ブレイクデカール効果を活かした反則気味な技だが、その分ゼットの消耗も激しく、使用は一度の戦いで二回が限度。
【シーエオ/クモヨリ・ウミノ】
後述のアオイ模型荘で一人暮らしをしている女子高生。リアルネームの漢字表記は「雲由 海乃」。
母親譲りの綺麗な金髪をしており、幼い頃は自慢だったが成長していく中で、本当に地毛なのか、近寄りがたい人じゃないのか、等と枷になる事が多くなっていった。かといって母親と不仲な訳でもなく、髪も染めずに今までズルズルと流してきた。
テレビ番組で見たマジックを両親に披露した際、二人が笑顔になってくれた事、褒めてくれた事を嬉しく思い独学で勉強し得意になった。だが、自身のコミュニケーション能力の低さから中々友人が出来ず、次第に容姿のせいにして逃げるようになってしまった。
ゼットとの邂逅、共闘で「皆の笑顔が見たい」という自分の願いと心を思い出し、何かのせいにして逃げる事を止めて前を向く決意をした。
本来の乗機は法術士ニューを目指していたら、途中から脱線してしまった「奇術師ローニュー」。SD素体から頑張って近付けようとしていたが断念し、シーエオと同じくマジシャンのような見た目となっている。ちなみにローニューが完成した後に法術士ニューのキットを発見し、膝から崩れ落ちた事がある。
【エラコ】
女性マスダイバー。見目麗しい女性ダイバーを見付けては、いわゆる「オカズ」にするという事を繰り返す変態。今まで見た中でも特に好みだったシーエオに粘着行為を繰り返し、とうとうリアルにまで手を出そうとした。そのシーエオとゼットに撃退されてからの消息は不明。
乗機はフォーミュラー戦記やファステストフォーミュラ等に登場する、オールズモビルのRF系をイメージして改造された「RFゲム・カモフ」。
ちなみに、元々はとある作品の募集企画で落選したキャラのリファイン。百合っ気のあるキャラだったが、ここまでヤバいキャラではなかった。何故こうなったのか。
【ソウ】
ゼットとキルカの間に割り込んだ女性ダイバー。
乗機は「ガンダム・キマリスリンカー」
異常なまでにマスダイバーを憎んでいる様子。
ログインを長時間続けると頭痛に見舞われるVR適正の低い体質らしく、本人は「時間切れ」と表現する。
【アオイ模型荘】(出典 アルキメです。様)
ミト・アオイが経営する模型店兼アパート。
レトロな外観だが一度大規模な改築がされた。
旧キットやSDキット等の模型以外にもガンダムメンコやガン消しのガシャポン等も取り扱っている、マニアや愛好家の間では穴場とされている店。
【ミト・アオイ】(出典 アルキメです。様)
アオイ模型荘の管理人にして大家さん。
余裕で高校生の制服を着用できるのが自慢らしい。
基本的にのんびりした雰囲気の優しい女性だが、家賃を滞納する住人と年齢を聞いてくる相手には寒気を感じる笑顔で応じる。
【ヒムロ・ソラ】(出典 アルキメです。様)
アオイ模型荘の住人。
ガシャポンの前でレア物が出るように祈る、近所の子供とメンコ等で勝負する、その上えげつない手段をしれっと使う、年下の住人(主にイマリ)に食事を集る、家賃を何ヵ月も滞納する等、駄目な大人の見本のような女性。
SDガンダムに深い造詣があり、GBNのアカウントも持っているらしい。
【タマキ・イマリ】(出典 青いカンテラ 様)
アオイ模型荘の住人。
ウミノから天使と言われる、明るくポジティブな女子高生。
ソラに食事をせがまれても嫌な顔一つせず手料理を振る舞う善人。
【ミヤモリ・ミヤコ】(出典 守次 奏 様)
アオイ模型荘の住人。
目指せ日本のシャフリヤールが座右の銘。
バトルはそこまで強くないが、製作・改造はお手の物。
ガンプラ製作で常に懐が寒いらしく、ソラと同じようにイマリ飯を集りに行く駄目な大人予備軍。だが、家賃の支払いを待ってもらう為に土下座すら厭わないソラの姿を見て、ああはなりたくない、と家賃滞納だけは絶対にしない。