今回のお話はとある鬼滅の刃とは違う鬼という言葉のつく漫画の内容、その一部をベースにしております。
本作の柱童磨さんこと導磨さん初登場回になります。
氷室カンナがとある炭焼きの兄弟と出会ってから1か月が早経っていたある日。
とある宿場町にて。
「なんともまぁ、遠路はるばるこんな辺鄙な土地に来なすってからに。その身なり、そこそこ位のある御方とお見受けしますが」
「いえいえ、これでも元はしがない新興宗教の教祖なんてものをやってたものですよ。
「いえねぇ、その辺のお話には疎いモノで」
その宿場町のとある宿屋の軒先にて、珍しい髪色と虹色の瞳の青年が帳場の老女と話をしていた。
「まぁ、それはそうですよ。元々は小さな駆け込み寺のようなモノでしたからねぇ」
彼の名は現鬼殺隊の柱、雪柱の
「それはそうと、この近辺ではある伝承が伝えられているとか、なんでもここから少し山へと入ったその先に、女を死ぬまで犯してから喰らう鬼が住む塚があるとか……」
青年の顔が先ほどまでの笑みから一転、真剣なモノへと変わる。
「……
一方でその導磨の言葉を聞いた帳場の老女は、何やら青ざめた顔に変わるとそそくさと宿屋の奥の方へと入っていってしまった。
「なるほど……いいお話が聞けましたよ、ありがとうございました~」
私は雲取山での一軒があった後、再び鬼殺隊としての任務に明け暮れる日々を過ごしていた。
それでも暇があればあの炭焼きの少年とその妹のことが頭を過る。
あれからしばらくしたのち、鱗滝殿からの返事の手紙が送られてきた。
あの炭焼きの少年、名を
なんでも鱗滝殿と同じく鼻が利くらしく、初日の試験はどうにか突破したとのことだ。
それと鱗滝殿の返事にはもう一つ、竈門炭治郎という少年の性格などについての懸念も記されていた。
「やぁカンナちゃん、そっちの首尾はどうかな~?」
そう考え事をしていると、私は師範に声をかけられた。
私の師範、現雪柱、蓮刃導磨。
普段から飄々とし、一部というか主にしのぶさんあたりだが軽薄な笑みを浮かべた、その心の奥底を窺い知るのが難しいといった感じの人柄で、継子の私としても、あまり尊敬できるかと言われれば正直尊敬し辛い人物である。
今日はこの師範との合同での任務でこの小さな宿場町に来ていた。
とはいえ人が多い場所で大っぴらに鬼殺隊の隊服を着るわけにはいかず、私も師範も普段見につけている隊服ではなく、私は雪の結晶模様をあしらった藤色の着物に隊服時に身に着ける雪の模様の入った羽織、師範も黒の着物に
「こっちはさほど重要そうな情報は得られませんでした。師範の方は?」
「こっちは若干収穫有りといった所だね~贄禽塚という地に、鬼がいるらしい」
とはいえ、そういった性格故に相手の気分をうまいこと掴み、情報を引き出すすべにたけており、私などよりもこうした捜索行動に関しては上をいく。
師範の言葉に私の顔がわずかに強張った。
「先の鴉からの情報は、やはり正しかったということですか」
「鴉は確かな情報のみを伝える。それを疑う余地は存在していないよ。まぁ、とはいえそれらはほぼ断片的なモノであとは地道にその情報の穴を集めていくしかないわけだが。まず間違った情報をこちらによこすことはないからね」
師範の話では、この宿場町の奥にある山の深い場所には贄禽塚と呼ばれる場所があり、そこには遥か昔から女を死ぬまで犯し、そして喰らうという鬼がいるとのことだ。
「なんだか、あまりにも悪趣味な鬼ですね」
「鬼の趣向なんて大体似たようなモノさ。気にするだけ無駄だよカンナちゃん。けれど確かにね~」
私と師範は得られた鬼の情報からそう2人で話をしていると、宿場町の一角が何やら騒がしくなっているのが聞こえた。
「何の騒ぎでしょうか」
「向こうの方からだね」
一先ず私と師範の2人は騒ぎのする方へと歩みを進める。
到着するとそこには半ば行き倒れの様びやつれた白い着物を着た女性が倒れていた。
「なッ、師範!」
「ああ……」
私と師範の2人ですぐさまその女性に駆け寄る。
幸い息はあり、外傷なども見る限りは多少の擦傷や打撲などは見受けられるが、命にかかわるようなモノはそう見受けられない。だが酷く衰弱している様子でこのまま放っておけばまず間違いなく命はないだろう。
「あの娘さん、もしかしたら」
「ああ、恐らくは贄禽塚の……」
その最中、先に師範と話しているときに出た贄禽塚という言葉が耳に入った。
「贄禽塚……まさかこの人……」
だがまずはこの女の人をどこかで手当てする必要があった。
幸いここは宿場町なので場所のつてがないわけではないが、生憎私も師範も薬学や医学に精通しているわけではなく、ちゃんとした治療を行うにはやはりお医者に見せるほかない。
「御二人さん、お困りでしたら手を貸しますよ?」
そんなことを考えていると私と師範の2人に声をかけてきたものがいた。
「奇遇ですねカンナさんも導磨さんも」
「あら~今日は二人で仲良く逢引かしら~」
振り返るとそこにいたのは、私にとっては見慣れた2人の美人姉妹、他ならぬ現蟲柱、胡蝶しのぶとその姉、元花柱の胡蝶カナエであった。
「しのぶさん、それにカナエさんも」
渡りに船とはこのことで軽く私は胡蝶姉妹の2人に事情を説明すると、近場の宿屋の一室を貸してもらい、この女性の手当てをすることとなった。
私と姉さんは今日、この宿場町に生薬の買い付けに来ていた。
生薬の買い付けは他の人に任せられないのもあって基本は私か姉さんが主に行っている。
簡単な薬の買い付けならばアオイや他の貯屋敷の者に任せられるものだが今回のように扱う生薬が専門性の高いモノでは、ちゃんとした目を持つ私たちがこうして非番を利用するほかない。
とはいえ柱を引退した姉さんならまだしも、現在蟲柱の名をいただいている私は中々そうした非番というモノを取ることができない身だ。
今日の生薬もずいぶん前に薬問屋に注文していたものであったのだが、結局こうして取りに行くのに相応の日にちが経ってしまっている。
それでもどうにか生薬を買い付け帰路に就こうとしていたその矢先に、こうして現雪柱の導磨さんとその継子、カンナさんと出会い。
「熱の方は下がりました。衰弱は酷いですが消化のいいものを少しずつ食べさせていけばどうにか元気にはなるでしょう」
カンナさんが見つけた女性の看病をしているところだ。
「ハァ、よかった……」
「とはいえ、きちんと治療するのならやはり、お医者様に見せるべきでしょうね。私も医学に精通こそしていますが、蝶屋敷でないと本格的な治療は行えませんし」
カンナさんが抱えていた白装束の女性、相当衰弱している様子で体の傷こそ浅いが、あのまま放っておけば正直危険な状態であったと言わざるを得ない。
一先ず薬湯を飲ませ床に就かせているが健康体に戻すにはやはりきちんとお医者に見せるべきだろう。
「けれど、なぜあのような姿になっていたのでしょう。体中についた擦傷や打撲、それにあの衰弱のしかたからまるで険しい山道を何日もひたすら、何かから逃げるように走ってきたとしか」
「おそらくはそれで正解じゃないかな」
カンナさんの抱いた疑問を私が聞いていると、恰もその答えを知っていますといった感じに、導磨さんが話に割り込んできた。
「さっきあの女の人を見て、町人たちが贄禽塚から来たんじゃないかって言ってたよね?」
「贄禽塚……まさか……それでは」
「どういうことですか、カンナさん、導磨さん」
どうも2人はこの女性を襲ったであろう何かに関して知っている様子で私は2人に説明を求めた。
「実は……この宿場町に伝わる伝承の様なもので、何でも贄禽塚という場所がこの宿場町の奥の山のその奥にあるらしく、そこには女を死ぬまで犯して喰らうという鬼がいるそうなのです」
「鬼……ですか」
「加えてだが、あのあと少し町人たちに話を聞いてきたんだが、この山奥にはまた小さな集落があって、その集落ではどうも、きな臭い風習の様なものがあるらしくてね、1年のある月日に一人、妙齢の女性を山の主の生贄にささげるらしいんだ。しかもその生贄にささげられたという女性は、案の定だがその後姿を見た者はいない」
「生贄……なるほど……」
きな臭いどころではない話だ。
先の贄禽塚の鬼の話とその話、何の関係もないなどまず考えられはしないだろう。
「鬼をある種信仰の対象にしたり、はたまた鬼に生かされてる人間っていうのもいないわけじゃないからね、きっとあの娘さんは、その贄禽塚のきな臭い、悪趣味な風習の犠牲者、となりえた子ってところだろうね」
「そこから逃れるために、ひたすらこの宿場町まで走ってきたために、あのような状態になってしまったと、そういうことですか」
そしてカンナさんに抱えられていたあの白装束の女性は、その鬼の餌にされる寸前でそこから逃げて麓のこの宿場町まで流れ着いた人なのだろう。
「折角の非番でしたが、こうなっては協力するほかなさそうです」
「良いんですか? しのぶさん」
「ええ、乗り掛かった船ですし、既に生薬の買い付けも終わってます。生薬はカナエ姉さんに届けてもらえばいいですし、なんでしたら近くの藤の家紋の家まで姉さんに付き添ってもらう形で、あの女性を安全を確保もできます」
正直こんな事態をそのまま放っておくなど、鬼殺隊蟲柱としての私が許せるはずがない。
私はカンナさんと導磨さんの2人にそう提案すると。
「それじゃ、お願いしようかなしのぶちゃん」
「突然のことですが、どうかよろしくお願いします」
「ええ、私たちで贄禽塚の悪趣味な鬼を滅しましょう」
私はそう2人に告げると2人とも承諾してくれ、ひとまずは彼ら2人が持つ情報から贄禽塚の場所と鬼の情報を共有することとなった。
しのぶ、カンナ、導磨らが一通りの話し合いを終えたのち、3人それぞれ隊服に着替え件の贄禽塚へと向かって行った。
それからさらにまた、しばらく時が経った後。
「うっ……」
カンナが助けた女性が目を覚ました。
「気が付いたのね、よかったわ」
「ッ!? ここは!?」
「ここは○○山の宿場町よ。貴方半日近く眠っていたのよ? でも薬湯を飲んでくれたし、体の傷は浅かったから、しばらく安静にしてればよくなるわ」
宿屋でしのぶと変わる形で女性の看病をしていた胡蝶カナエは目を覚ました女性にそう説明をした。
女性はまだ何が起きたのか分からず混乱している様子だったが、しばらく経つと徐々に自身に起きたことを思い出してきたのか、両腕を抱えて小刻みに震え始める。
「大丈夫よ、ここには貴方に危害を加えるようなモノはいないわ」
「貴方は、誰なの?」
「私は胡蝶カナエと言います。話せる範囲でいいから、何があったのかを話してもらえないかしら……話すだけでも辛いことだと思うけれど、きっとあなたの力になれると思うから」
カナエはそう静かに女性に話すと女性の恐怖を少しでも和らげようと手を握ってあげた。
すると女性の方も落ち着いてきたのか、ぼそりぼそりとだが、事情を放し始めた。
「私は、贄禽塚の……この山の奥のそのまた奥にある集落の娘で、名をかよと申します……」
「かよさんね。かよさん、あなたはどうやら鬼に狙われているかもしれません」
「鬼……鬼を知っているのですか!?」
カナエの言葉に驚いた様子でかよと呼んだ女性は叫ぶ。
「はい、闇に紛れ人を喰らう化物。知性があり巧妙にその姿を隠し、そしてすさまじい再生能力を持ち、頸を刎ねても腹に穴が開いてもたちまち再生する。唯一の弱点は陽の光と日輪刀と呼ばれる刀、それも頸を刎ねねば死には至らない。そして、私たちはその鬼を狩る者たち、人知れず人を喰らう鬼を滅する者、鬼殺隊です」
「鬼を狩る……」
「はい」
カナエの言葉に一瞬かよは息を飲むも。
「なら、なら私たちを助けて!! 私たち、贄禽塚の人々を、もう、誰も……誰かが鬼に喰われるような、そんな思いをしないで済むように!!」
「落ち着いてかよさん大丈夫よ。私たちはその為に、ここにいます」
興奮するかよにそう言い聞かせなだめるカナエ。
「私の仲間である鬼殺隊の剣士たちが、既に贄禽塚へと向かっています。そう遠くないうちに、鬼は滅されるでしょう。だから大丈夫です」
「うぅ……」
しばらくするとかよも落ち着いてきたようでカナエは先ほど聞こうとしたことを改めてかよに問うた。
「かよさん、辛いでしょうがあなたの身になにがあったのか、詳しく話してもらえないでしょうか」
かよは静かに話し始めた。
贄禽塚に伝わる悍ましい風習と、そこに住まうという人食い鬼についてを。
つづく
第2話でした。
では、今回のお話の基にした漫画ですが
マンガmeeにて連載している『鬼獄の夜』という作品です。
色々とショッキングなシーンも多々ありますが興味があったら是非読んでみてください。