あの日、あの時の光景を自分は永劫忘れることはないだろう。
夕焼けが差し込む教室で、机に腰かけ、夕焼けに負けないぐらい顔を赤くして、俺に素足を差し出す幼い彼女。そんな彼女の足の甲に口づけをする幼い日の自分。何かの本で読んだワンシーンの真似だったのかもしれない。他人が聞けば他愛のない子ども同士の口約束。けれど二人にとっては今でも大切な契り。二人を形作る全ての始まり。
これは、俺が彼女に、―――――彼女の才能に、生涯をかけて尽くす。そんな物語だ。
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「――――――
ある日の朝のホームルーム。学校の一日の始まりのルーティン、クラス担任による朝の出欠確認は早々に8人目の生徒でつまずいた。本来であれば名前が呼ばれそれに返事を返すはずの生徒からの返事はない。返事どころかそこに座っているはずの男子生徒の姿が見られない。姿が見られないのであれば遅刻か欠席のどちらかになる。では件の生徒からそういった連絡は来ているのか、担任教師は『一応』自身のタブレット端末に表示された出席簿を確認する。勿論、欠席や遅刻の連絡などは入っていない。
「また・・・・・またあいつはサボりか!!
最早何度目かわからないサボタージュを決行した彼に対する担任教師の怒りの絶叫が教室どころか学園中に鳴り響いた。
「・・・・・。」
絶叫する担任教師をしり目に少女――――
〈鳴弥、今どこ?〉
程なくすると送ったメッセージに既読が表示され立て続けに返信が来た。
〈屋上で寝てる。先生キレてるっしょ?ここまで声聞こえたんだけど(笑)〉
〈笑いごとじゃないよ。登校してるなら今からでも来たら?〉
〈昨日遅かったから教室行ったところでだよ。同じ寝るなら首痛くなる教室の机よりも屋上庭園で芝生に包まれながら寝たい。〉
(なにしに学校来てるの鳴弥・・・。)
悪びれる様子もなく学内での睡眠場所に拘る自身の幼馴染に辟易しつつも響子は続けてメッセージを送信する。
〈そう言ってこないだもサボったでしょ・・・。出席日数は大丈夫なの?〉
が、
(返事が来ない・・・。)
それまでメッセージを送った直後に着いた既読と送られてきた返信がぱったりと途切れた。
(これはもう寝ちゃったかな・・・。風邪、ひかなきゃいいんだけど・・・。)
響子は窓の外へ目を向ける。天気は晴れ。ただ秋も深まり始めている。動いている分には過ごしやすいが、じっとして眠るには今日の風はいささか冷たい。
(あとでカフェテリアで温かい飲み物でも買ってってあげよう。)
「響子がそうやって甘やかすからつけあがるんだ。」などと親友からお小言をもらってしまいそうだが仕方がない。気づいた時には隣にいて、面倒くさがりで口も悪ければ素行も悪い。しかし自分の絶対の味方でいてくれる幼馴染のことを響子はどうしても放っておくことができないのだった。
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「・・・いた。」
自分と幼馴染の飲み物を手に屋上に上がるとすぐに目的の人物は見つかった。
ちょうどいい日当たりのベンチを見つけはしたようだが、やはり当初の心配通り寒かったのか両手を自身の太ももに挟んで背中を丸め全体的に小さくなって眠っていた。幼い顔立ちと黒髪も相まって黒猫のような印象がある。
さて、どうしたものかと彼の寝ているベンチの前で立ち尽くしていると
「ぃっくしっ」
目の前で眠っていた彼が小さなくしゃみをし、そのままゆっくりと瞼を開けた。
「・・・・・ぁれ?きょーこ?」
「おはよう、鳴弥。よく眠れた?」
「ん・・・。」
目を覚ましはしたが半覚醒といったようで、ぼんやりとしたまま返事をするとそのまま頭を乱暴にかき、
「ふあぁぁぁぁ~。・・・・・んん~・・・・・はぁ」
大きなあくびを一つ。そして大きく伸びをして一呼吸。
やっぱり今自分の目の前にいるのは猫なんじゃないか。ここまでの一連の動作を見て響子はそう思わざるを得なかった。
「ぁー・・・よく寝た・・・。今何時?」
「もうお昼休みだよ。はい、これ。」
「さんきゅー。マジかぁ・・・。あちっ。」
手渡されたミルクティーに口を付けると熱さに驚いて一瞬口を離す。
やはり自分の幼馴染は人に化けた猫なんじゃないか。寝起きの彼を見る度に響子はそう思ってしまう。
「昨日遅かったの?」
「や、急に追加で書いてって仕事が舞い込んできてさぁ。でも週末ライブだから昨日一気に書き上げて今日の朝提出って感じ。」
「それは大変だったね。お疲れ様。でもそれなら今日は休んじゃってもよかったんじゃないの?」
「徹夜のテンションで来るときは家出る時は普通だったんだけど途中で限界迎えて・・・ふあ・・・。」
「そっか。」
どうやら今日は純粋なサボりではなく鳴弥にも事情があってのことだったようだ。そこで、きゅるるるるる~と間抜けな音が2人の間に響いた。
「流石に腹減ったな・・・」
「いつから食べてないの?」
「・・・・・昨日の帰りにお前とハンバーガー買い食いしてからなんも食ってねえな、そういや。」
それは空腹にもなるだろう。響子は呆れながらも
「それなら早く学食行こう。たぶんみんな待ってるよ。」
「えぇ・・・、あの花園に行くと他からの視線が痛いんだよなぁ・・・。」
「言ってる場合じゃないよ。ほら行こう。」
「あいあい、ボス。」
形だけ面倒くさそうにしつつも、鳴弥は残っていたミルクティーを再度響子に感謝しながら一気に飲み干す。
「なにそれ?」
「間違ってねえだろ?」
「そこはせめてリーダーにして欲しいかな・・・。」
漫画であればケタケタと擬音がつきそうな笑い方をしながら、鳴弥が響子を揶揄う。どうやら眠気の方は取れたらしい。
「ふふっ」
「おん?どうした?」
「いや、鳴弥すっかり起きたね。」
「まあ、そうだな。」
「じゃあ、午後の授業はちゃんと出ようね。」
「え?嫌だけど・・・。もうここまで来たら最後までサボるよ。」
「・・・・・。」
当然のようにサボりを宣言する幼馴染を説得する。このあとの昼食の時間の話題が響子の中で決まったようだ。
「いや、もうほっときなよ・・・。」脳内の親友が呆れを飛び越えて諦めているが、そういうわけにもいかない。隣の席に彼がいないとなんだか授業に張りあいが出ないのだ。響子の勉強に支障が出るのは困る。これは自身のためなのだ。
設定的なモノ
音無 鳴弥
Peaky P-keyの作詞担当兼外部交渉(一部)兼プロモーション担当兼観客の誘導係兼チケットのもぎり係兼etc…な裏方担当。幼なじみの響子の音楽を世界に轟かせるために東奔西走なんのその。悩みは初対面の人間に必ず女子だと勘違いされること。そこそこ売れているライトノベル作家としての顔も持つ。
学年:陽葉学園1年
身長:159cm 体重:52kg
誕生日:9月26日 血液型:O型 家族構成:父、母、姉
趣味:食べ歩き 特技:睡眠 好きな食べ物:ラーメン、甘い物
不本意ながら女装が似合う(似合いすぎる)系男子です。
イメージCVは角元明日香さんです。
あと流れるように陽葉学園は共学になってます。
皆様何卒よろしくお願いします。