GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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極限から髑髏へ


クロスボーンとアンノウン

「アンノウン、か」

「ああ、不明瞭な条件と変わったシステムスキルを持つ強敵だとか」

「・・・」

 

とある一室にてテーブルを囲む三人のダイバー。両目に眼帯を着けた男、顔の右半分ほどをマスクで覆い隠した女性、終始無言の女性。中々に異様な光景だがGBNでは割とよく見る光景だったりもする。両目眼帯はさすがにどうかと大多数の人間が思うだろうが。

 

「ふむ、変わったシステムというのは?」

「珍しく食い付いたね?システムに関してはGBNに多数存在するミッションでもほぼ見ないモノらしい。なんでも奇数回の攻撃は回避し、偶数回の攻撃は装甲を異常なまでに強化して凌ぐとか」

「確かに聞いた事は無いな。人数や武装構成によっては相対した時点で詰みだ」

 

話の内容はつい最近発見されたシークレットミッションと、それに登場する特殊な敵NPDについてだった。両目眼帯の男───THE Bi-neは長くGBNをプレイしている古参のダイバーでもあり、自身が経験してきた中ではそんな敵と戦った事が無いと断言する。

 

「本当に公式のミッションか?」

「唯一それと戦ったらしいダイバーの証言が正しければね。そのバトルに関しては本人以外ログが閲覧できないらしい」

「随分と徹底しているな。或いは偽情報か」

「検証が進まない事には何とも言えないね」

 

THE Bi-neの疑問に答えているのはマスクの女性ことジェーン・ケドゥ。色々と振り切っているTHE Bi-neとよく行動を共にしたり、バトルで腕を競っている珍しいダイバーである。

 

「それで?私達でそれを確かめようと?」

「そういう事だね。可能な限り同じ状況にする為に人数も合わせて行くつもりさ」

「数合わせの結果がその傭兵か」

「ああ、紹介するよ。ユアーナだ」

 

「お初にお目にかかりますTHE Bi-ne様。傭兵ダイバーとして活動しております、ユアーナと申します」

 

席から立ち上がり、自己紹介から深いお辞儀をしたのはユアーナ。ジェーンの紹介まで無言だった最後の一人である。

 

「まぁ見掛けた事はあるが。その評判も聞いてはいる」

「光栄でございます」

 

(褒めてはいないんだが・・・)

 

傭兵稼業を営むユアーナ。だが、とある理由から彼女のリピーターは少ない。一部の物好きか、同じ傭兵ダイバーから相性補完の為に呼ばれるくらいである。THE Bi-neが聞いたという評判もユアーナの「とある理由」に直結しているものだ。

 

「何であれ役に立つのなら誰であろうと構わん。それより気になるのはその服装なのだが?いつもはギャラルホルンの軍服ではなかったか?」

「君の口からクロスボーン以外の固有名詞が出ると新鮮だね。今回協力してもらうにあたって雰囲気を出すために着てもらったのさ」

「ジェーン様のオーダーでクロスボーン・バンガードのノーマルスーツを着用しております。他にご希望がありましたら変更も可能でございます」

 

ロビーの片隅に立ち、依頼者を待っているユアーナ。その普段着は鉄血のオルフェンズに登場する組織ギャラルホルンの制服なのだが、今回はクロスボーン・バンガードのノーマルスーツとなっている。

 

「そのままで良い。特に要望は無いのでな」

「かしこまりました」

 

(全て他人の命令通りか・・・ジェーンはこの歪さを知ってて依頼したのか?)

 

服に隠れて見えないがユアーナのダイバールックは球体関節人形に近く、本人の服従姿勢も相まって「人形」としか形容できないのだ。事前に仕入れていた情報と、いざ目の前にした感想を統合して「歪」という評価をつけるTHE Bi-ne。クロスボーンにしか興味の向かない男と思われがちだが、良くも悪くも有名なダイバーや話題になったフォースの情報はそれなりに仕入れているのだ。

 

(まぁ今回は腕の良いダイバーが必要だし、今さら別の誰かを探すのも手間だしな)

 

そもそもジェーンとマギー以外の知り合いが居るのか?と聞いてはいけない。いや、居るには居るが。

 

「じゃあ自己紹介も終わった所で本題に戻ろうか」

「知りたいのは発生条件とアンノウンの武装だな」

「100%確実という訳ではないけど、発生条件は恐らく連戦系ミッションの連続クリアだね」

「いきなりハードな条件だな・・・」

 

ジェーンが集めた情報で共通しているのは、「連戦形式のミッションを連続してクリアした」というもの。恐らく初めて発見したダイバー達も、現状唯一アンノウンと戦闘を行ったフォースSAAのメンバーも「連戦ミッションを三つクリアした」後に受注画面がポップしたらしい。

 

「よほど体力と精神に自信があるか、どうしても早急にダイバーランクを上げたいか。そういったダイバーにしか発見できないミッションのようだね」

「そして最初からシークレットを目的にしていない限り条件を満たしても受ける気にはならないと」

「だね」

「ふむ・・・だがそれだけならもっと多くの情報が出回っていそうなモノだが?」

 

連続してミッションを受けるだけならより多くのダイバーが知っているはずと考えるTHE Bi-ne。ジェーンもそれを見越して推論を話す。

 

「これも未確定だけど、ランクが関わっているんじゃないかな」

「ダイバーランクが?」

「ああ、最初に発見したダイバー達はそれぞれランクがC、D、Eだったらしい。SAAのメンバー達のランクもAからCまでの階段になっていた。つまり」

「ダイバーランクが一つずつズレている事が条件?」

 

ジェーンの情報をまとめ、言いたい事にたどり着いたTHE Bi-ne。そして自分達のランクにも気付く。

 

「私はSでお前はAだったか」

「覚えていてくれて嬉しいよ。ちなみにユアーナはBだ」

「だろうな。最初からそれが目的でその傭兵に依頼したのだろう」

 

何処に合わせているのか分からない視線をユアーナに向けるTHE Bi-ne。一応ジェーンも腕が立つ事と依頼料金が格安である事、さらに言えば直ぐにでも依頼出来るフリーの傭兵である事も加味してユアーナに依頼したのだが。そしてさりげなく覚えていてくれて嬉しいのジョークを完全にスルーしているTHE Bi-ne。まぁ分かってはいたがね、とジェーンも気にしていないが。

 

「Eランクでも受注出来るという事は、高ランク低ランク関係無しか」

「アンノウンの話にもなるけど、ランクによって強さが変わったりするかもしれないね。さっき君が言った通り戦うダイバーによっては即座に詰みかねない」

 

いきなりEランクのビギナーに奇数偶数を見極めて最適な攻撃をしろ、と言うのはかなり酷な話だろう。よっぽどVR適性のあるゲーマーかGPDをやり込んでいた移行勢等でなければ勝利どころか傷一つ付ける事なく終わってしまう。

 

「SAAのダイバーが戦った時は武装を所持していなかったらしい。これもランクによる変動なのか、はたまたモビルファイターのように徒手空拳が基本なのかは分からないけど」

「やはり情報が少ないな・・・どう思う?」

 

やはり信用しきれていない部分があるのか、試す意味合いも含めて不意打ち気味にユアーナへと話題を振るTHE Bi-ne。

 

「THE Bi-ne様の仰る通り不明な点が多すぎるかと。しかし一度撃退されているのも事実。システム上倒せない敵ではない、という証明にはなると考えます」

 

(まぁ・・・模範解答だよな)

 

「今回は後続の為の情報集めの方が目的だからね、とにかく一度チャレンジしてみよう」

「・・・良いだろう」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

セントラルロビーのミッションカウンターにて、ミッションを受注する三人組。THE Bi-neとジェーンだけならいつもの事かと皆考えるのだが、今回は人形傭兵ことユアーナも一緒なのだ。いつも以上に目立つ。

 

「ふふっ、注目の的だね?」

「本当に喜んでいるのならお前の正気を疑うがな」

「・・・」

 

適当に見繕った連戦形式のミッションを受注し、格納庫へと移動する三人。もはや見慣れたX2とX1の改造機の横に今回はもう一機存在している。

 

「X3だと?」

「私達に合わせてオーダーしたのさ」

「・・・ふん、足を引っ張らなければなんでも良い」

 

そう言ってさっさと愛機であるEX2改のコックピットへと移動してしまうTHE Bi-ne。それを見たジェーンは苦笑しながらユアーナへと話し掛ける。

 

「すまないね、アレでも一応喜んでいるんだ。X1からX3まで揃って出撃なんて、彼にはそうそう来ない場面だからね」

「いえ、お気遣いありがとうございます」

『戯れ言はそこまでにしてさっさと出るぞ。それと妙な虚言を他人に吹き込むな』

「はいはい・・・素直じゃないなまったく」

 

わざとらしく、やれやれのポーズを取りながら自機に搭乗するジェーン。それを追うようにユアーナもX3への搭乗を完了させる。

 

 

「EX2、THE Bi-ne行くぞ!」

「クロスボーン・ガンダムX-1!ジェーン、出る!」

「ユアーナ、X3出撃します」

 

髑髏の海賊旗を掲げ、三機のクロスボーンが飛び立つ。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

『まずは軽くウォーミングアップから始めよう』

「あのミッション内容でウォーミングアップと言い張る気か?」

『そこまで難しくはないだろう?』

 

(本気で言っている分余計に質が悪い・・・)

 

ジェーンとしては自分達のランクに合ったミッションを選んだつもりなのだが、検証の予定だったTHE Bi-neとしては最初から飛ばしすぎではと思う難易度のミッションだった。

 

『敵機確認、警戒を』

『始まるね』

「・・・まぁいい、簡単に墜とされるなよ」

 

先行していたユアーナから警告が飛ぶ。僅かに遅れてTHE Bi-neとジェーンの機体でも反応を確認できたそれは人型とは言えない四足の機体だった。

 

『ラゴゥは任せるよ、後ろのバクゥはこっちで抑える』

 

ジェーンが発した通り、三人に向かって地上を疾走しながら迫り来るのはラゴゥを指揮官機としたバクゥの部隊。ジェーンが受注したのは機動戦士ガンダムSEEDの登場人物、砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドとの連戦ミッションだった。

 

「好きにしろ。こちらはこちらで戦うまでだ」

 

ザンバスターからビームを連射しながらラゴゥに接近するTHE Bi-neのEX2改。黙って近寄らせるつもりはない、とばかりにラゴゥもビーム砲で応戦するが、致命傷どころかビームによるダメージを軽減するABCマントに当てる事すら出来ない。

 

「その機動性は厄介だが、私の敵ではない!」

 

ラゴゥの真上を取り急速接近するTHE Bi-neのEX2改。ザンバスターに加えて、ショットランサーに内蔵されたヘビーマシンガン、頭部バルカン砲、マウント状態のビームサーベルをビームガンとして使用し、まとめて発砲。さながらシロー・アマダが見せた倍返しの要領でラゴゥの逃げ場を奪っていく。

 

「ほう?」

 

だがラゴゥもやられっぱなしではない。前足を蹴り上げて機体を起こし、無理矢理ビーム砲の射角を確保する。マシンガンやバルカンに被弾し、逃げ場も無くなったラゴゥは迎撃を選択したのだが、マントを纏ったクロスボーンガンダムにビーム兵器による迎撃は悪手だった。しかも足を止めての反撃なら尚更である。

 

「もらったぞ!」

 

二連射されたビーム砲をABCマントで防ぎ、右腕に装着したショットランサーを引いて構えていたEX2改。次の瞬間、そのショットランサーが投擲された。穂先の射出とかではなく、本体まるごと投げたのである。

 

「罪を償え!」

 

ラゴゥに何の罪があると言うのか。後脚の無限軌道を駆動させ、ショットランサーから逃れようとしたラゴゥだが、さすがに回避しきれず背部のスラスター右翼とビームキャノンの右砲身を抉り取られてしまう。さらに無理な姿勢での迎撃も祟り、EX2改に腹を見せる形で転倒してしまった。立て直そうともがくも、そんな隙を見逃す眼帯貴族ではなく。

 

「終わりだ!」

 

無防備な腹部に突き刺さるビームサーベルとビームザンバー。ラゴゥの腹を文字通り切り開いて離脱し、離れた位置に着地する。

 

『指揮官用といえど、1on1では君の相手は厳しかったかな?』

『お見事です』

「この程度ではな」

 

THE Bi-neがラゴゥを撃墜したのとほぼ同時にバクゥ小隊の殲滅を終えたジェーンとユアーナ。EX2改の近くに降り立ったX-1とX3にも目立った損傷は見当たらない。右手に持たせたビームサーベルを胸部のラックに戻し、地面に突き刺さっているショットランサーを装着し直すEX2改。次の戦いへの準備は即座に完了した。

 

『おや、もう飛行型が出てくるのか』

「バルトフェルドの搭乗機で括ればそうなるだろう」

 

休む間も無く始まるセカンドウェーブ。今度は専用カラーのムラサメに搭乗し、通常カラーのムラサメ小隊を率いたDestiny時代のバルトフェルド戦となるらしい。

 

「蹴散らすぞ。続け!」

『了解しました』

『なんだかんだ乗り気な所、嫌いじゃないよ』

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

『敵機の全滅を確認。お疲れ様でした』

『本来の目的じゃないけど、良い稼ぎになったね』

「まぁ、こんな物か」

 

バルトフェルド戦に勝利し、続けて別の連戦ミッションを二つ終えた三人。連戦を連続して行ったにも関わらず、各々の機体に目立った損傷は無い。比較的オールラウンドに戦えるクロスボーンガンダムである事と、三人の実力もあっての結果だろう。

 

『これで三つ連続クリアだけど・・・これか』

『見慣れない表示ですね』

「随分と大袈裟な演出だな」

 

それぞれのコンソールに浮かぶ新たなミッション。SAAの面々も不気味と表現した、ノイズの混じったミッション画面【NOT BE FOUND】である。

 

『存在しない、か。いかにもシークレットミッションだね』

「ジェーンの仮説が正解か、正解に限りなく近いかになったわけだ」

『参加ダイバーのランクが順番になっている、三人でスタートして脱落者・離脱者・途中参加無し、最低3ウェーブの連戦ミッションを三連続でクリア、これらを満たした場合に発生するという事でしょうか』

『まとめてくれてありがとう』

「あとは機体のシリーズを合わせている、も含まれる可能性があるがな。我々はクロスボーン、SAAのダイバー達はエクストリームだったのだろう?」

『そこは本職の検証勢に任せよう。八割近く正解に寄せたのだしね』

 

で、どうする?と問い掛けるジェーン。このシークレットミッションを受けるか否か聞いているのだろうが、それなりに付き合いの長いTHE Bi-neは分かっていた。これは質問の皮を被ったゴーサインであると。この女、最初から受ける気満々であると。THE Bi-ne本人としても未知のミッションは楽しみなのでツッコミはしないが。あとはユアーナだが───

 

『お二人の意思に従います』

 

想定通りの答えである。このような無機質ながらも完全な服従姿勢が気味悪がられてリピーターが増えないのだろうが、ユアーナは「こういう風に接して」と指定されない限りこのままだろう。THE Bi-neとしても望まれた訳でもないのに人格の矯正なんて真っ平である。

それはそれとして、シークレット攻略に乗り出す流れとなり、三人とも受注画面の【YES】をタップする。瞬時に三機のクロスボーンがデータの奔流となって転送されていく。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

『ふむ・・・専用のステージかな』

『記憶に無い戦場です』

「悪趣味なデザインだな」

『君が言うか・・・』

 

───……!

 

悪趣味というか奇抜というか、両目に眼帯を装着した男の言葉にジェーンがツッコミを入れた瞬間、弛緩した空気を無視して現れたそれを三機のレーダーが捉えた。崩壊した建造物を背にし、天から舞い降りる機体。間違いなくSAAの面々が激闘を繰り広げたアンノウンである。

 

「・・・そこ!」

 

荘厳かつどこか神秘的な雰囲気を切り裂く閃光。登場演出など知った事か、とザンバスターからビームを撃ち出したのはTHE Bi-neのEX2改。さらに続くように連続してビームが迸る。ユアーナのX3がムラマサブラスターから放っているようだ。

 

『さすが君達だよ・・・』

 

演出にヒントが隠されているタイプかも、と観察モードだったジェーンも宇宙戦闘貴族と破壊人形に続いてザンバスターによる攻撃を開始する。苦笑を隠しきれていない表情で。

 

────!

 

「あれは?」

『ビームライフルのようです。警戒を』

『SAAの時とはパターンが違うか!』

 

クロスボーン三機による弾幕を抜け、フィールドを飛びながら右腕を虚空にかざすアンノウン。データの粒子が集束していき、数秒と経たない内に右腕に武装を保持していた。ユアーナの発言通り、アンノウンが形成したのはビームライフル。初代やファーストと呼ばれる、アムロ・レイが搭乗した白いガンダムが装備していたタイプのようだ。特徴的なSEと共にビームが放たれ、二発三発と連射されるそれを避けて移動するTHE Bi-ne達。

 

────!

 

「バズーカか!」

 

ライフルだけでは仕留められないと判断したのか、今度は左手に粒子を集束させるアンノウン。次に現れたのはビームライフルと同じくガンダムが装備していたハイパーバズーカ。ビームを無効化・軽減するABCマント対策でもあるだろう。

 

『彼ばかり見すぎだよ!』

『援護します』

 

前衛を担当しているTHE Bi-neのEX2改に射撃を集中させるアンノウンだが、包囲するように左右へ散開したジェーンとユアーナからの攻撃に手を止める。

 

────!

 

『バックパック?』

「シリーズ順というわけではないか」

 

ライフルとバズーカでは単調だと気付いたのか、両手の武装を投げ捨てるアンノウン。次にデータ粒子が集まったのはアンノウンの背中部分。構築されたのは初代ガンダムから年月も世界観も掛け離れたバックパックであるランチャーストライカー。コネクタの規格等を完全に無視した荒業を見せ、左手でアグニを保持し高出力のビームを吐き出す。狙った先は───

 

『ユアーナ!狙われているぞ!』

『このままこちらで引き付けます』

 

ユアーナのX3。さらに原作設定を無視し、アグニからビームの塊を連続して撃ち出して青いクロスボーンを狙い続ける。回避行動を取りながらザンバスターを腰にマウントし、X3の左手をフリーにするユアーナ。本人が発した通り囮になるつもりなのだろう。左手を空けたのはIフィールドハンドによる防御を狙っての行動か。

 

『・・・ッ!』

「ふっ!」

『無茶をするっ!』

 

本体のエネルギーは無限に近いらしいが、武装側の問題としてアグニの連射速度は決して速くない。ビームを回避して急激に方向転換、さらに左手を前に突き出しながら突撃を始めたユアーナと、打ち合わせたようにタイミングを合わせ、ショットランサーを構えてアンノウンの背後を狙うTHE Bi-ne。僅かに遅れてジェーンのX-1も二人の格闘戦移行を援護し始めた。

 

『っ!下がれ!』

「チッ!」

 

不意を突いた即席コンビネーションだったが、ジェーンの警告とほぼ同時に攻撃を中止し、離脱してしまうTHE Bi-ne。ユアーナの突撃もギリギリの所で回避され、傷を負わせる事はできなかった。EX2改の攻撃を中断させた理由は、既に「後方へ飛び去って」いる。

 

『ダメージは!』

「どちらも無傷だ!手を止めるな!」

『他の機体を呼び出すとは・・・不覚でした』

 

アンノウンの背後に突如として出現したのは、ガンダム00に登場した特攻兵器ガガ。何の予備動作も無くガガを召喚し、EX2改への防壁としたのだ。急下降でガガの特攻を回避したためEX2改にダメージは無いが、近接戦闘への躊躇が生まれてしまった。

 

(さすがにクールタイムはあるだろうが、常に三機のガガを警戒しながら接近するのは面倒だ。格闘戦は難しいか)

 

やむを得ずザンバスターとヘビーマシンガンによる射撃を行うTHE Bi-ne。こんな事ならバスターランチャーを持ってくるべきだった、と考えるも後悔は先に立たないのだ。

 

『また何か出す気だ!』

 

ジェーンの言葉通り、空いている右手にデータを集めるアンノウン。止める為に火力を集中する三人。アグニの砲身を盾にする訳にもいかず、データ集束を中止して右手を防御に回す。と言ってもX3のIフィールドハンドのような特殊機能は無い為、胸部から上を庇っているだけなのだが。

 

(武装を生成する瞬間と、ガガのクールタイムが攻め時のようだ。そう簡単に倒せる相手とも思えんが)

(使い所かな)

 

「ジェーン」

『了解、隙を狙う』

「ユアーナ、ジェーンがアレを使う。アンノウンとの距離には注意しろ」

『了解しました』

 

短いやり取りで意思疎通を完了した二人。念のために特殊武装の使用をユアーナに通達してから、アンノウンの注意を引き付ける。

 

「これはどうする!」

 

ザンバスターを左腰装甲にマウントし、空いた左手でビームサーベルを抜き放つ。かと思えば抜いた勢いのままそれを投げつけ、更にマウントしたザンバスターからビームザンバーだけを引き抜き、それも投擲する。THE Bi-neが得意とする即席飛び道具コンボだ。

 

───……!

 

一投目のサーベルは横にスライドしながら回避し、後続のザンバーは右手に出現させた実弾のライフルで撃ち落とす。形状からしてグレイズの物だろうか。

 

「これは・・・」

『武装の出現スピードが速くなっているようです。警戒を』

 

最初に呼び出したファーストセットの時と今のグレイズライフルでは、データ構築のスピードが目に見えて違う事に気付く。時間経過によるものか、三人の危険レベルを上方修正したのか、どちらにせよ先程までよりも面倒な事にはなりそうだ。

 

「ジェーン!」

『あのスピードだとさすがに難しい!もう少し抑えてくれ!』

 

ムラマサブラスターをサブアームに収め、両手でザンバスターを保持しているジェーンのX-1。適度にポジションを変えながらアンノウンの隙を狙うが、アグニとガガを警戒しながら一撃を叩き込むのは至難の技らしい。

 

「チッ・・・ガガは私が吐かせる!手持ちの武器を狙え!」

『了解』

 

ジェーンが狙っている【とっておき】は分類としては実弾武装。アグニどころかライフルで弾幕を張られただけでもアウト、おじゃんになりかねない。強引に注意を引く意味も含めて再び突撃するEX2改。ユアーナのX3は援護の牽制射を送りながら、アグニとグレイズライフルの内、近い方を狙う。

 

───……

 

やれ、と命令を下すようにガガを召喚するアンノウン。改めて正面からの突撃となったTHE Bi-neが何かに気付くが、今は一旦保留しておく。先程と同じように特攻してくるガガを見据え、近くなったタイミングでEX2の下方向に伸びているスラスターを全力で噴かす。

 

「読んでいるか。だが!」

 

前宙のように回転してガガをやり過ごしたEX2。向かって来る事は予測できたらしく、両手の武装をまとめてEX2へと向けていた。が、突如アグニを光が貫く。ユアーナのX3がムラマサブラスターから放ったビームだ。

 

「遅い!」

 

大破したアグニを投げ捨て、別の武装を呼び出そうとするアンノウンだが、そんな隙を見逃す眼帯貴族ではなく。頭部バルカン、サーベル兼用ビームガン、ショットランサー内蔵ヘビーマシンガンを一斉に連射する133年式倍返しでデータ集束を中断させ、残っていたグレイズライフルも腰部前面装甲から射出したデリートウィップで引き裂く。

 

「このっ!」

 

───!?

 

一時的に丸腰となったアンノウンに対し、容赦無く追撃を行うTHE Bi-ne。穂先を回転させたショットランサーでアンノウンの胸部を狙う。直後、激しい金属音が発生した。空いた左手でショットランサーを受け止めたのだ。止めたと言っても致命傷を避けただけ。SAAと戦闘した時のような防御スキルは持っていないらしく、指の装甲が削られつつある。

 

───!!!

 

「チィッ!」

 

右腕にデータを集めるアンノウン。ユアーナに援護の隙を与える間も無く、即座に形成されたのは小型のマシンガン。色合いからしてHi-νガンダムだろうか。至近距離から放たれる弾丸を、左腕のブランドマーカーから発生させたビームシールドで防ぐTHE Bi-ne。ここまで来たら零距離の削り合いだ、と言わんばかりに形成したのは、腕部マシンガンと同じくHi-νガンダムの武装。フィン・ファンネルである。

 

先程のアグニとランチャーストライカーとは違い、ファンネルラックは出現しておらず、フィン・ファンネル6基だけを作り出したようだ。射出のシーケンスを省き、ビームを発射する攻撃形態で出現したファンネル。その銃口は全てEX2に向いていた。

 

「1対1に拘りすぎだな」

『離れろ!』

 

不敵な笑みを浮かべるTHE Bi-ne。次の瞬間ジェーンからの警告が飛んでいた。ショットランサーを手放し、ファンネルからのビームはブランドマーカーとABCマントで防いで離脱。途中でABCマントが耐久値の限界を迎えて消失したが、振り返る事なく全力で逃げる。何から逃げているのか、それは───

 

核弾頭である

 

原作でもX1とX3が使用していた核弾頭グレネード。GBNを初めとするガンダムゲーでも、広範囲を焼き払う超火力の攻撃手段として有名だ。核カテゴリの中では、比較的小さめに設定されているクロスボーンの核の攻撃範囲と与ダメージ。だが、弾頭から直撃すれば範囲は関係無い。

 

『生きているかい?』

「何とかな」

 

被弾覚悟で直線加速し、さらには奥の手であるリミッター解除も使って攻撃範囲から逃れたTHE Bi-neのEX2。射出直後に離脱を開始し、安全圏に移動していたジェーンのX-1とユアーナのX3。フレンドリーファイアは避けられたようだ。

 

『さて、これで倒せないなら全員で突撃するくらいしか無いけど』

『回避を』

 

「感情とフラグはしっかり処理してほしいものだ」

 

やったか?フラグを建てたジェーンに向けて放たれる照射ビーム。距離が距離な為、余裕を持って回避できたようだ。ビームの発射元、ほぼ原型を留めず崩壊した廃墟の中に揺らめく光があった。

 

『直撃で半壊か。随分と頑丈・・・いや、ファンネルバリア込みか』

『フィン・ファンネルは機能停止しているようです。あの武装は新しく呼び出したのでしょう』

 

健在とは言えないものの、戦闘続行可能なアンノウンが居た。どうやらギリギリでファンネルに迎撃させ、ファンネルバリアも展開して凌いだようだ。バリア分を差し引いても本体の耐久値はかなりのモノだが。

 

「ん?・・・チッ!止めるぞジェーン!」

『何?・・・アレは!』

 

別ポイントに退避していたTHE Bi-neがアンノウンの装備に気付く。ボロボロの左腕で構えていた大型ビーム兵器を投棄し、ランチャーストライカーとは異なるバックパックを展開していくアンノウン。この戦闘中に何度も発した舌打ちをまた発し、射撃武装の有効射程距離に向かって全力でブーストを噴かす。

 

アンノウンの新たなバックパックはX()()()()()()しており、()()()()()前を向こうとしていた。そう、【サテライトキャノン】である。

 

『まさかそんな物まで!』

「ガガにも注意しろ!───クッ!」

 

接近を阻む防壁として猛威を振るったガガ。だが、二人の接近に対してアンノウンが召喚したのはガガではなく。

 

『手数が多い!』

 

ミサイルと光の胞子。C.E.世界の翼下ミサイルとレギルスビットだ。ミサイルは当然実弾武装であり、ABCマントでは防げない。レギルスビットはキットの作り方やプラグインによってまちまちだが、基本的にはファンネルミサイルやGNソードビット等と同じく敵に直接ぶつかってから効力を発揮する武器として扱われる。その為、こちらもマントで防げないのだ。

 

三機という制限があるガガではなく、手数に優れた実弾武装でABCマントとIフィールドハンド対策をしながら時間を稼ぐつもりなのだ。しかも恐らくガガ召喚のクールタイムは終わっている。

 

『間に合うか!?』

「武器は抜くな!突破を最優先だ!私に続け!」

 

焦るジェーンだが、THE Bi-neがそれを諌めた。こうしろ、と言わんばかりにミサイルとビットをすり抜けながら。どれだけ奇人変人狂人でも、むしろ狂人だからこそ三桁の高みへと至った眼帯貴族の面目躍如である。

 

───!!!

 

『マイクロウェーブが!』

「止める!」

 

『お使いください』

 

受信態勢が整ったアンノウンに対し、二人はギリギリ射程内に捉えた辺り。最後の防壁としてガガを召喚するアンノウンだが、黒と白のクロスボーンの間を抜けて飛ぶ何かがあった。その何かは中央のガガに突き刺さり、爆散させる。ユアーナのX3がクァバーゼの代わりに投げたムラマサブラスターである。

 

「これで!」

『強引にでもっ!』

 

爆発で浮き上がったムラマサをキャッチするEX2。左腕のブランドマーカーでガガを貫き、片腕を犠牲にしながら自前のムラマサを引き抜くX-1。

 

「ハァッ!」

『デェヤァ!!』

 

───!?!!?

 

空の彼方が光ったのと、二機のクロスボーンがアンノウンの腕をそれぞれ斬り落としたのは同時だった。

 

「逃さん!」

 

───!!!

 

サテライトキャノンの発射を阻止されたアンノウン。最後の一手は自爆に近しい行動だった。ビームサーベルを抜き、トドメを刺そうとしたEX2と自分の間に小型の爆発物を召喚したのだ。ビームシールドで防ぐTHE Bi-neだったが、アンノウンは自傷で捻出した隙に乗じて後退を始めていた。そして───

 

【C0ИT1NU3……】

 

武装を呼び出した時とは逆に、自身を粒子に変換して消失した。謎のメッセージを三人のコックピットに残して。

 

【Battle Ended】

 

SAAの面々が戦った時と同じく、勝敗も告げずに戦闘だけが終わったのだった。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「強敵だった上に終わり方が釈然としないね」

「耐久値を一定以上削られると撤退するタイプなのだろう」

「同意いたします。あのサテライトキャノンを阻止された時点で思考パターンが切り替わったのでしょう。あのタイミングで爆破武装を滑り込ませる芸当、かなり強力なシステムアシストが掛かっていると思われます」

 

アンノウンとの激闘を終え、機体から降りた三人。今はセントラルエリアのカフェテリアで反省会と考察の真っ最中である。ちなみに各々の飲み物は眼帯貴族が紅茶、ジェーンがコーヒー、ユアーナが水である。

 

「それにしても、最後の弾幕をあっさり抜けるとはね」

「あの程度を抜けられんようでは三桁などやっていられん」

「私も後ろから見ていましたが、お見事です。THE Bi-ne様」

「ふん・・・世辞はいい」

 

「ジェーンじゃない。見た感じ、ミッション終わり?」

 

THE Bi-neの活躍に話題が逸れかけた所でジェーンに話し掛ける人物が一人。黒を基調に刺々しい装飾が特徴のセシアアバターの女性。シーア・ヴァンである。

 

「ヴァン。あぁそうだ、君から聞いたアンノウンに挑んできた所さ」

「はっ?・・・アレに!?あー、だから三人なのね」

 

アンノウンへの挑戦と聞き、一気に苦い表情となるヴァン。それもそのはず、彼女こそアンノウンと戦ったSAAメンバーの一人なのだ。口振りからするに、ジェーンのアンノウン関係の情報はヴァンが出所らしく、知人のような雰囲気もある。

 

「SAAの一人か」

「ん?君も昔会っているじゃないか。第一次の」

「あーあー、いいのよ昔の事なんて。それより倒したの?アレ」

「いや、撃破までは出来なかった。寸前で逃げられてしまったよ」

「アンタ達でも倒せないんだ・・・何かのフラグ管理が必要なのかしらね」

 

先程よりも渋い表情となるヴァン。彼女と共に戦ったセシア達も同じように撃破前に撤退されたのだ。

 

「あっ、そうだ報酬金・・・は有っても無くても良さそうよねアンタ達」

 

自分達が戦闘した後に、滅多に見ない金額のビルドコインを入手していた事を思い出すヴァン。だが、目の前の三人はビルダーとしてもファイターとしても一流のダイバー達。THE Bi-neとジェーンの二人は金欠とは無縁そうだし、ユアーナも金銭関係には無頓着に見える。

 

「そこまで多くのコインは受け取ってないけどね」

「えっ?私達の時はけっこうたんまりと・・・」

「恐らくアンノウンの戦闘タイプによって報酬も異なるのではないでしょうか」

 

ジェーンの入手金額を見て驚くヴァン。自分よりもかなり少ないのだ。その代わりに、とコンソールを開いたユアーナ。そこには多数の武装がリストアップされていた。

 

「タイプ?」

「私達が戦闘を行った時は、様々な射撃武装を召喚して機動戦を仕掛けてきました。そしてここに並んでいる武装は、何れもアンノウンが戦闘中に呼び出した武装です」

 

ガンダムのビームライフルにハイパーバズーカ。アグニにグレイズライフル。中にはシスクードのIフィールドランチャーや、メッサーグランツ等もラインナップされている。ユアーナが言った通り、どれもアンノウンが自身の武装として召喚した物だ。

 

「離脱前の爆発はシュピーゲルのボムクナイか」

「サテライトキャノン前のビームはこれだろうね。シスクードとはまたマニアックな・・・」

 

他にはオオトリストライカーや、ガガのパーツデータなど。ミサイルの元武装や機体召喚も対象になっているらしい。

 

「私達の時とは随分違うのね・・・で?これらがどうしたの?」

「この中から好きな物を二つ選んでデータとして獲得出来るようです」

「は?・・・ちょっと待ちなさい!これ結構レアな装備じゃないの!?しかも与ダメアップに増加弾倉、高速リロードのプラグイン付き!?人によっては喉から手が出るほど欲しいデータよこれ!」

 

武装のみとはいえシスクードのデータ。入手難易度の低い武装も強力なプラグインで強化済み。しかも脱着可能型。ヴァンの言う通り、ダイバーによっては多額を積んででも欲しいデータだろう。

 

「ヴァン様の時はビルドコインのみ、という事でしょうか」

「最初はそう思ってたけど。後々冷静に見てみたら防御と回避のプラグイン貰ってたわ。どっちかの選択式だったけどね」

 

戦ったアンノウンのタイプによって報酬が変化するらしい。厄介極まりないアンノウンとの戦いを乗り切れば、の話だが。

 

「こうなるともう一つタイプがありそうね・・・ありがと、良い情報が貰えたわ」

「こちらこそ」

「ヴァン様、ゴースト様に、いつでもお待ちしておりますとお伝えくださいませんか」

「シア子に?了解。インしてたら伝えとく」

 

じゃあね。と軽く手を振って別れるヴァン。その背を見送り三人に戻る。

 

「もう一つ・・・生存、射撃と来たらほぼ確定だろうね」

「まぁ、あるだろうな」

「さてと。飲み終わったら解散しようか。時間も時間だし」

 

アイスコーヒーを飲み干し席を立つジェーン。既に飲み終わっていたTHE Bi-neと、コップに一切口を付けていないユアーナも立ち上がる。

 

「じゃあまた」

「頼まなくても来るだろう貴様は」

「またのご利用をお待ちしております」

 

こうして眼帯貴族の仲間に人形傭兵を加えた、奇妙な共闘は終わったのだった。




ガガは射撃武装。いいね?

【シア・ゴースト】
ヴァンとユアーナの会話に出てきたダイバー。SAA所属の一人であり、ダイバーネームの似ているヴァンからは「シア子」の愛称で呼ばれている。
個人的にユアーナを雇った事があるらしいが……?
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