鬼滅の刃 雪華ノ乙女   作:アウス・ハーメン

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本編で飛ばした炭治郎、禰豆子の柱合裁判、雪華ノ乙女バージョンです。
なお、本作では炭治郎は拘束されてはなく、柱たちも原作同様炭治郎、禰豆子の処分を口にしますが、少しだけ柔らかな感じになっています(一部除き)。


番外編 柱合裁判編

那谷蜘蛛山での戦いが終わった後、ちょい屋敷へと運ばれていったカンナとは異なり、炭治郎は炭治郎で現鬼殺隊蟲柱、胡蝶しのぶに連れられる形で鬼殺隊本部へと向かっていた。

 炭治郎は自分で歩く旨を主張したが、しのぶは怪我がひどいことに加え隊律違反を犯した当人であることを理由にそれを拒否し、今炭治郎は隠の1人に背負わされている。

 そして程なくして、ひときわ大きなお屋敷の前に到着し、そこでようやく炭治郎は降ろされた。

 

「こっちですよ、竈門炭治郎君」

 

「はい……」

 

 正直なところ、炭治郎は気が重かった。

 自分が鬼殺隊の隊律に違反していることは承知の上であった。いくら身内とはいえ、鬼を狩るべき鬼殺の剣士が鬼を連れているなど本来あってはならないことなのだ。

 場合によっては自分は鬼殺隊をやめなくてはならない、そうでなくとも厳しい処罰が下される、場合によっては自分も禰豆子も。

 炭治郎がそう考えながらもしのぶの後をついて行くと、広い日本庭園風の中庭に到着した。

 

「ここが裁判の場です。そして、今あなたの目の前にいるのはこの鬼殺隊最高位、柱と呼ばれる12人の剣士たちです」

 

「うむ! その少年だな、胡蝶の言っていた鬼を連れた隊士というのは!」

 

 そこにはしのぶのほか、10名の隊士の姿があった。しのぶは彼らを鬼殺隊の最高位の剣士、柱であると炭治郎に教えた。

 

「は、はい! 竈門炭治郎と言います」

 

 炭治郎は柱の剣士たちに深々と挨拶をした。

 

「うむ、礼儀正しい子だ。感心だぞ少年! 俺は煉獄杏寿郎だ。炎柱の名をいただいている」

 

「あ、ありがとうございます! 煉獄さん」

 

 炭治郎の挨拶に応えたのは炎柱、煉獄杏寿郎であった。あたかも炎を想わせるような質感、黄色と末端が赤い髪に金色の瞳のいかにも熱血という言葉がピタリとあてはまる男であった。

 

「だが、鬼を連れていることに関しては看過するわけにはいかない! 鬼を庇うなど明らかな隊律違反! 我らのみで対処可能! 鬼もろとも斬首する!」

 

「ッ!?」

 

 炎柱、煉獄杏寿郎は炭治郎の礼儀正しさを称賛しつつも、鬼を連れているということは明らかな隊律違反とし、即刻処分すると炭治郎に言い放った。

 炭治郎自身も予想はしていたとはいえ、あまりに突然の死刑宣告に息を飲む。

 

「そうだな、俺が派手に頸を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」

 

 煉獄と同じく即刻炭治郎を処分すべきであると主張したのは音柱、宇髄天元であった。白い髪に宝石を所々にあしらったヘアバンドを付け、瞳の付近には独特の文様が描かれた大男である。

 

「ああ、こんな隊律違反など前代未聞。鬼殺隊の名折れもいいところだ。頸を斬るだけではこのイラつきが収まらん」

 

 続いて先の二人と比べれば青みがかった黒髪に若干薄い色のまつげと道着を想わせる白い上着の隊服を身につけた、まだ常識的な風貌の拳柱、素山拍治がそう口にする。

 

「あぁ……なんとみすぼらしい子供だ……可哀そうに……生まれてきたことそのものが可哀そうだ……殺してやろう」

 

 そして先の音柱、宇髄と比べても遥かに巨体で黒い借り上げの頭に額には一筋に走る傷跡、そして白目から滂沱の如く涙を流し続ける大男、岩柱、悲鳴嶼行冥もまた、手にかけた数珠をジャリジャリと鳴らしながら炭治郎の処分を口にした。

 その一方で。

 

「あの~煉獄さん、宇髄さん、悲鳴嶼さん、素山さんはそう仰いますけど……今回の件、この子たちを連れてくるよう言ったのは、御館様ですよね? 勝手に処分するのは不味いんじゃ」

 

「俺も蜜璃ちゃんに賛成かな~そもそも御館様はこの件を把握なさっている。今日まで彼らを生かしてきたのにはおそらく訳があるはずだ。まずは御館様に詮議をあおってから処分は決めるべきと思うけどね」

 

 全体は桜色で末端が緑色の髪に胸元が露出した小さめのスカート型の隊服という風貌の恋柱、甘露寺蜜璃と葡萄色の羽織、白橡色の髪に虹色の瞳の容貌で手には銀白色の鉄扇を携えた男、雪柱の蓮刃導磨の2人はそう即刻の処分には反対をし。

 

「某も同感だ」

 

 柱の中で最年長を誇る最古参、鋼柱、鐵厳鉄もそう主張した。

 

(な、なんだあの人は……)

 

 そんな中炭治郎はその鋼柱、鐵厳鉄の風貌に驚いていた。岩柱の悲鳴嶼、音柱の宇随もなかなかの背丈を誇る大男であるが、厳鉄はその比ではないほどの巨体であった。年相応に顔には皴が入り白髪交じりの髪と長めのもみあげ、鍛え上げられた丸太の様な腕に手首には布がまかれている。

 それ以上にその身に纏う闘気は他の柱の比ではない。炭治郎にもわかった。彼がこの鬼殺隊最高位、柱の中でも最も強く、最も古参の戦士であると。

 

「まずは、その坊主の話を聞くべきであろう。詮議は御館様の到着を待つべきであるが、一応はその坊主の言い分も聞かにゃならん」

 

「そうですね厳鉄様。炭治郎君、お聞きの通りです。貴方の禰豆子さんに関して、ゆっくりでいいんで話してください」

 

「あ、はい……」

 

  炭治郎は厳鉄、しのぶの2人にそう促され、ゆっくりと自分達の身になにが起きたのかを話した。

 

「なるほどなぁ、けどな小僧。お前の気持ち、わからんではないがな、これから先もその妹が人を襲わないという確たる証拠はない」

 

「そうだぞ竈門少年! 人を喰い殺せば取り返しがつかない! 殺された人は戻らない! それは竈門少年も理解してるはずだ!」

 

 炭治郎の事情を聞いた柱たち、最初の時とは違い、炭治郎にも事情があるというのは理解はしたようであったが、それでもだからと言ってそれでそう簡単に鬼となった人間、彼の妹の禰豆子を認めるわけにはいかないとそう口にした。

 

「それは分かっています! だから――」

 

 無論、炭治郎も柱たちの言い分は理解できた。確かに鬼となってからの2年間、今まで禰豆子は人を襲ったことはない。とはいえ彼らの言う通り、禰豆子がこの先も人を襲わないという保証はできないのだ。

 ひとたび禰豆子が人を襲えば、それによって尊い命が失われる、それもまた事実だ。

 

「俺が、絶対に禰豆子に人を襲わせません! もしそんなことになったら、俺が……禰豆子が誰かを殺すその前に、この手で禰豆子の頸を墜とします! そして、俺も一緒に」

 

「腹を切るというのか?」

 

「ッ!?」

 

 自分の言葉に突然割って入った声に炭治郎は一瞬驚いた。

 

「そんなものはなんの保障にもならんだろ。大体、身内なら庇って当然だ。言うことすべて信用できない、俺は信用しない」

 

 声の主は蛇柱、伊黒小芭内であった。黄色と青の独特の瞳に口元には訪台がまかれ、その頸には彼の相棒の白蛇が蜷局を巻いている。

 

「おいおい、なんだか面白いことになってやがるなァ」

 

 そして、伊黒の声の後、もう一人の男が炭治郎らの前に表れた。無造作に切り揃えられたぼさぼさの白髪に体の至るとことに傷があり、胸元が大きく開けた隊服に背中に殺と大きく刻まれた白い羽織をを身に纏った。いかにもなほど殺気をたぎらせた男であった。

 彼は12人目の柱、風柱の不死川実弥である。彼の片手には炭治郎の妹、禰豆子の入っている箱が抱えられていた。

 

「何のつもりだ、不死川」

 

 その不死川を一番近間にいた鋼柱、厳鉄が咎める。

 

「鬼を連れた馬鹿隊士ってのはそいつかィ?」

 

 その厳鉄の咎めの言葉など聞く耳持たぬとばかりに、不死川は炭治郎の方へ歩みを進める。

 

「お前!」

 

 一方の炭治郎も大切な妹が入る箱を乱暴に扱っている不死川に怒りを顕わにしていた。

 

「話は聞かせてもらったぜェ。この中の鬼はお前の身内なんだってなァ。いい家族愛なこった、だがなぁ!」

 

 そんな炭治郎に不死川は自身の日輪刀を見せつけるかの如く抜くと。

 

「よせぇえええええええ!!」

 

「身内だろうが何だろうがなァ、鬼は所詮、鬼なんだよ!!」

 

 間髪を入れずに禰豆子の箱へと突き刺したのであった。

 

「貴様ぁあああああああああ!!」

 

 箱からは禰豆子のモノと思われる血がしたたり落ち、そのことに炭治郎は激昂し不死川へと勢い良く突っ込む。

 だが――。

 

ドゴォオオオオ!!

 

「ッ!?」

 

「なにッ!?」

 

 突如、庭全体に響き渡った轟音とともに、庭全体が大きく揺れ不死川も炭治郎も態勢を崩し倒れ伏してしまう。

 

「厳鉄殿……」

 

「不死川、どういうことか説明をしてもらおうか……」

 

 その音を発したのは厳鉄であった。厳鉄は怒気を露に不死川に近づく。

 

「いや、それは……」

 

「今は御館様の詮議を待つとき、早まった行動は慎め、柱の名折れだ!」

 

 先ほどまで醸し出していた殺気はどこ吹く風とばかりに怖気づいた不死川に厳鉄は踵を返すと元居た場所へと戻っていった。

 

「さすがは厳鉄殿、凄まじいお方だ」

 

「いや、一瞬俺までちびりそうになったぞ、派手にな……」

 

「不死川も不死川だが、厳鉄殿ももう少し加減というモノをしてほしいものだ。伊黒が樹から真っ逆さまに落ちるところだったぞ」

 

「…………」

 

 そんな厳鉄と不死川の姿を導磨は飄々とした態度で、宇髄と拍治は冷や汗をかきながら見つめ、伊黒は先ほどの揺れで樹から落ちそうになってるのをどうにか両手で枝を掴み留まっていた。

 

「不死川さん……今度から勝手な行動はしないでください」

 

 一方しのぶはというと完全に意気消沈している不死川に追い打ちかの如く説教をかましていたのであった。

 なお炭治郎はそんな柱たちのやり取りを呆然とただ見つめていた。

 

(柱って、やっぱ怖えなぁ~)

 

 そして、炭治郎をここまで背負ってきた隠の人もそう心に抱きながら、遠い目になっていたのだった。

 

「胡蝶、不死川、もうすぐ御館様が来るぞ」

 

 そんな中、冨岡がそう口にし程なくして。

 

「御館様の御成りです」

 

 二人の童女に手を引かれる形で、この鬼殺隊の当主である御館様こと、産屋敷耀哉が姿を現すのだった。

 

「炭治郎君、礼を、彼はこの鬼殺隊の当主、御館様です」

 

「あ、はい!」

 

 他の柱たちが御館様を前に跪き、炭治郎もしのぶに促される形で頭を垂れた。

 

「よく来たね、私の剣士(子供)達」

 

 しばらくすると、静かで澄んだような声を炭治郎の耳が捉えた。

 

「お早う皆、今日はいい天気だね。空は青いのかな? 顔触れが変わらず半年に一度の〝柱合会議〟を迎えられたこと、うれしく思うよ」

 

 そこに姿を現したのは、額から目元までケロイド上の不気味な紫色の痣の様なもので覆われた20代半ばくらいの年若い男性であった。彼こそがこの鬼殺隊を統べる御館様こと、産屋敷耀哉である。

 

「御館様におかれましても、御壮健で何よりです。益々の御多幸を、切にお祈り申し上げます」

 

 先ほど、恰も狂犬の如き行動で鋼柱の厳鉄、蟲柱のしのぶから渇を入れられた不死川も、御館様の前では極めて丁寧に敬語で挨拶をしていた。

 なお、炭治郎はそんな不死川に全く知性も何も感じられなかった人が途端に丁寧に喋り始めたと驚きと半ば呆れてるかのような表情で見つめていた。

 

「畏れながら、柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明いただきたく存じますがよろしいですか?」

 

 不死川の問いに耀哉が応える。

 

「驚かせてしまったようだね。竈門炭治郎の妹、禰豆子に関しては私が容認していたんだよ。できることならみなにも認めてほしいと思っている」

 

 耀哉の答えに柱一同がどよめく。

 

「ああ……御館様の願いであっても、私は承知しかねる」

 

 岩柱、悲鳴嶼行冥がまずそう答え。

 

「俺も派手に反対する。竈門の話で事情は分かったが、鬼を連れた鬼殺隊士など認められない」

 

 音柱、宇髄天元もそう続く。

 

「信用しない、信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ」

 

「尊敬する御館様であるが、理解しがたいお考えだ! 俺も反対させてもらう!」

 

「いまいち理解に苦しむお考えです御館様。これまでも我ら鬼殺隊は多くの鬼を葬ってきた。当然隊士の中には、我ら鬼殺隊隊士の手で鬼となった身内を殺された者もいる。この小僧だけを特別扱いはできません!」

 

 更に反対意見を炎柱、煉獄杏寿郎、蛇柱、伊黒小芭内、拳柱、素山拍治も述べる。

 

「私は、御館様の望むままに従います」

 

「某も理解しがたいお考えだが、そう至るのには何か深いお考えがあると見える。御館様にすべてを一任いたします」

 

「俺も、御館様の考えを尊重しよう。けれど、他の柱の意見も分からないわけではない。より詳しくその理由を知りたいものだ」

 

 一方鋼柱、鐵厳鉄、恋柱、甘露寺蜜璃、雪柱、蓮刃導磨の3人は禰豆子の件は御館様に委ねると口にした。しかしそれは禰豆子の存在を認めると同義ではなく、あくまでも中立であると含みを持たせた。

 なお蟲柱、胡蝶しのぶ、水柱、冨岡義勇は何も語らずただその場でだんまりを決め込んでいた。

 

「僕はどちらでも……すぐに忘れるので」

 

「鬼を滅してこその鬼殺隊! 竈門の事情は先ほどのコヤツ本人の言葉を聞いてはおりますが、しかし! 鬼を見逃すなど断じて、あってはならぬことです! 竈門兄妹の処罰を願います」

 

 残る柱たちは霞柱、時透無一郎はあまり関心がないのかそう一言伝え、風柱の不死川実弥は激しく反発した。

 

「では手紙を」

 

 全ての柱の意見を聞いた耀哉はここでとある人物からの陳情書を自分の側にいた童女たちに読み上げさせた。

 

「これは元柱である鱗滝左近寺殿よりいただいたものです。一部抜粋して読み上げます」

 

『炭治郎が鬼の妹と共にあることを、どうかお許しください。禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。飢餓状態でも人を喰わず、そのまま2年の歳月が経過いたしました。俄かには信じがたい状況ですが紛れもない事実です。もしも禰豆子が人を襲った場合、竈門炭治郎及び鱗滝左近寺、冨岡義勇、鱗滝真菰が腹を切ってお詫びいたします』

 

 童女が読み上げたのは炭治郎の師である鱗滝からの陳情書であった。その内容に炭治郎は涙を流し冨岡は静かに瞑目した。

 実は富岡もすでに、炭治郎の事情は把握していた。炭治郎がまだ隊士になる前、鱗滝の基を真菰とともに訪れた時、冨岡も真菰と共に禰豆子に会っている。それ以上に冨岡は自身の任務をカンナに譲ったこともあって、その際の詳細をカンナから聞いていた。

 最初は冨岡自身信じられないといった様子であったが、鬼特有の飢餓衝動も敵意も顕わにしない禰豆子を見て、冨岡もこの禰豆子は他の鬼とは違うと、そう感じ真菰、鱗滝同様に禰豆子の存在を容認したのだ。

 そして、彼等と同じく冨岡もまた、禰豆子が人を襲った際は自らの命を持って方々に詫びる覚悟で会った。

 

「ふん、切腹するからなんだというのだ! 死にたいのなら勝手に死に腐れよ!! 何の保証にもなりません!!」

 

 だが、それでも不死川は反発をつづけた。鬼を激しく憎む彼にとって、いくら事情があろうと鬼の存在を鬼殺隊無いで認めるなど受け入れられるわけがなかったのだ。

 

「だが実弥。人を襲わないという保証も証明もできないように、人を襲うということの照明もできない。何よりこの2年間、禰豆子が人を襲っていないという事実があり、さらに禰豆子はここまで炭治郎と共に鬼殺の任務にて、人々を護っているという事実もある。そして禰豆子の為に4人の命が懸けられている。それを否定したいのなら、否定する側もそれ相応のモノを差し出さなければいけない。現に炭治郎はそう君たちに告げてるのだろ? 禰豆子は人を襲おうとした場合は、最悪自らの手で頸を刎ねると」

 

「むぅ!」

 

 しかし、耀哉はそんな実弥を諫めるようにそう語った。同時に炭治郎自身もまた、もし禰豆子が人を襲うのなら、その前に禰豆子の命を自らの手で奪うという覚悟も語っている。彼の師に兄弟子、姉弟子もまた禰豆子のために命をかけると陳情書で訴えてもいる。それだけのモノを禰豆子を認めてほしいと願い出ている者たちが差し出している以上、それを否定する者たちもそれ相応のモノを示さなければ釣り合いが取れないと告げ不死川に再度理解を求めた。

 

「それに、炭治郎は浅草で鬼舞辻に遭遇している」

 

 さらに耀哉は炭治郎、禰豆子を容認したもう一つの理由を話した。耀哉のその言葉に再度柱たちがどよめき次々に炭治郎に鬼舞辻の居場所や能力など、質問攻めにしていくが。

 

「お前たち少しは落ち着かんか!! 御館様の前でみっともない、柱を名乗るのならちっとは常識を身に着けんか馬鹿どもが!!」

 

 再度厳鉄が渇を入れてその場を抑えた。

 

「すまないね厳鉄、いつも」

 

「いえ、こいつらがあまりにも未熟者過ぎるのです! 更なる精進をさせますゆえ、どうぞよしなに」

 

「ありがとう厳鉄。それじゃ話を戻そうか。鬼舞辻は炭治郎に追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じともいえるが、私はようやく見せた鬼舞辻の尻尾を離したくはない。恐らく禰豆子には、鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているのだと思うんだ。これが一応は禰豆子を容認した理由になるね。わかってくれるかな?」

 

 耀哉が禰豆子を容認した理由、その大きなものこそがそれであった。耀哉はこの炭治郎と禰豆子の存在がこの先、鬼殺隊にとって鬼舞辻無惨に対する大きな光になるとそう考えていたのだ。それも確信と言っていいほどまでに。

 しかし、それだけの耀哉の考えを聞いてもなお、不死川は納得ができず。

 

「分かりません御館様、人間ならば生かしてもいいが、鬼は駄目です! 信用できない!!」

 

 不死川は我慢の限界とばかりにしのぶ、厳鉄に活を入れられた際に自身の横に置いていた禰豆子の箱を再び持ち上げ。

 

「俺がこの手で、証明して見せますよ! 鬼というモノの醜さを!!」

 

 自身の日輪刀を再度抜刀し、今度は自身の腕へとその刃を向けようとするが、再び不死川の行動は阻まれることとなった。

 

「あぁ~不死川君には悪いんだけどさ~赤っ恥かくだけだからやめといた方が良いよ~」

 

「あぁ!? 邪魔をするな蓮刃! 今度はお前か、なんだ一体」

 

 不死川を止めたのは雪柱の蓮刃導磨であった。

 

「だって、それもう証明されてるから。俺の継子のカンナの手で」

 

「ハァ!?」

 

 導磨の言葉に不死川は素っ頓狂な声を上げて日輪刀を抜刀したまま固まってしまう。

 

「これは、先に御館様より下された密命にて、我が継子、氷室カンナにより行われた竈門禰豆子の調査のその仔細報告書になります。というか、既に御館様の方に原本は送られているはずですよね? これはその写本になりますが、今から他の柱のみんなにも見てもらおうと思いますがよろしいですかな?」

 

「構わないよ導磨。是非見せるといい」

 

 導磨はそうかがやに伺いを立てると、自身の懐から出した書状を自分の両脇にいた悲鳴嶼、宇髄の2人にます見せたのち、甘露寺から回す形で各柱たちに見せていった。

 

「よもや! 竈門禰豆子はカンナの稀血の匂いを嗅いでも、襲い掛かることがなかったというのだな!」

 

「氷室のあの稀血を!? 鬼であればどのような鬼でも、測気が衝動に襲われ、食人衝動をむき出しとするというのに、その血を嗅いでか!?」

 

「マジかよ、蓮刃の継子も派手なことをしやがる」

 

「見せてくれませんか!?」

 

 炭治郎も慌てて柱たちに交じり、導磨の出した書状の内容を確認した。

 

「これは、それじゃあの時……」

 

「炭治郎も心当たりがあるんだね」

 

 そんな炭治郎の様子に耀哉が炭治郎にそう問いかける。

 

「あ、はい。那田蜘蛛山の任務に向かう直前、藤の花の家紋の家にいた時、禰豆子の箱を置いてあった部屋から血の匂いがして、その時カンナさんと真菰が一緒で事情を聞いたんですけど、その時はただけがの治療をしただけだと言ってて」

 

「あぁ、その時で間違いはないね。炭治郎、それと実弥にも悪いことをしたね。その事はすでにこちらは把握済みなんだよ。だから実弥、刀をしまいなさい。今そんなことをしても、もう意味のない事だ。カンナの稀血は実弥のより質は僅かに落ちるが、特性として鬼の飢餓衝動を強く引き出すというきわめて強力な性質を持つ。その血に禰豆子が耐えた以上、もう実弥がわざわざ血を流す理由はない」

 

 不死川は顔が真っ赤になってそのまま微動だにしなかった。己の手で証明しようとしたことが、すでに証明されていたなど完全な赤っ恥である。

 某柱と継子の如く穴があったら入りたい状態であった。

 

「これで、禰豆子が人を襲わないということは証明されたわけだが、炭治郎」

 

「はい!」

 

「それでもまだ、認められないという隊士はいるはずだ。君はこれから証明し続けなければいけない。鬼殺隊として君と禰豆子が戦えること、役に立てるということを」

 

 最後に耀哉はそう炭治郎を聡し。

 

「俺が……俺と禰豆子が必ず、鬼舞辻無惨を倒します! 俺と禰豆子が必ず、悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」

 

 炭治郎もそう耀哉に啖呵を切ったのだった。

 

「フフフ、炭治郎ならいつかやれるかもね、那田蜘蛛山で十二鬼月の頸を墜としたのは炭治郎だったね。期待しているよ」

 

「あ、はい!」

 

 なお最後にはなった耀哉の言葉でまた、柱たち一同がどよめき、厳鉄に渇を入れられるという光景が繰り広げられたのだが。

 

 何はともあれ、炭治郎はこの柱合裁判を乗り切り、炭治郎と鬼の禰豆子は鬼殺隊後任となったのであった。

 

おわり

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