それの雪華ノ乙女バージョンです。
今回の話で本作の鬼殺隊が抱える問題に関して少し突っ込んだ話をしています。
炭治郎及び禰豆子の柱合裁判が終わった後、引き続き柱と御館様、産屋敷耀哉たちは柱合会議を進めていた。
まずは耀哉の口から近年の鬼の被害の拡大の旨とそれに伴い鬼殺隊の隊士たちを増やさなければならないと語語り、続いて書く柱たちにその件に対しての意見を求めた。
「今回の那田蜘蛛山ではっきりした。隊士の質が信じられない程落ちている、ほとんど使えない。まず育手の目が節穴だ。使えるやつか使えないやつかくらいは分かりそうなもんだろうに」
それに対し最初に口を開いたのは不死川実弥であった。実弥の口から語られたのは近年の鬼殺隊隊士たちの質の低下に関してであった。
「不死川に同意だが、俺は育手の目が節穴かどうか以前に育てがまともに隊士を育てられていないと思うのだがな……。先の最終選別、参加者は20名あまりいたというのに生き残ったのはたったの5人……しかもいずれも育手が元柱か柱の継子候補といった連中だ。そうでなくとも、近年は最終選別を突破以前に、その選別で候補者全員が死ぬというのが相次いでいる。どう考えても異常だ、まともに全集中の呼吸すらままならん隊士ばかリなど、まともな育成を育手が行っていないことの証拠ではないか?」
同じく素山拍治の口からも隊士の質の低下の件が口にされるが、同時に拍治は隊士を育成する育手の質がそもそも低下しているのではないかという意見がなされた。
「人が増えれば増えるほど、制御・統一は難しくなっていくものです。今はずいぶんと時代も様変わりしていますし」
「左様……。明治の時に廃刀令が施行され、同時に剣術を学ぶ者たちは大きく数を減らし、最早剣術それ自体が一部の者たちの道楽に墜ちた。それ以上に近代兵器の導入に伴い、最早戦の形態すらも変わる昨今、日輪刀にて鬼の頸を斬るという方法以外で鬼を滅せぬということがまた、隊士の質の低下の要因の一つとなっているともいえる」
「近代戦闘の基本は、なるべく相手に近づかず、中長距離からの戦闘で確実に相手を仕留める。最小の犠牲をもって最大の結果を主としている。刀を用いた格闘戦は基本、あらゆる手が尽きたことでの最終手段として学びはするが、基礎とは決してしない。鬼との戦いはこの逆である以上、どうしても隊士の犠牲は出てしまう」
続いて胡蝶しのぶと鐵厳鉄、蓮刃導磨の口から語られたのは時代の変化による社会背景の変化に伴う鬼殺隊士たちの意識と技術の変化であった。
江戸から明治へと大きな時代の転換に伴い、日本政府は江戸幕府から政権移行と同時に廃刀令を敢行し基本は軍人や警察官吏以外の台頭が認められなくなった。更に同時に剣術道場などそれ自体が市民の道楽へと落ちていったことで、より実践的な剣術を学ぶ場それ自体が大きく減じてしまった。
その上明治初期からの近代化に伴い戦いの方法それ自体が大きく転換したことで、最早刀による戦いは戦闘の一部分、それどころか最後の手段にまでなってしまったのだ。鬼との戦いは日輪刀による頸の切断を主とするためその、本来なら近代戦における最終手段である近接戦闘を基礎としている。
戦闘技術がない隊士は言わずもがなだが、仮に技術があったとしても、当然だが近代戦での戦い方に慣れた隊士では、それ自体が通じない鬼が相手になる以上必然的に損耗率が上がってしまうのも無理のない話であった。
「確かにな。近代戦闘と言ったら、爆薬鉄砲ガトリング砲と派手派手極まりないもんだ。そう言う戦い方に慣れた連中ほど、刀での戦いなんぞ時代遅れと軽視するもんだからな」
「技術もそうだが意識という部分でも、愛する者を惨殺され入隊した者、代々鬼狩りをしている優れた血統の者以外にそれらの者達と並ぶ、もしくはそれ以上の覚悟と気迫で結果を出すことを求めるのは残酷だ」
宇髄天元、悲鳴嶼行冥からもそう意見が述べられた。
何れにしても近年の鬼殺隊隊士の質の低下が大きな問題であることは全員が共通して認識していたことであり、全員がそれぞれの意見に首肯する。
「御館様、これらの事を鑑みますと、やはり先にお伝えした通り、鬼殺隊を現在の形から〝政府公認の非公開組織〟へと召し上げる必要があると存じます」
鐵厳鉄はここまでの意見を総括したうえで、更なる意見を御館様である耀哉に述べる。
「鬼との戦いが始まってから1000年余り、異国の文化、伝統を取り入れ、近代化と文明開化の波に飲まれしこの日ノ本、最早我ら鬼殺隊が世の裏に忍べる時代ではありませぬ。何より、このような時代となっては鬼狩りたる我らの存在こそが、この日ノ本の世にとって大きな淀みと捉えられるでしょう」
「厳鉄……」
「今の世では最早、鬼狩りは影とはなりえぬ否、最早常世においては影などあってはならぬのが定石なのです。御館様」
「意見はよくわかっているよ私もね……」
厳鉄が述べた意見は鬼殺隊を現在の政府非公認組織から政府公認の組織へと召し上げるべきというモノであった。
厳鉄は以前にも耀哉にこの提案を行ったことがある。現在の鬼殺隊は産屋敷家直轄の政府非公式の組織であり、形式的には産屋敷家の私兵のような存在だ。故に人材は主に耀哉やその妻、あまねが見出した才能ある者か一般人の中で家族を鬼に殺されるなど、鬼の被害に見舞われたことでその存在を知り、家族の敵討ちなどで入隊した者、代々その家が鬼狩りの家系のものなどが中心で、それ以外では風のうわさでその存在を知った者たちが主となっている。だがその為、先に不死川、拍治の2人が指摘するまでもなく、隊士の質は勿論だが育成環境にも多大な問題が多く抱えられていた。
厳鉄の提案はそれを見越したモノでもあり、政府公認の組織に鬼殺隊を召し上げることで鬼殺隊隊士は形式上は現在の私兵から正式に国家直属の官吏、即ち軍人、警察官と同等の身分として扱われることとなり、公然での帯刀の許可、鬼殺隊士のみならず鬼殺隊それ自体への公費による支援などで近年増加しうる鬼への対処がより容易に行えるようになる。また、方々の関係機関や省庁から人材を融通してもらうことでの組織それ自体の質の向上にもつながる。
以前そう提案したときと同じく厳鉄は耀哉に熱弁を振るうのだが。
「だが、それは今はすべきではないと私は考えている」
「御館様……」
「確かに、厳鉄の言う利もあるのは分かる。だが、私は鬼殺隊を……本当の意味での〝人狩り〟にはしたくは無いんだ。政府公認の組織となれば、鬼狩りの際にも各関係機関との足並みを揃える必要があるだろうし、その時間が故に目の前で鬼に殺される人々を見殺しにすることもあるだろう。それ以上にそれら利となる部分への引き換えとして、政府側からいらぬ汚れ仕事を任され、それらに手を染めることとなる可能性も無きにしも非ずだ。現に鬼殺隊士たちの実力は、一般の軍人や警察官吏のそれを上回るからね。政府の人間は絶対にそれらへの協力を要請してくる……そしてそれを嬉々と受け入れ続ければ我らもまた、人を喰らう鬼と同じとなることだろう」
耀哉はそれらに明確に拒否を突き付けた。
耀哉の言い分も理解ができるだけに、これ以上厳鉄は何も言い返すことができずただただ首を垂れるばかりであった。
確かに政府公認の組織に鬼殺隊を召し上げることの利となる部分は大きいが、その一方で政府公認の組織になることで生じる、政府関係各省庁や機関との軋轢故に鬼殺隊がその本分以上の役目を押し付けられる懸念は確かにあった。
耀哉にとって、それは確実に人の道を外れることに繋がり、ひいては自分たちが対峙すべき相手である鬼と本質的に同じになることを意味している。理屈は分かっても受け入れられることではなかった。
「俺は厳鉄殿に派手に賛同するんだが、御館様がそう仰る以上はやむを得まい」
「けど、厳鉄殿のおっしゃること、一応は検討すべきとは思います。事実近年は警察官吏に隊士がお縄になるような事案も増えていますし、隊士がその事や市街地などでの戦闘での周辺への被害を畏れ、それら地域での鬼殺が滞っている実態もございます」
「確かにね、天元と導磨の言葉も分かるよ」
宇髄、導磨の2人は一応は厳鉄の意も汲むべきではと耀哉に告げるが、それでも耀哉の意思に変わりはないと悟り深くは追及はしなかった。他の柱たちも同様に耀哉の判断を尊重する構えであった。
「それにしてもあの少年は!入隊後まもなく十二鬼月と遭遇しているとは!引く力が強いように感じる!なかなか相まみえる機会のない我らからしても羨ましいことだ!」
一瞬どんよりと沈んだ会議の場を盛り上げるためなのか、煉獄がそう、普段以上に快活にそう口にし。
「確かにな、あの坊主、中々に見どころがある。那田蜘蛛山で下弦の伍にトドメを刺したと聞いたときはよもやとは思ったが、なかなかの逸材よ、鱗滝殿はいい仕事をする」
厳鉄も煉獄の言葉に猛々しい声色で同意した。
「そうだね。しかしこれだけ下弦の伍が動いたということは那田蜘蛛山近辺に無惨はいないのだろうね。浅草でもそうだが隠したいモノがあると無惨は騒ぎを起こして巧妙に私達の目を逸らすから、なんとももどかしいね。しかし……鬼共は今ものうのうと人を喰い力をつけ生き永らえている。死んでいった者達のためにも我々のやることは一つ――」
そして長かった柱合会議も終盤に差し掛かり耀哉が最後に各柱たちに向け告げた。
「今ここにいる柱は戦国の時代、始まりの呼吸の剣士以来の精鋭が集まったと私は思っている。宇髄天元、煉獄杏寿郎、胡蝶しのぶ、甘露寺蜜璃、時透無一郎、悲鳴嶼行冥、不死川実弥、伊黒小芭内、冨岡義勇、蓮刃導磨、鐵厳鉄、素山拍治。私の子供たち、皆の活躍を期待している」
『御意!』
今回の柱合会議はそれにてお開きとなった。
おわり
本作オリキャラ、鋼柱、厳鉄さんのイメージは
スパロボOGのゼンガー・ゾンボルトとコードギアスの仙波崚河を足して2で割った感じになります。
柱の中で最年長であり、本作での柱たちのまとめ役といった立ち位置になっています。