「ふむ・・・エイプリルフールか。まぁ私には関係の無いイベントだな。そもそもイベントとして数えてよいのかも微妙な所だが」
セントラルロビーの壁際で独り言を呟くのは眼帯の変な奴ことTHE Bi-ne。リア充どころか季節の催しや世間の流行に対応する気すら無い悲しきクロスボーン全振り男である。そんなTHE Bi-neがシステムコンソールで偶々見掛けた今日の日付は、彼が呟いた通り「エイプリルフール」。4月1日は嘘をついても良いとされる風習らしいが───
(そもそもこの姿も何もかも嘘みたいなモノだしね。日頃からザビーネ・シャルを騙ってるような男が今さらどんな嘘をつけば良いってのさ)
THE Bi-neことサビネ・タカトの本音である。ザビーネのロールプレイヤーとして(ある意味)有名な彼は確かに日常的に嘘をついているようなものだろう。そもそも嘘をつく相手が居ないだろうとか言ってはいけない。
「大変だよTHE Bi-ne!もう聞いたかい?」
彼女を除いては。
「騒々しいぞ。なんだジェーン」
ジェーン・ケドゥ。負傷したキンケドゥ・ナウのような姿をした女性ダイバーにして、マギー以外では唯一THE Bi-neに自発的に話し掛けるダイバーでもある。
「DUSTの次のシリーズが発表された件さ。シリーズ完結と言いながら用意していたんだろうね」
「次、か」
機動戦士クロスボーン・ガンダム DUSTをもって完結となったクロスボーンシリーズ。完結したはずのクロスボーンが次の展開を用意している、と慌てた様子のジェーンだがTHE Bi-neは冷めた視線を彼女に向ける。両目に眼帯をしているせいで分からないが。
「ジェーン」
「なんだい?一大事じゃないか?」
「そもそも今日は4月1日ではない」
「・・・は?いやそんなはずは」
システムコンソールを呼び出し日付を確認するジェーンだが、その様子を見てTHE Bi-neが微かに笑う。
「しっかりエイプリルフールじゃないか」
「そうだが?見事に引っ掛かってくれたな?」
「っ!?・・・まさか君が嘘を仕掛けてくるとは予想外だったよ。エイプリルフールの事そのものを知らないと思っていたのに」
「貴様は私を何だと思っている」
常識すら投げ捨てたクロスボーン好きのヤバい奴じゃないかな。
「この屈辱はバトルで晴らそうか」
「発言の内容に脈絡が無い事を気付いているか?まぁそうなるだろうとは思ったが」
いつの間にかフリーバトル申請を完了しているTHE Bi-ne。その申請を即座に承諾するジェーン。偶然近くにいた他のダイバーは似たような光景を見た事があるのか、あぁまたか。と言わんばかりの生暖かい視線を向けていたとか。
「このショットランサーは偽りではないぞキンケドゥゥゥゥゥゥ!」
「私の起こす奇跡も嘘にはならない!ザビィネェェェェェ!」
結局最後にはぶつかって曖昧な距離に戻るのがこの二人なのである。
ちなみにDUST以降の新たなシリーズが発表されるのだが、この時の二人はまだ知らない。
▽▲▽▲▽▲
「エイプリルフールか・・・ま、傭兵には関係無い日かねぇ。戦闘中のブラフやらフェイントやら偽情報やらならともかく」
セントラルロビー外周部のベンチに腰掛けているのは傭兵ダイバーアリム。季節のイベントや限定ミッション等に目がないバトルジャンキーの彼女としては、嘘をついて良い日であるエイプリルフールは縁の無いモノなのだろう。本人が発した通り戦いに関係したものなら別だが。
「依頼しに来た奴に、傭兵辞めました!なんて言ったらアウトだしなぁ。やっぱりアタシに縁の無い日だわ。客以外で関係深い奴なんて・・・居るけど、ダメだな」
アリムの脳裏に浮かぶのは委員長ことイオリ。アリムの大切な友人である。
「イオリに嘘なんてつけないよ・・・」
「あら、残念です」
「残念って言われてもさぁ・・・イオリはアタシの大事な───」
言葉の途中で誰に話しているのか違和感を感じ、振り返るアリム。ベンチの後ろにはイオリその人が立っていた。笑顔で。
「大事な、なんです?」
「イオっ!?なっん、で!いつの間に!?」
「傭兵辞めました!の辺りから居ましたよ?」
イオリに関しての発言はほぼ聞かれていたらしい。たちまち赤くなり顔を手で隠すアリム。イオリに関する事はとことん弱々しくポンコツと化すのがアリムクオリティである。
「それで?大事な、の続きを聞きたいのですが」
「分かってて言ってるだろぅ・・・」
「さぁ?分からないですね」
「ウソだぁ・・・」
「エイプリルフールですから」
イタズラ成功とでも言わんばかりの笑顔を見せるイオリと相変わらず顔が真っ赤なアリム。手練れの傭兵でもここからの逆転は難しいらしい。
▲▽▲▽▲▽
「ミズキリー!大変大変!一大事だよ!」
「騒がしい・・・何だよ?」
季節問わず真夏のビーチが楽しめる孤島のフォースネスト(名称未定)。ビーチチェアに寝転ぶ日焼けした肌にアロハシャツが特徴的な青年ダイバーミズキリ。ヤシの木の下に設置したビーチチェアでのんびりしていた彼の元に、慌ただしく駆け寄ってくる少女。GBNのデータから誕生するとされる電子生命体ELダイバーの一人、シゼである。
「大変なんだよ!見てこれ!」
「あぁ?」
ミズキリと彼の愛機のデータが主になって誕生したと思われるシゼ。ミズキリと同じく日焼けした肌にキッズアロハを纏うシゼの胸は不自然な程に膨らんでいた。
「バグっちゃったのかなぁ!?バインバインだよ!」
「・・・またリンカからディストピアゼリー渡されたのか?」
「違うよ!変な物食べてこうなった訳じゃないよ!」
ミズキリのフレンドであるリット。その妹のリンカは味覚が残念なのか、ディストピア飯シリーズのゼリーを愛飲しているのだ。完全な善意でお裾分けする為、余計に質が悪い。ELダイバーにとっては複雑怪奇すぎる味覚データのディストピアゼリーでなんやかんやバグったシゼの胸が大きくなったと雑に片付けようとするミズキリ。実際は今日がエイプリルフールである事を知っている為、ネタを見抜いているだけなのだが。
「ならそのまな板に乗せたビーチボールを出すんだな」
「何で分かったの!?・・・ちょっと待って、今まな板って言った?」
「まな板だろうがよ」
何故この男は地雷原の上でタップダンスが出来るのか。
「ぬがぁぁぁぁ!いつもボンキュッボンの美女が良いとか言ってるくせにぃぃぃぃ!期待に応えてあげたんだから褒めろぉぉぉぉ!」
「痛っ!ちょっ待て乗るな!ゴフゥ!?」
チェアに寝転んでいた体勢がアダとなり、もろにシゼボディプレスを食らうミズキリ。さらに腹への追撃も綺麗に決まった。ビーチに佇むミズキリの愛機であるスペルビアジンクスもどこか呆れたような雰囲気を纏っていた。
───仲良いね・・・
本当に呆れていた。
ゼット「本編にすら出れてないんだが!?」
ウルトラさんのエイプリルフールなんてどうしろと
マガツ&ゲドー&ユアーナ「・・・」
本当に申し訳ない
2021/5/26 クロスボーンの新作発表されたので加筆
【お借りした設定】
「イオリ」出典 青いカンテラ 様
「ディストピア飯シリーズ」出典 アルキメです。様