鬼滅の刃 雪華ノ乙女   作:アウス・ハーメン

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いよいよ今回の話から無限列車編に入ります。
今回は飽くまでも導入部分になります。


第17話 無限列車編

 炭治郎らが蝶屋敷に来て、機能回復訓練に手カナヲに勝利してからさらに時は過ぎ、この日炭治郎はしのぶの下で診察を受けていた。

 

「体調の方はもう、ほぼ大丈夫のようですね。これなら十分復帰できます」

 

「そうですか、ありがとうございます!」

 

 結果は上々のようでしのぶから無事、退院と復帰の許可が下りた。炭治郎はこれまでの事を含めしのぶに礼を述べる。

 

「あの、しのぶさん。実はずっと聞きたいことがあったんですが、いいですか?」

 

「はい、答えられることならなんでも」

 

「実は、カンナさんと一緒に那田蜘蛛山で下弦の伍と戦った際に、俺は鱗滝さんの下で学んだ水の呼吸ではなく、亡き父から教わった家に代々伝わる神楽『ヒノカミ神楽』を舞う際に使う呼吸を半ば思い付きで使ったんですけど、それで技が出せて下弦の伍の首を刎ねたんです」

 

 お礼を言った後炭治郎はそうしのぶに尋ねた。

 蝶屋敷に来る前の任務、那田蜘蛛や名に手カンナとともに下弦の伍、累と対峙した炭治郎はその戦いの最中、カンナが自ら放った雪の呼吸の漆ノ型の反動で動けなくなったとき、カンナを助けようととっさに、炭治郎は脳裏に浮かんだ父親の言葉に従う形で竈門家に代々伝えられてきた神楽舞である『ヒノカミ神楽』の呼吸を用いて技を放ち、下弦の伍、累を討伐したのだ。

 だが、その時から炭治郎の中ではなぜ、自分の家に使えられた神楽の呼吸で、鬼殺隊が用いる全集中の呼吸と同じように技が出せたのかずっと疑問だったのだ。

 

「なるほど……でもごめんなさい『ヒノカミ神楽』というモノは鬼殺隊の中では聞いたことがありませんね」

 

「あの、それなら火の呼吸とかは?」

 

「それもありませんね、でも火の呼吸はありませんが炎の呼吸と後一つ、確か鬼殺隊が現在使う全集中の呼吸の始まりとなった呼吸に〝日の呼吸〟というのがあるとは聞いたことがあります」

 

「えっと、火の呼吸はないのにその始まりの呼吸がひの呼吸と呼ばれてると?」

 

「あぁ、字が違うんです。日輪刀の日の字で日の呼吸と呼びます」

 

「あ、なるほど!」

 

 炭治郎の問いにしのぶはそう応え説明した。

 しのぶの説明によると現在鬼殺隊に伝わる全集中の呼吸、それには最も原初たる呼吸が存在しその後、現在の水や炎、雪の呼吸など各流派の呼吸に枝分かれしていったとのことだった。

 そしてその始まりの呼吸の名が〝日の呼吸〟と呼ばれていたとのことだ。日輪刀、或いは日光の日と書いて日の呼吸。自身の家に伝わる神楽の名が『ヒノカミ』何か関係があるのではと炭治郎はしのぶからの説明を聞き思案した。

 

「ただ、私も始まりの呼吸がどういうモノであったかまではわからなくて、ただそれに関して知っているであろう方なら知っています」

 

「えっと、それは……?」

 

「現在の炎柱、煉獄さんです。煉獄さんの家は代々炎柱を輩出してきた由緒ある御家で、非常に古い歴史を持っています。きっと件の日の呼吸に関しても、何か知っていることがあると思います」

 

「炎柱の煉獄さん……あ、あの人!」

 

「はい、鴉を飛ばしますけど返事が来るまで少しかかるかもしれませんが」

 

「いえ、構いません。ありがとうございます!」

 

 しのぶはそう炭治郎に言うと炭治郎は今一度しのぶに礼を言った。

 その後の診察もすべて終え炭治郎は蝶屋敷の廊下を一人歩いていた。すると炭治郎の進行方向から一人、鬼殺隊の隊服を身に纏った人物が歩いてきた。それを視界にとらえる前に自身の嗅覚でいち早くとらえていた炭治郎はその人物が自身とすれ違う前に道を開けるが。

 

(痛た! 避けたのにぶつかってこられた)

 

 その人物は炭治郎に気付かず軽くだが炭治郎と接触してしまった。

 

(あ、あの人!)

 

 咄嗟にその人物の方を見た炭治郎はその人物の特徴的な髪型から、自身の最終戦別での時の事を思い出した。

 

(確か、最終戦別で進行役を行っていた白髪の方の女の子にからんでいた……)

 

 炭治郎が今すれ違ったのは自身の最終戦別の時に、進行役を執り行っていた少女のうちの1人、白髪の方の少女にからんでいた少年であった。

 しかし、炭治郎は同時にその少年の容貌を見て驚いた。あの最終戦別の時からさほど時間は経過していないにもかかわらず、あの時はさほど自分と大差ない背丈であったにもかかわらず、今すれ違った少年の体格は炭治郎を頭一つ以上追いこすほどにまで大きく成長していたのだ。

 

「久しぶり、元気だったか!?」

 

 あんな別れ方にはあの時はなったが、一応は同期の隊士とあって炭治郎は大きな声でその少年にそう叫ぶが、少年は炭治郎の言葉を無視してそのまま蝶屋敷の奥へと歩いて行ってしまった。

 

 思わぬ人物との再会した炭治郎。無視されたことには少しだけ引っ掛かりを覚えたものの、すぐに気を取り直して炭治郎は今回の怪我の療養でお世話になった蝶屋敷の人々に挨拶へと向かっていた。

 

「そうですか! もう行かれる。短い間でしたが、同じ刻を共有できてよかったです。頑張ってください」

 

「ありがとう……」

 

「お気をつけて」

 

 最初に向かったのは神崎アオイの下であった。炭治郎はこれまでの蝶屋敷での生活で色々と世話になったこともあってアオイに丁寧にお礼を言ったのだが、当のアオイはこんなのは当然ですと言った態度で炭治郎には普段通りのどこか素っ気なさも感じる事務的な対応で応えていた。

 

「たくさんお世話になったなぁ。忙しいなか俺たちの面倒を見てくれて本当にありがとう。これでまた戦いに行けるよ」

 

 そんなアオイの対応だったが、炭治郎は気を悪くはせずお礼の言葉を重ねていく。

 

「貴方たちに比べたら私なんて大したことはないので、お礼なんて結構です。選別でも運よく生き残っただけ、その後は恐ろしくて戦いに行けなくなった腰抜けなので」

 

 そんな直向きな炭治郎に少しだけ、アオイは気を許し自分の身の上を話した。自分は運よく最終選別を生き残っただけ、その後は戦いに行くのが怖くなって戦えなくなった腰抜けの隊士だと。そんな自分よりも畏れず、屈することなく線上に立てる炭治郎たちの方がずっとすごいのだと。

 

「そんなの関係ないよ。俺を手助けしてくれたアオイさんはもう、俺の一部だから。アオイさんの想いは、俺が戦いの場にもっていくし」

 

 そう謙遜するアオイに炭治郎はそう声をかけ、最後にもう一言、怪我をしたらまたお願いすると告げた後アオイの下から離れていった。

 そんな炭治郎の姿を見つめるアオイの下を一陣の風が通り過ぎる。その後の彼女の顔はそれまでとは異なり、非常に晴れやかで穏やかなモノとなっていた。

 

 あおいのもとを去った炭治郎が次に訪れたのは、最終戦別の後、ここ蝶屋敷で再会し機能回復訓練では互いに競い合った相手であるカナヲの下であった。

 

「あ、いたいた! 俺たち、もう出発するよ。色々ありがとう!」

 

「…………」

 

 カナヲにも先ほどの蒼いと同じようにお礼を言う炭治郎だが、当のカナヲはにこにこと笑うだけで炭治郎には一言も返事をしない。

 

「君はすごいね、もう継子で。俺たちも頑張るから!」

 

 それでも炭治郎は諦めずにカナヲに話しかけるが、一向にカナヲは炭治郎に言葉を発することをしない。

 それでも話しかけ続けるとカナヲはおもむろに懐から一枚のコインを取り出すとそれを空へと弾き上げた。

 そのコインが手元に戻り、そのコインを一目確認した後。

 

「師範の指示に従っただけなので、お礼を言われる筋合いはないから、さよなら」

 

 カナヲはようやく口を開きそう炭治郎へと告げた。

 ずっと話しかけていたカナヲがやっと口を開いてくれたことに喜んだ炭治郎はその後もカナヲに色々と声をかけるが、それからはまたカナヲは口を閉ざすか、さよならとだけ言うばかりで炭治郎の言葉に応えなくなってしまう。

 それでも負けじと炭治郎がカナヲに話しかけ続けると。

 

「指示されていないことは、これを投げて決めているの。今あなたと話すか話さないか決めた。表が出たら話さない、裏が出たら話す。裏が出たから話した」

 

 カナヲはそう炭治郎に告げた。

 そんなカナヲの言葉に炭治郎は疑問を抱きその思いをカナヲに問うと、カナヲは何もかもがどうでもいいから自分で決めることができないのだと、そう炭治郎に応えた。

 

「この世に、どうでも良いことなんて無いと思うよ」

 

 それを聞いた炭治郎はカナヲにそう告げるとカナヲが持っていたコインを借り。

 

「よし、投げて決めよう! カナヲがこれから、自分の心の声をよく聞くこと! 表だ、表が出たらカナヲは心のままに生きる!」

 

 そう言うと先ほどカナヲがやったのと同じようにコインを指で空へと弾き上げた。

 だが力を込め過ぎたのか、コインはあまりに高いところまで打ちあがってしまう。しかも運悪くその場を一陣の風が横切り、コインがあらぬ方向に流されてしまう。

 

「わっあれッ!? どこ行った?」

 

 それでもどうにか流されたコインを見つけてその手中に捉えた炭治郎は大喜びでカナヲの下に駆け寄る。

 

(どっちだろう、落ちた瞬間が背中で見えなかった)

 

 カナヲは表と裏、どちらが出たのか緊張しながら炭治郎の手元をのぞき込む。

 

「表だ―――――!!」

 

 結果は表であった。その事にこれ以上ないくらいに喜んだ炭治郎はカナヲの手を取り。

 

「頑張れ! 人は心が原動力だから、心はどこまでも強くなれる!」

 

 そう力強くカナヲに告げた。

 

「それじゃ、またいつか!」

 

「あの! な、なんで表を出せたの!?」

 

「偶然だよ! それに裏が出ても表が出るなで何度も投げ続けようと思っていたから」

 

 別れ際にカナヲがそう炭治郎に問うと、炭治郎はそう応えその場から走っていってしまったのだった。

 一人取り残されたカナヲは最初は呆然として歌野だが、そのあと自分の心が何やら温かくなっているのを感じ、炭治郎から返されたコインをギュッと握りしめ、自らの胸元へと引き寄せるのであった。

 

 

 

 その後も炭治郎は残る蝶屋敷の人々に挨拶を済ませると、その日のうちに善逸、伊之助ら連れ蝶屋敷を後にした。

 炭治郎らが向かう場所はすでに鴉が教えていた。それは市街地にあるとある駅であった。そこにはすでに無限というプレートの張られた蒸気機関車が止まっていた。

 伊之助は汽車を知らないため、最初は生き物と勘違いし攻撃しようとしたが、それを横にいた善逸と炭治郎が止めた。なお、炭治郎も蒸気機関車の事を知らなかったため、善逸がその事を教える。

 その後も一悶着あったのだがどうにか炭治郎たちは切符を買い汽車に乗り込むことができた。

 

「なんであの時駅の人に凄い剣幕で詰め寄られたんだろうか」

 

「あのな、そりゃお前当然だって。俺たち鬼殺隊は政府非公認の組織で、本来帯刀なんか許されてないんだよ。鬼がどうのこうの行ったって向こうは信じてくれやしないし、逆に混乱させるだけだからな」

 

 炭治郎はその際駅での悶着の事に疑問を口にし、善逸はその理由を炭治郎に応えていた。

 そう、鬼殺隊は政府非公認の組織であるがゆえに、本来はその身に刀を持つことが許されてはない。しかしそうであるが故に今回の炭治郎らを襲った悶着以上に鬼殺の任務の際も度々正式な公職にある人々との間で様々な問題が引き起こされてもいた。

 余談だが、先の柱合会議で鋼柱の厳鉄が御館様に政府公認の組織に鬼殺隊をするように訴えていた。厳鉄のこの時の言葉は今回の炭治郎らを襲った問題を鑑みても必要な事であったのは明白であった。

 しかし厳鉄からの進言はとうの御館様からあっさりと退けられてしまってもいたのだった。

 

 それはさておき、炭治郎らが今回、この列車に乗ったのには理由があった。

 それは先に炭治郎がしのぶにお願いしていた炎柱の煉獄杏寿郎に会う事であった。先に鴉から煉獄が今回、鬼殺の任務でこの列車にいることが炭治郎らには伝えられていたため、こうして足を運んだところであった。

 しばらく客車の中を歩く炭治郎ら一行。

 すると奥の方の客席から「うまい」という大きな声が炭治郎らの耳に入った。

 その声のした方に炭治郎らが向かうとそこには件の探し人であった炎柱の煉獄杏寿郎が大量の駅弁を食していたのだった。

 

「なぁ、炭治郎……この人が炎柱? ただの食いしん坊じゃなくて」

 

「あ、うん……」

 

 そんな杏寿郎の姿をなんとも言えない表情で見つめる炭治郎と善逸であった。

 

 

 

 

 

 ところ変わって場面は再び蝶屋敷に。

 

「はい、あーん」

 

「あ―――――」

 

「うん、検査結果は良好。もう任務に戻れるわ」

 

 そこではカンナがカナエによる最後の検査と診察を終えていた。任務にやっと戻れると聞きホッとカンナは胸を撫で下ろす。

 

「カァ―――、氷室カンナ、出戻リノ中突然デ悪イガ指令ダ」

 

 そこへやってきたのはカンナの鎹鴉であった。カンナはすぐさま真剣な表情になりその鴉を手元に招くと指令の内容を聞く。

 

「そう……わかったわ」

 

「内容は?」

 

 横にいたカナエの表情も険しいモノへと変わり、カンナが受け取った指令の内容に耳を傾ける。

 

「とある場所で、短期間に40名ほどの人々が行方知れずとなっているそうです。しかも数名の隊士を送ったそうですが、全員消息を絶ち、本部は柱の派遣を決定したと。そして、その支援に向かうようにとの指令です」

 

 カンナに渡された指令の内容にカナエは心当たりがあったのか。

 

「それって……」

 

 そう一言口にすると、カンナもそれに応えるように一言発した。

 

「はい、先に炎柱、煉獄杏寿郎さんが向かった場所」

 

『無限列車です』

 

つづく




雪華こそこそ話

カンナの隊服はカナヲと同じキュロットタイプです(真菰も同じ)
例のごとく女性であるがゆえに、某ゲス眼鏡の毒牙によって破廉恥極まりない隊服を最初は支給されてましたが、それは容赦なく彼女及び彼女の姉、師範、大師範の手で燃やされました。
その際に某ゲス眼鏡はこの3人によって正しくこの世の終わりと思うほどの絶望を味わされたとのこと。
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