「ちょっとツラ貸しなさいよ」
「えぇ・・・」
不良に絡まれているロリが居た。現実世界なら大問題だが、ここはGBN───いやGBNでも大問題だわ。
片や日焼けなどしたことが無いと言わんばかりの色白肌に立派な胸部装甲、片や日焼けは健康の証と言わんばかりの褐色つるぺたボディ。金髪のショートボブと茶髪のポニーテール、170cmに届く身長の美女と150cm程の元気っ娘ちんちくりん。お堅い連邦軍服と軽いアロハ。何から何まで見事に正反対の二人がセントラルロビー外周部で相対していた。
「えーっと・・・おねーさん誰?」
「私はルラ。あんたの同類よ」
「どーるい?・・・って事はELダイバー!?」
「そういう事。あんたシゼでしょ?」
「おおう!自己紹介キャンセル!そうだよ!シゼはシゼだよ!もしかしてシゼ有名人?いやぁ照れるなぁ」
事前に情報を集めていたのか、シゼの事を知っているらしいルラという女性ELダイバー。有名人になったのかもしれない、という状況に身をくねらせながらテレテレするシゼ。次のルラの発言で目からハイライトが消えるのだが。
「褐色まな板マーメイドの」
「その呼び名を広めた奴、教えて?」
「急に無表情にならないでよ・・・別に良いじゃない。下が見えにくくなるだけで、何も良い事無いわよ」
「邪魔なんだね。じゃあシゼが引き千切ってあげるよ」
荒ぶる鷹のポーズ、ならぬ荒れ狂う海神の構えでルラのご立派なお胸に狙いを定めるシゼ。一方、コンプレックスに火を着けたルラは馬鹿馬鹿しいと真面目に取り合っていなかった。
「そんな事より、あんたランクは?」
「そんな事・・・?」
「ハイハイ私が悪かったわよ・・・で?ランクは?」
「うわーテキトー・・・シゼはCだけど」
各ELダイバーにもしっかり設定されているダイバーランク。フォースを組めるDランクを過ぎ、必殺技が解禁されるCランクだというシゼ。それを聞いたルラは僅かに頷き続きを話す。
「よし。あとはDのやつさえ居れば」
「ねぇねぇ、話が見えないんだけど」
「ん、まぁ説明くらいはしておくか。ここ最近で話題になってるミッションがあるのよ。それの参加条件がダイバー三人で、ランクが一つずつズレてるって事らしくてね」
「あー、何かミズキリも言ってた気がするなー」
「という訳で巻き込ませてもらうわよ」
何がという訳で、なのか。まだ不明瞭な部分が多いルラの考え。シゼも疑念に満ちた目でルラを見詰め───
「いいよー。どうせヒマだし」
そういやシゼもこういうタイプだったわ。
「で、三人必要なんでしょ?」
「そう。心当たり無い?Dランク」
「んー・・・リンカ達は皆C以上だし、ミズキリもAだしなー」
後見人であるミズキリ。そのミズキリの友人であるリットがリーダーを務めるフォース所属メンバー達。何れもダイバーランクはCより上でDを探しているルラの条件に合致しない。と、シゼがある事に気付く。
「ミズキリAじゃん。一個ズレなら良いんだよね?ならこれで解決じゃない?」
そう。シークレットミッションの参加条件は【参加ダイバー三人のランクが一つずつズレている事】である。ミズキリを加えれば、ランクABCの三人が揃う事になり、条件はクリア出来る。だがルラは苦々しい表情でその案を却下した。
「嫌よ。明確に私より強い奴なんてお断り」
「えぇ・・・」
シゼ二回目のドン引きである。
「私は私の強さを確かめたいの。だから、私よりランクが高い奴はナシよ」
「そう言われるとなー・・・あと誰がいたっけ」
「フューは、ひまなんだよ」
「あー、フューねぇ・・・ん?」
「いつの間に・・・」
二人の会話に混ざる第三者の声。二人が向かい合っているすぐ傍にベンチがあるのだが、先程まで誰も居なかったベンチに何者かが座っていた。
左右で不揃いの角に顔の半分近くを覆うフェイスヴェール。内外で色の異なる髪に外見年齢に対してやや不相応に発達した胸。漆黒のドレス風ワンピースに裸足という、健全な青少年ダイバーの性癖を滅多打ちにして破壊する小悪魔竜、ELダイバー フューがそこに居た。
「邪竜の娘、よね?」
「うい・・・クオンママとチェリーママのむすめ」
「フュー!おひさー!」
「おひさー・・・」
何度か会った事があるシゼ。見掛けた事はあるが、会話するのは初めてのルラ。数回の面識にも関わらずグイグイ行くシゼに対して、フュー誕生の切っ掛けとなったダイバー二人を思い出し、複雑な心境となるルラ。どちらも機体クオリティと操縦技術が高く、今の自分では勝てない相手。そんな二人から生まれたフューも、恐らくかなりのポテンシャルを秘めているはず。
「フューもヒマなの?」
「ひま・・・きょうはトキもいない・・・」
「さっき言ってたママ二人は?」
「ちゅっちゅっしてる」
「ブフッ」
「ネズミ?」
何を想像したのか赤面しながら噴き出すルラと、唐突にネズミの物真似でもしたのか、と理解できていないシゼ。こういう感性や知識にも開きがあるようだ。
「かもしれない・・・あなたは、おませさん・・・なんだね?ふふっ」
「なっ」
「ねー?二人で何の話してるのー?」
データ元の一人である母親の片割れから学んだ小悪魔的な仕草と語り。なまじそういう知識を持っているルラは見事に引っ掛かってしまったようだ。シゼは何が何やら分かっていないらしく、ボンッキュッボンのナイスボデーとか、自分の魅力だとか普段言っている割には、一歩踏み込んだ男女のあれこれソッチ方面の知識に疎いようだ。
「ひまなのはほんと・・・」
「フューってランク何だっけ?」
「でぃー」
「じゃあ一緒にやれるね!」
▽▲▽▲▽▲
「勝手に話を進めて・・・」
『メンバー揃ったんだから文句なーし!』
『なーし・・・』
「まったく・・・まぁ良いわ。足を引っ張らないでね」
『ぜんしょはするー!』
『るー・・・』
外見的にも誕生日時的にも年下であるはずのフューに弄ばれ、やや不機嫌なルラ。そんなルラなどどこ吹く風と意気揚々ノリノリなシゼとフュー。三人は今、格納庫にて愛機───を兼ねたもう一つの体に乗り込み、出撃の時を待っていた。
「ELストライカー、出るわよ」
『GNドールシゼ!えんとりー!』
『フュー・・・ガーディーでいくよ・・・』
▲▽▲▽▲▽
格納庫から飛び出し、ミッションエリアとなる荒野に降り立った三機のガンプラ。ハルートのブースターという脚部形状の問題で着地せず、GN粒子を発生させながらホバリングしているのはシゼのGNドールシゼ。元の少女からは想像できない、ややマッシブな両脚で着陸したのはフューが操るフューガーディー。
「っと」
最後に降りてきたのは三機の中で最も細身な機体。追加パーツと外装でシルエットは変わっているものの、ダイバールックの面影を残しているシゼ・フューとは違い、無骨なまでにモビルスーツ然としたELストライカーである。
『おぉー。さっきから見てたけどルラのガンプラ、ルラっぽくないね』
『どうぶつのこみたい・・・』
「動物?・・・あぁ、リゼの事?この機体は私を模してる訳じゃないから。確かにリゼに近いかもね」
ELダイバーの乗機にして現実での活動躯体であるモビルドール。使用するELダイバーの姿に可能な限り近付けた形状をしている事が殆どだが、時折モビルドールではなく通常のガンプラや、後見人が製作したボディにビルドデカールを適用して運用される例もある。動物の子ことリゼも、後見人が製作したコアガンダムをELダイバー躯体として使っているのだ。
「味気無いけど、これくらいの方が動きやすいのよ。まだ後見人も見付かってないし」
『ほへー・・・そうなんだ』
『なんだー・・・』
「お喋りはおしまい。来たわよ」
ゴーグルの奥に隠れたデュアルアイが敵機を捉える。三人を包囲するように出現したのは、陸戦型ジム、ジム・ストライカー、ジム・スナイパーⅡ、量産型ガンキャノンで構成されたNPD群。最前線を担う陸戦型ジムが最も多く、指揮官ポジションなのかジム・スナイパーⅡが最も少ない。そしてストライカーとガンキャノンで護衛と強襲、支援を担当するのだろう。
『多くない・・・?』
『いきなりかこまれてる・・・』
「そういうミッションだからね。まずは包囲網に穴を開けるわよ!」
両手に装着されたビームトンファーからビーム刃を発振し、正面の陸戦型ジムに斬り掛かっていくELストライカー。ルラの突撃を認識したシゼとフューも穴を広げるべく動き出す。
「そんな弾で!」
100㎜マシンガンから発砲しつつビームサーベルを引き抜き、迎撃の姿勢を取るジム。後方のガンキャノンから支援砲撃も届き爆煙に呑まれるELストライカーだが、直撃は貰っていない事を示すように数秒と経たず土煙から姿を見せた。
「ッ!」
シールド防御ではなくサーベルでの鍔迫り合いを選択したジム。突き出されたビームトンファーを受け止める構えだが、次の瞬間ビーム刃が背中まで貫通していた。
「出力が違うのよ!」
『お見事ー!』
『ごとー・・・』
空中から送られる称賛はシゼとフューのもの。彼女らもまた、GNキャノンとフォトンビーム砲からの射撃で陸戦型ジムとガンキャノンを一機ずつ撃破した所だった。
『うわっとっとぉ!?』
『おやのかたき・・・』
「狙撃型が混じってるわね。このまま一気に突破するわよ!」
空中に陣取るGNドールシゼを狙った細いビーム。指揮官として後ろに控えていたジム・スナイパーⅡからの狙撃だ。すんでの所で回避し、よくもやったなー!とGNキャノンから反撃のビームを放つシゼ。一時的にヘイトを集めたシゼに対して対空砲火が上がるが、そんな隙を見逃す小悪魔竜ではなく。
『こなみじーん・・・』
特に敵機が集まっている場所にブーストを噴かし、ビームショットガンを持っていない左腕を振りかぶるフューガーディー。接近に気付いたジム・ストライカーがツインビームスピアを突き出してくるが、時既に遅し。最大出力で伸ばされたビームセイバーで、ストライカーと対空行動中だった三機をまとめて薙ぎ払ったのだ。
『あとは・・・』
「私がやる!」
包囲網に完全な穴が開き、有利な状況を逃すものかと慌てて距離を詰めてくる敵機群。だが既に、指揮官へと狙いを定めたELストライカーが抜け出していた。後続への対処はシゼとフューに任せ、ジム・スナイパーⅡに突撃するルラ。スナイパーも接近させてなるものか、とELストライカーに対して火線を集中させるが、見えている射線に入るルラではない。
「今さら!」
スナイパーライフルを捨て、腰にマウントしていたロケットランチャーに持ち換えるスナイパー。全弾撃ち切る勢いで弾幕を張るが、やや弾速の劣る実弾ではELストライカーを捉えられない。
「墜ちろッ!」
先の陸戦型ジムを屠った際と同じく、突きの構えを取るELストライカー。友軍の被撃破を見て学習したのか、サーベルによる近接迎撃ではなく、シールドを構えてのチャージを敢行するスナイパー。シールドごと左腕を潰してでも一矢報いるつもりだろうか。だが、そんな迎撃行動など想定内のルラ。突きをフェイントとし、スライディングの要領で蹴りを繰り出す。脛装甲にヒットし、体勢を崩すスナイパー。そして呆気なく───
「せやぁッ!!」
胸部に突き込まれたビーム刃に焼かれ、かち上げられた勢いで頭部まで裂かれた。
「次っ!」
GNドールとガーディーに合流しつつ、迫り来る連邦機部隊と相対するELストライカー。三人は各々の武器を構え動き出した。
▽▲▽▲▽▲
「終わりね。こんな所か」
『ルラ強いねー』
『ママのつぎくらいにつよい・・・?』
「そこは素直に誉めなさいよ。っと、これか」
ジム、ガンキャノンの混成部隊戦をクリアし、その後二つの連戦ミッションを続けてクリアした三人。バトルに慣れているルラとシゼ、親譲りの高いポテンシャルを遺憾無く発揮するフュー。今のところ疲労を見せない辺り、三人の秘められた実力が伺える。
『えっ?これなの?バグったかと思ったよ』
『すなあらしー・・・』
コックピット内にポップした不気味な画面。バグかホラー映画かと思うようなノイズ混じりのシークレットミッション参加確認。【NOT BE FOUND】である。
「じゃあ行くわよ」
『オッケー!腕が鳴るね!』
『フューもがんばるんだよ・・・』
最初からこれを目的としており、ほぼ怖い物無しのEL三人娘。困惑こそしたものの、迷いなく受注しますか?の問いかけにYESを選んで答えた。
「ご丁寧に転送してくれるのね。廃墟マニアにとっては垂涎の景色だこと」
『うわーボロボロ───上っ!』
『・・・なにかくるよ』
SAAやクロスボーンズが降り立ったのと同じ廃墟に転送された三人。ルラがパッと見の感想を呟いたのとほぼ同時に、感覚の鋭いシゼとフューが【何か】を捉えた。
「いきなりご挨拶ね!」
『あぶなっ!?』
『むぅ・・・』
三機のちょうど中心を狙い、【それ】は落ちて来た。今までとは登場演出が異なるが、地面を蹴り砕き、煙の中から立ち上がった機体は間違いなくアンノウンだった。
「こいつがアンノウン・・・」
『ピリピリする・・・今までの奴らとは違う!』
『きけん・・・つよいよ』
───!
『うわっ!シゼ狙い!?』
アンノウンが最初に狙ったのはGNドールシゼ。特徴的な形状のバックパックに手を伸ばし、シゼに突進しながら形成したのはビームサーベル。空中でジーンのザクⅡを叩き斬ったガンダムを彷彿とさせるモーションで飛び掛かってきた。
「私を無視とは───」
───!
「いい度胸ッ!」
GNバーニアユニットを全力稼働させて退避するシゼに代わり、アンノウンと斬り結んだのはルラのELストライカー。鍔迫り合いになったのは数秒、最初のミッションの陸戦型ジムと同じくサーベルの出力負けで押し切られるアンノウン。ELストライカーが突きの体勢でなかった事と、アンノウンのNPDレベルが高い事から、ジムのようにそのまま撃破とはならなかったが。
「何・・・バエルソード!?」
危険度を上方修正し、ELストライカーにターゲットを切り替えたアンノウン。ビームサーベル同士の斬り合いは不利と判断したのか、今度は両腕を交差させながらサイドスカートに手を翳し、抜き放つモーションと同時に実体剣を構成していた。ルラが発した通り、ガンダム・バエルの剣である。
「チッ・・・!」
舌打ちと共にトンファーを構えさせるルラ。バエルソードやエクシア系列のGNソードは、ビームを斬り裂いたりGNフィールド等の防御系装備を貫通する効果を持つ物が多い。いかに高出力と言えど、ビーム武装である以上、真正面からぶつかればバエルソードに軍配が上がる確率は非常に高い。
『えんごするよ』
そう、一人で真正面からぶつかれば、である。
出会った時と同じく、いつの間にか移動していたフューとフューガーディー。カバカーリーをカスタムベースの一つとしたこの躯体には、カーリーと同じ武装が幾つか備わっている。ビームショットガンから単発のビームを放ちつつ、胸部フォトンレーザー砲も織り混ぜていく。さすがに弾幕を張られては対応せざるを得ないらしく、ELストライカーから距離を取り回避行動を行うアンノウン。
『上とったりー!』
さらにルラのフォローで空中に逃れていたシゼも加わった。GNキャノンとGNバルカンからまとめて発砲し、アンノウンの逃げ場を奪っていく。
───!!
多角的に射撃で追い詰められたアンノウン。行動や構築する武装からして、恐らく格闘戦特化型。近接武装だけでこの状況を打開する事はかなり難しいはずだが、射撃特化型はガガを召喚して格闘戦を避けたという情報もある。注意するに越した事は無い。と思っていた矢先にアンノウンが新たな装備を構築し始めた。
『投げるの!?』
時間差で両腕に構築されたのはビームシールド発生機。左腕の物で直撃コースだった数発を防ぎ、遅れて構築完了した右腕の物をビームを展開したままGNドールに投げ付けたのだ。
『ちょっ、邪魔ぁ!』
投擲されてもある程度の耐久値は持っているらしく、GNバルカンでは破壊できないシールド。やむを得ずGNキャノンで吹き飛ばすが、一時的に火線が減った事で動きやすくなったアンノウンが再びルラに斬り掛かっていた。
「このっ・・・くっ」
───!
互いに高性能な近接武装。一撃が致命傷に繋がりかねない為、ビームトンファーを避け、バエルソードを避け、と決め手に欠ける状況となっていた。
『ルラ──っぶな!』
徐々に圧され始めたルラの援護に入ろうとするシゼだが、ELストライカーに蹴りを入れたアンノウンが勢いのまま振り向いたのを見て思い止まる。それが功を奏し、投げられたバエルソードに被弾せずに済んだのだ。
「そんな余裕が・・・なっ!?」
空いた左手からビームを発振し、突き出して攻撃するアンノウン。ルラも驚きながら、肘にかけての部分から展開したビームトンファーで何とか防いだ。
『ブランド・・・なんとか・・・』
ブランドマーカー。ビームシールドの展開と、シールド基部をビーム刃として使う攻防一体の武装。クロスボーンガンダムの腕部に装備されている機構だ。フューが知っているのは、フォースメンバーの一人が詳しいからだろうか。
『がらあき・・・む』
出力の高さ故にGNキャノンでの援護がし難いシゼに代わり、前衛でタンクの役割もこなせるフューがアンノウンへと向かって行く。ガーディーの接近に気付いたアンノウンも、GNドールと同じく迎撃しようとするが、同じくガーディーを見たルラが反転攻勢に出た。そのまま背中を取ってもらうつもりのようだが、アンノウンの背後にデータが集束していくのを両者が認識した瞬間───
『うっ・・・!』
「フュー!」
『ちょっ、お触り禁止ー!』
即座に形成された何かがフューガーディーに組み付いた。やや大柄なシルエットのソレは、見た目に違わぬパワーでガーディーを締め付けて離さない。フューに傷を負わせないようにGNキャノンではなく、GNバルカンで攻撃しながらフォローに入るシゼ。だがガーディーを締め上げるソレに対して、何故かビームの通りが悪い。
『何で!?』
「ヘルムヴィーゲだからよ!鉄血の───っ!」
海をイメージしたカラーリングのGNドールシゼよりも、さらに深い青で塗装された乱入者。ヘルムヴィーゲ・リンカーがガーディーを抑える機体の正体だ。鉄血のオルフェンズシリーズに登場する機体の特徴であるナノラミネート装甲によって、GNドールのビーム攻撃が軽減されているのだ。
『ママいがいの、ぎゅーは・・・おことわり、なんだよ!』
どこまでもママが好きなフューに応えるように、その躯体であるガーディーも四肢に力を漲らせていく。嫌な金属音と共にヘルムヴィーゲの拘束が緩み、僅かに隙間が出来た瞬間、ガーディーの膝蹴りが炸裂した。
『ふざけて・・・いるのかーっ!』
───!!!
ヘルムヴィーゲを振りほどいた勢いのままアンノウンへと突撃するフュー。Dランク故に必殺技は解禁されていないが、何故か必殺技並みの威力を持つストレートパンチをマスクのセリフと共に繰り出した。それに対してアンノウンが取った行動は迎撃。振り向き様の回し蹴りをガーディーの拳に合わせた形となった。
『いっ・・・』
「そのまま合わせて!」
ダメージが入った両者の装甲。ガーディーは拳に、アンノウンは脛にヒビ割れが見える。衝撃と共にノックバックするフューだが、ルラの声で姿勢制御に成功する。胸部フォトンレーザー砲の発射に合わせ、再びビームトンファーを構えて距離を詰めるELストライカー。
───!!
左手のブランドマーカーをビームシールドとして使い、フォトンレーザー砲への防御に回すアンノウン。ガーディーの攻撃は防いだものの、崩れた体勢でELストライカーの攻撃を回避しきれるはずもなく。背後からの一撃により、左眼に当たる部位ごと頭部装甲が抉られ、さらに飛び込んできたGNドールの射撃で、ブランドマーカーのビーム発生基部が溶解してしまった。
「仕留め損ねた!」
『しぶといなー!』
『むぅ・・・』
だが機能停止には至らず。本体と同じく、しぶとく残っているバエルソードでビームを斬り払いながら三機と距離を取る。
───!!
『突撃してくる!』
「そんなジェットストリーム擬きで!」
仕切り直しからの突撃。クールタイムが終了したのか、再びヘルムヴィーゲを召喚し自身も突撃するアンノウン。さらにルラ達の実弾武装が少ない事を学習したらしく、ビーム耐性を持つヘルムヴィーゲの背後に隠れながらのチャージである。
『どっかーん・・・!』
だが少ないだけで所持していない訳ではないのだ。ビームショットガンの銃身下部に装備されたグレネードランチャーを使用するフュー。撃ち出されたグレネード弾はヘルムヴィーゲに直撃し、爆散せしめた。どうやら敵に向けて誘導はするものの、回避行動はしないらしい。
「っ!退いて───」
『うわっ!ルラ!?』
グレネード弾とヘルムヴィーゲの爆煙から飛び出すアンノウン。盾としたヘルムヴィーゲのスピードに合わせていたのか、隠れていた時から突進速度が桁違いに上がっている。左腕を腰だめに構えているアンノウンに嫌な気配を感じたルラは、咄嗟にGNドールを体当たりで退避させた。数秒も経たない内に直感が当たっていた事を知る。
───!!!
「がっ・・・!?」
空いていた左腕を突き出し、シゼを狙ったアンノウン。ルラのELストライカーが割り込み、ビームトンファーで防御するが、それすら突破してELストライカーの頭部をアンノウンの左掌が掴んだ。武装は手に持つだけでなく、手そのものが武器になる事もある。
「は、なせっ・・・!くうっ!?」
───!──!!!
『まて・・・!』
『逃げるなー!』
腕そのものにトンファーを突き刺して破壊しようとしたルラだが、それよりも早く右手に保持していたバエルソードが左肩関節に突き込まれる。頭部と肩部で固定されたELストライカーを上空へ連れ去るアンノウン。シゼとフューも後を追う。
───!!
「ぐぅあぁぁ!」
ヒートエンドではなく頭部をそのまま爆発させ、引き摺りでダメージを与えたバエルソードも引き抜く。ソードはガーディーに投げつけ、投げた勢いのままELストライカーに回し蹴りを繰り出す。先程ガーディーと相討ちになったモーションに思えた。
「そのっ、パターンは───っ!?」
左腕のトンファーで受け、アンノウンの自傷を狙ったルラ。だが、トンファーごと腕を蹴り砕かれ驚愕する。アンノウンの脚が深い緑色に染まっていたのだ。高トルクキックだけで終わらず、空いた両腕も緑色に染まるのが見えたルラの顔に恐怖の色が混じる。
「やっ・・・かはっ!」
右ストレート左フック左ニーキック右ジャブ右ローキック左右ラッシュ。トドメの右アッパー。絶え間無い衝撃に襲われ、状況の把握すら出来ないルラ。バエルソードを回避したGNドールとガーディーが追い付き、各々の武装を向けるが、三度現れたヘルムヴィーゲに苦い表情となる。
『シゼいって・・・!おまえ、じゃま!』
ショットガンを持つ右手をフリーにした状態で、敢えてヘルムヴィーゲに組み付かせ、零距離でグレネードランチャーを発射してヘルムヴィーゲを処理するフュー。ビームショットガンが使い物にならなくなったが、その隙にシゼがアンノウンの元に辿り着いた。
『これでぇっ!!!───ウソ!?』
手首のGNバルカン兼用GNビームサーベルを横一文字に振り抜くシゼ。ヘルムヴィーゲ召喚はクールタイム中であり、高トルクラッシュを終えて硬直している今、この一撃を止める手段など無い。はずだった。
───!──!!─!──!!!
跳躍したのだ。既に上空に居る状態で。軽い跳躍、小ジャンプとも形容できる小さな動きだが、GNドールの横薙ぎを回避するには十分なムーブ。そして、ただジャンプしただけで終わるはずも無く。
「がっ・・・あぁぁぁぁぁ!?!!?」
『ルラァァァァァ!!!』
『っ!』
【真・流星胡蝶剣】あるいはAGE-2を圧倒したゼイドラのキックか。上昇した時を上回るスピードで下降していくアンノウン。その右脚をELストライカーに押し付け、格闘と落下のスリップダメージを与えながら。
(やられる・・・!こんな、こんな無様な───)
薄れゆく意識に混ざるのは悔恨の念。自分から巻き込んで、散々偉そうに足を引っ張るな等と言った二人の前で最初に撃破される。そんな醜態は見せたくなかった。
羞恥と後悔に囚われたルラは気付いていなかった。自分の意識が薄れている事に。
───!?!!?
『えっ?』
『いま・・・!』
突如としてアンノウンの頭部が損壊する。正確に表すなら、フェイス部分の左半分を何かに抉られたのだ。不自然に再起動したELストライカーの不意打ちを食らって体勢を崩し、真・流星キックも解除されてしまう。そして全速力でルラの救援に向かっていたフューの動きは早かった。推進機関を総動員し、アンノウンに向けて一点加速。散々手こずらされたヘルムヴィーゲのお返しとばかりに組み付いた。
『シゼ・・・!うって!』
『無茶言う・・・ねえっ!』
今まで使い所が無かった尻尾、テイルパーツも絡み付かせてアンノウンを拘束するフュー。そのフューから大役を任されたのは、最も被弾が少なく、手持ち火器の中で最大火力を叩き出せるシゼ。仮にもAランクダイバーである後見人ミズキリの戦いを最も間近で学び、自分の糧としてきたシゼにとっては、最高のタイミングと状況を逃す事の方が難しかった。
───!?!!
『ジャックポット!』
ラグビーのタックルのように腰へ組み付き、尻尾で片手を封じたフュー。アンノウンも空いている右手でガーディーを殴打するが、ガーディーの拘束は緩まず。右手に何らかの武器を構築しようとするアンノウンだったが、それよりも速くGNキャノンから解き放たれた粒子ビームで胸を撃ち抜かれていた。
「離れてください!」
『ん!』
大破してもなお生きているアンノウン。武装構築を諦め、右掌のゴッドフィンガーでフューだけでも仕留めに掛かる。が、シゼでもフュー本人でもない声が響き、即座に反応したフューは離脱。掴みを空振りしたアンノウンの右肩関節にビームの刃が突き刺さり、そのまま貫通していった。
「ズレた・・・!」
アンノウンの連撃から逃れ、先に着地していたELストライカーの攻撃である。残されていた右腕のビームトンファーから、貫通力に優れたビーム刃を飛ばし、アンノウンの装甲を抉り抜いたらしい。
頭部はゴッドフィンガーで消し飛び、左腕はバエルソードと高トルクキックによって破損・脱落。右腕を上に向け、アンノウンを撃ち抜いたその姿は、RX-78-2 ガンダム、あるいはF90 1号機を模したかのような、いわゆるラストシューティングのポーズだった。
───……!
『まだやるかー!』
「注意して!」
無事な左手にデータを集束させ、妨害の隙すら与えずに高速構築したのは長柄の武装。形状からしてジム・ストライカーのツインビームスピアのようだ。
『うわわっ』
シゼを狙って突進するアンノウン。突きではなく、大振りな横薙ぎを放ってきた事に一瞬動揺するも、回避には成功する。柄の直線上と平行に一本ずつビーム発振基部が存在するが、その基部が曲がり、デスサイズヘルのツインビームサイズに近い運用をしているようだ。
『そんなへなちょこ格闘!』
「違う!逃げる気です!」
ツインビームスピアを振り抜き、GNドールシゼに回避を強要し突破したアンノウン。始めから当てるつもりは無く、道を空けさせる事が目的だったのだろう。その証拠にアンノウンの機体がデータの粒子として解けつつある。
『ツケははらうんだよ・・・!』
シゼに代わってアンノウンを追うフュー。追いすがるガーディーに対し、振り向きながらツインビームスピアを投げ付けるアンノウン。さすがにパターンを覚えたフューは軽々とそれを避けるが、アンノウンも二段構えだった。いつの間に構築したのか、今度は正真正銘デスサイズの装備であるバスターシールドを構えていたのだ。
『みゅっ!?』
ビーム刃を展開し、後部のスラスターも点火済み。ビームスピアを回避したガーディーに向けて射出されたバスターシールドだが、間一髪テイルパーツで弾かれる。
「あと一撃・・・動いて・・・!」
地上では膝をついたELストライカーが三度ビームトンファーによる狙撃を行おうとしていたが、さすがにダメージが限界なのか右腕の制御が安定せず、トンファーの出力もビーム刃展開がやっとだった。
『しゃーないよね!トランザム!』
後見人のミズキリから使用禁止を言い渡されている奥の手、トランザムシステム。バレたらバレた時に謝ればいいや!と平然と使用に踏み切ったシゼ。GNドールが赤く輝き、遅れた分を取り戻すようにアンノウンへと迫る。
『いっけー!』
トランザムによる出力上昇分も含めたGNキャノン最大出力。生半可な盾では防げない粒子の奔流に対し、アンノウンが取った行動は───
『はっ!?』
迎撃。それも無敵の盾を転用した矛を使った。恐らく最強クラスの攻防一体の装備アルミューレ・リュミエールである。光の結界ではなく槍のような形で展開している事を踏まえると、ハイペリオンの物。それを用いてGNドールの一撃を正面から捌ききってみせたのだ。
【C0ИT1NU3……】
GNキャノンからの照射が終わるのとほぼ同時にデータ粒子となって消えるアンノウン。今までの挑戦者達に残した物と同じメッセージを残して。
【Battle Ended】
そしてこちらも同じく、勝敗も無しに戦いだけが終わったのだった。
▲▽▲▽▲▽
「ぶぅー・・・」
「むぅー・・・」
ミッション終了後のセントラルロビーに、不満げな表情を隠そうともしないシゼと、普通に疲れて今にも溶けそうになっているフューの姿があった。
「えっと・・・お疲れ様でした」
そんな二人の後ろから声をかける女性ダイバー。もちろん二人と共に戦っていたルラである。
「おつかれー・・・」
「フューはつかれたんだよ・・・」
「あはは・・・本当にお疲れ様です。付き合っていただいて、ありがとうございました」
労いと感謝を伝えるルラ。そのやり取りにシゼは違和感を抱く。というよりも、先程から抱いているのだが。
「ルラ、何かキャラ違くない?」
「へっ?え、えぇと・・・そんな事無い、ですよ?」
「シゼ達に敬語使ったり、雰囲気がふわふわしてたり」
「えっ・・・えぇと・・・その」
「もしかして───」
核心に辿り着いたかのようなシゼ。ルラも続く言葉を固唾を呑んで待っている。
「アンノウンの攻撃で頭打った?」
違うそうじゃない。
「あっ・・・うん、そう!そうなんですよ!実はあの時に結構強く───そんな訳無いでしょ」
本気なのか冗談なのか、シゼの的外れな推理に同調しようとしたルラだったが、突然雰囲気と口調が変わる。
「また勝手に・・・」
「え?」
「何でもないわ。手伝ってくれた事は感謝する。じゃあまた縁があったら」
そう言い、手をヒラヒラと振りながらシゼとフューに背を向けるルラ。そのまま歩き、ロビーの雑踏に紛れてしまった。
「えぇー・・・行っちゃったよ・・・」
「いっちゃった・・・」
「フューはどうする?ヒマならシゼの島来る?海を眺めながらゴロゴロするの最高だよー?」
「よさそう・・・だけど、クオンママがはいしんするんだって・・・フューもいくの・・・」
「おー、そっかー」
「シゼもちゃんねるとーろく、こーひょーか・・・よろしくなんだよ・・・」
じゃあね・・・とフォースネストにショートカット移動していくフューを見送り、大きく伸びをするシゼ。
「んんーっ!っつぁ・・・ん、やっと戻って来た。アンノウンの事、自慢してやろーっと」
ミッションの手伝いかプライベートな用事だったのか、後見人のミズキリが戻ってきた事を確認したシゼ。フューと同じく、フォースネストへのショートカットを選択し、データの粒子として解けていく。
こうしてEL娘達によるアンノウン戦は終わったのだった。
ちなみにクオンとミズキリの後見人二人が各々の話を聞いて驚き、レアな報酬に目を白黒させるまであと数分である。
▽▲▽▲▽▲
「勝手に出てこないでよ」
「ごめん・・・でもルラが危なかったから」
セントラルディメンションを一望できる展望スペースにて、誰かに話し掛けるルラの姿があった。だがその場にはルラ以外のダイバーは居らず、やや苛立った声色の言葉は独り言のようにしか聞こえない。
「そりゃ・・・助かったのは事実だけど」
「私だけじゃないでしょ?シゼちゃんとフューちゃんにもちゃんと説明しないと」
「あの二人に?別に言う必要無いでしょ。わざわざ言う事でもないし」
「必要あるよ!ルラ一人の力じゃ勝てなかったどころか助けてもらったじゃない!」
「何度も言わせないで!バトルは私がやるから!
「・・・私は必要無いってこと」
「っ・・・要らないなんて言ってないじゃない・・・悪かったわよ」
「私も強く言い過ぎた。ごめんね・・・ちょっと頭冷やすね」
「ん。お休み」
「おやすみ。ルラも休んでね?」
姿の見えない誰か───ルテと呼んだ何者かとの会話を終えたルラ。大きなため息を吐き、鉄柵に腕を乗せて体を預ける。
「ルテを守る為に強くなりたいのに・・・ルテに助けられたら意味が無いのよ・・・これじゃ、必要無いのは私の方じゃない・・・!」
吐き出したその言葉は、もう一人にすら届かず電脳世界の虚空へと消えていった。
彼女の名前は
准しょおぉぉぉ熱ッゴッドォ!フィン道を空けてもらおうか……距離を取ったつもりトルクパンチは最終秘伝!真!流星胡蝶アセムゥゥゥゥ!!!
【ルラ/ルテ】
ELダイバー。特殊な事情があり、一つのアバターに二人分の人格データが入った双子。目付きが悪く、口調が若干荒いのがルラ。雰囲気がフワフワしていて、他者に対して丁寧な口調なのがルテ。
主に表に出ているのはルラであり、バトルも基本的にルラが行う。表層人格のスイッチはいつでも可能で、ルラの危険を感じたルテが表に出ようとする事もしばしば。
ちなみにルラは格闘戦が、ルテは射撃戦が得意。
【ELストライカー】
ルラ/ルテのモビルドール。ベースはストライカー・カスタム。主兵装のビームトンファーはカスタムのナックルダガーに、ゴトラタンのビームトンファーとダブルエックスのハイパービームソードを組み合わせた特別製。
ハードポイントも増設されている為、複数の武装を携行できるが、ルテを戦わせたくないルラの意向により基本武装のビームトンファーのみを装備している。
ルテも扱えるようにビームトンファーはビーム刃の展開と射出が可能となっており、格闘と射撃の両方に対応している。
【シゼ】
褐色つるぺたマーメイd───
トランザムの無断使用がバレて小言を言われた。反省はしていない。
【フュー】(出典:青いカンテラ 様)
フューはひまなんだよ……
やたらとレアなプラグインスキル付きバエルソードを、大好きなクオンママに渡してドヤァ……(褒めて褒めて)していた。
搭乗していたフューガーディーは、後見人であるクオンが製作したモビルドールフューにカバカーリーをベースとした外装を纏わせた姿。