GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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新たに開いた性癖の扉を閉じる訳にはいかぬ


眼帯貴族と親戚のJD

人間誰しも想定外の事態が発生した時は、驚愕し、困惑し、動きを止めるだろう。または何とかツッコミを入れるのが精一杯なのではなかろうか。

 

「タカさ~ん、お昼はラーメンが良いな~」

「ここは僕の家であって定食屋でもラーメン屋でもないからね?」

 

そしてこれが想定外の事態に慣れすぎて普通のやり取りをするようになってしまった例である。

 

都内某所のマンションで生活している、ダイバーネームTHE Bi-neことサビネ・タカト。リアルもGBNも、友人どころか知己の人物すら両手の指で足りるコミュ障ボッチの独身貴族。彼に進んで関わろうとするのは、GBNでは重傷キンケドゥの女ことジェーンと、善自動人脈接着剤オネェさんのマギーがまず候補に挙がる。リアルでは彼の職場で先輩にあたる年配の男性と───

 

「えぇ~じゃあチャーハンでおねがいしまーす」

 

先程からタカトに昼食を要求し続けている女性である。

 

「だから・・・というか、何で中華」

「女の子にもガッツリ食べたい日はあるんだよ」

 

彼女の名はシラキ・サヨ。サビネ・タカトの親戚にあたる。現在は大学に通いながら適度に遊ぶ日々を過ごしているのだが、何を間違えたのか、こうしてタカトの部屋に転がりこんでは食事をたかってグダグダして帰っていくのだ。

 

「はいはい・・・コンビニ行ってくるよ」

「えぇー!タカさんの手作りが良いー!」

「僕が作っても市販の炒飯の素は使うんだけど」

「コンビニのとは出来が全く違うじゃん!もっと誇って良いんだよ!」

「何で僕は急に褒められているのかな」

 

美味しいからだと思うよ。

 

 

-一般貴族調理中-

 

 

「はい良い匂い。これ絶対美味しいやつ」

「それはどうも」

「もっと誇るんだよ!そこらの主婦と主夫を遥かに凌駕しているんだよ!」

「今日は特に情緒が不安定だね」

「タカさんにだけは言われたくないな」

 

 

-一般貴族&一般JD食事中-

 

 

「美味しいわー美味しすぎて苛立ちと敗北感が押し寄せてくるわー」

「何に苛立って何に敗北したのさ」

 

生活力の差じゃない?

 

「タカさんのお嫁さんは幸せだろうな~」

「僕は死ぬまでザビーネの背中を追いながら、X2と添い遂げるから」

「そんな真面目な顔でとんでもない事言わないでよ。普通に怖いんだけど」

 

クロスボーンは人生のバイブル、ザビーネ・シャルは生涯変わらない推しにして目標、好きな機体はX2およびX2改。人と視線を合わせる事が苦手なコミュ障にも関わらず、これらの【自分の好き】は譲らず諦めないのがサビネ・タカトという人間なのだ。どれだけ親戚の女子大生にドン引きされても変わらないだろうし、治そうとしても恐らく手遅れである。

 

「まぁ今さらか。女の子の入学祝いにガンダムのブルーレイとガンプラ送るような人だもんね」

 

この男、親戚の女の子ことサヨの高校合格祝いに、何をトチ狂ったのかF91のBlu-ray BOXとHG規格のダギ・イルスを送り付けたのである。しかもプレ値の限定版とフルスクラッチという、高価で気合いの入った逸品だけど違うそうじゃない。と誰もが思う品を。

 

「でもそれで興味持ってくれたし、結果オーライで」

「確かに面白いしハマったけどさ、年頃のジェーケーに送る物としてはどうなのよ?」

 

ほんそれ

 

「僕に女性への贈り物のセンスがあると思っているのかな」

「んー、無い」

「でしょ?」

「というか常識はずれの感覚ズレ。小物一つに合わせて服まるごとプレゼントとかしそう。オマケにその服も普段使いしにくいやつだったり」

「そこまで言うか・・・そんな事ない、とは言いきれないけど」

 

何処かでしてるかもね

 

「まぁでも悪い人じゃないって所がタチ悪いよね」

「タチ悪いって」

「これで迷惑プレイヤーなら救いようが無いけど、頭おかし・・・ちょっと変わってるだけでマナーは守るし」

「今頭おかしいって言いかけた?」

「知り合いが少ない分、その繋がりは大事にするし」

「ジェーンは腐れ縁なだけだよ」

「照れちゃってぇ」

 

登録されているフレンドの人数一桁、というか片手の指で足りるTHE Bi-ne。だがサヨが指摘した通り、フレンドとして登録したダイバー達との繋がりは深い。GBNのお節介オネェさんにして善自動人脈接着剤のマギー、出会ってから着々と実力を磨き今では良きライバルとなったジェーン、リアルGBN問わず世話になっている職場の先輩にしてバトルの先輩。そして目の前のサヨ。

 

繋がりの数は少なく、されどその線は太く頑丈で。今まで他者を避けて生きてきた自分にとって、未知の繋がりは意外にも暖かだった。絶対に口にはしないが。

 

「年上を茶化すなら、おかわりは無しね」

「ちょちょちょっ!待って!ゴメン!ゴメンなさい!今日は特にお腹空かせて来たの!」

 

以前は夢にも思わなかっただろう。こんなくだらない会話を、やり取りを誰かとするなんて。誰かに料理を振る舞うなんて。自分の一番の趣味を語り合うなんて。

 

一番の趣味───クロスボーンガンダムが紡ぎ、繋いでくれた絆。可能な限り、手が届く限り、守り大事にしていきたいと切に思う。断固として口にはしないが。そしてマギーはクロスボーン絡みではないが。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ふい~ご馳走さまでした」

「お粗末さま」

 

しっかりとおかわりをして大満足のサヨ。食器を流しに持っていこうとするが、既に二人分の食器を手にタカトが立っていた。

 

「洗い物はわたしがやるよ」

「休みなんでしょ?のんびりしてて良いよ」

「もー。そうやって人を駄目にするー」

 

等と文句を言いながらリビングのソファへと向かうサヨだった。

 

「あ、そうだ。ねぇタカさん?」

「何?」

「ザンバスター余ってない?」

「また唐突だね・・・」

 

ぐうたらスイッチONでソファに寝転がるサヨ。唐突に口にしたのはクロスボーンガンダムの武装。困惑するタカトだったが、その名を聞いた途端に目付きが若干鋭くなったのをサヨは見逃していなかった。日常生活の中でもクロスボーンとF91関連のワードを聞くと、瞬間的にテンションが上がるのがサビネ・タカトという男なのだ。

 

「何でまた?」

「いやぁ、本命は組み上げたんだけどさ。さすがに予備は欲しいかなって」

「バタフライバスターじゃ駄目なの?」

「タカさんなら分かるでしょ~」

「あぁ」

 

「「バスターガンから引き抜くビームザンバーのカッコ良さ」」

 

いえーい、とエアハイタッチを行う二人。この貴族にしてこの貴族の親戚あり、である。血筋か遺伝子情報か、運命とか因果とかアカシックレコードにでも貴族因子が刻み込まれているのだろうか。

貴族因子って何だよ。

 

「残念ながら余剰パーツは無いんだけどね」

「まぁじかぁー・・・ザンバスター一個の為にキット買うのは懐事情がヤバいし、タカさんのミッションで確定入手はできるけど難易度高いし、周回するしかないかなぁ・・・」

「あれ、そんなに難しいかな」

「本気で言ってる?これだから三桁ランカーは」

 

ダイバー自らが敵機やギミックを配置し、他のダイバーに公開・挑戦してもらう事も可能なクリエイトミッション。タカトも【貴族主義の夜明け】と名付けた自作ミッションをエディットして公開しているのだが、恐ろしく難易度が高い事で有名なのだ。

 

「格闘戦に自信があるなら」

「あっても難しいからね?」

 

ジト目でタカトの発言を遮る程度には難しいのだ。サヨも挑戦し、何とかクリアした事はあるが、リピートしたいミッションとは思えないというのが率直な感想だったりする。

 

「あれ抜け道とか無いの?」

「無い」

「うわー・・・即答だよこのザビーネ狂い」

「強いて言うならユニコーンとガラハドとX3」

「ビスト神拳と投げと・・・投げ?」

「そう。手足で殴る蹴るなら可能だから」

「あぁー・・・」

 

ネオ・ジオング、シナンジュに繰り出した心の光。巨大な腕で敵機を掴み、質量弾として利用するガラハド。クァバーゼをジャイアントスイングで投げ飛ばしたX3。【自前の武器を持ち込めない】というタカトのミッションの制約をすり抜けられるのは、この辺りという事だろう。というかサヨもサヨで理解が早すぎる。

 

「あとはモビルファイターかな」

「それもゴッドフィンガーとかは使えなくなるよね。結局、格闘センスと反射神経が無いとクリアできないんだって」

「リトライし続ければ慣れるよ」

「いやいや、心折れるからね?邪竜とか花嫁みたいな怪物は絶望感凄いけど、同じサイズの同じ人型にやられ続けるのも別ベクトルの絶望だからね?」

 

圧倒的なプレッシャーと連戦が挑戦者を待ち受ける【終末の邪竜】。凄まじい密度の攻撃を掻い潜らなければならない【花嫁】。どちらも有名なダイバーが作成したクリエイトミッションである。

 

「あの二つと比べられると照れるな・・・」

 

怪物と絶望って単語が出てるんだけどね。この男、やはり感性がおかしい。

 

「・・・ツッコミ疲れた。ねぇタカさんこの後ヒマ?」

「暇だけど・・・GBN?」

「話が早くて助かるわー。じゃ、待っててね!」

 

そう言いながら手荷物をまとめ、外出していくサヨ。ちょうど皿を洗い終え、食器乾燥機にシュウゥゥゥ!したタカトはサヨを見送り自室に向かう。

 

「時間潰さないとなぁ」

 

個人用の機器を持つタカト。コミュ障を自称するこの男は有志連合より前からこのスタイルなのである。ちなみにサヨに個人用買ったら?と言い放ち、学生の財布事情を舐めない方が良いよ?と凄まれた事もあったりする。ログインは確実にこちらの方が早い為、先にGBNで待つ事になるのだが、何をして待っているかが問題である。

 

「軽くミッションこなすか。鋼鉄の7人とか」

 

それを軽いと言い切れるダイバーが、果たして何人居るのかな。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「まだ、来ないか」

「こっちのセリフだったんだけど?」

 

GBN内セントラルディメンション、ミッションカウンターが存在する総合受付にて、誰かを待っていた男性ダイバーに到着した女性ダイバーが詰め寄っていた。やや表現がおかしいが、事実なのである。

 

「全然待ってないじゃん。何してたん」

「鋼鉄の7人だが?」

 

結局行ったんかい。

 

「はぁ・・・そんな事だろうと思った」

 

怒る気も失せた女性ダイバー。彼女こそ、タカトことTHE Bi-neが待っていた女性にして待たせていた女性ダイバー、シラキ・サヨこと【パリピリー・ブルージュ】である。

 

「待たせたわたしも悪いけどさぁ・・・」

「いや、お前は悪くない。むしろ助かった」

「何が?」

「今回の挑戦で・・・最速記録更新だ」

 

ぶれない男、THE Bi-ne。待たせているかもしれない、という自覚はあったのか鋼鉄の7人を自己最速記録でクリアしたらしい。そういう事じゃないんだよ。

 

「ジェーンさん居ないかなぁ・・・」

 

ツッコミ疲れが再発し、THE Bi-neの数少ない理解者にしてストッパーでもあるジェーンの姿を探すサヨ、もといパリピリー。だが現実は非情なもので、ジェーンはログインしていないらしい。

 

「ザンバスター周回だろう?行くぞ」

「はーい・・・本当、クロスボーンが関わるとイキイキしだすよね」

 

事前に分かっていても、実際に相手をするとやはり疲れるのがこの男。他の一般ダイバーよりは付き合い方を理解しているパリピリーは、一種の諦めを抱えてミッションカウンターへと歩き出す。

 

「あの~ちょぉっといいです?」

「ん?」

 

受付待ちの列に並ぶ直前、パリピリーに話し掛ける者が居た。黒髪に赤い瞳、髪色よりも深い黒のローブを羽織り、僅かに覗くローブの下には装飾品が見えている。魔法少女、という第一印象を抱くが、ダイバーの背丈やどこか尖った雰囲気からして少女ではなく、魔法使いのお姉さんだろうか。

 

(それもヴィラン側の)

 

パリピリーことサヨは人を見る目にそれなりの自信があった。直感による人となりの推測は今まで一人を除いて外した事が無い。その直感が警鐘を鳴らしているのだ。「こいつは良い奴じゃない」と。

 

「何かな?今ちょっと忙しいんだけど」

「すいませぇん。わたしがリーダーやってるフォースに新しく入った子が居てぇ、その子の実力を見たいんですよぉ」

「ふーん?で、適当に選んだ私に声かけてフリバ?」

「ですです!身内試合だと分からない事もあるかなぁって。どうですかね?」

 

胡散臭い。これが目の前の女性ダイバーへの確定した印象である。

 

(まぁ、胡散臭い人なら隣に居るんだけどね・・・)

 

両目に眼帯着けてたりね。

 

「・・・別に良いよ。ザビさんゴメン、ちょっと相手してくる」

「了解した。何かあったら言え」

 

胡散臭い人、ではなく両目眼帯貴族ことTHE Bi-neも了承した。密かにパーティ申請をパリピリーに送り、女性ダイバーに聞き取れないボリュームで、緊急時は直ぐ駆け付けると伝えて。

 

(そういう紳士的な所、嫌いじゃないよ)

「さ、やろうか」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ヴァルガでもクリミでもない辺り、本当にフリバするだけ?・・・警戒するに越した事ないけど」

 

所変わって格納庫、さらに言えば愛機のコックピット内にて、疑念を切り捨てられないパリピリー。戦えば分かるか、とネガティブな感情を一旦置いてノーマルスーツの前を閉じ、ヘルメットもしっかり着用しながら操縦桿を握る。

 

「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

全ての準備を完了したパリピリー。強めに操縦桿を握り直すのとほぼ同時に、愛機の瞳に光が点る。

 

「X2ブラッシュアップ、行くよ」

 

三桁ランカーTHE Bi-neの系譜にして、幾つかのスレッドをざわつかせる髑髏の機人の一つ。【クロスボーン・ガンダムX2 ブラッシュアップ】が飛び立った。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「始まるか」

「みたいですねぇ」

 

一方こちらは観戦エリア。バトルを行うダイバーの関係者だけが入室できる特等席。パリピリーの連れであるTHE Bi-neの言葉に、フォースメンバーを送り出した女性ダイバーが反応した所である。

 

「・・・そういえば名前を聞いていなかったな」

「あぁ!こちらこそスイマセン!わたし、ヴォイドって言います」

 

悪の魔法使いお姉さんこと【ヴォイド】。名乗った後も何か喋っているようだが、THE Bi-neの耳には届いていない。彼としてはダイバーネームを引き出せれば良く、軽薄かつフワフワした彼女の言葉に何の魅力も感じていない。THE Bi-neもまた、パリピリーと同じようにキナ臭さを感じていたのだ。

 

(ヴォイド、か。パッと思い当たるダイバーは居ないな)

 

最初の有志連合よりも前からGBNをプレイしているTHE Bi-ne。有名なランカーや、要注意の迷惑ダイバーの名前は一通り記憶しているが、その中にヴォイドの名前は無い。名前やダイバールックを変えられるGBNでは、見た目と名前だけという情報は当てにならないのだが。

 

(黒い服・・・ブラックハンター、でもないか)

 

とある悪質フォースが候補に挙がるが、ヴォイドは自分がリーダーだと言っていた事を思い出し、その可能性を否定する。あそこのフォースリーダーは騙られる事を嫌うタイプだろうし、そもそもブラックハンター所属である事を騙るメリットが無さすぎる。

 

「あのぉ、聞いてます?」

「む、すまない」

 

視線は両目眼帯で隠しているが、さすがに無視を決め込み過ぎた。やや不満そうな表情でTHE Bi-neに詰め寄るヴォイド。

 

「もおぉ。お二人はぁ、付き合ってたりするんですか?って聞いたんですよぉ」

「私が?彼女と?あり得んな」

「即答ですかぁ。あの人泣いちゃうんじゃないですかぁ?」

「私が生涯を共にするのはX2なのでな」

 

だからそういう事を言わないの。ヴォイドもポカンとしてからドン引きしてるよ?

 

「外したか・・・」

 

「何か?」

「いえ、なんでもぉ。あっ、本格的にやり合うみたいですよぉ!」

「・・・」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「っと、撃ってきた」

 

出撃ゲートから飛び立ったブラッシュアップ。今回のフィールドは、特にこれといったモチーフの無い【汎用荒野】。クロスボーンの特性や武装構成上、遮蔽物に隠れてガン待ちするという戦術は合わない為、あえて姿を見せながら飛行し、先手は譲って対策を練ろうとしたパリピリー。そんな彼女を狙った一撃は単発ではなく、途中で途切れていない光線。いわゆるゲロビだった。

 

「そこそこ太いビーム・・・狙撃銃でもないな」

 

照射ビームで思い当たる機体を思考内にピックアップしていくパリピリー。太さから考えて、ジムスナイパー系の狙撃ビームではないと判断。かといってヴァーチェやセラヴィーのバーストモードのような極太ビームでもない。あとはウイングのバスターライフルや、レコンギスタのG系の一部機体が候補に挙がるが───

 

「それかぁ。戦うのは初めてだね」

 

ブラッシュアップのレーダーが捉えたのは、異形の機体だった。鋭い爪が備え付けられた六本の脚、先程の射撃を行った発射口と、それを隠す左右開閉式のカバー。そして蜘蛛のようなMA部分から生えるように存在するイナクトの上半身。【アグリッサ】がパリピリーの相手だった。

 

「さて・・・ここはクロスボーンらしく、接近戦といきますかぁ!」

 

クロスボーンガンダムは接近戦に強く調整されている、とは劇中のメインキャラクター キンケドゥ・ナウのセリフ。それに倣ってアグリッサへと急接近を掛ける。

 

「その程度じゃあ、ねぇっ!!!」

 

右へ左へ、上へ下へと目まぐるしい軌道でアグリッサを翻弄するブラッシュアップ。ここまで動かれてはプラズマキャノンは命中させられない、と判断したのか両手に持っていたブレイドライフルで弾幕を張るアグリッサ。だが、それでもブラッシュアップには命中しない。それどころか足を止める事すら出来ていない。

 

「遅い遅い!くふっ・・・ヤバッ、楽しくなってきちゃった!」

 

このまま接近を許すのはマズイと判断したのか、脚部クローを引き抜き空中へと逃げるアグリッサ。焦っている様子のアグリッサ側に対し、パリピリーは笑っていた。それも妙に妖艶な表情で。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「また悪いクセが出たか」

 

それなりに付き合いの長いTHE Bi-ne。通信は繋がっていない為、コックピット内の様子は分からないが、ブラッシュアップの動きからパリピリーの様子を何となく察する事が出来た。

 

「表面上は狂気に染まっても、最後に勝利するのは感情を処理出来る者だぞ。理性を乗りこなせ」

 

原作におけるザビーネの言葉にフォントのセリフも交えて諭すTHE Bi-ne。その言葉は届かないにしても。

 

そんなTHE Bi-neから少し離れた位置で、フォースメンバーの戦いを眺めているヴォイドの視線は冷めきっていた。自分の仲間の危機に、声援を送る事なく、手に汗握る事なく、ただただ冷ややかな視線を向けるだけ。そしてTHE Bi-neに聞こえないボリュームで一言溢した。

 

「わたしが使った方が良いじゃん」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「もーらいっ!」

 

弾幕とクローを掻い潜りアグリッサに肉薄したブラッシュアップ。右足裏から展開したヒートダガーを喧嘩キックで叩き込む。易々とダメージを貰う訳にはいかない、とディフェンスロッドをダガーの軌道に合わせるが、突如リーチが伸びたヒートダガーに喉元を貫かれてしまった。

 

「ざぁんねぇん。足裏からなら、射出も出来るんだよねぇ!」

 

その言葉通り、ダガーの刀身が伸びたのではなく、ロッドに阻まれる前に撃ち出したのだ。無理に通した為、コックピットは外してしまったが。

 

「このまま───っと!?」

 

振るってきた右手のブレイドライフルも蹴り飛ばし、抜き放ったビームサーベルでコックピットを狙うパリピリーだが、急にブラッシュアップの上半身を反らせて回避行動を取る。イナクトが右手を再び突き出してきたのだ。ただの悪あがきパンチならサーベルを突き刺す方が速いが、イナクトが行ったのは貫手。それも鋭い爪で攻撃力を増した。

 

「あっぶな・・・レクス、じゃない。ジンクスか」

 

爪が武装になるMSで思い付くのはバルバトスルプスレクス。ビームを発生させるならガラッゾやデスフィズが挙がる。だが、イナクトの腕はルプスレクスのように肥大化しておらず、ビームを発振している訳でもない。腕のシルエットをそこまで変えず、緊急時に武器として利用できる爪、となればGN-XのGNクローだろう。

 

「ビビって距離取っちゃったよ・・・ですよねぇ!」

 

思わずアグリッサから離れてしまったブラッシュアップ。距離が出来るのを待っていたと言わんばかりに、再びブレイドライフルとプラズマキャノンで弾幕を張るアグリッサ。脚部クローも完全に自由になっている為、再接近は少々厳しい。さらに、このタイプのアグリッサだと正面から殴り合うか、上を取り続けるかの二択になりやすいのだ。

 

「下に潜ったらプラズマフィールドにご案内なんだよ、ねっ!」

 

脚部を檻のように展開して発生させるプラズマフィールド。ゲーム的に軽減されているとはいえ、好き好んで電撃地獄に自ら入る者などそうそう居ない。発生までに若干の猶予があるものの、択としてはリスキーだ。安定択を選ぶならキャノンが向かない左右か、手持ち武装で迎撃するしかない真上。なのだが、どちらも機体そのものを向ければ解決する上、横を通り抜けようとするとクローに引っ掛かけられる危険性もある。

 

「・・・まぁ向こうもそれ狙ってるだろうし、ここは敢えて───」

 

「下ぁっ!!!」

 

頭部バルカンとビームガンを連射しながらアグリッサの下、死角に潜り込む軌道のブラッシュアップ。虚をつかれ、一瞬動きを止めるアグリッサだが、向かって来るなら幸いと脚部をプラズマフィールド展開用の形に変えて迎え撃つ姿勢を取る。ブラッシュアップの左手が、腰にマウントされた武装に掛けられている事に気付かないまま。

 

「風穴開けてやんよ!!!」

 

コックピット内のパリピリー。その手元には【FINISH MOVE 01】の表示。発動した必殺技とは───

 

───ズガァンッ

 

パリピリーが静電気のような痛みを感じたのと、破壊音が発生したのはほぼ同時だった。青いプラズマエフェクトを散らしながら爆散する多脚ユニット。アグリッサのプラズマフィールドは、完全な効果を発揮する直前に無効化され、本体も撃ち抜かれていた。

 

『何が・・・早───』

「にぃがさなぁいっ!!!」

 

爆煙の中から抜け出すイナクト。ギリギリの所で分離できたようだが、文字通り黒煙を切り裂いて現れたブラッシュアップの追撃は一切の容赦が無かった。

 

『くうっ!?』

 

左手にビームザンバー、右手にビームサーベルを持った二刀流でイナクトを追い詰めていく。プラズマブレードとブレイドライフルで捌こうとするイナクトだが、ブラッシュアップがザンバーを大上段に構えたのを見て、咄嗟にディフェンスロッドを合わせてしまう。それが悪手だと気付いたのはロッドごと左腕を斬り落とされてからだった。

 

「ビームシールドごと叩っ斬れるザンバーだよ?何のコーティングもしてない装備でぇ、耐えられる訳ないよねぇ!」

 

劇中ではビームシールドを展開した敵機をシールドごと斬り裂いたビームザンバー。さらに言えば、ブラッシュアップのザンバーはプラグインスキルで耐久値と出力が上昇している。パリピリーが言った通り、何の対策もしていない装備では一溜りもない。

 

『ひっ───』

 

「じゃあ・・・さようならぁ!!!」

 

狂気も孕んだビームサーベルがイナクトのコックピットを貫く。勝利の女神は青ざめながらパリピリーに微笑んだらしい。

 

「アハァ・・・さいっこう・・・」

 

パリピリーは勝利の余韻と言うには、余りにも妖艶で恍惚とした表情をしていた。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「すんっまっせんしたぁ!!!」

「い、いえぇ・・・ナイスファイトでしたぁ・・・」

 

その数分後、ロビーには直角のお辞儀をしながら謝罪するパリピリーと、ドン引きしながら健闘を讃えるヴォイドの姿があった。

 

「また暴走したな。ブランドマーカーと防御も忘れていただろう」

「反省会は後にしてよぉ・・・あー、めっちゃハズいんだけどぉ・・・ぬがぁぁぁぁぁ」

 

コンバットハイの悪癖があるパリピリー。しかも明確にハイ中の自分を覚えているタイプであり、THE Bi-neよりは常識人を自称している事も手伝って悶絶していた。

 

「えーと・・・じゃあ、わたし達はこれでぇ。また戦う事があったらお手柔らかにぃ」

 

そそくさと退散していくヴォイドとアグリッサを操っていた女性ダイバー。ライジという名前らしい女性と肩を組んでロビーの喧騒に消えていく。

 

「・・・」

「黒歴史がまた1ページ・・・どしたんザビさん」

「いや、少し気になってな」

 

(観戦ルームと様子が違いすぎる。マークしておいた方が良いかな)

 

「ふーん?ま、いいや。このメチャ恥ず感情を払拭する為にも、ザンバスター周回行くよ!ザビさん!」

「良いだろう」

 

この後めちゃくちゃ周回した。結果、バスターガンの方しか出なかったけど、これはこれで良いやとなった。そして帰ってからX2反省会もした。




うぇーい系だったギャルが少し成長して少し落ち着いた性格になるの、良いよね。(個人的な癖)

【シラキ・サヨ/パリピリー・ブルージュ】
眼帯貴族ことX2のヤベー奴ことTHE Bi-neことサビネ・タカトの親戚。女子大生。以前はギャルだった。
高校入学祝いにタカトから贈られたF91のBlu-rayとHGサイズのダギ・イルス(フルスクラッチ品)を切っ掛けとしてガンダムにハマった。
スリルのあるバトルや分の悪い択を迫られた時ほど燃えるというタイプ。タカト曰く「理性を乗りこなせていない」状態になるとギャル時代よりもハイテンションになり、敵を倒すと普段からは想像できない妖艶さを見せる。そしてバトル後に悶絶して黒歴史が増える。
ちなみに、ウルトラガンダムゼット編に登場したウミノの友人サヨと同一人物。あちらが過去に当たるギャル時代。

【クロスボーン・ガンダムX2 ブラッシュアップ】
タカトのダギ・イルスに頼らず、100%自分の力だけで組み上げたサヨの愛機。DUST時代に回収されたX2改の残骸を、有り合わせのパーツで修復・再現したミキシングモビルスーツという設定。
全体的に白とグレーで塗装され、アンテナや排熱ダクト等は赤となっている。
本機を象徴する武装として、ハイメガ・ザンバスターを装備している。ライフル型に変更され数も二つとなった銃口と、バレルの強度が向上したメガ・バスターガン。ビーム刃の出力が上昇し、切れ味が増したハイ・ビームザンバーを合体させて完成する。最大出力射撃は必殺の威力を誇る代わりに、バスターガンのバレルが使い物にならなくなるほど。劇中でアグリッサの多脚ユニットを一発で撃破したのもこれ。

原案を【守次 奏】様からいただきました。
改めてありがとうございます。


【ヴォイド】
魔法使いのお姉さん(ヴィラン)風の女性ダイバー。
語尾を間延びさせる喋り方をしており、柔らかい印象を抱かせるが、時折ゾッとするような冷たい目をしている事があるらしい。

【ブラックハンター】(出典:青いカンテラ 様)
ヴァルガによく現れるフォース。あまり良い噂を聞かないが、フォースリーダーはいたって真面目で常識的なので情報が錯綜するらしい。
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