GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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聖夜の奇跡的なサムシング


眼帯貴族とクリスマス

クリスマス。

本来は降誕祭であったり、祭日である日。

起源や文化はひとまず置いて、今現在は冬の一大イベントとして定着している。クリスマスツリーを飾り付けたり、サンタクロースの来訪を待ちわびていたり、楽しみ方は人それぞれ。家族で過ごすも者、恋人と過ごす者、人によってはリア獣狩りの聖夜でもあるだろう。そして強大な聖夜の獣に返り討ちにされる狩人という絵面までワンセット。

 

冗談はさておき、クリスマスに大多数が待ち望んでいる事はなんだろうか。両親から、恋人から、はたまたサンタさんから贈られる物。そう、クリスマスプレゼントである。まぁ人によるだろうけども。

 

今回のお話は、とある年のクリスマスにて、不思議かつドタバタした聖夜を過ごす事になった一人の男を見てみよう。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「妙に騒がしいな」

 

セントラルロビーに現れた両目眼帯の男。GBNでなければ不審者確定のダイバー THE Bi-neである。24日のイヴから連日ログインしている悲しい男THE Bi-neだが、昨日とは違う雰囲気のロビーに怪訝な表情となる。表情ほぼ分からないけど。

 

「子供が多い・・・?」

 

季節のイベントを実装するのは、こういったネットゲームの常。GBNでも当然のようにクリスマスイベントが開催されているのだが、今のロビーの喧騒はイベントでテンションが上がっている、という類いの物ではない。そしてTHE Bi-neが口にしたように、何故か少年少女といった子供ダイバーが多い。キッズが居ない訳ではないが、そういった者達のほとんどはリアルに身長が低いかロールプレイだったりする。

 

(年齢制限が引き下げられた、わけでもないよな。そんな重要な話なら大々的にメディアにも出るだろうし)

 

擬似的とはいえ、ロボットのコックピットに乗り込んで戦うゲーム、という関係上GBNには一定の年齢制限がある。だが、公式からのお知らせにもテレビやネットニュース等のメディアにもその類いの話は無く。年齢制限をすり抜ける、ちょっとイケナイ方法があるのだとしてもさすがに視界に映る数が多すぎる。

 

「子供アバター限定のイベント・・・という訳でもないか」

 

お知らせとメッセージボックスを確認するが、そちらもハズレ。では、この慌ただしいキッズダイバー達はなんなのだろうか。THE Bi-neが出した結論は───

 

「童心に帰ってクリスマスを楽しむ有志イベントか何かだろうか」

 

違うそうじゃない。慌ててるって言ってるだろうが。

 

「さて、何で慣らすか」

 

誰に聞かせるでもない独り言を発し、格納庫へと移動していくTHE Bi-ne。

 

誰が予想していただろうか。彼が目撃した、妙に慌てているキッズダイバーという謎の光景の原因が───

 

彼自身にあったなど。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「ふえぇ」

 

「どどどどどうしよ!?フューちゃんがぁ!」

「落ち着けササミ。こういう時は落ち着いてガスの元栓を確認してから机の下に隠れるんだ」

「うちより動揺してるやん!!」

 

「フュゥゥゥゥゥ!??!!何で!何がどうしてこうなったの!!!」

「クーちゃぁぁぁぁん!!!!ビスクちゃんがぁぁぁぁあ!!!!」

 

何このカオス。

フォース エターナル・ダークネスのフォースネストは、ボケとツッコミと困惑と疑問符を煮詰めて完成した混沌のスープとなっていた。テンプレのように慌てるササミ、冷静なように見えてササミより動揺しているペーパー、そしてフォースリーダーのクオンと、クオンの大切な人であるチェリー・ラヴ。この四人が大騒ぎしている理由は、クオンとチェリーがそれぞれ抱えているダイバーだった。

 

「まま・・・?」

「まみぃ。どうしたのですか?」

 

フューとビスク。詳細は省くが、クオンとチェリーのデータから生まれたELダイバーの二人。その二人、特にフューは小悪魔竜とも呼ばれる程に幼く、少女と呼べる容姿をしているのだが、親であるクオンとチェリーを呼ぶ声はいつもよりも幼く、舌足らずだった。声だけでなくその姿も。

 

「服もダボダボに・・・何で!?バグ!?新手のバグなの!?」

「ヴッ」

「チェリー!どうしたの!っ、まさか貴女も調子が」

「幼女ビスクちゃんかわいいッ・・・!」

 

チェリー平常運転。クオンも心配して損した、と言わんばかりのジト目である。

 

「まま・・・まーまぁ・・・ふぇへへ」

「ヴッ」

 

クオンも娘にKOされていた。元から幼い雰囲気のフューなのだが、さらに幼くなった事でフニャフニャ具合が増し、言葉を覚えたての赤子のようになっているのだ。親バカのクオンとチェリーには効果抜群、4倍弱点の急所当たり、複数回攻撃のハチマキ貫通だろう。

 

「アカン、二人とも役に立たんくなった」

「灯りも確保しておこう」

「もうええわ!その動揺ボケは!」

 

「さしゃみ・・・さーさーみー・・・あーうー」

 

「・・・ペーパー、後は任せるで。フューちゃぁぁぁん!!!ん"か"わ"い"い"なぁ!!!!」

 

「任されても困るのだが」

 

エターナル・ダークネス(とチェリー・ラヴ)、撃沈。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ふふふふふふ・・・かぐや、なぜにげるのです」

「いつもよりじゃきがこいぃからです!」

 

所変わってセントラルロビー外周部。見る者には微笑ましく映り、当事者は割と冗談抜きで全力疾走している二人組が居た。カグヤとニチカ。この二人もまたELダイバーであり姉妹。剣の道に生きるサムライガール カグヤと姉なる者ニチカ。姉を名乗る不審ELとも呼ばれるニチカがカグヤを追い掛けているのだが、二人の様子がいつもと違っている。フューとビスクと同じように、容姿や声が幼くなっているのだ。

 

「おさないいもうとが、あねをたよるのは、とうぜんのこと。さぁカグヤ、あねのもとへ」

「ねぇさまもおさなくなっているではないですか!くぅっ、はしりづらい・・・!」

 

いつも以上に不審な姉オーラを発生させてカグヤを追うニチカ。急に縮んだ事で走りづらくなり、幼女ボディに苦戦しているカグヤ。そんな二人を三人のダイバーが眺めていた。

 

「運営も確認中だって」

「そうですか・・・」

「どうしちゃったんだろう、二人とも・・・」

 

発言順にメグ、アヤノ、ユーナの三人。つまり、鬼ごっこをしているカグヤも含めてフォース ビルドフラグメンツ勢揃いである。各々のクリスマスを過ごしていた三人だったが、カグヤからの緊急連絡を受けて急遽ログインしたのだ。来てみればカグヤが縮んでおり、さらに暴走気味なニチカに追われているという状況。

 

「原因は分かっていないの?」

「本人もよく分かってないらしいよ。バグに遭遇した訳でも、フレーバーアイテムを使った訳でもないらしいし」

 

アヤノの疑問に答えられる者は居らず。原因不明の不具合に、普段のロールは鳴りを潜め真剣なメグだが解決策が浮かばない。それはそうと───

 

「ねぇさまをおさえていただいてよろしいかっ!?」

「ふふふふふふ・・・」

 

誰か止めてあげたらどうかな。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

ダイバールックが突如として幼児化する。そんな意味不明な不具合報告が運営に何件か届き、調査を開始するスタッフ達。だが、一向に原因が掴めず当事者も技術スタッフも困り果てていた。

 

「ん?何だ、このデータ」

 

だが一人のスタッフが切っ掛けを掴んだ。幼児化したダイバーのパーソナルデータを洗っていたスタッフである。全員に共通しているのは「何かしらの食事をしている」という事。クリスマスイベントなのだから、チキンなりケーキなりを食べるのは当然なのだが、視覚データから得た情報から「特定の飲食アイテム」並びに「それを調理した料理アイテム」が判明した。

 

それは───

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ふんふーん♪ふふんふーん♪」

 

雪の積もった木々が所々に生えている森林地帯。大きな岩の上に座り、足をプラプラさせながら上機嫌に鼻歌を奏でる少女が居た。

 

「次は誰にプレゼントしようかなぁ。やっぱりサラお姉ちゃんかなぁ」

 

全てのELダイバーから、一番上の姉として認識されているビルドダイバーズのサラ。少女はそんなサラに何かをプレゼントしようとしているらしいが。

 

「よぉし!そうと決まれば───うん?」

 

プレゼントしようそうしよう、と勢いよく立ち上がる少女。立ち上がった所で何かに気付く。

 

「あれ、この前の・・・おーい!」

 

空に向かって大きく手を振りだした。その先に居たのは黒き髑髏の巨人。

 

 

 

「イベントNPD?こんな場所に?」

 

そう、THE Bi-neのクロスボーン・ガンダムEX2改である。少女のアクションがダイバーに対するNPDのエモートとして扱われたのか、EX2のシステムに引っ掛かったようだ。望遠機能で拡大表示するも、距離があるため誰か分からずイベントNPDと判断するTHE Bi-ne。こんな僻地でダイバーに反応するNPDも珍しいと、EX2に着陸軌道を取らせる。

 

 

 

「やっぱりこの前の!」

「あの時の・・・」

 

着陸の風圧にも負けず、はしゃぎながら近寄ってきた少女。EX2のコックピットから降り、少女と対面したTHE Bi-ne。途中から見えてはいたが、改めて対面して明確に思い出す。数日前の奇妙な邂逅を。

 

 

◆◇◆

 

『あっ、ねぇねぇそこのひと~』

「む?」

 

クリスマスに向けての準備が進むGBN。メリークリウスやヴァイエイトナカイといった、希少アイテムやプラグイン等をドロップする機体との戦闘がGBNクリスマスの恒例行事となっていた。それらとの戦場になるフィールドの具合を確かめる為、雪原フィールドにやって来ていたTHE Bi-neだが、突然声を掛けられ動きを止める。

 

『やっほー』

「NPD?」

 

索敵システムが示したのは背後。振り向き、メインカメラが捉えたのは赤い衣裳に白い髪、青い瞳が特徴的な少女だった。装飾品に白いポンポンが付いていたり、ブーツも赤かったりと、サンタクロースをイメージさせる少女を見た第一印象は「クリスマスイベント用のNPD」である。

 

(童謡モチーフか?慌てん坊の)

 

クリスマス前にやって来た慌てん坊のミニスカサンタ。ここから「プレゼントを落としてしまった。クリスマスに間に合わないから手伝ってほしい」とか、そんなイベントが始まるのだろうか。と推測するTHE Bi-ne。現状特にやるべき事は無い為、コックピットから降りて対応する。

 

「おぉー・・・前見えてる?」

「問題無い。要件は何だ」

 

まぁそこは心配だよね。

 

「あのね、みんなって、何を貰ったら最高に嬉しい?」

「何・・・?」

 

ミッション受注画面がポップする事も無く、選択肢のような物が出る気配も無く。少女の質問が始まった。それもかなり曖昧な。

 

「ほら、もうすぐ、くりすます?でしょ?何かを贈って贈られてハッピーになる日なんでしょ?」

「間違ってはいないが」

「だからね、わたしも贈り物しなきゃなの」

「そうか」

「そうなの。でも、みんなが何を貰ったら嬉しいのか分からなくて」

 

どうやらクリスマスプレゼントの内容に悩んでいるらしい。これでこの少女が、友人や家族への贈り物に悩むダイバーか、ある程度の内容が指定ができるレアイベントのNPDかという二択まで絞り込めた。

 

「教えてほしいの。みんな、ダイバーもエルダイバーも貰って嬉しい物」

 

ここでビルドコインやパーツデータ、リアルの贈り物として考えるなら花束や玩具など、一般的で当たり障りの無い物を答えていればクリスマス当日の騒動には発展しなかっただろう。だが、コミュ障を拗らせ、独特な感性と深読み癖を持つこの男は一般的な答え等用意しない。

 

「若さ・・・か」

「若さ?」

 

何言ってんだこいつ。

 

「ダイバーも人間である以上、いずれ年老いて天に召される。電子生命体であるELダイバーはそれを見送るしかできん。ELダイバーとの関わりが無い者にしても、老いと死は恐ろしい物だろう。ならばこそ、人が貰って嬉しい物は【若さ】。ELダイバーにしても、後見人と同じ時間を同じ年齢で過ごせるのは悪くないのではないか」

 

一応しっかりした考えだけど、そうじゃない。そもそもクリスマスプレゼントに若さを要求するって何だよ。

 

「・・・なるほどぉ」

 

納得しちゃったよ。

 

「若さ・・・うん、若さか!ありがとう!やってみるね!」

 

先程までの悩んでいた少女はどこへやら。満面の笑みで礼を言い、背後の森へと駆けていく少女。やってみる、とは何をする気なのか。

 

「・・・答え方を間違えたか?」

 

盛大にね。

 

◇◆◇

 

 

「相談に乗ってくれてありがと!お陰でみんなにハッピーを贈れたよ!」

「それは何よりだが、何を贈ったと?」

「あなたの言う通り若さ、だよ!」

 

若さをプレゼントする、とはどういう事だと訝しむTHE Bi-ne。

 

「えへへ~。我ながら良くできたと思うんだ!」

 

笑う少女の手にはバスケット。その中にはリンゴが敷き詰められていた。その一つを手に取りTHE Bi-neへと差し出す少女。

 

「はい!あなたの分!これであなたも幸せだよね!」

「このリンゴが何か?」

 

「これを食べるとね、若返るんだよ!」

 

「何だと・・・?」

 

ログインした時から感じていた違和感の正体が明かされた。普段よりも多く、焦った様子のキッズダイバー。何の脈絡も無く現れ、不可思議な問いを投げ掛けてきた少女。その二つが線で繋がった。もし、この少女の話が本当なら自分はとんでもないデータ改竄の片棒を担いでしまったのではないか?下手をすれば電子テロだ。

 

外部から意図的にアバターデータを書き換える事が可能であり、ロビーのダイバー達の様子を見るに自力での幼児化解除は不可能。しかもフルダイブ式のVRゲームという関係上、GBNにはパーソナルな領域、「人格データ」も存在する。もし、アバターの年齢に人格データまで引っ張られてしまったら───

 

(ログアウトした瞬間、大量の精神疾患者が生まれる事になる!)

「・・・」

「食べないの?あ、もしかしてリンゴ嫌いだった?あちゃー、その可能性は考えてなかったなぁ」

 

リンゴに手を伸ばさないTHE Bi-neを見て的外れな見当を付ける少女。当のTHE Bi-neは内心冷や汗が止まらない状態だった。

 

(落ち着け・・・まだ公な事件にはなっていない。幸い敵対してる訳じゃないんだ、確認すべき事を聞き出して解決すれば良い)

 

「それを他の誰かに委託したか?」

「いたく?あぁー、そう言えばクーファお姉ちゃんに何個か渡したよ。料理に使いたいって言われて」

 

料理人ELダイバー クーファ。極端かつ独創的な味付けをする事で有名なELダイバーであり、好んで彼女の料理を食べたがる者はごく少数だ。だが、クリスマス当日に料理に使いたい、という事は公式にしろ個人的にしろ誰かに振る舞った可能性が高い。若返り効果が素材として使われた場合でも発揮されるのは不明だが、クーファの方も抑えなくてはならなくなった。

 

「他は手渡しか?」

「そうだよー!メイお姉ちゃんとリゼお兄ちゃんにも渡せたんだ!後はカグヤお姉ちゃんとニチカお姉ちゃん!他にもダイバーのみんなに食べてもらったよ!」

 

恐らくTHE Bi-neがロビーで目撃したのがその他の名も知らぬダイバー達なのだろう。クリスマスという事も相まって、見目麗しい彼女をイベントNPDと勘違いしてリンゴを受け取ってしまったと思われる。さらにメイやリゼ達も、【新しい妹】からのプレゼントは断らないだろう。そもそも食べたらアバターが若返るリンゴなど、ゲーム内という事を差し引いても警戒出来ないが。

 

(言い方からするにELダイバー、だよな)

 

基になるデータがしっかりしていたからか、或いは出会った時には数日経過しており自我を確立していたのか、THE Bi-neとの会話そのものには違和感が無かった。内容は不思議な物ではあったが。

 

(とにかくELバースセンター。リンゴも解析してもらえれば・・・)

「だいたいの事情は分かった。私の落ち度だな」

「んぇ?落ち度って?」

 

 

-貴族説明中-

 

 

「───だからこそ、ビルドデカールを用いてGBNに適合させなければならん。そんな効能があるリンゴを作れたのも、ゲームで言う所のバグテクニックだろう」

「ほぇー、そうなんだ・・・」

「私について来い。ELバースセンターに案内する」

「・・・やだ!」

 

ひとしきりの説明を終えたTHE Bi-ne。まだ名前の無い少女も納得したように見えたので、終わりだと思われたが何故か拒否されてしまった。

 

「何?」

「まだサラお姉ちゃんに幸せ届けてないもん!他にもいーっぱい!配るまで終われない!」

「それも説明しただろう。私の答え方が悪かったと。下手をすれば現実世界にまで影響を及ぼすと」

「むぅ・・・じゃあ───」

 

言いながら後退し、THE Bi-neが気づいたのと同時にダッシュする少女。木の裏に姿を消したと思った瞬間、木々を揺らして何かが飛び立った。

 

「メビウスゼロ・・・!?」

『競争しようよ!どっちが先にサラお姉ちゃんに辿り着くか!』

 

本来は宇宙空間用のMA メビウス・ゼロに搭乗し、空へと逃げる少女。口振りからするにサラの居場所は知っているようだ。

 

「チィッ!」

 

珍しく盛大な舌打ちをしながらEX2の元へと走るTHE Bi-ne。その手元にはコンソールが浮かんでおり、愛機に搭乗しながら誰かへのメッセージを打っている。

 

(ビルドダイバーズと近いのはマギーさんか?クーファの居場所は・・・クソッ、ジェーンもサヨもインしてない!ならフレンに!)

 

親交があり、よくビルドダイバーズの面々と絡んでいるお節介オネェさんマギー。ELダイバーの知識元・友人として、後見人の次に名前が挙がるコミュ強ELダイバーフレン。THE Bi-neの数少ない知り合い二人にサラの保護と、クーファの料理ルート確保を依頼するようだ。

 

「これでよし、行くぞX2!」

 

二人へのメッセージ入力と機体の起動をほぼ同時に完了させ、メッセージの送信と共にEX2改が飛び立つ。

 

「逃がさん!」

『うわっ、来るの早っ!』

 

元からクロスボーンガンダム系は機動性・運動性に優れている。さらにGBN内におけるクオリティボーナスも追加されたEX2改は、そこら辺の高機動機に引けを取らない足の速さを持つのだ。

 

『むぅぅぅ!邪魔するならぁ!いけぇみんな!』

「何!?」

 

少女の言葉に呼応するかのように、EX2改の真下から対空砲火が上がる。弾丸に続いて射撃を行った本体が空へと上がってきた。

 

「鉄血の機体か・・・!」

 

メビウス・ゼロを守るように展開したのは、グリムゲルデ、ヘルムヴィーゲ・リンカー、オルトリンデ、ジークリンデの4機。鉄血のオルフェンズ本編と外伝に登場したヴァルキュリア・フレーム機である。

 

THE Bi-neが歯噛みしたのは数の多さだけでなく、鉄血機共通の特殊スキル【ナノラミネート装甲】を持っているからでもある。ビーム攻撃を減衰させるナノラミネート持ちと、ビーム兵器がメインの機体は当然ながら相性が悪い。さらに言えば、クロスボーンガンダムと鉄血機はどちらも基本的に接近戦を得意としており、クロスボーンはビーム兵器が主体。分が悪いのは目に見えている。

 

『ふふーん!備えは万全にってね!じゃあまたねー!』

 

勝ち、とまではいかなくとも、サラの元に辿り着くまでの時間は稼げると確信しメビウス・ゼロの軌道を修正する少女。数でも相性でも有利なのだ、当然の慢心だろう。

 

───Caution! Caution!

 

『へ?』

 

相手が三桁ランカーでなければ。

 

「無人機程度で、私を止められると?」

 

『うっそぉ・・・』

 

メビウス・ゼロのレーダーが捉えたのは無傷のEX2改、撃破判定を受けて機能停止し、機体からテクスチャを撒き散らしながら墜ちていくグリムゲルデとオルトリンデ。ジークリンデは左腕が無く、ヘルムヴィーゲはバスターソードを取り落としている。

 

『ヤバッ───』

「フンッ!」

 

ショットランサーを投げつけてジークリンデにトドメを刺し、その勢いのままビームサーベルを引き抜きメビウス・ゼロに迫るEX2改。正面にしか向かないリニアガンではどうしようもなく、ガンバレルを切り離して迎撃させるが遅すぎた。

 

「さようなら・・・ではないが!」

 

コックピットの存在する機首部分を斬り落とし、空けていた左手でキャッチ。ガンバレルの基部でもある胴体部分を、さよキンキックの要領で蹴り飛ばす。制御を失ったガンバレルのワイヤーが、残っていたヘルムヴィーゲに絡み付き動きを封じたのは狙ったのか偶然か。

 

「私の勝ちだな?」

『・・・はーい』

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「ぶー・・・」

「という事だ。私の責任でもある」

「なるほどねぇ・・・ビーくんのメッセージ見た時は何事かと思ったけれど、そういう事情があったのねぇ」

 

少女を連れてやって来ましたELバースセンター。THE Bi-neからの連絡を受け、ビルドダイバーズとサラを連れた状態でセンターに入っていたマギーに出迎えられている所である。

 

「生まれたてのELダイバーは純粋なんだから。知らなかったとはいえ、変な事を吹き込んじゃダメよ?」

「重ねて申し訳ない」

「まぁ悪意があった訳じゃないし、ワクチンも直ぐに作れそうだし、リンゴを食べちゃった子達への対応を手伝ってチャラになるんじゃないかしら?」

 

「その通りだ。働いてもらうぞ」

 

マギーの言葉を引き継ぎながら、センターから出てきたのは目付きの悪いハロ。紫色のボディに黒い帽子を被った出で立ちのダイバー アンシュである。

 

「あら、しっかりクリスマス仕様なのねぇ」

「コーイチに被せられただけだ、断じて自分の意思じゃねぇ。幼児退行リンゴの解析は済んでる。後は配って食わせるだけだ」

「さっすがぁ」

 

システム面にとことん強いアンシュ。ELダイバー絡みとなれば尚更だろう。

 

「幸い食っちまったダイバーの居場所は把握できてる。ソリ貸してやるからお前が配ってこい」

「承知した・・・ソリ?」

「頼んだぜぇ?眼帯サンタさんよ」

 

 

-貴族仮装中-

 

 

「何故着替えさせたのか・・・」

「クリスマスだからだよ。さっさと行ってこい」

 

数分後、漆黒のサンタ服を纏ったダブル眼帯貴族が爆誕していた。プレゼント袋の中にアンシュ謹製ワクチンリンゴをたっぷり詰め込んだ姿は、髭を生やしていない若サンタクロースである。色合いと戦法的にブラックサンタだけど。あまりにシュールな光景にマギーとユッキーとアヤメは笑いを堪えるのに必死だった。

 

「まぁいい・・・では行ってくる」

 

イベントNPDのサポートとして用意されたメガライダーソリにEX2改を跨がらせ、今回限りのサンタクロースとして飛び立とうとしたTHE Bi-ne。そんな彼を呼び止める声があった。

 

「待って!」

『どうした?』

 

例の少女である。メガライダーソリのホバリングによる風圧に負けず、可能な限りEX2改に近付いて声を掛けている。

 

「名前!なーまーえー!がー!欲しいのー!!!」

 

正式に新たなELダイバーとして認定される少女。無論後見人など見付かっている訳もなく、名前など付けられていない。さらには自称した名も無い為、現状彼女は【名無しのELダイバー】である。そんな彼女に対してシュール街道まっしぐらの眼帯貴族───

 

『イドゥ、でどうだ?』

 

早かった。

返答を聞く事なく、突貫クリスマス仕様となったEX2改をメガライダーソリと共に飛翔させGBNの夜空へと消えるTHE Bi-ne。

 

「照れちゃったのかしら?」

「さぁな」

 

「いどぅ・・・イドゥ・・・ふふっ、わたしはイドゥ!今からイドゥ!」

 

「気に入ったみたいね」

「ふん・・・」

「もしかして、考えてたの?この子の名前」

「さてな」

 

「えへへ!プレゼントは贈っても貰ってもハッピーなんだね!」

 

 

その日、髑髏と交差した骨を掲げ、凄まじいスピードのソリに乗り、両目に眼帯を着けた黒いサンタクロースが目撃されたという。




無印時代よりも幼いサラが見たかった?
うん、作者もだよ。

【イドゥ】
クリスマスから数日後に正式登録されたELダイバー。
名付け親はTHE Bi-neだが、後見人はまだ居ない。
「何かが欲しい」「誰かから貰いたい」といった、いわゆる物欲が基になり、さらにクリスマスが近付き「恋人が欲しい」「家族が欲しい」「幸せが欲しい」等の欲求も混ざって生まれたELダイバー。
ファーストコンタクトでTHE Bi-neから「若さ」と答えを貰い、元々の行動規範もあって暴走した。


【エターナル・ダークネス】(出典:青いカンテラ様)
リーダーのクオン、関西弁女子ササミ、謎のニキネキ ペーパーで結成されたフォース。クオンと後述のチェリーの娘であるELダイバー フューも属している。
普段よりも幼くなったフューに(尊さで)壊滅させられた。(その後復旧)

【チェリー・ラヴ&ビスク】(出典:朔紗奈 様)
トランジスタグラマー酒呑みG-TUBERという属性盛り盛りの女性ダイバーと、フューの姉に当たるELダイバーの二人。クオン達と同じく幼児化したビスクに撃沈させられた。

【ビルドフラグメンツ&ニチカ】(出典:守次 奏 様)
サムライガール アヤノ、炎の元気っ娘ユーナ、ステルスギャル メグ、剣の道に生きるELダイバー カグヤの四人で構成されるフォースと、カグヤの姉であるELダイバー ニチカの組み合わせ。三人は暴走こそしなかったものの、カグヤが単純に幼いアバターになっただけなら猫可愛がりしてる。ニチカ?平常運転。

【フレン】(出典:二葉ベス 様)
フォース ケーキヴァイキングに属する恋と友情のギャルELダイバー。フレンド数はGBN全体の中でもトップクラス。THE Bi-neもその一人であり、彼の少ないフレンドの一人でもある。

【クーファ】(出典:青いカンテラ 様)
流離いの料理人とも呼ばれるELダイバー。その味付けは独創的で大雑把。イドゥから若返リンゴを仕入れて料理に使った。フューとビスクが幼児化したのは、イドゥのリンゴが入ったクーファの料理の試食係だったからという裏設定があったりなかったり。
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