今回は機能回復訓練編の後編と本作版パワハラ会議になります。
炭治郎たちが蝶屋敷にて機能回復訓練を始めてから10日ほどたった。
善逸と伊之助の2人はアレから色々と自分なりに鍛錬してたりはしていたもののカナヲとの訓練には未だに敵わず彼ら2人自身も一向に自分たちが強くなってる実感もわかないでいた。
一方の炭治郎はというとこの10日で更に実力をつけていき、カナヲに対しても一方的に負けるということはほぼなくなり、10日目にはついに。
「わぁ―――――!!」
「ッ!?」
全身訓練でついに炭治郎はカナヲ捉え、続く反射訓練でもカナヲと互角の勝負を繰り広げ、ついに炭治郎はカナヲの猛攻を潜り抜けて湯呑みを手にした。
(うぉおおおおおおおおおお! 抜けたぁああああああ!!)
炭治郎はその勢いのまま湯呑みの薬湯をカナヲに向けてかけようとするが、そこで炭治郎の中の理性がそれを止める。
『その薬湯臭いよ。かけたら可哀そうだよ』
炭治郎は薬湯をカナヲにかけることなく、そのまま湯呑みごとカナヲの頭にポンと置いたのだった。
「勝った―――――!!」
「勝ったのかな?」
「かけるのも置くのも同じだよ!」
カナヲに勝ったことで蝶屋敷の少女たちと一緒に盛大に飛び跳ね喜び合う炭治郎たち、一方の善逸と伊之助はとうとう置いてきぼりにされてしまったことで焦りがピークに達していた。
「あぁ……本当何なのさ!! 炭治郎更に強くなってとうとうカナヲちゃんに勝っちゃったよ!!」
「畜生!! 権八郎のヤロウ!! なんでアイツはカナコに勝てんだぁあああああ!!」
「あの~?」
苛立ちがピークに達しブチ切れまくる善逸と伊之助に何者かが声をかけ2人はその声の方に振り替えると。
「御二人とも相当焦っているようですね」
そこにいたのはしのぶであった。
「御二人とも、炭治郎君がどうしてあそこまで強くなったのか、その理由を知りたくはありませんか?」
「「えッ!?」」
思いもよらない人物からの助け舟に目を丸くする善逸と伊之助、しのぶはその反応を了承と受け取り2人に炭治郎がこの10日の間どのような鍛錬を行っていたのかを話した。
「炭治郎君がカナヲに勝ったわけは、全集中の呼吸の技、全集中・常中を会得したからです」
「全集中・常中……て、それって!」
「なんだ紋逸、ぜんしゅうちゅうのじょうちゅうって?」
善逸はしのぶの言った全集中・常中という言葉を聞いたことがあったのかすぐさまなるほどといった感じで首を垂れるが伊之助は何のことやらといった感じだった。
しのぶは説明をつづける。
「全集中・常中。全集中の呼吸を四六時中やることで、基礎体力が飛躍的に上昇します。これはまぁ、初歩的な技術なんですけど、会得するには相当な努力が必要ですね」
「つまり、権八郎はそのじょうちゅうっていうのを使ってカナコに勝ったのか?」
「そうです。まぁ出来て当然なんですが、できないのも無理はないですよ、仕方がない仕方がない」
説明の後しのぶがそう口にしたのを聞いた伊之助は。
「できて当然……でもできないのは仕方がない……やってやろうじゃねえか!! できてやるっつぅの―――当然に!! 乳もぎ取るぞ!!」
と、大奮起し。
「全集中・常中……か……やるしかないのか……」
最初はそうため息を零していた善逸も。
「善逸くん、頑張ってください。一番に応援していますよ」
「は……はい―――――――――!!」
しのぶのその言葉で大奮起し、その日から2人はしのぶに色々と教わりながら、打倒炭治郎に向け全集中・常中の特訓を開始したのであった。
「瓢箪を吹く?」
「はい、カナヲと炭治郎君が今やってる鍛錬の中にあるもので、この瓢箪を吹くことをやっています」
訓練を初めて早々に、しのぶは善逸と伊之助にそう言い2本の瓢箪を見せた。
「へぇ、瓢箪を吹くってなんだか面白いことしてるんだなぁ」
「で、この瓢箪って吹くとどうなるんだ? 草笛みたいに音でもなるのか?」
瓢箪を見せられた善逸は面白い訓練だなと言い伊之助は音でもなるのかとしのぶに聞いた。
「いえ、吹いて破裂させます」
「「へぇ…………」」
「「え゙ッ!?」」
しのぶの続いて出た言葉に、一瞬善逸も伊之助も言葉を失った。しのぶの持ってきた瓢箪は特別硬く作られており、普通に考えればこんなものが人の息程度で割れるはずはないと想えるほどの硬度を誇る。
だがしのぶはこんなもの、全集中・常中を会得すれば一瞬で割れると言った。その上で更にしのぶはあるものを2人に見せた。
「ちなみに、今炭治郎君とカナヲが吹いている瓢箪がこれになります」
「デッカ!」
しのぶがそう言って持ってきたのは、幼子ほどもの大きさの瓢箪であった。それを見た善逸は炭治郎とカナヲの2人が遥かにとんでもないところに行っているのを理解し戦慄したのであった。
それからさらに9日ほど経ち、どうにか善逸と伊之助の2人も全集中・常中を会得し、機能回復訓練でカナヲにどうにか勝つことができたのであった。
時間は更にそこから数日が経ち、炭治郎の下に一羽の鎹鴉が舞い降りたのだった。
そのカスガイガラスを自分の下に降りてこさせるとここにやって来た詳しい理由を聞き、それは炭治郎を大いに歓喜させる。
「伊之助! もうすぐ打ち直してもらった日輪刀が来るって!」
鎹鴉の持ってきた情報は、炭治郎と伊之助の刀の打ち直しが終わり、その刀が今日届くというモノであった。その事を炭治郎から聞いた伊之助も歓喜の声を上げ一緒に出迎えへと走る。
屋敷の外に出ると丁度こちらの方へと向かってくる2人の人影が目に入った炭治郎はその人影に大きく手を振って挨拶をした。すると人影のうちの一人が何やら手荷物をもう1人の人影に私、炭治郎たちのいる方へと全速力で走ってきた。
そして、次の瞬間炭治郎が目にしたのは。
「よくも折ったな……俺の刀を……よくも、よくもぉおおおおおおおお!!」
「は……鋼錢塚さん!」
「殺してやるぅううううううううううう!!」
包丁の切っ先を炭治郎へと向け、ヒョットコ仮面越しでも伝わるほどの憎悪の念を抱き全速力て突撃してくる彼専属の刀鍛冶、鋼錢塚蛍の姿であった。
炭治郎はその後、実に1時間も追い回されることとなりようやく彼の怒りが収まったのか屋敷の縁側へと移動することができた。
「ひ……ひどい目に遭いました……」
「まぁ、鋼錢塚さんは情熱的な人ですからね、人一倍刀を愛していらっしゃる。あ、私は鉄穴森と申します。今回伊之助殿の刀を打たせていただきました」
鋼錢塚と共にやってきたこの男の名は鉄穴森鋼蔵と言い、今回伊之助の担当となった刀鍛冶であり、彼の刀を届けに来たと炭治郎に言った。
「あ、よろしくお願いします。竈門炭治郎です」
炭治郎も鉄穴森にそうあいさつをした。
「こちらこそ。それではこれが伊之助殿の刀となります」
鉄穴森は炭治郎に軽く会釈したのち、自身が持参した伊之助の刀を彼に渡した。
「えッ!? 伊之助、お前の刀……」
「おう!」
だが炭治郎はその刀の形を見て驚く。何と伊之助の刀は最初の時、彼が使っていたのと寸分違うことなく同じような出で立ちであったのだ。すなわち鍔は一切なく、刃はまるで鋸かのごとくボロボロの形状。
しかし当の伊之助は大喜びなうえ、彼の担当という鉄穴森も特に気にした様子ではなく、一応だが炭治郎は鉄穴森にそのわけを聞いたのであった。
「えぇ、実はこれはさるお方からの要望なのですよ。伊之助殿の刀はあのような形で打ってほしいと。結構大変な仕事でしたが、喜んでくれたのなら幸いです」
鉄穴森は炭治郎にそう答え、同時に鬼殺隊士の中には、自身の呼吸や戦い方に合わせて、刀を発注することはよくあることで今回の伊之助の刀もその注文に沿ったモノであると説明した。
「そうなんですね」
「ええ、渡されてから下手に素人目で加工され、刀の強度が弱まるよりもその方がずっと我々としても助かるのですよ。我々にとっても隊士の方々にとっても刀は文字通り、その魂を込めて作られ同時に彼らの命を護る為の大切な代物ですからね」
一方の伊之助は渡された刀をまじまじと見つめ。
「なぁ、これの試し切りをしたいんだが」
「ええ、構いませんよ、存分に試してみてくださいな」
そう口にすると早速打ち立ての刀をもって鍛錬場へと向かうのであった。
その後、炭治郎もまだふてくされてる鋼錢塚からどうにか刀を受け取り、仕事を終えた鋼錢塚と鉄穴森の2人はそろって帰路についたのだった。
ところ変わって琵琶の音が鳴り響く、どこかの城の中のような雰囲気の異空間、この場に1体の鬼が姿を現していた。
その鬼の瞳には〝下陸〟と数字が刻まれている。
さらに琵琶の音が鳴り響くと、そのたびに新たな鬼たちがその場に姿を現した。全鬼の瞳にはそれぞれ下壱から肆までの数字が刻まれていた。
彼らは鬼の首魁、鬼舞辻無惨の精鋭の鬼たち、十二鬼月、下弦の鬼たちであった。
そして最後に一度、琵琶の音が鳴り響くと彼らの前にはさらに一人、豪華な着物で自身を着飾った、どこか妖しげな雰囲気を醸し出す女が立っていた。
「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」
しかし、その口から発せられた声色は到底女性のモノとは思えないほどの低音、更に鬼たちはその言葉を聞いた瞬間、まるで何かに操られるかの如く、その女の言葉通りに平伏するのであった。
鬼たちはその瞬間に理解した。自分たちの目の前にいる女こそ、自分たち鬼の首魁である鬼舞辻無惨であると。
「私に聞かれたことを答えよ。先日那田蜘蛛山にて下弦の伍、累が殺された。私が問いたいのは一つのみ。『何故に下弦の鬼はこうまで弱いのか』十二鬼月に数えられたからと言って終わりではない、そこから始まりなのだ。より人を喰らいより強くなり私の役に立つための始まり。ここ百年余り十二鬼月の上弦の顔ぶれが変わらない。鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼たちだ。しかし下弦はどうか? 何度入れ替わった」
無惨からの問いに下弦の鬼たちは何一つ答えられない。それも無理もない事であった。
ここ百年間、十二鬼月のうち上弦の鬼たちの顔触れはほとんど変わってはおらず、せいぜい空席であった上弦の陸が補充された程度である。しかし下弦の鬼に至ってはこの数十年間で何度も入れ替わりが起きており、その原因はいずれも鬼殺隊(鬼狩り)に敗北してのモノであった。
ここ最近では下弦の弐が、そして今回の那田蜘蛛山で下弦の伍が相次いで鬼狩りたちに討伐されている。これは鬼たちにとって、とりわけその鬼たちの首魁たる鬼舞辻無惨にとっては屈辱以外の何物でもなかったのだ。
「面目……しだいもございません……」
現下弦の弐、轆轤がそのことを無惨に謝罪する。だが、無惨の怒りはそれでは収まることはなく。
「面目ない……だと?」
無惨は自身の腕を巨大な怪物のような形に変貌させると、そう口にした轆轤へと突き付ける。だがその怪物の腕は轆轤の既の所で止まった。
「…………」
あまりに突然の出来事に恐怖でその身が支配され動くことも喋ることもできない轆轤。だが、直後に無惨は不敵な笑みを浮かべると。
「いや、お前たちを責めたいわけではない。下弦は弱いとはいえ、それでも先代の下弦の弐、そして累に至ってもここ数十年その地位に君臨し続けてきたのは事実だ。下弦とはいえそれ相応の実力を持つモノは貴重だ。よって、今この場でお前たちに機会を与えたいとそう思う」
そう静かに口にした。
「機会……でございますか……?」
無惨の発した言葉にしばし動揺したのち、改めて先の言葉の真意を問い直す轆轤と他、下弦の鬼たち。
「そうだ……」
無惨は下弦の鬼たちからの問いにそう答え。
「私の血をお前たちに授けよう。この血を得ればお前たちは更なる力を得られる……」
続けてそう口にした。
その言葉を聞いた下弦の弐たちはいっせいに驚きと歓喜の声を上げた。それも当然のことである。
鬼たちの強さは、その鬼がもともと持っていた資質以上に、鬼舞辻が与える血の量も大きく関係する。より多くの血を与えられた鬼はその分、より強く強大になり、その逆に少ない血ではそこまでの力を得るに至らない。
即ちより多くの鬼舞辻の血を得ることができれば、その分鬼たちは力をつけ強くなることができる。鬼舞辻から更なる血を分けてもらうというのは鬼たちにとっては正しく栄誉に他ならない。
そのもう一つの意味さえ知らなければ。
「さぁ、受け取るといい。我が血を……そして更なる力をつけ、鬼狩りどもを滅ぼすのだ」
そうとは知らず、下弦の鬼たちは文字通り喜んで無惨からその血をもらい受ける。
だが、その血を得て彼らがまず最初に得たのは、まるで地獄に叩き落され、その業火でその身を焼かれているかのような苦痛であった。
「ギィヤァアアアアアアアアアア―――――!!」
「ガァァアアアアアアアアアアア―――――!!」
血を受け取った下弦の鬼のうち、下弦の陸と下弦の参は忽ちその身を不気味な肉塊へと変貌させ、瞬時に事切れた。
「グゥウウウ……ガッ!」
「ガハッ!……グゥ……」
「ガハッ!」
残る下弦の鬼たちもその血が与える苦痛にその身を焼かれのたうち回る。
「言い忘れていたが、私の血はお前たちにとっては猛毒でもある。その血に順応できるかどうかは、お前たち次第だ。順応できれば、お前たちは更なる力を得られるが、そうでない場合は、こいつらのようにただの肉塊へと姿を変え滅びるだけだ。さて、お前たちはどうかな……」
無惨はそんな下弦の鬼たちの惨状を、余興の如く楽し気に見つめている。だがしばらく経つと。
「ほう、順応できたか」
のたうち回っていた下弦の鬼たちは平静を取り戻し再度、無惨へと平伏しなおすのであった。
「これほどの力……体に力が漲ります……」
「素晴らしい……これは素晴らしいですぞ……ハハハ……アハハ!」
「あぁ……私は夢心地です……貴方様からの素晴らしい贈り物……万感の思いでございます」
無惨は更なる笑みを浮かべて下弦の鬼たち一人一人に声をかけていく。
「どうだ零余子。最早鬼狩りなど畏れるに足らぬだろう?」
「はい……むしろ、これまで受けてきた屈辱、それを今この場で晴らしたい気分にございます! あの憎き鬼狩りども……わが手で全員血祭りにあげて差し上げますよ」
下弦の肆、零余子。彼女はこれまでは鬼狩りと出会うとそのたびに彼等から逃げてきた。さほど力を持たない彼女にとってそれは、生き延びるための賢い手であったが。
永遠すらこの手にした鬼である自分が、無様にも人間如きから尻尾を巻いて逃げるなど。彼女にとってこの上なき屈辱でもあったのだ。
「気分はどうだ?」
「素晴らしい……実に素晴らしい気分です、無惨様……いただいた機会、決して無駄には致しません!」
下弦の弐、轆轤もそう力強く口にした。十二鬼月に数えられたとはいえ、鬼狩りから隠れる日々は彼にとっても大いに屈辱であった。
だからこそ、こうして機会を与えられたことは彼にとっては大きな喜びであった。
「お前はどうだ? 気分は……」
「あぁ……私は夢見心地でございます。貴方様から血を頂けて、愚かな陸と参の断末魔が聞けて……人の不幸や苦しみを見るのが大好きなので、この血で更に、鬼狩りどもの断末魔を聞ける……血を与えてくださり、ありがとうございます」
下弦の壱、厭夢もそう無惨の問いに恍惚な表情で応えるのであった。
「お前たち参人は、下弦の中でも私の血に順応できた選ばれ子鬼だ。その力を持って鬼狩りの柱を殺せ。そして……」
最後に無惨はこの場に残った3体の鬼たちに告げる。
「耳に花札のような飾りを付けた鬼狩りを殺せば、更なる血を与え、お前たちを新たな上弦の鬼へと加えてやろう。お前たちのはたらき、期待するぞ」
その言葉の後、琵琶の音が再度響き渡り、無惨と鬼たちの姿はその場から消えたのであった。
つづく
本作の無惨様は少しだけ理性的にしました。
でも却って極悪な感じになたような……。
でもまぁ、無惨様だしね(オイ
次回はいよいよ無限列車編に入ろうかと思っております。
それではまた次回。