鬼滅の刃 雪華ノ乙女   作:アウス・ハーメン

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那田蜘蛛山編の続き。
累との戦いがいよいよ始まります。

なお、今回那田蜘蛛山の鬼が2体ほど増量されてます。
一応片方は元ネタがいて、アニメ版で姉鬼と一緒に逃げようとした少女鬼になります。

もう1体は一応はオリジナルですがこちらもアニメ版で描かれた小柄の少年のような鬼がモデル、累の弟という設定にしています。 


第11話 下弦の鬼、累

 隊士たちを操っていた女の鬼を炭治郎たちが撃破ししばらくたつと、操られた隊士たちは文字通り糸の切れた人形のごとく地面へと倒れ伏した。

 

「あっ!」

 

「ッと! 大丈夫か、尾崎!」

 

「村田さん……はい、操られた時に滅多矢鱈に動かされて、ところどころ骨が軋んでるみたいですが、なんとか」

 

 村田は操り糸が切れ、地面にそのまま倒れそうになった尾崎という名の女性隊士の体をとっさに支えた。

 村田に支えながらも尾崎はそう村田の問いに答える。その尾崎の返答に安どの息を吐くと、他のまだ生きている隊士たちの方にも向かう。

 

「おい! 無事か!?」

 

「村田さん……お願いです、とどめを……体中の骨が折れて、一部が内蔵に……どうせ俺は、もうじき死にます」

 

「馬鹿言うな! まだお前は生きてるだろ!? あの最終戦別を突破した隊士がこの程度で泣き言を言うな! 落ち着いて、全集中の呼吸を使って、骨折箇所の痛みをやわらげろ! 最後まで諦めるな!!」

 

「村田さん……すみません……」

 

 村田は今のようにまだ息のある隊士たちを叱咤激励し励ましていく。

 しばらくすると鬼を撃破した炭治郎らも村田たちの下へと戻り、炭治郎らはこのままこの山に巣食うほかの鬼たちを斃しに行くと告げた。

 すでにほとんどの隊士が満身創痍の状況であった。カンナ、真菰の様なベテランは兎も角、まだまだひよっこの炭治郎ら癸の隊士たちにあとを任せねばならないことに村田は悔しそうに歯噛みをするも。

 

「すまない……君たちにこの場を任せてしまうことになって……」

 

「大丈夫です。それよりも早く、怪我人を安全な所に」

 

「ああ……後を頼む!」

 

 今はそんなことを言ってる場合ではないとすぐさま気持ちを入れ替え、怪我をした隊士を連れ村田は先に下山することを決断した。

 

 村田を見送り炭治郎たちが森を抜け近くの河原まで移動してきたその時であった。まるで雷鳴が轟く様な轟音が森全体に響き渡った。

 

「今の音……善逸か?」

 

「この森を覆う刺激臭が少し和らいだ……」

 

「鬼の気配が減ったわ……もしかしたらあの子」

 

 雷鳴の轟いたような音から、炭治郎らは善逸がこの森に戻ってきたと考えた。ならば、ひとまずは戻ってきた善逸と合流しようと移動を再開しようと動き始めた、その時。

 

 パシャ。

 

 ふいに何者かが水を跳ねる様な音が聞こえ、その音が聞こえた方向に目を向けると。

 

「ッ! 鬼!!」

 

「よっしゃ、俺様が狩ってやらぁ!!」

 

 そこに髪から肌、その身に纏うきものまでも真っ白な少女の鬼が河原を渡ろうとそこにいた。

 伊之助がその鬼を見るや否や勢いよくその鬼へとむかうが。

 

「お父さん!」

 

 少女の鬼がとっさにそう叫ぶと、伊之助のいる上方から大柄の鬼が降ってきた。

 

「俺の家族に……近づくなぁ!!」

 

 その鬼はまるで蜘蛛の化け物のような顔をした異形の鬼であった。

 異形の鬼は伊之助のいた場所めがけて拳を振るう。とっさに伊之助はその拳をよけるが、その威力たるや、大地を割るほどのモノで、その勢いに避けた伊之助は愚かその後ろにいた炭治郎、カンナ、真菰までも飛ばされてしまう。

 

水の呼吸、弐ノ型、水車

 

 炭治郎はとっさに空中で態勢を整え、その異形の鬼に向かって水の呼吸の弐ノ型を放つが。

 

「か、硬い!!」

 

 炭治郎の刃は僅かにその鬼の腕に食い込んだだけですぐに動かなくなってしまった。

 異形の鬼は再び腕を振るい炭治郎を薙ぎ払おうとするが、とっさに炭治郎は鬼の体を足場にその攻撃を躱し距離を取る。

 

「なんて硬さだ! 型を使って切れないなんて、まさかこいつが十二鬼月!?」

 

「いえ、十二鬼月なら眼球に数字が刻まれてる! こいつの眼にはどこにもそんな数字がないわ、こいつは十二鬼月じゃない!!」

 

「ハッ!」

 

 その頑強な外皮と力に炭治郎は一瞬この鬼が十二鬼月なのではと口にするが、すぐさまカンナの言った言葉で先に浅草で出会った珠代が口にした十二鬼月の特徴を思い出す。

 確かにカンナの言う通り、今目の前にいる鬼の、蜘蛛のような異形の顔にある複数の眼、そのいずれにも十二鬼月を表す数字は刻まれてはいない。

 だが、この鬼の力がそんじょそこいらの雑魚鬼とは比較にならないほどの強さなのは事実であった。

 

「ッ! 炭治郎、避けなさい!!」

 

「えっ!」

 

 再びカンナの声が炭治郎の耳に入り、とっさに体を捻ると、今度は細い糸のようなものがカンナと炭治郎の間を掠め地面が大きく裂けた。

 

「あぁ、避けられちゃったかぁ、残念。お父さん、助けに入るよ」

 

「新手の鬼!?」

 

 炭治郎が目にしたのは、先ほど目撃した少女の鬼に似た風体の小柄な少年の鬼であった。

 

「やめてほしいなぁ、兄さんや父さんたちと僕たちはただ静かに暮らしてただけなのにさ……それを邪魔するっていうのなら、君たちバラバラにしちゃうよ!」

 

 少年の鬼はその手から無数の意図を炭治郎らに向けて放つ。意図は正しく鋭利な刃物の如き切れ味で周囲の樹々を小石を岩を切り裂いていく。

 

「クッソ! もう1体いるなんて聞いてねえぞ!!」

 

「がぁああああ!! 俺の家族に、手を出すなぁあああああ!!」

 

「ッ! ヤベェ!」

 

 オマケに先の異形の鬼もまだ健在。数では2対4と炭治郎等の方が優位であったにもかかわらず、モノの見事に翻弄される。

 

「あはは、無様だね鬼狩りたち! 僕たち家族の暮らしの邪魔をするからそうなるんだ! お父さん、とっとと捻り潰しちゃいなよ!」

 

「いい気になってるのも今の内だよ」

 

 勝ち誇ったかのようにそう口にする小柄の少年の鬼だったが、突如彼の耳が真菰の放ったその声を捉える。

 

水の呼吸、弐ノ型・改 横水車

 

 少年の鬼がその声の方に顔を向けるとそこには、大木に技を放ち斬り倒す真菰の姿があった。

 斬り倒された大木は真っ直ぐ、大柄の異形の鬼の方へと倒れ、鬼を押しつぶした。

 

「いまだよ炭治郎! カンナ!!」

 

水の呼吸、拾ノ型……

 

雪の呼吸……

 

 炭治郎とカンナは真菰が作ってくれたその隙に、この異形の鬼の頸を刎ねようと構えを取るが。異形の鬼は自身を押しつぶした大木を持ち上げ、逆に構えで好きのできた炭治郎とカンナをまとめて吹っ飛ばす。

 

「「ぐッ!」」

 

 2人は咄嗟に構えを解き刀の柄でその大木を受け衝撃を和らげるが、両者とも勢いばかりは殺しきれずにそのまま宙を舞う。

 

「くっ! 伊之助、真菰、ここは任せる! 俺とカンナさんが戻るまで死ぬな!!」

 

「そうよ! 私たちが戻るまで持ちこたえて!!」

 

 炭治郎とカンナの2人は飛ばされながらも、伊之助と真菰の2人にそう叫んだ。

 

「これで、あと2人だね。さて、勝てるかな? 僕とお父さんの2人に」

 

 炭治郎とカンナが遥か彼方へと吹っ飛ばされたのを確認し終えると、少年鬼は不敵な笑みを浮かべ、真菰と伊之助にそう言い放った。

 

「舐めやがって、てめえら2人、俺様がすぐに頸を刎ね飛ばしてやらぁ」

 

「できるかな!」

 

 少年鬼は再び、糸の刃を伊之助と真菰に放ち。

 

「がぁあああああ!!」

 

 それを避けた2人を今度は大柄の鬼が追撃する。

 

「なんて、連携……」

 

「畜生! どうすりゃいいんだ!!」

 

 大柄の異形の鬼に少年の鬼、その2体の息の合った連携に伊之助と真菰の2人は再び翻弄される。

 

 

 

 

 

 一方で異形の鬼に吹っ飛ばされた炭治郎とカンナの2人は。

 

水の呼吸、弐ノ型 水車

 

雪の呼吸、肆ノ型 雪月夜

 

 着地の際に咄嗟にそれぞれ技を放ち衝撃を相殺し無事地に足を付けた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ええ、どうにかね……けれど、結構飛ばされたわね」

 

「はい……」

 

 2人はとにかく今は、自分たちがどこにいるのだろうかと周囲を見回す。当たりに広がるのは鬱蒼と生い茂った樹々ばかり、先ほどよりかは幾分か和らいでいるとはいえ、まだこの森の中は苛烈な刺激臭が多い、炭治郎の鼻もよく利かない。

 それでも何とかして戻らなければ伊之助と真菰の2人が危ないと、とにかくその場から移動しようと動き始めたその時。

 

「ぎゃあああああ!」

 

 濁ったような悲鳴が周囲に響き渡った。

 その声が聞こえた方向に目をやると、意外にもその声の主はすぐそばにいた。

 そこにいたのは先ほど河原で見かけた少女の鬼と、血が滴る糸を綾取りの要領で手に絡めた少年の鬼、そしてその少年の傍らにいた前髪が切り揃えられたもう1人の少女の鬼であった。

 

「何見てるの? 見世物じゃないんだけど」

 

 その内の1体、糸を手に絡めた少年の鬼が炭治郎とカンナの2人を睨みつけた。

 

「何してるんだ……君たちは仲間じゃないのか!?」

 

 咄嗟に炭治郎はその少年の鬼にそう問う。

 

「仲間? そんな薄っぺらいモノと同じにするな。僕たちは家族だ。強い絆で結ばれてるんだ」

 

 その問いに少年の鬼は面白く無さげにそう答えた。

 

「それに、これは僕と姉さんの問題だ。余計な口出しするなら、刻むから」

 

 少年の鬼は冷え切った眼で炭治郎とカンナの2人を再度睨みつける。一方の炭治郎とカンナの2人もその少年の鬼を注意深く観察していた。

 そして、見つけたのだ。2人はその少年の鬼の瞳に刻まれた。

 

「十二鬼月……下弦の伍!」

 

 十二鬼月の証である数字を。

 

「へぇ、気づいたんだね。そうだよ、僕は十二鬼月、下弦の伍、名前は累だ。さっきからこの山を騒がせてる鬼狩りの一味だね、君たちは……よくも僕の母さんと兄さんを殺してくれたね」

 

 自らを十二鬼月、下弦の伍、累と名乗った少年の鬼はそう言うと一際強い殺気を醸し出し炭治郎とカンナを睨んだ。

 

「だからどうしたというの?」

 

 累の言葉に応えたのはカンナであった。

 

「決まってるでしょ……殺してやるよ、君たち全員……」

 

 カンナの言葉に累がそう返すと周囲に満ちる空気が一気にその圧を増した。

 

「そう……まぁ、こっちもそのつもりだけどね、けれどこれだけはアンタに言っとくわ」

 

「何? 死ぬ前に何か言い残すことでもあるの?」

 

 累は一瞬カンナの言葉に首をかしげる。だが続くカンナの口から出た言葉は。

 

「まさか……アンタの言う家族の絆っていうのが、ただの紛い物だって、そう言いたいだけよ」

 

「ッ!? なんだと……今、なんて言った?」

 

 累の怒りと殺気をさらに増すものとなった。

 

「紛い物だといったのよ!」

 

「そうだ、紛い物だ!!」

 

 カンナの挑発に炭治郎も加勢する。

 

「家族というのなら、強い絆で結ばれてるというのなら本当は、互いに信頼の匂いがする。だけど、お前たちから感じる匂いはどれも、恐怖と、憎しみと、嫌悪の匂いだけだ! こんなものは絆なんかじゃない!!」

 

 炭治郎の言葉に、累はこれまで以上に怒りと憎悪を覚え、殺気をより強める、一方の2人の少女の鬼は炭治郎の言葉に目を見開きその場で硬直していた。

 

「そう……そうか、分かったよ……そんなに死にたいんだね……いいよ、望みどおりにしてあげるよ」

 

「炭治郎!」

 

「はい!」

 

 目の前にいるのは本物の十二鬼月。

 これまでの鬼とは別格なことは炭治郎も分かっていた。

 

 だが、それでも倒す。そして生きて帰る。自分たちを待ってくれている者たちがいるのだからと。

 

 炭治郎とカンナの2人は刀を構えなおし今、下弦の伍、累との戦いの火蓋が切られた。

 

つづく 

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