Serenade of azure   作:yurarira

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香穂子大好き雄一くんは、少し過保護が過剰になりがちです。

彼は絶対檻とか首輪とか似合う。


翳りのinquieto~「本題入るの、遅すぎませんか」~

 

 

Kahoko side

 

 

 

 

 

「真奈美がいれば百歩譲って許すけど、

 ひとりで突っ込んでくとかマジでやめてくれ!

 俺に謝れば済む問題でもねえし!」

 

「う……。じゃ、じゃあどうすればいいの!?」

 

「突っ込んでかなきゃいい話だろ!!」

 

「………………仰るとおりです…」

 

 

 

そりゃそうだ。

今怒られてる内容がまさにそれなのだから。

 

……でもやっぱり、過保護すぎると思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tetsuya side

 

 

 

 

 

「……森さん」

 

「ん?なあに。……ええと、黒子だっけ」

 

「はい。何であの人あんなに過保護なんですか?

 男関係に関しては特に」

 

「あー……そう、ね。

 あなたは聡そうだし、しばらく居ればきっとわかるわ」

 

「はあ……」

 

 

 

要領をえない回答に生返事を返して、

日野さんたちへ視線を向けたボクに、森さんは小さく呟く。

 

 

 

「……ま、気づかない方が幸せかもしれないけどね」

 

「…え……?」

 

「つーか、そろそろ止めた方がいいんじゃねえか?」

 

「…それもそうだな。

 このままだと彼がいる理由を聞く前に夜が明けそうだ」

 

「……あー。それもそうね…。止めてくるわ」

 

 

 

面倒くさそうに歩き出す森さん。

 

 

……聞きそびれたな…。

 

というか彼女だと、最終的に強行手段をとるんじゃ、と

思ったのは果たしてボクだけだろうか。

 

 

 

「はい、雄一そこまで」

 

「んだよ、真奈美!

 俺はまだ言い足りな…いっ!?

 

 

 

彼が大きく目を見開いた次の瞬間、鈍い音が辺りに響く。

 

 

……足払いをかけた本人は、

にこりと笑みを浮かべこちらを振り返った。

 

その顔はまるで、これでいいでしょう?と言っているよう。

 

 

 

「ゆ、雄一!」

 

「いってえ…舌噛んだ…」

 

「ほら、雄一も片付いたことだし」

 

「おい!」

 

「急に飛び出てった理由と、黒子を連れてきた理由。

 教えて、香穂」

 

 

 

彼のツッコミを華麗にスルーした森さんは、

日野さんへくるりと方向転換。

 

……と、いうか。

 

 

 

「本題入るの、遅すぎませんか」

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Kahoko side

 

 

 

 

 

「……そ、それよりも。夜も遅い事だし、理由を教えて」

 

「…………」

 

 

 

黒子くんの発言を苦笑で流しつつ、

真奈美は話の続きを促した。

 

 

 

「…えっと、実はね──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───事の顛末を話し終わり、不意に訪れる沈黙。

 

それを破ったのは、真奈美だった。

 

 

 

「…とりあえず、御愁傷様。

 黒子がここに住むのも、私は構わないわ。

 行く場所もすぐには見つからないでしょうし」

 

「俺も別に構わない。

 家主が許すなら、無理して出ていくこともないだろう」

 

「そうそう、ここ香穂の家だしな。俺もいいぜ。

 とりあえずしばらくは、住んでてもいいんじゃないか」

 

「…………」

 

「…ほら、雄一。あんたはどうなの?」

 

「……俺も、別にいい」

 

「? 雄一?」

 

 

 

なぜか歯切れの悪い雄一に目を向けるも、合わない視線。

 

 

……本当は、嫌なの、かな?珍しい…。

だからといって、

彼をこのまま見捨てるわけにもいかないし…。

 

雄一なら、嫌であればきっとそう言うだろうし、

そうしたら考えればいい、かな。

 

 

勝手に自己完結した私は、そのまま黒子くんに向き直る。

 

 

 

「と、いうわけで。

 改めてよろしくお願いします。私の家へようこそ。

 自分の家だと思ってくつろいでくださいね!」

 

「…ありがとうございます。お世話になります」

 

「…月森蓮だ。よろしく」

 

「土浦梁太郎。よろしくな。

 なんか困ったことあったら遠慮無く言えよ」

 

「…はい。ボクは黒子テツヤです。

 よろしくお願いします」

 

「ん。これからよろしくね」

 

「…………」

 

「…?」

 

 

 

3人がそれぞれに声をかけても、

雄一だけはただじっと、彼を見つめるだけ。

 

少し気にはなったけど、大して気には止めずにいた。

 

 

 

「「………」」

 

 

 

害意を持っている人に対してはかなり厳しいにしても、

基本的には人懐こい雄一。

 

 

 

「……高橋、雄一」

 

 

 

遅ればせながら告げた自己紹介と、

黒子くんから外された視線。

 

……その横顔が一瞬だけ、

苦悩に歪められたことに、私は気づかなかった。

 

 

私だけは、気づいてあげられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tetsuya side

 

 

 

 

 

──あの後、夜も遅いからと解散した彼らは

散り散りに自室へと戻っていった。

 

 

…そして、ボクはというと。

 

 

 

「…はい、ここが黒子くんのお部屋です」

 

「ありがとうございます」

 

「食堂と、お風呂と、お手洗いと…あと、

 私の部屋はお教えしましたよね。

 とりあえずすぐに必要なのはこの辺りでしょうか」

 

「はい。大丈夫です」

 

 

 

日野さんに、軽く屋敷内を案内して貰っていた。

 

 

…見たときから思っていたけれど本当に、屋敷だ。

まるで迷路のような広さに、部屋数。

 

しばらくは慣れるのに苦労しそうだな。

 

 

 

「ええと、後は…あ、黒子くんって朝早いですよね?

 何時くらいに起きてますか?」

 

「6時前、ですね。

 それから朝食食べて、朝練行ってましたから」

 

「わあ…大変ですね。

 じゃあ、明日は6時過ぎにでも食堂にいらしてください」

 

「え?」

 

「それでご飯食べて、学校へ向かえば

 いつもとそんなに変わりないでしょう?」

 

 

 

そう言って、にこりと微笑む日野さん。

 

…それって、もしかして。

 

 

 

「…朝食、作ってくれるんですか?」

 

「はい!」

 

「……さすがに、悪いですよ。

 適当にコンビニかなにかで済ませますから」

 

「ダメですよ。運動してる人なんだから

 特に栄養はきちんと取らないと」

 

「…でも」

 

「私も、バスケで生き生きしてる黒子くん見たいので!

 …ね?」

 

「………わかりました。お願いします」

 

「はい、お任せください!」

 

 

 

諦めのため息をつくボクと対照的に、

彼女はまるで勝ったといわんばかりにガッツポーズを作る。

 

 

 

「よし、それじゃあ残りは明日にしましょうか。

 もう夜も遅いですし、明日も学校ですしね」

 

「そうですね。さすがにそろそろ眠いです」

 

「ふふ、私もです。なので、この辺で失礼しますね」

 

「はい、色々とありがとうございます。おやすみなさい」

 

「お互い様ですから。おやすみなさい」

 

 

 

にこりと笑みを浮かべ、軽くお辞儀をした彼女は

自分の部屋へと戻っていった。

 

 

…なんだか本当に、至れり尽くせりだな。

 

 

 

「……はあ。疲れた、早く休ませて貰おう」

 

 

 

ただの学生であるボクに今出来ることなんて、

ありがたく厚意を受けとることくらいだし。

 

 

部屋のドアノブを引っ張り、中を見て……

思わず開いた口をゆっくりと閉じる。

 

 

 

「……この部屋、本当にボクの部屋でいいんですよね?

 日野さん、間違えてませんよね?」

 

 

 

もうこの場には居ない彼女へ問いかけてしまうほど。

何もかもが大きく、高級感のある部屋だった。

 

 

家具が多いわけではない。

ベッドと照明とクローゼット、

それだけのシンプルな部屋、なのだが。

 

 

恐らく使っているものがとても高いものなのと、

元々の部屋がとても広いため、

まるでホテルのような高級感を醸し出している。

 

 

 

「……本当に、世界が違いますよ」

 

 

 

ボクはため息をつきながら、

ベッドに軽く手を沈ませてみる。

 

…うわ、すごいふかふかだ。

こんなふかふかに包まれたら……。

 

 

早くお風呂借りてこよう。

買ってきた下着等の準備を始めようとすると、

響くノックの音。

 

 

 

「? …はい、誰ですか?」





*inquieto=落ち着かない、不安な
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