GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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立体化待ってる


セシアとアンノウン

「謎のエネミー?」

「ええ、ちょっとした話題らしいわよ?」

「・・・」

 

GBN内セントラルエリアのカフェテリア。その一席に腰掛け会話に興じる二人のダイバー。その容姿と服装は差違があれど非常によく似通っていた。

 

「ふえぇ、どんなミッションなんでしょう」

 

不安六割、期待四割といった具合の少女はセシーア・リア。セシア・アウェアなりきりフォースSAAのリーダーである。

 

「私も詳細は知らないわ。でも面白そうじゃない?」

 

一方で期待六割、セシーア怖がらせて反応見たい四割でこの話をしたのはシーア・ヴァン。最近はノインとも名乗り始めた吸血鬼風のセシアといった女性ダイバーでありSAAのメンバーでもある。

 

「うーん・・・興味はありますけど・・・そもそもそれってミッションなんですか?」

「一応公式のミッションらしいわ。特定の条件をクリアするとシークレットに挑みますか?って出るタイプの」

「あぁそういう・・・私シークレットとかやった事無いんですよねぇ。憧れるなぁ一回で隠し要素をズバッとクリアしちゃうの」

「・・・うぅ」

 

自分が知り得る情報をセシーアに教えるヴァン。セシーアの脳裏に浮かんでいるのはいったいどんなチャンプなのだろうか。そんなセシーアを見て若干の邪な感情を含んだ微笑を浮かべるヴァンだったが、自身の隣から聞こえた唸り声で現実に引き戻される。このテーブルについているのはセシーアとヴァンだけではないのだ。

 

「・・・で?そろそろ解けた?」

「いえ全く」

「自信満々に言い切る事じゃないのよ」

「アハハ・・・」

 

セシア・ノースト。ヴァンもダイバールックの基にしているセシア・アウェア・ノーノに、セシア・アウェア・セストを足して割ったような姿の少女ダイバー。SAAの中でも指折りのビルダーであり、ヴァンもセシーアもよく一緒にGBNをプレイする仲なのだが、致命的なまでに頭が悪いのである。ビルダー側に振り切っているのか学校の課題に全くついていけていないらしく、時折こうやってGBNに来てまで自習していたりする。普段気弱ながらも優しいセシーアでさえ乾いた笑いしか出ない。

 

「ハァ・・・これはさっきの式をそのまま使えば良いのよ。問題文と数の多さに惑わされず、自分の知ってる解き方を試してれば解けるから」

「解答方法ローラー作戦ですか・・・ヴァンさんも意外と脳筋ですよね」

「理屈攻めが苦手ならそうやって数こなして体に叩き込むしか無いのよ。その内嫌でも覚えるから」

 

妙に説得力のあるヴァンの発言。似たような状況になったことがあるのか、それとも同じように教えた経験があるのか。と、ヴァンの言葉に反応するように、セシーア以上に控えめなノーストが珍しくバッと手を上げる。

 

「ヴァン先生!」

「はいはい、なにかしら?」

「さっきの式ってどれですか・・・!」

 

ゴンッ!という鈍い音がカフェテリアに響く。ヴァンの額がテーブルについた音である。それもそこそこの勢いで。

 

「ピッ」

「うわわ!?だ、大丈夫ですかヴァンさん!」

 

額からダメージエフェクトを発生させながら復帰するヴァン。突然の奇行に怯えるノーストとセシーアに大丈夫、と伝えながら深呼吸する。

 

「オーケーオーケー・・・想定内よ切り替えて行きましょう」

 

赤みの残る額を擦りながらキリッとした表情になるヴァン。切り替えられたようには見えないが。

 

「あんまり根を詰めても良い事無いし、その問題解き終わったら例のミッション探しに行きましょ」

「休憩は賛成ですけど、私達三人でですか?編成キツい気がするんですが・・・」

「お、同じく・・・」

 

ネブラブリッツをエクセリアベースで再現したようなネブラエクセリアのヴァン。エクリプスフェースのパーツを装備した射撃特化型エクセリアのセシーア。Hi-νガンダムの要素をアイオスフェースに組み込んだHi-エクストリームガンダムを使い、機体クオリティは高いがパイロットの技量がイマイチなノースト。セシーアの言う通り中々にユニークな編成である。

 

「特殊、射撃、ファンネル・・・確かに微妙な所だけど、私が前に出てロック集めれば二人の射撃が通りやすいでしょ?それにシークレットの方は任意みたいだから別の機会に挑戦したって良いし」

「でもぉ・・・足引っ張っちゃうかもしれないですよぉ・・・」

「わ、わたしも・・・この中で一番弱い・・・」

 

ネガティブな二人。そんなセシーアとノーストにヴァンは優しく微笑みながら言葉を掛ける。

 

「良いのよ?迷惑なんて思った事無いし。それに折角のGBNなんだからガンプラで楽しまなくちゃね?」

「ヴァンさん・・・」

「うぅ・・・」

 

(それにこんな可愛い女の子と合法的に遊べるんだもの、GBN様々よね)

 

その心の声が無ければ完璧だった。

 

 

 

「さて、まずは普通にミッション攻略ね」

「そういえばシークレットってどう出すんですか?」

「それ・・・聞いてませんでした・・・」

 

ミッションカウンターのあるエントランスまでやってきた三人のセシア。SAAを知る者からは「あぁ…あそこの…」と察した目を向けられ、知らない者は珍しそうに眺めてから自分の用事に戻る。

 

「なんでも連戦ミッションを連続で受けてたら発生したそうよ。検証勢が試してるけど一向に出てこないからガセネタじゃないかって言われてるけど」

「け、結構大変なんですね・・・連戦を連戦するって」

「ちなみにどんな、相手なんですか・・・?その、シークレットの敵って・・・」

「さぁ?」

 

「「へ?」」

 

セシーアとノーストの声が見事に重なった。

 

「発見したダイバー達も受けてないらしいから分からないわ。連戦ミッションを受けてたのもダイバーランク上げか、パーツデータ周回のためでしょうし。それに連戦でクタクタになった所に、何が起きるか分からないシークレットまで受けようとは思わないのが大多数なんじゃない?」

「えぇ・・・」

「そ、それを・・・今から・・・やってみる、と?」

「私は暇だしね。貴女達に無理強いはしないけど、一緒に居てくれたら心強いなぁって」

 

一通り語ってウィンクするヴァン。自分でも少しあざといと思うが、この二人にバトルの自信をつけてもらいたいのも本音だ。多少痛々しく強引にでもこっちのペースに引き込んで経験を積ませたい。

 

「私・・・やります!」

「あ、わ、わたしも・・・やり、ます。一緒だと・・・心強い・・・えへへ・・・」

(あぁ~可愛いなぁ・・・抱きしめたい・・・)

 

ヴァンの思惑通りにやる気を見せる二人。それはそれとしてヴァンには別の邪念があったが。

 

「じゃあ気持ちが一つになった所で、極限の連戦を始めましょうか!」

「おー!」

「は、はい!」

 

 

 

-40分後-

 

 

(さすがに、特殊機能型じゃ厳しいかな・・・)

『お疲れ様ですぅ・・・』

『あの、本当に大丈夫、ですか・・・?ほぼ一人で前衛は、キツいのでは・・・』

「大丈夫だいじょーぶ!ネブラもまだ戦えるし、言い出しっぺが弱音をはく訳にはいかないでしょう」

 

ネブラブリッツの機能や一部武装をエクセリアに移植した一種の趣味ビルドであるネブラエクセリア。本来は味方の攻撃に紛れて背後から襲撃したり、発見される前に姿を消して奇襲を掛けたりするのがベターなのだ。だが今回はステルスをほぼ使わず、率先して前に出ている為にヴァンの負担が大きい。

 

「このフェーズでラストだから頑張りましょう?援護ヨロシク」

『分かりました!全力でサポートしますね!』

『が、頑張ります・・・!』

 

ノーストが言い終わるのとほぼ同時にスタートしたファイナルフェーズ。まず現れたのはブルーディスティニー1号機とジム・ドミナンス。外伝の漫画作品ザ・ブルー・ディスティニーをイメージした組み合わせのようだが、ドミナンスが青と白のツートンのままだったりする。

 

「EXAMは使わせない!」

 

エクセリアの対艦刀「ハルプモント」をネブラブリッツのトリケロスに合わせたような複合兵装を振るい、1号機に斬りかかるヴァンのネブラエクセリア。受け止めるのは難しいと判断したのか上段から振り下ろされたそれをサイドステップで回避する1号機。だが避けた先に細いビームが走り、左肩の関節が撃ち抜かれる1号機。無機質な視線の先には大型ビームライフル「クロイツ・デス・ズューデンス」を構えたセシーアのエクリプスエクセリア。

 

『うえぇ!?今のタイミングで盾出来るの!?』

 

本人は驚いているが。1号機の回避と同時に放たれたクロイツの狙撃ビーム。低レベルのNPDなら間違いなくコックピットを貫かれていたが、この1号機のレベルはそれなりに高くファイナルフェーズということもあって通常のNPDよりはるかに強く設定されている。やや強引に機体を捻ってコックピット判定を回避し、さらには左腕のシールドを構える事もやってのけたのだ。唯一の誤算は狙撃用に貫通力を高めたクロイツのビームがシールドごと機体を貫いた事だろう。

 

「効いてるから大丈夫よ!ノースト!そっちは!」

『な、なんとか・・・なりそう、です!』

 

一方ノーストが相手をしているドミナンス。前に出てきているネブラを警戒してか、積極的に後衛に噛み付く気配は無い。これ幸いとHi-エクストリームのファンネルで徐々にドミナンスの装甲を削っていくノースト。

 

「良いわね!このまま一気に押し込むわよ!」

 

 

 

-15分後-

 

 

 

「意外と、手間取ったわね・・・」

『ごめんなさいぃ・・・私のせいでぇ・・・』

『わ、わたし、も・・・抑えきれなくて・・・』

「それを言うなら私もよ。皆ミスして皆でフォローしあったんだから良いの。少なくとも私は気にしてないから大丈夫」

 

ファイナルフェーズを戦い抜き、合計で三つの連戦ミッションをクリアした三人。ヴァンのネブラエクセリアは頭部が破損し、右目のカバーパーツが砕け、奥のカメラアイが見えてしまっている。疲れか緊張か、狙撃を外してしまったセシーアに襲い掛かる敵機を押し留め、強引にフォローした結果破損してしまったのだ。ノーストも別の敵に対応していた為、援護が間に合わなかった。

 

「にしても青尽くしだったわね。そういうテーマのミッションだったのかしら」

 

話題を変えるヴァン。彼女の言った通り最初のブルーコンビに始まり、ハンブラビ三機の編隊、モンテーロとダハックのクリム搭乗機、水辺から現れたフォビドゥンブルーとアビス。

 

『あのウィンダムには驚きましたね・・・』

『ま、まさか核装備なんて・・・』

 

挙げ句の果てには核ミサイルを装填したマルチランチャーパックのウィンダムまで登場したのだ。護衛のジェットストライカー型ごと、こちらを消し飛ばそうとするマルチランチャー型からは青き清浄なる世界のためにという幻聴が聞こえてきた程である。

 

「開発陣にブルーコスモスかロゴスの関係者でも居るのかしらね・・・というかドミナンスとウィンダムは青い機体で良いのかしら」

『アビスも人に寄りますよね』

『だ、ダハックも・・・』

「・・・これ以上は止めましょう。戦った機体は全部青いカラーリングのモビルスーツという事で」

 

誰かに聞かれれば戦争待ったなしの話題という事に気付いたヴァン。自分で振った話題だがさっさと切り上げる事にしたらしい。

 

「さーて?これで三個目のミッションだけど・・・よっしゃビンゴォ!!!」

『これが・・・』

『な、なんか・・・不気味、な画面、です・・・』

 

検証勢すら証明出来ていないシークレットミッションに辿り着いた三人。これを目的にしていたヴァンは大喜びだが、残りの二人はシークレットミッションの受注画面に不安を抱いていた。

 

【NOT BE FOUND】

【受注しますか?】

【Yes】【No】

 

絶えずノイズが走る砂嵐をバックに黒がかったピンクの文字で受注するかを問い掛けているのだ。どことなくユニコーンガンダムのNT-D発動を思わせる画面だが、ノイズがある分余計に不気味な雰囲気となっている。おまけにミッション名がNOT BE FOUND。「見当たらない」、「見付からない」という意味のミッションを「受注」するという矛盾。

 

「確かに、エラー画面って言われても違和感無いわね」

『ほ、本当に公式ミッションなんでしょうか・・・』

『ちょっと・・・怖い、ですね・・・』

 

連戦疲れもあって受注画面の雰囲気に呑まれてしまう二人。だが───

 

「ここまで来たらやってみない?無理強いはしないって言いながら掌を返すようで悪いけど」

『ヴァンさん・・・』

「SAAどころかGBNでも一番乗りかもしれないわよ?私はチャレンジしてみたい。本当に勝手なのは分かってるわ」

『わたし、も・・・わたしも、やりたいです。皆で』

 

ヴァンに触発されてか一歩踏み出したノースト。今度は画面の雰囲気に呑まれる事なくしっかりと見据えている。

 

『・・・乗っかるようですけど、私もやります!い、一応リーダーですから!たまには後輩にカッコいいとこ見せなきゃです!』

「貴女は立派にリーダーやってるわよ。自信持ちなさい?」

 

「じゃあ、行くわよ!」

『はい!・・・うぅ、ヴァンさんがリーダーっぽい』

『ふふっ・・・』

 

三人揃ってシークレットミッションの受注画面でYesを選択する。と、同時に三人の機体がデータの粒子となり消える。

 

「まさか専用フィールドとはね」

『場所も不気味ですぅ・・・』

『敵が、居ない・・・?』

 

シークレットミッションの舞台となるフィールドに転送された三人。そこは廃墟としか言い様の無い荒廃したフィールドだった。さらに地面には亀裂が入り、地層ではなく青紫のデータソースが見えている。意図的にデザインしたのでなければデータが破損したか───

 

(ブレイクデカールのバグを思い出すわね・・・)

 

『何か来ます!』

「っ!」

 

かつてGBNに振りかかったブレイクデカールの脅威。それによって発生したバグの影響で壊れていくディメンションを思い出すヴァン。セシーアの警告で意識を戻した時には「それ」は既に目に見える位置にまで降りて来ていた。

 

『スター、ゲイザー・・・?サンドロック?どっちも違う・・・』

『な、何ですかアレ・・・見たこと無い機体・・・』

「私も記憶に無いわね。注意して!」

 

空から舞い降り、着地ギリギリの位置で浮遊しているのはノーストが言った通りスターゲイザーのようにも見える特徴的なカラーリングのガンダムタイプ。そこそこ長くGBNをプレイしているヴァンも覚えが無い機体に最大限の警戒を行う三人。

 

(あのバックパックは?手持ちの武器は見当たらないけど・・・駄目だ、初見で何も分からない!)

「戦い方はさっきまでと変えず!私が斬り込むから二人は援護を!気付いた事があったら直ぐに共有して!」

『了解ですぅ!』

『わ、分かりました・・・!』

 

トリケロスのハルプモントブレードからビーム刃を展開し、斬り掛かるヴァンのネブラ。何も分からない以上考えるより動く選択をしたようだ。

 

(無反応?)

「随分と余裕ね!───っ!ウソ!?」

 

腰だめから放ったハルプモントの突き。それを触れても問題無い部分を抑え、抱え込む形で無力化したのだ。

 

(動かない!あの細身にどんなパワーあるのよ!)

 

F91ほどではないものの比較的小柄に分類できるアンノウン。両腕で抑えているとはいえ、細身からは想像出来ないパワーでトリケロスを抑え込みネブラを封じる。

 

「両手を使って、これは防げるのかしら!」

 

トリケロスと同じくネブラブリッツから移植した武装であるツムハノタチ。左腕に装着された鉤爪でアンノウンの頭部を狙う。

 

ガキィン!

 

「なっ」

 

驚愕するヴァン。回避された訳でも、何かしらの防御機能が発動した様子もない。むしろ命中したのだ。呆気なく。

 

(ハルプに反応したと思ったら今度は直撃?コイツ何がしたいの)

 

アンノウンの思考が理解出来ず困惑するヴァン。だが、腐ってもAランク。左肩に増設したアサルトシュラウドの武装であるシヴァを向けて追撃を行うが、何とこれは回避されてしまった。次の一手を考えるヴァンだが───

 

『ネブラの頭を左に!体も少し傾けて!』

 

聞こえてくる竹◯ボイス。SAAのメンバーはほぼ全員◯達ボイスなのだが。普段の弱々しい感じとは違い、凛とした声を発したのはセシーア。アンノウン以外の敵が見当たらない為、索敵と狙撃ポジションの確保を兼ねて距離を取っていたのだ。ポジショニング完了と共にクロイツを構え、ヴァンに指示を飛ばすセシーア。その指示に従いながらヴァンはニヤリと笑う。

 

(ここぞという場面の貴女は最高にカッコいいのよ)

 

そんなセシーアの意図を汲み、ネブラに首を左に傾げさせ可能な限りボディもズラしてエクリプスの射線を確保する。

 

『ッ!』

 

エクリプスエクセリアのクロイツから放たれた細いビームがアンノウンに命中した。人間でいう所の鎖骨に当たる部分だ。

 

「貫通重視のビームで傷付くだけって・・・どんな装甲してるのよ」

 

ヒットを証明する焦げ付きは出来たが、逆に言えばダメージ的にはそれだけである。貫通して風穴が空くどころか内部構造は少しも露出せず、わぁ驚いた、とばかりに衝撃でネブラを解放しただけ。

 

(一つでも切っ掛けを見付けられないと負ける!倒せるけど面倒なタイプだ!)

 

今までいくつものゲームをプレイしてきた自負があるヴァン。その経験からアンノウンを「倒せる(簡単にとは言ってない)」という類いの敵と判断。

 

(今必要なのは手数!)

「ノースト!ファンネルをありったけ!アイツの逃げ場を塞いで!」

『はっ、はい!行って・・・ファンネル!』

 

今回は近接担当のヴァン、遠距離から狙撃するセシーア、そして中距離で敵を見つつファンネルで抑えるノーストという布陣。ラックからヴァンの指示通りファンネルを全基射出するノーストのHi-エクストリーム。ファンネルの攻撃に巻き込まれないよう、一旦距離を空けてトリケロスのビームライフルから射撃し、弾幕を厚くするヴァン。次の瞬間アンノウンが奇妙な挙動を取り始める。

 

(ファンネルのビームを全回避!?・・・待って、ネブラのライフルは当たってる?)

 

最初のハルプモント突撃とシヴァの至近距離射撃、その二回と同じようにHi-エクストリームのファンネルを完璧に回避するアンノウン。だが、何故かネブラが牽制と賑やかし程度に放ったはずのビームは命中したのだ。

 

(どういう事?ファンネルに対応中だから?一つ、一回の攻撃にしか反応出来ない?攻撃した順番?でも私の攻撃は当たったり当たらなかったり・・・順番?)

 

「一回目のハルプモント」「二回目のツムハノタチ」……とヴァンの中でアンノウンに向けた攻撃が順番通りに再生されていく。

 

(コイツもしかして・・・)

「セシーア!ノースト!」

『はい!』

『どうしましたか・・・?』

 

自分の中で組上がった一つの仮説。それを二人に伝えて試すしかない。

 

「確定じゃないけど、もしかしたらの可能性があるの。手伝ってくれないかしら」

『今さら!ですよ!』

『わたしに、出来る事なら・・・!』

 

 

「まだ仮説だけど!コイツは奇数回の攻撃は超反応、超機動で回避する!逆に偶数回の攻撃はノーマークだけど装甲が超強化されてダメージが通らない!」

『そんなシステム挙動が!?』

『わ、わたしのファンネルは・・・』

「これも多分だけど、武装一つの括りで判断してる!さっきのファンネルも全部回避してたけど、ネブラのライフルは二発ヒットした!」

 

奇数回避偶数防御。それがヴァンの辿り着いた仮説。

ハルプモントを抑え込み、ツムハノタチは受け、シヴァを回避し、クロイツは直撃、ファンネルを捌きながらライフルは命中。ファンネルのビームを全て回避できたのは「ファンネルという一つの武装」としてカウントされているからではないか、ファンネルでカウントが進んで偶数となりビームライフルは命中した。というのがヴァンの考えである。

 

『じゃ、じゃあわたし達が勝つには・・・』

「奇数の攻撃を当てるしかない」

『えぇ!?あの変態回避状態にですかぁ!?』

「だから二人の協力が必要なのよ」

『『え?』』

 

 

(一手前のライフルは偶数。どれだけ連射しようが一つの武装として数えられる・・・なら!)

「牙は飛ばせるのよ!」

 

ランサーダートとビームサーベルの代わりに装備しているハルプモントの刀身。一発撃ち切りだが射出も可能なそれをアンノウンへと飛ばすネブラ。

 

「やっぱり奇数には対応してくる・・・!無駄にスタイリッシュしてくれちゃって!」

 

一度空けた距離を再び詰めながら撃ったハルプモント。モーションが分かりやすすぎる、と言わんばかりにビーム刃の無い実体部分を蹴り飛ばして無力化したアンノウン。だが───

 

『クラスター着弾します!』

 

奇数カウントのハルプモントに対応したアンノウンへの更なる一手。回避ではなく装甲の強化で受けきろうとする偶数カウントに対し、エクリプスフェースから移植されたエクリプスクラスターによる弾幕を張ったセシーア。案の定、直撃したミサイルはほぼ効果が無い。だが地面に着弾したミサイルによって粉塵が舞い上がり、爆風も加わって即席の目眩ましとなっている。

 

(同じ武装にも反応するのか・・・えーい!ままよ!)

 

ミサイルで発生した粉塵に紛れ、クロイツによる狙撃を試みるセシーア。

 

『反応された!』

 

結果は回避。どれだけ視界を奪っても奇数カウントは回避されてしまうのか。

 

「偶数なら避けないわよねぇ!」

 

霧の中に吸血鬼が踊った。

 

ミラージュコロイドステルスで機体を透明化し、粉塵に紛れてアンノウンの背後に回っていたのだ。スラスターで移動すると熱源から場所が把握されてしまうので本来は悪手なのだが、仮説が確証になったのに加え、アドレナリン全開のヴァンの気分である。アンノウンを羽交い締めにするネブラ。攻撃として余計なカウントをされたくない為、ツムハノタチは使用していない。

 

「今よ!撃ってセシーアぁ!!!」

『最大出力!』

 

エクリプスクラスターの反対側、右のユニットに装備されている殲滅兵装「カルネージストライカー」を最大出力で放とうとするセシーア。偶数の防御状態で組み付いて動きを封じ、装甲強化が解除される奇数時に高火力を叩き込む。脳筋解決だが、もはや綺麗に戦う余裕など無い。

 

「ぐうっ!・・・コイツ!がっ!?」

 

カルネージストライカーのバレル展開を確認した瞬間、アンノウンがネブラを振りほどこうと暴れだす。エルボーや後頭部でのヘッドバットでネブラにダメージを与えるが、ここまで来たら意地でも離すものかと食らい付くヴァン。そして───

 

アンノウンが光に呑まれた。それに一拍遅れて極大のビームから一機のガンプラが飛び出してくる。

 

『ヴァン、さん・・・!よかった・・・』

「ゴメンねノースト。ファンネル全部ダメにしちゃった」

 

即席スモークの中を移動していたのはステルス状態のネブラだけではなかった。Hi-νのフィンファンネルを組み込まれたアリスファンネルには、ファンネルバリアとしての機能も存在する。ネブラの周囲で待機していたファンネルにバリアを張ってもらい、ビームに巻き込まれる直前に何とか離脱できたのだ。その代わりファンネルは全基オーバーロードし、ネブラも完全に無傷ではない。

 

「けどこれでダメージは通ったでしょう」

『はい・・・終わり、ですよね?』

 

『えっ・・・嘘・・・』

 

カルネージストライカーからのビーム照射を終えたセシーアが驚愕の声を漏らす。まだアンノウンが立っていたのだ。ネブラよりも損傷が酷く左上半身は溶解し、特徴的な形のバックパックも脱落。それ以外の箇所も所々フレームが露出する等大ダメージを受けているのが一目瞭然である。が、撃破には至らず。溶けたフェイスパーツから不気味にカメラアイの光を発し、自身をこんな姿にしたセシーアのエクセリアにまだ使える右腕を伸ばす。

 

『ヒッ・・・』

 

まさにゾンビ。異質で異様。その様にセシーアは怯み、恐怖してしまう。

 

「させない!」

 

右腕のトリケロスは離脱の際に盾として使った為、損傷が激しくハルプモントも予備は無い。左腕に残っているツムハノタチを展開し、アンノウンにトドメを刺そうとするヴァンだが、突如としてアンノウンが動き出す。

 

「ちょっ、逃げる気!?」

 

体を正面に向けたままバックブーストで後退を始めたのだ。それもかなりのスピードで。ここまで来て逃がす訳にはいかないと、唯一残った射撃武装のシヴァから実体弾を放つ。電磁加速で放たれた弾丸はアンノウンの右腕に直撃し、肘から先をもぎ取ったがそんな事はお構い無しと後退を続けるアンノウン。

 

「ノースト!!!」

『へっ?・・・あっ、うぅ・・・』

 

萎縮してしまったセシーアではなくノーストに追撃を促すも、経験の差か即座に武器を使用できなかったらしい。ヴァンもシヴァの残弾を残らず発射するが命中しない。そして───

 

【C0ИT1NU3……】

 

「消え、た・・・?」

 

謎のメッセージを三人の機体に残し、粒子となって消えるアンノウン。最後まで戦意が萎えなかったヴァンも状況が飲み込めず、困惑している。

 

【Battle Ended】

 

無機質なシステムメッセージが遅れて届き、戦いは終わった。【勝利】も【敗北】も告げず唐突に。

 

【戦いだけが】終わった

 

 

 

 

「あぁー!!!釈然としない!消化不良極まってる!こんなに後味悪い戦い、いつぶりかしら!」

「ヴァンさん落ち着いて・・・ここロビーですよ・・・みんな見てますってぇ・・・」

「はうぅ・・・」

 

セントラルディメンションのロビーに戻ってきた三人。結局倒す事が出来ず、正体も明かされなかったアンノウンにキレ散らかしているヴァンと周囲の視線を気にして縮こまるセシーアとノースト。

 

「貴女達も悔しいでしょ!あのゾンビ!色だけサンドロック!なんちゃってスタゲ!意味不明バックパック野郎ぉぉぉぉぉ!!!」

「ヴァンさんってばぁ・・・」

「ひぃうぅぅぅ・・・」

 

一通り罵倒し終わり、若干冷静さが戻って来たのか周囲の視線に気付き、わざとらしく大きな咳払いをするヴァン。そのまま二人の腕を引っ張り移動を開始する。

 

「うわわ!?ヴァンさんどうしたんですか!?」

「ちょっと・・・待って・・・!早いぃ・・・」

「祝勝会よ!祝勝会!カフェテリアでやるわよ!アイツは逃げたんだから私達の勝ち!」

 

照れ隠しとアンノウンへの怒りでカフェテリアへ突撃していくヴァン。

 

 

「はい到着!注文!」

「えぇ・・・じゃ、じゃあエクリプスティーで」

「ひぃ・・・ふぅ・・・わ、わたし、は・・・エクセリア、ネクターで・・・お願いします・・・」

 

強引なヴァンに困惑しつつ、現実のG-Cafeでも販売されているエクストリームガンダムドリンクシリーズの一つであるtype-レオス風エクリプスティーを注文するセシーア。急に腕を引かれて走る事になり、ミッション終わりという事も相まって息も絶え絶えなノーストはエクセリア風ピーチネクターを注文する。

 

「はい!私達の勝利に!乾杯!」

「か、乾杯ー・・・」

「乾杯・・・です・・・」

 

もうヤケクソなヴァンはtype-レオス風ゼノンスカッシュを注文し、乾杯でグラスを合わせた後すぐにイッキ飲みしてしまう。

 

「あぁ・・・うっぷ」

「一回で飲んじゃった・・・大丈夫ですか?」

「こういう時は炭酸イッキでもしないとやってられないのよ・・・」

 

駄目な酒の飲み方をしたように項垂れるヴァン。絵面と発言が完全に残業終わりのOLである。セシーアはティーカップに注がれたエクリプスティーを上品に飲み、ノーストはコップのエクセリアネクターをストローでチビチビ飲んでいる。

 

「あの機体、結局なんだったんですかね?」

「私も知りたいわよ・・・あんなの見たことないし」

「わたしも・・・知らない・・・です、ね」

「パーツデータが手に入った訳でもなさそうだし・・・一部のやり込み勢向けチャレンジミッションだったのかしら」

「あーーー!!!」

 

ティーカップを持ったまま大声をあげて立ち上がるセシーア。ノーストどころかヴァンも驚き、そしてカフェテリアに居る他のダイバー達も何事かと視線を向ける。

 

「ちょ、ちょっとどうしたのよ・・・急に大声出して」

「ビックリしましたぁ・・・」

「ごめんなさい、でも!ビルドコインの所見てください!」

「所持金?何で───はあっ!?」

「うそ・・・なんで・・・?」

 

今度はヴァンが声をあげ、ノーストも目を丸くしてフリーズする。明らかに所持金、ビルドコインが増えているのだ。それも大量に。

 

「うっそ・・・マジで?」

 

エヴィン。ではなくマジである。原因は一つしか思い浮かばない三人。

 

「あの謎エネミー・・・ですよね」

「そうとしか考えられないわ。アレと戦う前の連戦ミッションでもこんなには稼げない」

「は、初めて見ました・・・こんな所持金画面・・・」

「まさかの金策系?だったんでしょうか?」

「・・・」

「ヴァンさん?」

 

「細かい事はこの際置いときましょう!フォースの皆には後で報告すれば良いわ!」

 

振 り 切 れ た

発生条件から正体、戦闘システムまで謎なNPD(?)の事はもういいや!とばかりにハイテンションなヴァン。考えるのをやめた、状態とも言う。

 

「さすがのヴァンさんでも疲れちゃったみたいですね」

「みたい、です・・・」

「もうね!キャパ超えてヘヴン状態よ!迷惑にならない程度に騒ぐわよ!」

 

ゼノンスカッシュを追加注文し、某団長のようにドンドン行くぞー!状態となったヴァン。酒じゃないだけマシだろうか。同じように疲れているはずの二人はというと

 

「なんか・・・なんだろう・・・なんて言えば良いのか分かりませんけど、楽しかったですね」

「ふぇ?」

「連戦は疲れたし、謎エネミーも怖かったけど三人でいっぱい戦って、GBNしてるなぁって気持ちになれました!ノーストちゃんはどうでした?・・・もう嫌、だったりしますか・・・?」

「わ、わたし、は・・・」

 

不安げに問い掛けるセシーア。ノーストの心の内は。

 

守って守られて、ミスしてフォローして、強敵に立ち向かって何とか連携出来て。そして勝てた・・・かは微妙な所だけど、大量のビルドコインを獲得出来て───

 

「わたし、も・・・楽しかった、です!」

「っ!良かった!これからも一緒に遊びましょうね!」

「はい!」

 

満面の笑みを見せるノースト。それを見たセシーアもまた笑顔になった。SAAメンバー同士の絆がまた一つ深まった瞬間だった。

 

(あぁ~二人とも可愛い~茶々入れずに見守ってて良かった~抱き締めたい・・・)

 

邪な吸血鬼もその場に居るのだが。




アンノウンの正体とは……


【シーア・ヴァン=ノイン】
GBNのセシア闇鍋フォースSAAことセシア・アウェア・アクターズに所属するダイバー。ノインは名乗っているだけであり、正式なダイバーネームはシーア・ヴァン。
妖艶な吸血鬼のお姉さん……という軽いロールプレイを楽しむエンジョイ勢だが、そのダイバーランクはAでありSAAの中でもそれなりに強い部類のダイバーである。

可愛らしい顔なら男女どっちもイケる両刀。普段の気弱な感じと土壇場で見せる凛とした雰囲気のギャップが堪らないとしてセシーアの事が好き。

乗機はネブラブリッツの一部装備や機能をエクセリアに移植・再現したネブラエクセリア。

プレイ歴はそれなりに長く、ブレイクデカールについても知っているらしいが……?

【ネブラエクセリア】
ネブラブリッツをエクセリアで再現した趣味ビルド機。カラーリングはエクセリアのピンクにネブラブリッツの赤を組み合わせた、血のような色合い。

トリケロスのランサーダートとビームサーベルの代わりにエクセリアの対艦刀ハルプモントを備えた複合兵装が主力。勿論ミラージュコロイドステルスも発動可能であり、本来は奇襲・闇討ちを得意とする特殊機。なのだが今回は編成上、前衛を担当した。


【セシア・ノースト】(守次 奏 様考案)
SAAのメンバーの一人。
普段オドオドしているセシーア以上に弱気で内向的な性格。友達が少なく、やや承認欲求を拗らせており、セシアのダイバールックありきだとしても自分を必要としてくれたSAAのメンバーにはかなり懐いている。

ビルダーとしてはSAAトップクラスであり、乗機のHi-エクストリームガンダムもかなりのクオリティを誇る。のだが、ファイターとしてはイマイチな腕前な為、中々バトルで活躍出来ないのがコンプレックス。ダイバーランクはC。

【Hi-エクストリームガンダム】(守次 奏 様考案)
ノーストの愛機。
エクストリームガンダムtype-レオス アイオス・フェースにHi-νガンダムの要素を組み込んだファンネル進化の更なる極限。サイコ・フレームの共振等も可能らしいが今回はファンネルによる援護をメインに戦った。


【アンノウン】
三人が戦う事になったシークレットエネミー。
特徴的なバックパックを背負ったスターゲイザーのようにも見える謎のガンダムタイプ。やや小柄ながらパワーは高い。機体の配色はサンドロックやアトラスに近い。

手持ちの武装は何も所持しておらず徒手空拳で戦う。と言うより、相手に対応して回避するしかしない。
ヴァン達が戦った時は「奇数回の攻撃は回避行動を取り」「偶数回の攻撃は受けるが装甲が超強化される」というシステムが適用されていた。

その正体は
ガンダム・──────
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