GBN:ダイバーズコンピレーション   作:X2愛好家

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スペルビアジンクス流行れ…


海の男、時々宇宙
海の男と無人島


海、一面の青。波も無く穏やかな時間が流れている。

そんな海の中を移動する機影が一つ。カラーリングは青系統に変更されているが、機動戦士ガンダム00の外伝の一つ【00V】に登場する【スペルビアジンクス】だ。戦闘中という訳でもなく、ダイバーは鼻歌交じりに機体を操縦している。

「外は良い日差しだねぇ~早くのんびりしたいぜ」

スペルビアを操縦するダイバーの名は【ミズキリ】。いつもはアロウズの不良軍人という設定の軽いロールプレイを楽しむエンジョイ勢である。そもそもアロウズで素行不良が許されるのか微妙な所だが。

その服装も、腰から下はアロウズの制服だが上は赤いシャツに青いアロハという変わった格好をしている。

 

ミズキリが目指しているのは、自分が発見した無人島のようなフィールド。自分以外のダイバーや機体が見当たらず、気候は常夏、海も穏やかでビーチも綺麗と正に優良物件と言った所。なのだが、パラソルやチェアで自分好みにカスタムしようとした所エラー表示。カスタム可能なのは正式に権利を取得した【フォース】のみとの事だった。ようするにフォースネスト専用島なのだ。

契約の為に機体での上陸は可能だが、それ以外は基本的に何も出来ず、探索しても何も無い。だが気候はミズキリ好みだった為、ビーチに寝転がるだけでも満足なのだ。

 

掲示板や情報サイトにもこの島の事らしき情報は無かった為、正式な契約フォースが現れるまで一人でのんびりしようと暇になっては上陸し、くつろいでいる。基本的には暇なのだが。

 

また、海の探索を頑張ったご褒美なのか空中からは接近はおろか捕捉すら出来ない仕様になっているらしく、この島を見つけて上陸するには海路しかない。ミズキリも宇宙や空中での戦闘用にジンクスⅢを所持しているが、空から接近しようと試みた時は島が有る筈の場所に何も見えない上、レーダーにも映らないという徹底ぶりに若干引いていた。島全体に光学迷彩機能でも付いているのだろうか。

 

おそらくフォースネストとして契約、設定すれば空からもアプローチ出来るようになる。というのがミズキリの推測だった。

「そうでもなきゃ不便だよなぁ、良い場所だけど」

プール施設も良いが個人的にはやはり海、というのがミズキリという男だ。プライベートビーチで気が済むまでのんびりグダグダし、思い出したように海で泳ぐ、そこに水着美女とキンキンに冷やしたドリンクがあれば文句無しだ。

 

「そろそろだな」

レーダーに他の機体反応は無し。まだ見付かっていないらしい。

「今日ものんびりしま───(ピピッ)」

メッセージ。これからお楽しみという時に限って何か起きるのはお約束だろうか。

「はぁ・・・誰だよ・・・」

 

〖ミズキリ!頼む!力を貸してくれ!これからフォース戦なんだがメンバーの一人がリアルで事故っちまったらしくて…人手が足りないんだ!〗

 

知り合いからのメッセージだった。

一人抜けたぐらいでとは思うが、たかが一人されど一人なのだ。GBNでも一人の差は大きい。同じ人数同士から一人減ったならその時点で不利になるし、最初から人数が少ないなら尚更だ。オマケに親友未満知人以上のダイバーからのSOSなのだ、出来れば助けてやりたい。

 

【今から向かうから、10分待ってろ】

そうメッセージを返すと、スペルビアジンクスを反転させ来た海路を戻るミズキリ。

「しゃーねぇな・・・」

フォース登録もしていない島にショートカット機能や転送ゲートがある筈もなく、地道に戻るしかない。

やむを得ず今日の予定は、まったりからバトルに変更となってしまった。

 

 

 

「マジで助かったわ!サンキューな!」

「俺じゃなくても良かったろ・・・そこに傭兵も居るし」

バトル終了後に会話するミズキリとフォースリーダー。ミズキリの言う傭兵とはロビーの片隅に佇んでいる女性の事だ。

「いやー・・・あれは・・・うん、とにかく来てくれて助かった!」

「何でスルーしたよ・・・まぁいいや。じゃあこれでな」

「おう!また何かあったらヨロシクな!」

 

バトルの手助けなら普通にやるが、出来れば休みモードの時にいきなり呼び出すのは勘弁してほしい。そう思いながら軽く手を振り、別れる。

「バトったからか、のんびりする気が失せたなぁ」

かといってヴァルガのような魔窟に進んで入る程バトルジャンキーという訳でもない。

「何するかなぁ・・・思い付かん・・・」

ちなみに全く同じタイミングで似たような事を考えている少女が、ミズキリの近くのベンチに座っているのだがそれは互いに知らない事である。

「今日はログアウトかね」

 

カッコつけてロビーから出てきたのに、ミッションを受けにまた戻るのも・・・ミズキリはその日普通にログアウトしたのだった。

 

 

「今日は久々にミッションでも受けるかな」

昨日のバトル熱がまだ残っているのか、珍しく好戦的なミズキリ。知人の手伝い等はしているものの基本的にはソロダイバーなのだ、一人で受注可能なミッションを適当に見繕う。

 

──…………?

 

「ん?」

何か聞こえたような気がしたが、自分に話し掛けてくる者はおらず会話している訳でもない。ロビーは相変わらず他のダイバー同士が会話し、賑わっているが今自分に関係があるのは目の前の受付NPDくらいだ。

気のせいと思い、スペルビアで戦えるミッションを受注する。

 

──……?……!

 

その【声】は届かなかった。

 

 

 

「さてと・・・行きますかね」

ミズキリが受注したのは機動戦士ガンダムUCにおける、ジオン残党のトリントン基地襲撃に参加するという物。基本的に陸路か空からの降下がスタートとなるのだが、水中の適性を持つ機体なら水泳部と呼ばれる水陸両用機と共に海路から進撃するルートも選べるのだ。

ジオン残党の機体に一機だけジンクスが混ざるのも違和感があるが、そこはGBNという事でご愛嬌。

「マラサイも居るだろうしな」

元々ティターンズの機体だが、モノアイ式の頭部のお陰で違和感の少ないマラサイと一緒にするのはどうだろうか。

 

「ん?始まったか」

水中から見ている為に若干分かりづらいが陸の方向で光が見えた。自機のスタート時点で必ず爆発光が瞬くのだ、どれだけ急いでも、どのルートでも、爆発光の主は救えない。ちなみに爆発光の主は空、陸どちらのルートから狙撃機が最大望遠で見ても、どれだけ急いでスコープを覗いても正体が判明していない。

 

「お供は・・・ゾゴックか、頼んだぜ?」

このミッションはソロで出撃するとジオン残党側の機体がランダムで一機、NPDとして共闘してくれるのだ。今回ミズキリの共闘機体は特徴的なシルエットと武装のゾゴックのようだ。

「何か持ってねぇか?まぁ良いけどさ」

ミズキリと共に進むゾゴックは右手に剣のような物を所持していた。ゾゴックという機体は知っていても映像版の原作は知らないらしいミズキリだが、知っているならニヤリとするゾゴックだろう。

「ミズキリ、スペルビアジンクス・・・エントリーだ!」

 

 

 

「あー負けた負けたぁ・・・妙に強かったな・・・あの・・・何だっけ、飛んでた奴・・・バイ何とか」

直前に戦った相手の名前が出てこないのは、あるあるだったりしないだろうか。

結果としてミズキリは撃破されミッション失敗となってしまった。パートナーNPDのゾゴックも善戦してくれたが、今回は届かなかった。

「まぁ今日失敗したら明日成功させれば良いわな」

ミズキリはポジティブ寄りな性格だった。

「反省はあの島でのんびりしながら、かね」

 

──……!……!!…!

 

「・・・疲れてんのかなぁ」

また何か聞こえる。そこまで疲労はしていない筈だが。

「まぁ休みなら行って寝っ転がればいいか」

 

本日はスペルビアジンクス酷使デーなのだろうか。ミッションに移動にと大活躍のスペルビアジンクスである。彼の、或いは彼女の声を聞く事が出来るならば何と言っているのか気になる所である。

 

 

「到着ぅ!イヤーやっぱ良いなぁこの島は!」

今回は助っ人要請が来る事もなく辿り着けた。ビーチに降り立ち思いっきり伸びをするミズキリ。

「さて、よっこらせっと・・・」

片膝をつかせたスペルビアジンクスから少しだけ距離を取り、砂浜に寝転がる。日差しが眩しいが、これはこれで良い物だ。

(本音を言えばパラソルかヤシの木が欲しいが。ついでに良い女とキンキンに冷やした飲みもん)

ついでの欲望が大きい。

 

(少し寝るか・・・)

戦闘で神経を尖らせていた反動か、ウトウトし始める。

(砂浜に寄せる静かな波の音、空を飛ぶ鳥の声、後ろから聞こえてくる風に揺られた木々の音、そしてカンカン何かを叩く音・・・何かを叩く音?)

 

───カンカンカンカンカンカン

 

上半身を起こすミズキリ。確かに何かを叩く音が聞こえる。音の発生源は───

(ジンクスから?)

自分からは見えない位置である左脚の方から聞こえてくる謎の音。

(何だ・・・?)

警戒しつつ近づいていく。もし誰か別のダイバーが居るならこちらの足音も聞こえているはずだが、音は変わらず左脚から聞こえる。そしてその姿が見えた。

「・・・えーと?何してんの?」

「?・・・!」

 

そこに居たのは見知らぬ少女。ミズキリの声を聞いて顔を向け、一瞬呆けた後に笑顔になる。

 

「やっと来てくれた!」

「まず俺の話聞いて?」

「寂しかった!」

「意地でも会話しない気かチクショウ」

 

ファーストコンタクトから失敗している気がするミズキリだった。

 

「で?俺のジンクスに何してた?」

少し語気を強めるミズキリ、自分の愛機であり相棒なのだ、何か細工しようものならたとえ目の前の少女であっても容赦しない自信がある。少女もそんなミズキリの感情を理解したのか、少しシュンとなりながら語り出す。

「悪い事はしてないよ・・・ちょっと痛そうだったからマッサージしてた・・・」

「マッサージ・・・?」

ガンプラにマッサージをしていたという少女。疑念が強まるミズキリだが───

「・・・ちなみにどの部分だ?」

スペルビアジンクスの足首付近の装甲を指差しながら何故かピョンピョンしだす少女。

「ここ!このへん!」

「待て・・・何でそこを知ってる?」

「この子が!痛かったって!言ってた!から!」

「ジンクスが・・・?」

 

少女が(跳ねながら)指差している場所は、島に来る前に受けたミッションにて被弾した箇所だった。GBNのデータ上では修復が完了している筈だが。

 

「だから!痛いの!痛いの!飛んでけー!って!」

「分かった分かった・・・とりあえず落ち着け」

 

(あのミッションのログでも見たか・・・?だが、マッサージしてただけ?何か細工していたなら納得だが、見られて気まずいって感じでもなさそうなんだよな)

 

「機体のステータスだけ調べるからな?そこで待ってろよ?」

「分かった!!」

「・・・静かに待ってろよ?」

「!!!(ピョインピョイン)」

「跳ねるな・・・はぁ・・・」

 

スペルビアジンクスに搭乗し機体のステータスチェックを行う。が・・・

(オールグリーン・・・本当に触ってただけか?)

特に異常は無かった。

 

機体から降りると少女が「ほら何もしてないでしょ?」と言わんばかりのジト目でミズキリを見ていた。

「じぃーーーー・・・」

「・・・悪かったよ・・・でもな?人の機体に勝手に触るもんじゃないぞ?」

「ごめんなさい・・・」

「素直でよろしい。俺も疑って悪かったな」

「すなおでよろしい!」

「この野郎・・・」

少女だが。

 

「で?ジンクスとお話できる嬢ちゃんは何でこんな所に?」

ガンプラの声うんぬんには、まだ懐疑的なミズキリの質問。

「むー!嬢ちゃんじゃないもん!シゼはシゼ!シゼって名前があるの!」

どうやら少女の名前は【シゼ】らしい。

「はいはいシゼね、で?嬢ちゃんは何でこの島に?」

「うがー!名前教えたんだから名前で呼べー!」

からかいすぎたか。

「悪かった悪かった。シゼはこの島で何してんだ?」

「やっと覚えた、あんぽんたん・・・気付いたらこの島に居たの」

さりげなく、あんぽんたんとか言われたが。

 

「フォースネスト登録もしてないのに島からスタート?・・・バグか?」

コンソールを操作して確認するが、この島は未だにフォースが登録されていない。そんな島からスタートするというのが本当ならバグ以外の何物でもない。

(もしかして空から見えない、入れないのもバグか?)

運営への報告も考え始めたミズキリ。そんな彼の思考を遮るようにシゼが話し掛ける。

 

「バグ?じゃないと思うよ?ザワザワする嫌な感じしないし。それにシゼはこの島で生まれたから」

「生まれた?まさか・・・」

ELダイバー。第二次有志連合戦と呼ばれる戦いの前に発表された存在。かつてはGBN存続の危機を招く存在だったらしいが今は共存が可能となっている電子生命体。シゼの「気付いたら島に居た」というのも「最初から島に生まれて、島から出た事が無い」という事だろう。ELダイバーはGBNのデータから誕生するらしいが・・・

 

(待てよ・・・?)

そういえば、とミズキリは思い出す

「シゼ、お前さっき寂しかったって言ったよな?」

「言ったよ!何回も呼んだのに無視したし!遊びたかったのに!すーちゃんともお話したかったのに!」

 

原 因 俺 じ ゃ ね ?

手で顔を覆うミズキリ。おそらく、何回も呼んだというのはミッションを受注しようとした時に聞こえた【何かしらの音】の事だろう。すーちゃんとはスペルビアジンクスだろうか。

GBNのデータから誕生するELダイバー、海が【好き】、ミズキリの【データ】、スペルビアジンクスの【戦闘データ】、そして無人島発見時の【ワクワクした感情】。

や っ ぱ 原 因 俺 じ ゃ ね ?

 

「なぁ・・・シゼはさ・・・ELダイバーなのか?」

「たぶんね!」

そこはYESかNOで断言してほしかった。ポケットなモンスターじゃないんだから。

「ちなみに俺の名前「ミズキリ!」マジかぁ・・・」

確 定 で は ?

食いぎみに名前を言い当てられほぼ確定してしまう、【ミズキリのデータを基に誕生したELダイバー】という事実。

(この場合は何処に届け出ればいいんだ?区役所とか市役所?生まれたばっかだから病院?)

内心も混乱を極めるミズキリ。運営に報告という考えが完全に抜け落ちている辺り本当に混乱しているらしい。時にクールで時にホットな海の男とは。

 

 

落ち込んでる?嫌われた?何て言えば良いの?

顔を手で覆い無言になってしまったミズキリを見て不安になるシゼ。

 

───ちょっとビックリしてるだけだよ

───だから大丈夫

 

(すーちゃん・・・ありがと)

すーちゃん───スペルビアジンクスの声に励まされ、ミズキリの言葉を待つ事にしたシゼ。そして───

 

「シゼ、お前『ヒャッハー!最高の海だぜぇぇぇ!』何なんだチクショウが!」

 

 

ミズキリが何かを決意し、シゼに語ろうとした瞬間に聞こえてくる声と音。その正体はすぐに判明した。

ミズキリとシゼの居るビーチ近くの海から巨大な水飛沫が上がる。その中から現れたのは───

 

「グラブロ!?・・・なのか?」

そう、ジオン軍が開発した水中用モビルアーマー【グラブロ】が海中から出現したのだ。ミズキリが最後に疑問系だった理由は、簡単に言えば【スタイリッシュ】なのだ。

「サンダーボルト版かよ・・・」

機動戦士ガンダム サンダーボルトに登場した、リファイン版のグラブロ。それを自作したのだとしたら、先程の世紀末チックなヒャッハーに似合わずビルダーとして中々の腕前ということだろう。そしてミズキリの疑問点はリファイン版というだけでなく、グラブロに異物が付いているからでもある。

「何で腕組みしてんだ・・・?」

グラブロのモノアイの上、上部装甲に何故か腕を組んだゴッグの上半身がくっついているのだ。しかもやたらスリムな細マッチョと言えなくもないゴッグが。というかゴッグかどうかも確信が持てない。

「ちょっとキモい・・・」

「あれは謎だな・・・サンダーボルト版って言い張っても微妙な所だ・・・」

『おおい!そこ!聞こえてんぞ!誰がキモいってぇ!?』

この場にグラハム・エーカーが居たならばグラブロの集音性能を褒めていただろう。

 

『キモくはないぞ、結果にコミットしたゴッグだ』

『カシラァー!置いてかないでくださいよー!』

『直ぐに追い付いたぞ・・・やはりヅダはズールより優れている・・・』

 

さらに別の声が響く。

グラブロの周囲に2つの水飛沫が上がり、新たな機体が海中から出現した。

 

「せいきまつ・・・」

「もう腹一杯なんだが・・・」

現れた機体は、何故かモヒカンのようなパーツを頭部に追加したゼー・ズールと、耐水処理を施したと思われるヅダ。ゼー・ズールは見た目のインパクトが、ヅダは搭乗しているダイバーのクセが強い。グラブロゴッグ(仮)の後に見た為、衝撃は薄れているが逆に言えば追いインパクトが来ているのだ。胸焼けがしそうである。

 

「ゴッグの方からも声がしたのはツッコミ入れないとダメか・・・?」

『ゴッグじゃない、結果にコミットしたゴッグだ』

「もう何も言わねぇ・・・」

 

おそらくグラブロ側にヒャッハー(仮)が、ゴッグ側には結果にコミットしたダイバーが乗っているのだろう。結果にコミットしたダイバーって何だよ。

 

『オレらは泣く子も黙る海のならず者!フォース【ウミハゲタカ】だ!』

シーバルチャーではないらしい。

 

『この辺りの海域にレアアイテムが眠っているのは知ってるんだぜ!お前らが持ってるのか!?』

「持っとらんわ!そんな話初耳だぞ?ガセネタじゃないのか?」

『このオレの情報網を侮るなよ?確かなスジからの確かな情報だ!』

「そういうのが一番信用ならんのだが・・・ともかく俺達は何も知らん」

『いーや!オレの嗅覚は伊達じゃない!そのチビッ子からレア物の匂いがする!』

微妙に間違ってはいるが、たしかに稀少だろう。ELダイバーという存在は。グラブロのモノアイがシゼを捉える。下卑た視線に晒されたシゼは恐怖から後退りしてしまうが───

「みずきり・・・?」

「ガキを脅す野郎を見逃す程落ちぶれてねぇよ」

 

シゼを庇うように立つミズキリ。

『あぁん!?やる気かぁ!?』

『やるのかぁ!?』

『ヅダは速いぞ?』

「そっちがその気ならな・・・!」

一触即発の空気。そんな空気を壊したのは───

 

『おい・・・俺とバトルしろよ』

コミットゴッグのダイバーだった。

『ちょっ・・・ちょちょい待ち?メキャンサー?今完全にオレら全員で掛かる流れだったよね?何でタイマンの空気作り出したの?』

『俺と・・・俺とバトルしろぉぉぉぉぉ!』

『メキャンサー!?』

いったい何が彼の琴線に触れたのか。リーダーと思わしきグラブロのダイバーも困惑している。

 

───いつも主が本当に申し訳ない

───発作が・・・

───い つ も の

───私は速いぞ?

 

上から順にゴッグ、グラブロ、ゼー・ズール、ヅダの声をシゼが聞いた結果である。ヅダに関してはガンプラの声までクセが強かった。

 

「・・・とにかく、そのゴッグ『結果にコミットしたゴッグだ!』・・・結果にコミットしたゴッグのダイバーと俺で戦うって事で良いんだな?」

『こうなったメキャンサーはオレでも止められん・・・それで良いぞ・・・』

本当に何があったのか。

 

 

「今日はお前をこき使っちまって悪いな・・・もう少しだけ付き合ってくれ、相棒!」

───うん、任せてよ相棒

ミズキリには聞こえない声。シゼはそれをしっかりと感じ、聞いていた。

「ミズキリ、スペルビアジンクス!エントリー!」

 

海に飛び込むスペルビアジンクス。同じく海中に潜ったグラブロ。互いに警戒し合う状態。

「さぁて?一人でそのデカブツを動かすのか?」

『いいや?メキャンサー、結果にコミットしたゴッグ!アクセラレーション!』

まさかの正式名称だった【結果にコミットしたゴッグ】がグラブロから【分離】する。

「ジオングかよ・・・」

(略)コミット(略)ゴッグの下半身はミズキリの言った通り、あんなもの飾りと言われた脚部ユニットの無いジオングのロケットモジュールを水中用のスクリュー等に換装した物だった。

 

『行くぞ!』

「っ!速い!」

正面から突撃してきたコミットゴッグ。鋭い爪のようになっている両腕をスペルビアに振ってくる。

機体を捻って何とか回避し、次に備えるミズキリ。

(直線加速は向こうのが速い・・・なら!)

小刻みにGNドライヴを吹かしコミットゴッグの突撃を回避し続けるスペルビアジンクス。

狙っていたのは───

「ここだ!」

ゴッグに背を向けた状態から、振り向き様に繰り出したGNクナイ。その刃は見事にゴッグの頭部を貫いていた。

『まだだ!たかが───』

「メインカメラをやられだけ・・・じゃないんだなぁこれが!」

頭部を貫かれた衝撃で突進が止まってしまったゴッグ。慣性でしか動いていない中、スペルビアジンクスがさらに仕掛ける。右脚のクローを展開しゴッグの左腕を掴んで動きを封じる。そして左腕のGNクナイも展開し、ゴッグの右肩関節に突き刺す。

『クッ!』

「内蔵武装までオミットするからこうなる!」

本来ゴッグとジオングの腹部にはメガ粒子砲が内蔵されているのだが、このコミットゴッグは機動性を重視したのかどちらのメガ粒子砲も搭載されていなかった。

 

「これでフィニッシュだ!」

ゴッグの右肩を斬り裂いたGNクナイを引き抜き、実体刃とは逆の部位をゴッグの破損した頭部に押し付ける。そこから展開されたのはビームサーベルだった。

「出力マックス!脂肪は燃焼だぜ!」

『うぅおぉぉぉぉあぁぁぁぁぁ!!』

サーベルの出力を限界まで引き上げ、ゴッグを内部から焼いていくスペルビアジンクス。やたら迫真の叫びと共に、結果にコミットしたゴッグは海の藻屑となった。

 

 

『よくもメキャンサーを!』

『やはりヅダはゴッグよりも優れている!』

「結局こうなるか・・・良いぜ、纏めて相手してやる!」

『やめとけ!』

ゴッグのダイバーの仇を討たんとする(?)二人のダイバー。だがそれを止めたのはグラブロに乗ったリーダーだった。

『オレ達は海のならず者だ・・・だが海の男でもある。ならせめて海に嘘はついちゃあいけねぇよ・・・』

誰だお前。

『カシラ・・・』

『・・・』

『それにメキャンサーがタイマンで戦うと決めたんだ。オレ達が勝手な事したら後々面倒な事になる・・・』

こっちが本音だった。メキャンサーとは何者なのか。

『悪かったな、ここの事は誰にも言わねぇ。この海に誓う』

本当に誰だお前。

『嬢ちゃんも悪かったな、レア物なんて言って』

ブンブンと横に首を振って答えるシゼ。

『じゃあな!行くぞお前ら!次のお宝がオレ達を待ってるぜぇ!ヒャッハー!』

『どこまでも付いて行くぜ!カシラァ!』

『ヅダはこの海に厳然と存在しているのだよ・・・』

先程までの良い人感を投げ捨て、世紀末ヒャッハーに戻るグラブロのダイバー。そんな彼に追従し、共に海の彼方に消えていくウミハゲタカの面々。

 

「濃い連中だったな・・・大丈夫か?シゼ」

胸焼けフォースを見送り、ビーチまで戻ってきたミズキリとスペルビアジンクス。

「うん!水の中でよく見えなかったけどカッコよかった!」

「見えなかったのにカッコいいって・・・まぁ良いや」

「すーちゃんもお疲れ様!」

───うん、ありがとうね

 

「ねぇ?さっき何て言いかけたの?」

「あん?あー・・・その・・・」

言い淀むミズキリ。ウミハゲタカとの邂逅とバトルで埋もれかけていたが、シゼに何かを伝えようとしていた。

「お前は多分俺のデータから生まれたELダイバーだ」

「・・・うん」

「だから・・・その・・・責任を取るって訳じゃないが・・・俺とフォースを組まないか?」

「・・・フォース?」

「寂しいって言ってたろ?この島を出て俺と一緒にバカやろうぜって言ってんの!」

最後は若干照れながら言いきるミズキリ。

「一緒に居て良いの?すーちゃんとも一緒に?私、他の島の事何も知らないよ?迷惑だよ?」

涙声になりながら問い掛けるシゼ。そんなシゼの頭に手を置いて撫でるミズキリ。

「知らねぇ事は教えてやるよ、それにガキ一人養えない程金に困ってる訳でもねぇしな」

「ガキっていうなぁ・・・うぅ・・・」

 

常夏の空の下で、海の男とELダイバーは互いの手を取る事が出来た。

 

「よし、契約完了!これでいつでもビーチでのんびり出来る!」

シゼとフォースを組んだ事で無人島をフォースネストとして設定可能になったミズキリ。

「ひとまずセントラルロビーに行って色々聞いてみるか。運が良ければマギーにも会えるだろうし」

お節介なお姉さん(?)なら力になってくれるはずだ。

 

「シゼー行くぞー」

「待って!すーちゃん!出して!海!中!」

「だから落ち着け・・・海がどうしたって?」

ピョンピョンしだすシゼ。スペルビアジンクスを出してほしいらしい。

 

───今日は大活躍だな、私

「ごめんね!でもね!でもね!海にね!」

「落ち着けっての・・・海に何かあるのか?」

「早く!早く!呼んでるの!」

「分かった分かった・・・」

シゼと共にスペルビアジンクスに乗り込むミズキリ。

海に潜り、あっち!こっち!と微妙に困る指示を出すシゼに従って潜り続けると───

 

「そろそろ深度がキツいんだが・・・」

「もうちょっと!・・・居た!あそこ!」

「ん?・・・マジかよ・・・」

 

ズゴックの上半身がそこにあった。

厳密には様々なユニットが接続されたズゴックだが。

【ゼーゴック】黙示録0079に登場した機体。宇宙に戦場が移る中、活躍の場を失いつつあるズゴックを転用した兵器。映像にて最後を迎えた状態で海中に転がっていた。

「あのグラブロのダイバーが言ってたのはコレか?まさか本当にお宝が有ったとは・・・」

敵性NPDの可能性も考慮して、慎重に近づくミズキリ。至近距離でも何の反応も無い。おそるおそるスペルビアの右手で触れると───

「トラップか!?」

ゼーゴックが光を放ち、粒子のようになってスペルビアジンクスに吸い込まれていく。光が収まるとゼーゴックは完全に消えていた。

 

「なんだったんだ・・・ん?」

コンソールに見慣れない表示。パーツデータの入手を知らせる通知だった。

「モビル・ダイバー・システムの設計データ・・・はぁ!?」

劇中にてゼーゴックが運用した3つの武装に加え、ゼーゴックそのもののデータを入手したらしい。

「もて余す気しかしねぇぞ・・・」

げんなりするミズキリの後ろでドヤ顔のシゼ。

「どーだ!私は幸運の女神なんだよ!」

「女神様はもっとボンッキュッボンのナイスバディだ、お前みたいなチンチクリンが女神でたまるかよ」

「チンチクリンって言うな!あんぽんたん!」

「誰があんぽんたんだ!」

───仲が良くて私も嬉しいよ

 

二人と一機の物語は始まったばかりである。

 

 

 

 

「えっ?フォースって一人でも組めるの?」

「ミズキリださーい」




ジンクスⅢ「僕は・・・?」


【ミズキリ】
日に焼けた肌の青年ダイバー。
アロウズ制服にアロハという変わった格好。
茶色の短髪。
乗機は青系に塗装したスペルビアジンクスとジンクスⅢだが海を好む為、もっぱらスペルビアに乗っている。
時にクール、時にホットな海の男。陽気な不良軍人という軽いロールプレイをしているエンジョイ勢。
本音かロールか判断がつかない強かな面もあるが、今回はシゼの混乱とツッコミに回った事でいつもの調子が出なかった模様。

【シゼ】
ミズキリのデータから誕生したELダイバー。
基になったミズキリの影響か褐色肌に腰まで伸びた茶色のストレートヘア。服装はホットパンツに青いTシャツ、その上に赤いキッズサイズのアロハシャツを着ている。
興奮するとピョンピョン跳ねる癖がある。
スペルビアジンクスの事をすーちゃんと呼ぶ。

フォース【ウミハゲタカ】
グラブロ(サンダーボルト版)乗りのリーダー。
モヒカンパーツを追加したゼー・ズール乗り。
耐水加工が施されたヅダ乗り。
妙なこだわりで意味不明な機体を製作するメキャンサーの四人で構成されたフォース。
泣く子も黙る海のならず者を自称しているが、悪評はほぼ聞かないなんちゃってヒャッハー集団。
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