黒子くんはそりゃあるだろうけど、serenade黒子くんの香水がほしい。香穂子もほしい。
オーダーメイド香水…悩んでます。
Kahoko side
「……あ!そうだ、連絡先!」
「…ああ、そういえばそんな話でしたね」
「……仕方ないわね。
香穂のだけ教えるのも不安だから、私のも教えるわ」
「…………やっぱりツン」
「黄瀬涼太?」
「なんでもないッス!!」
真奈美に睨まれて、
黄瀬さんは首と手を何度もぶんぶんと左右に振る。
「ただその前に。
何となくもう分かってるけど軽く自己紹介しましょ。
一応名前と情報を一致させたいから」
「それもそうッスね。オレは黄瀬涼太。
海常高校一年、6月生まれの双子座!
A型ッス!」
「そこまで求めてない。はい次」
「ひどっ!!」
「……俺は火神大我。
誠凛高校普通科、1年。バスケ部」
「ボクは黒子テツヤです。
火神くんと同じクラスでバスケ部です」
「へえ、バスケ部…」
「はいはいはい!オレもバスケ部ッス」
「あ、そう」
「………………」
「も、モデルさんでバスケも上手いなんてすごいですね!」
「か、香穂子っちぃ……」
黄瀬くんは腕を広げ……、
すぱあんっと真奈美に腕を叩かれた。
「いったあ!!」
「はいそこ軽率に抱きつかない。
さて、次はこちらの番ね。
森真奈美。誠凛高校、音楽科1年」
「日野香穂子です。真奈美と同じクラスです」
「へえー。香穂子っち達って音楽やってる人なんスね。
なんの楽器ッスか?」
「なんであんたに…」
「私はヴァイオリンで、真奈美はピアノです」
「ちょっと、香穂」
「別にいいじゃない、これくらい」
「………」
「へえー!雰囲気あってるッスね!!
今度聞かせてくださいッス」
「気が向いたらね」
「こ、こら!!
今度機会があれば是非聞いてくださると嬉しいです。
真奈美と!デュオするので」
「…………むう」
「やった!あ、オレのことは
涼太でも涼太くんでも好きに呼んでくれていいッス!」
「黄瀬涼太」
「黄瀬…くん」
「…………香穂子っちはそれでいいッス…」
しゅーんとうなだれる黄瀬くん。
……ほら、真奈美がいじめるから…。
「ほら、私と香穂の連絡先。男たちで勝手に登録して」
真奈美が黒子くんに紙を手渡す。
…いつの間に書いてたんだろう。
「はい、どーぞ」
「……どうも」
「なんで黒子っちに?」
「…そこのバカでかい男と、わんこと、香穂の恩人なら、
やっぱり彼でしょう?」
「バカでかいって…てめー……」
「はいはい。血の気多いわねあんた」
「んだと!?」
「もう、真奈美!
なんでわざわざ火に油を注ぐようなこと…」
「だってコイツ、反応単純すぎて面白くて」
今日一番の笑顔で真奈美が笑う。
……ここでそんな笑顔見せられても…。
…って。
「あ!!」
「わ!ビックリした。どしたんスか?香穂子っち」
「い、今って何時ですか?」
「…4時半、ですね」
「た、大変っ」
「うわ、なかなか話し込んじゃったわね」
「道理で足が痛くなってきたわけッスね」
苦笑する黄瀬くんを横目に、私は彼らに慌てて頭を下げる。
「ごめんなさいっ。私たち、急いで帰らないと」
「あれ、そうだったんスか?」
「ええ、結構まずい時間になっちゃってるのよ。
悪いけど、これで失礼するわね」
「慌ただしくてごめんなさい。
またお会いしましょうね、さよならっ」
「じゃあな」
「連絡するッスねー」
「…それじゃあ」
「はいっ」
私たちは踵を返して、急ぎ足で帰路を向か…
ってたのだけど、
数歩歩いたところで真奈美がピタリと立ち止まる。
少し離れたところで真奈美を振り返ると、
彼女は彼らのもとへスタスタと戻っていた。
……?真奈美?
「…わかってると、思うけど」
「「?」」
「落としたりなんてしたら…、
どうなるか分かってるわよね…?」
「わ、わかってるッス」
「お、おお」
「だ…大丈夫です」
「…そう。それならいいのよ」
どこか姿勢をただした彼らを尻目に、
彼女は私のもとまで駆け寄ると、帰路を促す。
……なんだかみんな、表情が固まってるような…。
…うん、きっと気のせい。
私は軽く首を振ってから、真奈美を追いかけた。
Tetsuya side
『落としたりなんてしたら…、
どうなるか分かってるわよね…?』
なかなか迫力のある…、というか、
目が全く笑っていない笑みを浮かべた彼女の言葉に、
ボクたちは彼女たちが見えなくなるまで
そこに立ち尽くしていた。
「……なかなか濃いメンツでしたね」
「そう…ッスね……」
「アイツ音楽科なのになんであんな動けるんだよ…。
もう片方は確かにそれっぽいけど…」
「武道習ってる、とか言ってましたね」
「音楽科でぇ?」
「……たぶん護身術じゃないッスか?
森っち、かなり有名なお家柄みたいなんで」
「よく知ってんなお前」
「今ネットで調べたッス」
黄瀬くんが、シャラッと決めて言う。
…うざい。
「まあ、音楽科だしな。金持ち多いイメージ」
「実際あの2人、多分すごいお金持ちですからね」
「え?香穂子っちも?」
「あの人、自分の屋敷に
幼なじみと住んでるって言ってましたよ。
部屋が勿体ないからって」
「屋敷!?」
「幼なじみと住んでるっていうのもなかなかッスけど…。
うひゃー予想以上の金持ちッスね…」
「黒子、お前ほかの奴とも会ったことあんのか?」
「はい。残り3人いるんですけど、そのうちの2人と」
「どんな奴だ?」
「黄瀬くんに似た人と、
ザ、音楽科ってかんじのクールでキツイ人です」
「え、オレに似てるんスか?」
「はい。見た目じゃなくて雰囲気が」
「……それは喜んでいいんスか?」
「ただ、結構正反対な2人には共通してる点がありました」
「あ?」
「ちょっ、黒子っち無視!?」
「どっちも日野さんに対して過保護、ってことです。
特に雄一って呼ばれていた黄瀬くんに似てた人は、
下手なこと言ったら殺されるなボク、
ってくらい殺意丸出しでした」
「そんなに!?」
「はい」
彼らと出会ったときの事を軽く話すうちに、
2人の表情に呆れが浮かんでくる。
「…まあ、アイツ確かに抜けてそうだもんなあ」
「心配にもなるッスよねえ…」
「本人に自覚ないのが余計に、ですね」
「…ていうか、それ」
「「?」」
「…オレ、もしかしてそいつの前で
香穂子っちに抱きつこうとしたら、
右ストレートでも飛んでくる…?」
「右ストレートでむしろ済めばいいですね」
「森よりもヤベー事にはなるだろうな」
「…うへぇ」
「つーかお前は、女に軽々しく抱きつくな」
「だって香穂子っち、小動物みたいで!」
「まあ、いくらなんでも
殺される事は……ない?と思うんで」
「黒子っち疑問系ヤメテ!」
まああの彼もさすがにしないだろう…多分。
青ざめる黄瀬くんに、
心の中で手を合わせながら目を閉じる。
「……ただ、オレ思ったんスけど」
「はい?」
「なんだよ」
「それってなんだか…少し危なくないっスか?」
「…あぶ、ない?」
「どういう意味だ?」
火神くんと顔を見合わせて黄瀬くんを見ると、
彼は珍しく少し神妙な顔つきで頷いた。
「香穂子っちって、ホントにいい子ッスよ。
それでいて可愛いし、確かにちょっと抜けてるし、
過保護になるのもよく分かるような」
「…まあ」
「身長も低いから、マジでちっせぇ動物みたいだよな。
庇護欲っていうのか」
「火神くん、よく知ってましたねそんな言葉」
「お前が俺をすっげぇ馬鹿にしてるのは分かった」
「…痛いです、火神くん」
火神くんにヘッドロックをキメられる。
…本当の事言っただけなのに…いてて。
「……なんだか、その雄一って奴だけ、
香穂子っちに執着しているように思えて」
「…まあ、そうだな。聞いてる感じ、
そいつだけずば抜けてそうだもんな、過保護」
「そう…ですね、否定はしません」
「もし、もしッスよ?オレの想像があってて、
そいつが香穂子っちに依存してたとして。
いつか、あの子だって彼氏だって出来るだろうし、
結婚もする」
「…そりゃあな。独身貫くタイプには見えねーし」
「それはどっちかと言うと森さんですよね」
「森っちはありえそうッスね」
三人で顔を見合わせてから、頷いて少し笑う。
…彼女に、相手が出来たとして。
それを、彼は…。
「で?それがどうしたんだよ?」
「…香穂子っちが、もしそうなったとして…。
いや、近い将来になった時、
……その、雄一って奴は大丈夫…なんスか?」
「……彼が、受け入れられるか、ってことですよね」
「…うん。オレはその雄一って人の事はわかんねーけど、
香穂子っちにはきっと相手が沢山いるでしょ?
そのなかで…そいつが選ばれる確率って
低いんじゃねーかな、と少し思って」
「…そう、ですね…」
彼女は、名家のお嬢様。
きっと近い将来…、いやもしかしたら既に、
そういう話があってもおかしくない人。
それに…あの、蓮という人もいる。
………彼女は…、香穂子は、どちらかというと彼を…。
「……ま、まあ!これはあくまでオレの想像なんで。
実際会ったこともないっスし、きっと杞憂ッスよ!」
「…だな。いくらなんでも考えすぎだろ。
そんな切羽詰まった感じもしねーし」
「ッスよね!すんません」
「………」
「黒子っち?」
「…あ、いえ。そうですね。ボクも…大丈夫だと思います」
「それより、そろそろ帰ろーぜ。腹減ったし」
「そうッスね、オレも久しぶりのオフだし…。
あっ、黒子っち!今日家行ってもいいッスか?」
「…まあ、いいですよ。火神くんも来ますか?」
「あー…、今日はやめとく」
「そうですか。それじゃあ火神くん、また明日」
「火神っち、またねー」
「おう」
きっと大丈夫。……きっと。
頭にちらつく彼女の顔を、頭を振って振り払って。
黄瀬くんの話を適当に返しながら、
ボクは家路を歩き始めた。
*drohend=脅すような。