水柱さんではなく本作のオリキャラであるカンナが向かっています。
オリジナルキャラ、オリジナル呼吸アリとなっております。
第1話 氷の少女と炭焼きの少年
幸せな時が失われるのは、いつだって一瞬だ。
いつも、失われるその時まで誰一人、その事実には気が付かない。
他でもない当の私、氷室カンナがその一人だ。
私には父と母、そして姉がいた。
そう、かつては私にも家族がいた。だけど今はその家族は誰一人。
この世に生きてはいない。
「ですから、冨岡さん? 貴方が今回の任務で負った怪我というのはですね」
「問題ない、だから薬をもらいに来た」
「ですから! 本来は安静にしていなければいけないと言ってるんです!!」
鬼殺隊。
この大正時代において、人の世の陰で人を襲い喰らう鬼たちがいる。
その鬼たちを狩り人々の生活を護り安寧を護るのが私たち、鬼殺の剣士、鬼殺隊だ。
人よりも強靭な肉体を誇り且つ瞬く間にその身に負った傷をも癒す再生能力を持つ鬼に対し、私たち鬼殺の剣士は人であるが故に傷つき時にはやすやすとその命は刈り取られる。
鬼を殺せるのは日輪刀と呼ばれる特殊な刀の他は日光に直接さらし焼き尽くすほかない。
そしてその鬼殺隊の中でも極めて高い才覚を誇る9人の剣士たちを柱と呼ぶ。
私はその内の一人、雪柱と呼ばれる柱の継子だ。継子とは柱に認められ、直々に指南を受けることができる隊士の事を言う、それが私だ。
今日もまた私が師範から仰せつかった用事のためにここ、蝶屋敷に訪れた時、もう一体何度目かになるであろうか、診察室の方から女性と男性のモノと思う様な、言い争うような声が聞こえた。
「ハァ……冨岡さんまたしのぶさんと仲良く喧嘩ですか?」
「喧嘩してるわけではない」
「カンナさん? 仲良くとは一体どういうことですか?」
診察室に入ると案の定というかなんというかだが、そこには鬼殺隊、柱のうちの一人である水柱、冨岡義勇と私と同い年で同期ながらも今は蟲柱の名をいただいている胡蝶しのぶの姿があった。
「毎度毎度飽きもせずに、こんな朴念仁な冨岡義勇さんのお相手をなさってるだけで、それはもう十分に仲がいいと言われても文句言えるモノではありませんよ?」
「毎度毎度飽きもせずに私に説教を喰らっているのはその朴念仁ですよカンナさん。これだから富岡さんはみんなから嫌われるんです」
しのぶさんがこう口にすると、まぁ大抵の場合。
「俺は嫌われていない」
と、この朴念仁は答えるのがもうお決まりとなっている。
「全く……師範からの用事でカナエさんに会いに来ただけだというのに、私もこう毎回毎回あなた方2人の夫婦漫才と言わんばかりの口論を聞かされて流石にため息一つもこぼれますよ」
私がそう2人に言うと、しのぶさんは笑顔ながらも額にいくつもの青筋を浮かべて私の言葉にこう言い返してきた
「夫婦漫才とは何ですか? カンナさん、いい加減にしないと怒りますよ? それにその煽り文句、いらないところが本当にあの方、導磨さんに似てきてますね。姉さんに用ならすぐにそちらに向かってはいかがですか?」
ちなみに私が今回蝶屋敷に訪れた理由は元鬼殺隊、花柱でありこの胡蝶しのぶさんの姉、胡蝶カナエさんに用があったからだ。
正確には用事があったのは私の師範、現雪柱、蓮刃導磨あるが、柱であることに加えて今日ばかりは任務で手が離せないということで継子の私が代わりにその役目に来ているというわけである
「これで失礼する」
「「待ちなさい冨岡さん!」」
私としのぶさんのやり取りの最中、どさくさに紛れてこの場を去ろうとする富岡さん。
だが当然のことながら私としのぶさんが富岡さんのそんな行動を見逃すはずもなく、冨岡さんは即座に私としのぶさんの2人に襟首をつかまれ診察室に戻された。
「今しがたしのぶさんから安静にと言われたでしょう!?」
「そうです、今日という日はもうあなたの勝手にはさせません! 強制入院です! 姉さんにも言って四六時中見張ってますので当面の間任務に出向くのは禁止です! 冨岡さんの担当地区にはほかの方をしばらく向かわせますので、どうかご安心して冨岡さんは休んでください!」
「俺は平気だ!」
「いいから四の五の言わず休めと言ってんだこの野郎!!」
とうとうキレたのか、最後しのぶさんの口調が恐ろしいことになっていたが、もうこれも何度目かということで私はすっかり慣れてしまったので何も言わない。
「冨岡さんの担当地区、私が代わりに受け持ちますのでどうぞお休みください冨岡さん」
私もそう富岡さんに告げると、予定通りカナエさんの下で用事を済ませて、早速鬼殺の任務へと向かうのであった。
冨岡義勇の代理として鬼殺の任務へと向かう氷室カンナを見送っていた胡蝶しのぶは秘かに、今日の出来事と同時に、自身の同期である氷室カンナに関して口にしていた。
「全く、とはいえカンナさんのおかげで今回ばかりは冨岡さんに無理をさせずに済みそうです。 で、一体いつから出歯がめしてたんですか? 姉さん」
「あら~気づいてたのしのぶ?」
しのぶがそう口にすると、蝶屋敷の玄関のちょうど死角になっている位置から姉、胡蝶カナエが姿を見せる。
「そうね~カンナちゃんが屋敷に来たところからかしら~」
「最初からじゃないですか! だったらなんであの朴念仁の冨岡さんがまたのまたというところで逃亡しそうになってるのを止めに入らなかったんですか!?」
「だって~カンナちゃんがいるのなら問題ないかな~って思ってたし、一応は導磨くんからの頼まれモノの用意とかもあったからね~」
カナエのその言葉に今日何度目かという溜息を吐くしのぶであった。
全く、姉さんってば相変わらずの自由人なんですから困ったモノです。アレで以前までは柱の一人だというのですから、なんだかなぁってそう感じてしまいます。
そもそも、柱の方って独特というか、個性が強すぎる方が多すぎるんですよ。
その代表ともいえるのがあの派手柱もとい、音柱の宇随天元さんですかね。
掴み処がなくで本当に何考えてるかわかりもしない、雪柱の蓮刃導磨さんもですし、冨岡さんは言わずもがな。
最早狂犬と言っても過言ではない風柱の不死川実弥さんもまともかと言われればですし。
まともと言えるのは本当、鋼柱の鐵厳哲さん、岩柱の悲鳴嶼行冥さんくらいですか。
少し前だったら炎柱の煉獄さんもその枠に入れられたのですけれど。
「それはそうと姉さん、導磨さんからの頼まれモノって何だったんですか?」
「あぁ、実は彼の日輪刀なのよ。この間久しぶりにここで会ったときにどうも調子が悪いってことで打ち直してもらってたのを今朝方出来上がって、家で預かってたの。しばらくは予備のを使ってたらしいから任務にはさほど影響はなかったらしいけど」
「そういえば導磨さんの刀って鉄扇、それも私の日輪刀と同じく特殊な加工が加えられてるんでしたっけ? でもなぜわざわざ家に?」
普通そうなら彼の御屋敷、雪屋敷の方に預けられるはずだろうにと私は一瞬思ったものの、その理由がすぐにわかり。
「雪屋敷の方はカンナちゃんと導磨さんと後は隠が何名かしかいないでしょ? 何れも任務で出払うことがほとんどだし、でも家なら元柱の私にアオイたちと大体人がいるから刀鍛冶さんを困らせないで済むわ」
「なるほど、確かにそう言われればですね」
私も姉さんの言葉に首肯した。
その後2人でそろって蝶屋敷に入りしばらく歩きながら私は先に執り行われた柱合会議で持ち上がった話を姉さんに告げた。
「先の柱合会議でのことなんだけど、柱の枠を増やして現在の9名から12名にすると御館様が仰ってたわ」
「御館様が? それに柱の枠を12名にって、前代未聞な話ね」
本来鬼殺隊最高位である柱は、その漢字の画数からとり9名と歴代定められていた。
しかしこの度、その枠を新たに3つほど増やし、柱を12名にすると御館様は先の柱合会議の場で私たち現在の柱たちに告げたのだ。
「理由はやっぱり十二鬼月……?」
「ええ、数の上では9対12、彼我兵力差では向こうに分があり、ただでさえ柱は空席が目立つ。現状のままでは十二鬼月、まして上弦の鬼と戦うには心もとなさすぎるうえ、最近も就任したばかりの柱が殉職することが相次いでいて、オマケに近年は下弦の鬼ですらも相当な実力者が増えてきているから、こちらも優秀な隊士をいつまでも遊ばせておくわけにはいかないと、そうなったと」
十二鬼月、鬼の首魁、鬼舞辻無惨の配下の鬼、それも最精鋭の鬼たちだ。
特にその内の上弦の鬼と呼ばれる6体の鬼は歴史上幾度となく柱を含む鬼殺隊士を大勢葬ってきている。
以前は普通の鬼に多少毛が生えた程度の強さでしかなかったはずの下弦の鬼たちも、近年は相当な強者が増えてきており、それらによる被害も年々拡大の一途をたどっていた。
事態を重く見た鬼殺隊の当主である御館様、産屋敷耀哉さまはそれを理由にこの度、柱の枠を現在の9名から12名に増やすとご決断なされた。
数の上でこれで向こうの12体に対しこちらも最高位の柱が12名ということとなり、拮抗することとなる。とはいえ十二鬼月、それも上弦ともなればその強さはゆうに柱3人分とも言われる。
柱の枠を増やしたのは他にも、十二鬼月など強力な鬼に対し可能な限り複数人での柱で挑みその生存率を高める狙いもあった。
「でも、相当な手練れでなければ、柱は務まらないわ」
「ええ、けど甲の隊士を中心に何名かにはすでにお声が掛かってるらしいわ。その内でほぼ確定と言えるのが素山拍治さんと煉獄さんの息子さんの杏寿郎さんの2名ね」
「あぁ、それなら心配はないわね。拍治くんはすでに鬼を50体討伐済みだし杏寿郎君は最近ではお父さんの槇寿郎さんの代理で柱合会議にも顔を出してるっていうし、彼も伯治くん並みに鬼を狩ってて実績もあるもの」
それでもあと2名ほど枠は開いてるのだけれどと私は最後に姉にそう告げた後、日課である薬剤の研究のために姉と別れ私室の研究室へと向かって歩みを進めた。
冨岡さんをどうにか蝶屋敷へととどまらせたのち、私は本来なら富岡さんが担当することとなっていた地へと向かい、任務に就いた。
場所は奥多摩郡、雲取山。そこでなんでも鬼の目撃情報があったとのことで私はそこに着くと早速聞き込みに入る。
とはいえ公式には政府非公式の組織である鬼殺隊な上、鬼の存在など一般には主に迷信、御伽噺程度のモノでしか伝わっていない以上、聞き込みで行えることなど高が知れている。
「収穫無しね……」
「カァーカァー、焦ラズキッチリ情報ヲ集メルベシ、カァー!!」
私の鎹鴉からもそう言われ、私は地道に街人から可能な限りの情報を集める。
そうしていると、私は忙しそうに炭売りを行っている少年の姿を目にした。
その少年の様子からかなり少年はこの町の人々から慕われているようで、時にはお皿を割ったと疑いをかけられていた青年を助けたり、荷物運びを手伝ったりと、正直傍から見るとちょっとというかかなり真面目が過ぎるのではと思うくらい生真面目な感じの少年でもあった。
結局これと言ってみのりになりそうな情報を得ることはできず、今日はこの辺で切り上げ明日から再び情報を集めようと近場の宿屋で床に就いた。
正直、その事であとで後悔することとなった。
「カァーカァー鬼ガ現レタ、氷室カンナスグニ向カエ、鬼ガ山奥ノ炭焼キ小屋ニ表レタヨウダ!! 悪鬼滅殺、アァ、悪鬼滅殺ゥウウウウ!!」
朝早く、床から起きたばかりの私に、鎹鴉がそう慌てた様子ではいってきた。
私は急いで隊服に着替えると急ぎその件の炭焼き小屋へと向かう。
ふと私の脳裏には昨日の昼間に見かけた炭売りの少年の姿が浮かんだ。
「お願い、無事でいて!」
だが、炭焼き小屋に着いたとき、私が見たのは無残にも鬼の手で殺された人々の遺骸であった。
「……酷い」
正直、既に見慣れてしまった光景であり私はそう一言口にこそしたものの、すぐさま冷静になり周囲を伺う。
遺体はまだ新しい、そう遠くには行っていないはず。
しばらくの間そうして周囲を伺っていると。
「頑張れ禰豆子! 堪えろ!!」
昨日の昼間に聞いた少年のモノと思われる声が聞こえた。
「そっちね!」
その声の方角に向かって走ると、そこには昨日見かけた少年と、その少年に覆いかぶさるような形で、襲い掛かる女の鬼の姿があった。
「頼む! 鬼になんてなるな、頑張れ禰豆子!!」
少年の声が耳に入る。
あの鬼は恐らくはあの少年の近親者なのだろう。
だが、こうなってはもうどうにもならない。私はこれまで幾度となく、身内が鬼となった人々とその場面を、そしてその鬼によって食い殺されてしまう人々を見てきた。
『雪の呼吸、壱ノ型、粉雪』
私は刀の鍔に手をかけ、一気にあの鬼の懐まで入り込み、刀を引き抜くと同時にその鬼の頸を刎ねようとした。
だがとっさにその少年が鬼の女の体を引き渡しの斬撃から離す。
「どういうつもりなのかしら?」
「ああ……」
突然のことだったようで少年は驚きと恐怖が入り混じったような顔をしていた。
「なぜその鬼を庇うの?」
「妹、俺の妹なんだ!! なんでこんなことになったのかわからないけど、でも、禰豆子はまだ、誰も殺していない!!」
少年はそう叫ぶが、その間もその女の鬼は少年の腕の中で暴れ続けている。
私は再びその鬼の方へと駆け出し、その鬼を少年から奪い取った。
「禰豆子!」
「確かに、この体についている血は、あの炭焼き小屋の人々のモノではないでしょうね。けれど、だからと言って鬼を狩らない理由はないわ」
「待ってくれ! その小屋は家だ、家には禰豆子や家族以外の匂いが残っていた。きっと家族を殺したのはそいつだ、禰豆子じゃないんだ! だから……」
「殺すなと……ふざけないで!」
私は猶も懇願する少年にそう強く、言葉をぶつけた。
「人食い鬼となった人間は、見境なく人を喰うわ、特にその鬼が真っ先に喰うのが自身の身内、栄養価が高いうえに、貴方のように鬼となった身内の姿を受け入れられずに油断した結果……だからたとえ、貴方の妹であろうと私は殺す。今この鬼が誰も殺していなかろうが、これから殺さないという証明ができない。ならばどのような理由であろうともね」
「俺が……俺が止める!! 禰豆子が他の誰かを殺す前に」
「甘いことを……先ほどこの鬼に覆いかぶされ、押さえつけられたのは貴方よ!? そんな人間になにができるというの!? 一方的に襲われ食い殺されるがオチよ! なら」
私は再び自身の刀を鬼へと向ける、だがすると途端に。
「やめろぉおおおおおお!!」
少年は私めがけて近場の石を投擲してきた。
その石に一瞬意識を削がれ、鬼を放してしまう。
「ガァアアアアアアアアアア!!」
鬼は私に蹴りを入れてきた。
私は刀でその蹴りを受けどうにか自身に傷を負うのを防ぐも、自由の身となってしまった鬼、このままではあの少年を襲う。
案の定その鬼は少年の方へと向かって走っていった。
「くっ! 待ちなさい!」
私はすぐさま鬼を追いかける。
だが、その鬼の姿が再び目に入ったとき、私は信じがたい光景を目にした。
「ガァアアア……」
「禰豆子……」
そこにいたのはその少年をまるで庇うかのような動作をした鬼の姿であった。
「分かるのか……禰豆子?」
私に向かって威嚇するかのような動き、体中傷だらけでおまけに鬼になったことで生じた飢餓状態、今もその中にあるというのに。
その鬼は今、一番間近にあるはずの餌には目もくれず私へと敵意を向けている。
(これじゃ、姉さんやカナエさんの事を云えないわね私も)
私めがけて一気に駆けだした鬼に対し、私は刀で峰打ちを喰らわせた。
「禰豆子!」
「大丈夫よ、眠らせただけだから」
「どうして‥…さっきまでは殺そうとしていたのに」
そうだ、この少年の言う通り、私はこの鬼を殺すつもりだった。
けれど、この鬼が先ほど見せた行動。酷い飢餓状態であるにもかかわらずに人を襲おうとしなかった。
こんなことなど、今の今まで起きたことはない。
「貴方の妹、今後も人を襲うことがないと、させはしないとそう、約束できるのなら、見逃しましょう」
「え?」
「約束できるかしら?」
「……はい、絶対に俺が、禰豆子を護ります! 絶対に人を襲わせたりしない!」
少年はそう私の問いに強く応えた。
それでもなお、体は今も震え続けている。
「その言葉、信じるわよ……ここから少し離れた狭霧山というところに、鱗滝左近次という人物がいるわ。彼を訪ねなさい」
「えっと……」
「私と同じ、今は元が付くけれど鬼殺の剣士だった人よ。彼を訪ね、鬼と戦うすべを身につけなさい。貴方の妹を鬼にしたもの、そして妹を鬼から人に戻すための術、それを鬼が知っている可能性がある。しかし鬼が気安く、貴方を助けてくれるはずはないし、貴方の妹がまた、いつ貴方を含む人を襲うかわからない。もしそうなったときのために、力を付けなさい。それが一番に貴方とあなたの妹を護る手段だと、私は考えるわ」
「鬼殺の剣士に……」
私は少年にそう諭した。
正直、今のような出来事があったとはいえ今後も彼の妹が鬼としての本能から来る衝動に抗える保証はない。
そうなれば確実に彼の妹は人を喰らうだろう。
そうなったときのために、何よりそのような未来を引き起こさせないためには、少年自身が強くなりそれを防がねばならないのだ。
少年は一瞬ためらうような動作を見せるが。
「分かりました。鱗滝という人を訪ねればいいんですね! なら妹を護る為に、禰豆子を人間に直すために、鬼殺の剣士になります!!」
すぐさま私にそう答えてきた。
「その覚悟、しかと承ったわ」
私は最後、そう言い残すとその場を後にした。
宿屋へといったん戻ると私は筆をとり、先にあの少年へと語った鱗滝左近次へと書を認めた。
『略啓、鱗滝左近次殿。
私は現雪柱、蓮刃導磨が継子、氷室カンナと申します。
突然の手紙、どうかお許しください。先に貴方の弟子であった現水柱、冨岡義勇の代わりに向かった地にて、炭売りの少年とその妹と出会いました。
その家族はすでに鬼によって惨殺され、妹もまた、鬼へと変貌させられていました。しかしその妹は、激しい飢餓状態にもかかわらずその兄である少年を襲うことなく、逆にその少年を庇う姿を見せました。
少年は妹を元の人へと戻すため、そして妹を護り仇たる鬼を討つため鬼殺の剣士となる意思を示しております。手前勝手な頼みと承知しておりますがどうか、貴方の手で育ててあげてほしい。どうか御自愛専一にて精励くださいますようお願い申し上げます。
匆々、氷室カンナ』
つづく。
次回はカンナ視点でのオリジナルストーリーとなります。
感なの師範である本作の柱童磨さんこと導磨さんが登場予定です。