GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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迫るウルトラ決戦


若き光と有志連合結成

(拝啓 師匠、お元気でしょうか。光の国はお変わりないでしょうか。師匠や兄さん達、諸先輩方が簡単にやられるなんて想像できませんが、ご自愛ください。俺の方はなんとか元気にやっています。未だに連絡の一つも出来ず申し訳ないです。そちらに戻れる───手掛かりを掴む為に、この世界の宇宙を目指しています。必ず戻ります。敬具)

 

いきなりどしたん。

 

(頭ん中で手紙でも書かないとやってられないぜ・・・届きはしないけど!)

 

あぁそういう。

 

(転送ゲートは見えないし、マスドライバーは遠いし)

 

まだ着いてなかったんだ。

 

(それに───)

 

『今日という今日は墜ちてもらう!』

『いい加減に!』

『デェス!』

 

(コイツらもウルトラしつこいし!)

 

まだ追われてたんだ・・・

全力でブーストを噴かす改造ナラティブガンダムことガンダムゼット。その背後には、黒いレオール、黒と緑のクシャトリヤ、黒とピンクのシャッコーが迫っていた。ゼットをNPDと思い込み、撃破に執念を燃やすメリア、キルカ、シラブの三人組である。

 

(しゃあねぇ!ゼットバルカン!)

『デュアッ!』

 

『そんな物!』

『デェス!』

『やっとやる気になった!』

 

エネルギーの光刃を飛ばすゼットスラッガーが置き換わった武装、頭部バルカン砲からの牽制射撃。ブーストを止める事なく振り向き、先頭の槍を持った黒いレオール───ガングオールに向けて実弾を連射する。だが、さすがにバルカン程度で止まるメリアではなく、縦に構えた槍の腹で弾丸を防ぎつつ前進を止めない。

 

『キルちゃん!』

『お任せあれ!なのデェス!』

 

さらに後続の二機、クシャトリヤの改造機であるイガリヤとシャッコーをカスタムしたシュルシャッコーが左右に散開しつつゼットに接近していた。

 

(そう来るのは分かってる!くらえ!)

 

二人の動きを読んでいたゼット。既に腰のラックから抜いていたドッズライフルをシュルシャッコーに向け、ビームを二連射。

 

『くっ!対応が早い・・・!』

『隙を見付けてぇ!ぶった斬りデェス!!!』

 

必殺技相当の照射ビームもドッズライフルから放つ事を知っている三人。今までの経験から、通常時でもドッズライフルの攻撃は危険と学んでいるシラブが取った行動は回避。ビームローターでの防御も選択肢にあったが、リスキーな択として回避を選んだのだ。代わりにフリーとなったキルカのイガリヤが肉薄する。

 

『ヌウッ!デヤァ!』

『おわぁ!?』

 

経験から学んでいるのは三人だけではない。度重なる襲撃、特にキルカは最初にゼットを追い掛け始めた古参のライバルなのだ。だいぶ意味違うけど。その為、イガリヤの大鎌も仕込みビームサーベルも、リーチや安全なエリアを完全に把握しているゼット。大上段からの縦一文字振り下ろしも、即座に距離を詰めて柄の部分に滑り込み、ビームサーベルが伸びてくる前に一撃を入れて離脱する。

 

『や、やっぱり強くなってるデス・・・』

『学習型とでも言うのかしら。今までのチャレンジで仕留め切れなかったのが悔やまれるわ』

 

(こっちは日々成長のウルトラ戦士だ!元の宇宙に帰るまで負けられるかよ!元の宇宙でも負けるつもり無いけどな!)

 

君、元の宇宙だと身長50mくらいあるよね?サイコガンダムより大きいよね?体格差ってそれだけで武器なんだよ?

 

『らちが開かないわね。一気に攻めるわよ!』

『了解』

『デス!』

 

(受けて立つぜ!)

 

槍に大鎌、ビームリングと各々の得物を構える三機。対するゼットも、ドッズライフルと共に近接戦闘の構えを取る。GBN流の戦い方を確立しつつあるようだ。

 

『っ、マム!?今は戦闘中で───AVALONから!?』

『メリア?どうしたデスか?』

 

(何だ?)

 

槍型の武装を構え、今にも飛び掛からんとしていたガングオールだが、この場に居ない何者かからの通信が開いたらしく動きを止める。リーダーであるメリアが話を聞いているらしく、メリアに合わせて仕掛けようとしていたキルカとシラブもゼットを警戒しながら待機している。

 

『・・・分かったわ。キルカ、シラブ、引き上げるわよ』

『うえぇぇぇ!?なにゆえ!デェス!』

『マムに何かあったの?』

『AVALONからメッセージが届いたらしいわ。詳細は戻ってから伝える』

 

(あばろん・・・?)

 

通信回線を通して聞こえてきた単語が引っ掛かるゼット。それもそのはず、GBNをあちらこちら彷徨っていた際に聞いた事があるのだ。

 

(たしか、ダークアバロンがどうのって言ってたけど)

 

微妙に違ったわ。

 

『結局仕留められなかったわね。まぁ良いわ。この一件が片付いたら、改めて挑むとしましょう』

『むぅ・・・お前!勝手に倒されたらタダじゃおかないのデース!』

『キルちゃん、NPDに言っても無駄だと思うよ』

 

槍を下ろし、マントを翻して去っていくガングオール。ビシィッ!とゼットを指差し、宣戦布告?を叩き付けてからメリアに続くイガリヤ。そんなキルカに静かにツッコミを入れ、ビームローターで浮遊し背を向けるシュルシャッコー。

 

『キエァ・・・』

(何だったんだ・・・)

 

一人取り残される形になったゼット。めっちゃポカーンとしてそう、というかしてる。表情分からんけど。

 

───フフッ

 

(っ、何だ!)

 

ゼットの背後から声。それも笑っているような。今の今までウルトラ戦士としての感覚にも、ガンダムゼットとしての索敵機能にも引っ掛からなかった【なにか】がそこに居る。バッ、と勢いよく振り向き、ドッズライフルを下げて空いている方の拳を構える。

 

(黒い・・・何だ、コイツは)

 

黒い、ノイズに塗れた塊がそこに存在していた。かろうじて人間のような形をしている事は分かるが、表情はおろか髪型や服装など、印象的な要素がノイズのせいで一切分からない。

 

(でも笑ってたよな・・・敵か?少なくとも味方には見えねぇけど)

 

───…………

 

(・・・?あっち?)

 

黒い人間モドキが腕と思わしき部位を上げた。何かするつもりかと、踏み込む構えにドッズライフル、ゼットバルカンにも意識を割いて警戒するが、人間モドキは本当にただ腕を上げただけ。そのまま動きを止め、自分から見て左、ゼットから見て右方向を指差したのだ。

 

(何があるってんだ?)

 

───…………

 

一言も発しない人間モドキ。根比べのつもりなのか、指を差したまま一歩も動かない。相変わらず全身を覆うノイズは絶え間なく走っているが。

 

『・・・ヘアッ!?』

(何だ!爆発!?)

 

どこにあるかも分からない目と睨み合うこと、たっぷり数分が経過した瞬間。爆発音をゼットの聴覚が捉えた。それも人間モドキが指差した方向から、である。

 

(今の音を伝えたかったのか?よし!任せ・・・あれ?どこ行った?)

 

助けを求めていたのか、と納得するゼットだが、爆発音の方向を確かめていた僅かな間に人間モドキが消えていた。落とし物どころか足跡一つ残さず、そこに何かが居たという痕跡の一切が無いのだ。

 

(結局なんだったんだ・・・?っと、今はとにかく向かってみるか!)

『デュワッ!』

 

スラスターとバーニアを噴かし、GBN式ジャンプからの飛翔で爆発源に向かうゼット。

 

その背を、消えたはずの黒い影が見つめていた事に気付かないまま。

 

───………………

 

 

◆◇◆

 

 

「クソッ!この野郎!」

『ハッハァ!AVALONつってもブレイクデカールがありゃあよぉ!』

 

荒野で争う機体が二つ。全身をメタリックカラーに塗装したカスタムタイプのウィンダム。それをほぼ一方的に攻撃しているのは、黒いカラーリングに触手のような腕が特徴の量産型クァバーゼ。

 

「相手してるヒマは無いってのに!」

『つれねぇなぁ、まだまだ遊んでくれよAVALONさんよぉ!』

 

『ぐあぁぁ!?』

 

右手に保持したビームライフルからの連続射撃で追い詰め、触手のような左腕───スネークハンドのビームソーでウィンダムを仕留めようとしていたクァバーゼのマスダイバー。だが、仲間の声が聞こえ、動きを止めてしまう。

 

「なっ」

『あぁ?おいおい!何でやられて───』

 

『我流・・・閃光!魔術蹴りッ!』

 

そう、この場で戦っているのはウィンダムとクァバーゼだけではない。分断こそされているものの、ウィンダムのダイバーにも友軍は居るのだ。その内の一人がクァバーゼの仲間を突破し、ウィンダムの援護に入ったのだ。

 

『ぐふぁ!?』

 

『おい、大丈夫か?』

「あ、あぁ。すまない、コドウくん」

 

踵落としで体勢を崩し、追撃の膝蹴りでクァバーゼを吹き飛ばしたのは、青と黒の装甲が特徴的なリバースブリザードガンダム。コドウと呼ばれたダイバーの愛機である。

 

『クァバーゼか。なら、これがちょうど良いか!』

『てめぇ・・・舐めるなぁ!』

 

起き上がったクァバーゼがスネークハンドをしならせ、リバースブリザードへと迫る。だが、スネークハンドが効力を発揮する前に本体がダメージを受けていた。

 

『なっ!?』

『連携も無しではな』

 

ウィンダムからクァバーゼに向き直る際の勢いを利用し、右腕を振り抜いたリバースブリザード。その腕からは、厳密に言えば腕に装着されたガントレットから青白い鞭のような武装が伸びていた。

 

『スクリューウェッブだとぉ!?』

 

厳密には「氷雪鞭」と名付けられたヒートロッド、もといコールドロッドなのだが、クァバーゼを操るマスダイバーから見ればクロスボーン・ガンダムの原作に近いカウンターなのだろう。クァバーゼも量産型という違いはあるが。

 

『ぐっ、クソがぁ!』

『ルカヤ!』

「分かってる!」

 

両腕のガントレットから伸ばされた氷雪鞭でクァバーゼを追い詰めるコドウ。強引に離脱しようとしたタイミングで強烈な横薙ぎを食らわせ、体勢を大きく崩す事に成功する。そしてその隙を狙っていたのは、ルカヤと呼ばれたウィンダムのダイバー。

 

「チェストォー!」

『うおぉぉぉぉっ!?ちっ、チクショウがぁぁぁ!』

 

全身の推進機関を全力稼働させ、右手首を高速回転させながらクァバーゼに突撃するウィンダム。モーションに違わずその右手を突き立て、クァバーゼのコックピットを打ち抜いたのだった。その様は、コドウも得意とする次元覇王流の技、流星螺旋拳のようだった。

 

「よし!」

『あとはシンリとシーエオ───』

 

『抜けられた!コドウさん!そこから撃てますか!』

 

クァバーゼを撃破するも、息つく間も無く通信が開く。コドウが確認しようとした仲間の一人、シンリからである。どうやら、相手をしていたマスダイバー機が逃げようとしているらしい。

 

『トリモチとか最悪ー!』

『チッ、氷獄鳥で墜とす!』

「俺がやる!」

 

もう一人の仲間であるシーエオの愛機、奇術師ローニューが粘性の何かに捕らわれていた。本人が発した通り、トリモチランチャーで絡め取られたのだろう。リアルタイプよりも手足が短い弊害と、ブレイクデカールで強化されたトリモチの粘着力で動けないようだ。また、シンリのセイバーガンダムもアムフォルタスの砲口にトリモチを撃ち込まれたらしく、ビームサーベルを抜いて追撃しようとしている。

 

『へっ、ただのガンプラでブレイクデカールに追い付けるもんかよ!いつか借りは返してやる!』

 

マスダイバーの乗るリック・ディアスがスラスターを全開して逃げていく。コドウはリバースブリザードの右手を引き、必殺の雪花氷獄鳥の構えを取り、ルカヤはウィンダムにビームライフルを構えさせている。やや離れているここから、ブレイクブーストをした機体を狙撃できるのか───

 

『ジュアッ!!』

 

『へっ?何がぁ!?』

 

突如、リック・ディアスが逃げようとしていた方向から光の奔流が飛んできた。何の防御も出来ないまま、高出力の照射ビームに呑まれたリック・ディアスは数秒で爆発四散したのだった。

 

「増援?いや、でも誰が・・・」

『今のは・・・』

『間違いない、ですよね』

『あの変なビーム出すのなんてアイツくらいしか居ないでしょ』

 

ルカヤだけピンと来ていないが、他の三人は援護射撃の主に心当たりがある───というか正体が分かっているらしい。

 

正解でごぜーますよー!と言わんばかりにガションガションと走って来たのは、青と黒に銀色が特徴的なカラーリングに、ドッズライフルを備えたカスタムナラティブガンダム。そう───

 

『『『ゼット』さん』』

 

「・・・あ、あの時のナラティブ!」

 

ルカヤもその姿を見て思い出したようだ。

 

 

◇◆◇

 

 

『ヘアッ!オォ!』

(誰かと思えばコドウ!シンリにシーエオまで!いやー久しぶりだぜ!)

 

『さて、誰が乗る?』

『そうか、コックピットじゃないと会話できないんですよね』

『あー、やっぱり変わってない感じかー』

『アンタらも知り合いなのか?』

『も、って事はルカヤもメダルを?』

『メダル?』

 

(おーい、俺もそろそろ話に混ざりたいんだが・・・)

 

ゼスティウム光線を放ったドッズライフルを腰のラックに収め、誰が一体化してくれるのか待ちのゼット。

 

『一緒に戦った訳じゃないんですか?』

『共闘はしたぞ。今でもしつこいザムドラーグの子供を相手にしたな』

『・・・まぁいいか。俺が乗る。ゼットも待ちくたびれてるしな』

 

リバースブリザードを待機状態にし、かつて共闘した時のようにゼットのボディを飛び移りながら登っていくコドウ。おっ、コドウが通訳してくれるのか!と嬉しそうにコックピットハッチを解放するゼット。本当に嬉しそうだねキミね。

 

「相変わらず殺風景だな」

『殺風景で悪かったでごぜーますな!』

「冗談だ。久しぶり・・・なのか?」

『久しぶりでございますことよ!シンリとシーエオまで一緒とは思いませんでございましたわ!』

 

その妙ちくりんな語尾も久しぶりだな、と肩を竦めるコドウ。内心は再会を喜んでいるのだが、ややアホの子であるゼットに対してはツッコミやら何やらが先行してしまいがちなのだ。

 

「その二人とルカヤにも伝えたいんだが、音声の外部出力はどうやればいい」

『もう伝わってるはずでごぜーますが?』

「何だと?」

『シーエオと一緒に戦った時に、シーエオの声が相手に聞こえた事がありましてな。まぁ、相変わらず俺の声は聞こえないのですが・・・』

 

『コドウくんの声はバッチリ聞こえてるよー』

『僕も同じく聞こえてます。ただ、ゼットさんの方はやっぱり・・・』

『聞こえているが・・・さっきから三人で何の話をしてるんだ?』

 

「お前、ルカヤには教えてないのか」

『そのルカヤが誰なのか・・・』

「あのウィンダムに乗ってる奴だ」

 

共闘し、ガンダムメダルが生まれる原因となった三人はともかく、聞き慣れない名前に見知らぬガンプラの一人だけは思い当たる節が無いゼット。と、コドウの言葉から察したのか、ルカヤが改めて自己紹介を始めた。

 

『あの時はカプルに乗ってたからな。所属もフリーだったし』

 

『・・・あぁ!あの丸っこくてちんまりしたガンプラでごぜーますか!』

「つまりAVALON入りは、かなりの短期間で腕を上げたからか・・・凄いなアンタ」

 

かつてはガンメタルに塗装したカプルに乗り、初心者だったルカヤ。今となっては黒い制服を纏い、乗機もウィンダムに変えた一端のダイバーになっていたのだった。

 

『まだまだ下っ端だけどな』

 

『ところで、俺の知り合い四人が集まってどうしたんでございますことよ?』

「ん?・・・あ」

 

『コドウくん?その迫真の「あ」は何?』

『な、何か問題でもありましたか?』

 

「いや、ゼットが何で四人が集まってるんだ?って聞いてくるもんだからよ・・・」

 

と言いつつ、何故かルカヤのウィンダムに視線を送るコドウ。コドウの言葉を聞いたシンリとシーエオもまた、あっ・・・とルカヤに目を向ける。そして注目の的になったルカヤも、あっ・・・やっべ・・・と気まずそうにしていた。仲良いね君ら。

 

『三人をフォースネストに案内しようとしてたんだ。リーダーがダイバーを集めてるみたいだから』

 

「で、案内を頼もうとした矢先に助けを求められてな」

『人助けなら仕方ないのでは?』

「それが普通のダイバーならな。わざわざ生身で話し掛けてきたのが、俺とルカヤで相手をしてた奴。助けを待ってるはずだったのが、シンリとシーエオが倒した奴とお前がビームで吹き飛ばした奴だよ」

『そういう事か・・・』

 

先ほどまでコドウ達が戦っていたマスダイバー集団は、襲われているフリをしてルカヤを襲撃したらしい。だが不審に思ったコドウ、シンリ、シーエオが着いてきた上にゼットまで乱入し、あえなく全員撃破となった。

 

「マスダイバー絡みでピリピリしてるのは分かるが、さすがにアイツは怪し過ぎるだろう・・・」

 

『本当に襲われてたら一大事だろ?まぁ、悪いとは思ってるよ・・・改めてすまなかった、助かったよ』

『まぁまぁ、ゼットとも再会できたし結果オーライって事にしとこうよ』

『ですね。ルカヤさん、案内の続きをお願いできますか?』

『勿論だ!』

 

「ゼット、お前も来てくれ」

『俺も?』

「AVALONからのメッセージ、内容からするに恐らくマスダイバー関連だ。シンリとシーエオの同行が許可された辺り、信頼できる戦力は多い方が良いはずだ」

『おぉ!そういう事なら任せてくだせぇ!』

「ルカヤも良いか?」

 

『あー・・・まぁ、良いんじゃないか?三人も証人が居るなら十分だ』

 

こうしてゼットの同行も決まり、五人はAVALONのフォースネストへと向かうのだった。

 

 

───…………

 

 

何かが笑っていた。

 

 

◆◇◆

 

 

「良い訳ないだろう」

「うっ・・・すいません・・・」

「はぁ、確かに信頼に足る証人が複数居るなら良いが、連れてくるなら連れてくるで事前連絡をしろ」

 

AVALONフォースネスト前にて、ルカヤが眼鏡を掛けた女性に説教されていた。トンデモの体現者であるチャンピオン、クジョウ・キョウヤが信を置くAVALONの副官エミリアである。頑なに機体を降りない、というか機体が本体のゼットを、誰かを迎えに行くつもりだったのかネストの外に出ていたエミリアが目撃し、ルカヤを問い詰め今に至る。

 

「事情は理解しました。そちらのナラティブガンダムの方、一緒に案内させていただきますので、機体から降りていただけますか」

 

『キエァ・・・』

(俺、入れないよな・・・)

 

「?」

「エミリアさん、だったか?すまない、アイツはその・・・ちょっと特殊な事情があるんだ」

「そうそう!顔を合わせるのが恥ずかしいんです!」

「いやー!困っちゃいますよね!でも腕は私達が保証しますよ!うん!」

「そ、そうですか・・・では、ルカヤ」

「うっす!」

 

勢いの凄まじい三人に珍しく気圧されるエミリア。やや引いた表情でルカヤを呼ぶ。

 

「彼・・・?の連絡要員としてここに残るように。始まり次第、コンソールに中継を回す」

「マジか・・・いえ!何でもないです!」

「では、お三方はこちらへ。直ぐに案内を遣わせます」

 

言葉通り別のAVALON所属ダイバーが現れ、コドウ達三人を案内していく。着いてこい、と言い出したコドウは若干気まずそうにしており、シンリは苦笑しながらゼットに軽く手を振る。シーエオはゴメン!と両掌を合わせながらもAVALONのフォースネストに興味を引かれているようだ。エミリアはそれを見送った後、何処かへ転移しその場から消える。

 

「・・・」

 

(あー・・・とりあえず乗ってもらっても?)

 

過去最高レベルにひっそりとコックピットハッチを開けるゼットだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「凄い・・・上位ランカーに腕利きフォースがこんなに集まるなんて」

「うわぁ・・・ヤバい、何か吐きそう」

「吐くなよ」

「仕方ないじゃん!陰キャにはキツいんだよこの空間!今めっちゃ頑張ってるんだよ私!」

 

エミリアから案内を引き継いだAVALONメンバーに通された大広間には、鉄仮面ズのようなイロモノ実力派フォースや、個人ランキング7位に位置するランディといった、一度でも上を見た事のあるダイバーなら誰でも知っているような顔ぶれが集結していた。

 

「いずれ超えていく相手だ、後学の為にも話を聞いておきたいな」

「コドウくんって本当に物怖じしないよね・・・」

 

「コドウ?」

 

「ん?お前は───」

 

シーエオがコドウの名を発した瞬間、それに反応したダイバーが居た。寝癖のように所々跳ねた茶髪、和装剣士のような丈の長い衣服、そして腰に差した日本刀。振り向いた女性ダイバーはそんな姿をしていた。

 

「ランセか」

「お久しぶりですね。ジブンの事を覚えていたようで」

「簡単に忘れられる相手じゃなかったからな」

 

茶髪の女性剣士ダイバーの名はランセ。かつてメガ粒子杯の予選最終戦でコドウと戦ったダイバーである。機体のダメージレベルでは、コドウはほぼ無傷という圧倒的な大差をつけられて敗北したからか、コドウに向ける視線は険しい、というか完全に睨んでいる。

 

「お前も呼ばれていたのか」

「えぇ、この豪華らしいメンツを見るに、AVALON主催の武道会でも開くんですかね。それなら望む所です」

 

あの時のリベンジを果たせますから、とより眼光が鋭くなるランセ。フィールドでの襲撃こそ受けていないものの相当恨まれているらしい。

 

「この集まりが何なのか、それを確かめてからでも遅くはないだろ」

「・・・ふん。もし戦う事になったら覚悟しておいてくださいね。今度はジブンが勝ちます」

 

そう言って壁際へ向かうランセ。やはり馴れ合うつもりは無いらしい。敵意しか感じ取れないランセのプレッシャーにシンリは完全に固まり、シーエオにいたってはコドウの背中に隠れて目から上だけを覗かせている。小動物か何かかな。

 

「すごい、圧でしたね」

「こわぁ・・・」

「やれやれ───今日は因縁が多いな」

「へ?どういう───」

 

「・・・」

 

コドウの背後に獣が立っていた。二本の脚で床を踏みしめ、ランセ以上に剣呑な雰囲気を纏った虎狼が。

 

「虎武龍の・・・」

「タイガー、ウルフ・・・!」

 

「・・・」

「・・・」

 

GBN最強の格闘家、フォース虎武龍をまとめる獣人ダイバー、タイガーウルフその人である。これから壮絶な戦いが始まるかのような重苦しい空気に耐えかねてか、コドウとタイガーウルフの周りからダイバーが居なくなっていた。シンリとシーエオでさえ距離を取っている。

 

「ッラァッ!!!」

「破ッ!!!」

 

空気が張り詰めきった瞬間、両者が動いた。コドウは振り向きながらの右ストレート、タイガーウルフは渾身の蹴りを繰り出し、互いの拳と脚が互いを捉える前に止められていた。

 

「・・・」

「・・・へっ、まだ腑抜けてんなら、このまま蹴り飛ばしてたが」

 

険しい表情を崩し、ニヤリと笑うタイガーウルフ。コドウに向けていた脚を下ろし、シンリとシーエオに向き直る。

 

「このバカをよろしくな」

 

後ろ手に手を振りつつその場を後にするタイガーウルフ。いきなり寸止め合い宇宙をして、唐突にバカの事をヨロシクされて、シンリとシーエオは何が何やら全く状況が理解できていない。そんな二人を余所に、コドウも拳を下げ、タイガーウルフの背に向かって礼をしていた。

 

とりあえず治まった事を察したダイバー達が、再び歓談に戻るのに時間は掛からなかった。事情は人それぞれ、と野次馬をする者が居らず、何事も無かったように自分の時間に戻れる辺り流石は強者・曲者と言った所か。そしてコドウ自身が言った通り、この日は彼の因縁にとことん触れる日らしい。

 

込み合う大広間にて誰かに肩をぶつけてしまうコドウ。謝ろうとした時、ぶつかった相手が誰かを知る。迷いの渦中に居る烈火との再会を果たすのだった。

 

 

◆◇◆

 

 

『というワケでごぜーますことよ』

「もっとマシな嘘吐いたらどうだ?」

『ふっ、それはシーエオと既にやったやり取りなのですなぁ!残念でした!』

 

一方で、AVALONフォースネスト敷地内では宇宙人とルカヤが漫才をしていた。ボディランゲージでどうにかこうにかコックピットに搭乗してもらい、いきなり声が届くようになり、姿が見えない事にビビるというGBNゼットのお約束を終え、元の宇宙に帰りたいという話をしてセリフに行き着くのだ。

 

「宇宙人なんです、なんて言われて信じる奴が何人居ると思うんだよ・・・」

『信じるも何も、事実ですからなぁ』

「降りてきた戦艦にビビって敷地踏み荒らすような人間くさい宇宙人とか、それはそれで嫌なんだが」

『ぐっ・・・痛い所を突きやがりますね』

 

先程、AVALONに合流しようとやって来た艦に驚き、待機場所の地面を砕いてしまったゼット。彼なりに反省しているのか、艦から離れた位置に移動して体育座りしている。

 

「で?ダイバーは何処に───っと、始まったか」

『む』

 

フレンドとフォースメンバー、二つの秘匿回線を経由してエミリアから回されたブリーフィングルームの中継映像。ルカヤはコンソールを注視し、コックピット内の状況を感じ取れるゼットも映像に意識を集中する。壇上に上がっている制服姿の男性と、明らかに人間ではない白い動物を見たゼットは、改めてGBNの広さと懐の深さを感じていた。

 

『凄いんだな、この地球人』

「ん?」

『世界を守るために、みんなの居場所を守るために、っていう本気が伝わってきた。マジもマジじゃなきゃ、ゲームの世界で命を預けてくれ、なんて言えないだろ』

 

面識どころか、GBN最強のチャンピオン【クジョウ・キョウヤ】という事すら知らないゼット。だが、キョウヤの言葉から確かな意志を感じ、気を引き締めて続く言葉を聞く。

 

『有志連合、か・・・ルカヤ』

「何だ?」

『俺も協力するぜ。マスダイバーとかいうのとは何回も戦った事がある。元の宇宙に戻る前に、この世界の助けになりたいんだ』

「そうか・・・分かった、お前が何者でも構わない。エミリアさんには俺から話を通しておく」

 

真剣な声色のゼット。少なくとも悪質なダイバーではないと判断したルカヤも応え、ゼットの有志連合参加を通す覚悟を決めたようだ。

 

『ありがてぇ!よぉし!ウルトラ気合い入れるぜぇ!!!』

 

ルカヤ曰く【人間くさい】動きで勢いよく立ち上がるゼット。この後、ルカヤを含めたAVALONメンバー数人と共にマスドライバーへ向かい、直接宇宙エリアに出てから決戦の場への転送ゲートを潜る、という手筈が決定するのだった。




ゼット、宇宙へ
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