鬼滅の刃 雪華ノ乙女   作:アウス・ハーメン

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第4話になります。
原作3巻の内容をベースにした回。

あと今回、とある原作登場キャラクターも登場いたします。

誰かは実際に本編をご覧ください。


第4話 鼓の屋敷

 贄禽塚の件が片付いたのち、私はこれまでと変わらない、鬼殺の任務に明け暮れる日々を送っていた。

 気が付けば、あの炭焼きの少年と出会ってから2年余りの月日も経っている。その間に煉獄さんの息子さんである杏寿郎さんが炎柱に、素流道場の跡取りの素山拍治さんが拳柱に、そして煉獄家で生活していた伊黒小芭内さんが蛇柱に、杏寿郎さんの継子であった甘露寺蜜璃さんが恋柱となり柱はついに12人がそろうこととなった。

 あの日、雲取山での出来事の後私は定期的にではあるが鱗滝さんに手紙を出しながら、かの兄妹の近況を聞いたりしていた。

 鱗滝さんによればあの炭焼きの少年、竈門炭治郎は鱗滝さんの出す試験、その全てを踏破し最終選別にも合格したという。オマケにその最終選別にて、これまで幾度となく鱗滝さんの弟子たちを葬ってきたという異形の鬼を倒すという大金星まで上げたとのこと。

 

「あの鬼……私としのぶさん、真菰さんでも倒せなかったのに」

 

 その手紙を手にした私の第1声はそれであった。

 炭治郎が倒したという鬼、無数の手が体に巻き付いたかのような巨大な鬼は、私がしのぶさんと共に受けた最終選別でも遭遇した異形の鬼であった。

 無数の手がその身にまとわりついているうえに、多くの人を喰らい異形化したその身は極めて堅固で、私の当時使っていた風の呼吸の技は勿論、当時まだ毒による鬼殺の手段を得ていなかったしのぶさんでは到底歯が立たず、当時ともに最終選別に挑んでいたもう一人、真菰という女の子に助けられる形でどうにか事なきを得た。

 なお、この時出会った真菰という女の子、真菰さんとの縁で私は鱗滝さんとも知り合うことになり、あの日竈門炭治郎、禰豆子兄妹を鱗滝さんに託すことともなった。

 

 なお真菰さんは、あの朴念仁こと冨岡さんの、もう継子と言っていいだろうに当人が自分は柱に相応しくないだのなんだののたまうせいで、いまだに実力があるのに継子認定されていないが、継子のような立場となり、最終選別での縁もあってか時折一緒に任務に出たりしている仲だったりする。

 

「次の任務、カンナと一緒だって」

 

 そして、今回の任務もその真菰さんとの合同任務である。

 任務の内容はすでに、私たちの鎹鴉が伝えている。

 

 

「ええ、それと最近隊士になったばかりの子が2人いや……3人ほど一緒にいるらしいわ」

 

「なったばかりってことは癸? 使えるかなぁ」

 

「まぁ、今回の最終選別を突破した子たちはほぼ全員呼吸を使えるし、なかなかの粒ぞろいとのことだから、十二鬼月でもない限りは大丈夫だとは思うわ」

 

 私と真菰さんはそう2人で話しながら目的地までの道のりを歩いていると。

 

「頼むよぉおおおおおお!!」

 

 その目的地へと向かう道のど真ん中で、なんというか敢えて表現するのなら小汚い高温の男の子のモノと思える叫び声が耳を思い切り貫いてきた。

 

「頼む頼む頼む、結婚してくれぇええええええ!!」

 

「カンナ……何、あれ……」

 

「真菰さん、知らん顔しましょう……」

 

 正直、全くと言っていいほど関わりたくない、関わりたくないのだが。

 

「けど、あの子……羽織の下……」

 

「あぁ……」

 

 生憎、その汚い高温を未だに上げ続けている男の子が身に着けていたのは鬼殺隊の隊服、しかも事前に聞かされていた、今回の合同任務で一緒になる隊士のうちの一人と容姿が寸分たがわず一致していた。

 名前は確か我妻善逸と言っただろうか、しかし、街道のど真ん中でしかもどう考えても見ず知らずであろう女の子に泣きついているというのは。

 

「鬼殺隊以前に、人として最悪ねアレ」

 

「どうする?」

 

「関わりたくないけど、そうもいかないし、行きますよ真菰さん」

 

「うん!」

 

 正直このままでは鬼殺隊の沽券にもかかわるし、何より相手の女の子はすごく嫌がっている。いずれにしてもこのまま放っておくわけにはいかないと、私と真菰さんの2人は考え、あの隊士を一先ずは女の子の下から離そうと行動を起こそうとするが。

 

「何してるんだこんな道の真ん中で! その子嫌がってるだろう!! あと雀を困らせるな!!」

 

 一足先に別の子がその隊士の子を止めに入ってくれた。だが、私はそのもう一人の隊士の子を見た途端、鈍器で猛烈に頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

 

「あ、炭治郎久しぶりだね」

 

「え? 真菰!?」

 

「ッ!? え、今回の合同任務の相手って」

 

「え!? もしかして……」

 

 私はこの時ばかりは失念していた。

 今回の合同任務で一緒に鳴癸の隊士3人のうちの一人が、あの時雲取山で出会った炭焼きの少年、竈門炭治郎であったことに。

 

 

 

 その後、私、真菰さん、そして炭治郎の3人でもう一人の男の子、我妻善逸を女の子から引っぺがすと揃って今回の任務の目的地へと向かう。

 だがその間も。

 

「イィイイイイイヤァアアアアアアアア―――――ッ!!!! 助けてぇええええええ―――――!!!!」

 

 我妻善逸は聞くに堪えないほどの叫び声をあげ続けていた。

 

「あの……」

 

「何?」

 

 そんな中、もう一人の合同任務の相手の隊士である竈門炭治郎が私に声をかけてきた。

 

「その、あの時はありがとうございました!」

 

「ええ……それはそうと、えっと炭治郎だったかしら?」

 

「はい! 竈門炭治郎です!!」

 

 うん、元気でよろしい。

 けれどもう少し声の大きさは落とした方が良いわね。頭に響く。

 

「鱗滝さんの出す試験を突破して、最終戦別に受かったこと、まずは祝福するわ」

 

「ありがとうございます」

 

「けれど、これは始まりに過ぎない、貴方の目的の為にも何より、鬼殺の隊士としてこれから先、生き延びるためにも。絶えず鍛錬を怠らないこと」

 

「はい!」

 

「カンナ、まるで先生みたい」

 

 私が少しだけ、大師範の真似事でそう炭治郎に言うと真菰さんが何やらからかってきた。

 

「それはそうと、炭治郎カンナと知り合いだったんだ」

 

「あ、うん」

 

 そういえば冨岡さんも真菰さんも元は鱗滝さんの下で鬼殺の剣士として学び、炭治郎もまた鱗滝さんの下で鬼殺の剣士となるべく修業の日々を送ってきた。

 いわば彼らは姉弟弟子ともいえる仲なことを私は思い出した。

 

「私が炭治郎にあったのは、鱗滝さんのところに久しぶりの暇で里帰りしたときだったんだ。その時炭治郎は鱗滝さんが出した最後の試験の最中で色々と苦労してたから、少し手ほどきもしたんだ」

 

「なるほどね」

 

「あの時は本当、色々と助かったよ」

 

「炭治郎、私、一応姉弟子だからね?」

 

「あ、ごめん……いや、ありがとうございました!」

 

「どういたしまして」

 

 なるほどと2人の様子を見て私はキッチリ真菰さんは姉弟子という立場で炭治郎を扱っているなと感心した。

 最もこのくらい人当たりがうまくなければあの朴念仁な冨岡さんの相手など務まるわけないからまぁ当然か。

 

「なんだよなんだよなんだよなんだよ、炭治郎ばっかりさ、女の子2人も両脇に抱えてさ……クッソ羨ましいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

 なお、後ろから聞こえる雑音は私も真菰さんも盛大に無視している。

 見ず知らずの女の子に、しかも街道のど真ん中でいきなり結婚してくれなどというような馬鹿な隊士など、私も真菰さんもそんな知り合いはいない。

 

「ここね……」

 

「うん、間違いないよ」

 

「はい、あの屋敷から今まで嗅いだことがないような血の匂いがします」

 

 先に届いた鱗滝さんからの手紙で炭治郎が非常に鼻が利くということを私は知っていた。さっそくこの家から漂う血の匂いに気が付いたようだ。しかも炭治郎曰くこれまで嗅いだことがない血の匂い。

 その炭治郎の言葉からここの鬼が主に狙っている人間の傾向が、自ずとわかってくる。

 

「ここの鬼、稀血狙いってことだね」

 

「でしょうね……」

 

「あの……」

 

 私と真菰さんが2人でそう話していると、炭治郎が私たちの会話に何か気になったのか声をかけてきた。

 

「すみません、あのカンナさん、真菰、稀血って」

 

「ああ、そういえばまだ炭治郎はまだ教えてもらってなかったね」

 

 炭治郎の問いには真菰さんが応えていた。

 

「稀血っていうのはね、読んで字のごとく稀な血、珍しい血を持っている人の事。人も生き物が持つ血にも色々と種類があってね特に、稀血を持つ人は鬼にとってはご馳走なの」

 

「ええ、しかもその稀血の人は鬼にとって、たった一人で人を50人、100人喰った分だけの力を得ることができるのよ」

 

「そんな……」

 

 私も真菰さんの説明に捕捉を加える。

 

「なぁ、何か――」

 

「とりあえず、慎重に屋敷の中に入っていくしかないわね」

 

「どこから鬼が襲ってくるか、わかりませんからね」

 

「うん、それに炭治郎、あばらが折れてるでしょ? 無理はしない方が良いから」

 

「あ、やっぱり真菰にはわかるんだ」

 

「あのさぁ!」

 

 一応、さっきから私たちの後ろで善逸が何か喚いていたのは聞こえていたが、さっきの件もあって私たちはずっと無視してきたのだが、無視し続けるのもさすがにかわいそうだと思い彼の言葉に耳を傾けることにした。

 

「さっきから何なのよ!? アンタみたいな最低野郎の声なんて聞く耳持ってないんだけど?」

 

「めちゃくちゃな塩対応!! そりゃ、その理由くらい分かってるけどさ!! それにしたって酷すぎない!?」

 

「一体どうしたんだ?」

 

「音だよ、音!! なんか音がしない?」

 

「音?」

 

 善逸の言葉に私も真菰も炭治郎も耳を澄ますが。

 

「何も聞こえないぞ?」

 

 だが、善逸がいう音なんていうモノは聞こえない。

 

「ああ、俺他の人よりずっと耳が良いんだ。それでなんかさっきから鼓? みたいな音が聞こえててさ」

 

「鼓……」

 

「カァーーー屋敷ノ横カラ人ノ気配有リ!」

 

『ッ!?』

 

 善逸の言う鼓の音も気にはなったが、それよりも先に鴉の言った人の気配という言葉の方に耳が傾き、屋敷の周囲を見回すと。

 

「ッ! 子供だわ」

 

 そこには小さな兄妹と思われる子供が2人いた。

 

「かなり怯えてる」

 

「うん、ねぇほら」

 

 炭治郎がその子供2人に近づくと、善逸くんの鎹鴉役の雀を使って2人の緊張をほぐしてあげていた。

 

「何があったのか、教えてくれる? そこは君たちの家なのか?」

 

「違う……違う! そこは化け物の家だ!!」

 

 先ほどよりは緊張がほぐれたのか、2人の子供は自分達の身に起きた出来事を静かに話はしてくれた。

 子供たちは兄の方は正一、妹はてる子というらしい。

 彼らは夜道をもう一人の兄、清と共に夜道を歩いていたところ、一番上の兄、清が鬼にさらわれたという。

 しかもその時に清の方は怪我をしたらしく、その血の痕を追ってここまで来たらしかった。

 

「分かった。絶対に俺たちが悪い奴を倒して、兄ちゃんを助けてやるからな」

 

「うん、だから安心して」

 

 炭治郎と真菰さんの2人は正一、てる子兄弟をそう励ます。

 

「炭治郎、真菰さん、カンナさん!」

 

「善逸、どうしたの?」

 

「また、鼓の音が聞こえたんだ。しかも、だんだん……大きく」

 

 善逸がそういった、その時であった。

 

『ッ!?』

 

 屋敷の一番上の窓から、血みどろな姿になった少年が、まるで吐き出されるかのように飛び出してきた。

 

「キャァアアアアアアア!」

 

「見るな!」

 

 炭治郎がその少年に駆け寄るが、遠目からでもすぐにわかってしまった。

 

 この少年はもう。

 

「グォオオオオオオ」

 

 鼓の音がなおも鳴り響く中、鬼の雄たけびが木霊する。

 

 つづく

 




雪華こそこそ話

本作の真菰はしのぶ、カンナと同期の隊士で、冨岡の事実上の継子です。
手鬼と戦っている際にカンナ、しのぶに助けられ無事最終選別を突破しました。

尚、炭治郎とは炭治郎が最後の岩を斬る試験の際に出会い、禰豆子ともその時に出会い事情を知っています。
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